(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/19 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
B62D1/19
(21)【出願番号】P 2019204849
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三原 伸
(72)【発明者】
【氏名】カーティケヤン ビジャヤクマー
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-280653(JP,A)
【文献】特開2009-90856(JP,A)
【文献】特表2008-511491(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104828126(CN,A)
【文献】特開2007-283826(JP,A)
【文献】特開2004-175158(JP,A)
【文献】実開昭62-123485(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられるステアリングサポートメンバーに固定される第1固定部、前記第1固定部に対して前方に配置され且つ前記ステアリングサポートメンバーに固定される第2固定部、及び前記第1固定部及び前記第2固定部を連結する連結部を備える天板と、
前記第1固定部に対して離脱できるように前記第1固定部に取り付けられる第1ブラケットと、
前記第2固定部に対して回転できるように前記第2固定部に取り付けられる第2ブラケットと、
前記第1ブラケットに支持され且つステアリングホイールに連結されるステアリングシャフトを支持するアッパコラムと、
前記第2ブラケットに固定され且つ前記アッパコラムと連結されるロアコラムと、
を備え、
前記連結部は、前記アッパコラムの軸方向に沿って延びる長穴である第1穴を備え、
前記第1ブラケットは、前記第1穴を貫通するガイドピンを備え、
前記第2固定部は、前記ステアリングサポートメンバーに面する上壁と、前記第2ブラケットと接続される2つの側壁と、前記連結部と接続される後壁と、前記上壁、前記側壁及び前記後壁に囲まれる隅に配置され且つ前記上壁、前記側壁及び前記後壁に対して傾斜している傾斜壁と、を備え、
前記上壁は、2つの前記傾斜壁の間に配置され且つ前記ステアリングサポートメンバーに面する表面に設けられる凹部を備える
ステアリング装置。
【請求項2】
前記第2固定部は、前記後壁から突出し且つ前記連結部と接続されるリブを備える
請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記連結部は、前記ステアリングサポートメンバーの一部が挿入される第2穴を備える
請求項1又は2に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記第1穴は、前記第2穴の両側に配置される
請求項3に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、操作者(運転者)のステアリングホイールに対する操作を車輪に伝えるための装置としてステアリング装置が設けられている。ステアリング装置は、ステアリングホイールの位置を調節するための調節機構を備えることがある。例えば、特許文献1には、ステアリングホイールの上下方向の位置を調節できるステアリング装置の一例が記載されている。特許文献1に記載されるように、ステアリングコラムが軸を介して車体に取り付けられる。ステアリングコラムが軸を枢軸として回転することによって、ステアリングホイールの上下方向の位置が変化する。また、特許文献1のステアリング装置においては、枢軸としての軸が配置される部材(前部)は、ステアリングコラムを後方で締め付ける調整支持体と支持する部材(後部)と一体に形成されている。これにより、調整支持体の剛性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両が衝突した時、操作者がステアリングホイールに衝突する2次衝突が生じる。このため、ステアリング装置は、2次衝突の時に操作者に加わる衝撃を低減するためのエネルギー吸収装置を備える。しかし、特許文献1のステアリング装置の場合、エネルギー吸収装置が吸収しきれないエネルギーがステアリング装置に入力されると、枢軸としての軸が配置される部材(前部)が変形する。この場合、ステアリングコラムと共にステアリングホイールが落下し、ステアリングホイールの操作ができなくなる可能性がある。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、ステアリングホイールの落下を抑制できるステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係るステアリング装置は、車両に設けられるステアリングサポートメンバーに固定される第1固定部、前記第1固定部に対して前方に配置され且つ前記ステアリングサポートメンバーに固定される第2固定部、及び前記第1固定部及び前記第2固定部を連結する連結部を備える天板と、前記第1固定部に対して離脱できるように前記第1固定部に取り付けられる第1ブラケットと、前記第2固定部に対して回転できるように前記第2固定部に取り付けられる第2ブラケットと、前記第1ブラケットに支持され且つステアリングホイールに連結されるステアリングシャフトを支持するアッパコラムと、前記第2ブラケットに固定され且つ前記アッパコラムと連結されるロアコラムと、を備え、前記連結部は、前記アッパコラムの軸方向に沿って延びる長穴である第1穴を備え、前記第1ブラケットは、前記第1穴を貫通するガイドピンを備え、前記第2固定部は、前記ステアリングサポートメンバーに面する上壁と、前記第2ブラケットと接続される2つの側壁と、前記連結部と接続される後壁と、前記上壁、前記側壁及び前記後壁に囲まれる隅に配置され且つ前記上壁、前記側壁及び前記後壁に対して傾斜している傾斜壁と、を備え、前記上壁は、2つの前記傾斜壁の間に配置され且つ前記ステアリングサポートメンバーに面する表面に設けられる凹部を備える。
【0007】
車両が衝突した場合、操作者がステアリングホイールに衝突する2次衝突が生じる。ステアリングホイールに所定荷重以上の荷重が作用すると、第1ブラケットが第1固定部から離脱する。その後、第1ブラケットは、ガイドピンが第1穴に案内されることで、アッパコラムの軸方向に沿って移動する。第1ブラケットと共にアッパコラム51が移動する。アッパコラムとロアコラムとの間の摩擦により衝撃が吸収される。しかし、アッパコラムとロアコラムとの間の摩擦によって吸収できるエネルギーを超えるエネルギーがステアリング装置に作用した場合、第1ブラケットに作用する荷重がガイドピンを介して第2固定部に伝達する。本開示のステアリング装置においては、第2固定部が、上壁、側壁、後壁及び傾斜壁を備え、且つ上壁が凹部を備えている。このため、第2固定部の剛性が高くなる。第2固定部に大きな荷重が作用した場合でも、第2固定部が変形しにくくなる。よって、本開示のステアリング装置は、ステアリングホイールの落下を抑制できる。
【0008】
上記のステアリング装置の望ましい態様として、前記第2固定部は、前記後壁から突出し且つ前記連結部と接続されるリブを備える。これにより、リブが後壁と連結部との間で突っ張るので、第2固定部が連結部に対して曲がりにくくなる。本開示のステアリング装置は、第2固定部に荷重が作用した場合の第2固定部の変形をより抑制できる。
【0009】
上記のステアリング装置の望ましい態様として、前記連結部は、前記ステアリングサポートメンバーの一部が挿入される第1穴を備える。これにより、本開示のステアリング装置は、ステアリングサポートメンバーが天板の近くに配置される場合でも、ステアリングサポートメンバーと天板との干渉を抑制できる。
【0010】
上記のステアリング装置の望ましい態様として、前記第1穴は、前記第2穴の両側に配置される。これにより、2つのガイドピンがそれぞれ第1穴に案内される。第1ブラケットは、アッパコラムの軸方向に沿ってより真っ直ぐに移動する。このため、アッパコラムとロアコラムとの間の摩擦によって実際に吸収できるエネルギーが設計値からずれにくくなる。本開示のステアリング装置は、アッパコラムとロアコラムとの間の摩擦によって所定のエネルギーを吸収でき、且つ第2固定部の変形を抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本開示のステアリング装置は、ステアリングホイールの落下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態におけるステアリング装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態におけるステアリング装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態におけるステアリング装置の斜視図である。
【
図4】
図4は、本実施形態におけるステアリング装置の平面図である。
【
図8】
図8は、ステアリングサポートメンバー、天板、及び第1ブラケットの斜視図である。
【
図9】
図9は、ステアリングサポートメンバー、天板、及び第1ブラケットの斜視図である。
【
図10】
図10は、ステアリングサポートメンバー、天板、及び第1ブラケットの側面図である。
【
図11】
図11は、ステアリングサポートメンバー、天板、及び第1ブラケットの分解斜視図である。
【
図12】
図12は、ステアリングサポートメンバー、天板、及び第1ブラケットの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0014】
図1は、本実施形態におけるステアリング装置の斜視図である。
図2は、本実施形態におけるステアリング装置の斜視図である。
図3は、本実施形態におけるステアリング装置の斜視図である。
図4は、本実施形態におけるステアリング装置の平面図である。
図5は、
図4におけるA-A断面図である。
図6は、
図4におけるB-B断面図である。
図7は、
図5におけるC-C断面図である。
図8及び
図9は、ステアリングサポートメンバー、天板、及び第1ブラケットの斜視図である。
図10は、ステアリングサポートメンバー、天板、及び第1ブラケットの側面図である。
図11及び
図12は、ステアリングサポートメンバー、天板、及び第1ブラケットの分解斜視図である。
図13から
図15は、天板の第2固定部の斜視図である。
図16は、天板の第2固定部の平面図である。
図17は、天板の第2固定部の底面図である。
図18は、
図16におけるD-D断面図である。
【0015】
(実施形態)
図1に示すように、ステアリング装置100は、ステアリングホイール101と、ステアリングシャフト20と、ユニバーサルジョイント103と、中間シャフト105と、ユニバーサルジョイント107と、を備える。ステアリング装置100は、ピニオンシャフト109に接合される。
【0016】
図1に示すように、ステアリングシャフト20は、入力軸21と、出力軸22と、を備える。入力軸21及び出力軸22は、ステアリングコラム50に支持されている。入力軸21の一端は、ステアリングホイール101に連結される。入力軸21の他端は、出力軸22に連結される。入力軸21は、出力軸22に対してトルクを伝達でき、且つ出力軸22に対して軸方向に移動できるように連結される。出力軸22は、ユニバーサルジョイント103に連結される。中間シャフト105の一端は、ユニバーサルジョイント103に連結される。中間シャフト105の他端は、ユニバーサルジョイント107に連結される。ユニバーサルジョイント107は、ピニオンシャフト109に連結される。
【0017】
以下の説明において、XYZ直交座標系が用いられる。X軸は、ステアリング装置100が搭載された車両の車幅方向に平行である。Z軸は、ステアリングシャフト20の長手方向に平行である(回転軸Zに平行である)。Y軸は、X軸及びZ軸の両方に対して垂直である。X軸に沿う方向はX方向と記載され、Y軸に沿う方向はY方向と記載され、Z軸に沿う方向はZ方向と記載される。Z方向のうち車両の前方に向かう方向を+Z方向とする。操作者が+Z方向を向いた場合の右方向を+X方向とする。Y方向のうち上方に向かう方向を+Y方向とする。
【0018】
図2に示すように、ステアリング装置100は、ステアリングコラム50と、天板10と、第1ブラケット40と、第2ブラケット80と、締付機構30と、を備える。
【0019】
ステアリングコラム50は、ステアリングシャフト20を支持する部材である。ステアリングシャフト20の入力軸21及び出力軸22は、回転軸Zを中心に回転できる。回転軸Zは、入力軸21の長手方向に対して直交する平面で入力軸21を切った場合の各断面の重心を通る直線である。
【0020】
ステアリングコラム50は、アッパコラム51と、ロアコラム54と、を備える。アッパコラム51は、略円筒状の部材である。アッパコラム51は、ロアコラム54の後方に配置される。アッパコラム51は、軸受を介して入力軸21を支持する。ロアコラム54は、略円筒状の部材である。ロアコラム54の一部は、アッパコラム51の内側に嵌められる。ロアコラム54の一部は、アッパコラム51の内壁に接する。アッパコラム51とロアコラム54との間には摩擦が生じる。通常の使用状態では、アッパコラム51とロアコラム54との間の摩擦によって、アッパコラム51とロアコラム54との相対的な移動が規制される。一方、アッパコラム51に大きな荷重が作用した時(2次衝突時など)において、アッパコラム51とロアコラム54は、摩擦に抗いながら相対的に移動する。
【0021】
図7に示すように、アッパコラム51は、本体部511と、スリット513と、突出部514と、突出部515と、を備える。本体部511は、ステアリングシャフト20を覆う円筒状の部材である。スリット513は、本体部511の一部に設けられる切欠きである。スリット513は、Z方向に沿って延びる。スリット513の-Z方向の端部は、開放している。突出部514及び突出部515は、本体部511から-Z方向に延びる。突出部514は、スリット513に対して+X方向に配置される。突出部514は、Z方向に沿って延びる長穴5141を備える。突出部515は、スリット513に対して-X方向に配置される。突出部515は、Z方向に沿って延びる長穴5151を備える。
【0022】
天板10は、ステアリングコラム50を支持するための部材である。
図1に示すように、天板10は、ステアリングコラム50の+Y方向に配置される。天板10は、車両に設けられるステアリングサポートメンバー200(
図8から
図10参照)に固定される。
図8に示すように、天板10は、第1固定部11と、第2固定部12と、連結部15と、を備える。第1固定部11、第2固定部12、及び連結部15は、一体に成形される。
【0023】
第1固定部11は、板状の部材である。第1固定部11は、Y方向から見てアッパコラム51に重なるように配置される。第1固定部11は、ステアリングサポートメンバー200に、ボルトによって固定される。
【0024】
第2固定部12は、箱状の部材である。例えば、第2固定部12は、深絞り加工によって成形される。第2固定部12は、第1固定部11に対して前方に配置される。第2固定部12は、Y方向から見てロアコラム54に重なるように配置される。第2固定部12のX方向の幅は、第1固定部11のX方向の幅よりも小さい。第2固定部12は、ステアリングサポートメンバー200に、ボルトによって固定される。
図13に示すように、第2固定部12は、上壁121と、2つの側壁123と、後壁125と、2つの傾斜壁127と、2つのリブ129と、を備える。
【0025】
上壁121は、ステアリングサポートメンバー200に面する板状の部材である。
図13に示すように、上壁121は、2つのスリット1211と、凹部1212を備える。スリット1211は、Z方向に延びる長穴である。スリット1211の+Z方向の端部は、開放されている。2つのスリット1211は、X方向に間隔を空けて配置される。スリット1211には、ボルトが挿入される。スリット1211に挿入されるボルトによって、第2固定部12がステアリングサポートメンバー200と連結される。凹部1212は、ステアリングサポートメンバー200に面する表面に設けられる窪みである。凹部1212は、2つのスリット1211の間に配置される。
図16に示すように、凹部1212は、Y方向から見た場合、三角形状である。凹部1212のX方向の幅は、+Z方向に向かうにしたがって小さくなっている。
【0026】
図14に示すように、側壁123は、上壁121に対して直交する板状の部材である。側壁123の厚さ方向は、X方向と平行である。側壁123は、上壁121のX方向の両側に配置される。側壁123は、上壁121のX方向の両端から、ロアコラム54に近付く方向に延びている。側壁123は、X方向において、スリット1211よりも外側に配置される。側壁123は、穴1231を備える。穴1231には、ピボットシャフト81(
図2参照)が挿入される。
【0027】
図13に示すように、後壁125は、上壁121及び側壁123に対して直交する板状の部材である。後壁125は、上壁121の-Z方向の端部から、ロアコラム54に近付く方向に延びている。後壁125は、連結部15と接続される。
【0028】
図13に示すように、傾斜壁127は、上壁121、側壁123及び後壁125に囲まれる隅に配置される。傾斜壁127は、上壁121、側壁123及び後壁125に対して傾斜する板状の部材である。傾斜壁127の厚さ方向から見た場合、傾斜壁127は、三角形状である。傾斜壁127が描く三角形の辺が、それぞれ上壁121、側壁123及び後壁125の縁と対応する。2つの傾斜壁127の間に、上壁121の凹部1212が配置される。すなわち、
図16に示すように、+X方向に向かって、一方の傾斜壁127、凹部1212、他方の凹部1212の順に配置される。
【0029】
図13に示すように、リブ129は、後壁125から-Z方向に突出している。リブ129は、連結部15に接続される。2つのリブ129は、X方向に間隔を空けて配置される。
図16に示すように、リブ129は、X方向において、凹部1212と傾斜壁127との間に配置される。リブ129は、スリット1211の-Z方向の端部と連結部15の第1穴153の+Z方向の端部とを通る直線よりも、凹部1212側に配置される。リブ129は、Y方向から見た場合、三角形状である。リブ129のX方向の幅は、-Z方向に向かうにしたがって小さくなっている。
【0030】
連結部15は、板状の部材である。連結部15は、第1固定部11及び第2固定部12を連結する。連結部15のX方向の幅は、第1固定部11のX方向の幅とほぼ等しく、第2固定部12のX方向の幅よりも大きい。連結部15は、2つの第1穴153と、第2穴151と、を備える。第1穴153は、Z方向に沿う長穴である。すなわち、第1穴153は、第1固定部11から第2固定部12に向かって延びる長穴である。第1穴153は、アッパコラム51(ロアコラム54)の軸方向に沿って延びる長穴であるともいえる。第1穴153は、第2穴151の両側に配置される。第2穴151は、連結部15の中央に配置される。第2穴151は、2つの第1穴153の間に配置される。第2穴151は、ステアリングサポートメンバー200と天板10との干渉を避けるための穴である。
図9に示すように、ステアリングサポートメンバー200の一部は、第2穴151に挿入される。
図10に示すように、ステアリングサポートメンバー200の一部は、連結部15よりも-Y方向に配置される。
【0031】
第1ブラケット40及び第2ブラケット80は、ステアリングコラム50を支持するための部材である。第1ブラケット40は、チルトブラケットとも呼ばれる。第2ブラケット80は、ピボットブラケットとも呼ばれる。第2ブラケット80は、第1ブラケット40に対して+Z方向に配置される。第1ブラケット40は、ボルトによって第1固定部11に取り付けられる。第1ブラケット40と第1固定部11を連結するボルトは、第1固定部11とステアリングサポートメンバー200を連結するボルトである。第2ブラケット80は、ロアコラム54の外周面に固定される。第2ブラケット80は、第2固定部12に対して回転できるように第2固定部12に取り付けられる。
図2に示すように、第2ブラケット80は、軸方向がX方向に沿うピボットシャフト81を備える。ピボットシャフト81が第2固定部12と連結される。ピボットシャフト81は、
図13に示す穴1231に取り付けられる。ステアリングコラム50は、ピボットシャフト81を中心に回転できる。
【0032】
図6及び
図7に示すように、第1ブラケット40は、取付板41と、離脱カプセル49と、ガイドピン47と、第1支持板44と、第2支持板45と、を備える。取付板41は、ステアリングコラム50の+Y方向に配置される。離脱カプセル49は、ボルトによって第1固定部11に取り付けられる。離脱カプセル49と第1固定部11を連結するボルトは、第1固定部11とステアリングサポートメンバー200を連結するボルトである。すなわち、1つのボルトによって、離脱カプセル49及び第1固定部11がステアリングサポートメンバー200に連結される。離脱カプセル49は、例えばダイカスト用アルミニウム合金(ADC材(Aluminum alloy Die Casting))などの軽量合金で形成される。取付板41は、例えば樹脂インジェクションで形成された樹脂部材48によって、離脱カプセル49と連結されている。2次衝突時などにおいて、ステアリングコラム50に+Z方向の荷重が作用することによって、離脱カプセル49に対して取付板41が移動し、樹脂部材48が切断される。これにより、離脱カプセル49を除く第1ブラケット40、及びアッパコラム51がステアリングサポートメンバー200から離脱する。このように、第1ブラケット40は、所定荷重が作用した時に第1固定部11に対して離脱できるように第1固定部11に取り付けられる。第1ブラケット40が第1固定部11から離脱した後、アッパコラム51とロアコラム54との間の摩擦により衝撃が吸収される。
【0033】
図6に示すように、ガイドピン47は、取付板41に取り付けられる。ガイドピン47は、連結部15の第1穴153を貫通する。ガイドピン47は、第1穴153の内壁に案内される。これにより、第1ブラケット40が第1固定部11から離脱した後、アッパコラム51がZ方向に沿って真っすぐに移動しやすくなる。アッパコラム51とロアコラム54との間の摩擦によってエネルギーを吸収しきれない場合、ガイドピン47は、第1穴153の+Z方向の端部に達する。この場合、第1ブラケット40に作用する荷重が、ガイドピン47を介して連結部15及び第2固定部12に伝達する。
【0034】
図7に示すように、第1支持板44及び第2支持板45は、取付板41から-Y方向に延びる板状の部材である。第1支持板44及び第2支持板45は、X方向に隙間を空けて配置される。第1支持板44及び第2支持板45は、ステアリングコラム50を挟む。すなわち、第1支持板44及び第2支持板45の間に、ステアリングコラム50が配置される。第1支持板44は、長穴441を備える。第2支持板45は、長穴451を備える。長穴441及び長穴451は、
図2に示すピボットシャフト81を中心とした円弧に沿って延びている(
図6参照)。
【0035】
締付機構30は、ステアリングコラム50の位置の調節が可能な状態と、ステアリングコラム50の位置が固定された状態と、を切り替えるための装置である。
図7に示すように、締付機構30は、締付軸35と、複数の摩擦板36と、固定カム31と、可動カム32と、ナット34と、スラストベアリング33と、操作レバー39と、ケース37と、コイルバネ38と、を備える。
【0036】
図7に示すように、締付軸35は、軸部350と、頭部351と、雄ネジ352と、を備える。軸部350は、円柱状の部材である。軸部350は、長穴441、長穴5141、長穴5151及び長穴451を貫通する。頭部351は、軸部350の+X方向の端部に配置される。雄ネジ352は、軸部350の-X方向の端部に配置される。複数の摩擦板36は、頭部351と第1支持板44との間に配置される。軸部350は、摩擦板36を貫通する。
【0037】
固定カム31は、略円盤状の部材である。固定カム31は、第2支持板45の-X方向に配置される。締付軸35は、固定カム31を貫通する。固定カム31の一部は、長穴451に嵌まっている。これにより、固定カム31は、第2支持板45に対して回転しない。
【0038】
可動カム32は、略円盤状の部材である。可動カム32は、固定カム31の-X方向に配置される。締付軸35は、可動カム32を貫通する。可動カム32の一部は、操作レバー39に嵌まっている。これにより、可動カム32は、操作レバー39と共に回転する。このため、可動カム32は、固定カム31に対して回転する。可動カム32は、固定カム31に対する相対角度に応じて、X方向に移動する。例えば、可動カム32は、締付軸35を中心とした周方向に沿う傾斜面を備える。固定カム31は、可動カム32の傾斜面が嵌まる凹部を備える。傾斜面が凹部に嵌まっている状態から可動カム32が回転すると、傾斜面が固定カム31に乗り上げることによって、可動カム32が-X方向に移動する。
【0039】
操作レバー39は、可動カム32を回転させるための部材である。操作レバー39は、可動カム32の-X方向に配置される。締付軸35は、操作レバー39を貫通する。操作レバー39は、車室内まで延びており、操作者によって操作される。
【0040】
ナット34は、操作レバー39の-X方向に配置される。ナット34は、締付軸35の雄ネジ352に取り付けられる。スラストベアリング33は、操作レバー39とナット34との間に配置される。これにより、操作レバー39が回転しても、ナット34は回転しない。操作レバー39が回転させられると、可動カム32が回転する一方で、締付軸35及びナット34は回転しない。
【0041】
図8に示すように、ケース37は、操作レバー39に取り付けられる。ケース37は、固定部材391によって操作レバー39に固定される。固定部材391は、例えばボルトである。ケース37は、操作レバー39と共に回転する。ケース37は、操作レバー39の-X方向に配置される。ケース37は、締付軸35の先端及びナット34を覆う。
【0042】
コイルバネ38は、ケース37の内側に配置される。コイルバネ38は、圧縮コイルバネである。コイルバネ38の一端は、ケース37に接する。コイルバネ38の他端は、締付軸35に接する。コイルバネ38は、ケース37及び締付軸35に接した状態で圧縮されている。また、コイルバネ38の表面には潤滑剤が塗布されている。潤滑剤は、例えばグリースである。コイルバネ38によって、操作レバー39がナット34側に引き寄せられる。このため、ステアリングコラム50の位置を調節できる状態(アンロック状態)においても、操作レバー39とスラストベアリング33との間に隙間が生じない。したがって、操作レバー39のガタツキが抑制される。
【0043】
可動カム32が固定カム31から離れるように操作レバー39が回転させられると、締付軸35の頭部351が摩擦板36に押し付けられると共に、固定カム31が第2支持板45に押し付けられる。これにより、頭部351と摩擦板36との間の摩擦、複数の摩擦板36との間の摩擦、摩擦板36と第1支持板44との間の摩擦、及び固定カム31と第2支持板45との間の摩擦が大きくなる。このため、締付軸35が長穴441及び長穴451の中で移動できなくなり、ステアリングコラム50のY方向(上下方向)の位置が固定される。また、アッパコラム51が締め付けられるので、スリット513の幅が小さくなる。アッパコラム51の内周面がロアコラム54の外周面に押し付けられる。アッパコラム51とロアコラム54との間の摩擦が大きくなる。このため、締付軸35が長穴5141及び長穴5151の中で移動できなくなり、アッパコラム51のZ方向(前後方向)の位置が固定される。
【0044】
可動カム32が固定カム31に近付くように操作レバー39が回転させられると、頭部351と摩擦板36との間の摩擦、複数の摩擦板36との間の摩擦、摩擦板36と第1支持板44との間の摩擦、及び固定カム31と第2支持板45との間の摩擦が小さくなる又はなくなる。これにより、締付軸35が長穴441及び長穴451の中で移動できるようになり、ステアリングコラム50のY方向(上下方向)の調整が可能となる。また、アッパコラム51のスリット513の幅が大きくなるので、アッパコラム51とロアコラム54との間の摩擦が小さくなる又はなくなる。このため、締付軸35が長穴5141及び長穴5151の中で移動できるようになり、アッパコラム51のZ方向(前後方向)の位置の調整が可能となる。
【0045】
なお、ステアリングサポートメンバー200は、必ずしも
図9に示すように第2穴151を貫通していなくてもよい。ステアリングサポートメンバー200の全部が、天板10よりも+Y方向に配置されていてもよい。この場合、連結部15は、第2穴151を備えていなくてもよい。また、連結部15は、必ずしも2つの第1穴153を備えていなくてもよい。連結部15は、第1穴153を1つ備えていてもよいし、第1穴153を備えていなくてもよい。
【0046】
以上で説明したように、天板10と、第1ブラケット40と、第2ブラケット80と、アッパコラム51と、ロアコラム54と、を備える。天板10は、車両に設けられるステアリングサポートメンバー200に固定される第1固定部11、第1固定部11に対して前方に配置され且つステアリングサポートメンバー200に固定される第2固定部12、及び第1固定部11及び第2固定部12を連結する連結部15を備える。第1ブラケット40は、第1固定部11に対して離脱できるように第1固定部11に取り付けられる。第2ブラケット80は、第2固定部12に対して回転できるように第2固定部12に取り付けられる。アッパコラム51は、第1ブラケット40に支持され且つステアリングホイール101に連結されるステアリングシャフト20を支持する。ロアコラム54は、第2ブラケット80に固定され且つアッパコラム51と連結される。連結部15は、アッパコラム51の軸方向に沿って延びる長穴である第1穴153を備える。第1ブラケット40は、第1穴153を貫通するガイドピン47を備える。第2固定部12は、ステアリングサポートメンバー200に面する上壁121と、第2ブラケット80と接続される2つの側壁123と、連結部15と接続される後壁125と、上壁121、側壁123及び後壁125に囲まれる隅に配置され且つ上壁121、側壁123及び後壁125に対して傾斜している傾斜壁127と、を備える。上壁121は、2つの傾斜壁127の間に配置され且つステアリングサポートメンバー200に面する表面に設けられる凹部1212を備える。
【0047】
車両が衝突した場合、操作者がステアリングホイール101に衝突する2次衝突が生じる。ステアリングホイール101に所定荷重以上の荷重が作用すると、第1ブラケット40が第1固定部11から離脱する。その後、第1ブラケット40は、ガイドピン47が第1穴153に案内されることで、アッパコラム51(ロアコラム54)の軸方向に沿って移動する。第1ブラケット40と共にアッパコラム51が移動する。アッパコラム51とロアコラム54との間の摩擦により衝撃が吸収される。しかし、アッパコラム51とロアコラム54との間の摩擦によって吸収できるエネルギーを超えるエネルギーがステアリング装置100に作用した場合、第1ブラケット40に作用する荷重がガイドピン47を介して第2固定部12に伝達する。本実施形態のステアリング装置100においては、第2固定部12が、上壁121、側壁123、後壁125及び傾斜壁127を備え、且つ上壁121が凹部1212を備えている。このため、第2固定部12の剛性が高くなる。第2固定部12に大きな荷重が作用した場合でも、第2固定部12が変形しにくくなる。よって、本実施形態のステアリング装置100は、ステアリングホイール101の落下を抑制できる。
【0048】
ステアリング装置100において、第2固定部12は、後壁125から突出し且つ連結部15と接続されるリブ129を備える。これにより、リブ129が後壁125と連結部15との間で突っ張るので、第2固定部12が連結部15に対して曲がりにくくなる。本実施形態のステアリング装置100は、第2固定部12に荷重が作用した場合の第2固定部12の変形をより抑制できる。
【0049】
ステアリング装置100において、連結部15は、ステアリングサポートメンバー200の一部が挿入される第2穴151を備える。これにより、本実施形態のステアリング装置100は、ステアリングサポートメンバー200が天板10の近くに配置される場合でも、ステアリングサポートメンバー200と天板10との干渉を抑制できる。
【0050】
ステアリング装置100において、第1穴153は、第2穴151の両側に配置されるこれにより、2つのガイドピン47がそれぞれ第1穴153に案内される。第1ブラケット40は、アッパコラム51(ロアコラム54)の軸方向に沿ってより真っ直ぐに移動する。このため、アッパコラム51とロアコラム54との間の摩擦によって実際に吸収できるエネルギーが設計値からずれにくくなる。本実施形態のステアリング装置100は、アッパコラム51とロアコラム54との間の摩擦によって所定のエネルギーを吸収でき、且つ第2固定部12の変形を抑制できる。
【符号の説明】
【0051】
10 天板
11 第1固定部
12 第2固定部
15 連結部
20 ステアリングシャフト
21 入力軸
22 出力軸
30 締付機構
31 固定カム
32 可動カム
33 スラストベアリング
34 ナット
35 締付軸
36 摩擦板
37 ケース
38 コイルバネ
39 操作レバー
40 第1ブラケット
41 取付板
44 第1支持板
45 第2支持板
47 ガイドピン
48 樹脂部材
49 離脱カプセル
50 ステアリングコラム
51 アッパコラム
54 ロアコラム
80 第2ブラケット
81 ピボットシャフト
100 ステアリング装置
101 ステアリングホイール
103 ユニバーサルジョイント
105 中間シャフト
107 ユニバーサルジョイント
109 ピニオンシャフト
121 上壁
123 側壁
125 後壁
127 傾斜壁
129 リブ
151 第2穴
153 第1穴
200 ステアリングサポートメンバー
350 軸部
351 頭部
352 雄ネジ
441、451 長穴
511 本体部
513 スリット
514、515 突出部
5141、5151 長穴
1211 スリット
1212 凹部
1231 穴
Z 回転軸