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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】除湿機
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20230516BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20230516BHJP
   D06F 58/32 20200101ALI20230516BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
F25B49/02 520H
F25B1/00 303
F25B1/00 383
F25B1/00 361D
F25B1/00 371B
D06F58/32
B01D53/26 100
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020027983
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021131208
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】露木 元
(72)【発明者】
【氏名】柴田 英雄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直毅
(72)【発明者】
【氏名】藤城 直
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-261561(JP,A)
【文献】特開2000-283521(JP,A)
【文献】特開2006-010126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 49/02
F25B 1/00
D06F 58/32
B01D 53/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に設置され、室内空気を前記筐体内に取り込む送風ファンと、
前記筐体内に設置され、圧縮機と凝縮器と減圧装置と蒸発器とを熱媒体回路で接続して熱媒体を循環させた冷凍サイクルにより、前記筐体内に取り込まれた空気の除湿を行う除湿装置と、
前記室内空気の温度に応じた出力を発する室温検出手段と、
前記蒸発器内の前記熱媒体の温度に応じた出力を発する熱媒体温度検出手段と、
前記圧縮機の運転中に前記熱媒体温度検出手段により検出される前記熱媒体の温度と、前記室内空気の温度との差が、閾値より小さい場合には、前記蒸発器内の前記熱媒体の温度を低下させる制御を実行するように構成された制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記熱媒体の温度を低下させる制御として、前記送風ファンの回転数を低下させ
前記送風ファンの回転数を低下させた後、前記熱媒体温度検出手段により検出される前記熱媒体の温度と前記室内空気の温度との差が、前記閾値より大きくなった場合には、前記送風ファンの回転数を低下させた状態で、前記圧縮機の運転を継続して除湿を行う、ように構成されていることを特徴とする除湿機。
【請求項2】
筐体内に設置され、室内空気を前記筐体内に取り込む送風ファンと、
前記筐体内に設置され、圧縮機と凝縮器と減圧装置と蒸発器とを熱媒体回路で接続して熱媒体を循環させた冷凍サイクルにより、前記筐体内に取り込まれた空気の除湿を行う除湿装置と、
前記室内空気の温度に応じた出力を発する室温検出手段と、
前記蒸発器内の前記熱媒体の温度に応じた出力を発する熱媒体温度検出手段と、
前記圧縮機の運転中に前記熱媒体温度検出手段により検出される前記熱媒体の温度と、前記室内空気の温度との差が、閾値より小さい場合には、前記蒸発器内の前記熱媒体の温度を低下させる制御を実行するように構成された制御装置と、
を備え
前記圧縮機は、駆動周波数を変更可能なインバータ圧縮機であり、
前記制御装置は、前記熱媒体の温度を低下させる制御として、前記インバータ圧縮機の駆動周波数を低下させ
前記駆動周波数を低下させた後、前記熱媒体温度検出手段により検出される前記熱媒体の温度と前記室内空気の温度との差が、前記閾値より大きくなった場合には、前記駆動周波数を低下させた状態で、前記圧縮機の運転を継続して除湿を行う、
ように構成されていることを特徴とする除湿機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記圧縮機の運転中、かつ、前記熱媒体の温度を低下させる制御を実行した後、
前記熱媒体の温度と前記室内空気の温度との差が前記閾値より小さい状態が継続した場合には、前記圧縮機を停止するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の除湿機。
【請求項4】
前記除湿機は、衣類乾燥運転を実行する機能を備え、
前記制御装置は、前記圧縮機の運転中、かつ、前記熱媒体の温度を低下させる制御を実行した後、
前記熱媒体の温度と前記室内空気の温度との差が前記閾値より小さい状態が継続した場合には、前記圧縮機の運転を停止して、前記送風ファンの回転を継続するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の除湿機。
【請求項5】
筐体内に設置され、室内空気を前記筐体内に取り込む送風ファンと、
前記筐体内に設置され、圧縮機と凝縮器と減圧装置と蒸発器とを熱媒体回路で接続して熱媒体を循環させた冷凍サイクルにより、前記筐体内に取り込まれた空気の除湿を行う除湿装置と、
前記室内空気の温度に応じた出力を発する室温検出手段と、
前記蒸発器内の前記熱媒体の温度に応じた出力を発する熱媒体温度検出手段と、
前記圧縮機の運転中に前記熱媒体温度検出手段により検出される前記熱媒体の温度と、前記室内空気の温度との差が、閾値より小さい場合には、前記蒸発器内の前記熱媒体の温度を低下させる制御を実行するように構成された制御装置と、
を備える除湿機であって、
前記除湿機は、衣類乾燥運転を実行する機能を備え、
前記制御装置は、前記圧縮機の運転中、かつ、前記熱媒体の温度を低下させる制御を実行した後、
前記熱媒体の温度と前記室内空気の温度との差が前記閾値より小さい状態が継続した場合には、前記圧縮機の運転を停止して、前記送風ファンの回転を継続するように構成されている、
ことを特徴とする除湿機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、除湿機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、除湿機等の冷凍サイクル装置の保護制御装置が開示されている。この保護制御装置では、除湿機の冷凍サイクルの異常の判定に際し、除湿機の周囲の空気温度と、冷却器の表面温度とを検出し、検出された空気温度と表面温度とを比較する。そして比較された両温度の差が所定の温度より小さくなる回数が積算され、積算された回数が基準回数を超えたときに、除湿機の冷凍サイクルは異常と判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-261561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、スローリークのように、冷媒が完全に抜けるのに数年単位での時間を要するほど微量に冷媒がリークする場合がある。このような場合、リーク量が少ないうちは、除湿機により除湿を行うことが可能である場合もある。しかし、特許文献1のような保護制御装置の構成では、空気温度と冷却器の表面温度との温度差にのみによって異常が判定されるため、除湿を十分に行える程度に冷媒が残されている状態であっても、除湿機の運転が停止されてしまうことがある。このため除湿機の製品寿命が必要以上に短くなることがあった。
【0005】
しかし、除湿機の長寿命化のため、冷媒が不足した状態でそのまま運転が継続されるように構成すると、着霜が筐体の外まで成長して水漏れを発生させたり、圧縮機が高温になり発煙をしたりする不具合が発生する虞がある。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、冷凍サイクル内の熱媒体の残量に応じた応急的な運転を行うことができるように改良された除湿機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の除湿機は、筐体内に設置され、室内空気を筐体内に取り込む送風ファンと、筐体内に設置され、圧縮機と凝縮器と減圧装置と蒸発器とを熱媒体回路で接続して熱媒体を循環させた冷凍サイクルにより、筐体内に取り込まれた空気の除湿を行う除湿装置と、室内空気の温度に応じた出力を発する室温検出手段と、蒸発器内の熱媒体の温度に応じた出力を発する熱媒体温度検出手段と、制御装置とを備える。制御装置は、圧縮機の運転中に熱媒体温度検出手段により検出される熱媒体の温度と、室内空気の温度との差である温度差が、閾値より小さい場合には、蒸発器内の熱媒体の温度を低下させる制御を実行するように構成されている。
本開示における除湿機の制御装置は、熱媒体の温度を低下させる制御として、送風ファンの回転数を低下させ、送風ファンの回転数を低下させた後、熱媒体温度検出手段により検出される熱媒体の温度と室内空気の温度との差が、閾値より大きくなった場合には、送風ファンの回転数を低下させた状態で、圧縮機の運転を継続して除湿を行うように構成されたものであってもよい。
あるいは本開示における除湿機の圧縮機は、駆動周波数を変更可能なインバータ圧縮機であっても良い。この場合、制御装置は、熱媒体の温度を低下させる制御として、インバータ圧縮機の駆動周波数を低下させ、駆動周波数を低下させた後、熱媒体温度検出手段により検出される熱媒体の温度と室内空気の温度との差が、閾値より大きくなった場合には、駆動周波数を低下させた状態で、圧縮機の運転を継続して除湿を行うように構成されたものであってもよい。
あるいは本開示における除湿機の衣類乾燥運転を実行する機能を備えるものであってもよい。この場合、制御装置は、圧縮機の運転中、かつ、熱媒体の温度を低下させる制御を実行した後、熱媒体の温度と室内空気の温度との差が閾値より小さい状態が継続した場合には、圧縮機の運転を停止して、送風ファンの回転を継続するように構成されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、除湿機の制御装置は、圧縮機の駆動中の蒸発器内の熱媒体の温度と室内空気の温度との温度差が閾値より小さい場合に、蒸発器内の熱媒体の温度を低下させる温度制御を実行する。ここで、蒸発器内の熱媒体の温度と室内温度との温度差が小さい場合、蒸発器内の熱媒体が不足していることが推測される。このように、熱媒体の不足が推測される場合に、本開示の制御装置は、熱媒体の温度を低下させる応急的な制御を実行する。これにより、熱媒体が不足状態にある場合にも、安全性を確保しつつ除湿機の運転を継続することができ、除湿機の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態1に係る除湿機の断面構成を示す図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る除湿機の冷凍サイクルの回路を模式的に示す図である。
図3】本開示の実施の形態1に係る除湿機の正常時の蒸発器内の熱媒体の温度を模式的に示す図である。
図4】本開示の実施の形態1に係る除湿機の除湿装置内の熱媒体がない場合の、蒸発器内の温度を模式的に示す図である。
図5】本開示の実施の形態1に係る除湿機の除湿装置内の熱媒体が不足している場合の、蒸発器内の熱媒体の温度を模式的に示す図である。
図6】本開示の実施の形態1に係る除湿機の除湿装置内の熱媒体が不足している場合に、送風ファンの回転数を低下させた場合の蒸発器内の熱媒体の温度を模式的に示す図である。
図7】本開示の実施の形態1に係る除湿機の制御装置が実行する制御動作を示すフローチャートである。
図8】本開示の実施の形態1に係る除湿機の除湿装置内の熱媒体が不足している場合に、圧縮機の駆動周波数を低下させた場合の蒸発器内の熱媒体の温度を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る衣類乾燥除湿機の断面図である。衣類乾燥除湿機は、衣類乾燥運転を実行する機能を備えた除湿機であり、以下、単に、除湿機100として説明する。また、説明の簡略化のため、図1の紙面左側を除湿機100の「前方」とし、紙面右側を「後方」として説明する。
【0012】
図1に示されるように、除湿機100は、筐体1と、送風機5と、除湿装置30と、表示操作装置7と、貯水タンク8と、制御装置10と、を備える。筐体1の上部には吐出口4が形成されている。また、筐体1の後面内の上部側の部分には、吸込口9が形成されている。
【0013】
送風機5は、筐体1の中央部に設置されている。送風機5は、例えば、送風ファンとモータとを備える。送風機の回転軸は、筐体1の中央部において除湿機100の前後方向に対し平行な方向、即ち、水平方向に設置されている。
【0014】
除湿装置30は、筐体1内の送風機5の後方側に設けられる。除湿装置30は、蒸発器31と、圧縮機32と、凝縮器33と、減圧装置34とを備える。減圧装置34は、例えば、膨張弁又はキャピラリーチューブ等である。なお、除湿装置30についての詳細は後述する。
【0015】
筐体1内の前方下部には、貯水タンク8が設置されている。貯水タンク8は、除湿機100から取り外すことができる。
【0016】
筐体1の前面内の上方部分には表示操作装置7が設けられている。表示操作装置7は、操作部及び表示部を備える。操作部は、利用者による操作を受け付けるように構成されている。表示部は、除湿機100の動作状態に関する情報及び異常発生等の情報を表示するように構成され、これにより利用者に各情報が報知される。
【0017】
筐体1の片側の側面の下部の位置には、温湿度検出用センサ12が設置されている。温湿度検出用センサ12は、除湿機100が設置された室内空気の温度に応じた出力を発する室温検出手段として機能する。また、蒸発器31の出口付近の鋼管表面には、熱媒体の温度を検出するための管温検出用センサ13(図2参照)が設置されている。管温検出用センサ13は、蒸発器31内の熱媒体の温度に応じた出力を発する熱媒体温度検出手段として機能する。管温検出用センサ13としては、例えば、サーミスタが用いられる。なお、管温検出用センサ13の設置位置はこの位置に限られず、熱媒体が循環する回路内の、熱媒体回路の蒸発器31の出口付近の温度が検出又は推定できるものであれば、他の位置に設置されていてもよい。
【0018】
また、除湿機100は制御装置10を備えている。制御装置10は、筐体1内の前方部分に設置されている。制御装置10は、少なくとも1のマイクロコンピュータとメモリと電源回路とを有している。
【0019】
制御装置10は、温湿度検出用センサ12及び管温検出用センサ13を含む除湿機100が有する各種センサと、表示操作装置7とに有線又は無線で通信可能に接続されている。また、制御装置10は、除湿機100が有する各部材のアクチュエータに電気的に接続されている。例えば、アクチュエータは送風機5や圧縮機32であってもよい。制御装置10は表示操作装置7からの操作内容及び各種センサが検出した湿度及び温度等の情報を取得し、取得された情報に基づいて、除湿機100の送風機5及び除湿装置30等の動作を制御する。
【0020】
より具体的に制御装置10は、送風機5の動作の制御に際し、送風機5のモータに、送風ファンの回転数を制御するための制御信号を出力する。送風機5のモータは制御信号に応じた回転数で回転し、その結果、室内の空気Aは、吸込口9から水平方向に筐体1の内部に吸い込まれる。筐体1に取り込まれた空気Aは、蒸発器31を通過する。蒸発器31を通過した空気Bは、吐出口4から上方に向けて室内へ吐き出される。
【0021】
また、制御装置10は、除湿装置30の動作を制御する。以下、本実施の形態に係る除湿機100の除湿装置30の構成、動作、及び、その制御について、具体的に説明する。
【0022】
図2は、除湿装置30の熱媒体回路を模式的に示す図である。除湿装置30の熱媒体回路は、蒸発器31、圧縮機32、凝縮器33、及び、減圧装置34を、配管35によって環状に接続した回路である。除湿装置30は、この熱媒体回路に熱媒体を循環させて冷凍サイクルの運転を行う。除湿装置30は、冷凍サイクル運転により、筐体1に取り込まれた空気中の水分を除去する。
【0023】
より具体的に、熱媒体回路は、蒸発器31の出口が圧縮機32の入口に、圧縮機32の出口が凝縮器33の入口に、凝縮器33の出口が減圧装置34の入口に、減圧装置34の出口が蒸発器31の入口に、それぞれ配管35によって接続されて、構成されている。
【0024】
熱媒体回路を流れる熱媒体は、蒸発器31から流出すると圧縮機32に流入して、圧縮される。圧縮された熱媒体は、高温高圧の気体状となって、圧縮機32から流出し、凝縮器33に流入する。熱媒体は、凝縮器33で放熱されて高圧の液体状となって凝縮器33から流出し、減圧装置34に流入する。熱媒体は、減圧装置34で減圧されて膨張して低温低圧の気液二相状態となって、減圧装置34の出口から流出し、蒸発器31に流入する。熱媒体は、蒸発器31で吸熱されて低圧の気体状となって、蒸発器31から流出する。
【0025】
送風機5の送風ファンによって、吸込口9から吸い込まれた空気Aは、蒸発器31および凝縮器33を通過する。蒸発器31は、減圧装置34が減圧した熱媒体への吸熱により、通過する空気Aに含まれる水分を除去する。蒸発器31を通過する空気は、除湿された状態となる。送風機5は、除湿された空気Bを室内へ吐き出す。蒸発器31によって空気から除去された水分は、貯水タンク8に貯められる。
【0026】
除湿装置30の動作の制御に際し、圧縮機32の駆動周波数を制御して圧縮機32を駆動させる。圧縮機32の駆動により、上記の冷凍サイクルが駆動して、空気Aの除湿が行われる。
【0027】
また、本実施の形態に係る制御装置10は、熱媒体の温度と、筐体1内に取り込まれる空気の温度から、熱媒体のリークによる異常を検出すると共に、熱媒体のリーク状態を予測して、それに応じた応急的な運転を行う。
【0028】
具体的に、熱媒体のリークとリーク状態の予測のための制御について説明する。リーク及びリーク状態の予測は、熱媒体の温度と筐体1に取り込まれる空気Aの温度とを用いて行うことができる。ここで、温湿度検出用センサ12によって検出される室内空気の温度(以下、「室温」とする)は、筐体1に取り込まれる空気Aの温度である。また、管温検出用センサ13によって検出される温度は、蒸発器31の出口付近の熱媒体回路の内部温度である。従って、本実施の形態の制御では、温湿度検出用センサ12による温度検出値を室温Trとして用い、管温検出用センサ13による検出値を、蒸発器31内の熱媒体の温度Teとして用いることとする。ただし、室内空気の温度及び蒸発器31内の出口側の熱媒体の温度Teを検出又は推定できるものであれば、別の位置に設置された他の温度センサを用いてもよい。
【0029】
図3~5は、蒸発器31内での熱媒体の温度と、室温との関係を模式的に示す図であり、図3は、熱媒体がリークしておらず除湿装置30が正常に機能している場合、図4は、熱媒体がリークしてゼロとなっている場合、図5は、熱媒体がリークして不足している状態を示している。
【0030】
図3に示されるように、除湿装置30が正常に機能している場合には、減圧装置34で断熱膨張して蒸発器31へ流入した熱媒体の温度Teは、室温Trより予め設定された温度差以上低い温度となる。
【0031】
熱媒体がない状態の場合、図4に示されるように、除湿装置30の熱媒体回路内で熱の移動はなされない。従って、蒸発器31での熱媒体の温度Teは室温Trと同等の温度となる。
【0032】
熱媒体が不足した状態の場合、減圧装置32を通過した熱媒体は減圧量が多くなるため、蒸発器31の入り口側の熱媒体温度Teは、図3の場合の入り口側の熱媒体温度Teより低くなる。また、蒸発器31内で熱媒体の吸熱量が多くなる。このため、熱媒体は、蒸発器31内で二層冷媒がガス化して、温度が上昇する。その結果、図5に示されるように、出口付近における蒸発器31の温度Teと室温Trとの差は小さくなっている。
【0033】
以上から、蒸発器31の出口付近の熱媒体の温度Teと室温Trとの差が小さい場合に、熱媒体がリークしている状態にあると予測される。
【0034】
但し、本実施の形態では、制御装置10は、熱媒体温度Teと室温Trとの差が小さい状態が検出された場合にも、直ちにリークによる異常として除湿装置30の運転を停止することはせず、まず、熱媒体の温度を低下させる制御を実行する。温度を低下させる制御としては、送風機5の送風ファンの回転数を下げる制御を実行する。図6は、熱媒体が不足している状態の熱媒体の温度Teと室温Trとを示す図であり、実線aは送風ファンの回転数を維持した場合を示し、実線bは送風ファンの回転数を低下させた場合の熱媒体の温度Teと室温Trとの温度を示している。
【0035】
送風ファンの回転数を低下させることで、取り込まれる空気Aの量が減少する。このため、蒸発器31での熱媒体の吸熱量は低下する。従って、熱媒体が不足している状態で送風ファンの回転数を低下させた場合、図6に示されるように、検出される熱媒体の温度Te_bは、送風ファンの回転数を低下させる前の温度Te_aに比べて低下し、室温Trとの差が大きくなる。この場合、熱媒体の温度Teと室温Trとの温度差が小さい状態は解消される。
【0036】
制御装置10は、送風ファンの回転数の低下により、熱媒体の温度Teと室温Trとの温度差が大きくなった場合には、送風ファンの回転数を低下させた状態で、除湿装置30による除湿運転を行う。送風ファンの回転数を低下させることで、除湿機100に取り込まれる空気Aの量を減少させることができる。従って、蒸発器31の入り口付近での急激な熱媒体の温度低下を防止することができる。これにより、除湿装置30の運転を継続しても、除湿装置30において霜が急激に成長することにより発生する水漏れを防止することができると共に、圧縮機32が異常な高温になることを防止することができる。
【0037】
一方、熱媒体がない場合(又は、殆どない場合)、送風ファンの回転数を低下させたとしても、熱媒体回路内で熱の移動はなされないため、熱媒体の温度Teと室温Trとの差は小さい状態のままとなる。つまり、熱媒体の温度Teと室温Trとの温度差が小さい状態は解消されない。この場合には、熱媒体のリーク量が多いと判断されるため、異常と判定し、除湿装置30の運転を停止させる。
【0038】
上述したように、本実施の形態では、熱媒体の温度Teと室温Trとの温度差を異常判定値とし、これに対するリークの判断の閾値として基準値T1を用いる。基準値T1は、予め設定され、制御装置10に記憶される。具体的な値は、例えば、リークが発生し熱媒体が不足している場合に生じる室温と熱媒体の温度との温度差の範囲を、実験又はシミュレーション等により求め、この温度差の範囲に基づいて適宜設定することができる。
【0039】
図7は、熱媒体のリークによる異常状態の検出のため制御装置10が実行する具体的な制御動作の一例を示すフローチャートである。図7の処理は、圧縮機32が起動された場合に、一定の制御間隔t1ごとに繰り返し実行される。ここでの制御間隔t1は一例として5分である。
【0040】
図7では、まず、ステップS1で、熱媒体の温度Te及び室温Trが検出される。つまり、管温検出用センサ13及び温湿度検出用センサ12による温度検出値がそれぞれ取得される。
【0041】
次にステップS2に進み、室温Trと熱媒体の温度Teとの差である異常判定値(Tr-Te)が基準値T1より小さいか否かが判別される。ステップS2の判別結果が「No」である場合、即ち、異常判定値(Tr-Te)が基準値T1以上であると判別された場合には、熱媒体のリークはないと考えられる。この場合、ステップS10に進み、除湿装置30は正常と判別される。その後、ステップS1に戻る。
【0042】
一方、ステップS2の判別結果が「Yes」である場合、即ち、異常判定値(Tr-Te)が基準値T1より小さいと判別された場合、次に、ステップS3で、異常判定回数N1に1が加算され、インクリメントされる。異常判定回数N1は、異常判定値(Tr-Te)が基準値T1より小さい状態が検出された回数をカウントするカウンタである。異常判定回数N1は、圧縮機32が起動された時点では初期値ゼロとされている。
【0043】
次に、ステップS4では、異常判定回数N1が、基準回数N2以上であるか否かが判別される。ここで基準回数N2は、異常を判定するために設定された判定の閾値であり、予め制御装置10に記憶されている。なお基準回数N2は、例えば、数回、より具体的な値の例として6回としている。
【0044】
ステップS4の判別結果が「Yes」である場合、即ち、異常判定回数N1が基準回数以上であると判別された場合には、ステップS20に進み、除湿装置30に異常があると判定される。その後、ステップS21で、圧縮機32の運転が停止される。次に、ステップS22で、例えば表示操作装置7の表示部に、圧縮機32の運転が停止されたことに対して除湿装置30に異常がある旨を知らせる表示がなされる。これにより、ユーザーに除湿装置30の異常が報知される。その後、ステップS23に進み、除湿装置30の制御動作が終了する。
【0045】
一方、ステップS4の判別結果が「No」である場合、即ち、異常判定回数N1が基準回数N2より小さいと判別された場合は、次に、ステップS30に進む。ステップS30では、送風ファンの回転数が下げられる。その後、ステップS1に戻る。
【0046】
ここで、熱媒体のリーク量が少ない場合、ステップS30の送風ファンの回転数低下により、熱媒体の温度Teは低下する。従って、熱媒体の温度Teと室温Trとの差は大きくなり、次回以降、図7の処理が繰り返し実行されるときには、ステップS3の異常判定値(Tr-Te)が基準値T1より小さい状態が解消されている。その結果、処理は、ステップS10に進み、正常と判定されて圧縮機32の運転が継続される。
【0047】
一方、熱媒体のリーク量が多い場合、ステップS30の送風ファンの回転数を低下させても、熱媒体の温度Teは十分に低下せず、熱媒体の温度Teと室温Trとの差は小さい状態のままとなる。従って、図7の処理では、次回以降も、異常判定値(Tr-Te)が基準値T1より小さい状態が続く。従って、最終的に異常判定回数N1は基準回数N2に達し、異常判定回数N1は基準回数N2を超えて、異常と判定され、圧縮機32の運転が停止されることとなる。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態によれば、熱媒体がリークしている場合にも、熱媒体の残量に応じて、まだ除湿装置30の運転を継続できる状態と、異常と判定して運転を停止すべき状態とに区別され、それぞれに応じた制御が実行される。これにより、微量の熱媒体のリークで直ちに除湿装置30が異常と判定されて、除湿機100が運転できなくなる状態を回避することができる。またこの場合、除湿装置30の運転は、送風ファンの回転数を下げた状態で継続される。従って、除湿装置30において霜が急激に成長することによる水漏れの発生及び圧縮機32が異常な温度上昇を抑制することができる。また、送風ファンの回転数低下によっても熱媒体の温度が低下しないことを検知することで、熱媒体のリークが多いことを確実に検知できる。この場合には、除湿装置30が停止されることで、除湿機の安全性を高めることができる。
【0049】
なお、除湿機100が、例えば、衣類乾燥運転モードを選択できる機能を有する場合、かつ、上記の制御により異常と判定された場合、圧縮機32の運転を停止して、送風機5の運転のみを継続するように制御してもよい。これにより、安全な状態で、衣類乾燥を継続して行うことができる。
【0050】
また、以上の制御では、熱媒体が不足している場合に、送風ファンの回転数を低下させることで熱媒体の温度を低下させる制御を行う場合について説明した。これにより、熱媒体が不足している場合にも、残っている熱媒体により除湿できる状態を維持することができる。しかし、熱媒体が不足している場合の除湿装置30の運転継続方法はこれに限られず、蒸発器31内の熱媒体の温度を低下させることができるものであればよい。従って、例えば、圧縮機32を駆動するモータをインバータで給電するインバータ圧縮機とし、熱媒体の温度を低下させる制御として、インバータ圧縮機の駆動周波数を下げるように制御してもよい。
【0051】
図8は、除湿装置の熱媒体が不足している状態で、圧縮機32の駆動周波数を低下させたときの、蒸発器31の内部の熱媒体の温度変化を示す図である。図8において、実線bは、圧縮機32の駆動周波数を低下させた場合の熱媒体の温度を表し、比較のため、実線aで、圧縮機32の駆動周波数を維持した場合の熱媒体の温度を示している。
【0052】
図8に示されるように、圧縮機32の動作周波数を低下させることで、熱媒体回路内の熱媒体の循環量を低下させることができる。これにより、減圧装置34の出口側で熱媒体の温度が上昇するため、二相冷媒がガス化することなく、蒸発器31を通過する。これにより、蒸発器31の出口側でも熱媒体の温度Teと、室温Trとの温度差である異常判定値(Tr-Te)が大きくなる。これにより異常判定値(TeーTr)が基準値T1より小さい状態が解消され、除湿装置30の運転が継続される。また熱媒体の微量なリークが予測される状態では、圧縮機32の動作周波数を低下させた状態で除湿装置30の運転が継続されるため、霜が急激に成長することによる水漏れの発生、及び、圧縮機32の過剰な温度上昇は抑制される。
【0053】
なお、本実施の形態では、異常判定回数N1が基準回数N2以上となったことを条件に、異常有りと判定する場合について説明した。しかし、本開示において異常判定の条件はこれに限られない。例えば、異常判定値(Tr-Te)が基準値T1より小さい状態の継続時間が基準時間以上となった場合に、除湿装置30の異常と判定する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 筐体、 4 吐出口、 5 送風機、 7 表示操作装置、 8 貯水タンク、 9 吸込口、 10 制御装置、 12 温湿度検出用センサ、 13 管温検出用センサ、 30 除湿装置、 31 蒸発器、 32 圧縮機、 33 凝縮器、 34 減圧装置、 35 配管、 100 除湿機
図1
図2
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図5
図6
図7
図8