(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】電池パックの管理システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/42 20060101AFI20230516BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230516BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230516BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
H02J13/00 301K
(21)【出願番号】P 2021522224
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2020019543
(87)【国際公開番号】W WO2020241330
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】P 2019102574
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020079061
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】増森 聡明
(72)【発明者】
【氏名】山口 聡史
(72)【発明者】
【氏名】塙 浩之
(72)【発明者】
【氏名】原田 健太
(72)【発明者】
【氏名】西河 智雅
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達也
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/115069(WO,A1)
【文献】特開2014-120821(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006152(WO,A1)
【文献】特開2011-102806(JP,A)
【文献】特開2017-229205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42 - 10/48
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックと端末装置とを有する電池パックの管理システムにおいて、
前記電池パックは、
複数の電池セルと、
前記複数の電池セルの充放電を制御する制御部と、
外部の機器と通信を行う通信手段と、を有し、
前記端末装置は、
前記電池パックとの通信によって受信した情報を表示する表示部を有し、
前記端末装置は、前記電池パックの使用開始からの使用状況を記憶装置に蓄積し、前記使用状況から前記電池パックを分類してクラスタ分けし、蓄積された前記使用状況に基づいて前記電池パックの前記クラスタ内での寿命位置であって、過去の寿命位置を含めた時系列に複数の前記寿命位置を表示するよう構成され、
前記端末装置は、
(a)前記電池パックが装着された工具をグループ分けし、使用開始からすべての使用状況を記憶することによって前記電池パックの寿命を予測する、
(b)グループ分けのためのクラスタ情報を管理するサーバとネットワークによって接続可能であり、前記クラスタ情報を前記サーバからダウンロードすることによってオフラインでの使用を可能とする、
(c)前記電池パック毎の使用可能情報を報知する、
(d)電池の寿命を延ばす使い方を提案する、
の少なくともいずれかを実行することを特徴とする電池パックの管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックの管理システムであって、
前記端末装置は、前記電池パックの過去の使用負荷情報に基づいて前記電池パックの寿命に関する情報、又は、残りの使用可能情報に基づいて前記電池パックの使用可能回数又は使用可能時間に関する情報を表示するよう構成され、
前記使用負荷情報又は前記使用可能情報は、前記電池パックが接続された電気機器本体の情報を含むことを特徴とする電池パックの管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池パックの管理システムであって、
前記端末装置は、
(1)前記電池パックの寿命を延ばすことができる電気機器、
(2)受信した情報から前記電池パックの使用状況をクラスタ分けし、分類された前記クラスタに基づいて前記電池パックの情報、
(3)前記電池パックの使用開始からの使用状況を記憶装置に蓄積し、前記使用状況から前記電池パックを分類してクラスタ分けし、蓄積された前記使用状況に基づいて前記電池パックの前記クラスタ内での寿命位置、
の少なくとも一つを表示することを特徴とする電池パックの管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の電池パックの管理システムであって、
前記端末装置は、
複数の寿命曲線を表示し、前記電池パックの状態を前記寿命曲線のどの曲線のどの位置に相当するかを示す、又は、
受信した複数の電池パックの寿命情報を一覧表にて表示するよう構成され、前記寿命情報には使用された主な電気機器も併せて表示する、ことを特徴とする電池パックの管理システム。
【請求項5】
電池パックと端末装置とを有する電池パックの管理システムにおいて、
前記電池パックは、
複数の電池セルと、
前記複数の電池セルの充放電を制御する制御部と、
外部の機器と通信を行う通信手段と、を有し、
前記端末装置は、
前記電池パックとの通信によって受信した情報を表示する表示部を有し、
前記端末装置は、
(1)前記電池パックの寿命を延ばすことができる電気機器、
(2)受信した情報から前記電池パックの使用状況をクラスタ分けし、分類された前記クラスタに基づいて前記電池パックの情報、
(3)前記電池パックの使用開始からの使用状況を記憶装置に蓄積し、前記使用状況から前記電池パックを分類してクラスタ分けし、蓄積された前記使用状況に基づいて前記電池パックの前記クラスタ内での寿命位置、
(4)前記電池パックの使用開始からの使用状況を記憶装置に蓄積し、前記使用状況から前記電池パックを分類してクラスタ分けし、蓄積された前記使用状況に基づいて前記電池パックの前記クラスタ内での寿命位置であって、過去の寿命位置を含めた時系列に複数の前記寿命位置、
の少なくとも一つを表示するよう構成され、
更に前記端末装置は、
複数の寿命曲線を表示し、前記電池パックの状態を前記寿命曲線のどの曲線のどの位置に相当するかを示す、又は、
受信した複数の電池パックの寿命情報を一覧表にて表示するよう構成され、前記寿命情報には使用された主な電気機器も併せて表示する、
ことを特徴とする電池パックの管理システム。
【請求項6】
電池パックと端末装置とを有する電池パックの管理システムにおいて、
前記電池パックは、
複数の電池セルと、
前記複数の電池セルの充放電を制御する制御部と、
外部の機器と通信を行う通信手段と、を有し、
前記端末装置は、
前記電池パックとの通信によって受信した情報を表示する表示部を有し、
前記端末装置は、
複数の寿命曲線を表示し、前記電池パックの状態を前記寿命曲線のどの曲線のどの位置に相当するかを示す、又は、
受信した複数の電池パックの寿命情報を一覧表にて表示するよう構成され、前記寿命情報には使用された主な電気機器も併せて表示する、
ことを特徴とする電池パックの管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動工具や電気機器に対して電源を供給する充放電可能な電池パックのライフマネジメントをおこなう管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電気機器が、二次電池を用いた電池パックにて駆動されるようになり、電気機器のコードレス化が進んでいる。例えば、モータにより先端工具を駆動する手持ち式の電動工具においては、複数の二次電池セルを収容した電池パックが用いられ、電池パックに蓄電された電気エネルギーにてモータを駆動する。電池パックは電動工具本体に着脱可能に構成され、放電によって電圧が低下したら電池パックを電動工具本体から取り外して、外部充電器を用いて充電される。
【0003】
コードレス型の電気機器においては、所定の稼働時間の確保や、所定の出力の確保が要求され、二次電池の性能向上に伴い高出力化や高電圧化が図られてきた。また、電池パックを電源とする様々な電気機器が開発されるにつれ、電圧の異なる電池パック群が商品化されるようになった。電池パックは、例えば1000回以上の充放電が可能であるが、電池パックの寿命は限られている。電池パックの寿命は充放電回数に主に依存するが、それ以外にも充放電状態、特に放電電流の大きさ、放電時の温度等、使用環境によって寿命が大きく影響される。電池パックの寿命を向上させるために、特許文献1では電池の充放電保護用の専用ICを電池パック内に搭載させて、最適な状態で充電できるようにし、過放電状態になったら使用できないように制御している。また充電時に充電停止電圧に到達したらそれ以上の充電ができないように制御している。電池パックの寿命をユーザが知る方法としては特許文献2の発明が知られている。特許文献2では、電池パックに残量チェックボタンを設け、チェックボタンが押された際に電池パックの残量(電圧)をLEDの表示個数にて示すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-009327号公報
【文献】特開2010-170779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池パックを電動工具で使用する場合、電動工具の種類によっては放電時に高い電流が流れるため、電池パックのライフマネジメント(例えば寿命管理)が重要となる。しかし、ユーザ側においては電池パックの状態(例えば過去に使用した電動工具の種類、寿命の状態)を知るすべが存在しないという課題があった。また、電池パック式の電動工具を複数使用するユーザは、多数の電池パックを所有することが多いが、その場合に、それぞれの電池パックの劣化具合をユーザが適切に知る方法がなかったので、ユーザがそれぞれの電池パックの寿命を考慮した適切な管理を行うことができなかった。さらに、電池パックには電圧に基づく残量表示が可能であるが、表示された電池の残量が装着されている電気機器本体による使用可能時間がどのくらいに相当するかをユーザが把握することは難しかった。特に、電池パックが装着されている電気機器本体の種類によって、電池パックの使用稼動時間が大きくばらつくため、ユーザによる使用可能時間の把握は困難であった。
【0006】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は電池パックの状態管理情報や寿命予測を端末装置上に表示可能とした電池パックの管理システムを提供することにある。本発明の他の目的は、電池パックの過去の使用負荷情報、例えば電池パックに流れた電流情報や使用された電気機器の種類を表示することができる電池パックの管理システムを提供することにある。本発明の他の目的は、電池パックの使用状況によるn種の分類分けを行う分類器を構成し、分類器によって対象とする電池パックがどの種別にいるかを識別して寿命予測に用いるようにした電池パックの管理システムを提供することにある。本発明のさらに他の目的は、複数の電池パックの状態管理を端末装置にて一括で監視できるようにした電池パックの管理システムを提供することにある。本発明のさらに他の目的は、電池パックが装着された電気機器本体の種類又は型式、或いは作業内容に合わせて、電池パックによる残りの使用可能情報を表示することができる電池パックの管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。本発明の一つの特徴によれば、電池パックと、電池パックと接続可能な電気機器本体と、を有する電池パックの管理システムにおいて、電気機器本体の種類に応じて電池パックによって作業できる作業量に関する情報を演算する制御部と、制御部によって演算された情報を表示する表示部を備えるように構成した。電池パックが電気機器本体と接続されている時には、制御部は情報として、電気機器本体に対する残りの使用情報を表示する。また、電池パックが電気機器本体と接続されていない時には、制御部は電池パックが過去に接続されたことがある電気機器本体として、直前に接続された電気機器本体、又は、最も接続回数が多かった電気機器本体に対する情報を表示する。制御部は、電気機器本体に加わる負荷の大きさを測定してその実績値を蓄積し、算出された実績値に基づいて情報を算出する。
【0008】
本発明の他の特徴によれば、制御部は、略同じ負荷で使用し続けられた場合の情報、又は、過去の使用履歴情報に基づいて情報を算出する。また、制御部は、過去の使用履歴情報に基づいて情報を算出する場合、使用履歴情報に基づいて情報を人工知能(Artificial Intelligence)を用いて学習するようにした。表示部に表示される情報は、電池パックの寿命、残り使用時間、同じ負荷の使用回数等である。また、残り使用時間は、電池パックを再充電するまでの時間又は現在の電池パックの残容量で使用可能な時間である。
【0009】
本発明の他の特徴によれば、電池パックの管理システムは、電池パック又は電気機器本体と通信が可能な端末装置を備え、表示部は、電池パック、電気機器本体、端末装置のいずれかに設けられるように構成した。また、電池パックの管理システムの表示部は、電池パックと電気機器本体が接続された状態では、電気機器本体に応じた残り使用情報を表示し、電池パックと電気機器本体が接続されていない状態では、電池パックの残容量を表示するように構成した。
【0010】
本発明の他の特徴によれば、複数の電池セルと、電池セルの充放電を制御する制御部と、外部の機器と通信を行う通信手段を有する電池パックと、電池パックと通信によって情報を受信するとともに電池パックから受信した情報を表示する端末装置と、を有する管理システムにおいて、端末装置は電池パックの過去の使用負荷情報、例えば電池パックに流れた電流情報(最大電流や積算電流)や使用された電気機器の種類を表示するようにした。また、端末装置は受信した情報から電池パックの使用状況をクラスタ分けし、分類されたクラスタに基づいて電池パックの劣化情報を画面に表示するようにした。端末装置は、電池パックの使用開始からの使用状況を記憶装置に蓄積し、蓄積された使用状況に基づいて電池パックのクラスタ内での寿命位置を可視的に表示する。
【0011】
本発明の他の特徴によれば、端末装置は、過去の寿命位置を含めて時系列に複数の寿命位置を表示する。また、端末装置は電池パックが装着された工具をグループ分けし、使用開始からすべての工具の使用状況を記憶することによって電池パックの寿命を正確に予測する。また、端末装置は電池パックの情報を管理するサーバとネットワークによって接続可能であり、分類器をサーバからダウンロードすることによってオフラインでの使用を可能とする。さらに、端末装置は、電池パック毎の使用可能情報を画面にて報知し、電池の寿命を延ばす使い方をユーザに提案する。
【0012】
本発明のさらに他の特徴によれば、端末装置は、複数の寿命曲線を表示し、電池パックの状態をいずれの寿命曲線の、どの特定位置に相当するかを示すようにした。また、端末装置は、受信した複数の電池パックの寿命情報を一覧表にて表示することによって、複数の電池パックの劣化情報を一つの表示画面上にて管理できるようにした。この寿命情報には、使用された主な電気機器も併せて表示するようにすると好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電池パックの状態管理情報や寿命予測を端末装置上に表示可能とした電池パックの管理システムを提供することができる。また、電池パックの過去の使用負荷情報、例えば電池パックに流れた電流情報や使用された電気機器の種類を表示することができる。また、電池パックの使用状況によるn種の分類分けを行う分類器を構成し、分類器によって対象とする電池パックがどの種別にいるかを識別して寿命予測に用いるようにした電池パックの管理システムを提供することができる。さらに、複数の電池パックの状態管理を端末装置にて一括で監視できるようにした電池パックの管理システムを提供することができる。以上のように、端末装置を用いてユーザ側で電池パックの劣化状態や予想される寿命を容易に把握することができる。尚、サーバ装置から端末装置に、電池パックの使用状態に基づいたクラスタ分けのために必要な分類器を提供するように構成すれば、ユーザ側の端末装置はそれをダウンロードすることで複数のユーザの実使用の統計的データに基づいた高度な電池パックの状態診断とライフマネジメント(例えば寿命管理)が可能になる。また、ユーザが複数の電池パックを用いる場合であってもそれらを一つの端末装置で集中管理が可能となるので、電池パックの買い替えのタイミングや寿命を延ばす使用法を容易に知ることができる。また、電池パックが装着された電気機器本体の種類又は型式、或いは作業内容に合わせて、電池パックによる残りの使用可能情報を表示することができる電池パックの管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例に係る電池パックの管理システム1の概略構成図である。
【
図2】
図1の端末装置100の表示画面120の表示内容を示す図である。
【
図3】本実施例の管理システム1に含まれる各機器の回路構成を示す概略ブロック図である。
【
図4】本実施例の管理システム1における端末装置100と電池パック10の通信手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図1の電池パック10の状態検知手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図1の端末装置100を用いた電池パック10の診断手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図1のサポート会社210のサーバ装置230、240のシステム構成図である。
【
図8】
図7の電池情報データベース243にて管理される電池パック情報の詳細内容を示すリストである。
【
図9】
図7のサーバ装置240における電池状態の分類方法の一例を示す図である。
【
図10】
図1の端末装置100の表示画面120の別の表示例を示す図である(その1)。
【
図11】
図1の端末装置100の表示画面120の別の表示例を示す図である(その2)。
【
図12】
図1の端末装置100の表示画面120の別の表示例を示す図である(その3)。
【
図13】
図1の端末装置100の表示画面120の別の表示例を示す図である(その4)。
【
図14】
図1の端末装置100の表示画面120の別の表示例を示す図である(その5)。
【
図15】本発明の第2の実施例に係る電池パック10Aの上面図である。
【
図16】本発明の第2の実施例に係る電池パック10Aの放電時の電圧特性を示す図である。
【
図17】本発明の第2の実施例に係る電池パック10Aの状態検知手順を示すフローチャートである。
【
図18】本発明の第2の実施例に係る電池パック10Aにて管理される電池パック情報180Aの詳細内容を示すリストである。
【
図19】本発明の第2の実施例に係る電池パック10Aの表示部50における別の表示例を示す図である(その1~3)。
【
図20】本発明の第2の実施例に係る電池パック10Aの表示部50における別の表示例を示す図である(その4、5)。
【
図21】本発明の第2の実施例に係る電池パック10Aの表示部50における別の表示例を示す図である(その6、7)。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。本明細書においては、電池パック10が使用される電気機器の図示は省略しているが、電池パック10が装着可能な機器であれば何でも良い。
【0016】
図1は本実施例に係る電池パックの管理システム1の概略構成図である。ここでは、3人のユーザA、B、Cが、それぞれ携帯式の端末装置100と電池パック10を有している。ユーザAは、端末装置100-1と電池パック10-1を所有し、ユーザBは端末装置100-2と電池パック10-2を所有し、ユーザCは、端末装置100-3と電池パック10-3~nの計(n-2)個の電池パックを所有する。ここで、識別のため端末装置100に1~3の枝番号をつけているが、それぞれの端末装置100-1~3は、同一機種または異なる機種のスマートフォンを用いることができる。端末装置100-1~3には、公衆電話通信網への通信手段に加えて、通信距離が短い近距離無線手段が設けられる。ここで用いる近距離無線手段は任意であるが、例えばBluetooth(ブルートゥース:Bluetooth SIG, Inc. USAの登録商標)が用いられる。同様にして電池パック10-1~nのそれぞれにも対応する近距離無線手段、即ちBluetooth(登録商標)が設けられ、端末装置100と電池パック10の間で双方向に通信が可能なように構成される。
【0017】
電池パック10(例えば10-1)は端末装置100(例えば100-1)とペアリングを行う。「ペアリング」とは、無線通信を用いて端末装置100と、電池パック10側の関連づけ登録を行う作業であり、これらの登録作業(ペアリング)を行うことにより、端末装置100は、ペアリングされた電池パック10から必要な情報を取得することができる。このペアリング相手の関係は、ユーザA、Bのように端末装置の数:電池パックの数=1:1だけに限られず、ユーザCのように1:n-2(nは自然数)であっても良い。nがいくつまでペアリングできるかは、使用する無線通信規格に依存する。また、所有するすべての無線接続可能な電池パックと同時にペアリングさせても良いが、必ずしも全数である必要は無く、状態を確認したい対象の電池パック10だけを選択してペアリングさせるようにしても良い。
【0018】
電池パック10-1~nは、定格電圧3.6Vのリチウムイオン電池セルを複数本直列接続して、例えば18Vの直流電流を出力するようにしたものである。電池パック10が装着される側の電動工具本体(図示せず)には、ブルートゥース(登録商標)を設ける必要は無いが、ブルートゥース(登録商標)が設けられている機種も存在する。その場合は、端末装置100が電動工具と接続することによって電池パック10の情報を間接的に取得することも可能な場合もある。しかしながら、本実施例では電池パック10と直接通信を行うことによって、どんな電動工具に装着されている電池パック10であっても、また、電動工具から取り外された状態の電池パック10であっても、端末装置100は電池パック10の情報を読み取ることが可能である。
【0019】
端末装置100は、電池パック10から無線通信によって受信した情報を処理し、電池パック10の使用状況によるクラスタリング(分類分け)を行い、その情報から電池パック10がどのクラスタに属するかを識別し、識別されたクラスタの曲線を用いて電池パック10の現在の曲線上の位置の判断と寿命予測を行う(その方法は
図9にて詳述する)。この端末装置100における処理のために、端末装置100にはあらかじめアプリケーションソフトをインストールしておく。スマートフォン等の端末装置100は、それぞれで電話会社または無線通信会社の基地局201を介してインターネット200に接続可能であるため、端末装置100はサポート会社210のサーバと接続可能である。サポート会社210は、インターネット200を用いて端末装置100にアプリケーションソフト(図示せず)を提供する。アプリケーションソフトは、(1)端末装置100と電池パック10とのペアリングを行い電池パック10との間で無線通信を行うソフトウェアと、(2)電池パック10から取得した情報を集計又は分類し、サポート会社210にアップロードするソフトウェア、(3)サポート会社210からダウンロードされるものであって、電池パック10の使用状況による分類分けを行うためのソフトウェア(分類器)、が含んで構成される。
【0020】
図2は
図1の端末装置100の表示画面120(表示部)における表示例を示す図である。ここでは端末装置100として、いわゆるスマートフォンを用いている。尚、本実施例を実施するに当たって、端末装置100は必ずしも携帯型に限られず、ネットワーク接続が可能なデスクトップPC、ラップトップPC、タブレットPC、スマートフォン、専用の小型端末であっても良い。端末装置100の前面には、全面のほぼ全体を占める液晶式の表示画面120が設けられ、その下側にはホームボタン121が設けられる。表示画面120は、情報を可視的に表示する出力装置であると共に、画面に表示されたアイコンや操作画面をタッチすることによりユーザの操作を受け付ける入力装置として機能する。ホームボタン121は、アプリケーションソフトの起動中や、ロック画面からホーム画面に戻る場合に使われる操作ボタンの一種である。ここでは図示していないが、端末装置100の正面にはインカメラのレンズや、スピーカ等が設けられる。
【0021】
端末装置100は、電池パック10から入手した状態管理情報を元に、電池パックを丸1~丸5の5つにクラスタ分け(群分け、あるいは、パターン分け)し、対象の電池パック10がどのパターンに当てはまるのかを判断し、そのクラスタの予想寿命曲線内でどの寿命位置にあるかを表示する。ここでは、クラスタ分けした寿命曲線122の一つに、×印を用いた寿命位置123を示すことによって、電池パック10の使用可能情報をユーザに報知する。一般的に電池パック10は、所定の回数n
5回以上の充放電が可能である。ここでは、電池パック10に対して最も過酷な使用をした場合のクラスタを丸5の曲線で示し、最も優しい使用をした場合のクラスタを丸1の曲線で示し、その間を丸2~丸4に示すクラスタの5つの寿命曲線にクラスタ分けしている。すなわち、過去の使用負荷状態に基づいて丸1~丸5の5つの寿命曲線にクラスタ分けして表示している。これらのクラスタ分けは、サポート会社210のサーバ装置(
図7で後述)で蓄積された多数のデータを元にサーバ装置側で行うもので、その分類された寿命曲線データがサーバ装置から端末装置100に送信されるものである。
【0022】
図2では横軸の充電回数を、n
1~n
5のように変数にて表示する例を示しているが、これらを具体的な数値にて表示しても良い。丸1に示すクラスタに属する場合、電池寿命と言われる電池容量50%まで到達した場合、電池パック10からの累積充電回数がn
5となる。クラスタが丸4~丸1になるにつれて、累積充電回数がn
4からn
1へと増加する。過去の使用負荷状態、すなわち、電動工具(あるいは電気機器)の種類に基づいて丸1~丸5の5つの寿命曲線にクラスタ分けされている。丸5はセーバソーやディスクグラインダ等、動作時の電流が50A以上流れるような高負荷で使用される工具での使用が想定される。丸2は例えば丸のこ、丸3は例えばドライバドリルのような中負荷で使用される電池パックである。丸1はLEDライトやラジオ等の軽負荷定電流機器での使用が想定される。
図2ではインパクト工具によって使用される電池パック10の例を示し、電池パック10が丸4に示すクラスタに分類されて、現在の電池容量が75%程度(電池寿命で見たら50%程度)であることを示している。なお、電池パック10から入手した状態管理情報を元にクラスタ分け(寿命曲線)を表示させ、操作ボタンを操作した後に寿命位置123を表示するようにしても良い。また、電池パック10から入手した状態管理情報(例えば電池パック10に流れた積算電流値)を元に寿命曲線を1つのみ表示すれば、接続した電池パック10の使用負荷情報を把握することもできる。さらに、複数の寿命曲線を表示し、接続した電池パック10の使用負荷情報に該当する寿命曲線を太線や破線で区別して表示しても良い。
【0023】
図3は管理システム1に含まれる各機器の回路構成を示す概略ブロック図である。電池パック10は、合成樹脂製のケース内に電池セル20を収容したものである。電池セル20の種類は任意であり、例えば18650サイズと呼ばれる直径18mm、長さ65mmの複数回充放電可能なリチウムイオン電池セル(図示せず)を5本直列接続する。電池セルの種類はリチウムイオン電池だけに限られずに、ニッケル水素電池セル、リチウムイオンポリマー電池セル、ニッケルカドミウム電池セル、その他の任意の種類の二次電池を何個用いても良い。電池セルの長さ方向の両端には2つの電極が設けられ、それら電極の一方は正極であり、他方は負極であり、直列接続されたセル群の正極と負極が物理接続端子14に接続される。
【0024】
電池セル20への充放電はマイコンを有する制御部11によって監視および制御される。制御部11は、電池セル20への充電および放電の制御をするとともに電池セル20の状態を検知し、記憶部12に検知した情報を定期的に格納する。そのため、電池の電圧及び電流を測定するセンサ部19が設けられる。記憶部12としては、マイコンに内蔵された、または、マイコンとは別に設けられる不揮発性のメモリを用いることができる。電池パック10内には、ブルートゥース(登録商標)を用いた無線通信部13が設けられる。無線通信部13による無線通信は、制御部11によって管理される。制御部11のマイコンは、物理接続端子14の金属端子21のうち、LD端子、D端子等の信号伝達用の端子を用いて、金属端子85を介して電動工具本体80側の制御部81との信号での伝達(有線通信)を行う。つまり、電池パック10は、電池パック10を装着した電気機器本体との単方向又は双方向通信が可能である。金属端子21、85は複数の端子を含み、例えば正極入力端子(充電用や放電用)、負極入力端子、LD端子(放電許可信号端子)、D端子(制御信号端子)が含まれる。
【0025】
図3には図示していないが電池パック10には電圧チェック回路が搭載され、電池パック10の筐体の一部に複数セグメントのLED表示装置(図示せず)と、ユーザによって操作されるチェックボタン(図示せず)が設けられる。ユーザによってチェックボタンが操作されてONになると、操作されている間、及び、操作状態が解消してから数秒程度だけ電池残量に応じた数のLEDが点灯する。本実施例では電池パック10側に電圧チェック回路が設けられるので、電池パック10を電動工具から取り外しているときにも残量チェックができる。電池パック10が充電も放電もされていない時は、制御部11のマイコンがスリープ状態に移行するが、電池パック10が図示しない電動工具に装着されるとスリープ状態からアクティブ状態に移行する。また、電池パック10のチェックボタンを押すことで制御部11のマイコンを起動させることができる。
【0026】
電動工具本体80は、着脱可能に装着される電池パック10の電力を用いて放電負荷83を駆動する。放電負荷83は、例えばインパクト工具、電動ドリル、グラインダ、電動のこぎりであれば、モータとなる。モータ等の放電負荷83の回転制御は制御部81によって行われる。制御部81が放電負荷83を直接制御するか否かは重要ではない。例えば、ブラシレスDCモータを用いる場合は制御部81がインバータ回路を制御してモータを駆動する。しかし、直流モータを可変抵抗式のトリガスイッチで回転制御する場合は、制御部81により(又は、制御部81を介して)モータの回転制御は行わない。
【0027】
電動工具本体80にはユーザインターフェース88が設けられる。ユーザインターフェース88はユーザからの入力を受け付け、ユーザに対する情報の出力を実現する部位であり、例えばスイッチ装置等の入力部や、LEDやディスプレイ等の表示部を含んで構成される。ユーザインターフェース88から、または、ユーザインターフェース88への入出力は制御部81によって制御される。電動工具本体80には記憶部82が設けられ、例えば、制御部81のマイコンによって管理される各種データの履歴情報が格納される。
【0028】
端末装置100は、ブルートゥース(登録商標)による無線通信により電池パック10の制御部11と通信を可能とする機器である。端末装置100は、汎用のコンピュータ機器に無線通信部113を付加したものであり、スマートフォンとして市販されている携帯型の機器を使うことが好適である。端末装置100は、マイクロプロセッサを含む制御部111と、揮発性及び不揮発性メモリを含む記憶部112と、ユーザへの情報の出力やユーザからの入力を行うユーザインターフェース115と、LAN(Local Area Network)や電話回線網を利用してインターネット網に接続するインターネット接続部114を含んで構成される。端末装置100はさらに無線通信部113を有する。無線通信部113を有することによって端末装置100はサーバ装置230、240との接続が可能となる。無線通信部113はブルートゥース(登録商標)を用いた通信機能であって、近距離範囲内で電池パック10との双方向通信が可能となる。
【0029】
以上の構成によって、電池パック10と端末装置100は、電動工具本体80の装着の有無にかかわらずに双方向の通信が可能となる。この通信によって端末装置100は電池パック10から管理情報を入手して、所定のアルゴリズムを用いて電池パック10の状態を分析できる。尚、電池パック10と端末装置100は、ブルートゥース(登録商標)による無線通信だけに限られずに、その他の双方向または片方向通信技術を用いた無線通信を行うようにしても良い。さらには、無線通信だけに限定されずに、規格化されたケーブル(例えばUSBケーブル)等を用いた有線接続や、物理的接触による通信を行うように構成しても良い。
【0030】
図4は本実施例の管理システム1における端末装置100と電池パック10の通信手順を示すフローチャートである。端末装置100と電池パック10の通信を開始するには、最初にペアリング登録を行う。最初に電池パック10にて、ペアリング登録用のボタンを押すことによって開始する。電池パック10に新たなペアリング用の専用ボタンを設けることは、設置スペース的にも製造コスト的にも難しい。そこで、電池パック10にすでに設けられている電圧チェック用のボタン(図示せず)を利用することにした。電圧チェック用のボタン(図示せず)を押すと、電池電圧に応じて1~4つのLEDが点灯する。また、このボタンを長押しして、例えば2秒以上押し続けると、すべてのLEDが点滅することによってペアリング登録モードに切り替わる(ステップ31)。すると電池パック10は、ペアリングのための報知信号を端末装置100に送信する(ステップ32)。
【0031】
一方、端末装置100はブルートゥース機能がオンとされるとデバイスの探索を開始し(ステップ131)、接続可能なデバイスからの報知信号を受信することにより電池パック10を発見したら(ステップ132)、電池パック10に対して接続信号を発信することにより(ステップ133)、その電池パック10との接続を確立する(ステップ134、33)。
【0032】
ペアリングが完了したら、端末装置100は電池パック10内に記憶されている管理情報の出力要求をおこなう(ステップ135)。すると、電池パック10の制御部11(
図3参照)は、端末装置100からの出力要求を受信し(ステップ34)、記憶部12に格納されている情報のうち該当部分を端末装置100に送信する(ステップ35)。端末装置100は、該当情報を受信すると記憶部112に格納されている対象電池パック10の情報を用いて集計して更新し、更新された情報を記憶部112に再び格納する(ステップ136、137)。この格納される情報の内容については、
図8にて後述する。次に、端末装置100はサポート会社210と公衆回線網やインターネット網を介して接続して、サーバ装置240(
図7にて後述)へ接続して送信し(ステップ138)、情報を受け取ったサーバ装置240は受信した情報を電池情報データベース243(
図7で後述)に格納する(ステップ139)。以上のように端末装置100と電池パック10は双方向にて情報のやりとりを行うことができる。
【0033】
図4で示したペアリング手順は、種々変更することが可能である。
図4では電池パック10側において電圧チェック用のボタンを長押しすることによってペアリングの開始を指示するようにした。この方法を採用することにより、電池パック10のマイコンがスリープ状態にある場合に、電圧チェック用のボタンを押すという操作によってマイコンを起動させることができる。また、ボタンの長押しというペアリング動作の実行をユーザが指示することによって、端末装置100と電池パック10のマイコンは、ペアリング動作を確実に実行でき、さらには必要な情報の送受信が済んだら無線通信の接続(ペアリング)を自動的に解除することが可能となる。しかしながら、ペアリング開始方法をどうするかは任意であり、ユーザによるペアリング開始の指示を必要とせずに、端末装置100にあらかじめペアリング先として登録された電池パック10が端末装置100の近傍にあって通信可能な状態の場合には、端末装置100と電池パック10を自動接続するような構成としても良い。
【0034】
図5は本実施例の電池パック10の電池の状態検知手順を示すフローチャートである。
図5の手順は電池パック10の制御部11のマイコンが起動している状態において実行されるものであり、
図4に示したペアリング及び通信手順とは独立して行われる。例えば、電池パック10が電気機器等から取り外された状態であっても、制御部11のマイコンが起動している状態であれば実行される。制御部11のマイコンは電池パック10の状態、すなわち、充電/放電/静止の分類、接続されている電気機器の種類等の情報を検知する(ステップ41)。次に、制御部11のマイコンは、検知した状態情報を集計することによって、記憶部12に格納された記憶された情報を更新する(ステップ42)。例えば、どの電気機器で何時間の作業が行われたかを記録すると良い。
【0035】
次に、制御部11のマイコンは、次の状態検知を行うタイミングになったか否か、すなわちインターバルの所定時間が経過したかを判断し(ステップ43)、所定時間が経過していない場合は待機し、経過したらステップ41に戻る。
【0036】
図6は本実施例の端末装置100を用いた電池パック10の診断手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、端末装置100にて電池パック10の状態検知を行う専用のアプリケーションソフトが起動した後に実行される。最初にブルートゥース(登録商標)を用いて電池パック10から情報を受信する(ステップ155)。次に、受信した情報から電池状態のクラスタリングを行うための情報を抽出し、分類器に入力する。分類器は端末装置100によって実行されるアプリケーションソフトウェアを用いて実行される(ステップ156)。次に、分類器となるソフトウェアを実行することによって電池パック10のクラスタリングを行う(ステップ157)。クラスタリングが終了したら、振り分けられた5つのパターン内で、放電時間、充電回数から現在の寿命進行度を推測する(ステップ158)。次に、端末装置100の制御部11は、
図2にて示した表示画面120における表示内容を決定し、画面に出力する(ステップ159)。なお、電池パック自体の寿命は、例えば充電回数に応じて設定される。振り分けられた同じパターン内において廃棄された電池パックの充電回数から期待値を算出し、その回数を100%として寿命を設定する。
【0037】
図7は、
図1のサポート会社210のサーバ装置230、240のシステム構成図である。サポート会社210は、例えば電池パック10の製造会社又はそのサービス会社が提供するもので、2つのデータベース(233、243)を管理する。サポート会社210は、2つのサーバ装置230、240を有する。サーバ装置230は、顧客情報管理データベース233を管理するもので、情報処理部231と、インターネット接続部232を有する。インターネット接続部232によって、サポート会社210は顧客情報を入力可能なPC(Personal Computer)や、スマートフォン等と接続が可能となる。ここで、顧客情報管理データベース233は電池パック10を所有するユーザに関する情報である。
【0038】
電池情報データベース243は、電池パック10の固有情報と現在の状態の関連性を格納する。サーバ装置240の構成も基本的にはサーバ装置230と同じであり、情報処理部241とインターネット接続部242を含む。
【0039】
図8は
図7の電池情報データベース243にて管理される電池パック情報の詳細内容を示すリスト180である。電池情報データベース243には、電池パックの固有の電池No181(製造番号等)ごとに電池の状態を示す各種情報を格納する。過放電回数182は、電池パック10の出力電圧が所定電圧以下まで低下した過放電状態なった回数を累積した情報であり、過充電回数183は充電時に所定電圧以上まで上昇した過充電状態なった回数を累積した情報である。充電回数184は、充電器を用いて電池パック10を充電した回数である。ここでは、充電開始時から所定時間(例えば5分)が経過したら充電1回とカウントする。工具種1、工具種2・・・は電池パック10が装着された電動工具(又は電気機器)の情報である。電池パック10は、電動工具本体80と接続された際に信号伝達用の接続端子を介して接続対象相手の機種情報が識別できるように構成される。電池パック10の制御部11のマイコンは、使用した工具種と、その工具種の累積の使用時間を対応させて格納する。ここでは、工具種185とその使用時間187、工具種186とその使用時間188、のように格納する。また、電池パック10からの放電された積算電流値や最大電流値、閾値以上の放電電流が流れた時間等、負荷状態に関する情報を、使用した工具種毎や工具毎にそれぞれ格納すると良い。さらには、充電器や充電電流、充電温度等の充電時の負荷に関する情報を格納しても良い。
【0040】
格納できる工具種の数は、ここでは2つしか図示していないが、多数の欄を設けて使用したほぼすべての情報を格納するように構成すると良い。尚、工具種1、工具種2・・・の分類は、具体的な型式番号ごとに分けても良いし、インパクト工具、ドライバドリル、丸鋸、等の工具種類ごとに分けても良い。また、電力消費の大きさの観点から電気機器をカテゴライズして、そのカテゴリーごとの使用時間を累積しても良い。あるいは、電池パック10に流れる電流情報、例えば放電電流値の積算値等の負荷情報に基づいてカテゴライズしても良い。このように電池情報データベース243において、電池パック10が装着された電動工具、あるいは電池パック10から流れた負荷(例えば積算電流値)をグループ分けし、使用開始からすべての使用状況を記憶することによって電池パック10の寿命を精度良く予測することができる。
【0041】
図9は
図7のサーバ装置240における電池状態の分類方法の一例を示す図である。上側のグラフでは管理された複数の電池パックの状態を縦軸と横軸によって定義される位置にプロットしたものであり、各プロットが測定された各々の電池パックに対応する。グラフの横軸は、充電回数・使用時間等、寿命指針になる要素であり、縦軸は工具・過放電回数・過充電回数等、使用方法に関わる要素である。これらの2つの要素を2次元平面状にプロットすると、プロット群272~274のようにプロット点が集中する箇所が現れる。これら集中するプロット群272~274は、直線271のような線形的な関数でエリアを分けることができ、これが分類器と呼ばれるものである。この処理を、分けられたエリア毎にN回続けていくと分類器のモデルを生成することができる。言い換えると、複数回に分割して本処理を適合した結果を数理モデル化することで、分類器とすることができる。分類先の状態がどんな状態かは人間が考察・評価する必要はあるが、この処理により一定のパターン280に分けて、傾向の分析が可能となる。
【0042】
これら分類器のモデルをN層に分けて分岐付けさせると、パターン280が完成する。これらパターン280を確定させる作業は、サーバ装置240が行うので、端末装置100は完成したパターン280をダウンロードし、管理対象の電池パック10の管理情報を当てはめることによって丸1~丸5のいずれに該当するかを判定できる。
【0043】
図10は
図1の端末装置100の表示画面120の別の表示例を示す図である(その1)。ここでは
図2に示した寿命曲線122に、2つの電池A(例えば電池パック10-3)、電池B(例えば電池パック10-4)の情報を表示する。黒丸で示される電池Aの情報は、丸3で示す曲線のクラスタに当てはまり、過去(日付yyyy/mm/dd)の寿命位置と、現在(日付YYYY/MM/DD)の寿命位置を同一画面上に時系列に表示する。このように端末装置100は、複数の寿命曲線を表示し、電池パック10-3の状態を寿命曲線のどの曲線の、どの位置に相当するかを示す。さらに、複数の黒丸にて状態を過去からの状態推移を表示すれば、ユーザは電池Aの状態推移がどのようであるかが一目瞭然となる。黒三角で示される電池Bに関しては、最初丸5で示す曲線のクラスタの矢印124aに当てはまっていたものの、現在は丸2で示す曲線のクラスタの矢印124bに当てはまることが示されている。電池Bに関する黒三角で示される寿命位置には、日付が示されていないが黒丸の表示と同様に日付情報も合わせて表示しても良い。このようにクラスタリングされた曲線と共に状態を示すようにすれば、電池パック10に過酷な使用状態であるか(例えば丸5のクラスタ)、優しい使用状態であるか(例えば丸1のクラスタ)が、ユーザは容易に認識することができる。
【0044】
寿命曲線122の下側には、電池の状態の説明131を表示する。説明131には、予想される充電可能回数と使用可能時間を含める。さらには、ユーザに対して寿命を延ばす使い方を提案する。ここでは、「これらの製品に用いると寿命が延びる可能性があります」と表示すると共に、アイコン群132のようにそれら製品A~製品Cを例示する。製品A~Cのアイコンは軽負荷機器であり、例えば「クリーナ」「照明装置」「ラジオ」等の具体的な製品名をアイコンに表示すると良い。
【0045】
図11は
図1の端末装置100の表示画面120の別の表示例を示す図である(その2)。この例では、電池パック10の寿命を寿命曲線に沿って表示するのでは無くて、多数の電池パック10の寿命情報を一覧表141にて表示するものである。ここではブルートゥース(登録商標)によって接続中の4つの電池パックA~Dが表示され、各電池パックA~Dの右側には、電池パック10の記憶部12に格納された累積の「充電回数」が表示される。ここでは、xxx、yy、aaa、bbのように例示しているが、実際には数値によって表示される。「残り回数」は、現在の使用状況における予想される充電可能回数であり、電池パック毎の使用可能情報を具体的に報知するものである。ここでは、X,Y、F、Gのように例示しているが、これらも数値によって表示される。「使用工具」は、最も使用回数が多かった工具を示したもので、ここでは、丸鋸、インパクト、ライト、セーバソーのように工具の種類を表示する。尚、複数の電池パック10を複数台接続してその情報を一覧表に示した場合に、リスト中の案件がどの電池パック10であるかの対応付けが難しい。そこで、付加的な機能として表示画面120でリスト表示された案件(下線で区別される電池A)の欄をユーザがタップしたら、無線通信をもちいて電池パック10側の制御部11に電圧チェッカー用のLEDを2~3秒程度点滅させるようにすれば、リスト中の電池Aがどの電池パック10に対応するかの対応付けが容易となる。
【0046】
一覧表141の下には、選択された特定の電池(ここでは下線の引いている電池A)の状態の説明142を表示する。説明142には、予想される充電可能回数と使用可能時間を含める。さらには、ユーザに対して寿命を延ばす使い方として、複数の電池パックのうち、装着する電動工具を入れ換えることによってトータルの寿命を延ばす使用法を提案する。ここでは、「(電池Aは)電池Cと入れ替えると寿命が延びる可能性があります」と表示する例を示している。このように複数の電池パック10の状態を端末装置100の表示画面120上に一覧表形式で表示するので、ユーザは複数の電池パック10の状態を一目で把握することが可能となり、複数所有する電池パック10の管理が容易になる。
【0047】
管理の利便性の更なる改善のため、一覧表示される電池パック“A”~“D”にユーザが任意の名称、符号、又は、番号を付与することができるようにしても良い。例えば、電池パック“A”の欄を長押しすることによって電池パック“A”の名称を変更する画面に遷移させ、その名称を“A”から任意の名称(例えば“2018-01”に変更できるようにする。その際には、端末装置100の制御部111のマイコンは、名称を変更する電池パック10の制御部11のマイコンと通信して、記憶部12内に格納された名称を書き換える。このように電池パック10内に格納された名称を、外部の端末装置100から書き換え可能としたことによって、別の端末装置100を利用して電池パック10の情報を読み出した際にも書き換え後の名称(“2018-01”)が表示されるので大変利便性が良い。また、書き換え後の名称をユーザが電池パック10の外面にラベル表示するようにすれば、表示された情報がどの電池パック10の情報であるかをユーザは容易に識別することが可能となる。さらに、書き換え後の名称(“2018-01”)をサーバ装置240(
図7参照)にも送信して記録しておくようにすると良い。
【0048】
図12は
図1の端末装置100の表示画面120の別の表示例を示す図である(その3)。この例では表示画面120の内部に1つの電池パック10(名称“A”)を表示する。一番上には、電池パックのアイコン151と共にその内部に電池パックの名称“A”を表示する。その下には、電池パック10の予測される寿命を%で表示する。ここでは横方向に伸びる棒グラフ152で表示し、残りの寿命を%で表示する。電池パック10の購入直後は棒グラフの右端まで黒表示するとともに100%と表示する。電池パック10の寿命に到達した場合(例えば電池容量が50%になった時)は、棒グラフを白抜きで表示すると共に“0%”と表示する。
図12に示す例では棒グラフが左から長さ比で4割のところまで延びるように表示され、黒抜き部分に“40%”と表示される。このように電池パック10の寿命をグラフ形式にて表示することによってユーザは電池パック10の寿命を容易に知ることが可能となる。尚、表示されるグラフ形式は、棒グラフ152だけに限らずに、円グラフや、その他の表示形式であっても良い。また、劣化の進行具合を%で表示するのでは無く、充電可能回数で表示し、棒グラフの右端に使用可能予想数(例えば1500回)を表示し、黒抜き棒グラフの右側に残り回数(例えば1500回の40%で“600回”)と表示するようにしても良い。
【0049】
図13は
図1の端末装置100の表示画面120の別の表示例を示す図である(その4)。この例では表示画面120に寿命曲線161を表示し、黒丸印を用いた寿命位置162を示すことによって、電池パック10の状態をユーザに報知する。寿命曲線161の縦軸は充電容量(%)であり、横軸は充電回数(回)である。寿命曲線161の下側には、棒グラフにて100%の寿命のうち現在の位置がどこかを棒グラフにて示す寿命グラフ163が表示される。電池パック10の制御部11は、電池セルの非放電時に測定される電圧を用いて電池残量を計算し、それを無線通信にて受信した端末装置100の制御部111は、表示画面120にて%による数値で表示する。ここでは100%を示す枠内の左から40%の位置までを黒塗りとし、さらに黒塗り部分に数値にて“40%”と表示することで、電池パック10の劣化状態を視覚的にかつ数値的に識別できるように構成している。寿命が100%残っている場合は枠内がすべて黒塗り表示され、寿命が0%の場合は枠内がすべて白塗りで表示される。寿命グラフ163の下側には、対象の電池パック10の購入日164と、現在の電圧値165が表示される。購入日164は、端末装置100がサーバ装置230から取得した管理情報を元に表示され、電圧値165は近接無線通信手段を用いて電池パック10の制御部11(
図3参照)から取得した電圧情報を表示する。
【0050】
表示画面120の下方領域には、電池パック10に接続中の電気機器本体の情報と作業可能情報(作業可能回数、使用(作業)可能時間)が領域166に表示され、過去に接続(使用)された複数(実施例では2つ)の電気機器本体の情報と作業可能情報(作業可能回数、使用(作業)可能時間)が領域167、168にそれぞれ表示される。領域166には、左側に“WH36DA”という現在接続中の電気機器本体の型式名が具体的に表示される。さらにはユーザに対して、この電気機器本体が接続中(装着中)であることを示すために“(接続中)”との文字も含めて表示される。本実施例において電池パック10が電気機器本体に装着された場合は、電池パック10の制御部11は電気機器本体(電動工具本体80)の制御部81と通信を行うことで、型式番号等の電気機器本体の情報を判別できるので、その情報を電池パック10から無線通信にて取得することで端末装置100側もその情報を取得できる。型式名の右側には、電池パック10の残容量40%(寿命グラフ163の表示内容)であと21回分の作業が行えるという意味を示す“21回作業可能”との文字が表示される。また、残りの電池残量(現在の電池残量)で可能な作業量を回数で表示することに加えて、“5分連続使用可能”のように時間を尺度とした情報も併用して表示される。この連続使用可能時間は、制御部11がユーザによる直近の使用時間と平均負荷量から、ユーザの使用方法であと何回分の作業が可能かを線形的に予測したものである。例えば、電池パック10の制御部11は、トリガレバーを引いてから戻すまでの時間と、作業を休止した時間を複数回取得し、各々の平均値を出したあと、和をとる。これが、1度の作業にかかる平均時間となる。1度の平均消費電力と電池パック10の残容量から残りの作業回数を算出し、残りの作業回数と1度の作業にかかる平均時間と積をとることで再充電するまでの時間を計算することができる。尚、残りの使用可能時間の計算方法は種々考えられるので、他の計算方法を採用しても良い。
【0051】
電池パック10の制御部11は、放電を検知した際の電圧、電流、放電時間のデータを工具種別と紐付けて毎回記憶する。このようにして記憶されたデータを用いて、機械学習による回帰を行い、工具種別又は工具別(電気機器本体別)の放電容量と電圧の回帰曲線を計算する。言い換えると、記憶されたデータを用いて統計的な分析を行い、この分析は過去の複数の作業に対して継続的に行うことによって学習制御による精度向上を図ることができる。また、人工知能を用いた高度な回帰分析を行う。計算した回帰曲線から、作業時の平均電流で電池残量がゼロになるまでの時間を計算し、この時間を残り作業時間として数値で表示する。また、残り作業時間と平均放電時間を用いて作業可能回数が計算可能である。
【0052】
領域167に表示される電気機器本体の型式名“DS/DV36DA”は、電池パック10が過去に装着されていた電気機器本体の型式であって、領域166に表示されている電気機器本体を除いて一番使用時間又は使用電力が多かった電気機器本体の型式である。過去に装着されていた電気機器本体の型式は、
図8にて示した電池情報データベース243にて継続的に管理されているので、リスト180に含まれる電池パック情報の中から抽出できる。領域167においても、電気機器本体の型式名の右側に作業可能回数が表示され、その下側に連続使用可能時間が表示される。
【0053】
領域168に表示される電気機器本体の型式名“G3610DA”は、電池パック10が過去に装着されていた電気機器本体の型式であって、領域167に示す電気機器本体の次に使用時間又は使用電力が多かった電気機器本体の型式である。領域168に示す情報は、領域166や領域167にて表示する情報と同様である。
【0054】
以上のように、
図13に示す表示例では、電池パック10を使用する電気機器本体に応じた作業可能回数と連続使用可能時間が具体的に表示されるので、ユーザにとっては、従来の手法よりも高度に寿命の予測が可能となった。ここで、1回の充電で使用可能な作業可能回数や連続使用可能時間の情報、電池パックの寿命情報が、電気機器本体の種類に応じて電池パックによって作業できる作業量に関する情報に該当する。作業量は例えばインパクト工具であれば、1回の充電で所定の釘を締め付けた本数や、1回の充電で所定の釘を所定本数締め付ける作業が可能な作業時間、電池パックが寿命となるまでに締め付けた本数や作業時間等を示す。グラインダであれば所定寸法の材料を切断可能な回数や時間が作業量に相当する。尚、作業可能回数や使用可能時間は、電気機器本体に加わる負荷の大きさに基づいて算出しても良い。この場合、負荷を示すパラメータとして電流の変化、電圧降下幅、回転数の変化が考えられる。例えば、ある電気機器本体に流れる電流が所定値よりも大きい状態を負荷が一定と定義し、電気機器本体毎にその条件と、電池電圧(電池容量)との関係を記憶させておく。そして、接続された電気機器本体と電池電圧(電池容量)を判別し、その結果に基づいて記憶させてある情報を読み出して表示させても良い。
【0055】
図14は
図1の端末装置100の表示画面120の別の表示例を示す図である(その5)。端末装置100の表示画面120に、電池パック10の種類や、その状態及びコメントが表示される。ここでは待ち受け状態の画面において、電池パック10から無線通信を介して送信された“残り容量20% 充電して下さい”との電池パック10の状態とコメントが表示された例である。“12:00”は現在時刻171であり、端末装置100の待ち受け画面で表示される内容の一部である。端末装置100の待ち受け画面、又は、通常時の表示画面は任意であり、コメント172を除く部分の表示内容は任意である。コメント172には、どの電池パック10から送られた情報かを示す情報(ここでは電池パックの種類として“電池1”)と、送られたメッセージ文そのもの、または、送られた情報(残容量20%)に基づいて端末装置100の制御部111が作成するユーザに対するメッセージ文が表示される。コメント172はポップアップ形式で画面上に重畳して表示される。尚、コメント172を文字だけで表示するのではなく、図形、色等を用いて、さらには警告音等を併用して出力しても良い。このように、電池パック10と端末装置100がペアリングされている状態で作業を行うと、電池残量不足による警告を端末装置100にて発することが可能となり、ユーザは充電開始のタイミングを事前に把握できる。
【実施例2】
【0056】
次に
図15~
図21を用いて本発明の第2の実施例を説明する。
図13に示した端末装置100の表示画面120においては、電池パック10が接続中の電気機器本体の型式番号(型名)、残り作業時間、残り作業回数、電池の残容量等を表示するようにしていた。これらの端末装置100に表示される情報は、電池パック10Aにも表示されるようにすれば、作業中のユーザは電池パック10Aの表示部を見るだけですぐに電池パック10Aの状態を把握することが可能となる。
【0057】
図15は本発明の第2の実施例に係る電池パック10Aの上面図である。電池パック10Aの筐体は、上下方向に分割可能な下ケース(図では見えない)と上ケース17により形成され、内部に複数本の電池セルを収容する。上ケース17は、電動工具本体80(
図2参照)や、図示しない外部充電装置に取り付けるための装着機構が形成される。この装着機構として、電池パック10の装着方向と平行な方向に延びるように、且つ、上ケース17の左右側面に形成されるレール16a、16bが設けられる。レール16a、16bは、電動工具本体80の電池パック装着部に形成されたレール溝(図示せず)と対応した形状に形成され、レール16a、16bが電気機器本体側のレール溝と嵌合した状態で、ラッチ機構にて電動工具本体80(
図2参照)や、図示しない外部充電装置に固定される。電池パック10を電動工具本体80から取り外すときは、左右両側にあるラッチボタン18a、18bを押しながら、電池パック10を装着方向と反対側に移動させる。
【0058】
上ケース17には下段面17aと上段面17bが形成され、それらの高さが階段状に異なる。下段面17aと上段面17bの段差から後方側には、複数のスロット15が形成され。スロット15は電池パック装着方向に所定の長さLを有するように切り欠かれた部分であって、この切り欠かれた部分の内部には、電動工具本体80又は外部の充電装置(図示せず)の機器側端子と嵌合可能な複数の金属端子21(
図2参照)が配設される。金属端子21には、充電用正極端子(C+端子)、放電用正極端子(+端子)、負極端子(-端子)が含まれ、さらには、装着される電気機器本体(電動工具本体80、充電装置等)との電気信号のやりとりを行う信号伝達用の端子も設けられる。信号伝達用の端子としては、例えば、LD端子、T端子(識別信号端子)、LS端子(温度信号端子)等があり、これらの端子のいずれかを用いることによって、電池パックの制御部は電気機器本体側から型式情報等を取得することができる。
【0059】
上段面17bの後方側には、上方に湾曲するように形成された隆起部17cが形成され、隆起部17cから後側面に向けて斜めの後斜面17dが形成される。後斜面17dには、文字やグラフィック情報を表示可能な表示部50が設けられる。表示部50は、文字やイラストを表示可能なドットマトリクス式のディスプレイ装置を用いると好ましい。尚、表示部50を、単色又は多色表示のLED、数字やアルファベットの表示が可能なセグメントLEDを用いて実現しても良い。
図15では、表示部50としてモノクロ又はカラー式の液晶ディスプレイを用いる。ここでは、電池の容量がどの程度かを示すマーク60aと、その右側(図中の上側)に電池容量が数値(図の例では100%)にて表示される。表示部50の上側(後方側であり図中の右側)の領域には、残時間を示すマーク60bと、その右側に時間値(図の例では1時間23分45秒)が表示される。このように電池パック10Aには、数値を表示可能な表示部50が設けられ、装着されている電気機器本体で使用する場合の電池残容量と残時間を表示できるので、ユーザは電池パック10Aの残量を知ることができるだけでなく、残りの作業可能な時間を把握することが可能となる。
【0060】
図16は本発明の第2の実施例に係る電池パック10Aの放電電圧特性を示す図である。横軸は放電容量(単位mAh)で、縦軸は電池電圧(単位V)である。ここで放電開始温度は一定で、251~253は異なる放電時の電圧特性である。リチウムイオン電池セルを用いた電池パック10Aの放電電圧特性は、放電電流の大きさによって異なり、放電特性251は、電池セルの製造メーカから公表されており既知の特性である。放電特性251は、放電レートが0.2Cであり、公称容量値の電池パックが5時間で放電終了となる電流値での放電電圧特性である。放電特性252は、電動工具本体Aにて使用している時の回帰曲線であり、放電特性253は電動工具本体Bにて使用している時の回帰曲線である。電動工具本体Bは電動工具本体Aに比べて使用時の電流値が大きい。図中×印は電動工具本体Aを稼働時の計測データのプロットであり、それらのプロットの回帰曲線が252となる。同様に●印は電動工具本体Bを稼働時の計測データのプロットであり、その回帰曲線が253となる。
【0061】
放電電流が大きくなると電池の電圧の低下度合いが大きく、電動工具本体を使用可能とする停止電圧まで到達した際の放電容量が、放電レート0.2C時のC3に比べて、電動工具本体AではC2に、電動工具本体BではC1のように低下する。本実施例では、放電時の電圧特性251~253を考慮して電池パックの残り作業回数、残り作業時間、電池の残容量等を計算するようにしたので、ユーザとしては、これから作業を始めるというときや作業中において、電池の残量を正確に知ることが可能となり、使用可能残り時間がわかることで、いつ充電するべきかを把握しやすくなる。特に、後どれくらいで充電するべきかがわかれば、作業のきりがいいところで充電することが可能となるので、使い勝手が良い。
【0062】
図17は本発明の第2の実施例に係る電池パック10Aの状態検知手順を示すフローチャートである。
図17の手順は電池パック10Aの制御部11のマイコンが起動している状態において実行されるものである。基本的には
図5で示した電池パック10の制御手順に、新たに時間あたりの消費電力計算(ステップ263)と使用可能時間計算(ステップ264)を追加したものである。ステップ263とステップ264を実行するために、最初の状態検知のステップ261が異なる。ステップ261においては、電池パック10Aの制御部11(
図2と同様の構成)のマイコンは、電池パック10の状態、すなわち、充電/放電/静止の分類、接続されている電気機器本体の種類、放電電流の大きさ、放電電流の継続時間(=作業時間の計測)等の情報を検知する。次に、制御部11のマイコンは、検知した状態情報を集計することによって、記憶部12に格納された記憶された情報を更新する(ステップ262)。記憶部12に格納された情報を示すのが
図18の表である。
【0063】
図18は本発明の第2の実施例に係る電池パック10Aにて管理される電池パック情報180Aの詳細内容を示すリストである。基本的な内容は
図8で示した電池パック情報180と同様であり、それに工具種1の総電流消費量189と総作業時間190の情報を追加したものである。総電流消費量189と総作業時間190は、電池パック10Aのマイコンが検出して格納する。電池パック情報180Aでは、工具種1だけに限らずに、少なくとも工具種2、工具種3を含む複数工具分のデータが格納される。このように、電池パック10の内部で過去の使用データを蓄積しているため、電池パック10A単独で表示部50に残り作業時間、残り作業回数、電池の残容量等を表示することが可能となる。
【0064】
再び
図17のフローチャートに戻る。電池パック10Aのマイコンは、電池パック情報180Aに格納された情報から時間あたりの消費電力を計算する(ステップ263)。時間あたりの消費電力は、
図18の総電流消費量189÷総作業時間190にて算出することができる。次に、電池パック10Aのマイコンは、使用可能時間を計算する(ステップ263)。使用可能時間は、電池残量を時間あたりの消費電力で割ることによって算出できる。次に、電池パック10Aのマイコンは表示部50(
図15参照)に電池容量と作業可能残時間(使用可能時間)を表示する(ステップ265)。次に、制御部11のマイコンは、次の状態検知を行うタイミングになったか否か、すなわちインターバルの所定時間が経過したかを判断し(ステップ266)、所定時間が経過していない場合は待機し、経過したらステップ261に戻る。
【0065】
図17のフローチャートにおいては、表示部50(
図15参照)に電池容量と作業可能残時間(使用可能時間)が常時表示される例で説明した。しかしながら、ユーザが電池容量と作業可能残時間を知りたいタイミングは、(1)これから作業を始めるというときに電池の残量が知りたい、(2)作業中に後どれくらいで充電するべきか知りたい(作業のきりがいいところで充電したい)、ということが多い。従って、それらのタイミングで表示部50に情報が表示されるようにして、表示部50の表示に伴う電力の消費を押さえるようにしても良い。例えば、表示するタイミングとして、電気機器本体への接続時に5秒間表示、電気機器の使用中は常に表示、電気機器使用後は5秒間表示、電気機器の接続中かつ電池残量が30%以下の場合は電気機器の使用の有無にかかわらずに常に表示、のように様々な表示制御をすることが可能である。
【0066】
以上、第2の実施例によれば電池パック10A単独で電池容量と作業可能残時間(使用可能時間)を表示するので、ユーザは電池パック10Aの状態を的確に知ることが可能となる。尚、表示部50(
図15参照)への表示項目や表示方法は種々の変更が可能である。
【0067】
図19は本発明の第2の実施例に係る電池パック10Aの表示部50における表示例を示す図である(その1~3)。
図19(A)は、上側の表示領域51に電気機器本体の型名(型式番号)が表示され、下側の表示領域52には残り作業可能時間が表示される。このように電気機器本体と接続している場合には、電気機器本体の情報(型名、製造番号等)と電池パック10Aの残量を同時に表示するようにすれば、ユーザは“WH18DDL2”という特定の機種での使用ならば、あと1時間23分45秒分の作業が可能であることを知ることができる。
【0068】
図19(B)は、上側の表示領域51に電気機器本体の型名(型式番号)が表示され、下側の表示領域52には電池パックの残容量が%にて表示される。尚、電池パック10Aが電気機器本体から取り外されている場合は、表示領域51に電気機器本体の型名を表示しないようにすれば良いが、最後に装着されていた電気機器本体の型名(型式番号)を表示したままとして、下段に電池パックの残容量又は
図19(A)のように残り作業可能時間を表示しても良い。
【0069】
図19(C)は、表示部50を3つの表示領域53~55に分けて、それぞれ電気機器本体の型名、装着されている電気機器本体の製造番号(固有番号)、電池パックの残容量が同時に表示される。製造番号(固有番号)まで表示することでユーザは、同一型名の複数の電池パック10Aを所有する場合でもそれぞれの電池パック10Aを識別できる。このように表示する情報は表示部50に表示可能な範囲で複数同時に表示してもよい。尚、製造番号(固有番号)の代わりにユーザが任意に設定する電池パック10Aの管理番号や識別情報を表示領域54に表示するようにしても良い。この場合は、端末装置100を用いて予め電池パック10Aの記憶部12に管理番号や識別情報を事前に登録しておく必要がある。このようにユーザが事前登録した管理番号や識別情報を表示領域54に表示するようにすれば、電池パックの側面にラベルを貼ったり、油性ペンで管理番号や識別情報を書く必要性が無くなる。
【0070】
図20は本発明の第2の実施例に係る電池パック10Aの表示部50における別の表示例を示す図である(その4、5)。上側の表示領域51に電気機器本体の型名(型式番号)が表示され、下側の表示領域52には電池パック10Aの残容量が%にて表示されるが、それに加えて、電気機器本体に装着している場合にのみ表示されるマーク56が表示される。マーク56は、液晶ディスプレイで表示可能なもので、ここでは電動工具の形状をしめしたアイコンとしている。ユーザは表示部50のマーク56の有無を見るだけで、容易に電気機器本体に装着されているか否かを判別できる。尚、マーク56は、文字とイラストの組み合わせ、又は、文字だけで表示しても良い。また、表示部50に表示する項目は、電気機器本体に関する情報、電池パックの残容量、作業可能な残り時間から一つあるいは複数を表示するようにすれば良い。
【0071】
電池パック10Aが電気機器本体から取り外されている場合は、
図20(B)のように中央の表示領域57に残容量を表示するだけとすれば良い。このように、電池パック10Aの電気機器本体への接続時は
図20(A)のように上下2行表示として、非接続時は
図20(B)のように中央に1行だけの表示として、接続時と非接続時の表示態様を変えたので、ユーザは電池パック10Aの表示部を見ることで接続されているか否かを一目で判別できる。非接続時の表示部50の表示は常時表示ではなくて、制御部11のマイコンが起動しているときにだけ表示し、マイコンがスリープ状態になったとき、シャットダウンされたときは表示部50には何も表示されないようにすれば良い。尚、表示部50の近傍に押しボタンスイッチ(図示せず)を設けて、電池パック10Aの非接続時にはそのボタンスイッチを押した時に、一定時間(例えば約5秒程度)だけ残容量を表示するように構成しても良い。そのボタンスイッチは、従来の電池パックの電圧チェックボタンに相当するが、電圧チェックボタンを押すことで、残容量、又は、残容量と電池パック10Aの管理番号や識別情報を表示するようにしても良い。
【0072】
図21は本発明の第2の実施例に係る電池パック10Aの表示部50における別の表示例を示す図である(その6、7)。
図21(A)(B)共に、上側の表示領域51に電気機器本体の型名(型式番号)が表示される。
図21(A)では、下側の表示領域52には電池パック10Aの残り作業時間が表示されるが、残り作業時間が所定の値(例えば残時間5分)を下回った場合に、充電が必要な時期に到来したことを知らせるアラームを表示する。ここではアラームを示すアイコン58を残り作業時間の前に表示するようにした。アイコン58のデザインや色は任意である。アイコン58は、点滅して表示、又は、赤色等のカラー表示をするようにしてユーザにアピールするようにすると良い。
【0073】
図21(B)では下側の表示領域52には電池パック10Aの残容量が%にて表示されるが、残作業時間が所定の値(例えば残量15%)を下回ったとして、充電時期であることを知らせるアラームを表示する。ここではアラームを文字59にて表示し、“LOW”と表示する。文字59は、他の文字表示と同色で表示すれば良いが、点滅して表示、反転表示等の強調表示、又は、オレンジ色等のカラー表示をするようにしてユーザにアピールするようにすると良い。尚、このアラームを出すタイミングを固定(例えば残量15%)とするのではなく、直近のユーザの使用負荷量から、使用負荷により電池パックが出力を停止する位置を経験的に保存し、保存した値に近づくと充電を勧めるように構成しても良い。
【0074】
以上、第2の実施例では電池パック10Aにデジタル表示可能な表示部50を設けたので、ユーザは電池パック10の状態を容易に把握することが可能となった。また、電池パック10Aは装着された電気機器本体に対応させて、その電気機器本体が使用された時の電圧・電流・放電時間のデータを電気機器本体に紐づけて記憶し、電池パック10Aのマイコンは、記憶したデータを基に機械学習を行い、工具種別や工具毎の放電特性曲線を計算するので、精度の良い残量管理や寿命予測が可能となった。さらには、特定の電気機器本体に即した計算した特性曲線から、作業時の平均電流で使用可能な電池残量がなくなる(ゼロ相当になる)までの時間を算出し、この時間を残り作業時間として表示装置に数値で表示するようにしたので、ユーザにとって電気機器本体に応じた精度の良い電池パックの管理システムを実現できた。
【0075】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、端末装置100は、グループ分けのためのクラスタ情報を管理するサーバとネットワークによって接続可能であるが、あらかじめクラスタ情報をサーバからダウンロードしておくことによって、オフラインでの電池パック10の管理も可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…(電池パックの)管理システム、10,10A…電池パック、11…制御部、12…記憶部、13…無線通信部、14…物理接続端子、15…スロット、16a…レール、17…上ケース、17a…下段面、17b…上段面、17c…隆起部、17d…後斜面、18a,18b…ラッチボタン、19…センサ部、20…電池セル、21…金属端子、50…表示部、51~53,57…表示領域、56…マーク、58…アイコン、59…文字、60a,60b…マーク、80…電動工具本体、81…制御部、82…記憶部、83…放電負荷、85…金属端子、88…ユーザインターフェース、100…端末装置、111…制御部、112…記憶部、113…無線通信部、114…インターネット接続部、115…ユーザインターフェース、120…表示画面、121…ホームボタン、122…寿命曲線、123…寿命位置、131…説明、132…アイコン群、141…一覧表、142…説明、151…アイコン、152…棒グラフ、161…寿命曲線、162…寿命位置、163…寿命グラフ、164…購入日、165…電圧値、166~168…領域、171…現在時刻、172…コメント、180,180A…電池パック情報、181…バッテリNo、182…過放電回数、183…過充電回数、184…充電回数、185…工具種1、186…工具種2、187…(工具種1の)使用時間、188…(工具種2の)使用時間、189…総電流消費量、190…総作業時間、200…インターネット、201…基地局、210…サポート会社、230…サーバ装置、231…情報処理部、232…インターネット接続部、233…顧客情報管理データベース、240…サーバ装置、241…情報処理部、242…インターネット接続部、243…電池情報データベース、251~253…放電特性(電圧特性)、271…直線(線形関数)、272~274…プロット群、280…パターン