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  • 特許-機器ケースの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】機器ケースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 39/00 20060101AFI20230516BHJP
   G04B 37/18 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
G04B39/00 K
G04B37/18 Y
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021113206
(22)【出願日】2021-07-08
(62)【分割の表示】P 2019216717の分割
【原出願日】2015-06-11
(65)【公開番号】P2021165755
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2021-07-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎一
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-315475(JP,A)
【文献】実開平04-130094(JP,U)
【文献】特開2005-091319(JP,A)
【文献】特開昭53-030361(JP,A)
【文献】特開平11-118960(JP,A)
【文献】特開2008-31235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ガラスからなる第1の層の表面に有機無機共重合ガラスからなる第2の層が重畳された第1のユニット部材を、ケース本体に形成された嵌装部に嵌め込み、前記第1のユニット部材を、前記ケース本体の前記嵌装部内に固定する第1工程と、
有機ガラスからなる第1の層の表面に有機無機共重合ガラスからなる第2の層が重畳された第2のユニット部材を、前記ケース本体に形成された溝部に嵌め込み、前記第2のユニット部材を前記溝部内に固定する第2工程と、
を含み、
前記第1工程は、前記第1のユニット部材における前記第1の層と前記第2の層の重畳面が、前記嵌装部の上端面よりも低い位置になるように形成し、
前記第2工程は、前記第2のユニット部材における前記第1の層と前記第2の層の重畳面が、前記溝部の上端面よりも低い位置になるように形成することを特徴とする機器ケースの製造方法。
【請求項2】
前記第1工程は、前記第1のユニット部材を前記ケース本体に形成された前記嵌装部に防水リングを介して嵌め込み、前記第1のユニット部材の前記第1の層を超音波溶着させることにより前記第1のユニット部材を前記嵌装部内に固定することを特徴とする請求項1に記載の機器ケースの製造方法。
【請求項3】
前記第2工程は、前記第2のユニット部材を前記溝部の底面に接着材で接着させることにより前記溝部内に固定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の機器ケースの製造方法。
【請求項4】
前記第1のユニット部材は、前記嵌装部を閉塞する風防部材であることを特徴とする請求項1から請求項の何れか一項に記載の機器ケースの製造方法。
【請求項5】
前記溝部は環状に形成され、前記第2のユニット部材は、前記溝部に嵌装される加飾リング部材であることを特徴とする請求項1から請求項の何れか一項に記載の機器ケースの製造方法。
【請求項6】
前記ケース本体内に、表示部と、前記表示部を動作させるモジュールと、を収容することを特徴とする請求項1から請求項の何れか一項に記載の機器ケースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器ケースの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、時計等の機器ケースの風防部材や加飾部材(装飾部材)としては、無機ガラスや有機ガラス(例えばアクリルガラス等)が用いられている。
無機ガラスは、表面硬度が高く、傷がつきにくい反面、重量が重く、風防部材等に用いた場合、機器全体が重くなってしまう。
また、無機ガラスは形状加工が難しいため、各種のデザイン性の高い形状の装飾部品等には適用しにくい。
【0003】
他方、有機ガラスは、無機ガラスに比べて軽量であり、形状加工もしやすいため、各種形状の風防部材や加飾部材(装飾部材)として適用することができる。
しかし、有機ガラスの表面硬度は低く、繰り返し使用するうちに擦れや傷がつきやすい。このため、特に有機ガラスを風防部材として使用した場合には、繰り返しの使用によって視認性が低下するおそれもある。
【0004】
この点、例えば特許文献1には、腕時計のケース等において、プラスチック製半製品に硬質ラッカーで被覆することにより光学的および機械的表面仕上げ処理を行うことが記載されている。
そこで、アクリル樹脂等で形成される有機ガラスについても、このような表面被覆処理を施すことで無機ガラスに近い表面強度を持たせることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-164010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、有機ガラスの表面にハードコーティングを施しただけでは、表面硬度は鉛筆硬度で3H程度しか向上せず、ガラス表面の損傷を十分に防止することができず、無機ガラスと同等の表面硬度、耐衝撃性を実現することは難しい。
【0007】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、無機ガラスと同等の表面硬度、耐衝撃性を実現しつつ、有機ガラスのような軽量で加工性に優れたガラスユニットを備える機器ケースの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る機器ケースの製造方法は、
有機ガラスからなる第1の層の表面に有機無機共重合ガラスからなる第2の層が重畳された第1のユニット部材を、ケース本体に形成された嵌装部に嵌め込み、前記第1のユニット部材を、前記ケース本体の前記嵌装部内に固定する第1工程と、
有機ガラスからなる第1の層の表面に有機無機共重合ガラスからなる第2の層が重畳された第2のユニット部材を、前記ケース本体に形成された溝部に嵌め込み、前記第2のユニット部材を前記溝部内に固定する第2工程と、
を含み、
前記第1工程は、前記第1のユニット部材における前記第1の層と前記第2の層の重畳面が、前記嵌装部の上端面よりも低い位置になるように形成し、
前記第2工程は、前記第2のユニット部材における前記第1の層と前記第2の層の重畳面が、前記溝部の上端面よりも低い位置になるように形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無機ガラスと同等の表面硬度、耐衝撃性を実現しつつ、有機ガラスのような軽量で加工性に優れたガラスユニットを機器ケースに設けることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態における時計の正面図である。
図2図1のII-II線に沿う模式的な要部断面図である。
図3】従来のガラスユニットをケース本体に嵌着した状態を示す要部断面図である。
図4】ガラスユニットをその接合部分がケース本体の外側に露出した状態でケース本体に嵌着した状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1から図4を参照しつつ、本発明に係る機器ケース及び時計の一実施形態について説明する。 なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0012】
図1は、本実施形態における時計の正面図である。
図1に示すように、本実施形態における時計100は、機器ケース1と、この機器ケース1内に収容される表示部2及びモジュール3とを有している。
【0013】
本実施形態の機器ケース1は、中空の短柱形状に形成されたケース本体10と、このケース本体10に装着されるユニット部材であるガラスユニット(後述する第1のガラスユニット4、第2のガラスユニット5)とを備えている。
図1に示すように、ケース本体10は、時計100の表面側(時計における視認側)に開口部11を有している。
ケース本体10は、例えば、ABS樹脂、ポリアリレート(PAR)等のスーパーエンジニアリング・プラスチックやポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)等のエンジニアリング・プラスチック等の硬質の合成樹脂によって形成されている。なお、ケース本体10を形成する材料はここに例示したものに限定されない。
ケース本体10の外側面には、対向する位置(図1においては時計100の上下位置)に図示しないバンドが取り付けられる一対のバンド取付け部12が設けられている。
また、ケース本体10の側部(図1においては時計100の左右位置)には、ユーザが各種入力操作を行う操作ボタン13が設けられている。
【0014】
ケース本体10の内部には、表示部2が収容されている。
本実施形態において表示部2は、デジタル表示機能を備える液晶表示パネル21を有している。表示部2の液晶表示パネル21には、例えば時刻やカレンダー等が表示される。
なお、表示部2は、液晶表示パネル21を有するものに限定されず、例えば有機ELディスプレイ等を備えるものであってもよい。
また、表示部2は、デジタル方式の表示部に限定されず、文字板と指針等を備えるアナログ方式の表示部であってもよいし、アナログ方式、デジタル方式の両方を備える表示部であってもよい。
【0015】
また、ケース本体10の内部には、表示部2を動作させるモジュール3が収容されている。
モジュール3は、例えば図示しない各種電子部品等が実装された回路基板等が、樹脂等で形成されたハウジング内に収容されたものである。
また、モジュール内には、時計各部に電源を供給する図示しない電池が設けられている。
【0016】
ケース本体10の表面側の開口部11には、風防部材である第1のガラスユニット4を嵌装する嵌装部14が形成されている。
図2は、図1におけるII-II線に沿う模式的な断面図である。
図2に示すように、開口部11には、ケース本体10の上端面から所定の深さ下がった位置に、ケース本体10の内側面からケース本体10の内側に向かって張り出す内向きフランジ141が設けられている。
本実施形態では、開口部11におけるケース本体10の内側面と内向きフランジ141とによって嵌装部14が構成されている。
【0017】
嵌装部14には、第1のガラスユニット4が開口部11を閉塞するように嵌装されている。
第1のガラスユニット4(風防部材)は、第1の層である有機ガラス41の表面に第2の層である有機無機共重合ガラス層43が重畳されてなるものである。
有機ガラス41は、例えば、アクリルガラス等である。
有機無機共重合ガラス層43は、例えば、例えばSiO2ガラス等の無機ガラスの成分と有機モノマーとを共重合させたものである。有機無機共重合ガラス層43としては、その表面硬度が無機ガラスと同等の硬度(例えば鉛筆硬度で9H程度)を有するものを用いることが好ましい。
なお、有機ガラス41及び有機無機共重合ガラス層43の厚み(例えば2mm程度)は、機器ケース1の大きさや用途等に応じて適宜設定されるが、有機無機共重合ガラス層43の厚み(図2における厚みT、例えば0.5mm程度)は後述するように、嵌装部14の上端面から第1のガラスユニット4の上面までの高さA(図2参照)よりも厚くなっている。
有機ガラス41と有機無機共重合ガラス層43とは透明な接着剤や両面テープ(例えば高透明性接着剤転写テープ等のように基材のない粘着剤のみで構成されたテープが好ましい。)等で構成される接着層42を介して接合されている。また、本実施形態では、有機ガラス41の裏面側(図2における下側)に各種文字等が印刷された印刷層44が設けられている。
【0018】
第1のガラスユニット4(風防部材)は、例えば図示しない防水リング等を介して開口部11に嵌め込まれ、内向きフランジ141の上面に保持され、例えば内向きフランジ141やケース本体10の内側面に有機ガラス41の部分を超音波溶着させることにより嵌装部14内に固定される。
なお、第1のガラスユニット4(風防部材)を嵌装部14内に固定する手法は超音波溶着に限定されず、各種の溶着や接着による固定等によってもよい。
【0019】
図2に示すように、嵌装部14は、第1のガラスユニット4(風防部材)を当該第1のガラスユニット4(風防部材)の表面と直交する方向から嵌装部14内に嵌装した際に、その上端面が有機無機共重合ガラス層43における重畳面(すなわち有機無機共重合ガラス層43の下側の面)よりも高い位置にくるように形成されている。
本実施形態では、第1のガラスユニット4の上面は、嵌装部14の上端面よりも高い位置にあり、第1のガラスユニット4がケース本体10の上端面よりも上に盛り上がるデザインとなっているが、図2に示すように、嵌装部14の上端面から第1のガラスユニット4の上面までの高さAは、有機無機共重合ガラス層43の厚みT(すなわち、有機無機共重合ガラス層43の重畳面から第1のガラスユニット4の上面までの高さ)よりも低くなっている。
【0020】
また、図1及び図2に示すように、本実施形態のケース本体の上面には、開口部11を囲むように嵌装部としての溝部15が形成されており、この溝部15には、第2のガラスユニット5(加飾リング部材)が嵌装されている。
第2のガラスユニット5(加飾リング部材)は、第1のガラスユニット4(風防部材)と同様に、有機ガラス51の表面に有機無機共重合ガラス層53が重畳されてなり、有機ガラス51と有機無機共重合ガラス層53とは接着層52を介して接合されている。
有機ガラス51、有機無機共重合ガラス層53、接着層52の具体的な材料等は、第1のガラスユニット4(風防部材)の有機ガラス41、有機無機共重合ガラス層43、接着層42と同様であるため説明を省略する。
【0021】
図2に示すように、溝部15は、第2のガラスユニット5(加飾リング部材)を当該第2のガラスユニット5(加飾リング部材)の表面と直交する方向から溝部15内に嵌装した際に、その上端面が有機無機共重合ガラス層53における重畳面(すなわち有機無機共重合ガラス層53の下側の面)よりも高い位置にくるように形成されている。
第2のガラスユニット5(加飾リング部材)は、接着剤54により溝部15内に固定されている。
なお、第2のガラスユニット5(加飾リング部材)を溝部15内に固定する手法は接着剤54による固定に限定されず、例えば溝部15の底面等に有機ガラス51の部分を超音波溶着させる等、各種の溶着によってもよいし、両面テープ等により固定してもよい。
【0022】
次に、本実施形態における機器ケース1及びこれを適用した時計100の作用について説明する。
【0023】
本実施形態において、機器ケース1を組み立てる際には、ケース本体10内に表示部2及びモジュール3等を収納する。
そして、風防部材である第1のガラスユニット4をケース本体10の開口部11に防水リング等を介して嵌め込み、内向きフランジ141やケース本体10の内側面に有機ガラス41の部分を超音波溶着させることにより第1のガラスユニット4(風防部材)を嵌装部14内に固定する。
さらに、溝部15内に加飾リング部材である第2のガラスユニット5を嵌め込み、接着材54により溝部15の底面等に接着させることにより第2のガラスユニット5(加飾リング部材)を溝部15内に固定する。
これにより、本実施形態における機器ケース1を備える時計100が完成する。
【0024】
図3は、従来の風防部材6をケース本体10の嵌装部14に装着する様子を示した要部断面図である。
図3に示す従来の風防部材6は、アクリルガラス等の有機ガラス61の表面(図3における上側の面)にハードコーティング層62を設けたものである。有機ガラス61の裏面(図3における下側の面)には、印刷層63が設けられている。
このような従来の構成の風防部材6は、ハードコーティング層62が設けられていてもその表面硬度は、鉛筆硬度において3H程度である。このため、使用により風防部材6の表面に擦れや傷等がつきやすい構造となっている。
【0025】
また、図4は、本実施形態の第1のガラスユニット4(風防部材)と同様に、有機ガラス71の表面に有機無機共重合ガラス層73が重畳されてなり、有機ガラス71と裏面側に印刷層74が設けられた有機無機共重合ガラス層73とを接着層72を介して接合したガラスユニット7(風防部材)をケース本体10の嵌装部14に装着する様子を示した要部断面図である。
図4では、嵌装部14が、ガラスユニット7を当該ガラスユニット7の表面と直交する方向から嵌装部14内に嵌装した際に、その上端面が有機無機共重合ガラス層73における重畳面(すなわち有機無機共重合ガラス層73の下側の面)よりも低い位置にくる場合を示している。
すなわち、図4に示すケース本体は、嵌装部14の上端面からガラスユニット7の上面までの高さAが、有機無機共重合ガラス層73の厚みT(すなわち、有機無機共重合ガラス層73の重畳面からガラスユニット7の上面までの高さ)よりも高くなっており、有機ガラス71と有機無機共重合ガラス層73との接合部分がケース本体10の外側に露出している。
この場合には、ガラスユニット7を有機ガラス71の表面に有機無機共重合ガラス層73が重畳した場合でも、振子試験のような継続的衝撃を加えると、衝撃により、特に有機ガラス71と有機無機共重合ガラス層73との接合部分から外周部の欠け(剥離)が発生してしまい、ガラスユニット7の外周が次第に削れて、傷がついてしまう。
【0026】
これに対して、本実施形態では、有機ガラス41,51の表面に有機無機共重合ガラス層43,53が重畳されたガラスユニット4,5(風防部材や加飾リング部材)を、有機ガラス41,51と有機無機共重合ガラス層43,53との接合部分である有機無機共重合ガラス層43,53の重畳面が嵌装部14や溝部15の上端面よりも低い位置にくるように装着し、有機ガラス41,51と有機無機共重合ガラス層43,53との接合部分がケース本体10の外側に露出しないように配置している。
これにより、ガラスユニット4,5(風防部材や加飾リング部材)の表面硬度を無機ガラスと同等の硬度とすることができるとともに、有機ガラス41,51と有機無機共重合ガラス層43,53との接合部分からの外周部の欠け(剥離)や削れ等の損傷も防いで、振子試験のような継続的な衝撃にも耐え得るガラスユニット4,5(風防部材や加飾リング部材)等を備える機器ケース1とすることができる。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、有機ガラス41,51の表面に有機無機共重合ガラス層43,53が重畳されてなるガラスユニット(第1のガラスユニット4、第2のガラスユニット5)を風防部材や加飾リング部材として用い、これを嵌装する嵌装部14、溝部15は、ガラスユニット4,5を当該ガラスユニット4,5の表面と直交する方向から嵌装部14、溝部15内に嵌装した際に、その上端面が有機無機共重合ガラス層43,53における重畳面よりも高い位置にくるように形成されている。
これにより、風防部材や加飾リング部材であるガラスユニット4,5の表面硬度を無機ガラスと同等の硬度(例えば鉛筆硬度で9H程度)とすることができ、風防部材や加飾リング部材の表面に擦れや傷がつくのを防ぐことができる。
また、有機ガラス41,51と有機無機共重合ガラス層43,53との接合部分である有機無機共重合ガラス層43,53における重畳面がケース本体10の外側に露出しないため、接合部分からの欠け(剥離)や削れ等の損傷も防ぐことができ、振子試験のような継続的な衝撃にも耐え得るガラスユニット4,5(風防部材や加飾リング部材)を備える機器ケース1とすることができる。
さらに、ガラスユニット4,5は、軽量な有機ガラス41,51に強度の高い有機無機共重合ガラス層43,53を貼り合わせることで形成されているため、このように無機ガラスと同等の耐衝撃性等を確保しつつも、ガラスユニット4,5(風防部材や加飾リング部材)全体を無機ガラスで形成した場合と比較して軽量化することが可能である。
また、ガラスユニット4,5(風防部材や加飾リング部材)は、有機ガラス41,51の部分において樹脂材料で形成されたケース本体10等と溶着させることができる。このため、ガラスユニット4,5(風防部材や加飾リング部材)のケース本体10への固定を容易に行うことができる。
また、ガラスユニット4,5(風防部材や加飾リング部材)は、有機ガラス41,51に有機無機共重合ガラス層43を重畳したものであるため、無機ガラスよりも加工が容易であり、無機ガラスでは製造が難しいリング状等、各種形状とすることができる。このため、デザインの自由度が向上し優れた意匠を実現することができる。
そして、このようなガラスユニット4,5(風防部材や加飾リング部材)を備える機器ケース1を時計100に適用した場合には、風防部材等に傷がつきにくいため、繰り返し使用しても優れた視認性を維持することができる。
また、耐衝撃性に優れるため、過酷な環境での使用が想定されるようなスポーツ用の時計であっても、安全に使用することができる。
さらに、上記のようにガラスユニット4,5(風防部材や加飾リング部材)全体を軽量化することができるため、例えばランニング用の時計等、軽量化が要請される時計に適用した場合には、優れた視認性、耐衝撃性と、時計全体の軽量化とを両立させることができ、軽くて走りやすい時計を提供することができる。
【0028】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0029】
例えば、本実施形態では、風防部材及び加飾リング部材が有機ガラス41,51に有機無機共重合ガラス層43,53とを重畳したガラスユニット4,5で構成されている場合を例として示したが、ガラスユニット4,5で構成される部材は風防部材と加飾リング部材に限定されない。
ガラスユニット4,5は、高い表面硬度や耐衝撃性が要求されるような部分に用いられる部材として広く適用可能であり、例えば、ケース本体10に嵌め込まれるワンポイントの装飾部材等に本実施形態と同様のガラスユニットを用いてもよい。
【0030】
また、第1の層である有機ガラス41の表面に重畳される第2の層は、有機無機共重合ガラス層43,53に限定されない。例えば、有機無機共重合ガラス層43,53に代えて、第2の層として無機ガラス層を重畳してガラスユニット4,5を構成してもよい。
【0031】
また、本実施形態では、ケース本体10が硬質な合成樹脂で形成されている場合を例示したが、ケース本体10を形成する材料は樹脂に限定されず、例えば、チタニウムやステンレス鋼(SUS)等の金属等の硬質材料で形成されていてもよい。
この場合には、第1のガラスユニット4(風防部材)や第2のガラスユニット5(加飾リング部材)は、接着等の手法によりケース本体の嵌装部14、溝部15に固定される。
【0032】
また、本実施形態では、第1のガラスユニット4(風防部材)や第2のガラスユニット5(加飾リング部材)を備える機器ケース1が時計100のケースである場合を例示したが、機器ケースは時計に適用される場合に限定されない。
例えば、歩数計、心拍数計、高度計、気圧計等の機器ケースや、携帯電話機等の端末装置の機器ケースについて、本発明の機器ケースを適用してもよい。
【0033】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
第1の層の表面に前記第1の層よりも硬質な第2の層が重畳されてなるユニット部材と、
前記ユニット部材を嵌装する嵌装部を有するケース本体と、
を備え、
前記嵌装部は、前記ユニット部材を前記嵌装部内に嵌装した際に、その上端面が前記第2の層における重畳面よりも高い位置にくるように形成されていることを特徴とする機器ケース。
<請求項2>
前記第1の層は、有機ガラスであり、
前記第2の層は、無機ガラス層又は有機無機共重合ガラス層であり、
前記ユニット部材は、ガラスユニットであることを特徴とする請求項1に記載の機器ケース。
<請求項3>
前記ケース本体は、開口部を有し、
前記嵌装部は、前記開口部に形成され、
前記ユニット部材は、前記開口部を閉塞する風防部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の機器ケース。
<請求項4>
前記ケース本体は、前記嵌装部である溝部を有し、
前記溝部は環状に形成され、前記ユニット部材は、前記溝部に嵌装される加飾リング部材であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の機器ケース。
<請求項5>
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の機器ケースと、
前記機器ケース内に収容される表示部と、
前記表示部を動作させるモジュールと、を備えていることを特徴とする時計。
【符号の説明】
【0034】
1 機器ケース
2 表示部
3 モジュール
4 第1のガラスユニット(風防部材)
5 第2のガラスユニット(加飾リング部材)
10 ケース本体
11 開口部
14 嵌装部
15 溝部
41 有機ガラス
51 有機ガラス
42 接着層
52 接着層
43 有機無機共重合ガラス層
53 有機無機共重合ガラス層
100 時計
141 内向きフランジ
図1
図2
図3
図4