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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】充填装置並びに充填方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 11/04 20060101AFI20230516BHJP
   B67C 3/28 20060101ALI20230516BHJP
   B65B 3/26 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
G01N11/04
B67C3/28
B65B3/26
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018141319
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020016604
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)刊行物 ▲1▼刊行物名 修習技術者研究業績発表会講演論文集 第5巻 ▲2▼発行者 公益社団法人日本技術士会中部本部研修技術者支援委員会 ▲3▼発行日 平成30年2月17日 (2)講演 ▲1▼集会名 平成29年度(第10回)中部本部修習技術者研究業績発表会 ▲2▼開催場所 中部大学名古屋キャンパス(鶴舞)三浦記念会館大ホール(愛知県名古屋市中区千代田5-14-22) ▲3▼開催日 平成30年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029090
【氏名又は名称】靜甲株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597139170
【氏名又は名称】学校法人静岡理工科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100117190
【弁理士】
【氏名又は名称】前野 房枝
(74)【代理人】
【識別番号】100081282
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 俊輔
(74)【代理人】
【識別番号】100085084
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高英
(72)【発明者】
【氏名】小椋 勝仁
(72)【発明者】
【氏名】山田 重良
(72)【発明者】
【氏名】桜木 俊一
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-096790(JP,A)
【文献】特開平06-227503(JP,A)
【文献】国際公開第2005/004617(WO,A1)
【文献】特開2018-031757(JP,A)
【文献】特開平08-233720(JP,A)
【文献】特開平09-095394(JP,A)
【文献】特開2010-137439(JP,A)
【文献】特開2009-190770(JP,A)
【文献】特表2017-523028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00-13/04
B67C 3/28
B65B 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填液を貯留するタンクと、
充填液を容器に注入するノズルと、
前記タンクと前記ノズルとの間の流路を形成する配管と、
前記タンクに貯留された充填液を前記流路を通して前記ノズルへ送液する送液手段と、
前記配管内の直管部において一定長に亘る層流域が形成されるように前記送液手段の駆動を制御する制御手段と、
前記層流域内における充填液の流路の上下流方向に離間させて配設された複数の圧力測定手段と、
を備える充填装置であって、
前記制御手段は、充填液の送液中における前記複数の圧力測定手段の計測結果による圧力損失に基づいて充填液の粘度を取得し、前記粘度を使用してレイノルズ数を算出するとともに、前記粘度とレイノルズ数の値を常時監視することを特徴とする充填装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記送液手段を制御して充填液の流量を調整することを特徴とする請求項1に記載の充填装置。
【請求項3】
充填時に前記ノズルに至る充填液のレイノルズ数が2300よりも小さくなるように送液状態を維持することを特徴とする請求項2に記載の充填装置。
【請求項4】
前記タンクおよび/または前記流路を形成する配管には、送液される前記充填液の温度制御手段が配設されており、
前記制御手段は、前記温度制御手段を制御して前記ノズルに至る充填液の粘度を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の充填装置。
【請求項5】
充填液を貯留するタンクと、充填液を容器に注入するノズルとの間の充填液の流路を形成する配管の直管部により構成される前記流路の上下流方向に離間させて配設された複数の圧力測定手段により、充填液の送液中における圧力損失を求め、前記圧力損失に基づいて前記充填液の粘度を求めて、当該充填液の充填のために予め設定された設定粘度域と前記圧力損失に基づいて求められた粘度とを比較考量するとともに、 前記粘度を使用してレイノルズ数を算出して、充填状態を監視し、送液される充填液を層流化することを特徴とする充填方法。
【請求項6】
制御手段は、充填時に前記ノズルに至る充填液のレイノルズ数が2300よりも小さくなるように充填液の流量を調整することを特徴とする請求項5に記載の充填方法。
【請求項7】
前記圧力損失に基づいて求められた粘度が充填液の粘度が前記設定粘度域から逸脱したこと、あるいは、逸脱する傾向を検知したときに、前記設定粘度域内の数値となるように、前記流路を形成する配管または前記流路を送液される充填液を貯留する前記タンクに配設した前記充填液の温度制御手段を制御して前記充填液の温度を調整することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填液の粘度をリアルタイムで測定し、最適な充填条件下で充填を行う充填装置並びに充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
充填装置で充填を行う液体(充填液)には、様々な粘度性質(粘性)のものがある。例えば、ニュートン流体(例:水)、非ニュートン流体としては疑塑性流体(例:シャンプー液、リンス液)、ビンガム流体(例:マヨネーズ、ケチャップ)、ダイラタント流体(例:片栗粉と水の混合物)を例示することができる。
【0003】
そして、所望の充填液を容器に充填する充填装置のユーザーは、各充填装置でいつも同じ特性の充填液を充填するとは限らない。よって、充填装置のメーカーは、1台で様々な特性の充填液に対応することができる充填装置の開発を求められている。充填装置をこのような様々な充填液に対応可能とし、良好な充填を行うためには、充填液(液体)の特性に合わせた送液を行うことが大変重要であり、特に、充填液の粘度特性は機械構造設計にも関わる重大なファクターとなる。
【0004】
そして、従来、ユーザーは、充填装置を用いる充填作業前に、抽出分離した充填液の液体サンプルの粘度を測定し、それを基に、当該充填作業における充填液の流速、充填時間などの充填条件を類推し、試行して充填評価を行い、充填条件を決定している(特許文献1、段落0025,0026参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-012923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
抽出分離した充填液の液体サンプルの粘度の測定は、特許文献1に示す様に、比較的小型で特別の設備も必要とせず、安価であることから、回転粘度計を用いて行っている。この回転粘度計を用いる方法は、静的な状態の液体に対して、決まった変化(一定の振動、せん断など)を与えて測定する必要があるが、この方法は少量の液体サンプルを分離して測定するものであり、実際の充填状況を再現できていないため、充填状況下での液体の性質を把握することにならず、その液体サンプルの測定結果から適正な充填条件を決定することはなかなか困難であった。
【0007】
また、液状の食品(ドレッシング、ソースなど)のような、固形物(具材)が含まれる液体も、測定子との接触などを原因として、安定した測定ができなかったり、充填対象の充填液の種類によっては、製造ロットによって粘度が変化し、充填精度に影響を与えていると思われる事象も散見されている。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、充填装置の駆動中において、充填液の粘度を測定し、その結果に応じて充填状況を把握し(充填状況の常時監視)、さらには、前記粘度の測定結果に基いて充填条件を調整変更可能とする(充填条件の調整変更)ことで、充填環境や充填液の特性に合った、精度のよい充填を行うことを可能とする充填装置並びに充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本願発明の充填装置は、充填液を貯留するタンクと、充填液を容器に注入するノズルと、前記タンクと前記ノズルとの間の流路を形成する配管と、前記タンクに貯留された充填液を前記流路を通して前記ノズルへ送液する送液手段と、前記配管内において一定長に亘る層流域が形成されるように前記送液手段の駆動を制御する制御手段とを備える充填装置であって、前記配管には、前記層流域内における充填液の流路の上下流方向に離間させて複数の圧力測定手段が配設されており、前記制御手段は、充填液の送液中における前記複数の圧力測定手段の計測結果による圧力損失に基づいて前記充填液の粘度を求めることを特徴とする。
【0010】
これにより、液体サンプルを分離抽出する手間も無く、外部の粘度計を用いずに、インラインで、動作環境におけるリアルタイムな充填液の粘度を計測できる。計測結果の粘度は、例えば、当該充填装置の表示手段に表示することで、ユーザーは粘度を知ることが出来る。この粘度が不適な数値であった場合には、ユーザーは手動で当該充填装置の駆動を停止し、原因を追及するなどの対策を早期に採ることが可能となる。
【0011】
また、前記制御手段は、前記圧力損失に基づいて求められた粘度が当該充填液の充填のために予め設定された設定粘度域内の粘度となるように自動的に前記送液手段を制御して充填液の流速を調整することを特徴とする。
【0012】
これにより、充填中の充填液の粘度の変化にも対応し、常に、良好な充填結果を得られる充填を実行することが可能となる。なお、前記送液手段としては、シリンダ+ピストン、圧送タンク、ポンプなどを例示できる。
【0013】
また、前記タンクおよび/または前記流路を形成する配管には、送液される前記充填液の温度制御手段が配設されており、前記制御手段は、前記圧力損失に基づいて求められた粘度が当該充填液の充填のために予め設定された設定粘度域内の粘度となるように、前記温度制御手段を制御して充填液の流速を調整することを特徴とする。
【0014】
温度により粘性が変化し、品質が変化しない充填液であれば、このように充填液の温度を管理することで、充填中の充填液の粘度の変化にも対応し、常に、良好な充填結果を得られる充填を実行することが可能となる。
【0015】
また、本願発明の充填方法は、充填液の流路を形成する配管内に一定長に亘って形成された層流域において上下流方向に離間させて配設された複数の圧力測定手段により、充填液の送液中における圧力損失を求め、前記圧力損失に基づいて前記充填液の粘度を求め、該充填液の充填のために予め設定された設定粘度域と前記圧力損失に基づいて求められた粘度とを比較考量して充填状態を監視することを特徴とする。
【0016】
この求められた粘度から、充填液の異常を検出し、注意喚起の表示や警報音を発するようにしたり、自動で当該充填装置の駆動を停止させるように制御することが可能となる。
【0017】
また、前記圧力損失に基づいて求められた粘度が前記設定粘度域から逸脱したとき、前記設定粘度域内の数値となるように、充填条件(流速・充填液温度)を調整することを特徴とする。
【0018】
さらに、直近の複数回の前記圧力損失に基づいて求められた粘度により、充填液の粘度が前記設定粘度域から逸脱する傾向を検知したときに、前記設定粘度域内の数値となるように、充填条件(流速・充填液温度)を調整することを特徴とする。
【0019】
前記充填液の送液手段を制御して、前記充填条件としての充填液の流速を調整することを特徴とする。
【0020】
前記流路または前記流路を送液される充填液を貯留するタンクに配設した前記充填液の温度制御手段を制御して、前記充填条件としての充填液の温度を調整することを特徴とする。
【0021】
これらの充填方法により、充填中の充填液の粘度の変化にも対応し、常に、良好な充填結果を得られる充填を実行することが可能となる。
【0022】
さらに、当該充填液の充填時のレイノルズ数が2300よりも小さくなるように送液状態を維持することを特徴とする。
【0023】
このように、測定された粘度から求めたレイノルズ数を常に監視して、送液される充填液の層流化を図ることで、安定した状態で充填液をノズルから吐出させることができ、粘度の検出もより正確に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明の充填装置を本発明の充填方法によって作動させると、充填装置の駆動中において、充填液の粘度を測定し、その結果に応じて充填状況を把握し(充填状況の常時監視)、さらには、前記粘度の測定結果に基いて充填条件を調整変更可能とする(充填条件の調整変更)ことで、充填環境(温度等)や充填液の特性に合った、精度のよい充填を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態の充填装置の構成を示す説明図
図2】本発明の他の実施形態の充填装置の構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る充填装置、並びに、充填方法の実施形態について説明する。
【0027】
本発明の充填装置1においては、充填液を貯留するタンク2と、充填液を容器11に注入するノズル3と、タンク2とノズル3とを繋いで充填液の流路を形成する配管4と、タンク2に貯留された充填液を流路を通してノズル3へ送液する送液手段5と、配管4内において一定長に亘る層流域が形成されるように送液手段5の駆動を制御する制御手段6とを備えている。
【0028】
図1に示す充填装置1は、送液手段5として、配管4に連通するシリンダ5aと、当該シリンダ5a内をピストン駆動部5cの駆動により往復摺動可能とされたピストン5bを備えている。
【0029】
配管4には、流路開閉手段7として、シリンダ5aの連通位置よりも上流に第1バルブ7aが設けられ、ノズル3の直上流に第2バルブ7bが設けられている。第1バルブ7aおよび第2バルブ7bは流路の開閉を電磁制御可能な電磁バルブとされている。第1バルブ7aと第2バルブ7bとの間の配管4は送液手段5によって送液される充填液が層流となって流れる区間(前記層流域)が形成されるように設けられている。そして、層流域内における充填液の流路には、上下流方向に一定寸法Lを離間させて、圧力測定手段8としての第1圧力センサー8aと第2圧力センサー8bが配設されている。本実施形態においては、第1圧力センサー8aと第2圧力センサー8bは水平配置された直管の配管4内における層流域に設けられている。このように、水平配置された層流域において圧力損失を求めることにより、充填液の粘度をより簡便に算出することが可能となる。なお、水平面に対し傾斜した直管部分において、同様に粘度を検出することも可能である。その場合には、計測区間となる第1圧力センサー8aと第2圧力センサー8b間の配管4内に存在する充填液の重量が測定圧力に影響を及ぼすため、この重量による圧力加算値を補正することにより、粘度を算出すればよい。
【0030】
制御手段6は、送液手段5を構成するピストン駆動部5cの他、第1バルブ7a、第2バルブ7b、第1圧力センサー8a、第2圧力センサー8bの駆動動作を制御可能に設けられているとともに、本実施形態においては、充填液の送液中における第1圧力センサー8aと第2圧力センサー8bの計測結果から求めた圧力損失に基づいて充填液の粘度を取得する粘度計測手段9としても作用するように構成されている。また、制御手段6は、予め設定される駆動条件、充填液の適正粘度域などを記憶する記憶部(不図示)を備えている。
【0031】
さらに、本実施形態の充填装置1は、当該装置の駆動条件等を設定し、駆動条件や駆動状況を確認するための入出力手段10を有している。
【0032】
以下、このような構成の充填装置1において非ニュートン流体の充填液の充填を実行する場合の充填方法について説明する。
【0033】
まずは、基本となる通常の定量充填動作を説明する。なお、第1バルブ7aや第2バルブ7bにおいては、制御手段6によってその動作が制御されるものとする。
【0034】
タンク2に充填液が貯留された状態において、まずは第2バルブ7bを閉じる。次に、第1バルブ7aを開き、送液手段5のピストン駆動部5cを駆動させてピストン5bを引き(図1においては下方へ下げる)、シリンダ5a内にタンク2から配管4を通過して所定量の充填液を吸引する。つまり、ピストン5bの移動量とシリンダ5aの内径により、容器11に充填する充填液を計量する。
【0035】
必要量の充填液の計量が終了したら、第1バルブ7aを閉じ、続いて、第2バルブ7bを開くとともに、送液手段5のピストン駆動部5cを駆動させてピストン5bを押し(図1においては上方へ上げる)、シリンダ5a内の充填液を押し出す。
【0036】
押し出された充填液は配管4を通過し、ノズル3から容器11に注入される。
【0037】
そして、本発明の充填装置1においては、この充填動作時に充填液の粘度を測定する。すなわち、充填動作時に充填液は配管4の層流域を通過する。このとき、第1圧力センサー8aと第2圧力センサー8bとでそれぞれ圧力の測定を行う。
【0038】
第1圧力センサー8aと第2圧力センサー8b間の距離をL、配管4の内径φをdとした場合、配管4内の流速Vはピストン5bによって押し出される充填液の流量と、配管4の内径dにより計算ができる。なお、P1、P2はそれぞれ第1圧力センサー8a、第2圧力センサー8bで検出した圧力である。
【0039】
充填液の粘度をμとすると、ハーゲン・ポアズイユの法則より、
1-P2 = 32μLV / d2 (式1)
が成り立ち、
粘度μ = (P1-P2)d2 / 32LV (式2)
が得られる。
【0040】
る剪断速度を変化させ、非ニュートン流体の剪断速度変化に対する粘度変化を確認することができる。
【0041】
このように、充填液の粘度を常時監視することで、充填液の変化(温度変化や配合変化)を検出することができ、問題の発生に早期に対処することが可能となる。粘度は入出力手段10に出力(表示)させることでユーザーが目視確認できる。入出力手段10から無線等の通信手段(不図示)を用いて粘度の情報を外部へ出力してもよい。
【0042】
また、当該充填液の充填のために予め設定された設定粘度域と前記圧力損失に基づいて求められた粘度とを比較考量して充填状態を監視・判断し、この判断結果が充填状態の異常を判断した場合に、入出力手段10で注意喚起の表示や警報音を発するようにしたり、自動で充填装置1の駆動を停止させるように制御してもよい。
【0043】
また、この粘度μおよび充填液の密度ρ、配管4の内径d(ノズル3の内径d)より、充填動作時の配管4(ノズル3)内のレイノルズ数Reが推定できる。
【0044】
Re = ρVd /μ (式3)
【0045】
そこで、本実施形態においては、このレイノルズ数Reが2300よりも小さくなるように充填液の押出速度Vや充填液の粘度μをコントロールする。このレイノルズ数Re<2300という値は、非ニュートン流体の当該充填液の充填のために予め設定した粘度を示す閾値であり、配管4(ノズル3)内の流れを層流化を可能とする値である。なお、前記閾値としてのレイノルズ数Reは、充填液の特性や状態に応じて、配管4内の流れを層流化可能な数値を設定すればよい。
【0046】
具体的には、送液手段5の駆動部の駆動を制御し、ピストン5bによって押し出される充填液の流速Vを変化させることにより、レイノルズ数Reを閾値の2300よりも小さく保持する。または、充填液によっては、液温を管理することにより、充填液の粘度μを変化させ、レイノルズ数Reを2300よりも小さく保持することも可能である。例えば、タンク2や配管4に充填液の温度制御手段(不図示)を配設し、その駆動を制御手段6の制御対象とすることにより、必要な加温等を施すことが可能となる。
【0047】
このように充填液の粘度とレイノルズ数Reを管理し、送液される充填液を層流化することで、安定した状態で充填液をノズル3から吐出させることができる。層流化している送液を用いることにより、粘度の検出はより正確になり、粘度の検出結果を送液手段5の制御にフィードバックすることにより、配管4内の充填液の層流化を徹底できるといった相乗効果を得ることができる。
【0048】
なお、粘度を測定する頻度やタイミングは特に限ることなく、充填の度毎であっても、複数回の充填の度毎であっても、所定時間経過毎であってもよい。また、測定された粘度を制御手段6の前記記憶部に記憶しておき、直近の複数回の前記圧力損失に基づいて求められた粘度により、充填液の粘度が設定粘度域(レイノルズ数を用いて定義可)から逸脱する傾向を検知したときに、設定粘度域内の数値となるように、流速や充填液温度などの充填条件を調整したり、警告を表示するようにしてもよい。
【0049】
このように、本発明の充填装置1並びに充填方法によれば、充填装置1の駆動中(インライン)において、充填液の粘度を測定し、その結果に応じて充填状況を把握し(充填状況の常時監視)、さらには、前記粘度の測定結果に基いて、充填液の温度やピストン5bの押出速度などの充填条件を調整変更することで、充填環境や充填液の特性に合った、精度のよい充填を行うことが可能となる。
【0050】
このように、充填装置1の駆動中(インライン)において充填液の粘度を測定する方法は、液体サンプルの採取も不要であり、充填状況下での液体の性質を、液体サンプルから粘度を測定する従来の方法よりも確実に把握することができる。
【0051】
しかも、固形物が混ざっているドレッシングなど、製造ロットによって粘度が変化する可能性がある充填液であっても、その濃度変化に対応して、充填条件を調整変更することができる。そして、当該充填装置は前述のように充填液の性状に応じて充填条件を変化させることができるので、1台で多くの種類の充填液の充填に対応することができる。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できる。
【0053】
例えば、図2に示すように、1つのタンク2と複数本のノズル3を備える、所謂、ロータリー式の充填装置1の場合、各ノズル3に連接される配管4毎に圧力測定手段8を設ける必要はなく、少なくとも1つのノズル3に連接される配管4に設けた圧力測定手段8の計測結果に基づき、充填中の充填計の粘度を求め、各ノズル3に対応する送液手段5の駆動を制御する構成の充填装置1並びに充填方法としてもよい。
【0054】
さらには、送液手段5は、前述の様なシリンダ5aとピストン5bとを用いて計量しつつ送液する構成でなくてもよい。例えば、圧力タンクを用いて送液するとともに、計量計などを用いて送液の量を計量するような構成であってもよい。図2には、充填液の流路の最上流にタンク2’を配設し、第1の送液手段5’をタンク2と共に構成するポンプ5’により配管4を通して下流側に配設された第2の送液手段5”を構成するタンク(エアタンク)2”へ送液し、このタンク2”からロータリー式充填装置の各ノズルへ配管4を通して送液するように構成した充填装置1を示している。第1の送液手段5’と第2の送液手段5”との間の配管4には、第1の圧力測定手段8’を構成する第1圧力センサー8’と第2圧力センサー8’が配設され、第2の送液手段5”とノズル3との間の配管4には、第2の圧力測定手段8”を構成する第1圧力センサー8”と第2圧力センサー8”が配設され、圧力測定手段8’、8”を兼ねる制御手段6は、第1の圧力測定手段8’の測定結果に基づき、ポンプ5’の駆動を制御し、および/または、第2の圧力測定手段8”の測定結果に基づき、エアタンク2”の空気圧を制御することにより、その濃度変化に対応した充填を実行することができる。
【0055】
また、本発明の充填方法(例えば、請求項4に記載の充填方法)においては、複数の圧力測定手段8を設ける配管4は、必ずしも、実施形態に開示のように、充填液を貯留するタンク2とノズル3とを繋ぐ配管4である必要はない。例えば、差圧検出用の充填液の流路を構成する配管4の上下流端をタンク2に連接するとともに、差圧検出用の送液手段5としてポンプ等を設け、充填に供される充填液の粘度を検出し、この結果に基づき、ノズル3への充填液の送液手段5を制御して、充填条件としての充填液の流速を調整してもよい。また、前述のロータリー式充填装置などのように充填装置1の基本構成部品が多く、充填液を貯留するタンク2とノズル3とを繋ぐ配管4に複数の圧力測定手段を設けるよりも、前記タンク2近傍に差圧検出用の充填液の流路を構成する配管4を敷設し、その配管4に圧力測定手段8を設ける方が簡便であることもある。
【符号の説明】
【0056】
1 充填装置
2 タンク
3 ノズル
4 配管
5 送液手段
5a シリンダ
5b ピストン
5c ピストン駆動部
6 制御手段
7 流路開閉手段
7a 第1バルブ
7b 第2バルブ
8 圧力測定手段
8a 第1圧力センサー
8b 第2圧力センサー
9 粘度計測手段
10 入出力手段
11 容器
図1
図2