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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230516BHJP
   H01R 12/58 20110101ALI20230516BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01R12/58
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020071305
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021168570
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大河内 健史
(72)【発明者】
【氏名】矢野 順也
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄介
(72)【発明者】
【氏名】篠原 光毅
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-257881(JP,A)
【文献】特開2015-040538(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/290347(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102444584(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H01R 12/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータを駆動するとともに回路基板を有するインバータ装置と、
前記電動モータを収容するモータ収容室と、前記インバータ装置を収容するインバータ収容室と、前記モータ収容室と前記インバータ収容室とを区画する区画壁と、を有するハウジングと、
前記区画壁を貫通するとともに一端が前記電動モータと電気的に接続される導電ピンと、
前記インバータ収容室内に配置されるとともに前記導電ピンの他端と前記回路基板とを電気的に接続するコネクタと、を備え、
前記コネクタは、金属製のコネクタ本体と、前記コネクタ本体を内部に収容する樹脂製のケースと、を有するとともに、前記回路基板と前記区画壁との間に配置されており、
前記コネクタ本体は、前記導電ピンの他端が挿抜される端子部と、前記端子部と前記回路基板とを電気的に接続する接続部と、を有する電動圧縮機において、
前記コネクタ本体は、一体の金属板を屈曲変形させることで形成され、
前記端子部は、互いに対向するとともに前記導電ピンを挟持する一対の挟持部を有し、
前記接続部は、前記ケースの外部へと突出するとともに前記回路基板へと挿通される突出部を有することを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記端子部は、
前記一対の挟持部のそれぞれを繋げる連結部と、
前記一対の挟持部に対し前記連結部とは反対側において係合しあうことで前記一対の挟持部が互いに離れないよう拘束する一対の係合部と、を有する請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記接続部は、前記端子部と前記突出部とを繋げるとともに前記ケースの内部に収容される延設部を有し、
前記延設部は屈曲する屈曲部を有する請求項1又は請求項2に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記導電ピンは表面に銅層を有しており、
前記金属板は銅板である請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動する電動モータと、電動モータを駆動するとともに回路基板を有するインバータ装置と、インバータ装置を内部に収容するハウジングと、を備えている。また、例えば特許文献1に開示されているように、電動圧縮機は、ハウジングに取り付けられるとともに回路基板に電気的に接続されるコネクタを備えている。
【0003】
また、コネクタとしては、金属製のコネクタ本体と、コネクタ本体を内部に収容する樹脂製のケースと、を備えるものが知られている。コネクタ本体は、筒状の金属製の端子と金属製のリード線とが溶接によって一体化されて構成されている。電動モータと電気的に接続された導電ピンが端子に挿入されるとともに、リード線の端部が半田付け等によって回路基板に電気的に接続される。これにより、コネクタを介して電動モータとインバータ装置とが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-40538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の電動圧縮機では、従来よりも大きな電力の使用に伴い、高い耐熱性を有する金属材料を用いることが望まれている。しかしながら、耐熱性の高い金属材料は溶接しにくいため、コネクタでの溶接作業に際して生産性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、コネクタの生産性を向上させることができる電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するとともに回路基板を有するインバータ装置と、前記電動モータを収容するモータ収容室と、前記インバータ装置を収容するインバータ収容室と、前記モータ収容室と前記インバータ収容室とを区画する区画壁と、を有するハウジングと、前記区画壁を貫通するとともに一端が前記電動モータと電気的に接続される導電ピンと、前記インバータ収容室内に配置されるとともに前記導電ピンの他端と前記回路基板とを電気的に接続するコネクタと、を備え、前記コネクタは、金属製のコネクタ本体と、前記コネクタ本体を内部に収容する樹脂製のケースと、を有するとともに、前記回路基板と前記区画壁との間に配置されており、前記コネクタ本体は、前記導電ピンの他端が挿抜される端子部と、前記端子部と前記回路基板とを電気的に接続する接続部と、を有する電動圧縮機において、前記コネクタ本体は、一体の金属板を屈曲変形させることで形成され、前記端子部は、互いに対向するとともに前記導電ピンを挟持する一対の挟持部を有し、前記接続部は、前記ケースの外部へと突出するとともに前記回路基板へと挿通される突出部を有することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、コネクタ本体は、挟持部から突出部まで連続する一体の金属板からなる。このように、コネクタ本体を一体の金属板から形成できるため、コネクタの製造に際して溶接が不要になる。したがって、コネクタの生産性を向上させることができる。
【0009】
電動圧縮機において、前記端子部は、前記一対の挟持部のそれぞれを繋げる連結部と、前記一対の挟持部に対し前記連結部とは反対側において係合しあうことで前記一対の挟持部が互いに離れないよう拘束する一対の係合部と、を有することが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、連結部と係合部によって一対の挟持部が導電ピンをより強固に挟持し、導電ピンとコネクタとの接続が安定する。
電動圧縮機において、前記接続部は、前記端子部と前記突出部とを繋げるとともに前記ケースの内部に収容される延設部を有し、前記延設部は屈曲する屈曲部を有することが好ましい。
【0011】
電動圧縮機が振動する環境下においては、電動圧縮機の振動が生じて回路基板が移動しようとすると、コネクタ本体に応力が加わるおそれがある。上記構成によれば、コネクタ本体に加わった応力が延設部の屈曲部において減衰できるため、振動に対するコネクタの耐久性を向上させることができる。
【0012】
電動圧縮機において、前記導電ピンは表面に銅層を有しており、前記金属板は銅板であることが好ましい。
上記構成によれば、導電ピンと挟持部とが同じ銅同士で接触するため、接触抵抗を抑えることができる。したがって、インバータ装置から電動モータにより大きな電力を供給できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、コネクタの生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態における電動圧縮機を一部破断して示す側断面図。
図2】電動圧縮機の電気的構成を示す回路図。
図3】電動圧縮機の一部を拡大して示す側断面図。
図4】ケース本体に収容されたコネクタ本体を示す断面図。
図5】ケース蓋体に収容されたコネクタ本体を示す断面図。
図6図4における6-6線断面図。
図7】コネクタ本体の側面図。
図8】コネクタ本体の斜視図。
図9】コネクタ本体の展開図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、電動圧縮機を具体化した一実施形態を図1図9にしたがって説明する。本実施形態の電動圧縮機は、例えば、車両空調装置に用いられる。
図1に示すように、電動圧縮機10のハウジング11は、有底筒状の吐出ハウジング12と、吐出ハウジング12に連結される有底筒状のモータハウジング13と、モータハウジング13に連結されるインバータケース14と、を備えている。吐出ハウジング12、モータハウジング13、及びインバータケース14は金属材料製であり、例えば、アルミニウム製である。モータハウジング13は、底壁13aと、底壁13aの外周縁から筒状に延びる周壁13bと、を有している。
【0016】
モータハウジング13内には、回転軸15が収容されている。また、モータハウジング13内には、回転軸15の回転によって駆動して流体としての冷媒を圧縮する圧縮部16と、回転軸15を回転させて圧縮部16を駆動する電動モータ17と、が収容されている。圧縮部16及び電動モータ17は、回転軸15の回転軸線が延びる方向である軸線方向に並んで配置されている。電動モータ17は、圧縮部16よりもモータハウジング13の底壁13a側に配置されている。そして、モータハウジング13内における圧縮部16と底壁13aとの間には、電動モータ17を収容するモータ収容室18が形成されている。したがって、ハウジング11はモータ収容室18を有している。
【0017】
圧縮部16は、例えば、モータハウジング13内に固定された図示しない固定スクロールと、固定スクロールに対向配置される図示しない可動スクロールとから構成されるスクロール式である。
【0018】
電動モータ17は、筒状のステータ19と、ステータ19の内側に配置されるロータ20と、を有している。ロータ20は、回転軸15と一体的に回転する。ステータ19は、ロータ20を取り囲んでいる。ロータ20は、回転軸15に止着されたロータコア20aと、ロータコア20aに設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。ステータ19は、筒状のステータコア19aと、ステータコア19aに巻回されたモータコイル21とを有している。
【0019】
周壁13bには、吸入口13hが形成されている。吸入口13hには、外部冷媒回路22の一端が接続されている。吐出ハウジング12には、吐出口12hが形成されている。吐出口12hには、外部冷媒回路22の他端が接続されている。吸入口13hは、周壁13bにおける底壁13a側に位置する部分に形成されている。吸入口13hは、モータ収容室18に連通している。
【0020】
外部冷媒回路22から吸入口13hを介してモータ収容室18内に吸入された冷媒は、圧縮部16の駆動により圧縮部16で圧縮されて、吐出口12hを介して外部冷媒回路22へ流出する。そして、外部冷媒回路22へ流出した冷媒は、外部冷媒回路22の熱交換器や膨張弁を経て、吸入口13hを介してモータ収容室18内に還流する。電動圧縮機10及び外部冷媒回路22は、車両空調装置23を構成している。
【0021】
インバータケース14は、モータハウジング13の底壁13aに取り付けられている。インバータケース14内には、インバータ装置30を収容するインバータ収容室14aが形成されている。したがって、ハウジング11は、インバータ収容室14aを有している。圧縮部16、電動モータ17、及びインバータ装置30は、この順序で、回転軸15の軸線方向に並んで配置されている。
【0022】
インバータケース14は、有底筒状のインバータケース本体24と、インバータケース本体24の開口を閉塞する有底筒状の蓋部材25と、を有している。インバータケース本体24は、平板状のケース底壁24aと、ケース底壁24aの外周縁から筒状に延びるケース周壁24bと、を有している。蓋部材25は、平板状の蓋底壁25aと、蓋底壁25aの外周縁から筒状に延びる蓋周壁25bと、を有している。
【0023】
インバータケース本体24及び蓋部材25は、ケース周壁24bの開口端面と蓋周壁25bの開口端面とが突き合わさった状態で互いに配置されている。インバータ収容室14aは、インバータケース本体24及び蓋部材25によって区画されている。インバータケース14は、インバータケース本体24のケース底壁24aの外面がモータハウジング13の底壁13aの外面に接した状態でモータハウジング13の底壁13aに取り付けられている。
【0024】
モータ収容室18とインバータ収容室14aとは、モータハウジング13の底壁13a及びインバータケース本体24のケース底壁24aによって区画されている。すなわち、底壁13a及びケース底壁24aは、モータ収容室18とインバータ収容室14aとを区画する区画壁に相当する。ハウジング11は、区画壁としての底壁13a及びケース底壁24aを有する。
【0025】
インバータケース14は、蓋部材25の蓋底壁25aの外面から突出する高電圧用コネクタ25c及び低電圧用コネクタ25dを有している。高電圧用コネクタ25cには、高電圧電源32のコネクタが接続される。低電圧用コネクタ25dには、低電圧電源33のコネクタが接続される。高電圧電源32は、車両に搭載されているリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池などの高電圧バッテリである。低電圧電源33は、車両に搭載されるとともに高電圧バッテリの電圧(例えば400V)よりも低い電圧(例えば12V)である鉛蓄電池などの低電圧バッテリである。
【0026】
図2に示すように、モータコイル21は、u相コイル21u、v相コイル21v、及びw相コイル21wを有する三相構造になっている。本実施形態において、u相コイル21u、v相コイル21v、及びw相コイル21wは、Y結線されている。
【0027】
インバータ装置30は、複数のスイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2を有している。複数のスイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2は、電動モータ17を駆動するためにスイッチング動作を行う。複数のスイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2は、IGBT(パワースイッチング素子)である。複数のスイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2には、ダイオードDu1,Du2,Dv1,Dv2,Dw1,Dw2がそれぞれ接続されている。ダイオードDu1,Du2,Dv1,Dv2,Dw1,Dw2は、スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2に対して並列に接続されている。
【0028】
各スイッチング素子Qu1,Qv1,Qw1は、各相の上アームを構成している。各スイッチング素子Qu2,Qv2,Qw2は、各相の下アームを構成している。各スイッチング素子Qu1,Qu2、各スイッチング素子Qv1,Qv2、及び各スイッチング素子Qw1,Qw2はそれぞれ直列に接続されている。各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2のゲートは、制御コンピュータ34に電気的に接続されている。制御コンピュータ34は、低電圧電源33からの電圧が印加されることにより動作する。
【0029】
各スイッチング素子Qu1,Qv1,Qw1のコレクタは、第1接続ラインEL1を介して高電圧電源32の正極に電気的に接続されている。各スイッチング素子Qu2,Qv2,Qw2のエミッタは、第2接続ラインEL2を介して高電圧電源32の負極に電気的に接続されている。各スイッチング素子Qu1,Qv1,Qw1のエミッタ及び各スイッチング素子Qu2,Qv2,Qw2のコレクタは、それぞれ直列に接続された中間点からu相コイル21u、v相コイル21v、及びw相コイル21wにそれぞれ電気的に接続されている。
【0030】
制御コンピュータ34は、電動モータ17の駆動電圧をパルス幅変調により制御する。具体的には、制御コンピュータ34は、搬送波信号と呼ばれる高周波の三角波信号と、電圧を指示するための電圧指令信号とによってPWM信号を生成する。そして、制御コンピュータ34は、生成したPWM信号を用いて各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2のスイッチング動作の制御(オンオフ制御)を行う。これにより、高電圧電源32からの直流電圧が交流電圧に変換される。そして、変換された交流電圧が駆動電圧として電動モータ17に印加されることにより、電動モータ17の駆動が制御される。
【0031】
また、制御コンピュータ34は、PWM信号を制御することにより、各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2のスイッチング動作のデューティ比を可変制御する。これにより、電動モータ17の回転数が制御される。制御コンピュータ34は、空調ECU35と電気的に接続されており、空調ECU35から電動モータ17の目標回転数に関する情報を受信すると、その目標回転数で電動モータ17を回転させる。
【0032】
電動圧縮機10は、コンデンサ36及びコイル37を備えている。コンデンサ36は、各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2の入力側に設けられるとともに高電圧電源32に対して並列接続されている。コンデンサ36は、第1バイパスコンデンサ36a、第2バイパスコンデンサ36b、及び平滑コンデンサ36cを含む。第1バイパスコンデンサ36aの一端は、第1接続ラインEL1に電気的に接続されている。第1バイパスコンデンサ36aの他端は、第2バイパスコンデンサ36bの一端に電気的に接続されている。よって、第1バイパスコンデンサ36aと第2バイパスコンデンサ36bとは直列接続されている。第2バイパスコンデンサ36bの他端は、第2接続ラインEL2に電気的に接続されている。第1バイパスコンデンサ36aの他端と第2バイパスコンデンサ36bの一端との中間点は、例えば、車両のボデーに接地されている。
【0033】
平滑コンデンサ36cの一端は、第1接続ラインEL1に電気的に接続されている。平滑コンデンサ36cの他端は、第2接続ラインEL2に電気的に接続されている。第1バイパスコンデンサ36a及び第2バイパスコンデンサ36bと平滑コンデンサ36cとは並列接続されている。平滑コンデンサ36cは、第1バイパスコンデンサ36a及び第2バイパスコンデンサ36bよりも各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2寄りに設けられている。
【0034】
コイル37は、コモンモードチョークコイルである。コイル37は、第1接続ラインEL1上に設けられる第1巻線371と、第2接続ラインEL2上に設けられる第2巻線372と、を有している。また、コイル37は、第1巻線371及び第2巻線372とは別に、仮想ノーマルモードコイルL1,L2を有している。すなわち、本実施形態のコイル37は、等価回路的には、第1巻線371、第2巻線372、及び仮想ノーマルモードコイルL1,L2を有している。第1巻線371は、仮想ノーマルモードコイルL1に直列接続されるとともに、第2巻線372は、仮想ノーマルモードコイルL2に直列接続されている。
【0035】
コイル37、第1バイパスコンデンサ36a、第2バイパスコンデンサ36b、及び平滑コンデンサ36cは、コモンモードノイズを低減する。コモンモードノイズとは、第1接続ラインEL1及び第2接続ラインEL2に同一方向の電流が流れるノイズである。コモンモードノイズは、電動圧縮機10と高電圧電源32とが、例えば、車両のボデーなど、第1接続ラインEL1及び第2接続ラインEL2以外の経路を介して電気的に接続された場合に生じ得る。したがって、コイル37、第1バイパスコンデンサ36a、第2バイパスコンデンサ36b、及び平滑コンデンサ36cは、LCフィルタ38を構成する。よって、コイル37は、コンデンサ36と共にLCフィルタ38を構成する。したがって、コンデンサ36及びコイル37は、LCフィルタ38を構成するフィルタ素子である。
【0036】
図1に示すように、ケース底壁24aの内面には、複数のケースボス部24fが立設されている。インバータケース本体24には、ボルト挿通孔24hが複数形成されている。各ボルト挿通孔24hは、各ケースボス部24fを貫通している。なお、図1では、図示の都合上、ケースボス部24f及びボルト挿通孔24hを各1つのみ図示している。各ボルト挿通孔24hは、ケース底壁24aの外面に開口している。また、モータハウジング13の底壁13aには、各ボルト挿通孔24hに連通する雌ねじ穴13cがそれぞれ形成されている。
【0037】
モータハウジング13の底壁13aには、底壁13aを貫通するハウジング孔13dが形成されている。また、インバータケース本体24のケース底壁24aには、ケース底壁24aを貫通するケース孔24cが形成されている。ハウジング孔13dとケース孔24cとは互いに連通している。インバータケース本体24のケース底壁24aには、導電部材26が取り付けられている。
【0038】
図3に示すように、導電部材26は、3つの導電ピン27を有している。なお、図1及び図3では、図示の都合上、1つの導電ピン27のみを図示している。導電ピン27は、円柱状の鉄製のピン本体27aからなる。ピン本体27aの表面全体には、メッキ加工によって銅層27bが形成されている。したがって、導電ピン27は表面に銅層27bを有している。
【0039】
導電部材26は、各導電ピン27を支持する支持プレート28aを備えている。支持プレート28aは、例えばセラミックス製の平板状である。支持プレート28aは、インバータケース本体24におけるケース底壁24aの内面に取り付けられている。支持プレート28aには、各導電ピン27が挿通されるプレート挿通孔28hが形成されている。各導電ピン27と支持プレート28aとの間には、ガラス製の絶縁部材28bが介在している。
【0040】
図1に示すように、各導電ピン27の一端は、底壁13aを貫通するハウジング孔13dに挿通されているとともに、モータ収容室18内に突出する。各導電ピン27の他端は、ケース底壁24aを貫通するケース孔24cに挿通されているとともに、インバータ収容室14a内に突出している。したがって、導電ピン27は底壁13a及びケース底壁24aを貫通している。
【0041】
モータ収容室18内には、クラスタブロック29が配置されている。また、U相、V相、及びW相のモータコイル21に対応するように、各モータコイル21からは3つのモータ配線21aが引き出されている。3つの導電ピン27と3つのモータ配線21aとは、クラスタブロック29を介してそれぞれ電気的に接続されている。したがって、各導電ピン27は、一端が電動モータ17と電気的に接続されている。
【0042】
インバータ装置30は、電動モータ17を駆動するための回路基板31を有している。回路基板31は、インバータ収容室14a内に収容されている。また、インバータ収容室14a内には、ホルダ40が収容されている。ホルダ40は、板状のホルダ本体部41を有している。ホルダ本体部41は、筒状のホルダボス部48を複数有している。各ホルダボス部48の軸線方向は、ホルダ本体部41の厚み方向に一致している。各ホルダボス部48は、ホルダ本体部41の厚み方向の一方の面から突出している。ホルダ40は、ホルダ本体部41の厚み方向のうち、ホルダボス部48の突出する面とは反対側のホルダ本体部41の面が各ケースボス部24fに載置された状態で、インバータ収容室14a内に配置されている。各ホルダボス部48の内側は、インバータケース本体24の各ボルト挿通孔24hにそれぞれ連通している。
【0043】
回路基板31は、挿通孔31hを複数有している。蓋部材25の内面には、複数の蓋ボス部25fが立設されている。蓋部材25には、蓋挿通孔25hが複数形成されている。各蓋挿通孔25hは、各蓋ボス部25fを貫通している。なお、図1では、図示の都合上、回路基板31の挿通孔31h、及び蓋挿通孔25hを各1つのみ図示している。回路基板31の挿通孔31hにはホルダボス部48が挿通されている。蓋ボス部25fは、蓋挿通孔25hと各ホルダボス部48の内側とが連通した状態で、各ホルダボス部48の先端面48eに載置されている。そして、蓋部材25の蓋挿通孔25h、回路基板31の各挿通孔31h、各ホルダボス部48の内側、及び各ボルト挿通孔24hを通過したボルトBが、モータハウジング13の底壁13aの各雌ねじ穴13cに螺合されることにより、回路基板31及びホルダ40が、モータハウジング13に取り付けられている。ホルダ40は、インバータ収容室14a内に回路基板31と重なって配置されている。
【0044】
図3に示すように、インバータ収容室14a内には、回路基板31に電気的に接続されるコネクタ49が配置されている。コネクタ49は、3つの銅製のコネクタ本体50と、コネクタ本体50を内部に収容する樹脂製のケース60と、を有している。なお、図1及び図3では、図示の都合上、1つのコネクタ本体50のみを図示している。ケース60は、ホルダ40に取り付けられている。したがって、ケース60はハウジング11に取り付けられている。また、図1及び図3に特に図示はしないが、ホルダ40は、コンデンサ36、コイル37、及びスイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2等の電子部品も保持している。
【0045】
コネクタ49は、ケース60がホルダ40に取り付けられることで、回路基板31とケース底壁24aとの間に配置されているとともに、インバータ収容室14a内に回路基板31と重なって配置されている。なお、以下の説明では、回路基板31とコネクタ49とが重なっている方向を、回路基板31とコネクタ49との積層方向Xと記載する。また、積層方向Xに沿う方向のうち、一方向を第1積層方向X1ともいい、第2積層方向X2とは反対方向を第2積層方向X2ともいう。
【0046】
次に、ケース60について説明する。
図4及び図5に示すように、ケース60はケース本体61と、積層方向Xでケース本体61と重なるケース蓋体71と、を有する。ケース本体61の第1本体面61aには、複数の係合凹部61cが形成されている。第1本体面61aを平面視すると、各係合凹部61cは円状をなしている。ケース蓋体71の第1蓋体面71aからは、円柱状の複数の係合凸部71cが突出している。係合凹部61cに係合凸部71cが挿入されることで、ケース本体61とケース蓋体71との位置決めがなされている。
【0047】
図4に示すように、ケース本体61の第1本体面61aには、コネクタ本体50が収容される本体収容凹部62が3つ形成されている。各本体収容凹部62は、第1本体面61aを平面視すると、略長四角穴である本体メイン凹部63と、帯状の本体サブ凹部64と、を有している。各本体収容凹部62は、本体メイン凹部63の短手方向がそれぞれ互いに一致するとともに、本体メイン凹部63の長手方向がそれぞれ互いに一致した状態で、ケース本体61の第1本体面61aに形成されている。なお、以下の説明では、本体メイン凹部63の短手方向を第1方向Yと記載する。本体メイン凹部63の長手方向を第2方向Zと記載する。第1方向Yは、積層方向Xに直交する一方向である。第2方向Zは、積層方向X及び第1方向Yの両方向に直交する方向である。また、第1方向Yに沿う方向のうち、一方向を第1方向Y1といい、第1方向Y1とは反対方向を第1方向Y2と記載することもある。第2方向Zに沿う方向のうち、一方向を第2方向Z1といい、第2方向Z1とは反対方向を第2方向Z2と記載することもある。
【0048】
本体収容凹部62の本体メイン凹部63は、ケース本体61の第1本体面61aを平面視すると、第1方向Yで隣り合っている。各本体収容凹部62の本体サブ凹部64は、本体メイン凹部63に連通している。本体サブ凹部64は、本体メイン凹部63の内周面における第2方向Z2に位置する部位に開口している。
【0049】
3つの本体収容凹部62は、第1本体収容凹部62a、第2本体収容凹部62b、及び第3本体収容凹部62cの順で第1方向Y1に並んでいる。第1本体面61aを平面視すると、各本体収容凹部62の本体サブ凹部64は、本体メイン凹部63から折れ曲がりつつ第2方向Z2に延びるクランク形状である。具体的には、第1本体収容凹部62aの本体サブ凹部64は、本体メイン凹部63から第2方向Z2に延びた後、第1方向Y1に延びるように曲がって延び、さらに第2方向Z2に延びている。第2本体収容凹部62bの本体サブ凹部64は、本体メイン凹部63から第1方向Y2に延びた後、第2方向Z2に延びるように曲がって延びている。第3本体収容凹部62cの本体サブ凹部64は、本体メイン凹部63から第2方向Z2に延びた後、第1方向Y2に延びるように曲がって延び、さらに第2方向Z2に延びている。各本体収容凹部62の本体サブ凹部64は、第1方向Yで隣り合っている。
【0050】
各本体収容凹部62の本体サブ凹部64の第2方向Z2の端部である本体サブ端部64aには、ケース本体61を積層方向Xに貫通する本体孔部64hが形成されている。本体孔部64hは、本体サブ凹部64の底面に開口している。第1本体面61aを平面視すると、本体孔部64hは細長四角状をなしている。本体孔部64hの長手方向は第2方向Zに沿っている。また、本体サブ端部64aは、第1本体収容凹部62aの本体サブ端部64a、第2本体収容凹部62bの本体サブ端部64a、及び第3本体収容凹部62cの本体サブ端部64aの順で第2方向Z1にずれて位置している。そのため、本体孔部64hも、第1本体収容凹部62aの本体孔部64h、第2本体収容凹部62bの本体孔部64h、及び第3本体収容凹部62cの本体孔部64hの順で第2方向Z1にずれて位置している。
【0051】
図5に示すように、ケース蓋体71の第1蓋体面71aには、コネクタ本体50が収容される蓋体収容凹部72が3つ形成されている。各蓋体収容凹部72は、第1蓋体面71aを平面視すると、略長四角穴状である蓋体メイン凹部73と、帯状の蓋体サブ凹部74と、を有している。
【0052】
ケース本体61とケース蓋体71とが重なった状態で、本体収容凹部62と蓋体収容凹部72とは積層方向Xにおいて一致している。すなわち、第1蓋体面71aを平面視すると、各蓋体メイン凹部73の短手方向は第1方向Yに沿って延び、蓋体メイン凹部73の長手方向は第2方向Zに沿って延びている。蓋体収容凹部72の蓋体メイン凹部73は第1方向Yで隣り合っており、各蓋体収容凹部72の蓋体サブ凹部74は、蓋体メイン凹部73に連通しており、蓋体メイン凹部73の内周面における第2方向Z2に位置する部位に開口している。3つの蓋体収容凹部72は、第1蓋体収容凹部72a、第2蓋体収容凹部72b、及び第3蓋体収容凹部72cの順で第1方向Y1に並んでいる。第1蓋体面71aを平面視すると、第1蓋体収容凹部72aは第1本体収容凹部62aと同方向に屈曲しつつ延びるクランク形状をなしている。第2蓋体収容凹部72bは第2本体収容凹部62bと同方向に屈曲しつつ延びるクランク形状をなしている。第3蓋体収容凹部72cは第3本体収容凹部62cと同方向に屈曲しつつ延びるクランク形状をなしている。各蓋体収容凹部72の蓋体メイン凹部73の第2方向Z2の端部である蓋体サブ端部74aは、第1蓋体収容凹部72aの蓋体サブ端部74a、第2蓋体収容凹部72bの蓋体サブ端部74a、及び第3蓋体収容凹部72cの蓋体サブ端部74aの順で第2方向Z1にずれて位置している。
【0053】
各蓋体収容凹部72の蓋体メイン凹部73には、ケース蓋体71を積層方向Xに貫通する円状の蓋体孔部73hが形成されている。蓋体孔部73hは、蓋体メイン凹部73の底面における略中央部分に開口している。各蓋体収容凹部72の蓋体孔部73hは第1方向Yで並んでいる。蓋体孔部73hの径は、導電ピン27の径より若干小さい。各蓋体収容凹部72の蓋体孔部73hには、導電ピン27が積層方向Xに延びた態様で挿入されている。
【0054】
図6に示すように、ケース本体61の第1本体面61aのうち本体収容凹部62が形成されない部分と、ケース蓋体71の第1蓋体面71aのうち蓋体収容凹部72が形成されない部分と、が接している。そして、ケース本体61とケース蓋体71とが固定されることにより、本体収容凹部62と蓋体収容凹部72とによってコネクタ本体50を収容するコネクタ収容部60aが形成される。したがって、ケース60はコネクタ収容部60aを有している。コネクタ収容部60aは、本体メイン凹部63の内面、本体サブ凹部64の内面、蓋体メイン凹部73の内面、及び蓋体サブ凹部74の内面により区画されている。コネクタ収容部60aは、本体孔部64h及び蓋体孔部73hを介してケース60外に連通している。
【0055】
次に、コネクタ本体50について説明する。
図4及び図5に示すように、3つのコネクタ本体50は、第1コネクタ本体50a、第2コネクタ本体50b、及び第3コネクタ本体50cの順で第1方向Y1に並んでいる。第1コネクタ本体50aは、第1本体収容凹部62a及び第1蓋体収容凹部72aによって形成されたコネクタ収容部60aに収容されている。第2コネクタ本体50bは、第2本体収容凹部62b及び第2蓋体収容凹部72bによって形成されたコネクタ収容部60aに収容されている。第3コネクタ本体50cは、第3本体収容凹部62c及び第3蓋体収容凹部72cによって形成されたコネクタ収容部60aに収容されている。
【0056】
各コネクタ本体50は、導電ピン27が挿抜される端子部51と、端子部51と回路基板31とを電気的に接続する接続部52と、を有している。なお、電動モータ17と電気的に接続された導電ピン27の端部を導電ピン27の一端とすると、導電ピン27の他端が端子部51に挿抜可能となっている。各コネクタ本体50は、一体の銅板を屈曲変形させることで形成されている。すなわち、各コネクタ本体50において、端子部51及び接続部52は一枚の銅板からなる。
【0057】
端子部51は、本体メイン凹部63及び蓋体メイン凹部73によって形成されたコネクタ収容部60aに収容されている。接続部52は、本体メイン凹部63、本体サブ凹部64、蓋体メイン凹部73、及び蓋体サブ凹部74によって形成されたコネクタ収容部60aに収容されている。なお、第1コネクタ本体50a、第2コネクタ本体50b、及び第3コネクタ本体50cにおいて、端子部51及び接続部52の基本構成は同じである。以下のコネクタ本体50の説明は、とくに言及しない限り、各コネクタ本体50で共通するものとする。
【0058】
まず、端子部51について説明する。
図6図7、及び図8に示すように、端子部51は、積層方向Xに立設するとともに、第1方向Yにおいて互いに対向する一対の挟持部53を有している。一対の挟持部53は、長四角板状であるとともに第1方向Yにおいて対向する一対の第1挟持部54と、一対の第1挟持部54の第2方向Zの両端部から延びる長四角板状の第2挟持部55と、で構成されている。
【0059】
第1挟持部54の短手方向及び第2挟持部55の長手方向は積層方向Xに沿っている。第2挟持部55の短手方向は第2方向Zに沿っている。第2挟持部55は、一方の第1挟持部54の第2方向Zの両端部と、他方の第1挟持部54の第2方向Zの両端部との合計4か所の第1挟持部54の端部に連続している。
【0060】
第2挟持部55の第1積層方向X1における端部は、第1挟持部54の第1積層方向X1の端部から突出している。これにより、第1方向Yから見た挟持部53は、第1積層方向X1における端部のうち、第2挟持部55で挟まれた第2方向Zの中央部分が第2積層方向X2に凹んだ形状をなしている。
【0061】
各第1挟持部54は、第2方向Zの中間部分から両端部にかけて湾曲している。一対の第1挟持部54の第1方向Yの間隙は、各第1挟持部54の第2方向Zの中間部分から両端部に向かうにつれて小さくなっている。一方、第2挟持部55は、第1方向Yに並ぶ第2挟持部55同士の第1方向Yの間隔が第2方向Zの全体で同一になっている。第1挟持部54と第2挟持部55との境界において挟持部53は屈曲している。
【0062】
端子部51は、四角板状であるとともに第2方向Zで並ぶ一対の連結部56と、第2挟持部55に連続する長四角板状の連続部59と、を有している。連続部59は、第2挟持部55のうち、第1方向Y1側かつ第2方向Z2側に位置する第2挟持部55から延びている。連続部59の短手方向は積層方向Xに沿っている。連続部59の長手方向は第2方向Zに沿っている。連続部59の積層方向Xの寸法は、連続する第2挟持部55の積層方向Xの寸法よりも小さい。連続部59は、第2挟持部55の第1積層方向X1側の一部に連続している。一対の連結部56は、第2挟持部55の第1積層方向X1における端部から第1方向Yに沿って延びている。各連結部56は、第1方向Yに並ぶ第2挟持部55の端部同士を繋ぐように、各第2挟持部55に連続している。したがって、連結部56は、第1積層方向X1側の一対の挟持部53において、一対の挟持部53のそれぞれを繋げている。
【0063】
図5及び図8に示すように、一対の連結部56のうち、第2方向Z2に位置する連結部56は、第2方向Zに長手方向が延びる長四角板状であるとともに、連続する第2挟持部55よりも第2方向Zの寸法が大きい。この連結部56の第1方向Y1の端部に連続部59が連続している。
【0064】
一対の第1挟持部54の第1積層方向X1の端部、第2挟持部55の第2方向Zの内側端部、及び一対の連結部56の第2方向Zの内側端部によって、挟持孔53hが区画形成されている。挟持孔53hは、一対の第1挟持部54の間の空間に連通している。積層方向Xから見た挟持孔53hは、長手方向が第2方向Zに沿う長四角状をなしている。したがって、挟持部53は、第1積層方向X1の端部に挟持孔53hを有している。
【0065】
図8に示すように、端子部51は、挟持部53の第2方向Zにおける両側に位置する一対の係合部57を有している。各係合部57は、第2挟持部55の第2方向Zの外側端部が切り欠かれてなる切欠部57aと、挟持部53の第2方向Zにおける両側に位置する爪部57bと、を有している。
【0066】
切欠部57aは、挟持部53の第2方向Z2における両端部にそれぞれ形成されている。詳細には、挟持部53の第2方向Zにおける一端に形成された切欠部57aは、第1方向Y2側にあって且つ第2方向Z2側に位置する第2挟持部55において、第2方向Z2側の端部が切り欠かれて形成されている。挟持部53の第2方向Zにおける他端に形成された切欠部57aは、第1方向Y1側にあって且つ第2方向Z1側に位置する第2挟持部55において、第2方向Z1側の端部が切り欠かれて形成されている。
【0067】
各爪部57bは、略四角平板状をなしているとともに、第2積層方向X2の端部の一部が切り欠かれており、平面視で凹状をなしている。爪部57bは、切欠部57aが形成されていない第2挟持部55から延びている。より詳細には、第1方向Y1側にあって且つ第2方向Z2側に位置する第2挟持部55において、第2方向Z2の端部から爪部57bが延びている。この爪部57bは連続部59より第2積層方向X2に位置する。第1方向Y2側にあって且つ第2方向Z1側に位置する第2挟持部55において、第2方向Z1の端部から爪部57bが延びている。各爪部57bが連続する第2挟持部55は、第1方向Yで切欠部57aに並んでいる。各爪部57bは、第2挟持部55の端部から、第1方向Yに並ぶ切欠部57aに向けて延びている。したがって、各爪部57bは、第2挟持部55に連続することにより、挟持部53の第2方向Zにおける両端部から連続している。
【0068】
一対の係合部57においては一対の挟持部53に対し連結部56とは積層方向Xの反対側において、第1方向Yに並ぶ切欠部57aと爪部57bとが係合しあっている。この一対の係合部57によって、一対の第1挟持部54及び各第2挟持部55の積層方向Xへの立設姿勢が保持されるため、一対の挟持部53が互いに離れないよう拘束されている。
【0069】
図5に示すように、端子部51は、蓋体メイン凹部73に形成された蓋体孔部73hと積層方向Xで重なっている。一対の第1挟持部54の間の空間は、蓋体孔部73hと連通している。挟持部53の挟持孔53hは、一対の第1挟持部54の間の空間を介して蓋体孔部73hと連通している。そして、蓋体孔部73hに挿通された導電ピン27は、一対の第1挟持部54の間を通って挟持孔53hに挿通されている。これにより一対の挟持部53は、一対の第1挟持部54の間に導電ピン27を挟持している。導電ピン27は、一対の第1挟持部54によって第1方向Yの両側から挟持される。
【0070】
次に、接続部52について説明する。
図7及び図8に示すように、接続部52は、積層方向Xに立設する平板状の延設部81と、延設部81の端部の一部から突出する平板状の突出部84と、を有する。延設部81は、積層方向Xに立設する略長四角板状の第1延設部82と、第1延設部82に連続する四角板状の第2延設部83と、で構成されている。
【0071】
第1延設部82の長手方向は第2方向Zに沿っている。第1延設部82の第2方向Z1側の一部のうち、第1積層方向X1側の端部が、第2方向Z2側に位置する連結部56の第1方向Y1の端部と連続している。したがって、第1延設部82は一対の挟持部53に連続している。第1延設部82は、第1方向Y2側かつ第2方向Z2側に位置する第2挟持部55と第2方向Zで並んでいる。第1延設部82の第2方向Z1側の一部は、連続部59と第1方向Yに並んでいる。
【0072】
第2延設部83は、第1延設部82の第2方向Z2側の一部において、第1延設部82の第1積層方向X1の端部から第1積層方向X1に延びている。突出部84は、第2延設部83の第2方向Z2側の一部において、第2延設部83の第1積層方向X1の端部から第1積層方向X1に延びている。
【0073】
図4及び図5に示すように、各コネクタ本体50の第1延設部82は、収容される本体収容凹部62の本体サブ凹部64と、収容される蓋体収容凹部72の蓋体サブ凹部74と同様に、それぞれ異なったクランク形状をなしている。具体的には、第1コネクタ本体50aの第1延設部82は、挟持部53から第2方向Z2に延びた後、第1方向Y1に延びるように曲がって延び、さらに第2方向Z2に延びている。第2コネクタ本体50bの第1延設部82は、挟持部53から第1方向Y2に延びた後、第2方向Z2に延びるように曲がって延びている。第3コネクタ本体50cの第1延設部82は、挟持部53から第2方向Z2に延びた後、第1方向Y2に延びるように曲がって延び、さらに第2方向Z2に延びている。したがって、各コネクタ本体50の第1延設部82は、第2方向Zの途中で屈曲する屈曲部85を有している。
【0074】
図4及び図5に示すように、第1延設部82の第2方向Z2の端部は、第1コネクタ本体50aの第1延設部82の端部、第2コネクタ本体50bの第1延設部82の端部、第3コネクタ本体50cの第1延設部82の端部の順で、第2方向Z1にずれて位置している。そのため、第2延設部83も、第1コネクタ本体50aの第2延設部83、第2コネクタ本体50bの第2延設部83、及び第3コネクタ本体50cの第2延設部83の順で、第2方向Z1にずれて位置している。各コネクタ本体50の突出部84は、収容される本体サブ凹部64に形成された本体孔部64hからコネクタ収容部60a外に突出している。
【0075】
図6に示すように、第2延設部83は本体孔部64hに位置する。突出部84は、本体孔部64hから回路基板31に向けてコネクタ収容部60a外に突出している。なお、回路基板31には、積層方向Xで各本体孔部64hと対応するように第2方向Zに互いにずれている3つの基板孔31dが形成されている。突出部84の突出端は、基板孔31dに挿入した状態で、回路基板31に半田付けされている。したがって、突出部84は、ケース60の外部へと突出するとともに回路基板31へと挿通されている。接続部52は、端子部51と回路基板31とを電気的に接続している。さらに、電動モータ17と電気的に接続された導電ピン27の端部を導電ピン27の一端とすると、導電ピン27の他端が端子部51に接続されているため、コネクタ49は、各導電ピン27の他端と回路基板31とを電気的に接続しているといえる。
【0076】
図1に示すように、電動モータ17とインバータ装置30の回路基板31とは、各モータ配線21a、クラスタブロック29、各導電ピン27、及び各コネクタ本体50を介して電気的に接続されている。したがって、各導電ピン27は、電動モータ17とインバータ装置30とを電気的に接続するために用いられている。
【0077】
次に、コネクタ本体50の形成方法について、本実施形態の作用と共に説明する。
図9に示すように、コネクタ本体50の形成に際しては、一枚の銅板から打ち抜き成形されて基材150が形成される。この基材150は、全体で平板状となっている。なお、第1コネクタ本体50a、第2コネクタ本体50b、及び第3コネクタ本体50cの製造に、同じ打ち抜き型を用いて成形された基材150を用いる。なお以下では、説明の便宜上、基材150の厚み方向が積層方向Xに沿うように基材150を載置させた状態で、基材150の形状について説明する。
【0078】
基材150においては、端子部51と接続部52とが第1方向Yに並ぶように互いに連続している。端子部51には挟持孔53hが形成されている。挟持部53は、挟持孔53hを囲むように延びている。一対の第1挟持部54は、挟持孔53hを挟んで第1方向Yの両側に位置している。第2挟持部55は、一対の第1挟持部54を挟んで第2方向Zの両側において、第1挟持部54から延びている。一対の連結部56は、第1方向Yに並ぶ2つの第2挟持部55の間を繋ぐように延びている。連続部59は、第2方向Z2側の連結部56と、第1方向Y1側かつ第2方向Z2側に位置する第2挟持部55とに連続している。切欠部57aは、第1方向Y1側かつ第2方向Z1側に位置する第2挟持部55と、第1方向Y2側かつ第2方向Z2側に位置する第2挟持部55と、にそれぞれ形成されている。爪部57bは、第1方向Y1側かつ第2方向Z2側に位置する第2挟持部55と、第1方向Y2側かつ第2方向Z1側に位置する第2挟持部55と、のそれぞれから延びている。基材150の接続部52は、連結部56に連続する延設部81と、延設部81に連続する突出部84と、を有している。
【0079】
基材150は、第1折り線R1、第2折り線R2、第3折り線R3、及び第4折り線R4に沿って屈曲される。第1折り線R1、第3折り線R3、及び第4折り線R4は山折り線であり、図9に一点鎖線で示している。第2折り線R2は谷折り線であり、図9に二点鎖線で示している。
【0080】
第1折り線R1は、第1方向Y1に並んで第2方向Zに2本延びている。第1折り線R1は、一対の連結部56と第2挟持部55との境界と、連結部56と第1延設部82及び連続部59との境界と、に位置する。第2折り線R2は、第2方向Zに並んで第1方向Yに2本延びている。第2折り線R2は、一対の第1挟持部54と第2挟持部55との境界に位置する。第3折り線R3は、第1方向Yに延びる2本の折り線である。第3折り線R3は、第2折り線R2よりも第2方向Zの外側において、第1方向Y1側かつ第2方向Z2側と、第1方向Y2側かつ第2方向Z1側と、に位置する。第3折り線R3は、第2挟持部55と爪部57bとの境界に位置する。第4折り線R4は、第1方向Y1に延びるとともに、一対の第1挟持部54の第2方向Zの中間に位置する。
【0081】
上記の各折り線に沿って基材150を屈曲させる。まず基材150を、第1折り線R1に沿って屈曲させる。これにより、一対の第1挟持部54、第2挟持部55、連続部59、及び接続部52は積層方向Xに立設した姿勢となる。連結部56は、第2挟持部55の第1積層方向X1側に位置するようになる。切欠部57a及び爪部57bは、連結部56よりも第2積層方向X2側に位置するようになる。切欠部57a及び爪部57bは、第2方向Zの両側において、第1方向Yに並んで位置するようになる。
【0082】
次に、基材150を第4折り線R4に沿って屈曲させる。これにより、一対の第1挟持部54は、第4折り線R4に沿う部分が第1方向Yの最も外側に位置するように、第2折り線R2の間で湾曲した形状となる。さらに基材150を第2折り線R2に沿って屈曲させる。これにより、第2挟持部55は湾曲しない形状となる。
【0083】
続いて、基材150を第3折り線R3に沿って屈曲させる。これにより、爪部57bは、第1方向Yに並ぶ切欠部57aに向けて延びた形状になるとともに、切欠部57aに係合した態様となる。
【0084】
また、図9において折り線の図示を省略しているが、第1延設部82における第2方向Zの途中位置において、第1延設部82の短手方向に沿って延びる折り線に沿って基材150を屈曲させる。これにより、第1延設部82に屈曲部85が形成される。第1延設部82での屈曲部85の形成位置を異ならせることにより、第1延設部82のクランク形状を異ならせることができる。これにより、基材150から、異なるクランク形状の第1延設部82を有する第1コネクタ本体50a、第2コネクタ本体50b、及び第3コネクタ本体50cを製造できる。
【0085】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)コネクタ本体50は、一対の挟持部53から突出部84まで連続する一体の金属板からなる。このようにコネクタ本体50を一体の金属板から形成できるため、コネクタ49の製造に際して溶接が不要になる。したがって、コネクタ49の生産性を向上させることができる。
【0086】
(2)端子部51は、一対の挟持部53のそれぞれを繋げる連結部56と、一対の挟持部53に対し連結部56とは反対側において係合しあうことで一対の挟持部53が互いに離れないよう拘束する一対の係合部57と、を有している。したがって、連結部56と係合部57によって一対の挟持部53が導電ピン27をより強固に挟持し、導電ピン27とコネクタ49との接続が安定する。
【0087】
(3)接続部52は、端子部51と突出部84とを繋げるとともにケース60の内部に収容される延設部81を有し、延設部81は屈曲する屈曲部85を有している。そのため、電動圧縮機10の振動に伴ってコネクタ本体50に応力が加わったとしても、加わった応力を屈曲部85において減衰できるため、振動に対するコネクタ49の耐久性を向上させることができる。
【0088】
(4)導電ピン27は表面に銅層27bを有しており、コネクタ本体50は銅板からなる。そのため、導電ピン27と挟持部53とが同じ銅同士で接触することになるため、接触抵抗を抑えることができる。したがって、インバータ装置30から電動モータ17により大きな電力を供給できる。
【0089】
(5)コネクタ本体50に溶接箇所が存在しないため、電動圧縮機10の振動に伴ってコネクタ本体50加わる応力に対するコネクタ本体50の耐久性を向上させることができる。
【0090】
(6)溶接のために必要な部材同士の重なりをコネクタ本体50に設ける必要がないため、部材同士の重なりを省略できる分だけコネクタ本体50を小型化させることができる。また、ケース60の内部にコネクタ本体50への溶接に用いる電極を挿入させるスペースも必要ないため、そのスペースを省略できる分だけケース60を小型化させることができる。したがって、コネクタ49全体の体格を小型化させることができる。
【0091】
(7)第1コネクタ本体50a、第2コネクタ本体50b、及び第3コネクタ本体50cの製造に、同じ打ち抜き型を用いて成形された基材150を用いている。そのため、コネクタ本体50毎で基材150の成形に異なる形状の打ち抜き型を用いる場合よりも、基材150の成形に係る工数を抑えることができるため、コネクタ49の生産性をさらに向上させることができる。
【0092】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0093】
○ 切欠部57aは、同一の第1挟持部54の第2方向Zの両端部に連続する第2挟持部55に形成されていてもよい。この場合、爪部57bは、切欠部57aが形成されない第2挟持部55に形成される。そのため、爪部57bも、同一の第1挟持部54の第2方向Zの両端部に連続する第2挟持部55から延びる形状となる。
【0094】
○ 連続部59を挟持部53から省略してもよい。
○ 一対の挟持部53によって導電ピン27を適切に挟持できれば、連結部56及び一対の係合部57の一方又は両方を端子部51から省略してもよい。
【0095】
○ 第2延設部83と突出部84とは、第2方向Zの寸法が同じであってもよい。
○ 導電ピン27のピン本体27aは、例えば四角柱等、円柱以外の形状の柱状であってもよい。
【0096】
○ 導電ピン27の表面への銅層27bの形成方法は、メッキ加工以外であってもよい。
○ 導電ピン27は銅層27b以外の金属層を表面に有してもよい。また、導電ピン27は表面に金属層を有さなくてもよい。
【0097】
○ コネクタ本体50は銅以外の金属板から形成されていてもよい。要するに、端子部51と接続部52とは銅板以外の一枚の金属板からなるものであってもよい。なお、この変更例において、導電ピン27が表面に金属層を有する場合には、コネクタ本体50と導電ピン27の表面の金属層とが同じ金属製であってもよいし、異なる金属製であってもよい。
【0098】
○ 全てのコネクタ本体50の第1延設部82が同じクランク形状を有していてもよい。
○ 3つのコネクタ本体50の一部又は全ての第1延設部82が、屈曲部85を有さず、屈曲しない形状であってもよい。
【0099】
○ 全て又は一部のコネクタ本体50の製造に、異なる形の打ち抜き型を用いて成形された基材150を用いてもよい。要するに、一枚の基材150から挟持部53と第1延設部82とで連続した端子部51及び接続部52を成形できれば、打ち抜き型の形状は特に限定しない。
【0100】
○ 本体収容凹部62や蓋体収容凹部72の形状は、特に限定されるものではない。要するに、本体収容凹部62や蓋体収容凹部72にコネクタ本体50を収容可能であれば、本体収容凹部62や蓋体収容凹部72の形状は適宜変更してもよい。
【0101】
○ ケース60内に収容されるコネクタ本体50の数は特に限定されるものではない。この場合、ケース60内に収容されるコネクタ本体50の数に対応するように、ケース60に形成される本体収容凹部62及び蓋体収容凹部72の形状や数を変更すればよい。
【0102】
○ 電動圧縮機10は、例えば、インバータ装置30が、ハウジング11に対して回転軸15の径方向外側に配置されている構成であってもよい。要するに、圧縮部16、電動モータ17、及びインバータ装置30が、この順で、回転軸15の軸線方向に並設されていなくてもよい。
【0103】
○ 圧縮部16は、スクロール式に限らず、例えば、ピストン式やベーン式等であってもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、車両空調装置23を構成していたが、これに限らず、例えば、電動圧縮機10は、燃料電池車に搭載されており、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮部16により圧縮するものであってもよい。
【符号の説明】
【0104】
10…電動圧縮機、11…ハウジング、13a…底壁、14a…インバータ収容室、16…圧縮部、17…電動モータ、18…モータ収容室、24a…ケース底壁、27…導電ピン、27b…銅層、30…インバータ装置、31…回路基板、49…コネクタ、50…コネクタ本体、51…端子部、52…接続部、53…挟持部、56…連結部、57…係合部、60…ケース、81…延設部、84…突出部、85…屈曲部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9