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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230516BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230516BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20230516BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20230516BHJP
   C08L 23/14 20060101ALI20230516BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
B32B27/32 103
B32B27/32 102
C08L53/00
C08L23/16
C08L23/14
B65D65/40 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022106392
(22)【出願日】2022-06-30
(62)【分割の表示】P 2019560891の分割
【原出願日】2018-11-20
(65)【公開番号】P2022153391
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2017246669
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018140194
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】戸松 稚登
(72)【発明者】
【氏名】西 忠嗣
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-141302(JP,A)
【文献】特表2012-500307(JP,A)
【文献】特開2000-143931(JP,A)
【文献】特開平09-248885(JP,A)
【文献】特開平10-166527(JP,A)
【文献】特開2004-261219(JP,A)
【文献】特開2013-112736(JP,A)
【文献】特開2016-191023(JP,A)
【文献】特開2004-284197(JP,A)
【文献】特開2012-056275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
B29C 55/00-55/30
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン-エチレンブロック共重合体、及びプロピレン-αオレフィンランダム共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂90~97重量部に対し、エチレン-プロピレン共重合エラストマーを3~10重量部を含有し、プロピレン-エチレンブロック共重合体とプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の合計量に対するプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の比率が0~50重量%の範囲であって、長手方向の降伏応力は150MPa以上、250MPa以下であり、幅方向の降伏応力は40MPa以下であり、前記長手方向と幅方向との降伏応力の比が4.0以上、12.0以下であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂フィルムと、ポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、及びポリプロピレン樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種のフィルムとの積層体。
【請求項3】
直進カット性が5mm以下である、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
請求項3記載の積層体からなる包装体。
【請求項5】
レトルト用である、請求項4に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂フィルムに関する。また、ポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、及びポリプロピレン樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種のフィルムとポリオレフィン系樹脂フィルムとが積層されている、ヒートシールに適したポリオレフィン系樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
包装袋は、主にポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、あるいはポリプロピレン樹脂フィルムなどの基材フィルムとポリオレフィン系樹脂フィルムとの積層体の周辺部を、ポリオレフィン系樹脂フィルム面同士が接触する状態でポリオレフィン系樹脂フィルムの融点近くの温度で加熱圧着(以下、ヒートシール)することにより製造される。
食品包装袋においては、食品を充填した後の包装袋に、130℃程度の加圧水蒸気により殺菌を行う、食品を長期間保存するのに適した、いわゆるレトルトパウチというものが普及している。
近年、女性の社会進出、核家族化、あるいは高齢化の進行などの社会背景から、レトルトパウチへの需要が大きくなっており、同時に特性の向上がさらに求められている。
例えば、こういったレトルトパウチは、箱詰めされ、輸送して店頭販売される形態が近年多いため、その過程で落下しても破袋しにくいこと、特に冷蔵下で落下しても破袋しにくいことが求められている。
【0003】
また、包装袋、特にレトルトパウチから食品内容物を取り出す際は、包装袋の周辺のシール部分に入れられた切込み部分、いわゆるノッチ部分から手で包装袋を引裂くことが多いが、従来の積層体を使用した場合、包装袋の一辺、通常は水平方向に対して平行に引裂くことができず、斜めに開封されてしまったり、包装袋の表面と裏面の積層体で裂けの進行方向の上下が逆になる現象、いわゆる泣別れが発生してしまい、食品内容物が取り出しにくくなり、食品内容物で手や服が汚れたり、内容物が加熱されていた場合は火傷などをしたりする恐れがあった。
【0004】
包装袋を包装袋の一辺に対して平行に引裂くことが困難である理由は、積層体に用いる基材フィルムに歪みがあること、すなわち基材フィルムの分子配向軸方向が包装体の一辺に対して平行でないからである。
【0005】
基材フィルムの分子配向軸方向を包装袋の引裂き方向と同じにすることができればこのような問題は発生しない。製造された広幅の延伸フィルムの幅方向中央部の分子配向軸方向はフィルムの走行方向と一致しており包装袋の一辺に対して平行に引裂くことが可能である。ところが、フィルムの幅方向端部では分子配向軸方向が傾いてしまい、包装袋の引裂き方向は傾いてしまう。フィルムの幅方向端部を使用した基材フィルムを完全に避けて調達することは現実的ではない上に、基材フィルムの生産速度高速化や広幅化に伴い、歪みの程度は従来よりもさらに大きくなる傾向にある。
そこで、基材フィルムと積層されるポリオレフィン系樹脂フィルムの工夫により、こういった問題を解決することが、試みられている。
【0006】
特許文献1により、エチレン-プロピレンブロック共重合体とエチレン-プロピレンランダム共重合体を含むポリオレフィン系樹脂シートを3.0倍以下で一軸延伸することにより得られたフィルムが知られている(例えば、特許文献1等参照)。このフィルムと基材フィルムを積層することにより、直進カット性が得られた旨記載されているものの、しかし、引裂強度に改善の余地があり、また泣別れが発生しやすいという問題点があった。
【0007】
また、特許文献2、特許文献3により、プロピレン-エチレンブロック共重合体あるいはプロピレン-エチレンランダム共重合体と、プロピレン-ブテンエラストマー及び/又はエチレン-ブテンエラストマーを含むポリオレフィン系樹脂シートを5倍程度で一軸延伸したフィルムが知られている。しかし、落下時の破袋にまだ改善の余地があり、特許文献3で想定された使用温度よりも低温では耐破袋性が不足するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5790497号公報
【文献】特表2012-500307号公報
【文献】特開2014-141302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムのような分子配向軸の歪みが大きい基材フィルムと積層した場合においても、その積層体から得られた包装袋は、直進カット性に優れ、かつ落下時に破袋しにくい、ポリオレフィン系樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、フィルム中の主成分となるポリオレフィン系樹脂と相溶性に優れるエチレン-プロピレン共重合エラストマーを衝撃吸収剤として使用し、かつ延伸により重合体分子を主に長手方向に配向させるものの、長手方向及び幅方向の熱収縮率を低減させ、かつ前記長手方向の降伏応力を特定の範囲とすることにより、二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムのような分子配向軸の歪みが大きい基材フィルムと積層した場合においても、その積層体から得られた包装袋は、直進
カット性に優れ、かつ落下時に破袋しにくい、ポリオレフィン系樹脂フィルムを得られることを見いだし、本発明の完成に至った。
すなわち本発明は、以下の態様を有する。
【0011】
[1] プロピレン-エチレンブロック共重合体、及びプロピレン-αオレフィンランダム共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂90~97重量部に対し、エチレン-プロピレン共重合エラストマーを3~10重量部を含有し、プロピレン-エチレンブロック共重合体とプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の合計量に対するプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の比率が0~50重量%の範囲であって、長手方向の降伏応力は150MPa以上であり、幅方向の降伏応力は40MPa以下であり、前記長手方向と幅方向との降伏応力の比が4.0以上12.0以下であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルム。
ここでの長手方向とは、フィルムの製造工程においてフィルムが走行する方向を意味し、幅方向とは前記長手方向と直角方向を意味する。
【0012】
[2] [1]に記載のポリオレフィン系樹脂フィルムと、ポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、及びポリプロピレン樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種のフィルムとの積層体。
【0013】
[3] 直進カット性が5mm以下である、[2]に記載の積層体。
【0014】
[4] [3]に記載の積層体からなる包装体。
【0015】
[5] レトルト用である、[4]に記載の包装体。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムは、耐破袋性に優れ、泣別れのなく、特にレトルトパウチに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリオレフィン系樹脂フィルムは、プロピレン-エチレンブロック共重合体、若しくはプロピレン-エチレンブロック共重合体と少なくとも1種のプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の混合物にエチレン-プロピレン共重合エラストマーを含有することで、海島構造をつくることにより、良好な耐破袋性を発現させることができる。
このとき、海部はプロピレン-エチレンブロック共重合体のプロピレンを主成分とする部分、若しくはさらにプロピレン-αオレフィンランダム共重合体も含む部分からなり、島部はエチレン-プロピレン共重合エラストマー、およびプロピレン-エチレンブロック共重合体のエチレンを主成分とする部分からなる。
【0018】
(プロピレン-エチレンブロック共重合体)
本発明においては、プロピレン-エチレンブロック共重合体を使用することができる。本発明におけるプロピレン-エチレンブロック共重合体は、多量のプロピレンと少量のエチレンとの共重合成分からなる一段目の重合工程と、少量のプロピレンと多量のエチレンとの共重合成分からなる二段目の重合工程からなる多段共重合体である。具体的には、特開2000-186159号公報で示されるように、気相法重合を行っているものを用いるのが好ましい。すなわち、第1工程で実質的に不活性溶剤の不存在下にプロピレンを主体とした重合体部分(A成分)を重合し、次いで第2工程を気相中でエチレン含量が20~50重量部のプロピレンとエチレンとの共重合体部分(B成分)を重合して得られるブロック共重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
上記プロピレン-エチレンブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)(230℃、荷重2.16kg測定)は特に限定されないが1~10g/10minが好ましく、2~7がより好ましい。1g/10min未満では粘度が高すぎてTダイでの押出しが困難であり、逆に、10g/10minを超えた場合は、フィルムのべた付きやフィルムの耐衝撃強度(インパクト強度)が劣るなど問題が生じるからである。
【0020】
本発明において、20℃におけるキシレン可溶部をCXS、20℃におけるキシレン非可溶部をCXISと呼ぶこととする。本発明で用いるプロピレン-エチレンブロック共重合体においては、CXSはゴム成分(B成分)を主体とし、CXISはポリプロピレン成分(A成分)を主体とする。各々の極限粘度を[η]CXS、[η]CXISとすると、[η]CXS、[η]CXISの値は特に限定されないが[η]CXSは、1.8~3.8dl/gの範囲が好ましく、さらに好ましいのは、2.0~3.0dl/gの範囲である。3.0dl/gを超えると、ポリオレフィン系樹脂フィルムにフィッシュアイが発生しやすくなる。一方、1.8dl/g以下ではポリオレフィン系樹脂フィルム同士のヒートシール強度が著しく低下する場合がある。
一方、[η]CXISは、1.0~3.0dl/gの範囲であるのが好ましい。3.0dl/gを超えた場合は粘度が高すぎてTダイでの押出しが困難となる場合があり、逆に、1.0dl/g未満の場合は、フィルムのべた付きやフィルムの耐衝撃強度(インパクト強度)が劣るなど問題が生じる場合があるからである。
【0021】
上記の[η]CXS、[η]CXISは、以下の測定方法で測定した値である。試料5gを沸騰キシレン500mlに完全に溶解させた後、20℃に降温し、4時間以上放置した。次いで、これをろ液と析出物とにろ別し、ろ液を乾固した成分(CXS)および析出物を減圧下70℃で乾燥して得られた固形物(CXIS)の極限粘度([η])をウベローデ型粘度計を用いて135℃テトラリン中で測定した。
【0022】
一般的に、MFRとフィルム全体の極限粘度ηは相関が取れていることが知られている。フィルムのηを知ることにより使用樹脂のMFRをおおよそ知ることが出来る。ηは分子量の目安になり、数値が大きいほど分子量が大きく、数値が小さくなると分子量が小さいことを表している。MFRは、分子量の目安であり、数値が小さいほど分子量が大きく、数値が大きくなると分子量が小さくなる。
また、プロピレン-エチレンブロック共重合体としては、プロピレン-エチレンブロック共重合体におけるエチレン成分の共重合比率が1~15重量%であるのが好ましく、3~10重量%であるのが好ましい。プロピレン-エチレンブロック共重合体におけるプロピレン成分の共重合比率が85~99%であるのが好ましく、90~97重量%であるのが好ましい。
具体的には、例えば、エチレン含有量が6.5質量%、プロピレン含有量が93.5重量で、で、CXSの極限粘度η=2.5dl/gのブロック共重合ポリプロピレン樹脂(230℃、荷重2.16kgにおけるMFR=3.0g/10min、住友化学株式会社製WFS5293-22)や、エチレン含有量が5.7質量%、プロピレン含有量が94.3重量で、CXSの極限粘度η=2.3dl/gのブロック共重合ポリプロピレン樹脂(230℃、荷重2.16kgにおけるMFR=3.0g/10min、住友化学株式会社製WFS5293-29)が挙げられる。
【0023】
(プロピレン-αオレフィンランダム共重合体)
本発明においては、ポリオレフィン系樹脂フィルムのヒートシール温度を下げることを目的とし、プロピレン-αオレフィンランダム共重合体を添加しても良い。
プロピレン-αオレフィンランダム共重合体とは、プロピレンとプロピレン以外の炭素原数が2~20のα-オレフィンの少なくとも1種との共重合体を挙げることができる。
かかる炭素原子数が2~20のα-オレフィンモノマーとしては、エチレン、ブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1等を用いることができる。特に限定されるものではないが、プロピレン-エチレンブロック共重合体との相溶性の面からエチレンを用いるのが好ましい。また、少なくとも1種類以上であれば良く、必要に応じて2種類以上を混合して用いることができる。特に好適であるのは、プロピレン-エチレンランダム共重合体である。
【0024】
プロピレン-αオレフィンランダム共重合体の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)の下限は特に限定されないが好ましくは0.6g/10minであり、より好ましくは1.0g/10minであり、さらに好ましくは1.2g/10minである。上記未満であるとプロピレン-エチレンブロック共重合体との相溶性が低くフィルムが白化してしまうことがある。プロピレン-αオレフィンランダム共重合体のメルトフローレートの上限は特に限定されないが好ましくは8.0g/10minであり、より好ましくは7.0g/10minであり、さらに好ましくは5.0g/10minである。プロピレン-αオレフィンランダム共重合体としては、具体的には、住友化学株式会社製 S131(密度890kg/m、230℃、荷重2.16kgにおけるMFR1.5g/10min、融点132℃)などが挙げられる。
【0025】
プロピレン-αオレフィンランダム共重合体の融点の下限は特に限定されないが好ましくは120℃でより好ましくは125℃である。上記未満では耐熱性が損なわれ、レトルト処理の際に袋の内面同士が融着を起こすことがある。プロピレン-αオレフィンランダム共重合体の融点の上限は特に限定されないが好ましくは145℃で、より好ましくは140℃である。上記以上であるとシール温度の低下効果が小さいことがある。
【0026】
(エチレン-プロピレン共重合エラストマー)
本発明においては、本発明の包装袋の耐落下破袋性を高める目的で、エチレン-プロピレン共重合エラストマーを、本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの原料の一成分として用いる。
エチレン-プロピレン共重合エラストマーとは、エチレンとプロピレンを共重合させて得られる非晶性または低結晶性であり、常温付近でゴム状弾性を示す共重合ポリマーである。
【0027】
本発明におけるエチレン-プロピレン共重合エラストマーは特に限定されないが、230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が0.2~5g/10min、密度が820~930kg/m3、GPC法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.3~6.0であるものを用いるのが望ましい形態である。
本発明におけるエチレン-プロピレン共重合エラストマーの230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイト(MFR)が0.2g/10minを下回ると、均一な混練が不十分となり、フィッシュアイが発生しやすくなり、また5g/minを超えると、耐破袋性の観点から好ましくない。
【0028】
また、本発明におけるエチレン-プロピレン共重合エラストマーの極限粘度[η]は、ヒートシール強度保持とインパクト強度保持、落袋強度の観点からの点で1.0~5.0が好ましく、好適には1.2~3.0である。極限粘度[η]が1.0を下回ると、均一な混練が不十分となり、フィッシュアイが発生しやすくなり、また5.0を超えると耐破袋性及び、ヒートシール強度の観点から好ましくない。
本発明におけるエチレン-プロピレン共重合エラストマーは、エチレン-プロピレン共重合エラストマーにおけるプロピレン成分の共重合比率が15~45重量%であるのが好ましく、20~40重量%であるのが好ましい。
エチレン-プロピレン共重合エラストマーにおけるエチレンプロピレン成分の共重合比率が55~85重量%であるのが好ましく、60~80重量%であるのが好ましい。
具体的には、例えば密度870kg/m3、MFR(230℃、2.16kg)1.8g/10minで、プロピレン含有量が93.5質量%のエチレン-プロピレン共重合エラストマー(三井化学株式会社製タフマーP0480、)などが挙げられる。
【0029】
(ポリオレフィン系樹脂フィルム)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムは、プロピレン-エチレンブロック共重合体、及びプロピレン-αオレフィンランダム共重合体からなるからなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂90~97重量部に対し、エチレン-プロピレン共重合体を3~10重量部を含有する。この範囲であると、落下後の耐破袋性や製袋仕上がりに優れ、引裂強度と泣別れも良好である。
ここで、プロピレン-エチレンブロック共重合体、及びプロピレン-αオレフィンランダム共重合体からなるからなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂と、エチレン-プロピレン共重合体の合計を100重量部となるようにする。
プロピレン-エチレンブロック共重合体、及びプロピレン-αオレフィンランダム共重合体からなるからなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂92~97重量部に対し、エチレン-プロピレン共重合体を3~8重量部を含有するのが好ましく、プロピレン-エチレンブロック共重合体、及びプロピレン-αオレフィンランダム共重合体からなるからなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂92~98重量部に対し、エチレン-プロピレン共重合体を3~8重量部を含有するのがより好ましい。
プロピレン-αオレフィンランダム共重合の中で特に好適であるのは、プロピレン-エチレンランダム共重合体である。
【0030】
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムにおいて、プロピレン-エチレンブロック共重合体とプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の合計量に対するプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の比率は0~50重量%の範囲で可能である。プロピレン-αオレフィンランダム共重合体の比率が50重量%を超えると、落下時の耐破袋性が悪化したり、引裂強度と泣別れが大きくなることがある。40重量%以下が好ましく、35重量以下がより好ましい。
落下時の耐破袋性やヒートシール強度の観点からは、プロピレン-αオレフィンランダム共重合体の比率は10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましい。
【0031】
(添加剤)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムは、アンチブロッキング剤を含んでよい。配合されるアンチブロッキング剤としては特に限定されないが、炭酸カルシウム、二酸化珪素、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、タルク、ゼオライト等の無機粒子やアクリル系、スチレン系、スチレン・ブタジエン系の重合体、さらにはこれらの架橋体等からなる有機粒子が挙げられる。粒子径分布の制御のし易さや、分散性、光学的外観の維持し易さ、さらには、粒子のフィルムからの脱落防止等を考慮すれば、架橋体からなる有機粒子が好ましいものである。架橋体としては、特に、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等のアクリル系単量体からなる架橋アクリル系重合体が好ましく、より好ましくは架橋されたポリメチルメタアクリレートが推奨される。これら粒子の表面には、分散性や脱落防止を目的とした種々のコーティングが施されていても何ら差し支えない。
また、これら粒子の形状は、不定形、球形、楕円球状、棒状、角状、多面体、円錐状、さらには、粒子表面や内部に空洞を有するポーラスな形状であってもよい。アンチブロッキング剤は、フィルムの外観と耐ブロッキング性の面から3~12μmの平均粒子径を有するものが好ましい。アンチブロッキング剤は1種類のみ用いても有効であるが、2種類以上の粒径や形状が異なる無機粒子を配合した方が、フィルム表面においてより複雑な突起が形成され、より高度なブロッキング防止効果を得ることができる場合がある。ブロック共重合体を主な構成樹脂として使用する場合、ポリマーの分散により表面凹凸が形成される場合があり、アンチブロッキング剤を添加しなくても、高度な耐ブロッキング効果が得られる場合がある。
【0032】
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムには、有機系潤滑剤を添加しても良い。積層フィルムの滑性やブロッキング防止効果が向上し、フィルムの取り扱い性がよくなる。その理由として、有機滑剤がブリードアウトし、フィルム表面に存在することで、滑剤効果や離型効果が発現したものと考える。
更に、有機系潤滑剤は常温以上の融点を持つものを添加することが好ましい。好適な有機系潤滑剤の例としては、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルが挙げられる。より具体的にはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドなどである。これらは単独で用いても構わないが、2種類以上を併用することでより過酷な環境下においても滑性やブロッキング防止効果を維持することができる場合があり、好ましい。
【0033】
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて適量の酸化防止剤、帯電防止剤、防曇剤、中和剤、造核剤、着色剤、その他の添加剤及び無機質充填剤等を配合することができる。酸化防止剤として、フェノール系やホスファイト系の単独使用および併用、もしくは一分子中にフェノール系とホスファイト系の骨格を有したものの単独使用が挙げられる。
【0034】
(複数層からなるポリオレフィン系樹脂フィルム)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムは、単層であっても良く、複数層からなるものであっても良い。例えば、シール層、中間層、ラミネート層の3層構成をとり、中間層に該フィルムをリサイクルしたペレットを添加することにより、ヒートシールエネルギーや耐破袋性を損なうことなくコストを下げたり、プロピレン-αオレフィンランダム共重合体をシール層のみに添加し、中間層やラミネート層はプロピレン-エチレンブロック共重合体を主体として使用することによって、耐衝撃性の低下を抑制することができる。
複数の層からなる場合、それぞれの層が前記[1]に記載の組成比であることが好適である。
【0035】
(ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの成形方法は、例えばインフレーション方式、Tダイ方式が使用できるが、透明性を高めるためや、ドラフトのかけ易さからTダイ方式が好ましい。インフレーション方式は冷却媒体が空気であるのに対し、Tダイ方式は冷却ロールを用いるため、未延伸シートの冷却速度を高くするには有利な製造方法である。冷却速度を速めることにより、未延伸シートの結晶化を抑制できるため、高い透明性が得られるほか、後工程での延伸にかかる負荷を制御しやすく有利となる。こうした理由からTダイ方式で成型することがより好ましい。
【0036】
溶融した原料樹脂をキャスティングし、無配向のシートを得る際の冷却ロールの温度の下限は特に限定されないが好ましくは15℃であり、より好ましくは20℃である。上記未満であると、冷却ロールに結露が発生し、未延伸シートと冷却ロールとが密着不足となり、厚み不良の原因となることがある。冷却ロールの上限は特に限定されないが好ましくは50℃でより好ましくは40℃である。上記を超えるとポリオレフィン系樹脂フィルムの透明性が悪化することがある。
【0037】
無配向のシートを延伸する方式は特に限定するものではなく、例えばインフレーション方式、ロール延伸方式が使用できるが、配向の制御のし易さからロール延伸方式が好ましい。
無配向のシートを適切な条件で長手方向に延伸することにより、直進カット性が発現する。これは分子鎖が延伸方向に規則的に配列されるためである。本発明においては、フィルムの製造工程においてフィルムが走行する方向を長手方向とし、前記長手方向と直角方向を幅方向と呼ぶ。
長手方向の延伸倍率の下限は特に限定されないが好ましくは3.3倍である。これより小さいと降伏応力が低下し、長手方向の引裂強度が大きくなったり、直進カット性が劣ることがある。より好ましくは3.5倍であり、さらに好ましくは3.8倍である。
長手方向の延伸倍率の上限は特に限定されないが好ましくは5.5倍である。これより大きいと過剰に配向が進行し、シールエネルギーが低下し、落下時の耐破袋性が悪化することがある。より好ましくは5.0倍である。
【0038】
長手方向延伸におけるロール温度の下限は特に限定されないが好ましくは80℃である。これより低いとフィルムにかかる延伸応力が高くなり、フィルムが厚み変動を発生することがある。より好ましくは90℃である。
延伸ロール温度の上限は特に限定されないが好ましくは140℃である。これを越えると、フィルムにかかる延伸応力が低くなり、フィルムの引裂強度が低下するばかりか、延伸ロールにフィルムが融着してしまうことがあり、製造が困難になることがある。より好ましくは130℃であり、さらに好ましくは125℃であり、特に好ましくは115℃である。
【0039】
未延伸シートを延伸工程に導入する前に予熱ロールに接触させ、シート温度を上げておくことが好ましい。
無配向のシートを延伸する際の予熱ロール温度の下限は特に限定されないが好ましくは80℃であり、より好ましくは90℃である。上記未満であると延伸応力が高くなり、厚み変動を発生することがある。予熱ロール温度の上限は特に限定されないが好ましくは140℃であり、より好ましくは130℃であり、さらに好ましくは125℃である。上記以上であると、熱収縮率やレトルト収縮率が増大することがある。これは延伸前の熱結晶化を抑制し延伸後の残留応力を小さくすることができるためである。
【0040】
延伸工程を経たポリオレフィン系樹脂フィルムには、熱収縮を抑制するために結晶化促進のための加熱処理(以下、アニール処理)を行うことが好ましい。アニール処理方式には、ロール加熱方式、テンター方式などがあるが、設備の簡略さやメンテナンスのし易さからロール加熱方式が好ましい。アニール処理することによって、フィルムの内部応力を低下させることで、フィルムの熱収縮を抑え、さらに易引裂き性をさらに向上することができる。
アニール処理により、易引裂き性をさらに向上することができるため、従来のように引裂き性を高めるために、延伸倍率を大きくする必要がないため、レトルト収縮率やレトルト後のヒートシール強度を犠牲にすることがない。具体的には、引裂き強度が低下することで、ポリオレフィン系樹脂フィルム単独では同程度の直進カット性であっても、製袋後の引裂き時の泣き別れがしにくくなる傾向にある。
【0041】
アニール処理温度の下限は特に限定されないが好ましくは80℃である。
上記未満であると熱収縮率が高くなり、製袋後やレトルト後の包装袋の仕上がりが悪化したり、引裂強度が大きくなったりすることがある。より好ましくは100℃であり、110℃が特に好ましい。
アニール処理温度の上限は特に限定されないが好ましくは140℃である。アニール処理温度が高い方が、熱収縮率が低下しやすいが、これを超えると、フィルム厚みむらが生じたり、フィルムが製造設備に融着したりすることがある。より好ましくは135℃であり、特に好ましくは130℃である。
【0042】
本発明においては、以上に記述したポリオレフィン系樹脂フィルムのラミネート面にコロナ処理等で表面を活性化させるのが好ましい。該対応により基材フィルムとのラミネート強度が向上する。
【0043】
(ポリオレフィン系樹脂フィルムの特性)
(フィルム厚み)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、下限は好ましくは10μmであり、より好ましくは30μmであり、さらに好ましくは40μmであり、特に好ましくは50μmである。上記未満であると基材フィルムの厚みに対し相対的に薄くなるため、積層体としての直進カット性が悪化したり、またフィルムのコシ感が弱すぎて加工しにくくなることがある他、耐衝撃性が低下し耐破袋性が悪化したり、することがある。
フィルム厚みの上限は好ましくは200μmであり、より好ましくは130μmであり、好ましくは100μmであり、特に好ましくは80μmである。上記を越えるとフィルムのコシ感が強すぎて加工しにくくなることがあるほか、好適な包装体を製造しにくくなることがある。
【0044】
(熱収縮率)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向の120℃における熱収縮率の上限は20%である。上記を超えると引裂強度が高くなると同時に、ヒートシール時や包装体のレトルト収縮が大きくなり、包装体の外観を損なうことがある。好ましくは17%であり、さらに好ましくは14%である。
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向の熱収縮率の下限は2%である。これより小さくしようとすると、アニール温度やアニール時間を著しく大きくする必要があるため、耐破袋性や外観が著しく悪化する場合がある。
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの幅方向の熱収縮率の上限は1%である。上記を超えると、長手方向の引裂強度が大きくなったり、あるいは直進カット性に劣る。好ましくは0.5%である。本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの幅方向の熱収縮率の下限は-5%である。上記未満であると、ヒートシールで伸びが発生し、包装体の外観が悪化する場合がある。好ましくは-2%である。
【0045】
(降伏応力)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向の降伏応力は150MPa以上であることが必要である。これより小さいと、その方向の直進カット性が劣る。より好ましくは160MPa以上であり、さらに好ましくは170MPa以上である。
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向の降伏応力は250MPa以下であることが必要である。これより大きいと、フィルムのシールエネルギーが低下し、耐破袋性が悪化することがある。より好ましくは240MPa以下であり、さらに好ましくは200MPa以下である。
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの幅方向の降伏応力は50MPa以下であることが好ましい。より好ましくは40MPa以下であり、さらに好ましくは30MPa以下である。
前記長手方向は、未延伸シートの延伸工程における、延伸方向であることが好ましい。幅方向は、未延伸シートの延伸工程における、延伸方向とは直角方向であることが好ましい。
【0046】
さらに、本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向と、幅方向との降伏応力の比は特に限定されないが、4.0以上が好ましく、6.0以上がより好ましい。長手方向と、幅方向との降伏応力の比が4.0以上であると、前記長手方向の配向が不足せずに、直進カット性が向上しやすい。
また、長手方向と、幅方向との降伏応力の比は特に限定されないが14.0以下が好ましく、12.0以下がより好ましい。長手方向と、幅方向との降伏応力の比が14.0以下であると、前記長手方向の配向が過剰にならずに、好適なヒートシール強度が得られるため耐破袋性が向上しやすい。
【0047】
(引裂強度)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの前記長手方向の引裂強度の上限は特に限定されないが好ましくは0.2Nである。これを越えるとラミネートフィルムを引裂きにくくなることがある。より好ましくは0.16Nである。
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの幅方向の引裂強度の下限は特に限定されないが好ましくは0.02Nである。これより小さいと耐破袋性が悪化することがある。より好ましくは0.03Nである。
【0048】
(濡れ張力)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの、ポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、及びポリプロピレン樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種のフィルムとラミネートする面の濡れ張力の下限は特に限定されないが、好ましくは30mN/mであり、より好ましくは35mN/mである。上記未満であるとラミネート強度が低下することがある。濡れ張力の上限は特に限定されないが、好ましくは55mN/mであり、より好ましくは50mN/mである。上記を越えるとポリオレフィン系樹脂フィルムのロールのブロッキングが発生することがある。
【0049】
(突刺し強度)
発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの突刺し強度の下限は特に限定されないが好ましくは0.13N/μmであり、より好ましくは0.15N/μmである。上記未満であると包装体に突起が当たった時にピンホールが発生することがある。突刺し強度の上限は特に限定されないが好ましくは0.40N/μmであり、より好ましくは0.30N/μmである。上記を越えるとコシ感が強すぎ、フィルムまたは積層体にした時のハンドリングが困難となることがある。
【0050】
(積層体の構成及び製造方法)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムを用いた積層体は、前記ポリオレフィン系樹脂フィルムをシーラントとして用い、ポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、及びポリプロピレン樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種のフィルム基材との積層体である。フィルム基材はこれらの二軸延伸フィルムが強度の点で好ましい。また、公知の技術として接着性やバリア性を付与する目的でこれらの基材フィルムにコーティングや蒸着加工をしたものを用いたり、アルミ箔をさらに積層するなどの構成としてもよい。
具体的には例えば、二軸延伸PETフィルム/アルミ箔/シーラント、二軸延伸PETフィルム/二軸延伸ナイロンフィルム/シーラント、二軸延伸ナイロンフィルム/シーラント、二軸延伸ポリプロピレンフィルム/シーラント、二軸延伸PETフィルム/二軸延伸ナイロンフィルム/アルミ箔/シーラントなどの構成が挙げられる。
この中でも二軸延伸ナイロンフィルムは、従来のシーラントを使用した場合は積層体の直進カット性が大きく悪化してしまう。本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムをシーラントとして使用することで、いずれの構成においても良好な直進カット性の積層体を製造することができる。
【0051】
積層の方法はドライラミネート方式、押し出しラミネート方式など公知の方法が使用できるが、いずれのラミネート方式であっても良好な直進カット性の積層体を製造することができる。
【0052】
(積層体の特性)
(引裂強度)
本発明の積層体の前記熱収縮率の大きい方向の引裂強度の上限は特に限定されないが、好ましくは0.4Nである。これを越えると積層体を引裂きにくくなることがある。より好ましくは0.35Nであり、さらに好ましくは0.3Nである。0.1Nであれば十分ある。
【0053】
(直進カット性)
本発明の積層体の直進カット性の上限は、好ましくは3mmであり、より好ましくは2mmであり、さらに好ましくは1mmである。上記を越えると包装体が泣別れすることがある。1mmであれば十分である。
【0054】
(レトルト収縮率)
本発明の積層体のレトルト収縮率の上限は特に限定されないが10%である。これを超えると、レトルト後の包装体の外観が悪化することがある。より好ましくは7%である。長手方向のレトルト収縮率の下限は特に限定されないが-5%である。これ未満であると、レトルト後の伸びが大きく、破袋の原因となることがある。より好ましくは-2%であり、更に好ましくは0%である。
【0055】
(ヒートシール強度)
本発明の積層体のレトルト前のヒートシール強度の下限は特に限定されないが、好ましくは35N/15mmであり、より好ましくは40N/15mmである。上記未満であると耐破袋性が悪化することがある。ヒートシール強度は121℃、30分のレトルト処理後においても35N/15mm以上を維持していることが好ましい。ヒートシール強度の上限は特に限定されないが好ましくは60N/15mmである。上記を越えるためにはフィルムの厚みを増大させる等が必要となるため、コスト高となることがある。
【0056】
(シールエネルギー)
本発明の積層体のシールエネルギーの下限は特に限定されないが、好ましくは0.9J/150mmであり、より好ましくは1.0J/150mmであり、さらに好ましくは1.2J/150mmである。上記未満であると、耐破袋性が悪化することがある。ラミネートフィルムのシールエネルギーの上限は特に限定されないが好ましくは1.6J/150mm2であり、より好ましくは1.4J/150mmである。上記を超えると、フィルムの厚みを増大させる等が必要となるため、コスト高となることがある。
【0057】
(突刺し強度)
本発明の積層体のレトルト前の突刺し強度の下限は特に限定されないが、好ましくは8.0Nであり、より好ましくは10.0Nであり、さらに好ましくは17Nである。上記未満であると包装体に突起が接触した時にピンホールとなることがある。突刺し強度の上限は特に限定されないが好ましくは45.0Nであり、より好ましくは30.0Nである。上記を越えると積層体のコシ感が強すぎてハンドリングが困難となることがある。
【0058】
(包装体)
食料品などの内容物を自然界の埃やガスなどから保護することを目的に、内容物の周囲を包むように配置された前記積層体を包装体と呼ぶ。包装体は前記積層体を切り出し、加熱したヒートシールバーや超音波などで内面同士を接着し、袋状にするなどして製造され、例えば長方形の積層体2枚をシーラント側が内側になるよう重ね、4辺をヒートシールした4方シール袋などが広く使用されている。内容物は食料品であってもよいが、日用雑貨などその他の生産物などであってもよく、包装体の形状もスタンディングパウチやピロー包装体などの長方形以外の形状であってもよい。
また、加圧するなどして沸点上昇させ100℃以上とした熱水による加熱殺菌の熱に耐え得る包装体をレトルト用包装体と呼ぶ。また、その包装体を提供することを目的とするフィルムをレトルト用フィルムと呼ぶ。
【0059】
(泣別れ)
本発明を用いた4方シール袋の泣別れの上限は特に限定されないが、好ましくは5mmであり、より好ましくは4mmであり、さらに好ましくは3mmであり、特に好ましくは2mmであある。上記を越えると包装体を引裂いた際、内容物がこぼれてしまうことがある。1mmであれば十分である。
【0060】
(耐破袋性)
本発明の積層体から作成した4方シール袋を落下させ、袋が破れるまで落下を繰り返し、繰り返しの落下回数を測定したときの、破袋せずに残存したものの個数の割合が50%となったときの落下回数が5回以上であることが、実用上好ましく、10回以上であることがより好ましい。評価は下記のとおりとした。
◎:残存率が50%となる落下回数が13回以上
○:残存率が50%となる落下回数が10回以上12回以下
△:残存率が50%となる落下回数が5回以上9回以内
×:残存率が50%となる落下回数が4回以内
【実施例
【0061】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。各実施例で得られた特性は以下の方法により測定、評価した。評価の際、フィルム製膜の長手方向をMD方向、幅方向をTD方向とした。
【0062】
(1)樹脂密度
JIS K7112:1999のD法(密度こうばい管)に準じて密度を評価した。
N=3で測定し、平均値を算出した。
【0063】
(2)メルトフローレート(MFR)
JISK-7210-1に基づき230℃、荷重2.16kgで測定を行20
った。N=3で測定し、平均値を算出した。
【0064】
(3)熱収縮率
ラミネート前のフィルムを120mm四方に切り出した。MD方向(フィルム製膜の流れ方向)、TD方向(MD方向に垂直な方向)それぞれに100mmの間隔となるよう、標線を記入した。120℃に保温したオーブン内にサンプルを吊り下げ、30分間熱処理を行った。標線間の距離を測定し、下記式に従い、熱収縮率を計算した。N=3で測定し、平均値を算出した。
熱収縮率=(熱処理前の標線長-熱処理後の標線長)/熱処理前の標線長×100 (%)
【0065】
(4)降伏応力
ラミネート前のフィルムを15mm幅の短冊状に切り出した。インストロンインスツルメンツ製万能材料試験機5965により、標線間距離は20mmとし、クロスヘッドスピード1000mm/分で引張り試験を行った。応力-ひずみ曲線における傾きが最初に0となった時点の引張応力を降伏応力した。延伸倍率が高い場合、一般に上降伏点と呼ばれる傾き0の点が消滅する。この場合においても破断点付近で傾きが最初に0になる点を降伏応力とした。MD方向、TD方向で各N=3で測定し、それぞれの平均値を算出した。
【0066】
(5)引裂強度
JIS K7128-1:1998に準じて引裂強度を測定した。ラミネート前の基材フィルム、及びラミネートフィルムそれぞれの評価を行った。
MD方向、TD方向でそれぞれN=3で測定し、平均値を算出した。
【0067】
(6)直進カット性
直進カット性とは、フィルムや積層体を引裂いた際に、長手方向に真直ぐに引裂ける性能を示す。測定は以下の方法で行った。本実施例ではMD方向に延伸したので、熱収縮率はMD方向で高く、前記長手方向はMD方向となる。従って、MD方向のみで直進カット性を評価した。
ラミネートフィルムをMD方向150mm、TD方向60mm、の短冊に切り出し、短辺の中央部からMD方向に沿って30mmの切り込みを入れた。JIS K7128-1:1998に準じてサンプルを引き裂いた。
MD方向に、切込み30mmを含まず120mm引き裂いた時点で、TD方向に移動した距離を測定し、その絶対値を記録した。向かって右側の切片を上側のつかみ具に挟む場合、向かって左側の切片を上側のつかみ具に挟む場合の両方を各N=3で測定を行い、それぞれの平均値を算出した。右側、左側の測定結果のうち、数値の大きい方を採用した。
【0068】
(7)泣別れ
ラミネートフィルムをヒートシールフィルム同士を向い合せヒートシールし、内寸MD方向120mm、TD方向170mmの4方シール袋を作成した。4方シール袋の端にノッチを作成し、MD方向に手で引裂いた。反対の端までカットを進め、袋の表側と裏側のフィルムの引裂き線のズレを測定した。右手側が手前になる方向、左手側が手前になる方向の両方について各N=3で測定した平均値を算出し、大きい方の測定値を採用した。
【0069】
(8)レトルト収縮率
ラミネートフィルムを120mm四方に切り出した。MD方向、TD方向それぞれに100mmの間隔となるよう、標線を記入した。121℃、30分間熱水でレトルト処理を行った。標線間の距離を測定し、下記式に従い、レトルト収縮率を測定した。各N=3で測定を行い、平均値を算出した。
レトルト収縮率=(処理前の標線長-処理後の標線長)/処理前の標線長×100 (%)
【0070】
(9)ヒートシール開始温度
ヒートシール温度は、製袋機での連続生産を想定した際の生産性に関係する項目である。製袋適正が良いとは、基材フィルムが収縮や破壊が発生しない温度範囲で、十分な密封性が得られることである。ヒートシール温度の評価を以下の様にして行った。
前記ヒートシール強度の測定において、ヒートシールバーの温度を5℃ピッチで変更し、それぞれN=3でヒートシール強度の測定を行った。ヒートシール強度が30Nを超える直前の温度におけるヒートシール強度と、超えた直後の温度におけるヒートシール強度を加重平均して算出した。
【0071】
(10)製袋仕上がり
ラミネートフィルムのポリオレフィン系樹脂フィルム側同士を重ね合せ、0.2MPaの圧力で1秒間、シールバーの幅10mm、ヒートシール温度220℃でヒートシールし、内寸MD方向120mm、TD方向170mmの4方シール袋を作成した。この4方シール袋の仕上がり状態を目視で確認した。
○:ヒートシール部付近のゆがみが無く、袋が完全に長方形である
△:ヒートシール部付近のゆがみが少ない
×:ヒートシール部付近のゆがみが大きく、袋のエッジが波打っている
【0072】
(11)ヒートシール強度
ヒートシール条件および強度測定条件は次の通りである。すなわち、実施例・比較例で得られたラミネートフィルムのポリオレフィン系樹脂フィルム側同士を重ね合せ、0.2MPaの圧力で1秒間、シールバーの幅10mm、ヒートシール温度220℃でヒートシールした後、放冷した。各温度でヒートシールされたフィルムからそれぞれMD方向80mm、TD方向15mmの試験片を切り取り、各試験片について、クロスヘッドスピード200mm/分でヒートシール部を剥離した際の剥離強度を測定した。試験機はインストロンインスツルメンツ製の万能材料試験機5965を使用した。各N=3回で測定を行い、平均値を算出した。121℃、30分間熱水でレトルト処理を行う前後で測定した。
【0073】
(12)シールエネルギー
レトルト前のラミネートフィルムのヒートシール強度を測定する際に、横軸を剥離距離、縦軸を剥離強度とした測定チャートにおいて、剥離開始から破断までのグラフ面積をインストロン用解析ソフトblue hill3にて解析し、シールエネルギーを算出した。各N=3で測定を行い、平均値を算出した。
【0074】
(13)耐破袋性
ラミネートフィルムを切り出し、飽和食塩水を300ml封入した内寸縦170mm、横120mmの4方シール袋を作製した。この際のヒートシール条件は0.2MPaの圧力で1秒間、シールバーの幅10mm、ヒートシール温度220℃とした。製袋加工後に4方シール袋の端部を切り落とし、シール幅は5mmとした。前記4方シール袋を121℃において30分間レトルトした。次に-5℃の環境に8時間放置し、その環境下において1.0mの高さから4方シール袋を平坦なコンクリート床に落下させた。袋が破れるまで落下を繰り返し、繰り返しの落下回数を測定し、下記のように段階を設けた。袋の個数は各水準で20個とした。
◎:残存率が50%となる落下回数が13回以上
○:残存率が50%となる落下回数が10回以上12回以下
△:残存率が50%となる落下回数が5回以上9回以内
×:残存率が50%となる落下回数が4回以内
【0075】
(14)突刺し強度
基材フィルム、及びラミネートフィルムを、食品衛生法における「食品、添加物等の規格基準 第3:器具及び容器包装」(昭和57年厚生省告示第20号)の「2.強度等試験法」に準拠して23℃下で突刺強度を測定した。先端部直径0.7mmの針を、突刺し速度50mm/分でフィルムに突き刺し、針がフィルムを貫通する際の強度を測定した。得られた測定値をフィルムの厚みで割り、フィルム1μmあたりの突刺強度[N/μm]を算出した。N=3で測定し、平均値を算出した。
ラミネートフィルムを121℃、30分間熱水でレトルト処理を行った後も同様に測定を行った。
【0076】
(15)配向角
基材フィルムの配向角(°)は王子計測機器(株)製分子配向計MOA-6004で測定した。MD方向120mm、TD方向100mmにサンプルを切り出し、計測器に設置し、測定されたAngleの値を配向角とした。
なお、MD方向が0°である。N=3で測定し、平均値を算出した。
【0077】
(実施例1)
(ポリオレフィン系樹脂フィルム)
樹脂密度891kg/m3、230℃、2.16kgにおけるMFR3.0g/10minのプロピレン-エチレンブロック共重合体(住友化学製 WFS5293 -22、プロピレン含有量が93.5重量%)94重量部に対し、樹脂密度870kg/m3、230℃、2.16kgにおけるMFR1.8g/10minのエチレン-プロピレン共重合エラストマー樹脂(三井化学製、タフマーP0480、プロピレン含有量が27重量%)を6重量部
混合した。
【0078】
(溶融押出)
混合したポリオレフィン系樹脂をスクリュー直径90mmの3ステージ型単軸押出し機で、巾800mmでプレランドを2段階にし、かつ溶融樹脂の流れが均一になるように段差部分の形状を曲線状としてダイス内の流れが均一になるように設計したTスロット型ダイに導入し、ダイスの出口温度を230℃で押出した。
(冷却)
ダイスから出てきた溶融樹脂シートを21℃の冷却ロールで冷却し、層厚みが270(μm)よりなる未延伸のポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。冷却ロールでの冷却に際しては、エアーノズルで冷却ロール上のフィルムの両端を固定し、エアーナイフで溶融樹脂シートの全幅を冷却ロールへ押さえつけ、同時に真空チャンバーを作用させ溶融樹脂シートと冷却ロールの間への空気の巻き込みを防止した。エアーノズルは、両端ともフィルム進行方向に直列に設置した。ダイス周りはシートで囲い、溶融樹脂シートに風が当たらないようした。
【0079】
(予熱)
未延伸シートを加温したロール群に導き、シートとロールを接触させることによってシートを予熱した。予熱ロールの温度は105℃とした。複数のロールを使用し、フィルムの両面を予熱した。
(縦延伸)
前記未延伸シートをロール延伸機に導き、ロール速度差により、4.5倍にMD方向に延伸し厚みを60μmとした。延伸ロールの温度は105℃とした。
(アニール処理)
アニーリングロールを使用し120℃で熱処理を施した。複数のロールを使用し、フィルムの両面を熱処理した。
【0080】
(コロナ処理)
フィルムの片面(ラミネート面)にコロナ処理を施した。
(巻き取り)
製膜速度は20m/分で実施した。製膜したフィルムは耳部分をトリミングし、ロール状態にして巻き取った。
【0081】
(ラミネートフィルムの作成)
実施例及び比較例で得られたポリオレフィン系樹脂フィルムと、基材フィルム(東洋紡製二軸延伸ナイロンフィルム、N1102、厚み15μm、配向角はMD方向に対し22°)とを、エステル系ドライラミネート用接着剤(東洋モートン社製、TM569)33.6質量部、硬化剤として(東洋モートン社製、CAT10L)4.0質量部、及び酢酸エチル62.4質量部を混合して得られたエステル系接着剤を使用し、接着剤の塗布量が3.0g/mとなるようドライラミネートした。積層したラミネートフィルムを40℃に保ち、3日間エージングを行い、ラミネートフィルムを得た。
【0082】
(実施例2)
実施例1において、プロピレン-エチレンブロック共重合体(住友化学製WFS5293 -22)とエチレン-プロピレン共重合エラストマー(三井化学製、タフマーP0480)の混合比をプロピレン-エチレンブロック共重合体96重量部、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(三井化学製、タフマーP0480)を4重量部とした以外は同様の方法においてポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。
【0083】
(実施例3)
実施例1において、プロピレン-エチレンブロック共重合体(住友化学製WFS5293 -22)とエチレン-プロピレン共重合エラストマーの混合比をプロピレン-エチレンブロック共重合体を90重量部、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(三井化学製、タフマーP0480)を10重量部とした以外は同様の方法においてポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。
【0084】
(実施例4)
実施例1において、延伸ロール速度は変更せずキャスティングの冷却ロール速度を変更することによってMD方向の延伸倍率を5.0倍とした以外は同様の方法においてポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。この方法を採ることにより、吐出量を変更することなく、延伸後のフィルム厚みが同じポリオレフィン系樹脂フィルムを得ることができる。
【0085】
(実施例5)
実施例1において、アニールロールの設定温度を90℃にした以外は同様の方法においてポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。
【0086】
(実施例6)
実施例1において、押出し機の回転数を下げ、吐出量を小さくして製膜を行ってフィルム厚みを50μmとした以外は同様の方法においてポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。
【0087】
(実施例7)
実施例1において、予熱ロール温度を90℃とした以外は同様の方法においてポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。
【0088】
(実施例8)
実施例1において樹脂の混合比をプロピレン-エチレンブロック共重合体を64重量部、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(三井化学製、タフマーP0480)を6重量部、密度890kg/m MFR1.5g/10min(230℃、2.16kg測定)、融点132℃のプロピレン-エチレンランダム共重合体(住友化学株式会社製 S131)30重量部とした以外は同様の方法においてポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。プロピレン-エチレンブロック共重合体とプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の合計量に対するプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の比率は32重量%であった。
【0089】
(実施例9)
実施例8において、アニールロールの温度を130℃とした以外が同様の方法においてポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。プロピレン-エチレンブロック共重合体とプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の合計量に対するプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の比率は32重量%であった。
【0090】
(実施例10)
実施例9において、MD方向の延伸倍率を4.0倍とした以外は同様の方法においてポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。プロピレン-エチレンブロック共重合体とプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の合計量に対するプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の比率は32重量%であった。
【0091】
(実施例11)
実施例1において樹脂の混合比をプロピレン-エチレンブロック共重合体(住友化学製 WFS5293 -22)を84重量部、エチレン-プロピレン共重合エラストマーを6重量部、プロピレン-エチレンランダム共重合体(住友化学株式会社製 S131)10重量部とした以外は同様の方法においてポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。プロピレン-エチレンブロック共重合体とプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の合計量に対するプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の比率は11重量%であった。
【0092】
(実施例12)
実施例1において樹脂の混合比をプロピレン-エチレンブロック共重合体(住友化学製 WFS5293 -22)を74重量部、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(三井化学製、タフマーP0480)を6重量部、プロピレン-エチレンランダム共重合体(住友化学株式会社製 S131)20重量部とした以外は同様の方法においてポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。プロピレン-エチレンブロック共重合体とプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の合計量に対するプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の比率は21重量%であった。
【0093】
(比較例1)
実施例1において、延伸ロール速度は変更せずキャスティングの冷却ロール速度を変更することによってMD方向の延伸倍率を1.0倍(未延伸)とし、またアニール処理を行わなかった以外は同様の方法でポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。
【0094】
(比較例2)
実施例1において、MD方向の延伸倍率を2.0倍とした以外は同様の方法においてポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。
【0095】
(比較例3)
実施例1において、MD方向の延伸倍率を3.1倍とした以外は同様の方法においてポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。
【0096】
(比較例4)
実施例1において、MD方向の延伸倍率を6.0倍にした以外は同様の方法でポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。
【0097】
実施例13
実施例1において、アニール処理を行わなかった以外は同様の方法でポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。
【0098】
実施例14
実施例8において、アニール処理をしない以外は実施例8と同様の方法においてシポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。プロピレン-エチレンブロック共重合体とプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の合計量に対するプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の比率は32重量%であった。
【0099】
(比較例7)
実施例1において、使用する樹脂の混合比を、プロピレン-エチレンブロック共重合体(WFS5293-22)90重量部、樹脂密度900kg/m、MFR(230℃、2.16kg測定)6.7g/10minのプロピレン-ブテン共重合エラストマー(三井化学製、タフマーXM7070)10重量部とした以外は同様の方法において、ポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。
【0100】
(比較例8)
実施例1において、使用する樹脂の混合比を、プロピレン-エチレンブロック共重合体(WFS5293-22)92重量部、樹脂密度900kg/m、MFR(230℃、2.16kg測定)6.7g/10minのプロピレン-ブテン共重合エラストマー(三井化学製、タフマーXM7070)4重量部、樹脂密度885kg/m3、MFR(230℃、2.16kg測定)1.8g/10minのエチレン-ブテン共重合エラストマー(三井化学製
、タフマーA1085S)4重量部とした以外は同様の方法において、ポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。
【0101】
(比較例9)
実施例8において樹脂の混合比をプロピレン-エチレンブロック共重合体(住友化学製 WFS5293 -22)を70重量部、プロピレン-エチレンランダム共重合体(住友化学株式会社製 S131)30重量部とした以外は同様の方法においてポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。プロピレン-エチレンブロック共重合体とプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の合計量に対するプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の比率は30重量%であった。
【0102】
(比較例10)
実施例8において樹脂の混合比をプロピレン-エチレンランダム共重合体(住友化学株式会社製 S131)94重量部、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(三井化学製、タフマーP0480)を6重量部、アニールロールの設定温度を110℃とした以外は同様の方法においてポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。
【0103】
(比較例11)
実施例10において樹脂の混合比をプロピレン-エチレンブロック共重合体(住友化学製 WFS5293 -22)を20重量部、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(三井化学製、タフマーP0480)を6重量部、プロピレン-エチレンランダム共重合体(住友化学株式会社製 S131)74重量部、とした以外は同様の方法においてポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。プロピレン-エチレンブロック共重合体とプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の合計量に対するプロピレン-αオレフィンランダム共重合体の比率は74重量%であった。
【0104】
比較例1~3では、延伸倍率が低いため、直進カット性に劣るものであった。
比較例4では、延伸倍率が高いため、耐破袋性に劣るものであった。
実施例13、14では、アニール処理を行わなかったため、レトルト収縮率が増大し、仕上がりに劣るものであった。
比較例7、8では、エチレン-ブテン共重合エラストマーを用いたため、仕上がりに劣るものであり、耐破袋性に劣るものであった。
比較例9ではエチレン-プロピレン共重合エラストマーを使用しなかったため、耐破袋性に劣るものであった。
比較例10、11ではエチレン-プロピレンブロック共重合体が少なく、プロピレン-エチレンランダム共重合体が多いため、耐破袋性に劣るものであり、泣別れがしやすいものであった。
上記結果を表1、表2に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
表1及び表2で、評価結果を「測定不可*」としているものは、特性評価中にフィルムがMD方向に裂けてしまい、測定値が得られなかったことを示す。
産業上の利用可能性
【0108】
本発明により、開封方向にわずかな泣別れで真っ直ぐ開封でき、かつ低温環境下においても破袋しにくいレトルトパウチを提供することができ、産業に大きく貢献できる。