(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】フラッシュデバイスおよびイリゲーションライン
(51)【国際特許分類】
A61M 39/22 20060101AFI20230516BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20230516BHJP
A61B 5/0215 20060101ALI20230516BHJP
A61B 5/03 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
A61M39/22
A61M5/168 502
A61B5/0215 Z
A61B5/03
(21)【出願番号】P 2019551900
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2018033625
(87)【国際公開番号】W WO2019092979
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】P 2017216698
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 康史
(72)【発明者】
【氏名】松本 邦晃
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05820565(US,A)
【文献】国際公開第2007/083599(WO,A1)
【文献】特表昭55-500411(JP,A)
【文献】特開平02-007936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/22
A61M 5/168
A61B 5/0215
A61B 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を有する第1流路が設けられた第1ハウジングと、
前記中心軸に沿って延びる第2流路が設けられ、前記第1ハウジングに結合された第2ハウジングと、
前記第1流路と前記第2流路との間に位置する基部、
基部側の基端と前記第1流路内に位置する先端とを有し、基端側から先端側に向かって前記中心軸に沿って延びる突出部、および、
前記基部および前記突出部にわたって前記中心軸に沿って延び、前記第1流路と前記第2流路とを流体接続する貫通孔を有する
流量調節デバイスと、
前記流量調節デバイスの基部の周囲に設けられ、前記第1流路と前記第2流路との間を封止する弾性部材とを備え、
前記弾性部材は、変形して、前記流量調節デバイスの基部の外周面との間に隙間を形成し、これにより前記第1流路と前記第2流路とをさらに流体接続するためのバイパス流路を形成する、ように構成され、
前記流量調節デバイスにおいて、前記突出部の外周面には、複数の嵌合突起が設けられ、
前記第1ハウジングにおいて、前記第1流路を画定する内周面には、前記複数の嵌合突起が嵌合している複数の嵌合受け部が設けられており、
前記突出部は、前記第1流路を画定する内周面から所定の間隔を空けて配置される、フラッシュデバイス。
【請求項2】
前記流量調節デバイスにおいて、前記突出部の外周面であって前記複数の嵌合突起の基端側には、複数のスペーサが設けられている、
請求項1に記載のフラッシュデバイス。
【請求項3】
前記複数のスペーサは、突出部外周面の周方向に間隔を空けて複数配置されており、更に前記複数のスペーサは、それぞれ、前記第1流路を画定する内周面に当接している、
請求項2に記載のフラッシュデバイス。
【請求項4】
前記第1ハウジングは、連結機構を介して前記第2ハウジングに結合され、
前記連結機構は、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングのうち一方の端部に設けられた爪部と、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングのうち他方の端部に設けられて前記爪部が嵌合している爪受け部とを有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のフラッシュデバイス。
【請求項5】
前記連結機構は、前記爪受け部から前記第1ハウジングと前記第2ハウジングのうち一方に向かって延びるアームと、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングのうち一方の端部に設けられ、前記アームを受け、前記第2ハウジングに対する第1ハウジングの相対回転を規制するアーム受け部とを有する、
請求項4に記載のフラッシュデバイス。
【請求項6】
一対のウイングをさらに備え、
前記一対のウイングは、それぞれ、前記中心軸に平行に延びる軸部を有し、該軸部の周りに回転できるように前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングに支持され、かつ、前記弾性部材を押圧して前記弾性部材を変形させるための押圧部を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のフラッシュデバイス。
【請求項7】
前記弾性部材は、該弾性部材と一体に設けられた位置決めマーカを有している、
請求項1から6のいずれか1項に記載のフラッシュデバイス。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のフラッシュデバイスを備えた、
イリゲーションライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュデバイス、および、フラッシュデバイスを備えたイリゲーションラインに関する。
【背景技術】
【0002】
手術中の観血的血圧測定や脳脊髄液圧測定に用いられるイリゲーションライン(圧力モニタリング用チューブセットとも称される)では、カテーテルとチューブを介して伝わる血圧または液圧を圧力トランスデューサで電気信号に変換することにより、血圧または液圧を測定している。
【0003】
カテーテルが患者の体内に挿入される前に、チューブ内は生理食塩水で満たされる。ここで、チューブ内またはカテーテルの部分に血栓が生じると、カテーテルを通じて患者の体内に血栓が入るおそれがある。そこで、イリゲーションラインには、チューブ内などで血栓が生じるのを防ぐために、連続的に微量の生理食塩水を吐出できるように構成されたフラッシュデバイスが設けられている。
【0004】
特許文献1には、生理食塩水の供給源側に位置する第1流路が設けられた第1ハウジングと、患者の身体内側に位置する第2流路が設けられた第2ハウジングと、第1流路と第2流路との間に設けられた流量調節デバイスとを備えたフラッシュデバイスが開示されている。流量調節デバイスには、径の小さいオリフィスが設けられている。第1流路から到来する微量の生理食塩水は、オリフィスを通じて連続的に第2流路に向かって放出される。流量調節デバイスは、超音波溶接により、第2ハウジングに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、フラッシュデバイスから吐出される生理食塩水の流量が小さすぎると、血栓の発生を抑制できないおそれがあり、逆に流量が大きすぎると、カテーテルを通じて患者の体内に入る生理食塩水の量が多くなり、患者の身体に悪影響が生じるおそれがある。特に、手術が長時間に及んだ場合には、この問題が顕著に生じる。したがって、フラッシュデバイスでは、規定量に近い流量の生理食塩水を吐出することが求められている。
【0007】
ここで、フラッシュデバイスから吐出される薬液の量は、流量調節デバイスの位置決めによって大きく変化しうることがわかっている。特許文献1のフラッシュデバイスで採用されている流量調節デバイスを超音波接合により第2ハウジングに固定する構成は、流量調節デバイスの位置決めのための機構の観点で改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、規定量に近い流量の薬液を吐出することが可能なフラッシュデバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
中心軸を有する第1流路が設けられた第1ハウジングと、
前記中心軸に沿って延びる第2流路が設けられ、前記第1ハウジングに結合された第2ハウジングと、
前記第1流路と前記第2流路との間に位置する基部、
基部側の基端と前記第1流路内に位置する先端とを有し、基端側から先端側に向かって前記中心軸に沿って延びる突出部、および、
前記基部および前記突出部にわたって前記中心軸に沿って延び、前記第1流路と前記第2流路とを流体接続する貫通孔を有する
流量調節デバイスと、
前記流量調節デバイスの基部の周囲に設けられ、前記第1流路と前記第2流路との間を封止する弾性部材とを備え、
前記弾性部材は、変形して、前記流量調節デバイスの基部の外周面との間に隙間を形成し、これにより前記第1流路と前記第2流路とをさらに流体接続するためのバイパス流路を形成する、ように構成され、
前記流量調節デバイスにおいて、前記突出部の外周面には、複数の嵌合突起が設けられ、
前記第1ハウジングにおいて、前記第1流路を画定する内周面には、前記複数の嵌合突起が嵌合している複数の嵌合受け部が設けられており、
前記突出部は、前記第1流路を画定する内周面から所定の間隔を空けて配置される、
フラッシュデバイスに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、流量調節デバイスの嵌合突起が第1ハウジングの嵌合受け部に嵌合しているので、貫通孔が第1ハウジングの中心軸に沿って延びるように流量調節デバイスを配置できる。これにより、流量調節デバイスを通じて、より規定量に近い流量の薬液を吐出することが可能なフラッシュデバイスが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るフラッシュデバイスが設けられたイリゲーションラインを示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るフラッシュデバイスを示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るフラッシュデバイスを示す組立図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るフラッシュデバイスを示す平面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るフラッシュデバイスを示す側面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るフラッシュデバイスを示す正面図である。
【
図7】
図6をA-A線に沿って切って矢印の方向に見たときの断面図である。
【
図16】
図6に対応する図であり、一対のウイングを変形させた状態を示す。
【
図17】
図7に対応する図であり、一対のウイングを変形させた状態を示す。
【
図18】本発明の第2実施形態に係るフラッシュデバイスが設けられたイリゲーションラインを示す図である。
【
図20】本発明の第2実施形態に係るフラッシュデバイスを示す正面図である。
【
図21】
図20をA-A線に沿って切って矢印の方向に見たときの断面図である。
【
図22】
図20に対応する図であり、一対のウイングを変形させた状態を示す。
【
図23】
図21に対応する図であり、一対のウイングを変形させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0013】
(第1実施形態)
(1.イリゲーションライン)
図1は、本発明の第1実施形態に係るフラッシュデバイス1が設けられたイリゲーションライン10を示している。イリゲーションライン10は、フラッシュデバイス1に加えて、瓶針11、圧力トランスデューサ12、三方活栓13、コネクタ14などを備えている。瓶針11とフラッシュデバイス1、および、三方活栓13とコネクタ14との間は、それぞれチューブ15,16で接続されている。フラッシュデバイス1、圧力トランスデューサ12および三方活栓13は、互いに直接に接続されていてよい。コネクタ14は、図示しない薬液源に接続されている。
【0014】
圧力トランスデューサ12を備えたイリゲーションライン10を、特に、圧力モニタリング用チューブセットと称してもよい。ただし、本明細書において、イリゲーションライン10は、圧力トランスデューサ12を備えていないものを含む。イリゲーションライン10は、手術中の観血的血圧測定や脳脊髄液圧測定に用いられてよい。
【0015】
圧力トランスデューサ12は、コントローラ17に接続されている。圧力トランスデューサ12は、瓶針11とチューブ15を介して伝わる血圧または液圧を電気信号に変換してコントローラ17に送信する。コントローラ17は、CPU(中央演算装置)、メモリ、モニタなどで構成され、送信された電気信号をデジタル処理し、かつ、血圧または液圧をモニタに表示するように構成されている。この実施形態では、圧力トランスデューサ12は、イリゲーションライン10から取り外し可能に設けられているが、イリゲーションライン10に一体化されていてもよい。
【0016】
(2.フラッシュデバイス)
図2から
図7に示すように、フラッシュデバイス1は、ケーシング2、流量調節デバイス3、弾性部材4および一対のウイング5,5を備えている。フラッシュデバイス1は、流量調節デバイス3を通じて、連続的に微量の薬液を吐出するように構成されている。流量調節デバイス3と弾性部材4は、ケーシング2内に収容されている。一対のウイング5,5は、ケーシング2に取り付けられている。
図2から
図7には、一対のウイング5,5が閉じた状態のフラッシュデバイス1を示している。
【0017】
ケーシング2、流量調節デバイス3および一対のウイング5,5は、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂などの樹脂材料で作られていてもよい。弾性部材4は、シリコーンなどのエラストマー材料で作られていてもよい。
【0018】
以下のフラッシュデバイス1の説明では、イリゲーションライン10に配置されたときの薬液源側を上流側、イリゲーションライン10に配置されたときの瓶針11側を下流側と称する。また、便宜的に、上流側から下流側に延びる方向(長手方向)に対して垂直な2つの方向のうち、一対のウイング5,5を結ぶ方向を左右方向、長手方向および左右方向に対して垂直な方向を上下方向と称する。
【0019】
[2-1.ケーシング]
ケーシング2は、互いに結合された第1ハウジング6と第2ハウジング7とを有している。第1ハウジング6は上流側に、第2ハウジング7は下流側に配置される。
【0020】
図7、
図8に示すように、第1ハウジング6は、第1流路61が設けられた細長い本体62を有している。第1流路61は中心軸101を有し、第1ハウジング6の本体62は中心軸101に沿って延びている。第1ハウジング6において、中心軸101が延びる方向を第1ハウジング6の軸方向、軸方向に対して直交する任意の方向を第1ハウジング6の径方向と称する。
【0021】
第1流路61は、上流側から下流側に向かって先細りして延びている。第1流路61の一端(上流側端)には流入口61aが設けられ、他端(下流側端)には流出口61bが設けられている。第1流路61の流入口61aは、フラッシュデバイス1の流入口である。第1流路61の流入口61aは円形である。第1流路61の流出口61bは、十字状(クロス状)に形成されている。第1流路61の流出口61bを画定する本体62の下流側端部63には、流量調節デバイス3が取り付けられている。十字状に形成された流出口61bのうち上下方向に延びる穴は、本体62の下流側端面から軸方向(上流側)に延びる上下のスロット溝64,64に連通している。スロット溝64,64は、本体62の周壁を径方向に貫通して延びている。
【0022】
第1ハウジング6の下流側端部63は、本体62において第1流路61を画定する内周面に設けられた複数の孔部65を有している。孔部65は、第1ハウジング6に流量調節デバイス3を嵌合させて固定するときの嵌合受け部として機能する。孔部65は側方から見て長方形状を有している。複数の孔部65は、周方向に等間隔で設けられていることが好ましい。この実施形態では、2つの孔部65が互いに180度隔てられて左右に設けられている。この実施形態では、孔部65は、本体62の周壁を径方向に貫通する貫通孔である。他の実施形態では、孔部65は、本体62の周壁を径方向に貫通しない非貫通孔であってもよい。ここで、孔部65の下流側に位置する本体62の周壁の一部をスペーサ受け部66と称する。
【0023】
第1ハウジング6の本体62の上流側端部にはオスコネクタ67が設けられている。オスコネクタ67は、
図1に示す圧力トランスデューサ12に設けられた図示しないメスコネクタに取り付けられる。
【0024】
図7、
図9に示すように、第2ハウジング7は、第2流路71が設けられた細長い本体72を有している。第2流路71は中心軸102を有し、第2ハウジング7の本体72は中心軸102に沿って延びている。第2ハウジング7において、中心軸102が延びる方向を第2ハウジング7の軸方向、軸方向に対して直交する面内における任意の方向を第2ハウジング7の径方向と称する。第2流路71の中心軸102は、第1流路61の中心軸101に沿って延びている。なお、第2流路71の中心軸102と第1流路61の中心軸101とは完全に一直線状に延びている必要はなく、本発明の作用効果を達成することができる程度であれば、両中心軸101,102は互いにずれて(非平行に)配置されていてもよい。
【0025】
第2流路71は、上流側から下流側に向かって先細りして延びている。第2流路71の一端(上流側端)には流入口71aが設けられ、他端(下流側端)には流出口71bが設けられている。第2流路71の流入口71aおよび流出口71bは円形である。第2流路71の流出口71bは、フラッシュデバイス1の流出口である。第2流路71の流入口71aを画定する本体72の上流側端部73は、流量調節デバイス3に近接して配置されている。
【0026】
図2に示すように、第2ハウジング7の本体72の下流側端部にはメスコネクタ18が取り付けられる。メスコネクタ18は、
図1に示すチューブ15に設けられた図示しないオスコネクタに取り付けられる。
【0027】
[2-2.連結機構]
第1ハウジング6と第2ハウジング7は、互いに連結機構を介して結合されている。この実施形態では、連結機構は、第1ハウジング6の下流側端部に設けられた第1連結部8と、第2ハウジング7の上流側端部に設けられた第2連結部9とを有している。
【0028】
図8に示すように、第1連結部8は、軸方向で下流側に開口するカップ部81を有する。カップ部81の下流側端部の上部には、側方から見てL字形状のプレート82が設けられている。プレート82は、上下方向に延びる縦板82aと、軸方向で下流側に延びる横板82bとを有する。横板82bは、軸方向で下流側から見てT字状の端面82cを有している。横板82bの下側には、縦板82aから軸方向で下流側に延びる舌部83が設けられている。舌部83の下流側端部には、上方向に突出する嵌合爪83aが設けられている。舌部83の上面には、横板82bと嵌合爪83aとにより凹部が画定される。この凹部をブリッジ受け部84と称する。
【0029】
カップ部81の下流側端部の下部には、パネル85が設けられている。パネル85は、軸方向で下流側に延びる横板86を有している。横板86の上側には、パネル85から軸方向で下流側に延びる舌部87が設けられている。舌部87の下流側端部には、下方向に突出する嵌合爪87aが設けられている。パネル85は、横板86と舌部87を挟んで左右一対に設けられた円形の軸穴88,88を有している。
【0030】
図9に示すように、第2連結部9は、軸方向で上流側に開口するカップ部91を有する。カップ部91の上流側端部の上部には、カップ部91に固定されて軸方向で上流側に延びる左右一対のビーム92,92が設けられている。一対のビーム92,92は、第1ハウジング6と第2ハウジング7とを結合したときに第1連結部8の舌部83を挟んで係合するように、舌部83の左右方向寸法(または幅)と同程度の距離を互いに隔てている。
【0031】
第2連結部9は、ビーム92,92を接続するブリッジ93を有している。第1ハウジング6と第2ハウジング7とを結合するときには、ブリッジ93の下流側に嵌合爪83aが嵌合(スナップフィット)する。このとき、第1連結部8のブリッジ受け部84に嵌合するように、ブリッジ93は、ブリッジ受け部84の長手方向寸法(または長さ)と同程度の長手方向寸法を有している。このように、ブリッジ93は、嵌合爪83aを受ける爪受け部として機能する。
【0032】
ブリッジ93の上流側では、ビーム92,92の下側部分のみが上流側に突出し、左右一対のアーム94,94を構成している。アーム94,94は、第1ハウジング6と第2ハウジング7とを結合したときに、横板82bのT字の隅部に挟まれている。このように、横板82bは、アーム94,94を受け、第2ハウジング7に対する第1ハウジング6の相対回転を規制するアーム受け部として機能する。さらに、好ましい実施形態では、アーム94,94は、プレート82の縦板82aの下流側の面に当接する長手方向寸法を有している。
【0033】
カップ部91の下流側端部の下部には、パネル95が設けられている。パネル95は、軸方向で上流側に延びる一対のビーム96,96を有している。ビーム96,96は、第1ハウジング6と第2ハウジング7とを結合したときに、第1連結部8の舌部87を挟んで係合するように、舌部87の左右方向寸法(または幅)と同程度の距離を互いに隔てている。
【0034】
第2連結部9は、ビーム96,96の間に設けられた傾斜壁97を有している。傾斜壁97は、上流側から下流側に向かって長手方向から上側に傾斜して延びている。第1ハウジング6と第2ハウジング7とを結合するときには、傾斜壁97の下流側に嵌合爪87aが嵌合(スナップフィット)する。このように、傾斜壁97は、嵌合爪87aを受ける爪受け部として機能する。
【0035】
ビーム96,96の上流側端部には、ビーム96,96の上側部分のみが上流側に突出し、左右一対のアーム98,98を構成している。アーム98,98は、第1ハウジング6と第2ハウジング7とを結合したときに、横板86と舌部87により形成される隅部に挟まれている。このように、横板86と舌部87は、協働して、アーム98,98を受け、第2ハウジング7に対する第1ハウジング6の相対回転を規制するアーム受け部として機能する。さらに、好ましい実施形態では、アーム98,98は、パネル85の下流側の面に当接する長手方向寸法を有している。パネル95は、ビーム96,96を挟んで左右一対に設けられた円形の軸穴99,99を有している。
【0036】
[2-3.流量調節デバイス]
流量調節デバイス3は、基部31と、基部31から延びる突出部32とを有している。基部31の径は突出部32の径よりも大きい。
図10、
図11に示すように、この実施形態では、基部31と突出部32は円柱形状を有している。基部31は、第1流路61と第2流路71との間に位置している。突出部32は、基部31側の基端32aと、基端32aと反対側の先端32bとを有している。突出部32では、先端32bを含む大部分が第1流路61内に位置している。基部31には凹部34が設けられている。突出部32は、第1ハウジング6の本体62の内周面から所定の間隔104を空けて配置されている(
図12を参照)。
【0037】
流量調節デバイス3は、第1ハウジング6の下流側端部63に取り付けられる。基部31は、流量調節デバイス3が第1ハウジング6の下流側端部63に取り付けられたときに、第1ハウジング6の下流側端面を完全に覆う寸法(径)を有している。また、基部31の径は、第1ハウジング6の下流側端部63の径と同程度であることが好ましい。
【0038】
流量調節デバイス3には、基部31および突出部32にわたって延びる貫通孔33が設けられている。貫通孔33は、毛細管として機能しうる程度の内径を有している。フラッシュデバイス1から吐出される薬液の流量は、貫通孔33の径が小さいほど、長さが大きいほど、小さくなる。貫通孔33は中心軸103を有し、突出部32は中心軸103に沿って延びている。流量調節デバイス3において、中心軸103が延びる方向を流量調節デバイス3の軸方向、軸方向に対して直交する面内における任意の方向を流量調節デバイス3の径方向と称する。貫通孔33の中心軸103は、第1流路61の中心軸101(および第2流路71の中心軸102)に沿って延びている。なお、貫通孔33の中心軸103は、第1流路61の中心軸101(および第2流路71の中心軸102)と完全に一直線状に延びている必要はなく、本発明の作用効果を達成することができる程度であればこれらの中心軸101,102,103は互いにずれて(非平行に)配置されていてもよい。
【0039】
貫通孔33は、フラッシュデバイス1において、第1流路61と第2流路71とを流体接続する。貫通孔33は流入口33aと流出口33bを有する。流入口33aは第1ハウジング6に設けられた第1流路61に、流出口33bは第2ハウジング7に設けられた第2流路71に、それぞれ連通している。
【0040】
流量調節デバイス3において、突出部32の外周面には、径方向外側に突出する複数の嵌合突起35が設けられている。嵌合突起35は、第1ハウジング6に設けられた孔部65に嵌合(スナップフィット)しており、これにより流量調節デバイス3が第1ハウジング6に固定されている。複数の孔部65が周方向に等間隔で設けられているときには、複数の嵌合突起35も周方向に等間隔で設けられている。嵌合突起35の数は孔部65の数に等しくてもよい。嵌合突起35は、孔部65に相補的な形状を有し、この実施形態では直方体に近い形状を有している。ただし、嵌合突起35の孔部65への嵌合を容易にするために、嵌合突起35には傾斜面35aが設けられている。
【0041】
流量調節デバイス3において、突出部32の外周面であって複数の嵌合突起35の基端32a側には、複数のスペーサ36が設けられている。スペーサ36は直方体形状を有している。スペーサ36は、突出部32の外周面から第1流路61を画定する内周面に向かって径方向外側に突出している。
【0042】
この実施形態では、2つの孔部65が互いに180度隔てられて左右に設けられていることに対応して、2つのスペーサ36が互いに180度隔てられて左右に設けられている。また、この実施形態では、複数のスペーサ36は、それぞれ、第1流路61を画定する内周面に当接している。複数のスペーサ36は、当該内周面に当接して突っ張る寸法を有していることが好ましい。他の実施形態では、複数のスペーサ36の径方向外側端部と当該内周面との間に所定の間隔が存在していてもよい。
【0043】
[2-4.弾性部材]
図13に示すように、弾性部材4は、筒部41と、筒部41の周囲に設けられたブロック部42とを有している。筒部41は流量調節デバイス3の基部31の周囲に設けられている。筒部41は、その中空部41aに、基部31および第1ハウジング6の下流側端部63を付勢しつつ収容する。これにより、第1流路61と第2流路71との間が封止され、第1流路61は貫通孔33を介してのみ第2流路71に流体的に接続される。基部31の径と第1ハウジング6の下流側端部63の径を互いに同程度の大きさとすることにより、弾性部材4はこれらを好適に収容できる。また、弾性部材4は、上流側では第1連結部8の上下の舌部83,87の間に付勢されつつ挟持され、下流側では第2連結部9の上下のアーム94,98の間に付勢されつつ挟持される。
【0044】
ブロック部42は、軸方向から見て正方形状である。ブロック部42は、第1連結部8の上下の舌部83,87にそれぞれ接する上面42aおよび下面42bと、上面42aおよび下面42bに対して直交する側面42c,42dとを有する。ブロック部42の軸方向中央部には、全周にわたって凸部43が設けられている。凸部43はブロック部42と一体に設けられている。凸部43は、ケーシング2を透明または半透明の材料で作ったときに外部からその位置を見て、弾性部材4が正しい位置に配置されていることを確認するための位置決め用マーカとして機能する。ブロック部42の側面42c,42dは、部分的に、ケーシング2に覆われることなく一対のウイング5,5に対して露出している。
【0045】
弾性部材4は、一対のウイング5,5から力を受けると変形し、流量調節デバイス3の基部31の外周面との間に隙間を形成し、これにより第1流路61と第2流路71とをさらに流体接続するためのバイパス流路105(
図17を参照)を形成する、ように構成されている。
【0046】
[2-5.一対のウイング]
左右一対のウイング5,5は、弾性部材4を押圧して弾性部材4を変形させるための部材である。ウイング5,5は、ユーザが例えば指の腹で摘まむことができる形状を有する。
図15、
図16に最も良く示されているように、ウイング5,5はそれぞれ、板状の本体51と、本体51の下方に設けられて中心軸101に平行に延びる円柱状の軸部52と、本体51と軸部52とを接続する接続部53とを有している。接続部53は、軸方向から見て本体51に対して傾斜して延びている。
【0047】
軸部52は、第1連結部8の軸穴89と第2連結部9の軸穴99に挿入されている。軸部52は、軸穴89,99の径よりも少し小さい径を有する。軸部52と軸穴89により、ヒンジ機構が形成される。これにより、一対のウイング5,5は、それぞれ、軸部52の周りに回転できるように第1ハウジング6および第2ハウジング7に支持されている。他の実施形態では、第1連結部8と第2連結部9にそれぞれ凸部を設け、凹部が設けられた軸部材にその凸部を嵌合させることにより、ヒンジ機構を構成してもよい。
【0048】
本体51の内側の面には押圧部54が設けられている。押圧部54は、一対のウイング5,5を軸部52,52の周りに弾性部材4に向けて内側に回転させたときに、弾性部材4のブロック部42の側面42c,42dを押圧する突起である。この実施形態では、押圧部54はブロック部42の側面42c,42dの上部を押圧する。本体51の外側の面には、軸方向に沿って延びる突起である摘み部55が設けられ、これによりユーザが一対のウイング5,5を操作しやすいようにしている。
【0049】
図16、
図17に示すように、ユーザが一対のウイング5,5を摘まんで弾性部材4に向けて内側に回転させると、弾性部材4の側面42c,42dの上部が押圧される。そして、弾性部材4の上面42aは、上に凸の曲面を描くように変形する。これにより、第1流路61から上側のスロット溝64、そして第2流路71へつながる薬液のバイパス流路105が形成され、より多くの薬液が通過する。これにより、フラッシュデバイス1は、より多くの薬液を吐出して、急速にフラッシングできる。
【0050】
[2-6.フラッシュデバイスの組付け]
図3を参照して、フラッシュデバイス1の組付け方法を説明する。まず、流量調節デバイス3の嵌合突起35を第1ハウジング6の孔部65に嵌合(スナップフィット)させ、流量調節デバイス3を第1ハウジング6に固定する。これにより、流量調節デバイス3の貫通孔33の中心軸103が第1流路61の中心軸101に沿って延びるように、流量調節デバイス3が径方向および軸方向に位置決めされる。この実施形態では、嵌合突起35を孔部65に嵌合させると、複数のスペーサ36が、それぞれ第1流路61を画定する内周面に当接する。これにより、流量調節デバイス3はより確実に第1ハウジング6に固定され、流量調節デバイス3はより高い精度で径方向および軸方向に位置決めされる。流量調節デバイス3を第1ハウジング6に固定すると、第1流路61の流出口61bは流量調節デバイス3の基部31に覆われる。
【0051】
次に、弾性部材4の筒部41の中空部41a内に、流量調節デバイス3の基部31と第1ハウジング6の下流側端部63とを挿入する。弾性部材4は、上流側で第1連結部8の上下の舌部83,87の間に挟持され、下流側で第2連結部9の上下のアーム94,98の間に挟持される。これにより、流量調節デバイス3はより確実に第1ハウジング6に固定され、流量調節デバイス3はより高い精度で径方向および軸方向に位置決めされる。このとき、弾性部材4のブロック部42に設けられた凸部43の位置を外側から見て、弾性部材4が正しい位置(この実施形態では、流量調節デバイス3の基部31の位置)に配置されていることが確認される。
【0052】
次に、第1ハウジング6と第2ハウジング7とを結合させる。具体的には、パネル85の軸穴88,88およびパネル95の軸穴99,99に軸部52,52を挿入した状態で、ブリッジ93の下流側に嵌合爪83aを嵌合(スナップフィット)させ、これにより第1連結部8のブリッジ受け部84が第2連結部9のブリッジ93に嵌合する。このようにして、第1ハウジング6と第2ハウジング7とが結合され、第2流路71の中心軸102が第1流路61の中心軸101に沿って延びるように、第2ハウジング7は第1ハウジング6に対して径方向および軸方向に位置決めされる。
【0053】
第1ハウジング6と第2ハウジング7とが結合すると、第2連結部9の上側のビーム92,92は第1連結部8の上側の舌部83を挟んで係合し、第2連結部9の下側のビーム96,96は第1連結部8の下側の舌部87を挟んで係合する。これにより、第2ハウジング7は第1ハウジング6に対して径方向にさらに位置決めされる。
【0054】
第1ハウジング6と第2ハウジング7とが結合すると、さらに、第2連結部9のアーム94,94が、第1連結部8の横板82bのT字の隅部に挟まれ、第2連結部9の下側のアーム98,98が、第1連結部8の横板86と舌部87により形成される隅部に挟まれる。これにより、ケーシング2を撓ませたり捻ったりするような力が作用したとしても、第2ハウジング7に対する第1ハウジング6の相対回転は、上側では横板82bにより、下側では横板86および舌部87により、それぞれ規制されるので、第2ハウジング7は第1ハウジング6に対してより位置ずれしにくくなる。
【0055】
好ましい実施形態では、第1ハウジング6と第2ハウジング7とが結合すると、第2連結部9のアーム94,94が、プレート82の縦板82aの下流側の面に当接し、第2連結部9の下側のアーム98,98が、パネル85の下流側の面に当接する。これにより、第2ハウジング7は第1ハウジング6に対して軸方向にさらに位置決めされる。
【0056】
ここで、流量調節デバイス3の貫通孔33の中心軸103が第1ハウジング6の第1流路61の中心軸101および第2ハウジング7の第2流路71の中心軸102に対してより一直線状に延びていることにより、流量調節デバイス3から吐出される薬液の流量を、規定量により近づけることができる。
【0057】
上述の実施形態に係るフラッシュデバイス1では、流量調節デバイス3の中心軸103が第1流路61の中心軸101に沿って延びるように流量調節デバイス3を位置決めすることができる。また、第2流路71の中心軸102が第1流路61の中心軸101に沿って延びるように、第2ハウジング7を第1ハウジング6に対して位置決めすることができる。このようにして、規定量に近い流量の薬液を吐出することが可能なフラッシュデバイス1を得ることができる。
【0058】
また、上述の実施形態に係るフラッシュデバイス1では、流量調節デバイス3は接着や溶着による接合部を形成することなく機械的な接合部(連結機構)のみを介して第1ハウジング6に固定されている。これは、第2ハウジング7の第1ハウジング6への固定においても同様である。このようにして、上述の実施形態では、フラッシュデバイス1の組み付けをより簡単に行うことができる。ただし、他の実施形態では、これらの機械的な接合部に加えて接着や溶着による接合部が設けられていてもよい。
【0059】
(第2実施形態)
図18は、本発明の第2実施形態に係るフラッシュデバイスが設けられたイリゲーションラインを示す図である。
図19は、弾性部材の他の例を示す斜視図である。第2実施形態に係るフラッシュデバイスは、ブロック部42を有する弾性部材4の代わりに円筒形状の弾性部材4aを採用している。その他の構成は第1実施形態に係るフラッシュデバイスと同じであるため、重複説明を省く。
【0060】
図19に示すように、弾性部材4aは、中空部41aを備えた筒部41で構成され、例えば、シリコーンなどのエラストマー材料で製作される。
図20、
図21に示すように、弾性部材4aは、流量調節デバイス3の基部31の周囲に設けられ、その中空部41aに、基部31および第1ハウジング6の下流側端部63を付勢しつつ収容する。これにより、第1流路61と第2流路71との間が封止され、第1流路61は貫通孔33を介してのみ第2流路71に流体的に接続される。基部31の径と第1ハウジング6の下流側端部63の径を互いに同程度の大きさとすることにより、弾性部材4aはこれらを好適に収容できる。
【0061】
弾性部材4aの動作に関して、
図22、
図23に示すように、ユーザが一対のウイング5,5を摘まんで弾性部材4aに向けて内側に回転させると、弾性部材4aの側面が押圧され、弾性部材4aの上部は上に凸の曲面を描くように変形し、弾性部材4aの内周面と流量調節デバイス3の基部31の外周面との間に隙間が生じる。これにより、第1流路61から上側のスロット溝64、そして第2流路71へつながる薬液のバイパス流路105が形成され、より多くの薬液が通過する。これにより、フラッシュデバイス1は、より多くの薬液を吐出して、急速にフラッシングできる。
【0062】
フラッシュデバイスの組付けは、第1実施形態と同様な手順が採用できる。
【0063】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の内容に限定されると理解すべきではない。また、上述の実施形態に記載された特徴を自由に組み合わせることにより、他の実施形態が構成されてよい。また、上述の実施形態には、種々の改良、設計上の変更および削除が加えられてよい。
【0064】
例えば、第1連結部8に相当する構成を第2ハウジング7に設け、第2連結部9に相当する構成を第1ハウジング6に設けた場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 フラッシュデバイス
2 ケーシング
3 流量調節デバイス
31 基部
32 突出部
32a (突出部)の基端
32b (突出部)の先端
33 貫通孔
35 嵌合突起
36 スペーサ
4,4a 弾性部材
41 筒部
42 ブロック部
43 凸部
5 ウイング
52 軸部
54 押圧部
6 第1ハウジング
61 第1流路
62 (第1ハウジングの)本体
63 (第1ハウジングの)下流側端部
65 孔部
7 第2ハウジング
71 第2流路
72 (第2ハウジングの)本体
73 (第2ハウジングの)上流側端部
8 第1連結部
9 第2連結部
10 イリゲーションライン
12 圧力トランスデューサ
101 (第1ハウジングの)中心軸
102 (第2ハウジングの)中心軸
103 (流量調節デバイスの)中心軸
104 突出部と第1ハウジングの内周面との間隔
105 バイパス流路