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特許7279732樹脂組成物、接着フィルム、プリント配線板及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】樹脂組成物、接着フィルム、プリント配線板及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20230516BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230516BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20230516BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230516BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230516BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C08G59/40
C08L63/00 Z
C08K5/29
C08K3/36
H05K1/03 610L
H05K3/46 T
H05K3/46 G
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021077508
(22)【出願日】2021-04-30
(62)【分割の表示】P 2019196437の分割
【原出願日】2015-06-04
(65)【公開番号】P2021119245
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2014133894
(32)【優先日】2014-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 嘉生
(72)【発明者】
【氏名】巽 志朗
(72)【発明者】
【氏名】藤島 祥平
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真俊
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-010153(JP,A)
【文献】特開2004-035858(JP,A)
【文献】特開2002-201358(JP,A)
【文献】特開2011-132507(JP,A)
【文献】国際公開第2013/111345(WO,A1)
【文献】特開2010-111859(JP,A)
【文献】特開2006-335834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00- 59/72
C08L 63/00- 63/10
H05K 1/03
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル化合物、(C)カルボジイミド化合物、(D)熱可塑性樹脂及び(E)シリカを含む樹脂組成物であって、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、(E)成分の含有量が40質量%以上85質量%以下であり、(A)成分の含有量が質量%以上40質量%以下であり、(C)成分の含有量が1質量%以上30質量%以下であり、(D)成分の含有量が1質量%以上であり、(D)成分が、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群より選択される1種以上の原子又は炭素-炭素二重結合を含有する官能基を有する熱可塑性樹脂であり、
該樹脂組成物の硬化物の、周波数5.8GHz、温度23℃における誘電正接が0.010以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
(D)成分が、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、酸無水物基含有ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びスチレン系エラストマー樹脂からなる群より選択される1種以上の熱可塑性樹脂である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル化合物、(C)カルボジイミド化合物、(D)熱可塑性樹脂及び(E)シリカを含む樹脂組成物であって、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、(E)成分の含有量が40質量%以上85質量%以下であり、(A)成分の含有量が質量%以上40質量%以下であり、(D)成分が、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、酸無水物基含有ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選択される1種以上の熱可塑性樹脂であり、
該樹脂組成物の硬化物の、周波数5.8GHz、温度23℃における誘電正接が0.010以下である、樹脂組成物。
【請求項4】
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、1質量%以上30質量%以下である、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤及びベンゾオキサジン系硬化剤から選ばれる1種以上の硬化剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(C)成分の重量平均分子量が、500~5000である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(D)成分が、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群より選択される1種以上の原子又は炭素-炭素二重結合を含有する官能基を有する熱可塑性樹脂である、請求項3~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(D)成分が、水酸基、カルボキシ基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、チオール基、エノール基、エナミン基、ウレア基、シアネート基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、ジイミド基、アルケニル基、アレン基及びケテン基からなる群より選択される1種以上の官能基を有する熱可塑性樹脂(但し、(A)成分とは異なる。)である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(D)成分の重量平均分子量が、10000~200000である、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、質量%以上30質量%以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
(A)エポキシ樹脂が、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂を含み、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)が、質量比で、1:0.3~1:7の範囲である、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
(A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、質量%以上35質量%以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
(E)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、50質量%以上85質量%以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
(E)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、62質量%以上85質量%以下である、請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
(E)成分の平均粒子径が、0.01μm~3μmである、請求項1~14のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
さらに(F)硬化促進剤を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
(F)成分が、4-ジメチルアミノピリジン又は1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールである、請求項16に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、該絶縁層の表面を粗化処理した後の算術平均粗さ(Ra)が5nm以上140nm以下であり、前記粗化処理が、絶縁層の表面を、30℃~90℃の膨潤液に1分間~20分間、60℃~80℃の酸化剤溶液に10分間~30分間、30℃~80℃の中和液に5分間~30分間、この順で浸漬させることで行われる、請求項1~17のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
樹脂組成物の硬化物の破断点伸度であって日本工業規格(JIS K7127)に準拠して、引っ張り試験法により測定された破断点伸度が2%以上10%以下である、請求項1~18のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項20】
樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)が165℃以上250℃以下である、請求項1~19のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項21】
支持体と、該支持体と接合している請求項1~20のいずれか1項に記載の樹脂組成物の層とを含む、接着フィルム。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項23】
請求項22に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、該樹脂組成物を用いた接着フィルム、プリント配線板、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造技術として、絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。ビルドアップ方式による製造方法において、一般に、絶縁層は樹脂組成物を硬化させて形成される。例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂、活性エステル化合物及びカルボジイミド化合物を含む樹脂組成物を硬化させて低誘電正接の絶縁層を形成する技術が開示されている。
【0003】
近年の軽薄短小の傾向から、プリント配線板のビルドアップによる積層数は増加する傾向にあるが、積層数の増加に伴って絶縁層と導体層との熱膨張の差によるクラックや回路歪みの発生が問題となる。斯かるクラックや回路歪みの問題を抑制する技術として、例えば、特許文献2には、樹脂組成物中の無機充填材の含有量を高めることによって、形成される絶縁層の熱膨張率を低く抑える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-335834号公報
【文献】特開2010-202865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、プリント配線板の製造に際して、低誘電正接かつ低熱膨張率の絶縁層を形成すべく、特許文献1記載の樹脂組成物に無機充填材を高い含有量にて配合することを試みた。得られる樹脂組成物は、所期の誘電正接、熱膨張率を示す絶縁層をもたらす一方において、破断点伸度、表面粗度、ピール強度等の特性に劣る絶縁層に帰着する場合のあることを本発明者らは見出した。
【0006】
本発明は、プリント配線板の製造に際して、誘電正接、熱膨張率、破断点伸度、表面粗度及びピール強度のいずれの特性にも優れる絶縁層をもたらすことのできる樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題につき鋭意検討した結果、下記特定の樹脂組成物によれば上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル化合物、(C)カルボジイミド化合物、(D)熱可塑性樹脂及び(E)無機充填材を含み、(E)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、40質量%以上である、樹脂組成物。
[2] (D)成分の重量平均分子量が、10000~200000である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (D)成分が、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群より選択される1種以上の原子又は炭素-炭素二重結合を含有する官能基を有する熱可塑性樹脂である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (D)成分が、水酸基、カルボキシ基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、チオール基、エノール基、エナミン基、ウレア基、シアネート基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、ジイミド基、アルケニル基、アレン基及びケテン基からなる群より選択される1種以上の官能基を有する熱可塑性樹脂である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] (D)成分が、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、酸無水物基含有ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びスチレン系エラストマー樹脂からなる群より選択される1種以上の熱可塑性樹脂である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] (C)成分の重量平均分子量が、500~5000である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] (C)成分のNCO含有量が5質量%以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] (E)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、50質量%以上である、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] (E)成分の平均粒子径が、0.01μm~3μmである、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] (E)成分がシリカである、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11] さらに(F)硬化促進剤を含む、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12] (F)成分が、4-ジメチルアミノピリジン又は1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールである、[11]に記載の樹脂組成物。
[13] 樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、該絶縁層の表面を粗化処理した後の算術平均粗さ(Ra)が140nm以下である、[1]~[12]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[14] 樹脂組成物の硬化物の破断点伸度が2%以上である、[1]~[13]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[15] 樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)が165℃以上である、[1]~[14]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[16] 支持体と、該支持体と接合している[1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物の層とを含む、接着フィルム。
[17] [1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
[18] [17]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プリント配線板の製造に際して、誘電正接、熱膨張率、破断点伸度、表面粗度及びピール強度のいずれの特性にも優れる絶縁層をもたらすことのできる樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0011】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル化合物、(C)カルボジイミド化合物、(D)熱可塑性樹脂及び(E)無機充填材を含み、(E)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、40質量%以上であることを特徴とする。
【0012】
(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル化合物及び(C)カルボジイミド化合物を含有する樹脂組成物に、(E)無機充填材を高い含有量にて配合すると、得られる樹脂組成物は、低誘電正接、低熱膨張率を示す絶縁層をもたらす一方において、破断点伸度、表面粗度、ピール強度等の特性に劣る絶縁層に帰着する場合のあることを本発明者らは見出した。本発明の樹脂組成物は、さらに(D)熱可塑性樹脂を含有することにより、低誘電正接、低熱膨張率はそのままに、破断点伸度、表面粗度及びピール強度にも優れる絶縁層をもたらすことを可能とするものである。この点、(B)活性エステル化合物を含まない樹脂組成物に(D)熱可塑性樹脂を添加しても、所期の破断点伸度、表面粗度及びピール強度は達成されない。また、(C)カルボジイミド化合物を含まない樹脂組成物に(D)熱可塑性樹脂を添加しても、所期の破断点伸度、表面粗度及びピール強度は達成されない。(E)無機充填材含有量の低い樹脂組成物に(D)熱可塑性樹脂を添加すると、そもそも所期の誘電正接、熱膨張率が達成されない。これらは、後に示す比較例の結果から明確に把握される。このように、本発明の樹脂組成物が奏する効果は、(A)エポキシ樹脂に加えて、(B)活性エステル化合物、(C)カルボジイミド化合物、(D)熱可塑性樹脂、及び一定量以上の(E)無機充填材を組み合わせて使用することにより特異的かつ相乗的にもたらされる効果である。
【0013】
以下、本発明の樹脂組成物に含まれる各成分について記載する。
【0014】
<(A)エポキシ樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(A)成分として、エポキシ樹脂を含む。
【0015】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)とを含むことが好ましい。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用することで、優れた可撓性を有する樹脂組成物が得られる。また、樹脂組成物の硬化物の破断強度も向上する。
【0017】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールAF型エポキシ樹脂がさらに好ましく、硬化物の物性バランスに優れるという観点から、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂が特に好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032」、「HP4032H」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、ナガセケムテックス(株)製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、(株)ダイセル製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA7311」、「EXA7311-G3」、「EXA7311-G4」、「EXA7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂(ビフェニル型エポキシ樹脂))、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル(株)製の「PG-100」、「CG-500」、三菱化学(株)製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0019】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1~1:8の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)接着フィルムの形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)接着フィルムの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する硬化物を得ることができるなどの効果が得られる。上記i)~iii)の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.3~1:7の範囲がより好ましく、1:0.6~1:6の範囲がさらに好ましい。
【0020】
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、好ましくは3質量%~40質量%、より好ましくは5質量%~35質量%、さらに好ましくは10質量%~35質量%又は10質量%~30質量%である。
なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0021】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50~5000、より好ましくは50~3000、さらに好ましくは80~2000、さらにより好ましくは110~1000である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0022】
<(B)活性エステル化合物>
本発明の樹脂組成物は、(B)成分として、活性エステル化合物を含む。
【0023】
活性エステル化合物は、1分子中に活性エステル基を1個以上有する化合物であり、後述する(C)カルボジイミド化合物、(D)熱可塑性樹脂、及び一定量以上の(E)無機充填材と組み合わせて使用することにより、誘電正接、熱膨張率、破断点伸度、表面粗度及びピール強度のいずれの特性にも優れる絶縁層をもたらすことができる。
【0024】
活性エステル化合物としては、1分子中に活性エステル基を2個以上有する化合物が好ましく、例えば、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。活性エステル化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られる活性エステル化合物が好ましい。中でも、カルボン酸化合物と、フェノール化合物、ナフトール化合物及びチオール化合物から選択される1種以上とを反応させて得られる活性エステル化合物がより好ましく、カルボン酸化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させて得られる、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物がさらに好ましく、少なくとも2個以上のカルボキシ基を1分子中に有するカルボン酸化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させて得られる芳香族化合物であって、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物がさらにより好ましい。活性エステル化合物は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。また、少なくとも2個以上のカルボキシ基を1分子中に有するカルボン酸化合物が脂肪族鎖を含む化合物であれば樹脂組成物との相溶性を高くすることができ、芳香環を有する化合物であれば耐熱性を高くすることができる。
【0026】
カルボン酸化合物としては、例えば、炭素原子数1~20(好ましくは2~10、より好ましくは2~8)の脂肪族カルボン酸、炭素原子数7~20(好ましくは7~10)の芳香族カルボン酸が挙げられる。脂肪族カルボン酸としては、例えば、酢酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。中でも、耐熱性の観点から、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましい。
【0027】
チオカルボン酸化合物としては、特に制限はないが、例えば、チオ酢酸、チオ安息香酸等が挙げられる。
【0028】
フェノール化合物としては、例えば、炭素原子数6~40(好ましくは6~30、より好ましくは6~23、さらに好ましくは6~22)のフェノール化合物が挙げられ、好適な具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール等が挙げられる。フェノール化合物としてはまた、フェノールノボラック、特開2013-40270号公報記載のフェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーを使用してもよい。
【0029】
ナフトール化合物としては、例えば、炭素原子数10~40(好ましくは10~30、より好ましくは10~20)のナフトール化合物が挙げられ、好適な具体例としては、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。ナフトール化合物としてはまた、ナフトールノボラックを使用してもよい。
【0030】
中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーが好ましく、カテコール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーがより好ましく、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーがさらに好ましく、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーがさらにより好ましく、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーが殊更好ましく、ジシクロペンタジエン型ジフェノールが特に好ましい。
【0031】
チオール化合物としては、特に制限はないが、例えば、ベンゼンジチオール、トリアジンジチオール等が挙げられる。
【0032】
活性エステル化合物の好適な具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーとを反応させて得られる活性エステル化合物が挙げられ、中でもジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーとを反応させて得られる活性エステル化合物がより好ましい。なお本発明において、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0033】
ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、より具体的には下記式(1)の化合物が挙げられる。
【0034】
【化1】
(式中、Rはフェニル基又はナフチル基であり、kは0又は1を表し、nは繰り返し単位の平均数で0.05~2.5である。)
【0035】
誘電正接を低下させ、耐熱性を向上させる観点から、Rはナフチル基が好ましく、kは0が好ましく、nは0.25~1.5が好ましい。
【0036】
活性エステル化合物としては、特開2004-277460号公報、特開2013-40270号公報に開示されている活性エステル化合物を用いてもよく、また市販の活性エステル化合物を用いることもできる。市販されている活性エステル化合物としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、EXB9451、EXB9460、EXB9460S、HPC-8000-65T(DIC(株)製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物としてEXB9416-70BK(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物としてDC808(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物としてYLH1026(三菱化学(株)製)、リン原子含有活性エステル化合物としてEXB9050L-62M(DIC(株))が挙げられる。
【0037】
後述する(C)カルボジイミド化合物、(D)熱可塑性樹脂、及び一定量以上の(E)無機充填材との組み合わせにおいて、誘電正接、熱膨張率、破断点伸度、表面粗度及びピール強度のいずれの特性にも優れる絶縁層を得る観点、特に表面粗度が低く、高いピール強度を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の活性エステル化合物の含有量は、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。活性エステル化合物の含有量の上限は特に限定されないが、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0038】
また、(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、機械強度の良好な絶縁層を得る観点から、(B)活性エステル化合物の反応基数は、0.2~2が好ましく、0.3~1.5がより好ましく、0.35~1がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値である。また、「反応基」とはエポキシ基と反応することができる官能基のことを意味し、「活性エステル化合物の反応基数」とは、樹脂組成物中に存在する活性エステル化合物の固形分質量を反応基当量で除した値を全て合計した値である。
【0039】
<(C)カルボジイミド化合物>
本発明の樹脂組成物は、(C)成分として、カルボジイミド化合物を含む。
【0040】
カルボジイミド化合物は、1分子中にカルボジイミド基(-N=C=N-)を1個以上有する化合物であり、上記の(B)活性エステル化合物、後述する(D)熱可塑性樹脂、及び一定量以上の(E)無機充填材と組み合わせて使用することにより、誘電正接、熱膨張率、破断点伸度、表面粗度及びピール強度のいずれの特性にも優れる絶縁層をもたらすことができる。カルボジイミド化合物としては、1分子中にカルボジイミド基を2個以上有する化合物が好ましい。カルボジイミド化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物に含まれるカルボジイミド化合物は、下記式(2)で表される構造単位を含有する。
【0042】
【化2】
(式中、Xは、アルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基を表し、これらは置換基を有していてもよい。pは1~5の整数を表す。Xが複数存在する場合、それらは同一でも相異なってもよい。*は結合手を表す。)
【0043】
Xで表されるアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、さらに好ましくは1~6、1~4、又は1~3である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。該アルキレン基の好適な例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。
【0044】
Xで表されるシクロアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~12、さらに好ましくは3~6である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。該シクロアルキレン基の好適な例としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基が挙げられる。
【0045】
Xで表されるアリーレン基は、芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子を2個除いた基である。該アリーレン基の炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~14、さらにより好ましくは6~10である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。該アリーレン基の好適な例としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基が挙げられる。
【0046】
(B)活性エステル化合物、(D)熱可塑性樹脂、及び一定量以上の(E)無機充填材との組み合わせにおいて、誘電正接、熱膨張率、破断点伸度、表面粗度及びピール強度に一層優れる絶縁層を実現する観点から、Xは、アルキレン基又はシクロアルキレン基であることが好ましく、これらは置換基を有していてもよい。
【0047】
Xで表されるアルキレン基、シクロアルキレン基又はアリール基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基及びアシルオキシ基が挙げられる。置換基として用いられるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。置換基として用いられるアルキル基、アルコキシ基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、その炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、さらに好ましくは1~6、1~4、又は1~3である。置換基として用いられるシクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~12、さらに好ましくは3~6である。置換基として用いられるアリール基は、芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子を1個除いた基であり、その炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~14、さらにより好ましくは6~10である。置換基として用いられるアリールオキシ基の炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~14、さらにより好ましくは6~10である。置換基として用いられるアシル基は、式:-C(=O)-Rで表される基(式中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。)をいう。Rで表されるアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、その炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、さらに好ましくは1~6、1~4、又は1~3である。Rで表されるアリール基の炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~14、さらにより好ましくは6~10である。置換基として用いられるアシルオキシ基は、式:-O-C(=O)-Rで表される基(式中、Rは上記と同じ意味を表す。)をいう。中でも、置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、及びアシルオキシ基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0048】
式(2)中、pは1~5の整数を表す。(B)活性エステル化合物、(D)熱可塑性樹脂、及び一定量以上の(E)無機充填材との組み合わせにおいて、誘電正接、熱膨張率、破断点伸度、表面粗度及びピール強度に一層優れる絶縁層を実現する観点から、pは、好ましくは1~4、より好ましくは2~4、さらに好ましくは2又は3である。
【0049】
式(2)中、Xが複数存在する場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。好適な一実施形態において、少なくとも1つのXは、アルキレン基又はシクロアルキレン基であり、これらは置換基を有していてもよい。
【0050】
好適な一実施形態において、カルボジイミド化合物は、カルボジイミド化合物の分子全体の質量を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上又は90質量%以上にて、式(2)で表される構造単位を含有する。カルボジイミド化合物は、末端構造を除いて、式(2)で表される構造単位から実質的になってもよい。カルボジイミド化合物の末端構造としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。末端構造として用いられるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基は、Xで表される基が有していてもよい置換基について説明したアルキル基、シクロアルキル基、アリール基と同じであってよい。また、末端構造として用いられる基が有していてもよい置換基は、Xで表される基が有していてもよい置換基と同じであってよい。
【0051】
樹脂組成物を硬化する際のアウトガスの発生を抑制し得る観点から、カルボジイミド化合物の重量平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは600以上、さらに好ましくは700以上、さらにより好ましくは800以上、特に好ましくは900以上又は1000以上である。また、良好な相溶性を得る観点から、カルボジイミド化合物の重量平均分子量の上限は、好ましくは5000以下、より好ましくは4500以下、さらに好ましくは4000以下、さらにより好ましくは3500以下、特に好ましくは3000以下である。カルボジイミド化合物の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定することができる。
【0052】
なお、カルボジイミド化合物は、その製法に由来して、分子中にイソシアネート基(-N=C=O)を含有する場合がある。良好な保存安定性を示す樹脂組成物を得る観点、ひいては所期の特性を示す絶縁層を実現する観点から、カルボジイミド化合物中のイソシアネート基の含有量(「NCO含有量」ともいう。)は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、さらにより好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下又は0.5質量%以下である。
【0053】
カルボジイミド化合物は、市販品を使用してもよい。市販のカルボジイミド化合物としては、例えば、日清紡ケミカル(株)製のカルボジライト(登録商標)V-02B、V-03、V-04K、V-07及びV-09、ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P、P400、及びハイカジル510が挙げられる。
【0054】
(B)活性エステル化合物、(D)熱可塑性樹脂、及び一定量以上の(E)無機充填材との組み合わせにおいて、誘電正接、熱膨張率、破断点伸度、表面粗度及びピール強度のいずれの特性にも優れる絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中のカルボジイミド化合物の含有量は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上、4質量%以上又は5質量%以上がさらに好ましい。カルボジイミド化合物の含有量の上限は特に限定されないが、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0055】
<(D)熱可塑性樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(D)成分として、熱可塑性樹脂を含む。
【0056】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、酸無水物基含有ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリスルホン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が80℃以上のものが好ましい。
【0057】
中でも、(B)活性エステル化合物、(C)カルボジイミド化合物、及び一定量以上の(E)無機充填材との組み合わせにおいて、誘電正接、熱膨張率、破断点伸度、表面粗度及びピール強度に一層優れる絶縁層を得る観点から、熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、酸無水物基含有ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及びスチレン系エラストマー樹脂からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0058】
機械強度の良好な絶縁層を得る観点から、熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10000以上、より好ましくは15000以上、さらに好ましくは20000以上、さらにより好ましくは25000以上又は30000以上である。良好な相溶性を得る観点から、熱可塑性樹脂の重量平均分子量の上限は、好ましくは200000以下、より好ましくは180000以下、さらに好ましくは160000以下、さらにより好ましくは150000以下である。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定することができる。詳細には、熱可塑性樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、測定装置として(株)島津製作所製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0059】
(B)活性エステル化合物、(C)カルボジイミド化合物、及び一定量以上の(E)無機充填材との組み合わせにおいて、誘電正接、熱膨張率、破断点伸度、表面粗度及びピール強度のいずれの特性にも優れる絶縁層を得る観点、特にピール強度の高い絶縁層を得る観点から、熱可塑性樹脂は、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群より選択される1種以上の原子又は炭素-炭素二重結合を含有する官能基を有することが好ましい。斯かる官能基としては、水酸基、カルボキシ基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、チオール基、エノール基、エナミン基、ウレア基、シアネート基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、ジイミド基、アルケニル基、アレン基及びケテン基からなる群より選択される1種以上が挙げられる。酸無水物基としては、カルボン酸無水物基が好ましい。アルケニル基の好適な例としては、ビニル基、アリル基、スチリル基が挙げられる。斯かる官能基を有する熱可塑性樹脂を使用することにより、得られる絶縁層のガラス転移温度は高くなる傾向にあり、良好な耐熱性を示す絶縁層を実現することもできる。熱可塑性樹脂が斯かる官能基を含む場合、熱可塑性樹脂の官能基当量は、好ましくは100000以下、より好ましくは90000以下、80000以下、70000以下、60000以下、50000以下、40000以下、30000以下、20000以下、10000以下、8000以下、6000以下又は5000以下である。該官能基当量の下限は特に限定されないが、通常、50以上、100以上などとし得る。
【0060】
以下に、好適な熱可塑性樹脂についてより詳細に説明するが、公知の手順に従って、以下に示す熱可塑性樹脂に上記の官能基をさらに付加した熱可塑性樹脂も本発明において好適に使用することができる。
【0061】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、新日鉄住金化学(株)製の「FX280」及び「FX293」、三菱化学(株)製の「YL7553」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0062】
ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製の電化ブチラール4000-2、5000-A、6000-C、6000-EP、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0063】
酸無水物基含有ビニル樹脂は、例えば、酸無水物基含有モノマー(d1)とその他のモノマー(d2)とを共重合させることにより得ることができる。酸無水物基含有モノマー(d1)としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸が挙げられる。その他のモノマー(d2)としては、酸無水物基含有モノマー(d1)と共重合し得る限り特に限定されず、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等のエチレン性不飽和モノマーを使用してよい。酸無水物基含有ビニル樹脂の具体例としては、CRAY VALLEY HSC社製の「EF-30」、「EF-40」、「EF-60」、「EF-80」が挙げられる。
【0064】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製の「リカコートSN-20」及び「リカコートPN-20」、DIC(株)製の「ユニディックV-8000」などが挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報、特開2000-319386号公報、WO2010/53186等)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0065】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0066】
スチレン系エラストマー樹脂としては、例えば、スチレン若しくはその類似体のブロックを少なくとも一つの末端ブロックとして含み、共役ジエン若しくはその水添物のエラストマーブロックを少なくとも一つの中間ブロックとして含むブロック共重合体を挙げることができる。詳細には、スチレン-ブタジエンジブロックコポリマー、スチレン-ブタジエントリブロックコポリマー、スチレン-イソプレンジブロックコポリマー、スチレン-イソプレントリブロックコポリマー、水素添加スチレン-ブタジエンジブロックコポリマー、水素添加スチレン-ブタジエントリブロックコポリマー、水素添加スチレン-イソプレンジブロックコポリマー、水素添加スチレン-イソプレントリブロックコポリマー、水素添加スチレン-ブタジエンランダムコポリマーなどが挙げられる。スチレン系エラストマー樹脂の具体例としては、旭化成工業(株)製のアサプレン、タフプレン、アサフレックス;クラレ(株)製のハイブラー、セプトンが挙げられる。
【0067】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0068】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0069】
(B)活性エステル化合物、(C)カルボジイミド化合物、及び一定量以上の(E)無機充填材との組み合わせにおいて、誘電正接、熱膨張率、破断点伸度、表面粗度及びピール強度のいずれの特性にも優れる絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上がさらに好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。熱可塑性樹脂の含有量の上限は特に限定されないが、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下がさらにより好ましい。
【0070】
<(E)無機充填材>
本発明の樹脂組成物は、(E)成分として、一定量以上の無機充填材を含む。
【0071】
(B)活性エステル化合物、(C)カルボジイミド化合物、及び(D)熱可塑性樹脂との組み合わせにおいて、誘電正接、熱膨張率、破断点伸度、表面粗度及びピール強度のいずれの特性にも優れる絶縁層を得る観点、特に低誘電正接、低熱膨張率の絶縁層を得る観点から、樹脂組成物層中の無機充填材の含有量は、40質量%以上であり、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上又は60質量%以上である。無機充填材を、(B)活性エステル化合物、(C)カルボジイミド化合物、及び(D)熱可塑性樹脂と組み合わせて使用する本発明においては、破断点伸度、表面粗度及びピール強度を低下させることなく、無機充填材の含有量を更に高めることができる。例えば、樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、62質量%以上、64質量%以上、66質量%以上、68質量%以上、70質量%以上、72質量%以上、又は74質量%以上にまで高めてよい。
【0072】
樹脂組成物中の無機充填材の含有量の上限は、得られる絶縁層の機械強度の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0073】
無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられ、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。またシリカとしては球形シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。市販されている球状溶融シリカとして、(株)アドマテックス製「SO-C2」、「SO-C1」が挙げられる。
【0074】
無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、その上に微細な配線を形成し得る絶縁層を得る観点から、3μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、1μm以下、0.7μm以下、0.5μm以下、0.4μm以下、又は0.3μm以下がさらに好ましい。一方、樹脂組成物を使用して樹脂ワニスを形成する際に適度な粘度を有し取り扱い性の良好な樹脂ワニスを得る観点から、無機充填材の平均粒径は、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上、0.07μm以上、又は0.1μm以上がさらに好ましい。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製「LA-500」、「LA-750」、「LA-950」等を使用することができる。
【0075】
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0076】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下が更に好ましい。
【0077】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、(株)堀場製作所製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0078】
<(F)硬化促進剤>
本発明の樹脂組成物は、(F)成分として、硬化促進剤をさらに含んでもよい。
【0079】
硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤等が挙げられ、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0081】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0082】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0083】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0084】
中でも、上記(A)乃至(E)成分との組み合わせにおいて、誘電正接、熱膨張率、破断点伸度、表面粗度及びピール強度に一層優れる絶縁層を得る観点から、硬化促進剤としては、4-ジメチルアミノピリジン、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが特に好ましい。
【0085】
樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.005質量%~1質量%、より好ましくは0.01質量%~0.5質量%である。
【0086】
<その他の成分>
-硬化剤-
本発明の樹脂組成物は、さらに硬化剤(但し、(B)成分を除く。)を含んでもよい。硬化剤を含有することにより、得られる絶縁層の絶縁信頼性、ピール強度、機械強度を高めることができる。硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤等を挙げることができる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、上記(A)乃至(E)成分との組み合わせにおいて、誘電正接、熱膨張率、破断点伸度、表面粗度及びピール強度に一層優れる絶縁層を得る観点から、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤が好ましい。
【0087】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、ピール強度の観点から、含窒素フェノール系硬化剤又は含窒素ナフトール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤又はトリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び導体層との密着強度を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成(株)製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬(株)製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学(株)製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-375」、「SN-395」、DIC(株)製の「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-3018」、「LA-1356」、「TD2090」等が挙げられる。
【0088】
シアネートエステル系硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネートエステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル系硬化剤、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)シアネートエステル系硬化剤、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。具体例としては、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の市販品としては、ロンザジャパン(株)製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0089】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子(株)製の「HFB2006M」、四国化成工業(株)製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。
【0090】
樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、特に限定されないが、得られる絶縁層の機械強度の観点から、0.5質量%~10質量%が好ましく、1質量%~6質量%がより好ましい。
【0091】
-難燃剤-
本発明の樹脂組成物は、さらに難燃剤を含んでもよい。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂組成物中の難燃剤の含有量は特に限定はされないが、好ましくは0.5質量%~10質量%、より好ましくは1質量%~9質量%である。
【0092】
-有機充填材-
本発明の樹脂組成物は、さらに有機充填材を含んでもよい。有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子などが挙げられ、ゴム粒子が好ましい。
【0093】
ゴム粒子としては、ゴム弾性を示す樹脂に化学的架橋処理を施し、有機溶剤に不溶かつ不融とした樹脂の微粒子体である限り特に限定されず、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。ゴム粒子としては、具体的には、XER-91(日本合成ゴム(株)製)、スタフィロイドAC3355、AC3816、AC3816N、AC3832、AC4030、AC3364、IM101(以上、アイカ工業(株)製)パラロイドEXL2655、EXL2602(以上、呉羽化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0094】
有機充填材の平均粒子径は、好ましくは0.005μm~1μmの範囲であり、より好ましくは0.2μm~0.6μmの範囲である。有機充填材の平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。例えば、適当な有機溶剤に有機充填材を超音波などにより均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製「FPAR-1000」)を用いて、有機充填材の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。樹脂組成物中の有機充填材の含有量は、好ましくは1質量%~10質量%、より好ましくは2質量%~5質量%である。
【0095】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、さらに他の成分を含んでいてもよい。斯かる他の成分としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、着色剤及び硬化性樹脂等の樹脂添加剤等が挙げられる。
【0096】
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等を添加し、回転ミキサーなどを用いて混合・分散する方法などが挙げられる。
【0097】
本発明の樹脂組成物は、低誘電正接の硬化物(絶縁層)をもたらすことができる。本発明の樹脂組成物の硬化物の誘電正接は、後述の<誘電正接の測定>に記載の方法により測定することができる。具体的には、空洞共振器摂動法により周波数5.8GHz、測定温度23℃で測定することができる。高周波での発熱防止、信号遅延及び信号ノイズの低減の観点から、誘電正接は0.010以下が好ましく、0.009以下がより好ましく、0.008以下、0.007以下又は0.006以下がさらに好ましい。誘電正接の下限は、低いほど好ましいが、通常、0.001以上などとし得る。
【0098】
本発明の樹脂組成物は、低熱膨張率の硬化物(絶縁層)をもたらすことができる。本発明の樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数は、後述の<ガラス転移温度及び線熱膨張係数の測定>に記載の方法により測定することができる。具体的には、引張加重法で熱機械分析を行うことにより、25~150℃における平面方向の平均線熱膨張係数を測定することができる。本発明の樹脂組成物の硬化物は、好ましくは40ppm/℃以下、より好ましくは35ppm/℃以下、さらに好ましくは30ppm/℃以下、さらにより好ましくは25ppm/℃以下、特に好ましくは20ppm/℃以下の線熱膨張係数を示すことができる。線熱膨張係数の下限は特に限定されないが、通常、1ppm/℃以上である。
【0099】
本発明の樹脂組成物は、良好な破断点伸度を示す硬化物(絶縁層)をもたらすことができる。本発明の樹脂組成物の硬化物の破断点伸度は、後述の<破断点伸度の測定>に記載の方法により測定することができる。具体的には、日本工業規格(JIS K7127)に準拠して、引っ張り試験法により測定することができる。本発明の樹脂組成物の硬化物は、好ましくは2%以上、より好ましくは2.1%以上、さらに好ましくは2.2%以上、さらにより好ましくは2.3%以上、2.4%以上、又は2.5%以上の破断点伸度を示すことができる。破断点伸度の上限は、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。
【0100】
本発明の樹脂組成物は、表面粗度の低い硬化物(絶縁層)をもたらすことができる。本発明の樹脂組成物の硬化物の算術平均粗さ(Ra)は、後述の<算術平均粗さ(Ra)の測定>に記載の方法により測定することができる。粗化処理後の絶縁層表面は、電気信号のロスを軽減するという点で、表面凹凸は小さいことが望まれる。具体的には、樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、該絶縁層の表面を粗化処理した後の該絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、140nm以下が好ましく、130nm以下がより好ましく、120nm以下がさらに好ましく、110nm以下がさらにより好ましく、100nm以下が特に好ましい。算術平均粗さ(Ra)の下限は、十分なピール強度を得る観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上がさらに好ましい。
【0101】
本発明の樹脂組成物は、ピール強度の高い硬化物(絶縁層)をもたらすことができる。本発明の樹脂組成物の硬化物のピール強度は、後述の<メッキ導体層のピール強度の測定>に記載の方法により測定することができる。具体的には、樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、粗化処理した後の該絶縁層の表面にメッキして導体層を形成した場合、得られる導体層と絶縁層とのピール強度は、0.50kgf/cm以上が好ましく、0.55kgf/cm以上がより好ましく、0.60kgf/cm以上がさらに好ましい。ピール強度の上限は特に限定されないが、通常、1.2kgf/cm以下などとし得る。
【0102】
本発明の樹脂組成物はまた、ガラス転移温度(Tg)の高い硬化物(絶縁層)をもたらすことができる。本発明の樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、後述の<破断点伸度の測定>に記載の方法により測定することができる。本発明の樹脂組成物の硬化物は、好ましくは165℃以上、より好ましくは170℃以上、175℃以上、又は180℃以上のガラス転移温度(Tg)を示すことができる。ガラス転移温度(Tg)の上限は特に限定されないが、通常、250℃以下である。
【0103】
本発明の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層用樹脂組成物)としてより好適に使用することができ、その上にメッキにより導体層が形成される層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(メッキにより導体層を形成するプリント配線板の層間絶縁層用樹脂組成物)としてさらに好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はまた、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。
【0104】
[接着フィルム]
本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で用いることもできるが、工業的には一般に、接着フィルムの形態で用いることが好ましい。
【0105】
接着フィルムは、支持体と、該支持体と接合している樹脂組成物層(接着層)とを含んでなり、樹脂組成物層(接着層)が本発明の樹脂組成物から形成される。
【0106】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、さらにより好ましくは50μm以下又は40μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上又は10μm以上である。
【0107】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0108】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0109】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0110】
支持体は、樹脂組成物層と接合する側の表面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する側の表面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック(株)製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」などが挙げられる。
【0111】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、支持体が離型層付き支持体である場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0112】
接着フィルムは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0113】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0114】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0115】
接着フィルムにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。接着フィルムは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。接着フィルムが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0116】
本発明の接着フィルムは、プリント配線板の絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶縁層用)に好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するため(プリント配線板の層間絶縁層用)により好適に使用することができ、その上にメッキにより導体層が形成される層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(メッキにより導体層を形成するプリント配線板の層間絶縁層用)にさらに好適に使用することができる。
【0117】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。
【0118】
一実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述の接着フィルムを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、接着フィルムを、該接着フィルムの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
【0119】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板、又は該基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された回路基板をいう。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう「内層基板」に含まれる。
【0120】
内層基板と接着フィルムの積層は、例えば、支持体側から接着フィルムを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。接着フィルムを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を接着フィルムに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に接着フィルムが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0121】
内層基板と接着フィルムの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0122】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、ニチゴー・モートン(株)製のバキュームアップリケーター等が挙げられる。
【0123】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された接着フィルムの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0124】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0125】
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。
【0126】
樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0127】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は120℃~240℃の範囲(好ましくは150℃~210℃の範囲、より好ましくは170℃~190℃の範囲)、硬化時間は5分間~90分間の範囲(好ましくは10分間~75分間、より好ましくは15分間~60分間)とすることができる。
【0128】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)予備加熱してもよい。
【0129】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)絶縁層表面に導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。
【0130】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0131】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクトCP、ドージングソリューション・セキュリガンスP等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のリダクションソリューション・セキュリガントPが挙げられる。中和液による処理は、酸化剤溶液による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。
【0132】
工程(V)は、絶縁層表面に導体層を形成する工程である。
【0133】
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0134】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0135】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0136】
導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0137】
まず、絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチングなどにより除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0138】
上述のとおり、本発明の樹脂組成物を使用してプリント配線板を製造することにより、誘電正接、熱膨張率、破断点伸度、表面粗度及びピール強度のいずれの特性にも優れる絶縁層を備えたプリント配線板を有利に製造することができる。
【0139】
[半導体装置]
本発明のプリント配線板を用いて、半導体装置を製造することができる。半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0140】
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0141】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、などが挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例
【0142】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、「部」は質量部を意味する。
【0143】
〔測定方法・評価方法〕
まずは各種測定方法・評価方法について説明する。
【0144】
<ピール強度、算術平均粗さ(Ra値)測定用サンプルの調製>
(1)内層回路基板の下地処理
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック(株)製「R1515A」)の両面をメック(株)製「CZ8101」にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行った。
【0145】
(2)接着フィルムの積層
実施例及び比較例で作製した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーター((株)名機製作所製「MVLP-500」)を用いて、樹脂組成物層が内層回路基板と接合するように、内層回路基板の両面にラミネート処理した。ラミネート処理は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより行った。
【0146】
(3)樹脂組成物の硬化
接着フィルムの積層後、100℃で30分間、次いで180℃で30分間の条件で樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成した。その後、支持体を剥離して絶縁層を露出させた。
【0147】
(4)粗化処理
絶縁層の露出した内層回路基板を、膨潤液(アトテックジャパン(株)製「スエリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル含有の水酸化ナトリウム水溶液)に60℃で10分間浸漬し、次いで酸化剤(アトテックジャパン(株)製「コンセントレート・コンパクトCP」、過マンガン酸カリウム濃度約6質量%、水酸化ナトリウム濃度約4質量%の水溶液)に80℃で20分間浸漬し、最後に中和液(アトテックジャパン(株)製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸ヒドロキシルアミン水溶液)に40℃で5分間浸漬した。その後、80℃で30分間乾燥させた。得られた基板を「評価基板a」と称する。
【0148】
(5)導体層の形成
セミアディティブ法に従って、絶縁層の粗化面に導体層を形成した。
すなわち、粗化処理後の基板を、PdClを含む無電解メッキ液に40℃で5分間浸漬した後、無電解銅メッキ液に25℃で20分間浸漬した。次いで、150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによりパターン形成した。その後、硫酸銅電解メッキを行い、厚さ30μmの導体層を形成し、アニール処理を200℃にて60分間行った。得られた基板を「評価基板b」と称する。
【0149】
<算術平均粗さ(Ra)の測定>
評価基板aについて、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製「WYKO NT3300」)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値によりRa値を求めた。無作為に選んだ10点の平均値を求めることにより測定した。
【0150】
<メッキ導体層のピール強度の測定>
絶縁層と導体層のピール強度の測定は、評価基板bについて、日本工業規格(JIS C6481)に準拠して行った。具体的には、評価基板bの導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定し、剥離強度を求めた。測定には、引っ張り試験機((株)TSE製「AC-50C-SL」)を使用した。
【0151】
<破断点伸度の測定>
実施例及び比較例で作製した接着フィルムを200℃にて90分間加熱して樹脂組成物層を熱硬化させた後、支持体を剥離した。得られた硬化物を「評価用硬化物c」と称する。評価用硬化物cについて、日本工業規格(JIS K7127)に準拠して、テンシロン万能試験機((株)オリエンテック製「RTC-1250A」)により引っ張り試験を行い、破断点伸度を測定した。
【0152】
<ガラス転移温度及び線熱膨張係数の測定>
評価用硬化物cを、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、熱機械分析装置((株)リガク製「Thermo Plus TMA8310」)を使用して、引張加重法にて熱機械分析を行った。詳細には、試験片を前記熱機械分析装置に装着した後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。そして2回目の測定において、ガラス転移温度(Tg;℃)と、25℃から150℃までの範囲における平均線熱膨張係数(CTE;ppm/℃)を算出した。
【0153】
<誘電正接の測定>
評価用硬化物cを、幅2mm、長さ80mmの試験片に切断した。該試験片について、アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接を測定した。2本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。
【0154】
<実施例1>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「828US」、エポキシ当量約180)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量約269)25部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)25部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部を、ソルベントナフサ30部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC(株)製「LA-3018-50P」、水酸基当量約151、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)15部、活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)20部、カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル(株)製「V-03」、NCO含有量0質量%、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)20部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分10質量%のMEK溶液)3部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SO-C2」)275部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを調製した。
【0155】
支持体としてアルキド樹脂系離型層付きPETフィルム(リンテック(株)製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。該支持体の離型層上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが30μmとなるように樹脂ワニスを均一に塗布し、80℃~120℃(平均100℃)で4分間乾燥させて、接着フィルムを作製した。
【0156】
<実施例2>
カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル(株)製「V-03」、不揮発分50質量%のトルエン溶液)の配合量を80部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0157】
<実施例3>
アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SO-C2」)の配合量を100部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0158】
<実施例4>
アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SO-C2」)275部を、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.3μm、(株)アドマテックス製「SO-C1」)275部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0159】
<実施例5>
活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)20部を、活性エステル化合物(DIC(株)製「EXB9050L-62M」、活性基当量約334、不揮発成分62質量%のMEK溶液)21部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0160】
<実施例6>
硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分10質量%のMEK溶液)3部を、硬化促進剤(四国化成(株)製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、固形分10質量%のMEK溶液)6部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0161】
<実施例7>
カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル(株)製「V-03」、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)20部を、カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル(株)製「V-07」、NCO含有量0.5質量%、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)20部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0162】
<実施例8>
フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部を、ポリビニルブチラール樹脂(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS-1」、不揮発成分15質量%のエタノールとトルエンの1:1溶液)40部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0163】
<実施例9>
フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部を、酸無水物基含有ビニル系樹脂(CRAY VALLEY HSC社製「EF-30」、固形分50%のシクロヘキサノン溶液)12部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0164】
<実施例10>
フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部を、ポリイミド樹脂(新日本理化(株)製「SN-20」、固形分20%のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液)30部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0165】
<実施例11>
フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部を、ポリイミド樹脂(DIC(株)製「ユニディックV-8000」、不揮発成分40質量%のエチルジグリコールアセテート溶液)15部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0166】
<実施例12>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「828US」、エポキシ当量約180)10部を、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂((株)ダイセル製「セロキサイド 2021P」)10部に変更した以外は、実施例2と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0167】
<実施例13>
トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC(株)製「LA-3018-50P」、水酸基当量約151、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)の配合量を5部に変更し、ベンゾオキサジン系硬化剤(四国化成工業(株)製「P-d」、固形分50%のシクロヘキサノン溶液)10部を追加した以外は、実施例2と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0168】
<実施例14>
フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部を、合成例1のシロキサン骨格含有ポリイミド樹脂(固形分55質量%)10.9部に変更した以外は、実施例2と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0169】
[合成例1]
環流冷却器を連結した水分定量受器、窒素導入管、攪拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)20部、γ-ブチロラクトン70.9部、トルエン7部、ジアミノシロキサン(信越化学工業(株)製「X-22-9409」、アミン当量665)61.5部、2,6-ビス(1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル)-1,5-ナフタレンジアミン(HFA-NAP)7.4部を加えて窒素気流下で45℃にて2時間攪拌して反応を行った。次いでこの反応溶液を昇温し、約160℃に保持しながら窒素気流下で縮合水をトルエンとともに共沸除去した。水分定量受器に所定量の水がたまっていること、水の流出が見られなくなっていることを確認したところでさらに昇温し、200℃で1時間攪拌した。その後冷却して終了とし、ヘキサフルオロイソプロパノール基(HFA基)を有するシロキサン骨格含有ポリイミド樹脂を55質量%含むワニスを作製した。この場合の、樹脂中のシロキサン構造の含有量は70.9質量%で、HFA基当量は2881g/molである。
【0170】
<実施例15>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「828US」、エポキシ当量約180)10部を、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7760」、エポキシ当量約235)10部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0171】
<比較例1>
カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル(株)製「V-03」、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)20部を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0172】
<比較例2>
活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)20部を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0173】
<比較例3>
フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0174】
<比較例4>
アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SO-C2」)の配合量を40部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを作製した。
【0175】
結果を表1に示す。
【0176】
【表1】