(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】培養容器
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230516BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M3/00 Z
(21)【出願番号】P 2020507916
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2019012012
(87)【国際公開番号】W WO2019182093
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2018056794
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】塚田 亮平
(72)【発明者】
【氏名】矢ヶ部 徹
(72)【発明者】
【氏名】大久保 春男
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/221665(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/049701(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/019675(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0152744(US,A1)
【文献】国際公開第2013/183121(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/147463(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容空間を有し、前記収容空間内で細胞を培養するための培養容器であって、
前記収容空間に連通する開口部を有する容器本体と、
前記開口部を塞ぐ内蓋と、
前記内蓋を貫通して前記収容空間まで延びる状態で前記内蓋と一体的に形成された、培地の供給又は排出用のノズルと、
前記内蓋とは別体で設けられて前記容器本体に対して前記内蓋を押圧固定する外蓋と、を備え
、
前記容器本体は、前記収容空間の上方を覆う天井部を有する培養容器。
【請求項2】
前記内蓋に、気体の供給又は排出用の通気孔が前記内蓋を貫通する状態で設けられている請求項1に記載の培養容器。
【請求項3】
前記容器本体は、前記収容空間の周囲を覆う周壁部を有する請求項1
又は2に記載の培養容器。
【請求項4】
前記容器本体は
、前記収容空間の周囲を覆う周壁
部をさらに有すると共に、前記天井部又は前記周壁部から突出してその突出端が前記開口部をなす筒状部を有する請求項1から
3のいずれか一項に記載の培養容器。
【請求項5】
前記外蓋は、前記筒状部に外装した状態で回転操作することによって前記内蓋を押圧固定するように構成されている請求項
4に記載の培養容器。
【請求項6】
前記ノズルが、前記内蓋の中心に対して偏心した位置に設けられている請求項1から
5のいずれか一項に記載の培養容器。
【請求項7】
前記容器本体は、前記収容空間の下方を覆う底部を有し、
前記底部の中央側に細胞培養領域が設けられていると共に、前記細胞培養領域の周縁に、前記細胞培養領域に向かって下方に傾斜する培地案内部が形成されている請求項1から
6のいずれか一項に記載の培養容器。
【請求項8】
前記容器本体は
、前記天井部から突出してその突出端が前記開口部をなす筒状
部をさらに有し、
前記筒状部が前記天井部から上方に突出するように形成され、
上下方向に見て、前記筒状部及び前記ノズルが前記培地案内部と重なる位置に配置されている請求項
7に記載の培養容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容空間内で細胞を培養するための培養容器に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の培養を行うには、その生育環境を所定条件下に維持する必要がある。そのため、細胞を培養するための培養容器には、細胞が収容される収容空間の密閉性が求められ、また、収容空間に対しては培地の供給や排出が適切に行われる必要がある。例えば、下記の特許文献1(特開2006-204263号公報)には、収容空間の密閉性の確保と、培地の適切な供給排出と、が図られた培養容器が開示されている。
【0003】
特許文献1の技術では、雌ネジを有するキャップを容器本体に形成されたネック部に螺合することによって、ネック部の先端に開口された開口部を塞ぎ、収容空間の密閉を図っている。
【0004】
また、特許文献1の
図7には、開口部から下方に延びることで収容空間に達するように形成されたノズルが示されている。これにより、特許文献1の技術では、収容空間内の培地を適切に排出可能となっている。例えば、このようなノズルを培地の供給用として用いることで、収容空間内に培地を適切に供給することも可能となる。
【0005】
ここで、特許文献1の技術では、収容空間を密閉するためのキャップと、培地の適切な排出(供給)を行うためのノズルと、が一体成形されている。しかしながら、キャップにおける雌ネジ等の細かな部分と、収容空間に達するためにある程度の長さが必要とされるノズル部分と、を一体成形することは、製造上困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
培地の供給又は排出を適切に行うことができると共に密閉性に優れ、且つ、容易に製造可能な培養容器が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る培養容器は、
内部に収容空間を有し、前記収容空間内で細胞を培養するための培養容器であって、
前記収容空間に連通する開口部を有する容器本体と、
前記開口部を塞ぐ内蓋と、
前記内蓋を貫通して前記収容空間まで延びる状態で前記内蓋と一体的に形成された、培地の供給又は排出用のノズルと、
前記内蓋とは別体で設けられて前記容器本体に対して前記内蓋を押圧固定する外蓋と、を備える。
【0009】
この構成によれば、培地の供給又は排出用のノズルが収容空間まで延びる状態で形成されているため、収容空間に対する培地の供給又は排出を適切に行うことができる。また、ノズルと一体形成された内蓋によって開口部を塞ぐと共に、この内蓋を外蓋によって押圧固定するため、収容空間の密閉性を適切に確保することが可能となる。そして、培地の供給又は排出用のノズルが形成された内蓋と、収容空間を適切に密閉可能とする外蓋と、が別体である。そのため、内蓋と外蓋とを別々に成形することが可能であり、全体として製造の容易な培養容器を実現可能となる。
【0010】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0011】
一態様として、
前記内蓋に、気体の供給又は排出用の通気孔が前記内蓋を貫通する状態で設けられていることが挙げられる。
【0012】
一態様として、
前記容器本体は、前記収容空間の上方を覆う天井部を有することが挙げられる。
【0013】
一態様として、
前記容器本体は、前記収容空間の周囲を覆う周壁部を有することが挙げられる。
【0014】
一態様として、
前記容器本体は、前記収容空間の上方を覆う天井部と前記収容空間の周囲を覆う周壁部とを有すると共に、前記天井部又は前記周壁部から突出してその突出端が前記開口部をなす筒状部を有することが挙げられる。
【0015】
一態様として、
前記外蓋は、前記筒状部に外装した状態で回転操作することによって前記内蓋を押圧固定するように構成されていることが挙げられる。
【0016】
一態様として、
前記ノズルが、前記内蓋の中心に対して偏心した位置に設けられていることが挙げられる。
【0017】
一態様として、
前記容器本体は、前記収容空間の下方を覆う底部を有し、
前記底部の中央側に細胞培養領域が設けられていると共に、前記細胞培養領域の周縁に、前記細胞培養領域に向かって下方に傾斜する培地案内部が形成されていることが挙げられる。
【0018】
一態様として、
前記容器本体は、前記収容空間の上方を覆う天井部と、前記天井部から突出してその突出端が前記開口部をなす筒状部と、を有し、
前記筒状部が前記天井部から上方に突出するように形成され、
上下方向に見て、前記筒状部及び前記ノズルが前記培地案内部と重なる位置に配置されていることが挙げられる。
【0019】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】その他の実施形態に係る培養容器の要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
培養容器の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、培養容器100は、内部に収容空間1を有し、収容空間1内で細胞99を培養するために用いられる。収容空間1には、細胞99と、細胞99に栄養分を与えるための培地98と、が収容される。培地98の成分は、培養の目的に応じて適宜変更することができる。また、培地98としては、液体培地や半流動培地等を用いることができる。本実施形態では、培地98として、流動性の高い液体培地が用いられる。
【0022】
培養容器100は、収容空間1に連通する開口部24Aを有する容器本体2と、開口部24Aを塞ぐ内蓋3と、を備えている。内蓋3により開口部24Aを塞ぐことで、収容空間1の密閉性を確保可能となっている。
【0023】
図1及び
図2に示すように、容器本体2は、収容空間1の上方を覆う天井部21と、収容空間1の周囲を覆う複数の周壁部23と、収容空間1の下方を覆う底部25と、を有している。本実施形態では、容器本体2は、上下方向視で矩形状に形成されており、4つの周壁部23を有している。そして、収容空間1は、天井部21、底部25、及び4つの周壁部23によって囲まれて形成されている。なお、容器本体2の材質には、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等を適用することができる。
【0024】
周壁部23は、下方に向かうに従って内側に傾斜するように構成されている。そのため、4つの周壁部23は、全体的に、下方に向かうに従って内側に窄まるように構成されている。これにより、収容空間1における下方の領域ほど狭くすることができ、少量の培地98によっても、収容空間1における下方の領域を培地98で満たし易くできる。従って、収容空間1における下方の領域に配置された細胞99に対して、培地98を行き渡らせ易くできる。
【0025】
底部25には、細胞99が配置される細胞培養領域25Aと、細胞培養領域25Aに培地98を案内する培地案内部25Bと、が設けられている。図示の例では、細胞培養領域25Aは、底部25の中央側に設けられている。そして、培地案内部25Bは、細胞培養領域25Aの周縁において、細胞培養領域25Aに向かって下方に傾斜するように形成されている。これにより、底部25の中央側に配置された細胞培養領域25Aに対して、適切に培地98を案内することができる。
図2に示す例では、培地案内部25Bは、上下方向視において、細胞培養領域25Aに向かって次第に広がるように形成されている。具体的には、培地案内部25Bは、上下方向視において、後述する供給用のノズル4の位置の近傍を頂点とする三角形状(または円弧状)に形成されている。これにより、培地98を、細胞培養領域25Aの全体に行き渡らせ易くすることができる。
【0026】
本実施形態では、底部25における細胞培養領域25Aに相当する部分に、表面処理(例えば親水化処理)が施されている。これにより、細胞培養領域25Aに対して細胞99を接着させ易くすることができる。このような構成であると、いわゆる接着培養を行う際に好適である。図示の例では、細胞99は、細胞培養領域25Aに接着することで当該細胞培養領域25Aに配置される。但し、培養容器100は、いわゆる浮遊培養を行う際にも用いることができる。この場合には、細胞培養領域25Aは所定の高さを有する領域であり、細胞99は、細胞培養領域25A内を浮遊した状態で当該細胞培養領域25Aに配置される。
【0027】
容器本体2は、天井部21又は周壁部23から突出してその突出端が開口部24Aをなす筒状部24を有している。本実施形態では、筒状部24は、天井部21から上方に突出するように形成されている。図示の例では、筒状部24の上端部が開口部24Aをなしており、筒状部24の下端部が天井部21に接続されている。また、本例では、筒状部24は、円筒状に形成されており、その外周面に雄ねじ部24Sを有している。開口部24Aが、筒状部24の突出端に形成されていることで、当該開口部24Aを塞ぐ内蓋3の取り付けが容易となっている。
【0028】
内蓋3は、容器本体2に形成された開口部24Aを塞ぐ。
図3に示すように、本実施形態では、内蓋3は、開口部24Aを塞いだ状態で容器本体2の内部に向かって突出する嵌合部31を有している。嵌合部31は、内蓋3が開口部24Aを塞いだ状態で、筒状部24の内面に形成された筒状内周面24Bの周方向における全体に亘って当接するように構成されている。嵌合部31の先端部には、先端側に向かうに従って内蓋中心3C側に狭まるテーパ部31Aが形成されている。テーパ部31Aは、内蓋3によって開口部24Aを塞ぐ際に、嵌合部31を開口部24Aに案内する機能を有している。なお、本実施形態において、内蓋中心3Cは、上下方向視における内蓋3の中心を指す(
図2参照)。
【0029】
内蓋3は、筒状部24(容器本体2)に対して上方から当接する容器側当接部32を有している。容器側当接部32は、内蓋3の底面部分において、嵌合部31の外周を囲むように形成されている。また、内蓋3は、後述する外蓋6に対して下方から当接する外蓋側当接部33を有している。外蓋側当接部33は、内蓋3の上面部分における周縁に形成されている。
【0030】
ところで、
図1に示すように、本実施形態では、容器本体2は、一対の開口部24Aを有している。そして、一対の開口部24Aのうち一方は、培地98及び気体を収容空間1内に供給するためのものであり、他方は、収容空間1内の培地98及び気体を収容空間1から排出するためのものである。培養容器100は、一対の開口部24Aを介して培地98及び気体の供給と排出とを行うことで、収容空間1内における細胞99の生育環境を所定条件下に維持することが可能となっている。従って、本実施形態に係る培養容器100は、培地98の供給及び排出を各種部品を固定化したままで、取り外しをすることなく行う場合等に好適である。
【0031】
培養容器100は、内蓋3を貫通して収容空間1まで延びる状態で内蓋3と一体的に形成された、培地98の供給又は排出用のノズル4を備えている。これにより、収容空間1に対する培地98の供給又は排出が可能となっている。
図1に示すように、本実施形態では、ノズル4は、一対の開口部24Aのそれぞれを塞ぐ内蓋3に対応して設けられている。一対のノズル4のうちの一方(図示の例では左側のノズル4)は、培地98の供給用であり、他方(図示の例では右側のノズル4)は、培地98の排出用である。
【0032】
ノズル4は、内蓋3が開口部24Aを塞いだ状態で、容器本体2の内方及び外方に向けて突出している。ノズル4における容器本体2の内方に突出する部分(以下、ノズル先端部41という)は、収容空間1内に配置されている。ノズル4における容器本体2の外方に突出する部分(以下、ノズル基端部42という)には、送液管97が接続されている。
送液管97は、培地98が通流する管である。本実施形態では、培地98の供給用のノズル4に接続された送液管97(図中左側の送液管97)には、不図示の培地供給部から収容空間1に供給される培地98が通流する。また、培地98の排出用のノズル4に接続された送液管97(図中右側の送液管97)には、収容空間1から排出される培地98が通流する。
【0033】
本実施形態では、内蓋3に、気体の供給又は排出用の通気孔5が内蓋3を貫通する状態で設けられている。これにより、収容空間1に対する気体の供給又は収容空間1からの気体の排出が可能となっている。
図1に示すように、本実施形態では、通気孔5は、一対の開口部24Aのそれぞれを塞ぐ内蓋3に対応して設けられている。一対の通気孔5のうちの一方(図示の例では左側の通気孔5)は、気体の供給用であり、他方(図示の例では右側の通気孔5)は、気体の排出用である。
【0034】
本実施形態では、通気孔5は、送気管96が接続されるための管接続部51を有している。管接続部51は、内蓋3が開口部24Aを塞いだ状態で、容器本体2の外方に向けて突出している。これにより、管接続部51に対する送気管96の接続が容易となっている。本実施形態では、気体の供給用の通気孔5における管接続部51に接続された送気管96(図中左側の送気管96)には、不図示の気体供給部から収容空間1に供給される気体が通流する。また、気体の排出用の通気孔5における管接続部51に接続された送気管96(図中右側の送気管96)には、収容空間1から排出される気体が通流する。但し、このような構成に限られず、通気孔5は管接続部51を有していなくても良い。この場合には、通気孔5と送気管96とが直接接続される。
【0035】
図2に示すように、本実施形態では、上下方向に見て、筒状部24及びノズル4が培地案内部25Bと重なる位置に配置されている。これにより、培地案内部25Bに対して適切に培地98を供給でき、培地案内部25Bの傾斜面を利用して、細胞培養領域25Aに対して適切に培地98を案内することができる。また、ノズル4から供給される培地98が細胞培養領域25Aに配置されている細胞99に対して直接かからないようにでき、細胞99が損傷すること等を抑制できる。
【0036】
本実施形態では、ノズル4は、内蓋3における内蓋中心3Cに対して偏心した位置に設けられている。同様に、通気孔5も、内蓋3における内蓋中心3Cに対して偏心した位置に設けられている。これにより、培地98と気体の通流経路を、内蓋3に分けて配置することが容易となる。また、例えば、1つの内蓋3に対してノズル4や通気孔5を複数設けることも容易となる。
【0037】
本実施形態では、培地98の排出用のノズル4は、内蓋中心3Cに対して、容器本体2の中央側に偏心している。ここで、
図1には、供給用ノズル4及び排出用ノズル4が同じ長さに構成されている例が示されている。しかし、上記のように、排出用のノズル4が内蓋中心3Cに対して容器本体2の中央側に偏心していることで、例えば、排出用のノズル4を、培地案内部25Bの傾斜面に接触することを避けつつ、より下方まで延ばして配置することが可能となる。換言すれば、排出用のノズル4は、供給用のノズル4に比べてより下方に延ばして配置されていても良い。これにより、収容空間1の下方に貯留された培地98を適切に排出することが可能となる。
【0038】
培養容器100は、内蓋3とは別体で設けられて容器本体2に対して内蓋3を押圧固定する外蓋6を備えている。これにより、収容空間1の密閉性を向上させることができる。
【0039】
本実施形態では、外蓋6は、その中央側において上下方向に貫通する中央開口部61を有している。内蓋3のノズル4(詳細にはノズル基端部42)と通気孔5の管接続部51とは、中央開口部61を通って容器本体2の外方に突出している。上下方向視において、中央開口部61は、内蓋3よりも小さく形成されている。これにより、外蓋6は、中央開口部61によってノズル4及び管接続部51を容器本体2の外方に突出させつつ、他の部分によって内蓋3を上方から押圧固定することが可能となっている。
【0040】
図3に示すように、本実施形態では、外蓋6は、内蓋3を押圧固定する押圧部62を有している。押圧部62は、外蓋6が筒状部24に外装された状態で下方を向くように構成されており、内蓋3に対して上方から当接する。
図3に示す例では、押圧部62は、内蓋3の外蓋側当接部33と当接するように構成されている。
【0041】
本実施形態では、外蓋6は、筒状部24に外装した状態で回転操作されることによって内蓋3を押圧固定するように構成されている。
図3に示すように、外蓋6は、筒状部24の雄ねじ部24Sと噛み合う雌ねじ部6Sを有しており、これにより、筒状部24に対して螺合可能となっている。外蓋6の押圧部62と内蓋3の外蓋側当接部33とが当接した状態で、外蓋6を螺合方向に回転操作することで、外蓋側当接部33に対して押圧部62をより強く当接させることができ、内蓋3を開口部24A(筒状部24)に対してより強固に固定することが可能となる。これにより、収容空間1の密閉性を更に向上させることが可能となっている。
【0042】
以上のように、培養容器100は、培地98の供給又は排出用のノズル4が形成された内蓋3と、収容空間1を適切に密閉可能とする外蓋6と、が別体である。そのため、内蓋3と外蓋6とを別々に成形することが可能であり、全体として製造の容易な培養容器100を実現可能となる。
【0043】
更に、ノズル4が、内蓋3における内蓋中心3Cに対して偏心した位置に設けられているため、培地98と気体の通流経路を、内蓋3に分けて配置することが容易となる。例えば、ノズル4が内蓋中心3Cに対して偏心して配置されつつ、内蓋3と外蓋6とが一体物である場合には、螺合時の回転操作により内蓋中心3Cまわりにノズル4も回転する。この場合には、回転するノズル4が、培地案内部25Bの傾斜面に接触する可能性が高くなり、接触した場合には、ノズル4が破損したり容器本体2の底部25(培地案内部25B)が削れたりする。しかし、本実施形態では、上述のように、ノズル4が形成された内蓋3と外蓋6とが別体であるため、外蓋6の回転操作によっても内蓋3が回転することはなく、当該内蓋3を開口部24A(筒状部24)に対して強固に固定することができる。これにより、培地98の適切な供給と収容空間1の確実な密閉とを可能としつつ、外蓋6の螺合時にノズル4と容器本体2の底部25(培地案内部25B)とが接触することを抑制できる。
【0044】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、開口部24Aが、容器本体2の天井部21から突出する筒状部24の突出端に形成されている例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、
図4に示すように、開口部24Aが容器本体2の天井部21に直接形成され、容器本体2が筒状部を有しない構成であっても良い。この場合には、開口部24Aの周囲に外蓋6を係止する係止爪26が形成され、外蓋6には、この係止爪26に係止されるための係止部63が設けられていると良い。係止爪26に係止された外蓋6は、内蓋3に対して上方から当接して当該内蓋3を押圧固定する。
【0045】
(2)上記の実施形態では、ノズル4及び通気孔5のいずれもが、内蓋中心3Cに対して偏心して配置されている例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ノズル4又は通気孔5のいずれかが、内蓋中心3Cの位置となるように配置されていても良い。
【0046】
(3)上記の実施形態では、培地98の供給用のノズル4と気体の供給用の通気孔5とが、内蓋3において別々に配置されている例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ノズル4は、培地98の供給と気体の供給とを兼ねていても良い。
【0047】
(4)上記の実施形態では、上下方向視において容器本体2が矩形状である例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、容器本体2の上下方向視での形状は、多角形状や円形状であっても良い。
【0048】
(5)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
100 :培養容器
1 :収容空間
2 :容器本体
3 :内蓋
3C :内蓋中心
4 :ノズル
5 :通気孔
6 :外蓋
21 :天井部
23 :周壁部
24 :筒状部
24A :開口部
25 :底部
25A :細胞培養領域
25B :培地案内部
98 :培地
99 :細胞