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特許7279802高熱伝導性材料用ペースト状樹脂組成物、高熱伝導性材料、および半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】高熱伝導性材料用ペースト状樹脂組成物、高熱伝導性材料、および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/02 20060101AFI20230516BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20230516BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C08F299/02
H01L21/52 E
C08K3/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021545737
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2021001980
(87)【国際公開番号】W WO2021153405
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2020012506
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】渡部 直輝
(72)【発明者】
【氏名】阿部 弓依
(72)【発明者】
【氏名】高本 真
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/167819(WO,A1)
【文献】特開2017-106023(JP,A)
【文献】特開2009-295895(JP,A)
【文献】特開平11-316456(JP,A)
【文献】特開2013-026089(JP,A)
【文献】特開2011-150897(JP,A)
【文献】特開2014-074132(JP,A)
【文献】特開2011-122129(JP,A)
【文献】特開2004-139754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00- 20/70
C08F120/00-120/70
C08F220/00-220/70
C08F299/02
C08L 33/00- 30/26
C08K 3/08
C08F299/02
C08G 59/40
C09J 4/02
C09J 7/30
C09J 11/06
C09J163/00
H01B 1/22
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結することにより高熱伝導性材料を得るためのペースト状樹脂組成物であり、焼結後の前記高熱伝導性材料が以下に記載の測定条件で26W/mK以上である高熱伝導性材料用ペースト状樹脂組成物であって、
(A)下記一般式(1)で表される化合物から選択される少なくとも1種を含む(メタ)アクリロイル基含有化合物と、
(B)銀含有粒子または銅含有粒子を含む金属含有粒子と、
(C)熱硬化性樹脂(C)((メタ)アクリロイル基含有化合物(A)を除く)と、
を含む、高熱伝導性材料用ペースト状樹脂組成物(ただし、β-ジカルボニル化合物が含まれる場合を除く。)。
【化1】
(一般式(1)中、Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を示し、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。Xは水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシル基、炭素数1~3のアルキル基、または炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。mは2~10の整数を示す。nは8以上30以下の整数を示す。)
[測定条件]
前記ペースト状樹脂組成物を、テフロン板上に塗布し、窒素雰囲気下で、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間熱処理して焼結する。これにより、厚さ1mmの高熱伝導性材料を得る。次いで、レーザーフラッシュ法により、前記高熱伝導性材料の厚み方向の熱拡散係数αを測定する(測定温度25℃)。また、示差走査熱量測定により、比熱Cpを測定する。さらに、JIS K 6911に準拠して、密度ρを測定する。 これらの値を用いて、以下の式に基づいて、熱伝導率λを算出する。
熱伝導率λ[W/(m・K)]=α[m /sec]×Cp[J/kg・K]×ρ[g/cm
【請求項2】
熱硬化性樹脂(C)はエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の高熱伝導性材料用ペースト状樹脂組成物。
【請求項3】
さらに硬化剤(D)を含む、請求項1または2に記載の高熱伝導性材料用ペースト状樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の高熱伝導性材料用ペースト状樹脂組成物を焼結して得られる高熱伝導性材料。
【請求項5】
基材と、
前記基材上に接着層を介して搭載された半導体素子と、を備え、
前記接着層は、請求項1~3のいずれかに記載の高熱伝導性材料用ペースト状樹脂組成物を焼結してなる、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状樹脂組成物、高熱伝導性材料、および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の放熱性を高めることを意図して、金属粒子を含む熱硬化性樹脂組成物を用いて半導体装置を製造する技術が知られている。樹脂よりも大きな熱伝導率を有する金属粒子を熱硬化性樹脂組成物に含めることで、その硬化物の熱伝導性を大きくすることができる。
【0003】
半導体装置への適用の具体例として、以下の特許文献1および2のように、金属粒子を含む熱硬化型の樹脂組成物を用いて、半導体素子と基板(支持部材)とを接着/接合する技術が知られている。
【0004】
特許文献1には、所定の構造の(メタ)アクリル酸エステル化合物、ラジカル開始剤、銀微粒子、銀粉および溶剤を含む半導体接着用熱硬化型樹脂組成物、当該組成物で半導体素子と基材とが接合された半導体装置が開示されている。当該文献には、実装後の温度サイクルに対する接続信頼性を向上させることができると記載されている(0011段落)。
【0005】
特許文献2には、イミドアクリレート化合物、ラジカル開始剤、フィラー、および液状ゴム成分を含む樹脂ペースト組成物、当該組成物で半導体素子と基材とが接合された半導体装置が開示されている。当該文献には、樹脂ペースト組成物を低応力化することによりチップクラックやチップ反りの発生を抑制することができると記載されている(0003段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-74132号公報
【文献】特開2000-239616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~2に記載の樹脂組成物で、半導体素子と基材とが接合された半導体装置は、長期に亘って良好な導電性が発現しない場合があり、長期信頼性に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、所定の構造を備える(メタ)アクリロイル基含有化合物を用いることで、半導体装置が長期に亘って良好な導電性が発現し、長期信頼性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、以下に示すことができる。
本発明によれば、
(A)下記一般式(1)で表される化合物から選択される少なくとも1種を含む(メタ)アクリロイル基含有化合物と、
(B)銀含有粒子または銅含有粒子を含む金属含有粒子と、
を含む、ペースト状樹脂組成物が提供される。
【化1】
(一般式(1)中、Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を示し、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。Xは水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシル基、炭素数1~3のアルキル基、または炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。mは2~10の整数を示す。nは以上30以下の整数を示す。)
本発明によれば、前記ペースト状樹脂組成物を焼結して得られる高熱伝導性材料が提供される。
本発明によれば、基材と、前記基材上に接着層を介して搭載された半導体素子と、を備え、前記接着層は、前記ペースト状樹脂組成物を焼結してなる、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体素子と基材との接合に適用することにより、長期に亘って良好な導電性が発現し、長期信頼性に優れた半導体装置を得ることができるペースト状樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
図2】半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「~」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
【0013】
本実施形態のペースト状樹脂組成物は、(A)2官能以上を有し、直鎖または分岐のオキシアルキレン基の繰り返し単位数が2以上である(メタ)アクリロイル基含有化合物と、(B)銀粒子または銅粒子を含む金属含有粒子と、を含む。
【0014】
[(メタ)アクリロイル基含有化合物(A)]
(メタ)アクリロイル基含有化合物(A)としては、(メタ)アクリロイル基を2官能以上有し、直鎖または分岐のオキシアルキレン基の繰り返し単位数が2以上である化合物であれば、本発明の効果を発揮し得る範囲で特に限定されず用いることができる。
【0015】
本実施形態において、当該構造を備える(メタ)アクリロイル基含有化合物(A)を含むペースト状樹脂組成物を用いることにより、当該組成物を焼結して得られる材料は、応力が緩和され、靱性にも優れる(破断エネルギーが高く破断し難い)。したがって、本実施形態のペースト状樹脂組成物により半導体素子と基材とが接合された半導体装置は、接合部の剥離等が抑制され、長期に亘って良好な導電性が発現し、長期信頼性に優れると考えられる。
【0016】
オキシアルキレン基の繰り返し単位数は、本発明の効果の観点から、2以上、好ましくは4以上、より好ましくは4~30、特に好ましくは8~30とすることができる。
【0017】
オキシアルキレン基としては、直鎖または分岐の炭素数2~10のオキシアルキレン基、好ましくは直鎖または分岐の炭素数2~8のオキシアルキレン基、より好ましくは直鎖または分岐の炭素数2~5のオキシアルキレン基を挙げることができる。
本実施形態においては、(メタ)アクリロイル基含有化合物(A)は、下記一般式(1)で表される化合物から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0018】
【化1】
【0019】
一般式(1)中、Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を示し、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
Xは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシル基、炭素数1~3のアルキル基、または炭素数1~3のアルコキシ基を示し、好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基である。複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。
mは2~10の整数、好ましくは2~8の整数、より好ましくは2~5の整数を示すことができる。
nは4以上30以下の整数を示し、好ましくは8以上30以下の整数と示すことができる。
【0020】
(メタ)アクリロイル基含有化合物(A)としては、ジエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール♯200ジ(メタ)アクリレート(n:4)、ポリエチレングリコール♯400ジ(メタ)アクリレート(n:9)、ポリエチレングリコール♯600ジ(メタ)アクリレート(n:14)、ポリエチレングリコール♯1000ジ(メタ)アクリレート(n:23)等を挙げることができる。
【0021】
(メタ)アクリロイル基含有化合物(A)は、本発明の効果の観点から、ペースト状樹脂組成物の不揮発成分全体中に、0.1~15重量%以下、好ましくは0.5~10重量%、より好ましく1.0~8重量%の量で含むことができる。
【0022】
なお、本発明の効果に影響を与えない範囲で(メタ)アクリロイル基含有化合物(A)とともに、一分子中に(メタ)アクリロイル基を1つのみ備える単官能(メタ)アクリルモノマー等の(メタ)アクリロイル基含有化合物(A)以外の(メタ)アクリロイル基含有化合物を含むこともできる。
【0023】
[金属含有粒子(B)]
金属含有粒子(B)は、適切な熱処理によってシンタリング(焼結)を起こし、粒子連結構造(シンタリング構造)を形成することができる。
金属含有粒子(B)は、銀含有粒子または銅含有粒子を含むことができる。
【0024】
特に、ペースト状樹脂組成物中に銀含有粒子が含まれること、特に、粒径が比較的小さくて比表面積が比較的大きい銀粒子が含まれることで、比較的低温(180℃程度)での熱処理でもシンタリング構造が形成されやすい。好ましい粒径については後述する。
【0025】
金属含有粒子(B)の形状は特に限定されない。好ましい形状は球状であるが、球状ではない形状、例えば楕円体状、扁平状、板状、フレーク状、針状などでもよい。
(「球状」とは、完全な真球に限られず、表面に若干の凹凸がある形状等も包含する。本明細書において以下同様。)
【0026】
金属含有粒子(B)は、(i)実質的に金属のみからなる粒子であってもよいし、(ii)金属と金属以外の成分からなる粒子であってもよい。また、金属含有粒子として(i)および(ii)が併用されてもよい。
【0027】
本実施形態において、特に好ましくは、金属含有粒子(B)は、樹脂粒子の表面が金属でコートされた金属コート樹脂粒子を含む。これにより、熱伝導性により優れるとともに貯蔵弾性率により優れた硬化物が得られるペースト状樹脂組成物を調製することができる。
【0028】
金属コート樹脂粒子は、表面が金属であり、かつ、内部が樹脂であるため、熱伝導性が良く、かつ、金属のみからなる粒子と比較して軟らかい。このため、金属コート樹脂粒子を用いることで、熱伝導率や貯蔵弾性率を適切な値に容易に設計することができる。
【0029】
通常、熱伝導性を大きくするためには、金属含有粒子の量を増やすことが考えられる。しかし、通常、金属は「硬い」ため、金属含有粒子の量が多すぎると、シンタリング後の弾性率が大きくなりすぎてしまう場合がある。金属含有粒子の一部または全部が金属コート樹脂粒子であることで、所望の熱伝導率や貯蔵弾性率を有する硬化物を得ることができるペースト状樹脂組成物を容易に設計することができる。
【0030】
金属コート樹脂粒子においては、樹脂粒子の表面の少なくとも一部の領域を金属層が覆っていればよい。もちろん、樹脂粒子の表面の全面を金属が覆っていてもよい。
【0031】
具体的には、金属コート樹脂粒子において、金属層は、樹脂粒子の表面の好ましくは50%以上、より好ましく75%以上、さらに好ましくは90%以上を覆っている。特に好ましくは、金属コート樹脂粒子において、金属層は、樹脂粒子の表面の実質的に全てを覆っている。
別観点として、金属コート樹脂粒子をある断面で切断したときには、その断面の周囲全部に金属層が確認されることが好ましい。
【0032】
さらに別観点として、金属コート樹脂粒子中の、樹脂/金属の質量比率は、例えば90/10~10/90、好ましくは80/20~20/80、より好ましくは70/30~30/70である。
【0033】
金属コート樹脂粒子における「金属」は、前述のとおりである。特に、銀が好ましい。
金属コート樹脂粒子における「樹脂」としては、例えば、シリコーン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などを挙げることができる。もちろん、これら以外の樹脂であってもよい。また、樹脂は1種のみであってもよいし、2種以上の樹脂が併用されてもよい。
弾性特性や耐熱性の観点から、樹脂は、シリコーン樹脂または(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0034】
シリコーン樹脂は、メチルクロロシラン、トリメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のオルガノクロロシランを重合させることにより得られるオルガノポリシロキサンにより構成される粒子でもよい。また、オルガノポリシロキサンをさらに三次元架橋した構造を基本骨格としたシリコーン樹脂でもよい。
【0035】
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーを重合させて得られた樹脂を、主成分として50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上含むことができる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-プロピル(メタ)アクリレート、クロロ-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートおよびイソボロノル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を挙げることができる。また、アクリル系樹脂のモノマー成分には、少量の他のモノマーが含まれていてもよい。そのような他のモノマー成分としては、例えば、スチレン系モノマーが挙げられる。金属コート(メタ)アクリル樹脂については、特開2017-126463号公報の記載なども参照されたい。
【0036】
シリコーン樹脂や(メタ)アクリル樹脂中に各種官能基を導入してもよい。導入できる官能基は特に限定されない。例えば、エポキシ基、アミノ基、メトキシ基、フェニル基、カルボキシル基、水酸基、アルキル基、ビニル基、メルカプト基等が挙げられる。
【0037】
金属コート樹脂粒子における樹脂粒子の部分は、各種の添加成分、例えば低応力改質剤などを含んでもよい。低応力改質剤としては、ブタジエンスチレンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリウレタンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、液状オルガノポリシロキサン、液状ポリブタジエン等の液状合成ゴム等が挙げられる。特に、樹脂粒子の部分がシリコーン樹脂を含む場合、低応力改質剤を含むことで、金属コート樹脂粒子の弾性特性を好ましいものとすることができる。
【0038】
金属コート樹脂粒子における樹脂粒子の部分の形状は、特に限定されない。好ましい形状は球状であるが、球状以外の異形状、例えば扁平状、板状、針状などでもよい。金属コート樹脂粒子の形状を球状に形成する場合は、使用する樹脂粒子の形状も球状であることが好ましい。
【0039】
金属コート樹脂粒子の比重は特に限定されないが、下限は、例えば2以上、好ましくは2.5以上、より好ましくは3以上である。また、比重の上限は、例えば10以下、好ましくは9以下、より好ましくは8以下である。比重が適切であることは、金属コート樹脂粒子そのものの分散性や、金属コート樹脂粒子とそれ以外の金属含有粒子を併用したときの均一性などの点で好ましい。
【0040】
金属コート樹脂粒子を用いる場合、金属含有粒子(B)全体中の金属コート樹脂粒子の割合は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは3~45質量%、さらに好ましくは5~40質量%である。この割合を適切に調整することで、ヒートサイクルによる接着力の低下を抑えつつ、放熱性を一層高めることができる。
【0041】
ちなみに、金属含有粒子(B)全体中の金属コート樹脂粒子の割合が100質量%ではない場合、金属コート樹脂粒子以外の金属含有粒子は、例えば、実質的に金属のみからなる粒子である。
【0042】
金属含有粒子(B)(複数種の金属含有粒子が併用される場合は全体として)のメジアン径D50は、例えば0.001~1000μm、好ましくは0.01~100μm、より好ましくは0.1~20μmである。D50を適切な値とすることで、熱伝導性、焼結性、ヒートサイクルに対する耐性などのバランスを取りやすい。また、D50を適切な値とすることで、塗布/接着の作業性の向上などを図れることもある。
金属含有粒子の粒度分布(横軸:粒子径、縦軸:頻度)は、単峰性であっても多峰性であってもよい。
【0043】
実質的に金属のみからなる粒子のメジアン径D50は、例えば0.8μm以上、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは1.2μm以上である。これにより、熱伝導性をより高めることができる。
【0044】
また、実質的に金属のみからなる粒子のメジアン径D50は、例えば7.0μm以下、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは4.0μm以下である。これにより、シンタリングのしやすさの一層の向上、シンタリングの均一性の向上などを図ることができる。
【0045】
金属含有粒子(B)のメジアン径D50は、例えば0.5μm以上、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2.0μm以上である。これにより、貯蔵弾性率E'を適切な値にしやすい。
【0046】
また、金属含有粒子(B)のメジアン径D50は、例えば20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。これにより、熱伝導性を十分大きくしやすい。
【0047】
金属含有粒子(B)のメジアン径D50は、例えば、シスメックス株式会社製フロー式粒子像分析装置FPIA(登録商標)-3000を用い、粒子画像計測を行うことで求めることができる。より具体的には、この装置を用い、湿式で体積基準のメジアン径を計測することで、金属含有粒子(B)の粒子径を決定することができる。
【0048】
ペースト状樹脂組成物全体中の金属含有粒子(B)(複数種の金属含有粒子を用いる場合は、それらの合計)の割合は、例えば1~98質量%、好ましくは30~95質量%、より好ましくは50~90質量%である。金属含有粒子の割合を1質量%以上とすることで、熱伝導性を高めやすい。金属含有粒子(B)の割合を98質量%以下とすることで、塗布/接着の作業性を向上させることができる。
【0049】
金属含有粒子(B)のうち、実質的に金属のみからなる粒子は、例えば、DOWAハイテック社、福田金属箔粉工業社などより入手することができる。また、金属コート樹脂粒子は、例えば、三菱マテリアル社、積水化学工業社、株式会社山王などより入手することができる。
【0050】
[熱硬化性樹脂(C)]
本実施形態のペースト状樹脂組成物は、さらに熱硬化性樹脂(C)を含むことができる。本実施形態において、熱硬化性樹脂(C)は(メタ)アクリロイル基含有化合物(A)を含まない。
【0051】
熱硬化性樹脂(C)は、通常、ラジカルなどの活性化学種が作用することで重合/架橋する基、および/または、後述の硬化剤(D)と反応する化学構造を含む。熱硬化性樹脂(C)は、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、エチレン性炭素-炭素二重結合を含む基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、マレイミド構造などのうち1または2以上を含む。
熱硬化性樹脂(C)としては、好ましくは、エポキシ樹脂を挙げることができる。
エポキシ樹脂は、一分子中にエポキシ基を1つのみ備える化合物であってもよいし、一分子中にエポキシ基を2つ以上備える化合物であってもよい。
【0052】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等の2官能性または結晶性エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂およびアルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂等の変性フェノール型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂等の複素環含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0053】
また、エポキシ基含有化合物として、4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、m,p-クレジルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等の、単官能のエポキシ基含有化合物を含むこともできる。
本実施形態のペースト状樹脂組成物は、熱硬化性成分を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0054】
本実施形態においては、熱硬化性樹脂(C)と(メタ)アクリロイル基含有化合物(A)とが併用されることが好ましい。これらを併用する場合の比率(質量比)は特に限定されないが、例えば熱硬化性樹脂(C)/(メタ)アクリロイル基含有化合物(A)=95/5~50/50、好ましくは熱硬化性樹脂(C)/((メタ)アクリロイル基含有化合物(A)=90/10~60/40である。
【0055】
熱硬化性樹脂(C)としてはエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が好ましく挙げられる。
本実施形態のペースト状樹脂組成物中の、熱硬化性樹脂(C)の量は、不揮発成分全体中、例えば3~20質量%、好ましくは5~15質量%である。
【0056】
[硬化剤(D)]
本実施形態のペースト状樹脂組成物は、さらに硬化剤(D)を含むことができる。
【0057】
硬化剤(D)としては、熱硬化性樹脂(C)と反応する反応性基を有するものを挙げることができる。硬化剤(D)は、例えば、熱硬化性樹脂(C)中に含まれるエポキシ基、マレイミド基、ヒドロキシ基などの官能基と反応する反応性基を含む。
【0058】
硬化剤(D)は、好ましくは、フェノール系硬化剤および/またはイミダゾール系硬化剤を含む。これら硬化剤は、特に、熱硬化性成分がエポキシ基を含む場合に好ましい。
フェノール系硬化剤は、低分子化合物あってもよいし、高分子化合物(すなわちフェノール樹脂)であってもよい。
【0059】
低分子化合物であるフェノール系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF(ジヒドロキシジフェニルメタン)等のビスフェノール化合物(ビスフェノールF骨格を有するフェノール樹脂);4,4'-ビフェノールなどのビフェニレン骨格を有する化合物などが挙げられる。
【0060】
フェノール樹脂として具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、フェノール-ビフェニルノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;ポリビニルフェノール;トリフェニルメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル型フェノール樹脂などを挙げることができる。
硬化剤(D)を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
本実施形態のペースト状樹脂組成物が硬化剤(D)を含む場合、その量は、熱硬化性樹脂(C)の量を100質量部としたとき、例えば10~150質量部、好ましくは20~100質量部である。
【0062】
(硬化促進剤)
本実施形態のペースト状樹脂組成物は、さらに硬化促進剤を含むことができる。
硬化促進剤は、典型的には熱硬化性樹脂(C)と硬化剤(D)との反応を促進させるものである。
【0063】
硬化促進剤として具体的には、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;ジシアンジアミド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン等のアミジンや3級アミン;上記アミジンまたは上記3級アミンの4級アンモニウム塩等の窒素原子含有化合物などが挙げられる。
硬化促進剤を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
本実施形態のペースト状樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、その量は、熱硬化性樹脂(C)の量を100質量部としたとき、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.5~5質量部である。
【0065】
(シランカップリング剤)
本実施形態のペースト状樹脂組成物は、さらにシランカップリング剤を含むことができる。これにより、接着力の一層の向上を図ることができる。
【0066】
シランカップリング剤としては、公知のシランカップリング剤を挙げることができ、具体的には、ニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン;
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシラン;
p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリルシラン;
3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリルシラン;
メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン;
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン;
イソシアヌレートシラン;
アルキルシラン;
3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランなどのウレイドシラン;
3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン;
3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートシランなどを挙げることができる。
シランカップリング剤を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
本実施形態のペースト状樹脂組成物がシランカップリング剤を含む場合、その量は、熱硬化性成分の量((メタ)アクリロイル基含有化合物(A)および熱硬化性樹脂(C)の合計量)を100質量部としたとき、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.5~5質量部である。
【0068】
(可塑剤)
本実施形態のペースト状樹脂組成物は、可塑剤を含むことができる。可塑剤により、貯蔵弾性率を小さめに設計しやすい。そして、ヒートサイクルによる接着力の低下を一層抑えやすくなる。
【0069】
可塑剤として具体的には、ポリエステル化合物、シリコーンオイル、シリコーンゴム等のシリコーン化合物、ポリブタジエン無水マレイン酸付加体などのポリブタジエン化合物、アクリロニトリルブタジエン共重合化合物などを挙げることができる。
可塑剤を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
本実施形態のペースト状樹脂組成物が可塑剤を含む場合、その量は、熱硬化性成分の量((メタ)アクリロイル基含有化合物(A)および熱硬化性樹脂(C)の合計量)を100質量部としたとき、例えば5~50質量部、好ましくは10~30質量部である。
【0071】
(ラジカル開始剤)
本実施形態のペースト状樹脂組成物は、ラジカル開始剤を含むことができる。
ラジカル開始剤により、例えば、硬化が不十分となることを抑えることができたり、比較的低温(例えば180℃)での硬化反応を十分に進行させることができたり、接着力を一層向上させることができたりする場合がある。
ラジカル開始剤としては、過酸化物、アゾ化合物などを挙げることができる。
【0072】
過酸化物としては、例えば、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタールなどの有機過酸化物を挙げることができ、より具体的には、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール;
p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;
ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-へキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;
ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;
ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;
2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-へキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノネート等のパーオキシエステルなどを挙げることができる。
【0073】
アゾ化合物としては、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などを挙げることができる。
ラジカル開始剤を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
本実施形態のペースト状樹脂組成物がラジカル開始剤を含む場合、その量は、熱硬化性成分の量((メタ)アクリロイル基含有化合物(A)および熱硬化性樹脂(C)の合計量)を100質量部としたとき、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.5~8質量部、さらに好ましくは0.5~5質量部である。
【0075】
(溶剤)
本実施形態のペースト状樹脂組成物は、さらに溶剤を含むことができる。溶剤により、例えば、ペースト状樹脂組成物の流動性の調整、基材上に接着層を形成する際の作業性の向上などを図ることができる。
【0076】
溶剤は、典型的には有機溶剤である。
有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メチルメトキシブタノール、α-ターピネオール、β-ターピネオール、へキシレングリコール、ベンジルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、イゾパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルプロピレントリグリコール、グリセリン等のアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)、2-オクタノン、イソホロン(3、5、5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン)、ジイソブチルケトン(2、6-ジメチル-4-ヘプタノン)等のケトン類;
酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、アセトキシエタン、酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、メチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2-ジアセトキシエタン、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリペンチル等のエステル類;
テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エトキシエチルエーテル、1,2-ビス(2-ジエトキシ)エタン、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン等のエーテル類;
酢酸2-(2ブトキシエトキシ)エタン等のエステルエーテル類;
2-(2-メトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコール類;
トルエン、キシレン、n-パラフィン、イソパラフィン、ドデシルベンゼン、テレピン油、ケロシン、軽油等の炭化水素類;
アセトニトリルもしくはプロピオニトリル等のニトリル類;
アセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;
低分子量の揮発性シリコンオイル、揮発性有機変成シリコンオイル等のシリコンオイル類など、を挙げることができる。
溶剤を用いる場合、1種のみの溶剤を用いてもよいし、2種以上の溶剤を併用してもよい。
【0077】
溶剤を用いる場合、その量は特に限定されない。所望の流動性などに基づき使用量は適宜調整すればよい。一例として、溶剤は、ペースト状樹脂組成物の不揮発成分濃度が50~90質量%となる量で使用される。
【0078】
(組成物の性状)
本実施形態のペースト状樹脂組成物は、好ましくは、20℃でペースト状である。すなわち、本実施形態のペースト状樹脂組成物は、好ましくは、20℃で、糊のようにして基板等に塗布することができる。このことにより、本実施形態のペースト状樹脂組成物を、半導体素子の接着剤などとして好ましく用いることができる。
もちろん、適用されるプロセスなどによっては、本実施形態のペースト状樹脂組成物は、比較的低粘度のワニス状などであってもよい。
【0079】
<高熱伝導性材料>
本実施形態のペースト状樹脂組成物を焼結しことにより高熱伝導性材料を得ることができる。
高熱伝導性材料の形状を変えることにより、自動車、電機分野において熱放散性を必要とする様々な部品に適用することができる。
【0080】
<半導体装置>
本実施形態のペースト状樹脂組成物を用いて、半導体装置を製造することができる。例えば、本実施形態のペースト状樹脂組成物を、基材と半導体素子との「接着剤」として用いることで、半導体装置を製造することができる。
【0081】
換言すると、本実施形態の半導体装置は、例えば、基材と、上述のペースト状樹脂組成物を熱処理により焼結して得られる接着層を介して基材上に搭載された半導体素子と、を備える。
本実施形態の半導体装置は、ヒートサイクルによっても接着層の密着性などが低下しにくい。つまり、本実施形態の半導体装置の信頼性は高い。
半導体素子としては、IC、LSI、電力用半導体素子(パワー半導体)、その他各種の素子を挙げることができる。
基板としては、各種半導体ウエハ、リードフレーム、BGA基板、実装基板、ヒートスプレッダー、ヒートシンクなどを挙げることができる。
【0082】
以下、図面を参照して、半導体装置の一例を説明する。
図1は、半導体装置の一例を示す断面図である。
半導体装置100は、基材30と、ペースト状樹脂組成物の熱処理体である接着層10(ダイアタッチ材)を介して基材30上に搭載された半導体素子20と、を備える。
【0083】
半導体素子20と基材30は、例えばボンディングワイヤ40等を介して電気的に接続される。また、半導体素子20は、例えば封止樹脂50により封止される。
【0084】
接着層10の厚さは、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上が更に好ましい。これにより、ペースト状樹脂組成物の応力吸収能が向上し、耐ヒートサイクル性を向上できる。
接着層10の厚さは、例えば100μm以下、好ましくは50μm以下である。
【0085】
図1において、基材30は、例えば、リードフレームである。この場合、半導体素子20は、ダイパッド32または基材30上に接着層10を介して搭載されることとなる。また、半導体素子20は、例えば、ボンディングワイヤ40を介してアウターリード34(基材30)へ電気的に接続される。リードフレームである基材30は、例えば、42アロイ、Cuフレーム等により構成される。
【0086】
基材30は、有機基板やセラミック基板であってもよい。有機基板としては、例えばエポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂等によって構成されたものを挙げることができる。
基材30の表面は、例えば、銀、金などの金属により被膜されていてもよい。これにより、接着層10と基材30との接着性が向上する。
【0087】
図2は、図1とは別の半導体装置100の一例を示す断面図である。
図2の半導体装置100において、基材30は、例えばインターポーザである。インターポーザである基材30のうち、半導体素子20が搭載される一面と反対側の面には、例えば複数の半田ボール52が形成される。この場合、半導体装置100は、半田ボール52を介して他の配線基板へ接続されることとなる。
【0088】
半導体装置の製造方法の一例について説明する。
まず、基材30の上に、ペースト状樹脂組成物を塗工し、次いで、その上に半導体素子20を配置する。すなわち、基材30、ペースト状樹脂組成物、半導体素子20がこの順で積層される。
ペースト状樹脂組成物を塗工する方法は特に限定されない。具体的には、ディスペンシング、印刷法、インクジェット法などを挙げることができる。
【0089】
次いで、ペースト状樹脂組成物を熱硬化させる。熱硬化は、好ましくは前硬化及び後硬化により行われる。熱硬化により、ペースト状樹脂組成物を熱処理体(硬化物)とする。熱硬化(熱処理)により、ペースト状樹脂組成物中の金属含有粒子が凝集し、複数の金属含有粒子同士の界面が消失した構造が接着層10中に形成される。これにより、接着層10を介して、基材30と、半導体素子20とが接着される。次いで、半導体素子20と基材30を、ボンディングワイヤ40を用いて電気的に接続する。次いで、半導体素子20を封止樹脂50により封止する。このようにして半導体装置を製造することができる。
【0090】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例
【0091】
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。
【0092】
<ペースト状樹脂組成物の調製>
まず、後掲の表-1に示される配合量に従って、各原料成分を混合し、ワニスを得た。
次に、得られたワニス、溶剤および金属含有粒子(金属コート樹脂粒子を含む)を、後掲の表-1に示す配合量に従って配合し、常温で、3本ロールミルで混練した。これにより、ペースト状樹脂組成物を作製した。
【0093】
以下、表-1の原料成分の情報を示す。
(熱硬化性成分)
・エポキシ樹脂1:ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(日本化薬社製、RE-303S)
【0094】
(硬化剤)
・硬化剤1:ビスフェノールF骨格を有するフェノール樹脂(室温25℃で固体、DIC社製、DIC-BPF)
【0095】
((メタ)アクリロイル基含有化合物)
・アクリルモノマー1:エチレングリコールジメタクリレート(共栄化学社製、ライトエステルEG)
・アクリルモノマー2:ポリエチレングリコール♯600ジメタアクリレート(一般式(1)のnが14)(日油社製、PDE600)
・アクリルモノマー3:ポリエチレングリコール♯600ジメタアクリレート(一般式(1)のnが14)(共栄社化学社製、ライトエステル14EG)
・アクリルモノマー4:ポリエチレングリコール♯1000ジアクリレート(一般式(1)のnが23)(新中村化学社製、A-1000)
【0096】
(可塑剤)
・可塑剤1:アリル樹脂(関東化学社製、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ビス(2-プロペニル)とプロパン-1,2-ジオールとの重合体)
【0097】
(硬化促進剤)
・イミダゾール硬化剤1:2-フェニル-1H-イミダゾール-4,5-ジメタノール(四国化成工業社製、2PHZ-PW)
【0098】
(重合開始剤)
・ラジカル重合開始剤1:ジクミルパーオキサイド(化薬アクゾ社製、パーカドックスBC)
【0099】
(金属含有粒子)
・銀粒子1:銀粉(福田金属箔粉工業社製、HKD-38、フレーク状、D50:4μm)
・銀コート樹脂粒子1:銀メッキシリコーン樹脂粒子(三菱マテリアル社製、耐熱・表面処理10μm品、球形状、D50:10μm、比重:2.3、銀の重量比率50wt%、樹脂の重量比率50wt%)
【0100】
(溶剤)
・溶剤1:ブチルプロピレントリグリコール(BFTG)
【0101】
<熱伝導率λの測定>
得られたペースト状樹脂組成物を、テフロン板上に塗布し、窒素雰囲気下で、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間熱処理した。これにより、厚さ1mmの、ペースト状樹脂組成物の熱処理体を得た(「テフロン」は、フッ素樹脂に関する登録商標である)。
次いで、レーザーフラッシュ法により、熱処理体の厚み方向の熱拡散係数αを測定した。測定温度は25℃とした。
また、示差走査熱量(Differential scanning calorimetry:DSC)測定により、比熱Cpを測定した。
さらに、JIS K 6911に準拠して、密度ρを測定した。
これらの値を用いて、以下の式に基づいて、熱伝導率λを算出した。
熱伝導率λ[W/(m・K)]=α[m/sec]×Cp[J/kg・K]×ρ[g/cm
【0102】
<電気抵抗率の測定>
得られたペースト状樹脂組成物をガラス板上に塗布し、窒素雰囲気下で、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間熱処理した。これにより、厚さ0.05mmのペースト状樹脂組成物の熱処理体を得た。ミリオームメータ(HIOKI社製)による直流四電極法、電極間隔が40mmの電極を用い、熱処理体表面の抵抗値を測定した。
【0103】
<25℃での貯蔵弾性率E'の測定>
得られたペースト状樹脂組成物を、テフロン板上に塗布し、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間熱処理した。これにより、厚さ0.3mmの、熱伝導性組成物の熱処理体を得た。
得られた熱処理体をテフロン板から剥がして、測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、DMS6100)にセットし、引張モード、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を行った。これにより、25℃における貯蔵弾性率E'(MPa)を測定した。
【0104】
<破断強度の測定>
得られたペースト状樹脂組成物を、テフロン板上に塗布し、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間熱処理した。これにより、厚さ0.3mm、幅4mmの熱伝導性組成物の熱処理体を得た。そして、各試験サンプルの25℃における破断強度を、引張試験機(島津製作所社製、「MST-1」)を用いて測定した。
【0105】
<破断ひずみの測定>
破断ひずみは、伸びの原点(初期チャック間距離)から各試験片の破断点(試験片が破断したときの変位量)までの伸びを、初期チャック間距離で除することによって算出した。
【0106】
<破断エネルギーの測定>
破断点エネルギーは、伸びの原点(初期チャック間距離)から各試験片の破断点(試験片が破断したときの変位量)までの応力を変位で積分することによって算出した。得られた破断点エネルギーを試験片の体積で割り、単位体積当たりの破断点エネルギー(mJ/mm)を得た。
【0107】
<ヒートサイクル試験/剥離有無の評価>
ペースト状樹脂組成物を表面銀めっきの基板上に塗布して塗膜を形成し、その塗膜の上に表面金めっきの7×7mmのシリコンチップを載せた。その後、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間熱処理した。以上により熱伝導性組成物を硬化させ、また、シリコンチップを基板に接合した。
接合後のシリコンチップ・基板を、封止材EME-G700ML-C(住友ベークライト製)で封止した。これを温度サイクル試験用のサンプルとした。
サンプルを、60℃/60%RHの高温高湿槽に入れて、48時間処理し、その後、260℃のリフロー処理にかけた。
リフロー処理後のサンプルを、温度サイクル試験機TSA-72ES(エスペック製)に投入し、(i)150℃/10分、(ii)25℃/10分、(iii)-65℃/10分、(iv)25℃/10分を1サイクルとして、2000サイクル処理を行った。
その後、SAT(超音波探傷)により剥離の有無を確認した。剥離がないものを○(良好)、剥離があるものを×(不良)と評価した。
【0108】
【表1】
【0109】
表-1の結果から、半導体素子と基材とを本発明のペースト状樹脂組成物を用いて接合することにより、長期に亘って良好な導電性が発現し、長期信頼性に優れた半導体装置を得ることができることが明らかとなった。
【0110】
この出願は、2020年1月29日に出願された日本出願特願2020-012506号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2