(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230516BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20230516BHJP
H01F 27/36 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01F37/00 N
H01F37/00 S
H01F37/00 J
H01F37/00 Z
H01F37/00 T
H01F27/36 129
(21)【出願番号】P 2020071235
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 皓基
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】早川 賢治
(72)【発明者】
【氏名】佐川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄介
(72)【発明者】
【氏名】安保 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】甲斐田 純也
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170819(WO,A1)
【文献】特開2019-180218(JP,A)
【文献】特開2015-089179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H01F 37/00
H01F 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータを駆動するインバータ装置と、
前記圧縮部と前記電動モータと前記インバータ装置とを内部に収容する金属製のハウジングと、を備え、
前記インバータ装置は、
インバータ回路と、
前記インバータ回路の入力側に設けられるとともに前記インバータ回路に入力される直流電流に含まれるコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させるノイズ低減部と、
前記インバータ回路と前記ノイズ低減部とが実装される回路基板と、を備え、
前記ノイズ低減部は、
コモンモードチョークコイルと、
前記コモンモードチョークコイルと共にローパスフィルタ回路を構成する平滑コンデンサと、を備え、
前記コモンモードチョークコイルは、
環状のコアと、
前記コアに巻回された一対の巻線と、
前記一対の巻線の両方を覆う環状の導電体と、を備えた電動圧縮機において、
前記導電体は、第1金属板と第2金属板に周方向に分割され、
前記第1金属板は、前記ハウジングに熱的に結合されるとともに前記ハウジングと前記一対の巻線との間に配置され、
前記第2金属板は、前記第1金属板に電気的に接続されるとともに前記回路基板と前記一対の巻線との間に配置され、
第1金属板の電気抵抗値は、前記第2金属板の電気抵抗値よりも大きい
ことを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記第1金属板の板厚が前記第2金属板の板厚よりも薄いことにより前記第1金属板の電気抵抗値が、前記第2金属板の電気抵抗値よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
平面形状を前記第2金属板に比べて前記第1金属板を異ならせることによって第1金属板の周方向の断面積が前記第2金属板の周方向の断面積よりも小さいことにより前記第1金属板の電気抵抗値が、前記第2金属板の電気抵抗値よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記第1金属板の材料が前記第2金属板の材料よりも高抵抗材料であることにより前記第1金属板の電気抵抗値が、前記第2金属板の電気抵抗値よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記第1金属板には貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記貫通孔には放熱部材が充填されていることを特徴とする請求項5に記載の電動圧縮機。
【請求項7】
前記放熱部材は前記第1金属板と前記ハウジングとを接着する接着剤であることを特徴とする請求項6に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機における電動モータを駆動するインバータ装置に用いられるコモンモードチョークコイルの構成として、環状の導電体で一対の巻線を跨ぎつつコアを覆う構造を採用することにより、漏れ磁束に伴い発生する電流を導電体において熱に変換する技術がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コアに一対の巻線を巻回するとともに一対の巻線の両方を環状の導電体で覆う構造を採用する場合において、導電体が発熱するが放熱性が悪い。
本発明の目的は、放熱性に優れた電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するインバータ装置と、前記圧縮部と前記電動モータと前記インバータ装置とを内部に収容する金属製のハウジングと、を備え、前記インバータ装置は、インバータ回路と、前記インバータ回路の入力側に設けられるとともに前記インバータ回路に入力される直流電流に含まれるコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させるノイズ低減部と、前記インバータ回路と前記ノイズ低減部とが実装される回路基板と、を備え、前記ノイズ低減部は、コモンモードチョークコイルと、前記コモンモードチョークコイルと共にローパスフィルタ回路を構成する平滑コンデンサと、を備え、前記コモンモードチョークコイルは、環状のコアと、前記コアに巻回された一対の巻線と、前記一対の巻線の両方を覆う環状の導電体と、を備えた電動圧縮機において、前記導電体は、第1金属板と第2金属板に周方向に分割され、前記第1金属板は、前記ハウジングに熱的に結合されるとともに前記ハウジングと前記一対の巻線との間に配置され、前記第2金属板は、前記第1金属板に電気的に接続されるとともに前記回路基板と前記一対の巻線との間に配置され、第1金属板の電気抵抗値は、前記第2金属板の電気抵抗値よりも大きいことを要旨とする。
【0006】
これによれば、コモンモードチョークコイルの環状のコアに一対の巻線が巻回されるとともに環状の導電体が一対の巻線の両方を覆っており、ノーマルモード電流が流れる際に導電体の中に誘導電流を流し熱エネルギーに変換させやすくダンピング効果に優れる。一対の巻線から発生する漏れ磁束は、環状の導電体の周断面を鎖交するため、導電体に周方向の誘導電流が流れやすい。導電体は、第1金属板と第2金属板に周方向に分割されており、第1金属板は、ハウジングに熱的に結合されるとともにハウジングと一対の巻線との間に配置されている。第2金属板は、第1金属板に電気的に接続されるとともに回路基板と一対の巻線との間に配置されている。第1金属板の電気抵抗値は、第2金属板の電気抵抗値よりも大きいので、導電体におけるハウジング側に温度の高い部分を設けることにより、導電体の熱が積極的にハウジング側に逃げ、放熱性に優れたものとなる。
【0007】
また、電動圧縮機において、前記第1金属板の板厚が前記第2金属板の板厚よりも薄いことにより前記第1金属板の電気抵抗値が、前記第2金属板の電気抵抗値よりも大きいとよい。
【0008】
また、電動圧縮機において、平面形状を前記第2金属板に比べて前記第1金属板を異ならせることによって第1金属板の周方向の断面積が前記第2金属板の周方向の断面積よりも小さいことにより前記第1金属板の電気抵抗値が、前記第2金属板の電気抵抗値よりも大きいとよい。
【0009】
また、電動圧縮機において、前記第1金属板の材料が前記第2金属板の材料よりも高抵抗材料であることにより前記第1金属板の電気抵抗値が、前記第2金属板の電気抵抗値よりも大きいとよい。
【0010】
また、電動圧縮機において、前記第1金属板には貫通孔が形成されているとよい。
また、電動圧縮機において、前記貫通孔には放熱部材が充填されているとよい。
また、電動圧縮機において、前記放熱部材は前記第1金属板と前記ハウジングとを接着する接着剤であるとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、放熱性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】(a)は回路基板及びコモンモードチョークコイルの平面図、(b)は回路基板及びコモンモードチョークコイルの正面図、(c)は回路基板及びコモンモードチョークコイルの右側面図。
【
図5】(a)はコモンモードチョークコイルの平面図、(b)はコモンモードチョークコイルの正面図、(c)は(a)のA-A線での断面図。
【
図7】(a)は金属板の平面図、(b)は金属板の右側面図、(c)は(a)のA-A線での断面図。
【
図9】(a)は作用を説明するためのコモンモードチョークコイルの平面図、(b)は(a)のA-A線での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。本実施形態の車載用電動圧縮機は、流体としての冷媒を圧縮する圧縮部を備えており、車載用空調装置に用いられる。即ち、本実施形態における車載用電動圧縮機の圧縮対象の流体は冷媒である。
【0014】
図1に示すように、車載用空調装置10は、車載用電動圧縮機11と、車載用電動圧縮機11に対して流体としての冷媒を供給する外部冷媒回路12とを備えている。外部冷媒回路12は、例えば熱交換器及び膨張弁等を有している。車載用空調装置10は、車載用電動圧縮機11によって冷媒が圧縮され、且つ、外部冷媒回路12によって冷媒の熱交換及び膨張が行われることによって、車内の冷暖房を行う。
【0015】
車載用空調装置10は、当該車載用空調装置10の全体を制御する空調ECU13を備えている。空調ECU13は、車内温度やカーエアコンの設定温度等を把握可能に構成されており、これらのパラメータに基づいて、車載用電動圧縮機11に対してON/OFF指令等といった各種指令を送信する。
【0016】
車載用電動圧縮機11は、外部冷媒回路12から冷媒が吸入される吸入口14aが形成されたハウジング14を備えている。
ハウジング14は、伝熱性を有する材料であるアルミニウム等の金属で形成されている。ハウジング14は、車両のボディに接地されている。
【0017】
ハウジング14は、互いに組み付けられた吸入ハウジング15と吐出ハウジング16とを有している。さらにハウジング14はインバータハウジング25を有している。吸入ハウジング15は、一方向に開口した有底筒状であり、板状の底壁部15aと、底壁部15aの周縁部から吐出ハウジング16に向けて起立した側壁部15bとを有している。底壁部15aは例えば略板状であり、側壁部15bは例えば略筒状である。吐出ハウジング16は、吸入ハウジング15の開口を塞いだ状態で吸入ハウジング15に組み付けられている。これにより、ハウジング14内には内部空間が形成されている。
【0018】
吸入口14aは、吸入ハウジング15の側壁部15bに形成されている。詳細には、吸入口14aは、吸入ハウジング15の側壁部15bのうち吐出ハウジング16よりも底壁部15a側に配置されている。
【0019】
ハウジング14には、冷媒が吐出される吐出口14bが形成されている。吐出口14bは、吐出ハウジング16、詳細には吐出ハウジング16における底壁部15aと対向する部位に形成されている。
【0020】
車載用電動圧縮機11は、ハウジング14内に収容された回転軸17、圧縮部18及び電動モータ19を備えている。
回転軸17は、ハウジング14に対して回転可能な状態で支持されている。回転軸17は、その軸線方向が板状の底壁部15aの厚さ方向(換言すれば筒状の側壁部15bの軸線方向)と一致する状態で配置されている。回転軸17と圧縮部18とは連結されている。
【0021】
圧縮部18は、吸入口14a(換言すれば底壁部15a)よりも吐出口14b側に配置されている。圧縮部18は、回転軸17が回転することによって、吸入口14aから吸入された冷媒を圧縮し、その圧縮された冷媒を吐出口14bから吐出させるものである。なお、圧縮部18の具体的な構成は、スクロールタイプ、ピストンタイプ、ベーンタイプ等任意である。
【0022】
電動モータ19は、圧縮部18と底壁部15aとの間に配置されている。電動モータ19は、回転軸17を回転させることにより、圧縮部18を駆動させるものである。電動モータ19は、例えば回転軸17に対して固定された円筒形状のロータ20と、ハウジング14に固定されたステータ21とを有する。ステータ21は、円筒形状のステータコア22と、ステータコア22に形成されたティースに捲回されたコイル23とを有している。ロータ20及びステータ21は、回転軸17の径方向に対向している。コイル23が通電されることによりロータ20及び回転軸17が回転し、圧縮部18による冷媒の圧縮が行われる。
【0023】
図1に示すように、車載用電動圧縮機11は、電動モータ19を駆動させるものであって直流電力が入力される駆動装置24と、駆動装置24を収容する収容室S0を区画するインバータハウジング25とを備えている。
【0024】
インバータハウジング25は、伝熱性を有する非磁性体の導電性材料であるアルミニウム等の金属で構成されている。
インバータハウジング25は、吸入ハウジング15の底壁部15aに向けて開口した有底筒状である。インバータハウジング25は、開口端が底壁部15aに突き合せられた状態で、ボルト26によって底壁部15aに取り付けられている。インバータハウジング25の開口は、底壁部15aによって塞がれている。収容室S0は、インバータハウジング25と底壁部15aとによって形成されている。
【0025】
収容室S0は、底壁部15aに対して電動モータ19とは反対側に配置されている。圧縮部18、電動モータ19及び駆動装置24は、回転軸17の軸線方向に配列されている。
【0026】
インバータハウジング25にはコネクタ27が設けられており、駆動装置24はコネクタ27と電気的に接続されている。コネクタ27を介して、車両に搭載された車載用蓄電装置28から駆動装置24に直流電力が入力されるとともに、空調ECU13と駆動装置24とが電気的に接続されている。車載用蓄電装置28は、車両に搭載された直流電源であり、例えば二次電池やキャパシタ等である。
【0027】
図1に示すように、収容室S0には回路基板29が配置されている。回路基板29は板状である。回路基板29は、底壁部15aに対して回転軸17の軸線方向に所定の間隔を隔てて対向配置されている。駆動装置24は、インバータ装置30と、コネクタ27とインバータ装置30とを電気的に接続するのに用いられる2本の接続ラインEL1,EL2と、を備えている。駆動装置24は回路基板29を用いて構成されている。金属製のハウジング14には、圧縮部18と電動モータ19とインバータ装置30とが内部に収容されている。
【0028】
インバータ装置30は、電動モータ19を駆動するためのものである。インバータ装置30は、インバータ回路31(
図2参照)と、ノイズ低減部32(
図2参照)と、回路基板29を備えている。回路基板29にはインバータ回路31とノイズ低減部32とが実装されている。インバータ回路31は、直流電力を交流電力に変換するためのものである。ノイズ低減部32は、インバータ回路31の入力側に設けられるとともにインバータ回路31に入力される直流電流に含まれるコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させるためのものである。
【0029】
次に、電動モータ19及び駆動装置24の電気的構成について説明する。
図2に示すように、電動モータ19のコイル23は、例えばu相コイル23u、v相コイル23v及びw相コイル23wを有する三相構造となっている。各コイル23u~23wは例えばY結線されている。
【0030】
インバータ回路31は、u相コイル23uに対応するu相スイッチング素子Qu1,Qu2と、v相コイル23vに対応するv相スイッチング素子Qv1,Qv2と、w相コイル23wに対応するw相スイッチング素子Qw1,Qw2と、を備えている。各スイッチング素子Qu1~Qw2は例えばIGBT等のパワースイッチング素子である。なお、スイッチング素子Qu1~Qw2は、還流ダイオード(ボディダイオード)Du1~Dw2を有している。
【0031】
各u相スイッチング素子Qu1,Qu2は接続線を介して互いに直列に接続されており、その接続線はu相コイル23uに接続されている。そして、各u相スイッチング素子Qu1,Qu2の直列接続体は、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されており、上記直列接続体には、車載用蓄電装置28からの直流電力が入力されている。
【0032】
なお、他のスイッチング素子Qv1,Qv2,Qw1,Qw2については、対応するコイルが異なる点を除いて、u相スイッチング素子Qu1,Qu2と同様の接続態様である。
【0033】
駆動装置24は、各スイッチング素子Qu1~Qw2のスイッチング動作を制御する制御部33を備えている。制御部33は、例えば、1つ以上の専用のハードウェア回路、及び/又は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(制御回路)によって実現することができる。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、例えば各種処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ即ちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0034】
制御部33は、コネクタ27を介して空調ECU13と電気的に接続されており、空調ECU13からの指令に基づいて、各スイッチング素子Qu1~Qw2を周期的にON/OFFさせる。詳細には、制御部33は、空調ECU13からの指令に基づいて、各スイッチング素子Qu1~Qw2をパルス幅変調制御(PWM制御)する。より具体的には、制御部33は、キャリア信号(搬送波信号)と指令電圧値信号(比較対象信号)とを用いて、制御信号を生成する。そして、制御部33は、生成された制御信号を用いて各スイッチング素子Qu1~Qw2のON/OFF制御を行うことにより直流電力を交流電力に変換する。
【0035】
ノイズ低減部32は、回路基板29(
図1参照)と、回路基板29に実装されるコモンモードチョークコイル34と、回路基板29に実装されるXコンデンサ35を備えている。平滑コンデンサとしてのXコンデンサ35は、コモンモードチョークコイル34と共にローパスフィルタ回路36を構成する。ローパスフィルタ回路36は、接続ラインEL1,EL2上に設けられている。ローパスフィルタ回路36は、回路的にはコネクタ27とインバータ回路31との間に設けられている。
【0036】
コモンモードチョークコイル34は、両接続ラインEL1,EL2上に設けられている。
Xコンデンサ35は、コモンモードチョークコイル34に対して後段(インバータ回路31側)に設けられており、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されている。コモンモードチョークコイル34とXコンデンサ35とによってLC共振回路が構成されている。即ち、本実施形態のローパスフィルタ回路36は、コモンモードチョークコイル34を含むLC共振回路である。
【0037】
両Yコンデンサ37,38は、互いに直列に接続されている。詳細には、駆動装置24は、第1Yコンデンサ37の一端と第2Yコンデンサ38の一端とを接続するバイパスラインEL3を備えている。当該バイパスラインEL3は車両のボディに接地されている。
【0038】
また、両Yコンデンサ37,38の直列接続体が、コモンモードチョークコイル34とXコンデンサ35との間に設けられており、コモンモードチョークコイル34に電気的に接続されている。第1Yコンデンサ37の上記一端とは反対側の他端は、第1接続ラインEL1、詳細には第1接続ラインEL1のうちコモンモードチョークコイル34の第1の巻線とインバータ回路31とを接続する部分に接続されている。第2Yコンデンサ38における上記一端とは反対側の他端は、第2接続ラインEL2、詳細には第2接続ラインEL2のうちコモンモードチョークコイル34の第2の巻線とインバータ回路31とを接続する部分に接続されている。
【0039】
車両には、車載用機器として例えばPCU(パワーコントロールユニット)39が、駆動装置24とは別に搭載されている。PCU39は、車載用蓄電装置28から供給される直流電力を用いて、車両に搭載されている走行用モータ等を駆動させる。即ち、本実施形態では、PCU39と駆動装置24とは、車載用蓄電装置28に対して並列に接続されており、車載用蓄電装置28は、PCU39と駆動装置24とで共用されている。
【0040】
PCU39は、例えば、昇圧スイッチング素子を有し且つ当該昇圧スイッチング素子を周期的にON/OFFさせることにより車載用蓄電装置28の直流電力を昇圧させる昇圧コンバータ40と、車載用蓄電装置28に並列に接続された電源用コンデンサ41とを備えている。また、図示は省略するが、PCU39は、昇圧コンバータ40によって昇圧された直流電力を、走行用モータが駆動可能な駆動電力に変換する走行用インバータを備えている。
【0041】
かかる構成においては、昇圧スイッチング素子のスイッチングに起因して発生するノイズが、ノーマルモードノイズとして、駆動装置24に流入する。換言すれば、ノーマルモードノイズには、昇圧スイッチング素子のスイッチング周波数に対応したノイズ成分が含まれている。
【0042】
【0043】
なお、図面において、3軸直交座標を規定しており、
図1の回転軸17の軸線方向をZ方向とし、Z方向に直交する方向をX,Y方向としている。
図5(a),(b),(c)、
図6に示すように、コモンモードチョークコイル34は、コア50と、ケース60と、第1の巻線70と、第2の巻線71と、環状の導電体としての金属板80と、を備える。コア50を収容したケース60に巻線70,巻線71が巻回され、巻線70,71に対し金属板80が巻かれた状態で使用される。第1の巻線70と第2の巻線71は、コモンモードチョークコイル34における一対の巻線であり、コア50に巻回される。
【0044】
図5(a),(b),(c)に示すように、コア50は、ケース60の内部に収容される。コア50は、
図5(c)に示すように断面四角形状をなし、
図5(a)に示すX-Y平面において全体として略長方形状の環状をなしている。
【0045】
図5(a),(b),(c)に示すように、ケース60は、環状をなし、樹脂製であり、電気絶縁性を有する。ケース60は、本体部61と、壁62とを備える。本体部61は、開口部61a(
図6参照)を除いて、コア50の全てを覆っている。本体部61には、
図5(a),(b),(c)に示すように、巻線70,71が巻かれる。
図6の開口部61aは、巻線70と巻線71との間に設けられ、開口部61aは巻線70と巻線71との間におけるコア50の一部を外方に露出させる。
【0046】
壁62はコア50の内周面側において、巻線70と巻線71との間にZ方向に延びるように設けられる。壁62により巻線70と巻線71とが隔てられる。
図5(a),(b),(c)に示すように、第1の巻線70は、ケース60の外面に巻回されている。第2の巻線71は、ケース60の外面に巻回されている。詳しくは、コア50は、第1直線部51と第2直線部52を備え、第1直線部51と第2直線部52とは、互いに平行となるよう直線に延びている。第1直線部51に第1の巻線70の少なくとも一部が巻回される。第2直線部52に第2の巻線71の少なくとも一部が巻回される。両巻線70,71の巻き方向は、互いに反対方向となっている。また、第1の巻線70と第2の巻線71は離れつつ対向している。
【0047】
図5(a),(b),(c)、
図6、
図7(a),(b),(c)に示すように、環状の導電体としての金属板80は、帯状かつ無端状をなしている。環状の金属板80は、第1の巻線70及び第2の巻線71を跨ぎつつコア50及びケース60を覆っている。つまり、金属板80は第1の巻線70及び第2の巻線71の両方を覆っている。金属板80は、第1の巻線70と第2の巻線71の間において対向する部位同士が離れている。
【0048】
図3(a),(b),(c)、
図4に示すように、コア50の一部に巻回される第1の巻線70は、両端部70eが回路基板29の貫通孔(スルーホール)を通して回路基板29から突出した状態で回路基板29に、はんだ付けされている。コア50の他部に巻回される第2の巻線71は、第1の巻線70から離れつつ対向しており、両端部71eが回路基板29の貫通孔(スルーホール)を通して回路基板29から突出した状態で回路基板29に、はんだ付けされている。
【0049】
巻線70,71の端部70e,71eは、それぞれ、はんだ付けにより回路基板29に形成された導体パターンと電気的に接続される。
図7(a),(b),(c)、
図8に示すように、金属板80は、第1金属板81と第2金属板82に周方向に分割されている。つまり、環状の導電体としての金属板80は、周方向において第1導電体としての第1金属板81と、第2導電体としての第2金属板82とに2分割されている。第1金属板81及び第2金属板82は、それぞれ、表面に錫めっきを施した真鍮板が用いられる。錫めっきを施したのは、耐腐食性のためである。
【0050】
第1金属板81は、X-Y平面においてX方向に直線的に延びる本体部81aと、本体部81aの両端部からZ方向に延びるように屈曲形成された立設部81b,81cを有する。第1金属板81は、プレス加工により成形されている。
【0051】
第2金属板82は、X-Y平面においてX方向に直線的に延びる本体部82aと、本体部82aの両端部からZ方向に延びるように屈曲形成された立設部82b,82cを有する。第2金属板82は、プレス加工により成形されている。
【0052】
図7(a),(b),(c)に示すように、第1金属板81の立設部81b,81cの先端側において、立設部81bと立設部81cとの間に第2金属板82の立設部82b,82cが配置される。立設部81bと立設部82bとは接触した状態で溶接されるとともに立設部81cと立設部82cとは接触した状態で溶接される。これにより、第1金属板81と第2金属板82とは環状をなしている。
【0053】
図3(a),(b),(c)に示すように、第2金属板82は、回路基板29とコア50との間に挟まれるよう配置されている。第1金属板81は、回路基板29とともにコア50を挟むよう配置されている。
【0054】
図5(a),(b),(c)、
図7(a),(b),(c)に示すように、金属板81と一対の巻線70,71との間及び金属板82と一対の巻線70,71との間に絶縁体としての樹脂90が介在されている。即ち、第1金属板81と第1の巻線70との間及び第1金属板81と第2の巻線71との間及び第2金属板82と第1の巻線70との間及び第2金属板82と第2の巻線71との間に絶縁体としての樹脂90が介在されている。
【0055】
絶縁体としての樹脂90は、第1絶縁体としての第1樹脂91と第2絶縁体としての第2樹脂92とからなる。
図5(a),(b),(c)、
図7(a),(b)に示すように、第1樹脂91は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂よりなり、第1金属板81における第1の巻線70に対向する面及び第2の巻線71に対向する面に配置されている。詳しくは、第1金属板81の本体部81aにおける、巻線70,71に対向する面である第2金属板82の本体部82aと対向する面、第1金属板81の立設部81bにおける巻線70と対向する部位、第1金属板81の立設部81cにおける巻線71と対向する部位に配置されている。第1樹脂91は第1金属板81にモールドされ、一体化されている。
【0056】
第2樹脂92は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂よりなり、第2金属板82の本体部82aにおける、第1金属板81の本体部81aと対向する面、即ち、第1の巻線70に対向する面及び第2の巻線71に対向する面に配置されている。第2樹脂92は第2金属板82にモールドされ、一体化されている。第1金属板81は、
図4に示すように、ハウジング14の底壁部15aと熱的に結合する。
【0057】
このように、第1金属板81は、ハウジング14に熱的に結合されるとともにハウジング14と一対の巻線70,71との間に配置され、第2金属板82は、第1金属板81に電気的に接続されるとともに回路基板29と一対の巻線70,71との間に配置されている。第1金属板81における周方向の単位長さ当たりの電気抵抗の平均値が、第2金属板82の周方向の単位長さ当たりの電気抵抗の平均値よりも大きい。具体的には、第1金属板81の板厚t1(
図7(c)参照)が第2金属板82の板厚t2(
図7(c)参照)よりも薄いことにより第1金属板81における周方向の単位長さ当たりの電気抵抗の平均値が、第2金属板82の周方向の単位長さ当たりの電気抵抗の平均値よりも大きい。より具体的には、回路基板29側の金属板(真鍮板)82の板厚を例えば0.64mmとし、底壁部15a側の金属板(真鍮板)81の板厚を例えば0.3mmとする。板厚を小さくすることによって電気抵抗を大きくして発熱を大きくして、金属板80における底壁部15a側を放熱することで放熱効率向上を図ることができるとともに発熱部位のコントロールにより放熱の効率化が図られる。また、第1金属板81と第2金属板82を接合する場合に第1金属板81と第2金属板82は同一幅であるときに抵抗値を変える際に板厚を変えることにより幅を変えずに抵抗値を調整できる。従って、第1金属板81と第2金属板82を接合しやすく製造容易である。
【0058】
このようにして、第1金属板81の電気抵抗値は、第2金属板82の電気抵抗値よりも大きい。第1金属板81全体の抵抗値が第2金属板82全体の抵抗値より大きい。
図3(b)、
図3(c)、
図4に示すように、回路基板29と第2金属板82の本体部82aとの間には絶縁体100が配置されている。絶縁体100は樹脂の板よりなり、第2金属板82の本体部82aにおける、回路基板29と対向する面に接着されている。
【0059】
図5(a)に示すように、四角形状(ロの字状)をなすコア50における一方の短辺部及び他方の短辺部は、金属板80に覆われない露出部となっている。
図7(a),(b),(c)、
図8に示すように、第1金属板81には貫通孔110が形成されている。これにより、第1金属板81の幅と第2金属板82の幅とは同一であるが、平面形状が第2金属板82に比べて第1金属板81が異なり、第1金属板81の周方向の断面積が第2金属板82の周方向の断面積よりも小さい。その結果、第1金属板81の周方向の断面積が第2金属板82の周方向の断面積よりも小さいことにより第1金属板81における周方向の単位長さ当たりの電気抵抗の平均値が、第2金属板82の周方向の単位長さ当たりの電気抵抗の平均値よりも大きい。詳しくは、第1金属板81の中でも本体部81aの抵抗値周方向平均が、立設部81b,81cの抵抗値周方向平均よりも大きい。
【0060】
貫通孔110は、幅方向(X方向)の中央部に形成され、周方向(Y方向)に延びている。第1樹脂91における貫通孔110に対応する部位には貫通孔111が形成されている。
図4、
図8に示すように、貫通孔110,111には放熱部材120が充填されている。放熱部材120は第1金属板81とハウジング14とを接着する接着剤であり、樹脂は硬化して底壁部15aに接着している。
【0061】
つまり、巻線70,71における吸入ハウジング15の底壁部15aとの対向面には放熱部材120が配置されている。これにより、巻線70,71は、吸入ハウジング15ひいてはハウジング14に熱的に結合している。
【0062】
図8に示すように、第1樹脂91における第1金属板81の本体部81aに対応する部位での上面中央部にケース60の壁62と係合する一対の突起95a,95bを有し、
図4に示すように、一対の突起95a,95bにケース60の壁62が係合することにより巻線70,71を位置決めすることができる。
【0063】
製造の際には次のようにする。
図5(a),(b),(c)に示すように、ケース60内にコア50を収納するとともに第1の巻線70及び第2の巻線71を巻回する。一方、
図7(a),(b),(c)に示すように、第1金属板81は第1樹脂91に一体化された状態で固定されている。第2金属板82は、第2樹脂92に一体化された状態で固定されている。
【0064】
そして、
図6に示すように、第1金属板81と第2金属板82との間に一対の巻線70,71を挟み込むように配置する。この時、第1金属板81の端部と第2金属板82の端部とが面接触する。この状態で、第1金属板81の端部と第2金属板82の端部とを溶接する。
【0065】
引き続き、
図3(a),(b),(c)、
図4に示すように、絶縁体100を挟んで回路基板29に対し一対の巻線70,71の端部70e,71eを挿入する。この時、回路基板29から第1の巻線70の端部70e及び第2の巻線71の端部71eが突出している。そして、はんだ付けにより回路基板29から突出している第1の巻線70の端部70e及び第2の巻線71の端部71eを回路基板29に、はんだ付けする。
【0066】
次に、作用について説明する。
まず、
図9(a),(b)を用いてノーマルモード(ディファレンシャルモード)について説明する。
【0067】
図9(a)に示すように、第1の巻線70及び第2の巻線71の通電により電流i1,i2が流れる。これに伴いコア50に磁束φ1,φ2が発生するが磁束φ1,φ2は互いに逆向きのため漏れ磁束φ3,φ4が発生する。ここで、
図9(b)に示すように、発生する漏れ磁束φ3,φ4に抗う方向に磁束を発生させるべく金属板80の内部において誘導電流i10が周方向に流れる。
【0068】
このようにして、金属板80において、第1の巻線70及び第2の巻線71の通電に伴い発生する漏れ磁束に抗う方向に磁束を発生させるべく誘導電流(渦電流)i10が内部において周方向に流れる。誘導電流が周方向に流れるとは、コア50を周回するように流れることである。
【0069】
コモンモードにおいては、第1の巻線70及び第2の巻線71の通電により同じ方向に電流が流れる。これに伴いコア50に同じ向きの磁束が発生する。このようにして、コモンモード電流通電時は、コア50内部に磁束が発生し漏れ磁束はほとんど発生しないため、コモンインピーダンスは保持できる。
【0070】
帯状かつ無端状をなす金属板80において、漏れ磁束に抗う方向に磁束を発生させようとして内部に電流が流れ、電力を消費して発熱する。コモンモードチョークコイル34で発生した熱Q(
図4参照)は、貫通孔110,111内の放熱部材120を介して底壁部15aに放熱される。つまり、一対の巻線70,71が底壁部15aに熱的に接合されているので、一対の巻線70,71で発生した熱Qは底壁部15aに逃がされる。よって、一対の巻線70,71において発生する熱Qが放熱部材120を通して逃がされ、放熱面への放熱性に優れたものとなる。
【0071】
このように、導電体としての金属板80は2分割され、2つの部品により構成されていることにより第1金属板81は第2金属板82より平均的抵抗値が大きい。具体的には、真鍮製の第2金属板82の板厚t2が0.64mmであり、真鍮製の第1金属板81の板厚t1が0.3mmであり、断面積が小さい第1金属板81の方が、抵抗値が大きい。抵抗値が大きい第1金属板81において発熱させて熱を集中させる。これにより、ハウジング14に放熱しやすくできる。
【0072】
また、第1金属板81に貫通孔110が形成されており、断面積が小さい第1金属板81の方が、抵抗値が大きい。抵抗値が大きい第1金属板81において発熱させて熱を集中させる。これにより、ハウジング14に放熱しやすくできる。即ち、放熱側の金属板81において貫通孔110を設けて断面積を小さくして抵抗値を大きくして放熱性を向上している。
【0073】
以下、詳しく説明する。
本実施形態においては、板厚及び平面形状違いによる電気抵抗差を用いた放熱性の向上を図っている。
【0074】
従来の方法であるコアを覆う環状の金属箔による導電体では放熱性が悪い。
本実施形態では、コア50を覆う金属板80の厚みや平面形状に差をつけることで、電気抵抗値に差が生まれ、電気抵抗の高い部分に発熱を集中させる。その結果、金属板80での発熱箇所をコントロールでき、効率的に冷却ができる。
【0075】
つまり、従来のコアを覆う金属箔に大電流が流れるため放熱方法が課題であるので、板厚を異ならせたり貫通孔110を形成して金属板81,82の平面形状に差を付けることで、電気抵抗値に差が生まれ、放熱側の任意の部分に熱を集中させることができる。また、冷却面に熱を集中させることで冷却が効率化することができる。
【0076】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)電動圧縮機としての車載用電動圧縮機11の構成として、流体を圧縮する圧縮部18と、圧縮部18を駆動する電動モータ19と、電動モータ19を駆動するインバータ装置30と、圧縮部18と電動モータ19とインバータ装置30とを内部に収容する金属製のハウジング14と、を備える。インバータ装置30は、インバータ回路31と、インバータ回路31の入力側に設けられるとともにインバータ回路31に入力される直流電流に含まれるコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させるノイズ低減部32と、インバータ回路31とノイズ低減部32とが実装される回路基板29と、を備える。ノイズ低減部32は、コモンモードチョークコイル34と、コモンモードチョークコイル34と共にローパスフィルタ回路36を構成する平滑コンデンサとしてのXコンデンサ35と、を備える。コモンモードチョークコイル34は、環状のコア50と、コア50に巻回された一対の巻線70,71と、一対の巻線70,71の両方を覆う環状の導電体としての金属板80と、を備える。金属板80は、第1金属板81と第2金属板82に周方向に分割され、第1金属板81は、ハウジング14に熱的に結合されるとともにハウジング14と一対の巻線70,71との間に配置され、第2金属板82は、第1金属板81に電気的に接続されるとともに回路基板29と一対の巻線70,71との間に配置され、第1金属板81の電気抵抗値は、第2金属板82の電気抵抗値よりも大きい。よって、ノーマルモード電流が流れる際に金属板80の中に誘導電流を流し熱エネルギーに変換させやすくダンピング効果に優れる。一対の巻線70,71から発生する漏れ磁束は、環状の金属板80の周断面を鎖交するため、金属板80に周方向の誘導電流が流れやすい。第1金属板81の電気抵抗値は第2金属板82の電気抵抗値よりも大きいので、導電体におけるハウジング14側に温度の高い部分を設けることにより、金属板80の熱が積極的にハウジング14側に逃げる。その結果、放熱性に優れたものとなる。
【0077】
(2)第1金属板81の板厚t1が第2金属板82の板厚t2よりも薄いことにより第1金属板81の電気抵抗値が、第2金属板82の電気抵抗値よりも大きい。よって、第1金属板81と第2金属板82を接合する場合に第1金属板81と第2金属板82は同一幅であるときに抵抗値を変える際に板厚を変えることにより幅を変えずに抵抗値を調整できる。従って、第1金属板81と第2金属板82を接合しやすく製造容易である。
【0078】
(3)平面形状を第2金属板82に比べて第1金属板81を異ならせることによって第1金属板81の周方向の断面積が第2金属板82の周方向の断面積よりも小さいことにより第1金属板81の電気抵抗値が、第2金属板82の電気抵抗値よりも大きい。よって、導電体におけるハウジング側に温度の高い部分を容易に設けることができる。
【0079】
(4)第1金属板81には貫通孔110が形成されている。よって、貫通孔110を通して巻線70,71を放熱することができる。
(5)貫通孔110には放熱部材120が充填されている。よって、放熱部材120を介して巻線70,71を放熱することができる。
【0080】
(6)放熱部材120は第1金属板81とハウジング14とを接着する接着剤であるので、巻線70,71を固定することができる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
【0081】
〇第1金属板81の材料が第2金属板82の材料よりも高抵抗材料であることにより第1金属板81における周方向の単位長さ当たりの電気抵抗の平均値が、第2金属板82の周方向の単位長さ当たりの電気抵抗の平均値よりも大きくしてもよい。例えば、真鍮の板とリン青銅の板を用いる。このように、第1金属板81の材料が第2金属板82の材料よりも高抵抗材料であることにより第1金属板81の電気抵抗値が、第2金属板82の電気抵抗値よりも大きいようにしてもよい。
【0082】
○金属板80は、真鍮板の他にも、アルミ板、ステンレス鋼材の板等で構成されていてもよい。
〇金属板81,82と巻線70,71との間の絶縁は、絶縁体としての樹脂91,92に代わり、絶縁塗装でもよい。例えば、金属板81,82における巻線70,71と対向する箇所における、表面に樹脂塗装膜を形成してもよい。
【0083】
○ 第1金属板81と巻線70,71との間に十分な距離の空隙を確保できる場合には第1絶縁体としての第1樹脂91を不要にすることも可能である。同様に、第2金属板82と巻線70,71との間に十分な距離の空隙を確保できる場合には第2絶縁体としての第2樹脂92を不要にすることも可能である。また、回路基板29と第2金属板82との間に十分な距離の空隙を確保できる場合には絶縁体100を不要にすることも可能である。
【0084】
〇第1金属板における周方向の単位長さ当たりの電気抵抗の平均値が第2金属板の周方向の単位長さ当たりの電気抵抗の平均値よりも大きくすべく、第1金属板81の板厚t1が第2金属板82の板厚t2よりも薄いこと、平面形状を第2金属板82に比べて第1金属板81を異ならせることによって第1金属板81の周方向の断面積が第2金属板82の周方向の断面積よりも小さくすること、第1金属板81の材料が第2金属板82の材料よりも高抵抗材料であることを、それぞれ単独で行っても、任意の2つを組み合わせて行っても、全てを行ってもよい。
【符号の説明】
【0085】
11…車載用電動圧縮機、14…ハウジング、18…圧縮部、19…電動モータ、29…回路基板、30…インバータ装置、31…インバータ回路、32…ノイズ低減部、34…コモンモードチョークコイル、35…Xコンデンサ、50…コア、70,71…一対の巻線、80…金属板、81…第1金属板、82…第2金属板、110…貫通孔、120…放熱部材、t1,t2…板厚。