(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】正極、およびリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/131 20100101AFI20230516BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2020057294
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 智彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功典
(72)【発明者】
【氏名】苅宿 洋
(72)【発明者】
【氏名】毛利 敬史
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-259680(JP,A)
【文献】特開2004-014472(JP,A)
【文献】特開平11-265719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/131
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム遷移金属酸化物を主体とする正極活物質を含む正極活物質層を有する正極であって、
前記正極活物質層は、化学式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする、正極。
(X
1およびX
2はHまたはLiであり、Rは炭素数が1~3のアルキレン基またはハロゲン化アルキレン基を示す。)
【化1】
・・・(1)
【請求項2】
前記化学式(1)で表される化合物が、前記正極活物質層の単位質量当たり2.5×10
-5mol/g以上2.5×10
-2mol/g以下、前記正極活物質層に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の正極。
【請求項3】
請求項1または2に記載の正極を含む、リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極、およびリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池等と比べ、軽量、高容量であるため、携帯電子機器用電源として広く応用されている。また、ハイブリッド自動車や、電気自動車用に搭載される電源としても有力な候補となっている。そして、近年の携帯電子機器の小型化、高機能化に伴い、これらの電源となるリチウムイオン二次電池の更なる高容量化が期待されている。
【0003】
リチウムイオン電池の容量は主に電極の活物質に依存する。負極活物質には、一般に黒鉛などの炭素材料が利用されている。しかし、黒鉛の理論容量は372mAh/gであり、実用化されている電池では、既に約350mAh/gの容量が利用されている。よって、将来の高機能携帯機器のエネルギー源として十分な容量を有するリチウムイオン二次電池を得るためには、さらなる高容量化を実現する必要がある。
【0004】
また、近年ではより一層の高容量化に加え、利便性の向上のため急速充電特性や、電動工具やコードレス家電などリチウムイオン二次電池の新規な用途が開拓されたことによる急速放電への要望も高まりつつある。
【0005】
特許文献1では低空孔率の高エネルギー密度電極を使用したリチウムイオン二次電池において、非水電解質の塩濃度を1.3mol・dm-3以上にすることで、出力特性を改善している。特許文献2ではリチウムイオン二次電池の非水電解液を、LiPF6及びLiBF4を含むリチウム塩;及び(a)エチレンカーボネートまたはエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合物からなる環状カーボネートと(b)プロピオネート系エステルのような鎖状エステルとの混合体積比(a:b)が約10:90~約70:30とすることで、出力特性を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-173821号公報
【文献】特表2010-539670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術の方法では出力特性は改善するものの、急速充電特性については未だ満足されないという課題があった。
【0008】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、急速充電特性に優れる正極、およびリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る正極は、リチウム遷移金属酸化物を主体とする正極活物質を含む正極活物質層を有する正極であって、上記正極活物質層は、化学式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする。
【0010】
【化1】
・・・(1)
(X
1およびX
2はHまたはLiであり、Rは炭素数が1~3のアルキレン基またはハロゲン化アルキレン基を示す。)
【0011】
本発明に係る正確なメカニズムは不明だが、以下のように考えている。一般的なリチウムイオン電池では、正極活物質表面のリチウムイオンが、電解液中のカーボネート溶媒4分子に配位される(溶媒和される)ことで充電反応が進行する。この正極活物質から電解液への固液界面の溶媒和反応が律速となり、急速充電特性が悪化する。本発明に係る正極は、カルボニル基を4つ有する化学式(1)で表される化合物を正極に含む。これにより、正極活物質表面のリチウムイオンが強く配位され、上記の溶媒和反応が速やかに進行し、急速充電特性が改善する。
【0012】
本発明に係る正極は更に、上記化学式(1)で表される化合物が、上記正極活物質層の単位質量当たり2.5×10-5mol/g以上2.5×10-2mol/g以下含まれることが好ましい。
【0013】
これによれば、化合物の含有量として好適であり、急速充電特性がより改善する。
【0014】
本発明に係るリチウムイオン二次電池は、上記正極を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、急速充電特性に優れる正極、およびリチウムイオン二次電池を提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態のリチウムイオン二次電池の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
【0018】
<リチウムイオン二次電池>
図1に示すように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100は、互いに対向する板状の負極20及び板状の正極10と、負極20と正極10との間に隣接して配置される板状のセパレータ18と、を備える積層体30と、リチウムイオンを含む電解質溶液と、これらを密閉した状態で収容するケース50と、負極20に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部がケースの外部に突出されるリード62と、正極10に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部がケースの外部に突出されるリード60とを備える。
【0019】
正極10は、正極集電体12と、正極集電体12上に形成された正極活物質層14と、を有する。また、負極20は、負極集電体22と、負極集電体22上に形成された負極活物質層24と、を有する。セパレータ18は、負極活物質層24と正極活物質層14との間に位置している。
【0020】
<正極>
本実施形態に係る正極は、リチウム遷移金属酸化物を主体とする正極活物質を含む正極活物質層を有する正極であって、上記正極活物質層は、化学式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする。
【0021】
本実施形態に係る正確なメカニズムは不明だが、以下のように考えている。一般的なリチウムイオン電池では、正極活物質表面のリチウムイオンが、電解液中のカーボネート溶媒4分子に配位される(溶媒和される)ことで充電反応が進行する。この正極活物質から電解液への固液界面の溶媒和反応が律速となり、急速充電特性が悪化する。本実施形態に係る正極は、カルボニル基を4つ有する化学式(1)で表される化合物を正極に含む。これにより、正極活物質表面のリチウムイオンが強く配位され、上記の溶媒和反応が速やかに進行し、急速充電特性が改善する。
【0022】
化学式(1)で表される化合物の合成法としては特に限定されるものではないが、例えば次の方法が挙げられる。まず、シュウ酸と、2価アルコールとを適当な溶媒へ溶解させ、この溶液を加熱することで脱水反応を進行させ、X1およびX2がHである化合物を得る。更に、この化合物と、水酸化リチウムとを適当な溶媒中で中和反応を進行させることで、X1およびX2がLiで置換した化合物を得ることが出来る。
【0023】
化学式(1)で表される化合物の同定法としては、NMR、IR、MS等、一般的に有機化合物の同定に用いられる解析手法を用いることが出来る。
【0024】
本実施形態に係る正極は更に、上記化学式(1)で表される化合物が、上記正極活物質層の単位質量当たり2.5×10-5mol/g以上2.5×10-2mol/g以下含まれることが好ましい。
【0025】
これによれば、化合物の含有量として好適であり、急速充電特性がより改善する。
【0026】
(正極集電体)
正極集電体12は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミニウム又はそれらの合金、ステンレス等の金属薄板(金属箔)を用いることができる。
【0027】
(正極活物質層)
正極活物質層14は、正極活物質、正極用バインダー、および正極用導電助剤から主に構成されるものである。
【0028】
(正極活物質)
正極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、PF6
-)のドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知の電極活物質を使用できる。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn2O4)、及び、化学式:LiNixCoyMnzMaO2(x+y+z+a=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物Lia(M)b(PO4)c(ただし、M=VOまたはV、かつ、0.9≦a≦3.3、0.9≦b≦2.2、0.9≦c≦3.3)、オリビン型LiMPO4(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素を示す)、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)、LiNixCoyAlzO2(0.9<x+y+z<1.1)等の複合金属酸化物が挙げられる。
【0029】
(正極用バインダー)
正極用バインダーは正極活物質同士を結合すると共に、正極活物質層14と正極用集電体12とを結合している。バインダーは、上述の結合が可能なものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂や、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を用いてもよい。また、バインダーとして電子伝導性の導電性高分子やイオン伝導性の導電性高分子を用いてもよい。電子伝導性の導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン等が挙げられる。イオン伝導性の導電性高分子としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物と、LiClO4、LiBF4、LiPF6等のリチウム塩とを複合化させたもの等が挙げられる。
【0030】
正極活物質層14中のバインダーの含有量は特に限定されないが、添加する場合には正極活物質100質量部に対して0.5~5質量部であることが好ましい。
【0031】
(正極用導電助剤)
正極用導電助剤としては、正極活物質層14の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、黒鉛、カーボンブラック等の炭素系材料や、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。
【0032】
<負極>
(負極集電体)
負極集電体22は、導電性の板材であればよく、例えば、銅等の金属薄板(金属箔)を用いることができる。
【0033】
(負極活物質層)
負極活物質層24は、負極活物質、負極用バインダー、および負極用導電助剤から主に構成されるものである。
【0034】
(負極活物質)
負極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)を可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知の電極活物質を使用できる。例えば、グラファイト、ハードカーボン等の炭素系材料、酸化シリコン(SiOx)、金属シリコン(Si)等の珪素系材料、チタン酸リチウム(LTO)等の金属酸化物、リチウム、スズ、亜鉛等の金属材料が挙げられる。
【0035】
負極活物質として金属材料を用いない場合、負極活物質層24は更に、負極用バインダーおよび負極用導電助剤を含んでいてもよい。
【0036】
(負極用バインダー)
負極用バインダーとしては特に限定は無く、上記で記載した正極用バインダーと同様のものを用いることができる。
【0037】
(負極用導電助剤)
負極用導電助剤としては特に限定は無く、上記で記載した正極用導電助剤と同様のものを用いることができる。
【0038】
<電解液>
本発明に係る電解液は、溶媒および電解質から主に構成されるものである。
【0039】
(溶媒)
上記溶媒としては、一般にリチウムイオン二次電池に用いられている溶媒を任意の割合で混合して使用することが出来る。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート化合物、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)等の鎖状カーボネート化合物、γ-ブチロラクトン(GBL)等の環状エステル化合物、プロピオン酸プロピル(PrP)、プロピオン酸エチル(PrE)、酢酸エチル等の鎖状エステル化合物が挙げられる。
【0040】
(電解質)
電解質は、リチウムイオン二次電池の電解質として用いられるリチウム塩であれば特に限定は無く、例えば、LiPF6、LiBF4、リチウムビスオキサレートボラート等の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3、(CF3SO2)2NLi、(FSO2)2NLi等の有機酸陰イオン塩等を用いることができる。
【0041】
以上、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
(化学式(1)で表される化合物の合成)
純水1Lに対し、シュウ酸100mmolおよびエチレングリコール10mmolを溶解させ、攪拌しながら100℃で8時間還流を行った。溶液を冷却した後、水-ジエチルエーテルで分液を繰り返し、有機相を回収することでn=2,X1=X2=H,R=CH2-CH2である中間体を得た。この中間体5mmolを改めて純水1Lへ溶解させ、これに10mmolの水酸化リチウムを加えて30分攪拌した。この溶液を水-ジエチルエーテルで分液を繰り返し、水相を回収することでn=2,X1=X2=Li,R=CH2-CH2である目的物を得た。
【0044】
(正極の作製)
正極活物質としてLiCoO2、導電助剤としてカーボンブラック、バインダーとしてPVDFを用いた。LiCoO2:カーボンブラック:PVDF=90:5:5(質量部)の割合で混合し、この混合粉全体に対して、2.5×10-3mol/gの濃度となるように、上記で作製した化学式(1)で表される化合物を添加した。これを、ハイブリッドミキサーを用いてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散させることで、正極活物質層形成用のスラリーを調整した。このスラリーを、厚さ20μmのアルミニウム箔に塗布量12.0mg/cm2となるように塗布し、100℃で乾燥することで正極活物質層を形成した。その後、これをローラープレス機によって加圧成形し、正極を作製した。
【0045】
(負極の作製)
負極活物質として黒鉛、導電助剤としてカーボンブラック、バインダーとしてPVDFを用いた。黒鉛:カーボンブラック:PVDF=90:5:5(質量部)の割合で混合し、ハイブリッドミキサーを用いてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散させ、負極活物質層形成用のスラリーを調整した。このスラリーを、厚さ20μmの銅箔に塗布量8.0mg/cm2となるように塗布し、100℃で乾燥することで負極活物質層を形成した。その後、これをローラープレス機によって加圧成形し、負極を作製した。
【0046】
(電解液の作製)
溶媒としてエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)、支持塩としてヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を用いた。EC:DEC=50:50(体積部)となるように混合し、これに1.0mol/Lの濃度となるようにLiPF6を溶解させ、電解液を作製した。
【0047】
(評価用リチウムイオン二次電池の作製)
上記で作製した正極および負極を、ポリエチレンセパレータを介して順次積層した。この積層体にタブリードを超音波溶着した後、アルミラミネートパックで包装した。その後、上記で作製した電解液を注入し、真空シールすることで評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0048】
(初回充放電)
上記で作製した評価用リチウムイオン二次電池を、25℃に設定した恒温槽内に入れ、北斗電工株式会社製の充放電試験装置で評価した。まず、電流値0.1Cの定電流充電で電池電圧が4.2Vとなるまで充電を行い、続けて、電流値0.1Cの定電流放電で電池電圧が2.8Vとなるまで放電を行った。なお、電流値「X」Cの充電とは、この電池を「1/X」時間で充電可能な電流値のことを示す。例えば、0.1Cは1/0.1時間で充電可能な電流値のことを示す。
【0049】
(急速充電特性の測定)
上記と同じ装置を用い、まず、電流値0.1Cの定電流充電で電池電圧が4.2Vとなるまで充電を行い、0.1C充電容量を求め、電流値0.1Cの定電流放電で電池電圧が2.8Vとなるまで放電を行った。続けて、電流値10Cの定電流充電で電池電圧が4.2Vとなるまで充電を行い、10C充電容量を求め、電流値0.1Cの定電流放電で電池電圧が2.8Vとなるまで放電を行った。10C充電容量維持率=10C充電容量/0.1C充電容量、と定義し、得られた値を表1に示した。この値が高いほど、急速充電特性に優れることを意味する。
【0050】
[実施例2]
正極の作製において、スラリーに添加した化学式(1)で表される化合物の量を表1に示した値に変更した。それ以外は実施例1と同様として、実施例2の評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0051】
[実施例3]
正極の作製において、スラリーに添加した化学式(1)で表される化合物の量を表1に示した値に変更した。それ以外は実施例1と同様として、実施例3の評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0052】
[実施例4]
正極の作製において、スラリーに添加した化学式(1)で表される化合物の量を表1に示した値に変更した。それ以外は実施例1と同様として、実施例4の評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0053】
[実施例5]
正極の作製において、スラリーに添加した化学式(1)で表される化合物の量を表1に示した値に変更した。それ以外は実施例1と同様として、実施例5の評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0054】
[実施例6]
正極の作製において、スラリーに添加した化学式(1)で表される化合物の量を表1に示した値に変更した。それ以外は実施例1と同様として、実施例6の評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0055】
[実施例7]
化学式(1)で表される化合物の合成において、中間体5mmolに対して、5mmolの水酸化リチウムを加えることで、n=2,X1=H,X2=Li,R=CH2-CH2と片側の水酸基のみリチウム化された化合物を得た。それ以外は実施例1と同様として、実施例7のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0056】
[実施例8]
化学式(1)で表される化合物の合成において、中間体をそのまま用いることで、n=2,X1=X2=H,R=CH2-CH2の化合物を得た。それ以外は実施例1と同様として、実施例8のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0057】
[実施例9]
化学式(1)で表される化合物の合成において、エチレングリコールの代わりにメタンジオールを用いることで、n=2,X1=X2=H,R=CH2の中間体を得た。それ以降の手順は実施例1と同様として、実施例9のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0058】
[実施例10]
化学式(1)で表される化合物の合成において、エチレングリコールの代わりにトリメチレングリコールを用いることで、n=2,X1=X2=H,R=CH2-CH2-CH2の中間体を得た。それ以降の手順は実施例1と同様として、実施例10のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0059】
[実施例11]
化学式(1)で表される化合物の合成において、エチレングリコールの代わりにモノフルオロエチレングリコールを用いることで、n=2,X1=X2=H,R=CH2-CHFの中間体を得た。それ以降の手順は実施例1と同様として、実施例11のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0060】
[比較例1]
正極の作製において、化学式(1)で表される化合物を添加しなかった。それ以外は実施例1と同様として、比較例1の評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0061】
実施例2~11、および比較例1で作製した評価用リチウムイオン二次電池について、実施例1と同様に、急速充電特性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0062】
実施例1~6はいずれも、正極に化学式(1)で表される化合物を添加しなかった比較例1に対し、急速充電特性が改善した。上記化合物が存在することで、正極活物質表面のリチウムイオンが強く配位され、溶媒和反応が速やかに進行したものと考えられる。また、添加量としては、2.5×10-5mol/g以上2.5×10-2mol/gが最適であることが明らかとなった。
【0063】
X1およびX2を水素で置換した実施例7,8についても、急速充電特性が改善している。このことより、二つのシュウ酸残渣のカルボニル基が、本発明に係る改善効果を示すにあたって重要であることが示唆された。
【0064】
また、連結基Rの構造を変更した実施例9~11においても、急速充電特性が改善しており、このことからもシュウ酸残渣のカルボニル基が重要な役割を担うことが示唆された。
【0065】
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明により、急速充電特性に優れる正極、およびリチウムイオン二次電池を提供される。
【符号の説明】
【0067】
10…正極、12…正極集電体、14…正極活物質層、18…セパレータ、20…負極、22…負極集電体、24…負極活物質層、30…積層体、50…ケース、60,62…リード、100…リチウムイオン二次電池。