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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】有軌道台車システム
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/00 20060101AFI20230516BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20230516BHJP
   B60L 7/22 20060101ALI20230516BHJP
   F16D 61/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
B61B1/00 A
B61B13/00 F
B60L7/22 C
F16D61/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022517538
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2021009866
(87)【国際公開番号】W WO2021220636
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2020081444
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】徳本 光哉
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-135405(JP,A)
【文献】特開2002-037429(JP,A)
【文献】特開平08-020332(JP,A)
【文献】特開2017-214189(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03476685(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/00
B61B 3/02
B61B 13/00
B60L 7/22
B60L 50/60
B65G 35/00
F16D 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高低差がある階層間同士を接続すると共に走行台車が下方に移動するための下り軌道と、
高低差がある階層間同士を接続すると共に前記走行台車が上方に移動するための上り軌道と、を備えた有軌道台車システムであって、
前記下り軌道は、螺旋状に配置されると共に、前記走行台車に備えられたブレーキが作動することにより運動エネルギーから変換される熱エネルギー又は電気エネルギーを発生させる第一区間を形成する軌道と、前記第一区間において発生した前記熱エネルギーを放出させるか、又は前記第一区間において発生した前記電気エネルギーを消費させる第二区間を形成する軌道と、を有しており
前記上り軌道は、鉛直方向上方から見た平面視において、前記下り軌道に重なるように配置されている、有軌道台車システム。
【請求項2】
前記走行台車は、前記ブレーキとしての回生ブレーキと、前記回生ブレーキにおいて発生する前記電気エネルギーを蓄積する蓄電池又は前記回生ブレーキにおいて発生する前記電気エネルギーを前記熱エネルギーに変換する抵抗器と、を有し、
前記第一区間は、前記抵抗器において前記電気エネルギーを前記熱エネルギーに変換させる区間又は前記蓄電池に前記電気エネルギーを蓄積させる区間であり、
前記第二区間は、前記抵抗器において変換された前記熱エネルギーを放出する区間又は前記蓄電池において蓄積された前記電気エネルギーを消費する区間である、請求項1記載の有軌道台車システム。
【請求項3】
前記第二区間を形成する軌道は、水平方向に延在している、請求項1又は2記載の有軌道台車システム。
【請求項4】
前記第二区間には、分岐部及び/又は合流部が設けられている、請求項3記載の有軌道台車システム。
【請求項5】
前記第一区間を形成する軌道の下り勾配は、前記第二区間を形成する軌道の下り勾配よりも大きい、請求項1~4の何れか一項記載の有軌道台車システム。
【請求項6】
前記下り軌道は、鉛直方向上方から見た平面視において、互いに略平行となるように配置される直線区間を形成する軌道と、前記直線区間を形成する軌道の端部に設けられるカーブ区間を形成する軌道と、を有している、請求項1~5の何れか一項記載の有軌道台車システム。
【請求項7】
前記下り軌道及び前記上り軌道は、前記螺旋状に配置される前記下り軌道及び前記上り軌道の中心から放射状に延在する区間を有している、請求項1~6の何れか一項記載の有軌道台車システム。
【請求項8】
螺旋状に配置される前記下り軌道に囲まれるエリアに、作業者がメンテナンスをするためのステップが設けられている、請求項1~の何れか一項記載の有軌道台車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、有軌道台車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
走行用軌道に沿って移動可能な走行台車を用いて、例えば、複数の半導体ウェハを格納するFOUP(Front Opening Unified Pod)及びガラス基板を格納する容器、レチクルポッド等のような容器、並びに一般部品等の物品を搬送するためのシステムが知られている。例えば、特許文献1には、高さ方向における複数の階層の各々に敷設された軌道間で物品を搬送するにあたり、エレベータ機能を有するリフトを利用する有軌道台車システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-261145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エレベータ機能を有するリフトを備える上記従来の有軌道台車システムには、例えば、リフトにかかるメンテナンス負担が大きかったり、リフトの上流側において走行台車が渋滞したりするといった課題がある。そこで、高低差のある階層間を軌道によってダイレクトに接続することが考えられる。しかしながら、このような軌道には勾配を設ける必要があり、この勾配を下る走行台車のブレーキを適切に作動させる必要がある。
【0005】
そこで、本発明の一側面の目的は、高低差のある階層間を接続する下り軌道において、走行台車のブレーキを適切に作動させることが可能な有軌道台車システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る有軌道台車システムは、高低差がある階層間同士を接続すると共に走行台車が下方に移動するための下り軌道を備えた有軌道台車システムであって、下り軌道は、螺旋状に配置されると共に、走行台車に備えられたブレーキが作動することにより運動エネルギーから変換される熱エネルギー又は電気エネルギーを発生させる第一区間を形成する軌道と、第一区間において発生した熱エネルギーを放出させるか、又は第一区間において発生した電気エネルギーを消費させる第二区間を形成する軌道と、を有している。
【0007】
ここでいう「熱エネルギーを放出させる」とは、放出される熱エネルギーが供給される熱エネルギーよりも大きい状態も含む概念である。また、ここでいう「電気エネルギーを消費させる」とは、消費される電気エネルギーが供給される電気エネルギーよりも大きい状態も含む概念である。
【0008】
この構成の有軌道台車システムでは、下り軌道を螺旋状に配置することにより、走行台車が下り軌道を走行するのに適正(走行台車の速度を制御可能)な勾配に調整することを可能にすると共にコンパクトな平面スペースに下り軌道を形成することができる。また、下り軌道は、ブレーキが作動したときに運動エネルギーから変換された熱エネルギー又は電気エネルギーを発生させる第一区間を形成する軌道だけでなく、第一区間において発生した熱エネルギーを放出させるか、又は第一区間において発生した電気エネルギーを消費させる第二区間を形成する軌道が設けられている。これにより、第一区間において発生した熱エネルギー又は電気エネルギーを第二区間において放出又は消費できるので、過充電又は発熱等に起因するブレーキの不具合の発生を防止できる。この結果、高低差のある階層間を接続する下り軌道において、走行台車のブレーキを適切に作動させることが可能となる。
【0009】
本発明の一側面では、走行台車は、ブレーキとしての回生ブレーキと、回生ブレーキにおいて発生する電気エネルギーを蓄積する蓄電池又は回生ブレーキにおいて発生する電気エネルギーを熱エネルギーに変換する抵抗器と、を有し、第一区間は、抵抗器において電気エネルギーを熱エネルギーに変換させる区間又は蓄電池に電気エネルギーを蓄積させる区間であり、第二区間は、抵抗器において変換された熱エネルギーを放出する区間又は蓄電池において蓄積された電気エネルギーを消費する区間としてもよい。
【0010】
この構成の有軌道台車システムでは、下り軌道は、回生ブレーキが作動したときに運動エネルギーから変換された熱エネルギー又は電気エネルギーを発生させる第一区間を形成する軌道だけでなく、第一区間において発生した熱エネルギーを放出させるか、又は第一区間において発生した電気エネルギーを消費させる第二区間を形成する軌道が設けられている。これにより、第一区間において発生した熱エネルギー又は電気エネルギーを第二区間において放出又は消費できるので、例えば、抵抗器における過剰発熱による回生失効又は損傷等に起因する回生ブレーキの不具合の発生を防止できたり、例えば、蓄電池への過充電による回生失効又は蓄電池の寿命低下に起因する回生ブレーキの不具合の発生を防止できたりする。この結果、高低差のある階層間を接続する下り軌道において、走行台車の回生ブレーキを適切に作動させることが可能となる。
【0011】
本発明の一側面に係る有軌道台車システムでは、第二区間を形成する軌道は、水平方向に延在していてもよい。この構成では、第一区間を走行する時に発生した熱エネルギーを放出又は電気エネルギーを消費させる第二区間を簡易な構成で形成することができる。また、このような水平区間においては、走行台車が種々の方向から載置部に物品を載置することができる。
【0012】
本発明の一側面に係る有軌道台車システムでは、第二区間には、分岐部及び/又は合流部が設けられていてもよい。この構成では、複数の階層への下方移動が容易に行えるようになる。
【0013】
本発明の一側面に係る有軌道台車システムでは、第一区間を形成する軌道の下り勾配は、第二区間を形成する軌道の下り勾配よりも大きくしてもよい。第一区間の比較対象となる第二区間の勾配は、水平方向に延在する場合、すなわち勾配が0の場合も含む。この構成では、第一区間を走行する時に発生したエネルギーを消費させる第二区間を簡易な構成で形成することができる。
【0014】
本発明の一側面に係る有軌道台車システムでは、下り軌道は、鉛直方向上方から見た平面視において、互いに略平行となるように配置される直線区間を形成する軌道と、直線区間を形成する軌道の端部に設けられるカーブ区間を形成する軌道と、を有していてもよい。この構成では、建屋間等の細長いスペースに容易に下り軌道を設置することができる。
【0015】
本発明の一側面に係る有軌道台車システムでは、高低差がある階層間同士を接続すると共に走行台車が上方に移動するための上り軌道を更に備え、上り軌道は、鉛直方向上方から見た平面視において、下り軌道に重なるように配置されていてもよい。この構成では、建屋間等の細長いスペースに上り軌道及び下り軌道を一体的に設置することができる。
【0016】
本発明の一側面に係る有軌道台車システムでは、下り軌道及び上り軌道は、螺旋状に配置される下り軌道及び上り軌道の螺旋中心から放射状に延在する区間を有していてもよい。この構成では、下り軌道及び上り軌道の長さを調整して、下り軌道と上り軌道との高さ間隔を大きくすることが可能となる。
【0017】
本発明の一側面に係る有軌道台車システムでは、螺旋状に配置される下り軌道に囲まれるエリアに、作業者がメンテナンスをするためのステップが設けられていてもよい。この構成では、スペースを有効活用することができ、下り軌道におけるメンテナンス作業を容易に行なうことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一側面によれば、高低差のある階層間を接続する下り軌道において、走行台車のブレーキを適切に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、一実施形態に係る有軌道台車システムに用いられる走行台車を走行方向から見た正面概略図である。
図2図2は、有軌道台車システムを棟間搬送に適用した場合の概略配置図である。
図3図3は、有軌道台車システムにおける下り軌道及び上り軌道を示した斜視図である。
図4図4は、変形例1に係る下り軌道及び上り軌道を示した斜視図である。
図5図5は、変形例2に係る下り軌道及び上り軌道を示した斜視図である。
図6図6は、変形例3に係る下り軌道及び上り軌道を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の一側面の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1に示されるように、有軌道台車システム1は、走行用軌道(軌道)4に沿って移動可能な走行台車6を用いて、物品10を載置部9,9間(図2参照)で搬送するためのシステムである。物品10には、例えば、複数の半導体ウェハを格納するFOUP(Front Opening Unified Pod)及びガラス基板を格納する容器、レチクルポッド等のような容器、並びに一般部品等が含まれる。有軌道台車システム1は、複数の走行台車6、走行用軌道4、及び複数の載置部9を備える。
【0022】
走行台車6は、走行用軌道4を走行し、物品10を搬送する。走行台車6は、物品10を移載可能に構成されている。走行台車6は、天井走行式無人走行車である。有軌道台車システム1が備える走行台車6の台数は、特に限定されず、複数である。走行台車6は、本体部7と、走行部50と、制御部35と、を有する。本体部7は、本体フレーム22と、横送り部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降台30と、カバー33と、を有する。
【0023】
本体フレーム22は、走行部50と接続されており、横送り部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降台30と、カバー33とを支持する。横送り部24は、θドライブ26、昇降駆動部28及び昇降台30を一括して、走行用軌道4の走行方向と直角な方向に横送りする。θドライブ26は、昇降駆動部28及び昇降台30の少なくとも何れかを水平面内で所定の角度範囲内で回動させる。昇降駆動部28は、昇降台30をワイヤ、ロープ及びベルト等の吊持材の巻取りないし繰出しによって昇降させる。昇降台30には、チャックが設けられており、物品10の把持又は解放が自在とされている。カバー33は、例えば走行台車6の走行方向の前後に一対設けられている。カバー33は、図示しない爪等を出没させて、搬送中に物品10が落下することを防止する。
【0024】
走行部50は、走行台車6を走行用軌道4に沿って走行させる。走行部50は、主に、走行ローラ51、サイドローラ52、回生ブレーキ(ブレーキ)53、抵抗器54、給電コア57及びLDM(Linear DC Motor)59を有している。
【0025】
走行ローラ51は、走行用軌道4の下面部40Bを転動する。走行ローラ51は、走行部50の前後の左右両端に配置されている。サイドローラ52は、走行用軌道4の側面部40Cに接触可能に設けられている。回生ブレーキ53は、運動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより、走行台車6を制動する装置であり、例えば、LDM59を制御する制御部35及び図示しないドライバ等から構成されている。抵抗器54は、回生ブレーキ53によって発生した電気エネルギーを熱エネルギーに変換して大気に放出する。
【0026】
給電コア57は、走行部50の前後に、左右方向にLDM59を挟むように配置されている。給電コア57は、走行用軌道4に配置された給電部40Eとの間で非接触による給電と、非接触による各種信号の送受信を行う。給電コア57は、制御部35との間で信号をやりとりする。LDM59は、走行部50の前後に設けられている。LDM59に設けられた電磁石は、走行用軌道4の上面に配置された磁気プレート40Fとの間で、走行台車6を加速又は制動させるための磁力を発生させる。
【0027】
走行用軌道4は、走行台車6を走行させるための予め定められた走行路である。走行用軌道4は、一対の下面部40B,40Bと一対の側面部40C,40Cと天面部40Dとからなる筒状のレール本体部40と、給電部40Eと、磁気プレート40Fと、を有している。レール本体部40は、走行台車6の走行部50を収容(内包)する。下面部40Bは、走行台車6の走行方向に延在し、レール本体部40の下面を構成する。下面部40Bは、走行台車6の走行ローラ51を転動させて走行させる板状部材である。側面部40Cは、走行台車6の走行方向に延在し、レール本体部40の側面を構成する。側面部40Cは、走行台車6のサイドローラ52を転動させる板状部材である。天面部40Dは、走行台車6の走行方向に延在し、レール本体部40の上面を構成する。
【0028】
給電部40Eは、走行台車6の給電コア57に電力を供給すると共に、給電コア57と信号の送受信を行う部位である。給電部40Eは、一対の側面部40C,40Cのそれぞれに固定され、走行方向に沿って延在している。給電部40Eは、給電コア57に対して非接触の状態で電力を供給する。磁気プレート40Fは、走行台車6のLDM59に走行又は停止のための磁力を発生させる。磁気プレート40Fは、天面部40Dに固定され、走行方向に沿って延在している。
【0029】
図2に示されるように、走行用軌道4は、建物(第一建物B1及び第二建物B2)の各階層(フロア)に配置される棟内搬送部T1と、第一建物B1と第二建物B2との間を接続する棟間搬送部T2とによって構成されている。棟内搬送部T1では、走行用軌道4は、例えば、作業者の頭上スペースである天井付近に敷設されている。走行用軌道4は、例えば建物の天井に支柱40A,40Aにより吊り下げ支持される(図1参照)。
【0030】
棟間搬送部T2は、下り軌道T21と、上り軌道T22と、接続軌道T23と、を含んで構成されている。下り軌道T21は、鉛直方向に高低差がある階層間同士を接続すると共に走行台車6が下方に移動するために設けられている。上り軌道T22は、鉛直方向に高低差がある階層間同士を接続すると共に走行台車6が上方に移動するために設けられている。下り軌道T21及び上り軌道T22は、接続軌道T23が配置された最下位置と、第一建物B1の最上階層がある最上位置との間を接続している。接続軌道T23は、鉛直方向に高低差がない場所同士を接続すると共に走行台車6が水平に移動するために設けられている。
【0031】
図3に示されるように、下り軌道T21は、螺旋状に配置されている。図1及び図3に示されるように、下り軌道T21は、走行台車6に備えられた回生ブレーキ53が作動したときに発生する電気エネルギーを抵抗器54において熱エネルギーに変換させる第一区間71を形成する走行用軌道4と、第一区間71において変換された熱エネルギーを抵抗器54から放出させる第二区間72を形成する走行用軌道4と、を有している。
【0032】
第一区間71を形成する走行用軌道4の下り勾配は、第二区間72を形成する走行用軌道4の下り勾配よりも大きい。本実施形態では、第二区間72を形成する走行用軌道4は、水平方向に延在している。また、下り軌道T21は、鉛直方向上方から見た平面視において、互いに略平行となるように配置される直線区間73を形成する走行用軌道4と、直線区間73を形成する走行用軌道4の端部に設けられるカーブ区間74を形成する走行用軌道4と、を有している。
【0033】
上り軌道T22は、螺旋状に配置されると共に、上り勾配である第三区間75を形成する走行用軌道4と、水平方向に延在する第四区間76を形成する走行用軌道4と、を有している。また、上り軌道T22は、鉛直方向上方から見た平面視において、互いに略平行となるように配置される直線区間73を形成する走行用軌道4と、直線区間73を形成する走行用軌道4の端部に設けられるカーブ区間74を形成する走行用軌道4と、を有している。上り軌道T22は、鉛直方向上方から見た平面視において、下り軌道T21に重なるように配置されている。
【0034】
下り軌道T21及び上り軌道T22は、フレーム81に支持されている。フレーム81は、横フレーム81Aと縦フレーム81Bとを有している。下り軌道T21及び上り軌道T22は、例えば、フレーム81に支持部材40G(図1参照)を介して支持されている。フレーム81は、螺旋状に配置される下り軌道T21及び上り軌道T22に囲まれるエリアに設けられている。また、フレーム81には、作業者が走行台車6又は走行用軌道4をメンテナンスするためのステップ(踏み台)85が、鉛直方向に所定の間隔をあけて複数配置されている。すなわち、ステップ85は、螺旋状に配置される下り軌道T21及び上り軌道T22に囲まれるエリアに配置されている。地上と最下層のステップ85との間、及び互いに隣接するステップ85,85の間には、作業者が昇り降りするためのはしご87が設けられている。
【0035】
図2に示されるように、載置部9は、走行用軌道4に沿って配置され、走行台車6との間で物品10の受け渡し可能な位置に設けられている。載置部9には、バッファ及び受渡ポートが含まれる。バッファは、物品10が一時的に載置される載置部である。バッファは、例えば、目的とする受渡ポートに他の物品10が載置されている等の理由により、走行台車6が搬送している物品10をその受渡ポートに移載できない場合に、物品10が仮置きされる載置部である。受渡ポートは、例えば洗浄装置、成膜装置、リソグラフィ装置、エッチング装置、熱処理装置、平坦化装置をはじめとする半導体の処理装置(図示せず)に対して物品10の受渡を行うための載置部である。なお、処理装置は、特に限定されず、種々の装置であってもよい。
【0036】
図1に示される制御部35は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる電子制御ユニットである。制御部35は、走行台車6における各種動作を制御する。具体的には、制御部35は、走行部50と、横送り部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降台30と、を制御する。制御部35は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。制御部35は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。制御部35は、走行用軌道4の給電部40E(あるいはフィーダー線)等を利用して、コントローラ90と通信を行う。
【0037】
本実施形態の制御部35は、走行台車6が下り勾配の第一区間71(図2及び図3参照)を走行するときには、ドライバ等を制御することによって回生ブレーキ53のブレーキを作動させ、予め定められた安全な速度で走行台車6を走行させる。また、制御部35は、走行台車6が勾配のない第二区間72(図2及び図3参照)を走行するときには、ドライバ等を制御することによって回生ブレーキ53のブレーキを解除すると共に、LDM59を制御することによって走行台車6を予め定められた速度で走行させる。制御部35は、走行台車6が第三区間75及び第四区間76(図2及び図3参照)を走行するときには、ドライバ等を制御することによって回生ブレーキ53のブレーキを解除すると共に、LDM59を制御することによって走行台車6を予め定められた速度で走行させる。
【0038】
コントローラ90は、CPU、ROM及びRAM等からなる電子制御ユニットである。コントローラ90は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。コントローラ90は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。コントローラ90は、走行台車6に物品10を搬送させる搬送指令を送信する。
【0039】
上記実施形態の有軌道台車システム1における作用効果について説明する。図3に示されるように、上記実施形態の有軌道台車システム1では、下り軌道T21を螺旋状に配置することにより、走行台車6が下り軌道T21を走行するのに適正な下り勾配に調整することを可能にすると共にコンパクトな平面スペースに下り軌道T21を形成することができる。また、上記実施形態の有軌道台車システム1の下り軌道T21では、回生ブレーキ53が作動したときに運動エネルギーから変換された熱エネルギーを発生させる第一区間71を形成する走行用軌道4だけでなく、第一区間71において発生した熱エネルギーを放出させる第二区間72を形成する走行用軌道4が設けられている。これにより、第一区間71において発生した熱エネルギー又は電気エネルギーを第二区間72において放出又は消費できるので、抵抗器54における過剰発熱による回生失効又は損傷等に起因する回生ブレーキ53の不具合の発生を防止できる。この結果、高低差のある階層間を接続する下り軌道T21において、走行台車6の回生ブレーキ53を適切に作動させることが可能となる。
【0040】
上記実施形態の有軌道台車システム1では、第二区間72を形成する走行用軌道4は、水平方向に延在しているので、簡易な構成で第一区間71を走行する時に発生した熱エネルギーを放出させる第二区間72を形成することができる。また、このような水平区間においては、走行台車6が種々の方向から載置部9に物品10を載置することができ、分岐、合流も容易に行なうことができる。
【0041】
上記実施形態の有軌道台車システム1では、第一区間71を形成する走行用軌道4の下り勾配は、第二区間72を形成する走行用軌道の下り勾配よりも大きくしているので、簡易な構成で第一区間71を走行する時に発生した熱エネルギーを消費させる第二区間72を形成することができる。
【0042】
上記実施形態の有軌道台車システム1では、下り軌道T21は、鉛直方向上方から見た平面視において、互いに略平行となるように配置される直線区間73を形成する走行用軌道4と、直線区間73を形成する走行用軌道4の端部に設けられるカーブ区間74を形成する走行用軌道4と、を有している。また、上記実施形態の有軌道台車システム1では、上り軌道T22は、鉛直方向上方から見た平面視において、下り軌道T21に重なるように配置されている。このような構成の有軌道台車システム1では、建屋間等の細長いスペースに上り軌道及び下り軌道を一体的に設置することができる。
【0043】
上記実施形態の有軌道台車システム1では、螺旋状に配置される下り軌道T21及び上り軌道T22に囲まれるエリアに、作業者がメンテナンスをするためのステップ85が設けられている。これにより、スペースを有効活用することができ、下り軌道T21及び上り軌道T22におけるメンテナンス作業を容易に行なうことができる。
【0044】
以上、一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られない。発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0045】
(変形例1)
例えば、変形例1に係る有軌道台車システム1では、図4に示されるように、上記実施形態に係る有軌道台車システム1の構成に加え、上記最下位置と上記最上位置との間に分岐部91及び合流部92が設けられている。分岐部91は、下り軌道T21又は上り軌道T22を本線軌道としたときに、本線軌道から各階層に設けられた軌道である支線軌道に分岐させる部分である。合流部92は、下り軌道T21又は上り軌道T22を本線軌道としたときに、上記支線軌道から本線軌道に合流させる部分である。第一建物B1が複数の階層によって構成されているとき、分岐部91及び合流部92は、それぞれの階層に対応して設けられている。上記分岐部91及び合流部92は、水平方向に延在している走行用軌道4に設けられている。
【0046】
上述した変形例1に係る有軌道台車システム1では、複数の階層のそれぞれへの下方移動及び複数の階層のそれぞれへの上方移動が容易に行えるようになる。この結果、第一建物B1におけるそれぞれの階層に設けられた処理装置に、走行台車6を用いて物品10を搬送することが可能となる。
【0047】
(変形例2)
上記実施形態及び変形例1に係る有軌道台車システム1では、図3及び図4に示されるように、下り軌道T21及び上り軌道T22は、鉛直方向上方から見た平面視において、互いに略平行となるように配置される直線区間73を形成する走行用軌道4と、直線区間73を形成する走行用軌道4の端部に設けられるカーブ区間74を形成する走行用軌道4と、を有している例を挙げて説明したがこれに限定されない。
【0048】
変形例2に係る有軌道台車システム1の下り軌道T21は、例えば、図5に示されるように、螺旋状に配置される下り軌道T21の螺旋中心Cから放射状に延在する走行用軌道4を有している。変形例2の下り軌道T21は、曲線軌道78を設けることによって螺旋中心Cから放射状に走行用軌道4を延在させている。変形例2に係る有軌道台車システム1の下り軌道T21は、上記実施形態及び変形例1に係る有軌道台車システム1と同様に、走行台車6に備えられた回生ブレーキ53が作動したときに発生する電気エネルギーを抵抗器54において熱エネルギーに変換させる第一区間71を形成する走行用軌道4と、第一区間71において変換された熱エネルギーを抵抗器54から放出させる第二区間72を形成する走行用軌道4と、を有している。
【0049】
また、変形例2に係る有軌道台車システム1では、放射状に延在する走行用軌道4の折返し部分にカーブ区間74が設けられている。カーブ区間74は、水平方向に延在する走行用軌道4によって形成されており、変形例1と同様に、分岐部91及び合流部92が設けられている。
【0050】
変形例2に係る有軌道台車システム1では、複数の階層への下方移動、及び複数の階層への上方移動が容易に行えるようになる。この結果、第一建物B1におけるそれぞれの階層に設けられた処理装置に、走行台車6を用いて物品10を搬送することが可能となる。また、この構成では、容易に走行用軌道4の長さを調整して、下り軌道T21の高さ間隔を大きくすることが可能となる。
【0051】
(変形例3)
変形例3に係る有軌道台車システム1は、図6に示されるように、変形例2に係る下り軌道T21の構成に加えて、上り軌道T22を備えた構成となっている。上り軌道T22は、鉛直方向上方から見た平面視において、下り軌道T21に重なるように配置されている。変形例3に係る有軌道台車システム1においても、変形例2に係る有軌道台車システム1と同様の効果を得ることができる。
【0052】
(その他の変形例)
上記実施形態及び変形例に係る有軌道台車システム1に用いられる走行台車6は、回生ブレーキ53が作動したときに発生する電気エネルギーを抵抗器54において熱エネルギーに変換させる例を挙げて説明したが、走行台車6は、抵抗器54に代えて蓄電池54Aを備えていてもよい。蓄電池54Aを備える構成の走行台車6は、回生ブレーキ53が作動したときに発生する電気エネルギーを蓄電池54Aに蓄電させることができる。
【0053】
このような構成の走行台車6を有する有軌道台車システム1では、下り軌道T21の第一区間71において、回生ブレーキ53が作動したときに発生する電気エネルギーを蓄電池54Aに蓄電させ、第二区間72において、第一区間71において蓄電された電気エネルギーを蓄電池54Aから消費させる。本実施形態では、LDM59に、走行用軌道4の上面に配置された磁気プレート40Fとの間で、走行台車6を走行させるための磁力を発生させるために上記電気エネルギーが用いられる。このような構成では、蓄電池54Aへの過充電による回生失効又は蓄電池54Aの寿命低下に起因する回生ブレーキ53の不具合の発生を防止できたりする。この結果、高低差のある階層間を接続する下り軌道T21において、走行台車6の回生ブレーキ53を適切に作動させることが可能となる。
【0054】
上記の変形例では、蓄電池54Aが各走行台車6に備えられている例を挙げて説明したが、例えば、下り軌道T21沿いの少なくとも一箇所に蓄電池を設け、走行用軌道4又は走行用軌道4の延在方向に沿って配置される導電性部材を介して、各走行台車6において発生した電気エネルギーを伝達してもよい。このような構成においても、第二区間72を走行するときに走行台車6が下り軌道T21沿いに設けられた蓄電池に蓄積された電気エネルギーを用いることで、上記の変形例と同様の効果を得ることができる。
【0055】
上記の実施形態及び変形例では、走行台車6に用いられるブレーキとして電力変換方式の回生ブレーキ53を適用した例を挙げて説明したが、例えば、熱交換方式のブレーキを適用してもよい。この場合、熱交換方式のブレーキによって第一区間71において発生する熱を第二区間72において放出することにより、上記の実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
【0056】
上記の実施形態及び変形例において例示した第一建物B1の階層の数、走行用軌道4が放射方向に延在するときの方向は、上述したものに限定されることはなく、適宜設定が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…有軌道台車システム、4…走行用軌道(軌道)、6…走行台車、10…物品、50…走行部、53…回生ブレーキ(ブレーキ)、54…抵抗器、54A…蓄電池、71…第一区間、72…第二区間、73…直線区間、74…カーブ区間、75…第三区間、76…第四区間、78…曲線軌道、81…フレーム、85…ステップ、91…分岐部、92…合流部、T1…棟内搬送部、T2…棟間搬送部、T21…下り軌道、T22…上り軌道。
図1
図2
図3
図4
図5
図6