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  • 特許-シート部材およびサッシの施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】シート部材およびサッシの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/62 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
E06B1/62 A
E06B1/62 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020014768
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021121708
(43)【公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】湯 正明
(72)【発明者】
【氏名】東 忠雄
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-199901(JP,A)
【文献】特開2001-107647(JP,A)
【文献】実開昭57-145075(JP,U)
【文献】特開2009-275373(JP,A)
【文献】特開2000-240356(JP,A)
【文献】特開平3-59285(JP,A)
【文献】特開2002-89136(JP,A)
【文献】特開2003-166379(JP,A)
【文献】特開2018-31184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート部材であって、
建造物の躯体に設けられた開口に配置されたサッシ枠のコーナー部から前記開口の一方側に突出する突出部を受け入れ可能な形状を有するとともに、受け入れた前記突出部に貼付可能な位置に設けられた粘着層を有する受入部と、
前記受入部から、前記サッシ枠の外側に向かって延びるとともに、前記サッシ枠に対して摺動可能な摺動面を有する第1の延伸部と、を有している、シート部材。
【請求項2】
前記受入部は、正面から見てL字状に延びるとともに、前記突出部を両側から挟むことが可能な谷折り形状を有し、
前記粘着層は、谷折り形状の互いに対向する両側の面に設けられている、請求項1に記載のシート部材。
【請求項3】
前記シート部材は、前記受入部から前記サッシ枠の内側に向かって延びる第2の延伸部をさらに有している、請求項1または請求項2に記載のシート部材。
【請求項4】
サッシの施工方法であって、
開口の設けられた躯体にサッシ枠を有するサッシを取り付ける取付工程と、
前記躯体と前記サッシ枠との隙間を複数のシート部材によって前記開口の一方側から覆う被覆工程と、
前記被覆工程に先立ち、前記シート部材のうち、前記サッシ枠のコーナー部に適用する第1のシート部材として、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシート部材を準備する準備工程と、を有し、
前記被覆工程は、前記サッシ枠のコーナー部に沿って、前記サッシ枠から前記開口の一方側に突出する突出部を前記第1のシート部材の前記受入部に挿入して前記突出部に前記受入部を貼り付けるとともに前記第1の延伸部によって前記躯体と前記サッシ枠との隙間を覆う第1の工程と、第2のシート部材によって前記躯体と前記サッシ枠の前記コーナー部以外の部分の隙間を覆う第2の工程と、を有するサッシの施工方法。
【請求項5】
前記被覆工程において、前記第1の延伸部を、前記第2のシート部材によって前記躯体に固定する、請求項4に記載のサッシの施工方法。
【請求項6】
前記被覆工程の後、前記開口の一方側から前記第1の延伸部を押し付けるように断熱材を前記躯体に取り付ける断熱工程を有する、請求項4または請求項5に記載のサッシの施工方法。
【請求項7】
前記準備工程において、前記第1のシート部材として、前記受入部から前記サッシ枠の内側に向かって延びる第2の延伸部を有するものを準備し、
前記サッシの施工方法は、前記被覆工程の後、前記第2の延伸部を前記サッシ枠との間で挟み込むように額縁を前記サッシ枠に取り付ける装飾工程を有する、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載のサッシの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート部材およびサッシの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの住宅用建造物において、躯体の外壁部分に設けられた開口にサッシが嵌め込まれている。
【0003】
このような建造物では、室内外の気密を図るため、躯体とサッシとの隙間を塞ぐ必要がある。
【0004】
躯体とサッシとの間の気密性を図ることができる建造物として、例えば特許文献1には、サッシ枠および躯体に跨がって防水シートが設けられている建造物が開示されている。具体的には、躯体の開口の一方側に突出する突出部が設けられているサッシ枠(サッシ取付片)と躯体に跨がって防水シートを設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-240356号公報(特に図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
外壁部分にサッシを備える建造物では、気密性を図るため、躯体とサッシとの隙間を防水シートの外壁と平行な面で隙間なく覆うことが好ましい。
【0007】
しかし、特許文献1に開示された建造物のようにサッシ枠に突出部が設けられている場合、突出部に防水シートを密着させるために突出部に面する部分の形状を変更すると、躯体とサッシ枠との隙間を覆う部分の形状も変更されるため、防水シートの外壁に平行な面を維持することが困難である。そのため、サッシ枠と防水シートとの間に隙間が生じやすく、躯体とサッシ枠との隙間を塞ぐのが困難である。
【0008】
特に、サッシ枠のコーナー部では、突出部が水平に延びる部分と鉛直に延びる部分とを有しており、これらに沿って突出部に面する部分の形状を変更すると、躯体とサッシ枠との隙間を覆う部分の形状も変更されるため、より防水シートの外壁に平行な面を維持することが困難である。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、突出部を有するサッシ枠のコーナー部分においてサッシ枠と躯体との間の気密性を容易に図ることが可能なシート部材、およびこれを用いたサッシの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、種々検討した結果、上記目的は、以下の発明により達成されることを見出した。
【0011】
本発明の一局面に係るシート部材は、建造物の躯体に設けられた開口に配置されたサッシ枠のコーナー部から前記開口の一方側に突出する突出部を受け入れ可能な形状を有するとともに、受け入れた前記突出部に貼付可能な位置に設けられた粘着層を有する受入部と、前記受入部から、前記サッシ枠の外側に向かって延びるとともに、前記サッシ枠に対して摺動可能な摺動面を有する第1の延伸部と、を有している。
【0012】
上記のシート部材では、受入部があらかじめサッシ枠の突出部を受け入れ可能な形状に形成されており、受入部が突出部を受け入れるためのシート部材の形状変更が不要となり、受入部が突出部を受け入れることで第1の延伸部の形状に与える影響を抑制することができる。そのため、受入部が突出部を受け入れた状態で粘着層によって受入部を突出部に貼り付けた状態でサッシ枠と躯体との隙間を確実に覆うことができる。また、第1の延伸部は、摺動面を有するため、受入部によって突出部を受け入れる際に第1の延伸部がサッシ枠や躯体に張り付かず、第1の延伸部をサッシ枠と躯体の所定の位置に容易に配置することができる。
【0013】
以上のことから、上記のシート部材によれば、突出部を有するサッシ枠と躯体との間の気密性を容易に図ることが可能である。
【0014】
上記のシート部材において、前記受入部は、正面から見てL字状に延びるとともに、前記突出部を両側から挟むことが可能な谷折り形状を有し、前記粘着層は、谷折り形状の互いに対向する両側の面に設けられていてもよい。
【0015】
この態様では、枠が直交するサッシ枠のコーナー部において、受入部によって突出部を確実に受け入れるとともに、受入部を突出部の両側から粘着層によって確実に固定することができる。
【0016】
上記のシート部材は、前記受入部から前記サッシ枠の内側に向かって延びる第2の延伸部をさらに有していてもよい。
【0017】
この態様では、受入部が突出部を受け入れるためのシート部材の形状変更が不要となり、受入部が突出部を受け入れることで第2の延伸部の形状に影響を与える影響を抑制することができる。そのため、受入部が突出部を受け入れた状態で粘着層によって受入部を突出部に貼り付けた状態で、第2の延伸部の変形を抑制することができ、第2の延伸部をサッシ枠に確実に密着させることができる。これにより、サッシ枠と躯体との間の気密性を向上させることが可能である。
【0018】
本発明の他の一局面に係るサッシの施工方法は、開口の設けられた躯体にサッシ枠を有するサッシを取り付ける取付工程と、前記躯体と前記サッシ枠との隙間を複数のシート部材によって前記開口の一方側から覆う被覆工程と、前記被覆工程に先立ち、前記シート部材のうち、前記サッシ枠のコーナー部に適用する第1のシート部材として、上記のシート部材を準備する準備工程と、を有し、前記被覆工程は、前記サッシ枠のコーナー部に沿って、前記サッシ枠から前記開口の一方側に突出する突出部を前記第1のシート部材の前記受入部に挿入して前記突出部に前記受入部を貼り付けるとともに前記第1の延伸部によって前記躯体と前記サッシ枠との隙間を覆う第1の工程と、第2のシート部材によって前記躯体と前記サッシ枠の前記コーナー部以外の部分の隙間を覆う第2の工程と、を有する。
【0019】
上記のサッシの施工方法では、第1のシート部材の受入部があらかじめサッシ枠の突出部を受け入れ可能な形状に形成されているため、被覆工程の第1の工程で、サッシ枠のコーナー部の突出部に受入部を貼り付けた際に、受入部が突出部を受け入れるためのシート部材の形状変更が不要となり、受入部が突出部を受け入れることで第1の延伸部の形状に与える影響を抑制することができる。そのため、受入部が突出部を受け入れた状態で粘着層によって受入部を突出部に貼り付けた状態でサッシ枠と躯体との隙間を確実に覆うことができる。また、第1の延伸部は摺動面を有するため、受入部によって突出部を受け入れる際に第1の延伸部がサッシ枠および躯体に貼り付かず、第1の延伸部をサッシ枠と躯体の所定の位置に容易に配置することができ、第1の延伸部でサッシ枠と躯体との隙間を覆うことができる。さらに、被覆工程の第2の工程で、躯体とサッシ枠のコーナー部以外の部分の隙間を覆うことができる。
【0020】
そのため、上記のサッシの施工方法によれば、突出部を有するサッシ枠と躯体との間の気密性を容易に図ることが可能である。
【0021】
前記被覆工程において、前記第1の延伸部を、前記第2のシート部材によって前記躯体に固定してもよい。
【0022】
この態様では、第2のシート部材を、躯体とサッシ枠との隙間を覆うだけでなく、第1の延伸部を固定するためにも使用する。これにより、コーナー部以外の部分で躯体とサッシ枠との隙間を覆う処理との一連の流れで効率よく第1の延伸部を躯体に固定することができる。
【0023】
上記のサッシの施工方法は、前記被覆工程の後、前記開口の一方側から前記第1の延伸部を押し付けるように断熱材を前記躯体に取り付ける断熱工程を有してもよい。
【0024】
この態様では、断熱材によってサッシ枠の外側における断熱性を向上させることができる。また、断熱材によって第1の延伸部を躯体に密着させることができ、突出部を有するサッシ枠と躯体との間の気密性をより容易に図ることが可能である。
【0025】
前記準備工程において、前記第1のシート部材として、前記受入部から前記サッシ枠の内側に向かって延びる第2の延伸部を有するものを準備し、前記サッシの施工方法は、前記被覆工程の後、前記第2の延伸部を前記サッシ枠との間で挟み込むように額縁を前記サッシ枠に取り付ける装飾工程を有してもよい。
【0026】
この態様では、サッシ枠の突出部よりも内側の部分を覆うための第2の延伸部を額縁とサッシ枠との間で挟み込むことで、特別の処理を行わなくても第2の延伸部をサッシ枠に密着させることができるため、突出部を有するサッシ枠と躯体との間の気密性をより容易に図ることが可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、突出部を有するサッシ枠と躯体との間の気密性を容易に図ることが可能なシート部材およびサッシの施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るシート部材を使用した建造物のサッシおよびその周辺部分の横断面図である。
図2図2は、図1のII-II線での断面図である。
図3図3(a)は、本発明の一実施形態に係る第1のシート部材の左側面図であり、図3(b)は正面図、図3(c)は底面図、図3(d)は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態に係るシート部材およびこれを備える建造物について図面に基づいて説明する。
【0030】
(建造物の構成)
図1は、本実施形態に係るシート部材を使用した建造物のサッシおよびその周辺部分の横断面図であり、図2は、図1のII-II線での断面図である。図3(a)は、本実施形態に係る第1のシート部材の左側面図であり、図3(b)は正面図、図3(c)は底面図、図3(d)は右側面図である。
【0031】
本実施形態に係る建造物1は、軸組構造の躯体2と、躯体2に設けられた開口に配置されたサッシ4と、躯体2の室外側に設けられた外壁パネル5と、外壁パネル5との間で躯体2を挟むように設けられた内装部材6と、内装部材6を躯体2に固定する固定部材1aと、躯体2とサッシ4とを接続する接続部材7と、サッシ4の室内側の周囲に設けられた額縁8と、サッシ4の室外側の下部に室外方向に突出するように設けられた水切り部材9と、躯体2とサッシ4との隙間を覆う第1のシート部材10(シート部材)および第2のシート部材19と、を備えている。接続部材7は、躯体2からサッシ4側に延びてサッシ4に取り付けられる部分を有している。具体的には、躯体2から水平に延びる部分を有する2つの第1の接続部材71と、躯体2の上部から下方に延びる部分を有する第2の接続部材72と、躯体2の下部から上方に延びる部分を有する第3の接続部材73と、を有している。
【0032】
躯体2は、図1に示すように水平方向に間隔を空けて配置された2本の柱21と、図2に示すように鉛直方向に間隔を空けて配置された上胴縁22および下胴縁23と、を備える。躯体2の複数の柱21と上胴縁22および下胴縁23に囲まれた部分には開口が設けられており、開口にはサッシ4が配置されている。
【0033】
サッシ4は、サッシ枠40と、サッシ枠40に対してそれぞれ水平方向に摺動可能に嵌め込まれた内障子45、外障子46および網戸47と、を備えている。サッシ枠40は、鉛直方向に延び、水平方向に間隔を空けて平行に配置された第1の縦枠41および第2の縦枠42と、第1の縦枠41および第2の縦枠42の上端同士を接続する上枠43と、第1の縦枠41および第2の縦枠42の下端同士を接続する下枠44と、を有している。上枠43および下枠44は、第1の縦枠41および第2の縦枠42に対して直交する方向に延びている。
【0034】
第1の縦枠41および第2の縦枠42は、それぞれ柱21に対して隙間を空けて配置されており、第1の縦枠41および第2の縦枠42には、それぞれ柱21から延びる第1の接続部材71が取り付けられている。上枠43は、上胴縁22に対して隙間を空けて配置されており、上枠43には、上胴縁22から延びる第2の接続部材72が取付れられている。下枠44は、下胴縁23に対して隙間を空けて配置されており、下枠44には、下胴縁23から延びる第3の接続部材73が取り付けられている。
【0035】
第1の縦枠41、第2の縦枠42、上枠43および下枠44は、それぞれ躯体2の開口の室内側に向けて突出する突出部41a、突出部42a、突出部43aまたは突出部44aを有している。以下では、突出部41a、突出部42a、突出部43aおよび突出部44aを総称して突出部40aともいう。サッシ枠40の4つのコーナー部では、それぞれ突出部41aと突出部43a、突出部41aと突出部44a、突出部42aと突出部43a、および突出部42aと突出部44aが、接続している。
【0036】
建造物1は、水平方向に並んで設けられた複数の外壁パネル5および複数の内装部材6を有している。外壁パネル5および内装部材6は、いずれも躯体2の開口以外の領域に配置され、躯体2に取り付けられている。図2では、内装部材6の記載を省略している。
【0037】
図1に示すように、内装部材6は、内装パネル61と、内装パネル61の外側に設けられた枠体62と、枠体62の内部に充填された第1の断熱材63と、第1の断熱材63の外側に設けられた第2の断熱材64と、第2の断熱材64の外側に設けられた第3の断熱材65と、枠体62の外側に設けられた第4の断熱材67と、を有している。第1の断熱材63および第2の断熱材64は、成型されたポリウレタンフォーム等からなる断熱材であり、第3の断熱材65および第4の断熱材67は、フィルムに包まれたグラスウール等からなり、第1の断熱材63および第2の断熱材64に比べて軟質の断熱材である。また、第1の断熱材63、第2の断熱材64、第3の断熱材65および第4の断熱材67は、いずれもサッシ枠40および躯体2に比べて軟質である。
【0038】
図3(a)~図3(d)に示すように、第1のシート部材10は、サッシ枠40のコーナー部から突出する突出部40aを受け入れ可能な形状を有する受入部11を有している。また、受入部11は、受け入れた突出部40aに貼付可能な位置に設けられた粘着層11aを有している。また、第1のシート部材10は、受入部11からサッシ枠40の外側に向かって延びる第1の延伸部12と、受入部11からサッシ枠40の内側に向かって延びる第2の延伸部13と、を有している。第1の延伸部12および第2の延伸部13は、それぞれ躯体2側を向く面に、サッシ枠40に対して摺動可能な摺動面12aまたは摺動面13aを有している。
【0039】
本実施形態に係る第1のシート部材10の受入部11は、図3(b)に示すように、正面から見てL字状に延びるとともに、突出部40aを両側から挟むことが可能な谷折り形状を有している。つまり、受入部11は、第1の延伸部12および第2の延伸部13の位置する面に対して躯体2と反対側に突出するとともに、躯体2側に開く溝を有している。また、受入部11の突出形状は、正面視で突出部40aと対応する形状を有している。より具体的には、受入部11は、一方向に延びる第1の受入部11bと、第1の受入部11bの一方の端部から第1の受入部11bに直交する方向に延びる第2の受入部11cと、を有している。また、粘着層11aは、受入部11の谷折り形状の互いに対向する両側の面に設けられている。
【0040】
図3(b)には、サッシ枠40のコーナー部のうち、第2の縦枠42と上枠43とが接続される部分において、受入部11が突出部42aおよび突出部43aを受け入れる場合の第1のシート部材10の姿勢を示している。その他のコーナー部では、受入部11で突出部40aを受け入れられるように、第1のシート部材10の姿勢を変更する。
【0041】
第1のシート部材10は、第1の延伸部12を補強するテープ14と、第1の受入部11bと第2の受入部11cの接続部において、第1の延伸部12と受入部11との接続部を補強する第1のパッチ15と、第1の受入部11bと第2の受入部11cの接続部において受入部11の谷折り形状部を補強する第2のパッチ16と、第1の受入部11bと第2の受入部11cの接続部において第2の延伸部13と受入部11との接続部を補強する第3のパッチ17と、を有している。テープ14、第1のパッチ15、第2のパッチ16および第3のパッチ17は、いずれも受入部11が突出する側から各接続部に貼り付けられている。
【0042】
図1および図2に示すように、第1のシート部材10の受入部11は、サッシ枠40のコーナー部において、突出部40aを受け入れた状態で粘着層11aによって突出部40aに貼り付けられている。また、第1のシート部材10の第1の延伸部12は、躯体2の開口の室内側から、躯体2とサッシ枠40との隙間を覆うように設けられている。第1の延伸部12は、図1に示すように、内装部材6の第4の断熱材67によって、躯体2に押し付けられている。また、第2の延伸部13は、図1および図2に示すように、サッシ枠40と額縁8との間で挟まれている。
【0043】
また、サッシ枠40の隣接する2つのコーナー部の間の部分では、第2のシート部材19が躯体2の開口の室内側から、躯体2とサッシ枠40との隙間を覆うように設けられている。また、第2のシート部材19は、図3(a)~図3(d)に示すように、第2のシート部材19の端部が第1のシート部材10に貼り付けられ、第1のシート部材10の第1の延伸部12を躯体2に固定している。第2のシート部材19には、一方の面に粘着層が設けられた平面状のシートを用いることができる。この場合、サッシ枠40の隣接する2つのコーナー部の間の部分で第1の縦枠41、第2の縦枠42、上枠43および下枠44のそれぞれに対して、突出部41a、突出部42a、突出部43aまたは突出部44aに沿うように第2のシート部材19を貼り付ける。
【0044】
(サッシの施工方法)
図1および図2を参照して、本実施形態に係るサッシの施工方法について説明する。
【0045】
本実施形態に係るサッシの施工方法は、開口の設けられた躯体2にサッシ枠40を有するサッシ4を取り付ける取付工程と、躯体2とサッシ枠40との隙間を第1のシート部材10および第2のシート部材19によって開口の室内側から覆う被覆工程と、被覆工程に先立ち、サッシ枠40のコーナー部に適用する第1のシート部材10を準備する準備工程と、を有する。準備工程は、被覆工程の前であれば、取付工程の前に行ってもよいし、取付工程の後で行ってもよい。
【0046】
以下では、開口の設けられた躯体2が所定の位置に配置されている状態からのサッシの施工方法について説明する。
【0047】
取付工程では、サッシ枠40の第1の縦枠41および第2の縦枠42を、それぞれ第1の接続部材71を介し、躯体2の柱21に接続する。また、上枠43を、第2の接続部材72を介し、上胴縁22に接続し、下枠44を、第3の接続部材73を介し、下胴縁23に接続する。これにより、第1の縦枠41および第2の縦枠42と柱21との間、上枠43と上胴縁22との間、下枠44と下胴縁23との間にそれぞれ隙間が形成される。
【0048】
被覆工程は、第1の工程と第2の工程とを有する。第1の工程では、サッシ枠40のコーナー部に沿って、サッシ枠40から開口の室内側に突出する突出部40aを第1のシート部材10の受入部11に挿入して突出部40aに受入部11を貼り付けるとともに第1の延伸部12によって躯体2とサッシ枠40との隙間を覆う。
【0049】
第2の工程では、第2のシート部材19によって躯体2とサッシ枠40のコーナー部以外の部分の隙間を覆うとともに、第2のシート部材19によって、第1の工程でサッシ枠40のコーナー部に設けた第1のシート部材10の第1の延伸部12を躯体2に固定する。
【0050】
本実施形態に係るサッシの施工方法は、被覆工程の後、内装部材6を設ける断熱工程および額縁8を設ける装飾工程を有する。
【0051】
断熱工程では、躯体2の開口の室内側から第1の延伸部12を押し付けるように内装部材6(断熱材)を躯体2に取り付ける。本実施形態の断熱工程では、まず、内装部材6を構成する部材のうち、枠体62と第1の断熱材63と第2の断熱材64と第3の断熱材65とをピンや接着材を使用して一体化する。そして、一体化されたこれらの部材を第3の断熱材65が外側に向く状態とし、枠体62と柱21とで第4の断熱材67を挟み込むように固定部材1aによって躯体2の柱21に固定する。このとき、第4の断熱材67によって第1のシート部材10の第1の延伸部12が柱21に押さえ付けられる。その後、室内側から内装パネル61を枠体62に固定し、断熱工程を完了する。第4の断熱材67は、躯体2に比べて軟質であるため、第1のシート部材10の第1の延伸部12を柱21に密着させることができる。
【0052】
装飾工程では、第1のシート部材10の第2の延伸部13を、サッシ枠40との間で挟み込むように額縁8をサッシ枠40に取り付ける。被覆工程および装飾工程は、どちらを先に行ってもよい。
【0053】
(作用、効果)
本実施形態に係る第1のシート部材10では、受入部11があらかじめサッシ枠40の突出部40aを受け入れ可能な形状に形成されており、受入部11が突出部40aを受け入れても第1の延伸部12の形状に与える影響を抑制することができる。そのため、受入部11が突出部40aを受け入れた状態で粘着層11aによって受入部11を突出部40aに貼り付けても、第1の延伸部12の変形を抑制することができ、サッシ枠40と躯体2との隙間を確実に覆うことができる。また、第1の延伸部12は、摺動面12aを有するため、受入部11によって突出部40aを受け入れる際に第1の延伸部12がサッシ枠40や躯体2に張り付かず、第1の延伸部12をサッシ枠40と躯体2の所定の位置に容易に配置することができる。
【0054】
以上のことから、第1のシート部材10によれば、突出部40aを有するサッシ枠40と躯体2との間の気密性を容易に図ることが可能である。
【0055】
第1のシート部材10において、受入部11は、正面から見てL字状に延びるとともに、突出部40aを両側から挟むことが可能な谷折り形状を有し、粘着層11aは、谷折り形状の互いに対向する両側の面に設けられている。そのため、第1の縦枠41および第2の縦枠42に対して上枠43および下枠44が直交するサッシ枠40のコーナー部において、受入部11によって突出部40aを確実に受け入れるとともに、受入部11を突出部40aの両側から粘着層11aによって確実に固定することができる。
【0056】
第1のシート部材10では、受入部11が突出部40aを受け入れても第2の延伸部13の形状にも影響を与えない。そのため、受入部11が突出部40aを受け入れた状態で粘着層11aによって受入部11を突出部40aに固定しても、第2の延伸部13の変形を抑制することができ、第2の延伸部13をサッシ枠40に確実に密着させることができる。これにより、サッシ枠40と躯体2との間の気密性をより容易に図ることが可能である。
【0057】
本実施形態に係るサッシの施工方法では、第1のシート部材10の受入部11があらかじめサッシ枠40の突出部40aを受け入れ可能な形状に形成されているため、被覆工程の第1の工程で、サッシ枠40のコーナー部の突出部40aに受入部11を貼り付けた際に、第1の延伸部12の変形を抑制することができ、サッシ枠40と躯体2との隙間を確実に覆うことができる。また、第1の延伸部12は摺動面12aを有するため、受入部11によって突出部40aを受け入れる際に第1の延伸部12をサッシ枠40と躯体2の所定の位置に容易に配置することができ、第1の延伸部12でサッシ枠40と躯体2との隙間を覆うことができる。さらに、被覆工程の第2の工程で、第2のシート部材19によって躯体2とサッシ枠40のコーナー部以外の部分の隙間を覆うため、躯体2とサッシ枠40との隙間を全周にわたって覆うことができる。
【0058】
そのため、本実施形態に係るサッシの施工方法によれば、突出部40aを有するサッシ枠40と躯体2との間の気密性を容易に図ることが可能である。
【0059】
本実施形態に係るサッシの施工方法では、被覆工程において、第1の延伸部12を、第2のシート部材19によって躯体2に固定する。この場合、第2のシート部材19を、躯体2とサッシ枠40との隙間を覆うだけでなく、第1の延伸部12を固定するためにも使用する。これにより、コーナー部以外の部分で躯体2とサッシ枠40との隙間を覆う処理との一連の流れで効率よく第1の延伸部12を躯体2に固定することができる。
【0060】
本実施形態に係るサッシの施工方法は、被覆工程の後、躯体2の開口の室内側から第1の延伸部12を押し付けるように内装部材6を躯体2に取り付ける断熱工程を有している。そのため、内装部材6を構成する断熱材によってサッシ枠40の周囲における断熱性を向上させることができる。また、第4の断熱材67によって第1の延伸部12を躯体2に密着させることができ、突出部40aを有するサッシ枠40と躯体2との間の気密性をより容易に図ることが可能である。
【0061】
本実施形態に係るサッシの施工方法では、準備工程において、第2の延伸部13を有する第1のシート部材10を準備し、被覆工程の後、第2の延伸部13をサッシ枠40との間で挟み込むように額縁8をサッシ枠40に取り付ける装飾工程を有している。この場合、第2の延伸部13によってサッシ枠40の突出部40aよりも内側の部分も第1のシート部材10で覆うことができ、第2の延伸部13を額縁8によってサッシ枠40との間で挟み込むことができるため、突出部40aを有するサッシ枠40と躯体2との間の気密性をより容易に図ることが可能である。
【0062】
(変型例)
本実施形態におけるサッシ枠40と躯体2との隙間は、水平方向または鉛直方向に設けられていたが、当該隙間は建造物1の室内側から室外側に向かう方向に設けられているものであってもよい。
【0063】
本実施形態に係る第1のシート部材10は、受入部11がL字状に延びるものを使用したが、受入部11の形状は、サッシ枠40のコーナー部の形状に応じたものとしてもよい。
【0064】
本実施形態に係るサッシの施工方法では、内装部材6を構成する部材のうち、枠体62と第1の断熱材63と第2の断熱材64と第3の断熱材65とをピンや接着材を使用して一体に構成したものを使用したが、これらの部材を個別に躯体2に設けてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 建造物
2 躯体
4 サッシ
6 内装部材(断熱材)
8 額縁
10 第1のシート部材(シート部材)
11 受入部
11a 粘着層
12 第1の延伸部
12a 摺動面
13 第2の延伸部
13a 摺動面
40 サッシ枠
40a 突出部
67 第4の断熱材(断熱材)
図1
図2
図3