(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイシステム
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20230516BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
(21)【出願番号】P 2021555203
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2021033289
(87)【国際公開番号】W WO2022054902
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2020153533
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020164825
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021011663
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲廣▼▲瀬▼ 慎
(72)【発明者】
【氏名】宇都 孝行
(72)【発明者】
【氏名】松尾 雄二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌平
(72)【発明者】
【氏名】白石 海由
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0307176(US,A1)
【文献】国際公開第2019/198635(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/084076(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/054529(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
B60K 35/00-37/06
G03B 21/00-21/10
G03B 21/12-21/13
G03B 21/134-21/30
G03B 33/00-33/16
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
影像を投射する影像投射器と、当該影像投射器からの影像が投射される樹脂フィルムとを備えたヘッドアップディスプレイシステムであって、
前記樹脂フィルムは、樹脂フィルム面を反射面としたときの入射面に対してp偏光となる光線を入射角60°で照射しつつ、照射点を中心に0~90°の範囲でフィルム面を面内回転させた場合の平均反射率が10%以上であり、
前記影像投射器は、当該影像投射器からの影像を構成する光線において、前記樹脂フィルムを反射面としたときの入射面に対してp偏光成分の強度が全光線成分の強度の51%以上で
ある光線を投射するものであり、
前記樹脂フィルムは、下記測定法により求めたa
*の絶対値の最大値およびb
*の絶対値の最大値が下式(1)および(2)を充足する入射面が水平面に対して
80°~100°の範囲となるように配置されていることを特徴とするヘッドアップディスプレイシステム。
a
*の絶対値の最大値≦30 (1)
b
*の絶対値の最大値≦30 (2)
<測定法>
日立製作所製の分光光度計(U-4100 Spectrophotometer)に付属の角度可変ユニットならびにグランテーラ社製偏光子を取り付け、樹脂フィルムを反射面としたときの入射面に対してs偏光となる偏光を、入射角度40°、60°および80°で照射し、さらに該樹脂フィルムを透過した光を前記s偏光を吸収軸とする偏光子に透過させ、波長400~1600nmの範囲の透過率をそれぞれの入射角度において測定する。なおここで、スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲインは2に設定し、走査速度を600nm/分とする。得られた透過スペクトルとD65光源の分光分布とXYZ系の等色関数を用いて、各入射角度におけるa
*の絶対値およびその最大値、および、b
*の絶対値およびその最大値を算出した。
なお、光線がフィルムに到達する点を中心に前記樹脂フィルムを回転させて同様の測定を行い、上記式(1)および式(2)を充足する入射面を調べることができる。
【請求項2】
前記測定法で求められる透過スペクトルにおいて、透過率測定を行った際の入射角をθとしたとき、入射角θで測定した透過スペクトル中、波長450nm~750nmの範囲内における波長λnmにおける透過率をT(θ,λ)(%)、当該範囲での透過率の平均値をC(θ)(%)、当該範囲内においてT(θ,λ)=C(θ)を満たすλの数をN(θ)としたとき、N(40)、N(60)、N(80)のうち最小値が4以上である請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項3】
前記N(40)、N(60)、N(80)が、N(40)≦N(60)≦N(80)の関係を満たす、請求項2に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項4】
前記樹脂フィルムが、樹脂フィルム面を反射面としたときの入射面に対してp偏光となる光線を入射角としてそれぞれ20°、40°および70°で入射させたときの反射率(%)をRp20, Rp40, Rp70としたとき、Rp20≦Rp40<Rp70の関係を満足する請求項1~3いずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項5】
前記樹脂フィルムが、当該樹脂フィルムにある入射面についてp偏光となる光線を垂直入射させたときの波長450~650nmの範囲での平均透過率と、当該入射面に対してs偏光となる光線を垂直入射させたときの波長450~650nmの範囲での平均透過率が共に80%以上であることを特徴とする、請求項1~
4のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項6】
前記樹脂フィルムが、100℃で250時間処理したときの波長450~650nmの平均透過率の変化量が10%以下のフィルムである、請求項1~
5のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項7】
前記樹脂フィルムが、150℃で2時間処理した後の内部ヘイズが1%以下のフィルムである、請求項1~
6のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項8】
前記樹脂フィルムの片面に接着層を介してガラス板が積層された構成(構成A)を有する、請求項1~
7のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項9】
前記樹脂フィルムの両面に接着層を介してガラス板が積層された構成(構成B)を有する、請求項1~
7のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項10】
前記樹脂フィルムの、ガラス板が積層されていない側の面に反射防止層を有することを特徴とする、請求項
8に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項11】
前記ガラス板の少なくとも一方のガラス板が、前記接着層と面していない側の面に反射防止層を有することを特徴とする、請求項
9に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項12】
前記樹脂フィルムの両面の接着層をそれぞれC1、C2とした場合に、前記C1の可視・赤外光透過率T1と前記C2の可視・赤外光透過率T2がT2≠T1を満たすことを特徴とする、請求項
9または
11に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項13】
前記樹脂フィルムに対して入射角60°でp偏光を照射した場合の透過光に含まれるp偏光成分の割合が80%以上であることを特徴とする、請求項1~
12のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイシステムを搭載してなることを特徴とする、輸送用機器。
【請求項15】
下記測定法により求めたa
*の絶対値の最大値およびb
*の絶対値の最大値が下式(1)および(2)を充足する入射面を少なくともひとつ有
し、かつ、前記樹脂フィルムは、樹脂フィルム面を反射面としたときの入射面に対してp偏光となる光線を入射角60°で照射しつつ、照射点を中心に0~90°の範囲でフィルム面を面内回転させた場合の平均反射率が10%以上である樹脂フィルム。
a
*の絶対値の最大値≦30 (1)
b
*の絶対値の最大値≦30 (2)
<測定法>
日立製作所製の分光光度計(U-4100 Spectrophotometer)に付属の角度可変ユニットならびにグランテーラ社製偏光子を取り付け、樹脂フィルムを反射面としたときの入射面に対してs偏光となる偏光を、入射角度40°、60°および80°で照射し、さらに該樹脂フィルムを透過した光を前記s偏光を吸収軸とする偏光子に透過させ、波長400~1600nmの範囲の透過率をそれぞれの入射角度において測定する。なおここで、スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲインは2に設定し、走査速度を600nm/分とする。得られた透過スペクトルとD65光源の分光分布とXYZ系の等色関数を用いて、各入射角度におけるa
*の絶対値およびその最大値、および、b
*の絶対値およびその最大値を算出した。
なお、光線がフィルムに到達する点を中心に前記樹脂フィルムを回転させて同様の測定を行い、上記式(1)および式(2)を充足する入射面を調べることができる。
【請求項16】
前記測定法で求められる透過スペクトルにおいて、透過率測定を行った際の入射角をθとし、入射角θで測定した透過スペクトル中、波長450nm~750nmの範囲内における波長λnmにおける前記透過率をT(θ,λ)(%)、当該範囲での透過率の平均値をC(θ)(%)、当該範囲内においてT(θ,λ)=C(θ)を満たすλの数をN(θ)としたとき、N(40)、N(60)、N(80)のうち最小値が4以上である、請求項
15に記載の樹脂フィルム。
【請求項17】
前記N(40)、N(60)、N(80)がN(40)≦N(60)≦N(80)の関係を満たす、請求項
16に記載の樹脂フィルム。
【請求項18】
前記樹脂フィルムは、100℃で250時間処理したときの波長450~650nmの平均透過率の変化量が10%以下である、請求項
15~
17のいずれかに記載の樹脂フィルム。
【請求項19】
前記樹脂フィルムは、150℃で2時間処理した後の内部ヘイズが1%以下である、請求項
15~
18のいずれかに記載の樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイ(HUD。Head Up Display)システムは、車両等の輸送用機器の搭乗者の視野に情報を映し出す表示システムであり、例えば搭乗者の前方の風景に合わせた進路情報、注意喚起情報、建造物情報などを表示することで運転の安全性や快適性を向上させるものである。そのメカニズムについては、影像投射器から輸送用機器の風防の投影部に対して斜め方向から影像を投射して反射させ、該反射像を搭乗者の視野に入れる方式が最も簡単なものである。
【0003】
このような例として、特許文献1には、影像投射器から照射される偏光のみを反射する反射偏光子が投影部材に組み込まれたヘッドアップディスプレイが示されている。しかしこのような構成のヘッドアップディスプレイは、反射偏光子の反射軸に依存して反射性能が変化するために、風防の投影部の広範囲に影像を投射する場合には表示像の輝度に斑が生じる場合がある。加えて、外界光のうち、上記と影像投射器からの影像の偏光方向に対して90°異なる直線偏光成分を透過するため、車両内で偏光サングラスを着用した搭乗者は、表示像および外界光のうちいずれかの視認性が著しく低下する。
【0004】
また、広範囲にわたる表示像の輝度の斑を抑え、かつ偏光サングラス着用時における表示像や外界光の視認性を確保するための手段として、例えば特許文献2では、反射偏光子と、反射偏光子に対して観測者側に波長板を積層されてなる風防と、影像投射器とを備えたヘッドアップディスプレイシステムが開示されている。反射偏光子と波長板を組み合わせたヘッドアップディスプレイシステムは、影像投射器から投射された光を波長板により円偏光または楕円偏光化し、反射偏光子で影像の光を反射するメカニズムであることから、反射偏光子の反射軸の方向に限らず、広範囲の表示像を均一な輝度で反射することができる。一方で外界光についても反射偏光子、波長板を透過し円偏光または楕円偏光化されることで観測者が偏光サングラスを着用していても外界光を透過し、視認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2006-512622号公報
【文献】特開2019-113631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示されたヘッドアップディスプレイシステムは、風防の投影部に広範囲に影像を投射する場合であっても均一な反射性能が維持され、かつ外界光を視認できる。しかしながら、搭乗者が偏光サングラスを着用して、円偏光及び楕円偏光化した外界光を視認すると、風防に虹がかかったような色付きを視認する恐れがあり、搭乗者の視界が悪くなるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記の課題を解決せんとするものであって、このように風防の広範囲に影像を投射する場合であっても、均一な反射性能が維持され、かつ偏光サングラスを着用しても風防に色付きが視認されがたいヘッドアップディスプレイシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決せんとするものであって、以下の構成からなる。すなわち、
影像を投射する影像投射器と、当該影像投射器からの影像が投射される樹脂フィルムとを備えたヘッドアップディスプレイシステムであって、
前記樹脂フィルムは、樹脂フィルム面を反射面としたときの入射面に対してp偏光となる光線を入射角60°で照射しつつ、照射点を中心に0~90°の範囲でフィルム面を面内回転させた場合の平均反射率が10%以上であり、
前記影像投射器は、当該影像投射器からの影像を構成する光線において、前記樹脂フィルムを反射面としたときの入射面に対してp偏光成分の強度が全光線成分の強度の51%以上である光線を投射するものであり、
前記樹脂フィルムは、下記測定法により求めたa*の絶対値の最大値およびb*の絶対値の最大値が下式(1)および(2)を充足する入射面が水平面に対して80°~100°の範囲となるように配置されていることを特徴とするヘッドアップディスプレイシステム。
【0009】
a*の絶対値の最大値≦30 (1)
b*の絶対値の最大値≦30 (2)
<測定法>
日立製作所製の分光光度計(U-4100 Spectrophotometer)に付属の角度可変ユニットならびにグランテーラ社製偏光子を取り付け、樹脂フィルムを反射面としたときの入射面に対してs偏光となる偏光を、入射角度40°、60°および80°で照射し、さらに該樹脂フィルムを透過した光を前記s偏光を吸収軸とした偏光子に透過させ、波長400~1600nmの範囲の透過率をそれぞれの入射角度において測定する。なおここで、スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲインは2に設定し、走査速度を600nm/分とする。得られた透過スペクトルとD65光源の分光分布とXYZ系の等色関数を用いて、各入射角度におけるa*の絶対値およびその最大値、および、b*の絶対値およびその最大値を算出した。
【0010】
なお、光線がフィルムに到達する点を中心に前記樹脂フィルムを回転させて同様の測定を行い、上記式(1)および式(2)を充足する入射面を調べることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、風防の広範囲に影像を投射する場合であっても、均一な反射性能が維持され、かつ偏光サングラスを着用しても風防に色付きが視認されがたいヘッドアップディスプレイシステムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第一の測定法において、透過率を測定する方法を説明するための概略図である。
【
図2】入射角度θにおける、透過率T(θ,λ)(%)および前記T(θ,λ)の波長450nm~750nmの範囲内における平均値C(θ)(%)を表すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のヘッドアップディスプレイシステムについて具体的に説明する。本発明は以下の実施例を含む実施の形態に限定して解釈されるものではなく、発明の目的を達成できて、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然本発明の範囲内に含まれる。また、以下、ヘッドアップディスプレイについてはHUDと記載することがある。
【0014】
本発明のHUDシステムは、影像を投射する影像投射器と、当該影像投射器からの影像が投射される樹脂フィルムとを備えることが重要である。また、当該影像投射器からの影像を構成する光線において、前記樹脂フィルムを反射面としたときの入射面に対してp偏光成分の強度が全光線成分の強度の51%以上であることが重要である。ここで、p偏光とは電界成分が入射面に平行な電磁波(入射面に平行に振動する直線偏光)、s偏光とは電界成分が入射面に垂直な電磁波(入射面に垂直に振動する直線偏光)を表す。影像投射器から投射される影像を構成する光線がp偏光成分を多く含むことは、輸送用機器の風防の投影部(情報表示部)の表側と裏側の表面それぞれの面で光を反射し、その光線の進路にズレが生じることで発生する表示像が多重に見える多重像を抑制する点で重要である。
【0015】
影像投射器から投射される影像を構成する光線にs偏光が含まれてくる場合、情報表示部を構成する部材の表面と裏面で反射が発生するため多重像が視認されるが、p偏光についてはブリュースター角近辺の入射角度で入射する場合、情報表示部の表面と裏面でほとんど反射が発生しない。また、影像投射器から投射される影像を構成する光線にp偏光を多く含ませることで、偏光サングラス着用時でも表示像の輝度低下を抑制することができる。偏光サングラスは地表面や水面を反射面としたときにs偏光成分が大半を占めることとなる地面の照り返しや風防でのギラツキを抑制し、クリアな視界を確保するため、該s偏光成分を遮断するよう設計されている。よって影像投射器から投射される影像を構成する光線を、偏光方向が90°異なるp偏光を多く含ませることで、偏光サングラス着用時でも表示像の輝度を維持することができる。これらの観点から、当該影像投射器から投影される光線に占めるp偏光成分の割合は高いほどよく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは99%以上である。なお、上記理由より投影光源から放射される光に占めるp偏光成分の割合の上限は特に制限されず、実質100%となる。
【0016】
前記樹脂フィルムは、下記の測定法により求めたa*の絶対値の最大値およびb*の絶対値の最大値が下式(1)および(2)を充足する入射面が水平面に対して90°±10°以内となるように配置されていることが重要である。
【0017】
a*の絶対値の最大値≦30 (1)
b*の絶対値の最大値≦30 (2)
<測定法> (この測定法を「第一の測定法」と称することがある)
日立製作所製の分光光度計(U-4100 Spectrophotometer)に付属の角度可変ユニットならびにグランテーラ社製偏光子を取り付け、樹脂フィルムを反射面としたときの入射面に対してs偏光となる偏光を、入射角度40°、60°および80°で照射し、さらに該樹脂フィルムを透過した光を前記s偏光を吸収軸とする偏光子に透過させ、波長400~1600nmの範囲の透過率をそれぞれの入射角度において測定する。なおここで、スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲインは2に設定し、走査速度を600nm/分とする。得られた透過スペクトルとD65光源の分光分布とXYZ系の等色関数を用いて、各入射角度におけるa*の絶対値およびその最大値、および、b*の絶対値およびその最大値を算出した。
【0018】
なお、光線がフィルムに到達する点を中心に前記樹脂フィルムを回転させて同様の測定を行い、上記式(1)および式(2)を充足する入射面を調べることができる。
【0019】
ちなみに、上記測定法のs偏光は、前記光源から発せられたp偏光のHUD投影光ではなく、後述の通り、外の風景から入る光を想定してのものである。また、入射角とは樹脂フィルム面の法線と樹脂フィルムに入射する光とがなす角度をいう。
【0020】
図1は、上記第一の測定法による透過率の測定を説明するための図である。まず、樹脂フィルム1を反射面としたときの入射面に対して、s偏光となる偏光を入射角θで(入射光i)照射し、透過光t1を得る。続いて透過光t1が入射角0°で偏光子2を透過して得られる透過光t2の、各波長λでの透過率(T(θ,λ))を検出器3により得る。なお、このような態様で樹脂フィルム1及び偏光子2を配置することは、一般的な偏光サングラスを着用して外の風景を視認する態様をモデルとしたものといえる。先述のとおり、外の風景からの光は地表面や水面を反射面としたときにs偏光成分が大半を占めており、偏光サングラスは、クリアな視界を確保するため当該s偏光成分を遮断するよう設計されているためである。
【0021】
また、色度a*、b*とは、入射角θで得られた各波長λの透過率T(θ,λ)と、D65光源の分光分布とXYZ系の等色関数を用いて得られる色度を示す。この色度においては、a*が正の方向になるほど赤みが強くなり、負の方向になるほど緑みが強くなる。また、b*が正の方向になるほど黄みが強くなり、負の方向になるほど青みが強くなる。色度a*、b*ともに0の場合には無彩色となる。
【0022】
入射角θ=40°、60°、80°におけるa*、b*の絶対値を算出し、それらの中での最大値を求める。これらの入射角における色度a*の絶対値の最大値、および色度b*の絶対値の最大値が共に30以下であることにより、偏光サングラス着用時の風防の色付きが視認されがたくなる。この最大値の好ましい値は共に22以下であり、さらに好ましくは共に20以下であり、特に好ましくは共に10以下である。この最大値が共に10以下であれば、偏光サングラス着用時の風防の色付きが視認されず、透明で良好な視界を提供することができる。
【0023】
本発明のHUDシステムにあっては、入射角θ=40°、60°、80°におけるa*、b*の絶対値を算出し、それらの最大値がいずれも30以下であることを充足する入射面が、水平面に対して90±10°以内となるように配置されていることが重要である。このようにすることで、前記入射面が水平面に対して90°である場合、前述の、運転者が偏光サングラスをかけて外の風景を視認しても、色づきが視認されなくなる。さらに、上記入射面が水平面に対して90°±10°以内である場合、偏光サングラスをかけた運転者が姿勢を変えたり、首を傾けたりしても、風防の色づきが視認されがたくなる。なお、入射角θ=40°、60°、80°におけるa*、b*の絶対値を算出し、それらの最大値がいずれも30以下であることを充足する入射面調べる方法として、光線がフィルムに到達する点を中心に前記樹脂フィルムを回転させて同様の測定を行うことで決定できる。
【0024】
入射角θにおけるa*、b*の絶対値を小さくする方法として、樹脂フィルムとして異なる光学的性質を持った少なくとも2つの樹脂の層が積層された積層フィルムを用い、当該積層フィルムを構成する各層の主成分である熱可塑性樹脂の少なくとも一方に、複屈折性を有するものを用い、一軸延伸もしくはどちらか一方方向の延伸倍率を高くした二軸延伸を行うこと、および延伸倍率が高い方向を、上記入射面に垂直な方向に配置することで達成できる。ここで二軸延伸の方向について、延伸倍率が高い方向を高倍率方向、延伸倍率が低い方向を低倍率方向と呼ぶ。入射角θにおけるa*、b*の絶対値をさらに小さくする方法として、高倍率方向の延伸倍率をさらに高くするか、低倍率方向の延伸倍率をより低くし、高倍率方向と低倍率方向の倍率差を大きくすることでa*、b*の絶対値をさらに小さくすることができる。より具体的には、高倍率延伸方向と低倍率延伸方向の倍率差を0.5倍以上とすることが好ましく、より好ましい倍率差は0.8倍以上であり、さらに好ましくは1.0倍以上である。また、ここでいう入射角40°から80°の範囲は、一般的なHUDシステムの風防の設置角度に相当する角度であり、入射角40°から80°で照射された光が風防を透過し、偏光サングラス着用時に風防に色付きがみえなければ、多様多種な風防に搭載することが可能となる。なお、樹脂フィルムの高倍率方向は後述する測定方法(1)の樹脂フィルムの配向軸を測定することで調べる。
【0025】
本発明のHUDシステムにおいては、風防において色付きが視認されることを軽減する観点から、前記第一の測定法によって得られる、入射角度θ、波長λnmにおける前記透過率をT(θ,λ)(%)、波長450nm~750nmの範囲内における前記T(θ,λ)の平均値をC(θ)(%)、T(θ,λ)=C(θ)を満たすλの数をN(θ)としたときに、N(40)、N(60)、N(80)のうち最小値が4以上であることが好ましい。
【0026】
図2に、透過率T(θ,λ)および波長450nm~750nmの範囲内における前記T(θ,λ)の平均値C(θ)を表すグラフの一例を示す。N(θ)は、前記透過率T(θ,λ)のうち、連続してC(θ)よりも高い波長帯域と低い波長帯域とを分けることとなる波長の数に相当する。
図2の透過率T(θ,λ)のグラフの例ではN(θ)=2であり、波長450nm~750nmのT(θ,λ)のうち、C(θ)よりも高い波長帯域が1つ存在する。よって偏光サングラスを着用した搭乗者は、その波長帯域の光の色が強く視認される。ここで、N(θ)の増大に伴い、C(θ)よりもT(θ,λ)が高い波長帯域の数が増えるほど、その波長帯域の光の色が混じり合った色が視認される。ただしN(θ)が4以上であれば、C(θ)よりもT(θ,λ)が高い波長帯域の光の色が増えて、視認される色は無彩色となり、偏光サングラスを着用した搭乗者は風防の色付きが視認されがたくなる。上記観点から、より好ましいN(θ)は5以上であり、さらに好ましいN(θ)は6以上である。一方、N(θ)に上限はないものの、実現可能性の観点から、N(θ)は8以下とすることが好ましい。
【0027】
ここで説明する入射角40°から80°の範囲は、上述の通り、一般的なHUDシステムの風防の設置角度を想定した角度である。N(40)、N(60)、N(80)のうち最小値が4以上であれば、HUDシステムを多種多様な風防に搭載することが可能となる。N(θ)を大きくする方法としては、樹脂フィルムの積層構成を構成する2種類の樹脂層の少なくとも一方に複屈折性を有する樹脂を用い、一軸延伸もしくは延伸倍率差を大きくした二軸延伸を行う方法、および延伸倍率が高い方向(一軸延伸の場合は延伸方向)を、投影光源の入射面に垂直な方向に配置する方法等で達成できる。二軸延伸を行う場合は、高倍率延伸方向と低倍率延伸方向の倍率差が0.5倍以上であることが好ましく、より好ましい倍率差は0.8倍以上であり、さらに好ましくは1倍以上である。
【0028】
本発明のHUDシステムはN(40)、N(60)、N(80)が、N(40)≦N(60)≦N(80)の関係式を満たすことが好ましい。この関係式を満たすとき、偏光サングラスを着用時の風防の色付きが視認されがたくなる。N(40)≦N(60)≦N(80)の関係式を満たすための達成手段としては、N(θ)を大きくする方法と同様の方法を用いることができる。一方でN(40)≦N(60)≦N(80)の関係式を満たさないとき、N(40)、N(60)、N(80)がそれぞれこの関係式を満たすときよりも値が小さく、入射角度によっては色付きが視認されうる。
【0029】
前記樹脂フィルムが、樹脂フィルム面を反射面としたときの入射面に対してp偏光となる光線を入射角としてそれぞれ20°、40°および70°で入射させたときの反射率(%)をRp20, Rp40, Rp70としたとき、Rp20≦Rp40<Rp70の関係を満足することが望ましい。なお、該入射面は、樹脂フィルム面に対する影像投射器からの影像を構成する光線の入射面と一致させることが情報の視認性を評価することに適する。
【0030】
本発明のHUDシステムにおいては、前記樹脂フィルムが、樹脂フィルム面を反射面としたときの入射面に対してp偏光となる光線を入射角としてそれぞれ20°、40°、70°の角度で入射したときのそれぞれの反射率(%)をRp20, Rp40, Rp70としたとき、Rp20≦Rp40<Rp70の関係を満足することが好ましい。ここでいう反射率とは波長450nm~650nmにおける光の平均反射率である。ガラスや透明フィルムなどの一般的な透明な材料で構成された基板の場合、基板面の法線に対して20°から徐々に入射角度を大きくしていくに従い、偏光の一つであるp偏光の反射率が低下していき、ブリュースター角と呼ばれる角度で反射率は極小となる。したがって、ブリュースター角近傍の入射角で樹脂フィルムに対して影像を投射した場合、反射率が低いゆえに表示像の視認性が非常に悪くなる。そこで、樹脂フィルム面を反射面としたときの入射面に対してp偏光となる光線を入射角としてそれぞれ20°、40°および70°で入射させたときの反射率(%)をRp20, Rp40, Rp70としたとき、Rp20≦Rp40<Rp70の関係を満足する場合、ブリュースター角に相当する角度を備えていないため、斜め方向から影像を投射した場合に表示像を鮮明に視認できる。このような樹脂フィルムを得るためには、後述する多層構成として、2つの熱可塑性樹脂の間のフィルム面に対して平行な方向の屈折率の差を小さく、フィルム面に対して垂直な方向の屈折率差を大きくする方法を用いることができる。
【0031】
本発明のHUDシステムは、前記樹脂フィルムが、樹脂フィルム面を反射面としたときの入射面に対してp偏光となる光線を入射角60°で照射しつつ、照射点を中心に0~90°の範囲でフィルム面を面内回転させた場合の平均反射率が10%以上であることが好ましい。ここで、「照射点を中心に0~90°の範囲でフィルム面を面内回転させた場合の平均反射率」は、樹脂フィルムの配向軸を基準に面内に5°刻みで0~90°回転させた場合における波長域450nm~650nmにおける各波長の反射率の値を平均したものとして測定することができる。
【0032】
この平均反射率が10%以上であることは、本発明のHUDシステムを用いて輸送用機器の風防の広範囲に影像を投射する場合であっても、影像が投射される範囲内で一定の反射性能が維持され、斑の少ない高輝度な表示像を表示することができることを意味する。一方、この平均反射率が10%未満の場合、風防の広範囲に影像を投射する場合に、投射範囲内の表示像の一部に視認性に影響する程度の輝度の斑が生じる場合がある。例えば、特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイは反射偏光子を備えており、反射偏光子の反射軸方向と、投射の入射面方向を一致させないと入射光の斜め反射率が低下する。そのため、特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイの風防に広範囲に影像を投射する場合、投射範囲内のいずれかで投射光源の入射面と反射偏光子の反射軸が一致せず、表示像の視認性の悪化が懸念される。さらに、反射偏光子の反射軸の方位角依存性の観点から、設置する影像投射器の位置に制限が生じてしまう。
【0033】
上記観点から、この平均反射率はより好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上である。また、この平均反射率は高いほど、風防の広範囲に影像を投影した際に高輝度な表示像が得られる一方、風防を介した外部情報の視認性も悪化することから、上限値は90%である。なお、樹脂フィルムの面に対して入射角60°でp偏光を照射し、樹脂フィルムを照射点を中心に0~90°の範囲で面内回転させた場合の平均反射率は、角度可変ユニットと偏光子を備える分光光度計、例えば日立製作所製の分光光度計(U-4100 Spectrophotometer)により測定することができる。
【0034】
樹脂フィルム面を反射面としたときの入射面に対してp偏光となる光線を入射角60°で照射しつつ、照射点を中心に0~90°の範囲でフィルム面を面内回転させた場合の平均反射率の測定は、以下の手順で行うことができる。先ず、配向軸が入射面と平行に配置された樹脂フィルムに対して入射角度が60°となるようにp偏光を照射し、波長400~1600nmの範囲の反射スペクトルを測定し、得られた反射スペクトルから、波長450~650nmの範囲の反射率の平均値を求める。その後、樹脂フィルムの配向軸を基準に、5°刻みで右方向に面内回転させて同様の測定を行い、これを合計の回転角度が90°に達するまで繰り返す。こうして得られた各角度において得られた反射率の平均値を足し合わせて平均することで、樹脂フィルムの配向軸を基準に0~90°の範囲で面内回転させた場合の平均反射率(%)とする。
【0035】
樹脂フィルム面を反射面としたときの入射面に対してp偏光となる光線を入射角60°で照射しつつ、照射点を中心に0~90°の範囲でフィルム面を面内回転させた場合の平均反射率を10%以上または上記の好ましい範囲とする方法としては、例えば樹脂フィルムを構成する樹脂の成分を好ましいものとする方法、樹脂フィルムの構成を好ましい積層構成とする方法、延伸プロセスを経て樹脂フィルムを製造する際に、延伸方法や延伸速度、延伸倍率、延伸温度などの延伸条件を好ましい範囲にする方法、及び製造されたロール状フィルムの定められた幅範囲から樹脂フィルムを採取したりする方法が挙げられる。
【0036】
より具体的には、樹脂フィルムの構成として主成分が異なる2種類のポリエステル樹脂層を交互に積層されてなることが好ましく、特に、2種類のポリエステル樹脂のうち一方が結晶性ポリエステル、他方が非晶性ポリエステルであることが好ましい。延伸方法としては、逐次二軸延伸よりも同時二軸延伸が好ましいが、生産性の観点から逐次二軸延伸を用いる場合には、長手方向の延伸速度を平面性が悪化しない範囲で遅くすることが好ましく、幅方向の延伸倍率が長手方向の延伸倍率に対してより高く、かつ、高くなりすぎないよう調整することが好ましい。延伸温度は、各層の主成分のポリエステル樹脂の内ガラス転移温度の高い樹脂のガラス転移温度から当該樹脂のガラス転移温度+100℃までの範囲が好ましい。さらに、延伸後に熱処理を施す際に、熱処理の前半で幅方向に追加の延伸を行ったり、熱処理の後半で弛緩処理を行ったりすることも好ましい。
【0037】
本発明のHUDシステムが備える樹脂フィルムは、ポリエステル樹脂を主成分とすることが好ましい。ここでポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸とジオールとを脱水縮合してエステル結合を形成させることによって合成された重縮合体をいう。「ポリエステル樹脂を主成分とする」とは、樹脂フィルム中に、合計で50質量%を超えて100質量%以下のポリエステル樹脂が含まれることをいう。樹脂フィルムを構成するポリエステル樹脂は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、中でも、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルを主成分とすることが好ましい。なお、「芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸を主たる構成成分とする」とは、ポリエステル樹脂を構成する全ジカルボン酸単位を100モル%としたときに、芳香族ジカルボン酸単位または脂肪族ジカルボン酸単位を80モル%以上100モル%以下含むことをいう。
【0038】
ここで、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。中でもテレフタル酸、イソフタル酸、および2,6-ナフタレンジカルボン酸が特に好ましい。これらの酸成分は1種のみ用いてもよいが、2種以上を併用してもよい。
【0039】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、パラキシレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコール、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)などを挙げることができる。中でもエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、及びパラキシレングリコールが特に好ましい。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0040】
本発明のHUDシステムが備える樹脂フィルムは、前記のポリエステル樹脂のうち、主成分が異なる2種類のポリエステル樹脂層を交互に積層されてなることが好ましい。特に、2種類のポリエステル樹脂のうち一方が結晶性ポリエステル、他方が非晶性ポリエステルであることが好ましい。ここでいう非晶性樹脂とは、JIS K 7122(1999)に準じて、昇温速度20℃/分で樹脂を25℃から300℃の温度まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)、その状態で5分間保持後、次いで25℃の温度以下となるように30℃/分で冷却し、再度室温から20℃/分の昇温速度で300℃の温度まで昇温を行って得られた2ndRUNの示差走査熱量測定チャートにおいて、融解ピークのピーク面積から求められる結晶融解熱量ΔHmが5J/g以下の樹脂である。非晶性ポリエステルは、3種類以上の共重合成分から構成されていることが好ましく、さらに好ましくは共重合成分としてナフタレンやアントラセンのような多環芳香族化合物と、数平均分子量200以上のポリアルキレングリコールを含む。
【0041】
本発明のHUDシステムが備える樹脂フィルムは、例えば以下に示す方法にて前記樹脂を積層して製造することができる。まず、2種類の熱可塑性樹脂をペレットなどの形態で用意する。ペレットは必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥した後、別々の押出機に供給する。押出機内において融点以上の温度で熱可塑性樹脂を加熱溶融し、ギアポンプ等で押出量を均一化して樹脂を押し出し、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などを取り除く。次に、2種類の熱可塑性樹脂を別々の流路で多層積層装置に送り込んで交互に積層する。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、特に、50個以上の微細スリットを有するフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物が少なく、積層数が極端に多い場合でも高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、このような装置では、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため、任意の層厚みを達成することも容易である。
【0042】
次に積層された溶融樹脂を口金にてシート状に成形し、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出して冷却固化し、キャスティングフィルムを得る。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力により溶融樹脂シート状物をキャスティングドラム等の冷却体に密着させて急冷固化させることが好ましい。
【0043】
このようにして得られたキャスティングフィルムは、二軸延伸することが好ましい。ここで、二軸延伸とは、長手方向および幅方向に延伸することをいい、長手方向とはフィルムの走行方向をいい、幅方向とは長手方向とフィルム面内で直交する方向をいう。延伸は、逐次に二方向に延伸(逐次二軸延伸)してもよいし、同時に二方向に延伸(同時二軸延伸)してもよい。また、さらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。
【0044】
同時二軸延伸の場合、HUDシステムの視認性を高めるために延伸速度を5~80%/秒とすることが好ましく、より好ましくは10~50%/秒である。通常、同時二軸延伸はテンターを用いてフィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して行われ、延伸倍率は長手方向、幅方向共に2~5倍が好ましい。延伸温度は延伸するキャスティングフィルムを構成する各層の主成分のポリエステル樹脂の内ガラス転移温度の高い樹脂のガラス転移温度~当該樹脂のガラス転移温度+100℃が好ましい。
【0045】
こうして二軸延伸されたフィルムは、テンター内で前記延伸温度+100℃~前記延伸温度+150℃の温度で熱処理を行うことが好ましい。その際、弛緩速度0.01~2%/秒で長手方向および幅方向に弛緩処理を行うことが好ましい。弛緩倍率は弛緩直前のフィルム幅に対して0.90倍~0.99倍が好ましい。こうして得られた樹脂フィルムを、その後、均一に徐冷して室温まで冷やした後、テンターのクリップで把持されていた両端のエッジ部分を断裁して巻き取る。
【0046】
逐次二軸延伸の場合、HUDシステムの視認性を高めるために長手方向の延伸速度を50~300%/秒とすることが好ましく、より好ましくは70~150%/秒である。通常、長手方向の延伸はロールの周速差により行われ、延伸倍率は1.5~5倍が好ましい。延伸温度は延伸するキャスティングフィルムを構成する2種類の樹脂の平均ガラス転移温度~平均ガラス転移温度+100℃が好ましい。続いて、長手方向の延伸で得られた一軸延伸フィルムを延伸速度5~40%/秒で、より好ましくは8~30%/秒で幅方向に延伸することが好ましい。通常、幅方向の延伸はテンターを用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して行い、延伸倍率は1.5~6.5倍が好ましい。
【0047】
本発明の偏光サングラス着用時の風防の色付きを抑制されたHUDシステムに用いられる樹脂フィルムを製造するためには、フィルム長手方向と幅方向の延伸倍率差を0.5倍以上とするのが好ましい。より好ましい倍率差は0.8倍以上であり、さらに好ましくは1.0倍以上である。倍率差が0.5倍未満である場合、樹脂フィルム面に入射する光の角度によっては偏光サングラスを着用しながら樹脂フィルムを備えた投影部を視認した際に色付きが発生することがある。また、低倍率方向の延伸倍率が1.5倍未満であると低倍率方向の機械強度が低くなるため、低倍率方向の延伸倍率は少なくとも1.5倍以上であることが好ましく、より好ましくは2.0倍以上である。延伸温度は延伸する一軸延伸フィルムを構成する2種類の樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+100℃が好ましい。
【0048】
こうして二軸延伸されたフィルムは、テンター内で幅方向延伸温度+100℃~幅方向延伸温度+150℃の温度で熱処理を行うことが好ましい。その際、熱処理の前半では延伸速度5~20%/秒で幅方向に追加の延伸を行い、熱処理の後半では弛緩速度0.01~1%/秒で幅方向に弛緩処理を行うことが好ましい。幅方向の追加の延伸の倍率は1.05~1.20倍が好ましく、弛緩倍率は弛緩直前のフィルム幅に対して0.90倍~0.99倍が好ましい。こうして得られた樹脂フィルムを、その後、均一に徐冷して室温まで冷やした後、テンターのクリップで把持されていた両端のエッジ部分を断裁して巻き取る。こうして、本発明のHUDシステムに好適な樹脂フィルムを得ることができる。
【0049】
本発明のHUDシステムは、前記樹脂フィルムが、当該樹脂フィルムにある入射面についてp偏光となる光線を垂直入射させたときの波長450~650nmの範囲での平均透過率と、当該入射面についてs偏光となる光線を垂直入射させたときの波長450~650nmの範囲での平均透過率が共に80%以上であることが好ましい。
【0050】
波長450~650nmのp偏光およびs偏光の透過率をそれぞれ80%以上とすることで、輸送用機器の風防の一部に本発明のHUDシステムを組み入れた場合に、風景などの外界光の情報を明瞭に視認することができる。上記観点から当該透過率は、より好ましくは85%以上である。当該透過率が85%以上であれば、透明性の向上により、外界光の情報をより明瞭に視認することができる。
【0051】
このような樹脂フィルムを得るためには、例えば樹脂フィルムを構成する樹脂の成分を好ましいものとする方法や、樹脂フィルムの構成を好ましい積層構成とする方法、延伸プロセスを経て樹脂フィルムを製造する際に、延伸方法や延伸速度、延伸倍率、延伸温度などの延伸条件を好ましい範囲にしたりする方法等が挙げられる。より具体的には、樹脂フィルムの構成成分として非晶性のものを含むことが好ましい。延伸方法としては逐次二軸延伸を用いる場合には、平面性が悪化しない範囲で延伸速度や延伸倍率を低くすることが好ましい。延伸温度は用いる2種類の樹脂層の平均ガラス転移温度よりも高く、また、フィルム搬送性やフィルムの平面性が阻害されない範囲で可能な限り高いほど好ましい。
【0052】
本発明のHUDシステムに用いられる樹脂フィルムは、樹脂フィルムを、100℃で250時間処理したときの波長450~650nmの平均透過率の変化量が10%以下であることが好ましい。ここで、「100℃で250時間処理したときの波長450~650nmの平均透過率の変化量」とは、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に対して入射角70°で樹脂フィルムを反射面としたときの入射面に対してp偏光を照射した場合の波長450nm~650nmにおける透過率の平均値と、同一の樹脂フィルムを100℃の雰囲気下で250時間おいた後に同一面側から同一箇所に入射角70°でp偏光を照射した場合の波長450nm~650nmにおける透過率の平均値の差である。
【0053】
この平均透過率の変化量が10%以下であるということは、熱による樹脂フィルムの光学特性の変化が低く抑えられていることを意味する。このような樹脂フィルムをHUDシステムに用いることにより、長期使用に際してもHUDシステムの表示性能の低下を軽減することができる。上記観点から、この平均透過率の変化量は5.0%以下がより好ましく、さらに好ましくは2.0%以下である。なお、この平均透過率の変化量は小さければ小さいほど好ましいため下限に制限はないが、実現可能性の面から下限は0.1%である。
【0054】
樹脂フィルムを、100℃で250時間処理したときの波長450~650nmの平均透過率の変化量を10%以下または上記の好ましい範囲とする方法としては、樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂の少なくとも一つを、芳香族ジカルボン酸単位、芳香族ジオール単位、及び数平均分子量200以上のアルキレングリコール単位を含むポリエステル樹脂とする方法が挙げられる。当該ポリエステル樹脂を構成する全ジオール単位中にパラキシレングリコール単位を10モル%以上40モル%以下含むことがさらに好ましく、25モル%以上40モル%以下含むことがさらに好ましい。また、パラキシレングリコール単位に代えてBPEF単位を含むことも好ましく、この場合のBPEF単位は5モル%以上10モル%以下が好ましい。これにより、HUDシステムの高い表示性能を持ちつつ、高温環境下での樹脂フィルムの安定性が高まるため、長期使用に際しても表示性能の低下を軽減することができる。
【0055】
本発明のHUDシステムにおいては、樹脂フィルムを、150℃で2時間処理した後の内部ヘイズが1%以下であることが好ましい。樹脂フィルムを150℃で2時間処理した後の内部ヘイズを1%以下とすることで、樹脂フィルムを熱加工処理により輸送用機器の風防に取り付けた際に、HUDへの加工性が向上し、また、耐光性も向上できる。上記観点から、150℃で2時間処理した後の内部ヘイズは0.5%以下であることがより好ましい。この内部ヘイズは、低いほど風防の透明性が優れることから下限に特に制限はないが、実現可能性の観点から下限は0.1%以下となる。
【0056】
樹脂フィルムを、150℃で2時間処理した後の内部ヘイズを1%以下あるいは上記の好ましい範囲とする方法としては、樹脂フィルムを、100℃で250時間処理したときの波長450~650nmの平均透過率の変化量を10%以下または上記の好ましい範囲とする方法と同様の方法が挙げられる。この観点からは、特に芳香族ジカルボン酸単位、芳香族ジオール単位、及び数平均分子量200以上のアルキレングリコール単位を含むポリエステル樹脂を構成する全ジオール単位中に、パラキシレングリコール単位を25モル%以上40モル%以下含むことが好ましい。
【0057】
本発明のHUDシステムは、樹脂フィルムの片面に接着層を介してガラスが積層された構成(この構成を「構成A」と称することがある)を有することが、風防の耐久性を高める点で好ましい。また、本発明のHUDシステムは、構成Aを有した上で、さらにガラス以外の支持部材を備えることもできる。このような支持部材としては、例えば、樹脂が挙げられ、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン及びその共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体などが挙げられる。また、接着層としては酢酸ビニル樹脂系、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系、エチレン・酢酸ビニル共重合体系、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルエーテル、ニトリルゴム系、スチレン・ブダジエンゴム系、天然ゴム系、クロロプレンゴム系、ポリアミド系、エポキシ樹脂系、ポリウレタン系、アクリル樹脂系、セルロース系、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリイソブチレン等が挙げられる。
【0058】
また、接着層には、粘着性調整剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、架橋剤等を添加してもよい。これら接着層の加工前の形態としては液状、ゲル状、塊状、粉末状、フィルム状などが挙げられる。接着層の固化方法としては、溶剤揮散、湿気硬化、加熱硬化、硬化剤混合、嫌気硬化、紫外線硬化、熱溶融冷却、感圧などが挙げられる。積層方法としてはラミネート成形やインジェクション成形などが挙げられ加熱、加圧、上述した接着層の固化方法を用いることで情報表示部材が作成される。更に投影画像表示部材の表面にハードコート層、耐磨耗性層、傷防止層、反射防止層(以下、「AR層」と称することがある)、色補正層、紫外線吸収層、光安定化層(HALS)、熱線吸収層、印刷層、ガスバリア層、粘着層、透明電極層などの機能性層を有していてもよい。
【0059】
本発明のHUDシステムが構成Aを備える場合、樹脂フィルムの接着層と接していない面側に影像投射器を配置することが好ましい。また、樹脂フィルムのガラスが積層されていない面にAR層を有することが、多重像発生を抑制するために好ましい。ここでAR層とは、樹脂フィルムの表面よりも屈折率の低い層をいい、光の干渉効果によって反射率を低減するものである。AR層の形成手法としてはロールコート、グラビアコート、スピンコート、スプレーなどの湿式法と、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法などの乾式法があるが、これらのいずれを用いてもかまわないが、生産性の観点から湿式法がより好ましい。
【0060】
本発明のHUDシステムは、樹脂フィルムの両面に接着層を介してガラスが積層された構成(この構成を「構成B」と称することがある)を有することも、風防の耐久性を高めつつ顕著な多重像抑制効果を得るために好ましい。また、本発明のHUDシステムは、構成Bを有した上で、さらにガラス以外の支持部材を備えることもできる。このような支持部材としては樹脂が挙げられ、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン及びその共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体などが挙げられる。接着層としては酢酸ビニル樹脂系、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系、エチレン・酢酸ビニル共重合体系、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルエーテル、ニトリルゴム系、スチレン・ブダジエンゴム系、天然ゴム系、クロロプレンゴム系、ポリアミド系、エポキシ樹脂系、ポリウレタン系、アクリル樹脂系、セルロース系、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリイソブチレン等が挙げられる。
【0061】
また、接着層には、粘着性調整剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、架橋剤等を添加してもよい。これら接着層の加工前の形態としては液状、ゲル状、塊状、粉末状、フィルム状などが挙げられる。接着剤として、より好ましくはガラス面形状への追従性が高く、加工性に優れたビニル系接着剤である。さらに好ましくはガラスとの間の屈折率差が小さく接着性に優れたポリビニルアセタール系接着剤であり、中でもポリビニルブチラール樹脂が特に好ましく用いられる。これら接着剤は、風防に遮熱性を付与する目的で赤外線吸収剤を含有してもかまわない。赤外線吸収剤としては遮熱粒子のほか、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物などが挙げられる。ここでいう遮熱粒子とは、ランタン系粒子、アンチモン系粒子、インジウム系粒子、スズ系粒子、酸化タングステン系粒子などが挙げられる。
【0062】
本発明のHUDシステムが構成Aあるいは構成Bのいずれかをとる場合、それら構成で用いられるガラスの厚みは各々0.5mm~6.0mmの範囲であることが風防の軽量性と強度の高さを両立する観点から好ましい。上記観点からガラスの厚みは、より好ましくは1.0mm~5.0mmである。
【0063】
本発明のHUDシステムが構成Aをとる場合、風防の耐久性を高める観点から、接着層の厚みは2μm~500μmであることが好ましい。また、本発明のHUDシステムが構成Bをとる場合、風防の耐久性を高めることや、良好な加工性を得たりするために、接着層の厚みは30μm~800μmであることが好ましい。
【0064】
本発明のHUDシステムが構成Aあるいは構成Bのいずれかをとる場合、これらの構成体を作製する際に、樹脂フィルムやガラスの表面にコロナ処理やプラズマ処理、プライマー処理などの表面処理を施すことは、積層界面の密着強度を高めるために好ましい。本発明のHUDシステムは、樹脂フィルムを含む積層体の最外層の表面に、表面保護の目的でハードコート層を有してもかまわない。また、ハードコート層は、AR層の機能を併せ持ったものであってもかまわない。
【0065】
本発明のHUDシステムが前記構成Bをとる場合、前記樹脂フィルムの両面の接着層をそれぞれC1、C2とした場合に、前記C1の可視・赤外光透過率T1と前記C2の可視・赤外光透過率T2がT2≠T1を満たすことが好ましい。ここで可視・赤外光透過率とは波長400~1600nmにおける平均透過率を示す。T2≠T1である場合、接着層C2側からHUD表示画像を投射して用いることで、より高精細なHUD表示画像を得ることができる点、及び投射光源が赤外線による熱で加熱されて蓄熱するのを抑制できる点で好ましい。
【0066】
本発明のHUDシステムが構成Aあるいは構成Bのいずれかをとる場合、前記樹脂フィルムを反射面としたときの入射面に対してp偏光となる光線を入射角60°で入射させた場合の透過光に含まれるp偏光成分の割合が80%以上であることが好ましい。該透過光中のp偏光成分の割合が80%以上であることにより、入射したp偏光が樹脂フィルムを透過する過程でs偏光へと変換され、変換されたs偏光が情報表示部を構成する部材と大気との界面で反射して搭乗者に視認され、多重像となることを抑制することができる。上記観点から、透過光中のp偏光成分の割合はより好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0067】
透過光中のp偏光成分の割合を好ましい範囲とする手段としては、例えば樹脂フィルムを構成する樹脂の成分を好ましいものとしたり、樹脂フィルムの構成を好ましい積層構成としたり、延伸プロセスを経て樹脂フィルムを製造する際に、延伸方法や延伸速度、延伸倍率、延伸温度などの延伸条件を好ましい範囲にしたり、製造されたロール状フィルムの定められた幅範囲から樹脂フィルムを採取したりする方法が挙げられる。より具体的には、樹脂フィルムの構成として主成分が異なる2種類のポリエステル樹脂層を交互に積層されてなることが好ましく、特に、2種類のポリエステル樹脂のうち一方が結晶性ポリエステル、他方が非晶性ポリエステルであることが好ましい。延伸方法としては、逐次二軸延伸よりも同時二軸延伸が好ましいが、生産性の観点から逐次二軸延伸を用いる場合には、長手方向の延伸速度を平面性が悪化しない範囲で遅くすることが好ましく、幅方向の延伸倍率が長手方向の延伸倍率に対してより高く、かつ、高くなりすぎないよう調整することが好ましい。延伸温度は用いる2種類の樹脂の平均ガラス転移温度よりも高く、また、フィルム搬送性やフィルムの平面性が阻害されない範囲で可能な限り高いほど好ましい。さらに、延伸後に熱処理を施す際に、熱処理の前半で幅方向に追加の延伸を行ったり、熱処理の後半で弛緩処理を行ったりすることも好ましい。フィルムを採取する幅範囲としては、幅方向の中央に近いほど好ましい。
【0068】
本発明のHUDシステムは、輸送用機器や建築物、電子看板などに搭載されて用いられる。輸送用機器とは、航空機、船舶、自動車、鉄道等、搭乗者が運転する移動手段であり、本発明のHUDシステムは輸送用機器の風防、例えば自動車であればフロントガラス等に組み込まれて搭乗者が必要とする情報を情報表示部に映し出して用いられる。その際、投影光源から投射された画像が情報表示部で反射して搭乗者の視界に到達するように投射光源と風防の位置関係を調整して用いられる。投射の入射角は40~75°の範囲であることがHUDシステムの省サイズ化や視認性向上の観点から好ましく、より好ましくは50~70°である。
【0069】
以下、本発明の樹脂フィルムについて説明する。本発明の樹脂フィルムは下記測定法により求めたa*の絶対値の最大値およびb*の絶対値の最大値が下式(1)および(2)を充足する入射面を少なくともひとつ有する樹脂フィルムである。本発明の樹脂フィルムは、HUDシステムに搭載することで、偏光サングラスを着用しても風防に色付きが視認されがたいものとなる。本発明のフィルムを得るための手段は、前述のとおりである。
【0070】
a*の絶対値の最大値≦30 (1)
b*の絶対値の最大値≦30 (2)
<測定法>
日立製作所製の分光光度計(U-4100 Spectrophotometer)に付属の角度可変ユニットならびにグランテーラ社製偏光子を取り付け、樹脂フィルムを反射面としたときの入射面に対してs偏光となる偏光を、入射角度40°、60°および80°で照射し、さらに該樹脂フィルムを透過した光を前記s偏光を吸収軸とする偏光子に透過させ、波長400~1600nmの範囲の透過率をそれぞれの入射角度において測定する。なおここで、スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲインは2に設定し、走査速度を600nm/分とする。得られた透過スペクトルとD65光源の分光分布とXYZ系の等色関数を用いて、各入射角度におけるa*の絶対値およびその最大値、および、b*の絶対値およびその最大値を算出した。
【0071】
なお、光線がフィルムに到達する点を中心に前記樹脂フィルムを回転させて同様の測定を行い、上記式(1)および式(2)を充足する入射面を調べることができる。
【0072】
また、前記測定法で求められる透過スペクトルにおいて、透過率測定を行った際の入射角をθとしたとき、入射角θで測定した透過スペクトル中、波長450nm~750nmの範囲内における波長λnmにおける前記透過率をT(θ,λ)(%)、当該範囲での透過率の平均値をC(θ)(%)、当該範囲内においてT(θ,λ)=C(θ)を満たすλの数をN(θ)としたとき、N(40)、N(60)、N(80)のうち最小値が4以上であることが好ましい。また、前記N(40)、N(60)、N(80)がN(40)≦N(60)≦N(80)の関係を満たすことも好ましい。このような態様の樹脂フィルムを得るための手段は、前述のとおりである。
【0073】
また、前記樹脂フィルムは、樹脂フィルムの面を反射面としたときの入射面に対してp偏光となる光線を入射角60°で照射しつつ、照射点を中心に0~90°の範囲でフィルム面を回転させた場合の平均反射率が10%以上であることが好ましい。このような態様の樹脂フィルムを得るための手段は、前述のとおりである。
【0074】
本発明の樹脂フィルムは、100℃で250時間処理したときの波長450~650nmの平均透過率の変化量が10%以下であることが好ましく、150℃で2時間処理した後の内部ヘイズが1%以下であることが好ましい。このような態様の樹脂フィルムを得るための手段は、前述のとおりである。
【実施例】
【0075】
以下、本発明のHUDシステムについて、実施例を用いて説明する。但し、本発明のHUDシステムは以下の態様に限定されない。
【0076】
[物性の測定方法並びに効果の評価方法]
物性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
【0077】
(1)配向軸
王子計測機器(株)製 位相差測定装置(KOBRA-21ADH)を用いた。3.5cm×3.5cmで切り出したフィルムサンプルを装置に設置し、入射角0°におけるフィルム面内の配向軸方位を測定した。
【0078】
(2)a*値、b*値
日立製作所製の分光光度計(U-4100 Spectrophotometer)に付属の角度可変ユニットならびにグランテーラ社製偏光子を取り付け、測定検体である樹脂フィルム面を反射面としたときの入射面に対してs偏光となる偏光を入射角度40°で照射し、さらに該樹脂フィルムを透過した光を前記s偏光を吸収軸とする偏光子に透過させ、波長400~1600nmの範囲の透過率を測定した。測定条件としては、スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/分とし、得られた透過率とD65光源の分光分布とXYZ系の等色関数を用いてa*値、b*値を算出した。入射角60°および80°としたこと以外は上記と同様の操作でa*値、b*値をそれぞれの角度に対して算出した。
【0079】
(3)N(θ)
日立製作所製の分光光度計(U-4100 Spectrophotometer)に付属の角度可変ユニットならびにグランテーラ社製偏光子を取り付け、測定検体である樹脂フィルム面を反射面としたときの入射面に対してs偏光となる偏光を入射角度40°で照射し、さらに該樹脂フィルムを透過した光を前記s偏光を吸収軸とする偏光子に透過させ、波長λ=450~1600nmの範囲の透過率T(λ)を測定した。測定条件としては、スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/分とし、検出器の直前に偏光子を取り付けて透過光のうちのs偏光成分のみを検出器へと入光させた。得られた透過率のうち、波長λ=450nm~650nmの平均透過率をC(40)とすると、波長λ=450nm~650nmの透過スペクトルと、直線T(40,λ)=C(40)との交点の数をN(40)とした。入射角60°および80°としたこと以外は上記と同様の操作でN(60)およびN(80)を得た。
【0080】
(4)平均反射率・透過率
日立製作所製の分光光度計(U-4100 Spectrophotometer)に付属の角度可変ユニットならびにグランテーラ社製偏光子を取り付け、測定検体である樹脂フィルム面に対して入射角度20°、40°および70°のそれぞれで光を入射させ、のフィルム面を反射面とした入射面に対してp偏光となる光の波長400~1600nmの範囲の反射率を求め、また、入射角度を0°として前記p偏光と同偏光軸の光線(便宜上「p偏光」の用語を用いる)およびこれに直交する偏光軸の光線(便宜上「s偏光」の用語を用いる)の波長400~1600nmの範囲の透過率を測定し、それぞれ波長450nm~650nmの平均反射率、平均透過率を求めた。測定条件としては、スリットは2nm(可視)、自動制御(赤外)とし、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/分とした。
【0081】
(5)樹脂フィルムを面内回転させた場合の平均反射率
下記(a1)~(a4)の手順で求めた。
(a1) (4)と同等の手順、測定条件で、入射面と配向軸が平行となるように配置された測定検体の樹脂フィルム面の入射角度60°のp偏光の波長400~1600nmの範囲の反射スペクトルを測定した。
(a2) 前記(a1)で得た反射スペクトルから、波長450~650nmの範囲の反射率の平均値を算出した。
(a3) 樹脂フィルムを5°刻みで右方向に面内回転させながら、各回転角度おいて前記(a1)および(a2)を繰り返し、合計の回転角度が90°に達したところで測定を終えた。
(a4) 前記(a1)~(a3)の各回転角度において得られた反射率の平均値を足し合わせて平均することで、樹脂フィルムを面内回転させた場合の平均反射率(%)とした。
【0082】
(6)波長450~650nmの平均透過率の変化量
樹脂フィルムを25℃雰囲気下で250時間おき、入射角度70°にて該フィルム面を反射面とした入射面に対してp偏光となる光を入射したこと以外は、評価方法(5)と同様にして平均透過率を求めた。続いて、前記樹脂フィルムを100℃の雰囲気下で250時間放置し、25℃雰囲気下250時間放置後の平均透過率測定時と同一のフィルム面、同一測定箇所に対して入射角70°で該フィルム面を反射面とした入射面に対してp偏光となる光を入射させ、評価方法(4)と同様にして平均透過率を求めた。これらの値から両者の差を求め、これを波長450~650nmの平均透過率の変化量とした。
【0083】
(7)150℃で2時間処理した後の内部ヘイズ
樹脂フィルムを150℃の雰囲気下で2時間おき、その後、液体測定用石英セルに入れて流動パラフィンを充填し、スガ試験機(株)製 ヘイズメーター(HGM-2DP)を用いて測定を行うことで、フィルム表面ヘイズを除いた内部ヘイズを測定した。当該測定を、無作為に測定位置を変えて10回繰り返し、その平均値を該フィルムの内部ヘイズ値とした。
【0084】
(8)透過光中のp偏光成分の割合
下記(b1)~(b3)の手順で求めた。
(b1) 日立製作所製の分光光度計(U-4100 Spectrophotometer)に付属の角度可変ユニットならびにグランテーラ社製偏光子を取り付け、測定検体である樹脂フィルム面を反射面としたときの入射面に対してp偏光となる偏光を入射角度60°となるように入射させ、波長450~1600nmの範囲の透過スペクトルを測定した。測定条件としては、スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/分とし、検出器の直前に偏光子を取り付けて透過光のうちのp偏光成分のみを検出器へと入光させた。得られた透過スペクトルから、波長450~650nmの範囲の透過率の平均値を算出し、透過光中のp偏光成分量Tppとした。
(b2) 前記(c1)と同様の実験を、検出器に入光させる光をs偏光成分に変えて実施し、透過光中のs偏光成分量Tpsを求めた。
(b3) 下記式1にてp偏光成分の割合(%)を算出した。
透過光中のp偏光成分の割合(%)=Tpp/(Tpp+Tps)×100 ・・・式1
(9)情報表示性
影像投射器として、ドリームメーカー社製ディスプレイ(SP-133CM)を用い、偏光子を装着して、実施例および比較例で示す樹脂フィルムあるいは積層体(情報表示部)に入射角度60°で該樹脂フィルムあるいは積層体を反射面としたときp偏光またはs偏光となる光線により影像を投射し、表示像の鮮明性と輝度の斑の有無を目視により評価した。評価基準は次の通りである。
◎:情報表示部に投影した表示像は高鮮明であり、輝度の斑もなく、使用上問題ない。
○:情報表示部に投影した表示像はわずかに輝度の斑が見られるものの、鮮明性が高く、使用上問題ない。
×:情報表示部に投影した表示像は鮮明性が悪い、あるいは輝度の斑が強く使用上問題あり。
【0085】
(10)色付きの視認性
快晴の屋外で、実施例および比較例で得た樹脂フィルムあるいは積層体を鉛直方向に対して60°傾斜させ、樹脂フィルムあるいは積層体の中心を、300mm離れた位置から偏光サングラスを着用しながら水平に見た場合の色付きの視認性評価を行った。評価基準は次のとおりである。
◎:色付きがほとんど見えない。
○:色付きがごく僅かに見えるが、使用上問題ない。
×:強い色付きが見える。
【0086】
[樹脂フィルムを得るために用いた樹脂]
各実施例、各比較例で使用した樹脂フィルムを得るために表1に示す樹脂を使用した。なお、樹脂1は結晶性樹脂であり、樹脂2~10は非晶性樹脂である。また、「mol%」はジカルボン酸単位、ジオール単位のそれぞれにおいて、その総量を100モル%とした割合である。
【0087】
【0088】
[樹脂フィルム]
樹脂フィルムA、Q:
熱可塑性樹脂AとしてIV=0.65のポリエチレンテレフタレート(樹脂1)を用いた。また、熱可塑性樹脂Bとして、ポリエチレンナフタレートの共重合体(2,6-ナフタレンジカルボン酸成分を酸成分全体に対して80mol%、イソフタル酸成分を酸成分全体に対して20mol%、分子量400のポリエチレングリコールをジオール成分全体に対して4mol%共重合したポリエチレンナフタレート、IV=0.65)(樹脂2)を用いた。準備した熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bを、2台の単軸押出機にそれぞれ投入し、290℃の温度で溶融させた。次いで、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bを、それぞれFSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて計量しながら、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bの重量比が1となるようスリット数801個の積層装置にて合流させて、熱可塑性樹脂Aが両側の最表層に位置するように厚み方向に交互に801層積層された溶融樹脂積層体を得た。その後、溶融樹脂積層体を口金から吐出し、温度25℃のキャスティングドラムで冷却、固化してキャストフィルムを得た。得られたキャストフィルムを、60℃の温度に設定したロール群で加熱した後、フィルム長手方向に85℃の温度に設定されたロールで50%/秒の延伸速度で3.0倍に延伸し、その後一旦冷却した。このようにして得られた一軸延伸フィルムをテンターに導き、90℃の温度の熱風で予熱後、95℃の温度でフィルム幅方向に5%/秒の延伸速度で4.0倍に延伸した。延伸したフィルムは、そのままテンター内で215℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度条件下で幅方向に1%の弛緩処理をした後に室温まで冷却した。続いて幅方向の両端エッジ部分を均等に断裁除去して、厚み75μm、幅400mmの樹脂フィルムのロールを得た。フィルム幅方向の中央位置を100mm×100mmを採取し、厚み75μmの樹脂フィルムAを得た。また、同様にロールの幅方向の端部から100mm×100mmを採取し厚み75μmの樹脂フィルムQを得た。
【0089】
樹脂フィルムB~P:
層数、各層の樹脂、延伸倍率、厚みを表2に示すとおりとした以外は樹脂フィルムAと同様に樹脂フィルムB~Pを得た。なお、厚みの調整はキャスティングドラムの回転速度の調節により行った。なお、樹脂フィルムFおよび樹脂フィルムGにおいては、2台の単軸押出機に同一の樹脂を供給して製膜した。
【0090】
【0091】
【0092】
(実施例1)
樹脂フィルムAを反射面としたときの入射面に対してp偏光となる光線を投射する投影光源、および樹脂フィルムAを備え、前記樹脂フィルムAの高倍率延伸方向と光源からの光の入射面と垂直な方向となるよう配置されてなるHUDシステムを作製した。評価結果を表3に示す。
【0093】
(実施例2)
樹脂フィルムAの片面に、アクリル系接着剤を介して厚み2mmのガラス板を貼り合わせて、次の構成の積層体を得た。p偏光を発生して放射する投影光源、および得られた積層体に含まれる樹脂フィルムAの高倍率延伸方向を入射面と垂直な方向となるよう配置されてなるHUDシステムを作製した。評価結果を表3に示す。
構成:樹脂フィルム/接着層(厚み10μm)/ガラス(厚み2mm)。
【0094】
(実施例3)
樹脂フィルムAの両面に、遮熱性を有さないポリビニルブチラール樹脂A(接着層)を介して厚み2mmのガラス板を貼り合わせ、次の構成の積層体を得た。p偏光を発生して放射する投影光源、および得られた積層体に含まれる樹脂フィルムAの高倍率延伸方向を入射面と垂直な方向となるよう配置されてなるHUDシステムを作製した。評価結果を表3に示す。
構成:ガラス(厚み2mm)/接着層(厚み350μm)/樹脂フィルム/接着層(厚み350μm)/ガラス(厚み2mm)。
【0095】
(実施例4~16、参考例1、比較例1~3)
樹脂フィルム、投影光源、高倍率延伸方向を入射面の関係(垂直/平行)を表3のとおりとした以外は実施例2と同様にHUDシステムを作製した。評価結果を表3に示す。
【0096】
(実施例17)
実施例2の積層体の樹脂フィルムのガラスが積層されていない側の面に対し、スパッタリング法によってフッ化マグネシウム膜をAR層として設け、次の構成の積層体を得た。得られた積層体と、p偏光を発生して放射する投影光源とを備えたHUDシステムを作製した。評価結果を表3に示す。なお、効果の評価においては、下記構成のAR層側に光源を置いた。
構成:AR層(厚み0.1μm)/樹脂フィルム(厚み75μm)/接着層(厚み10μm)/ガラス(厚み2mm)
(実施例18)
樹脂フィルムAの両面に、セシウムドープ酸化タングステン粒子0.035重量%と、錫ドープ酸化インジウム粒子0.14重量%を含有する遮熱性を有するポリビニルブチラール樹脂B(接着層)を介して厚み2mmのガラス板を貼り合わせ、次の構成の積層体を得た。得られた積層体と、p偏光を発生して放射する投影光源とを備えたHUDシステムを作製した。評価結果を表3に示す。
構成:ガラス(厚み2mm)/接着層(厚み350μm)/樹脂フィルム(厚み75μm)/接着層(厚み350μm)/ガラス(厚み2mm)。
【0097】
(実施例19)
樹脂フィルムAの片面に実施例3のポリビニルブチラール樹脂A(接着層)を、もう片方の面に実施例18のポリビニルブチラール樹脂B(接着層)をそれぞれ介して厚み2mmのガラス板を貼り合わせ、次の構成の積層体を得た。得られた積層体と、p偏光を発生して放射する投影光源とを備えたHUDシステムを作製した。評価結果を表3に示す。なお、効果の評価においては、ポリビニルブチラールA側と接するガラス側に光源を置いた。
構成:ガラス(厚み2mm)/接着層(厚み350μm)/樹脂フィルム(厚み75μm)/接着層(厚み350μm)/ガラス(厚み2mm)。
【0098】
【0099】
【0100】
なお、表3における「a*(θ)、b*(θ)の最大値」とは、|a*(40)|、|a*(60)|、|a*(80)|、|b*(40)|、|b*(60)|、|b*(80)|のうち、最も大きな値を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明により、風防の広範囲に影像を投射する場合であっても、均一な反射性能が維持され、かつ偏光サングラスを着用しても干渉色が視認されがたいヘッドアップディスプレイシステムを提供することができる。本発明のヘッドアップディスプレイシステムは上記特徴を備えるため、航空機、船舶、自動車、鉄道等の輸送用機器や建築物、電子看板に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0102】
1:樹脂フィルム
2:偏光子
3:検出器
i:入射光(s偏光)
t1:透過光(投影部透過後)
t2:透過光(投影部と偏光子透過後)
θ:入射角
T(θ,λ):光源から入射角θ°で照射したs偏光が前記樹脂フィルム及び前記偏光子を透過したときに得られる、波長λnmにおける透過率
C(θ):波長450nm~750nmの範囲内におけるT(θ,λ)の平均値