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特許7279919光学的立体造形用組成物、並びに立体造形物、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】光学的立体造形用組成物、並びに立体造形物、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20230516BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20230516BHJP
   C08F 220/00 20060101ALI20230516BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20230516BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230516BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230516BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230516BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20230516BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20230516BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F220/28
C08F220/00
C08F2/50
B33Y70/00
B33Y10/00
B33Y80/00
B29C64/264
B29C64/106
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018241327
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020100107
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390026435
【氏名又は名称】岡本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 博明
(72)【発明者】
【氏名】中塚 雅郎
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-048312(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107312136(CN,A)
【文献】特表2013-514213(JP,A)
【文献】特開2016-196135(JP,A)
【文献】特開平08-059759(JP,A)
【文献】特開2018-154717(JP,A)
【文献】特開2017-052177(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106749987(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
C08F 2/50
C08F 220/00-220/70
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ラジカル重合性化合物として、
(A1)ジオキサン(メタ)アクリレートのラジカル重合性化合物と、
(A2)2官能ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートのラジカル重合性化合物と、
(A3)2官能ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートのラジカル重合性化合物と、
(A4)前記(A1)、前記(A2)及び前記(A3)以外のラジカル重合性化合物と、
(B)光重合開始剤と、
(C)増感剤と
を少なくとも含む光学的立体造形用組成物であって、
前記(A)ラジカル重合性化合物中に、
前記(A1)のラジカル重合性化合物が2~40質量%、
前記(A2)のラジカル重合性化合物が5~40質量%、
前記(A3)のラジカル重合性化合物が5~40質量%、
前記(A4)のラジカル重合性化合物が20~87質量であり、
前記(A)ラジカル重合性化合物100重量部に対して
前記(B)の光重合開始剤が0.1~5質量
前記(C)の増感剤が0.1~5質量である、光学的立体造形用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の光学的立体造形用組成物に、活性エネルギー線を照射して硬化させる工程を含む、立体造形物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の光学的立体造形用組成物の硬化物を含む立体造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的立体造形用組成物、並びに立体造形物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3次元CADデータに基づいて、光硬化性樹脂を紫外線レーザーの走査により硬化させて形成した硬化層を積層することによって、立体造形物を作製する光学的立体造形技術が着目されている。光学的立体造形技術(以下、「光学的立体造形」を「光造形」とも称する。)によれば、金型や鋳型を用意せずに、簡便に素早く試作品を作製することができるため、製品開発の設計から生産までに要する時間とコストを削減することができる。光造形技術は、3次元CADが急速に普及したことに伴い、自動車部品や、電気機器、医療機器など、多岐にわたる産業分野で採用されてきた。
【0003】
光学的立体造形技術の適用分野の拡大により、光硬化性樹脂に要求される性能も高まっている。特に、硬化速度が速く、硬化時の寸法安定性や寸法精度に優れ、曲げなどの外部応力が加えられても破損しにくい、靱性や耐久性などの機械特性及び耐熱性に優れた立体造形物を形成できる光硬化性樹脂が求められている。例えば、光硬化性樹脂の原料として、ポリグリセリンアルキレンオキサイド付加物(付加モル数50~200)の(メタ)アクリレートを含有させることにより、活性エネルギー線を照射してコーティング塗膜を作成した際、基材フィルムの反りや塗膜のひび割れを発生させることのない光硬化性樹脂を得たことが記載されている(特許文献1)。
【0004】
また、立体造形技術の進展に伴い、例えばエンジン部分に用いられる立体造形物等の、より高い耐熱性を必要とする用途へ適用できる光硬化性樹脂が求められており、例えば、特定のカチオン重合性有機物質や、オキセタニル基を2個有する特定の化合物を配合した組成物が提案されている(特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-260917号公報
【文献】特開平11-228804号公報
【文献】特開2008-260812号公報
【文献】特開2013-023574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光造形で製造された商用造形物は、複雑な形状を有している場合が多く、力を加えたり、曲げたり、熱が加わったりする用途に適応しなければならない。しかしながら、一般に、立体造形物の製造においては、光造形用組成物に紫外線レーザーを走査して形成した厚さ約20~100ミクロン程度の薄い硬化膜層を何層も重ねて立体造形物を製造するが、このとき、薄い硬化膜層同士が相互に密着しないと立体造形物の強度に影響する場合がある。さらに、従来の光造形用組成物は、製造途中で立体造形物が反って紫外線レーザー走査機に引っかかる場合があるという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載されているように、立体造形物の耐熱性を向上させるために、組成物を光照射によって硬化させた後にさらに紫外線照射処理や加熱処理が一般的に施されているが、このような紫外線照射処理を行っても、まだ満足する強度(例えば、衝撃を受けたとき、落下したとき、割れ等の発生を防ぐ強度)は提供されていない。
【0008】
さらに、特許文献2に記載されているように、立体造形物の耐熱性を向上させるために、組成物を光照射によって硬化させた後にさらに、例えば60~250℃で加熱させることが一般的に行われているが、このように加熱処理を行うと、工程が増えるため作業効率が悪くなるおそれがあった。
【0009】
そこで本発明は、上記の課題に鑑み、より短時間で光造形(光硬化)が完了し、光造形後に紫外線照射処理を施すことで、優れた強度(例えば、衝撃を受けたとき、落下したとき、割れ等の発生を防ぐ強度、繰り返しの折り曲げに耐えられる強度)を有する立体造形物が得られる、非水溶性のラジカル重合性成分からなる光学的立体造形用組成物、その立体造形物、及び立体造形物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、その一態様によれば、光学的立体造形用組成物であって、この光学的立体造形用組成物は、(A)ラジカル重合性化合物として、(A1)ジオキサン(メタ)アクリレートのラジカル重合性化合物と、(A2)2官能ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートのラジカル重合性化合物と、(A3)2官能ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートのラジカル重合性化合物と、(A4)前記(A1)、前記(A2)及び前記(A3)以外のラジカル重合性化合物と、(B)光重合開始剤と、(C)増感剤とを少なくとも含み、前記(A)ラジカル重合性化合物中に、前記(A1)のラジカル重合性化合物が2~40質量%、前記(A2)のラジカル重合性化合物が5~40質量%、前記(A3)のラジカル重合性化合物が5~40質量%、前記(A4)のラジカル重合性化合物が20~87質量であり、前記(A)ラジカル重合性化合物100重量部に対して、前記(B)の光重合開始剤が0.1~5質量、前記(C)の増感剤が0.1~5質量である。
【0011】
本発明は、また別の態様として、立体造形物の製造方法であって、上述した光学的立体造形用組成物に、活性エネルギー線を照射して硬化させる工程を少なくとも含む。
【0012】
本発明は、更に別の態様として、立体造形物であって、上述した光学的立体造形用組成物の硬化物を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、立体造形物を製造する際の光硬化時間を短縮することができ、また、光硬化後に紫外線照射処理を施すことで、優れた強度(例えば、衝撃を受けたとき、若しくは落下したとき、割れ等の発生を防ぐ強度、及び繰り返しの折り曲げに耐えられる柔軟性がある強度)の立体造形物を製造することが可能な、光学的立体造形用組成物を提供することができる。また、この光学的立体造形用組成物を用いれば、立体造形物の製造過程において硬化層膜が相互に密着するため反り変形が小さくなり、さらに、層間の接着が良いので強度(例えば、曲げ強度、引張り強度、曲げ弾性率、繰り返し曲げ強度等)が高い立体造形物を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る光学的立体造形用組成物、その立体造形物、及び立体造形物の製造方法の一実施の形態について説明するが、本発明の範囲は、この形態に限定されるものではない。
【0015】
本実施の形態の光学的立体造形用組成物は、以下に詳細を後述する成分(A)~(C)を少なくとも含有し、必要に応じてその他の成分をさらに含有する。
【0016】
成分(A)は、ラジカル重合性化合物であり、更に、以下の成分(A1)~(A4)の4つの各成分を含むものである。成分(A1)は、メタクリル基及び/又はアクリル基を有するジオキサン(メタ)アクリレートである。成分(A2)は、メタクリル基及び/又はアクリル基を有する2官能ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートである。成分(A3)は、メタクリル基及び/又はアクリル基を有する2官能ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートである。成分(A4)は、上記の成分(A1)、(A2)及び(A3)以外のラジカル重合性化合物である。光学的立体造形用組成物に、成分(A1)、成分(A2)、及び成分(A3)のラジカル重合性化合物を加えることによって、機械的強度及び柔軟性を付与することができ、引張り強度の強い破断しにくい硬化物が得られる。
【0017】
成分(A1)のメタクリル基及び/又はアクリル基を有するジオキサン(メタ)アクリレートの具体例としては、ジオキサングリコール(メタ)アクリレート、メタクリル酸(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル等が挙げられる。
【0018】
成分(A1)のメタクリル基及び/又はアクリル基を有するジオキサン(メタ)アクリレートは、公知の方法で合成できる他、市販のものを用いることができる。例えば、日本火薬社製のKAYARDA R-604、新中村化学工業社製のNKエステルA-DOGが挙げられる。
【0019】
成分(A1)のメタクリル基及び/又はアクリル基を有するジオキサン(メタ)アクリレートの含有量は、成分(A)ラジカル重合性化合物中に2~40質量%の範囲であり、好ましくは10~30質量%の範囲である。成分(A1)の含有量が2質量%未満の場合は、硬化が遅くなり、立体造形物とした際に脆くなる。含有量が40質量%を超える場合は、硬化が速くなりすぎて、薄い硬化膜層同士の相互の密着が悪くなり立体造形物の強度が低くなる。
【0020】
成分(A2)のメタクリル基及び/又はアクリル基を有する2官能ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートの具体例としては、ポリエステルポリオールと2官能イソシアネート化合物とヒドロキシ含有単官能(メタ)アクリル酸エステルとの反応物等が挙げられる。2官能イソシアネート化合物としては、具体的には、トリレンジイソシネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられるが、この限りではない。単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート等が挙げられるが、この限りではない。
【0021】
成分(A2)のメタクリル基及び/又はアクリル基を有する2官能ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートは、公知の方法で合成できる他、市販のものを用いることができる。例えば、新中村化学社製のNKオリゴシリーズのUA-122P、U-200PA、UA-4400、トクシキ社製のハイコープAU-2040、日本化薬社製のKAYARAD UXシリーズのUX-3204、UX-4101、UXT-6100、UX-8101、亜細亜工業社製のRUA-074等が挙げられる。
【0022】
成分(A2)のメタクリル基及び/又はアクリル基を有する2官能ポリエステル系ウレ
タン(メタ)アクリレートの含有量は、成分(A)ラジカル重合性化合物中に5~40質量%の範囲であり、好ましくは10~30質量%の範囲である。成分(A2)の含有量が5質量%未満の場合は、柔軟性と強靭性(破断強度)が不十分となる。含有量が40質量%を超える場合は、立体造形物とした際に引張り強さがなくなる。
【0023】
成分(A3)のメタクリル基及び/又はアクリル基を有する2官能ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートの具体例としては、ポリエーテルポリオールと2官能イソシアネート化合物とヒドロキシ含有単官能(メタ)アクリル酸エステルとの反応物等が挙げられる。2官能イソシアネート化合物としては、具体的には、トリレンジイソシネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられるが、この限りではない。単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート等が挙げられるが、この限りではない。
【0024】
成分(A3)のメタクリル基及び/又はアクリル基を有する2官能ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートは、公知の方法で合成できる他、市販のものを用いることができる。例えば、新中村化学社製のUA-160TM、UA-290TM、UA-4200、トクシキ社製のハイコープAU-2090、日本化薬社製のUX-0930、UXF-4002、UX-6101、亜細亜工業社製のSUA-008、SUA-023、ケーエスエム社製のKUA-PEA2I、KUA-PEB2I、KUA-PE2CI等が挙げられる。
【0025】
成分(A3)のメタクリル基及び/又はアクリル基を有する2官能ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、成分(A)ラジカル重合性化合物中に5~40質量%の範囲であり、好ましくは10~30質量%の範囲である。成分(A3)の含有量が5%未満の場合は、ゴム弾性と引張り強度が不十分となる。含有量が40%を超える場合は、立体造形物とした際に柔らかすぎてしまう。
【0026】
成分(A4)のラジカル重合性化合物は、上記の成分(A1)、(A2)及び(A3)以外のラジカル重合性化合物であり、メタクリル基及び/又はアクリル基を有する。この成分(A4)のラジカル重合性化合物の含有量は、成分(A)ラジカル重合性化合物中に20~87質量%の範囲であり、好ましくは20~70質量%の範囲である。
【0027】
成分(A4)のラジカル重合性化合物の単官能モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリロイルモルホリン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)クリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレートと無水リン酸の反応物、2-ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレートのヘキサリド付加重合物と無水リン酸の反応生成物、アクリルアミド、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソボニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等を挙げる
ことができる。
【0028】
成分(A4)のラジカル重合性化合物の2官能モノマーの具体例としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(3)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(10)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(30)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(4)水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(30)水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性(10)水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸付加物、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート、3ーヒドロキシー2,2ージメチルプロピルー3ーヒドロキシー2,2ージメチルプロピオナートの6ーヘキサノリド付加重合物(重合度1~7)と(メタ)アクリル酸のエステル化合物、さらに変性アクリル樹脂(メタ)アクリレート、等を挙げることができる。
【0029】
成分(A4)のラジカル重合性化合物の多官能モノマーの具体例としては、エトキシ化(9)グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(20)グリセリントリ(メタ)アクリレート、ポリエーテル系3官能(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレート、ポリエーテル系ウレタン3官能(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、グリセリンジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、エポキシ化大豆油アクリレート、ノボラック型エポキシアクリレート、多官能芳香族ウレタン(メタ)アクリレート、多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、多官能ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート、多官能ポリエステル系(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル・アクリル酸付加物、さらに変性アクリル樹脂(メタ)アクリレート、等を挙げることができる。
【0030】
成分(A4)のラジカル重合性化合物は、公知の方法で合成できる他、市販のものを用いることができる。例えば、単官能モノマーは東亜合成社製のアロニックスM-111等が挙げられ、2官能モノマーは共栄社化学社製のライトエステル4EG、ライトアクリレート4EG-A、日本化薬社製のKAYARADシリーズのHX-220、HX-620等が挙げられ、多官能モノマーは東亜合成社製のアロニックスM-306等が挙げられる。変性アクリル樹脂(メタ)アクリレートは大阪有機化学工業社製のSUBARU-501、荒川化学工業社製のビームセット243NS、日立化成社製のヒタロイド7975、大成ファインケミカル社製のアクリット8KX-078、クラレ社製のクラプレンUC203が挙げられる。
【0031】
成分(B)は、光重合開始剤であり、活性エネルギー線の照射によってラジカル重合性化合物のラジカル反応を開始できる化合物であれば特に限定しない。光重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤またはカチオン重合開始剤を用いることができる。
【0032】
ラジカル重合開始剤の具体例としては、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル=フェニル=ケトン、4-(4-メチルフェニルチオ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、フェニルグリオキシリックアシドメチルエステル、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(モルホリニル)フェニル]-1-ブタン、2,4,6-トリメチルベンゾイルージフェニルーホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、2-イソプロピルチオキサントン、2-エチル-9,10アンスラキノン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(o-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(o-アセチルオキシム)、カンファーキノン、ベンゾフェノン、2,4-ジエチルチオキサントン-9-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、エチル=4-(ジメチルアミノ)-ベンゾエート、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]-フェニルメタン、エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート、メチル=o-ベンゾイルベンゾエート、4-メチルベンゾフェノン、カンファーキノン、テトラブチルアンモニウム=ブチルトリフェニルボラート、テトラブチルアンモニウムブチルトリナフチルボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、1,5-ディアザビシクロ[4,3,0]ノンエン-5-テトラフェニルボレート等を挙げることができる。ラジカル重合開始剤は、1種単独、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
ラジカル重合開始剤は、公知の方法で合成できる他、市販のものを用いることができる。例えば、BASF社製IRGACUREシリーズ、DAROCURシリーズ、LUCIRINシリーズ、ソート社製のSB-PIシリーズ、IGM-RESINS社製のESACUREシリーズ、DKSHジャパン社製のLUNACUREシリーズ、ADEKA社製アデカオプトマーシリーズ、昭和電工社製有機ホウ素化合物シリーズ、北興化学工業社製有機ホウ素化合物シリーズ等がある。
【0034】
カチオン重合開始剤は、アンチモン非含有カチオン重合開始剤が好ましい。劇物であるアンチモン(Sb)を含まないため、人体及び環境に対して安全性が高い。また、立体造形物の製造過程で生じる廃液の処理の負担を低減することができる。アンチモン非含有カチオン重合開始剤としては、スルホニウム化合物又はビス(アルキルフェニル)ヨードニウム化合物が挙げられる。
【0035】
アンチモン非含有カチオン重合開始剤の具体例としては、ビス[4-n-アルキル(C10~13)フェニル]ヨードニウム=ヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミド、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-n-アルキル(c10~13)フェニル]ヨードニウム=テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(ここで、c10~13はn-アルキル基の炭素数)、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム=ヘキサフルオロホスフェート、及び4,4-ビス(ジフェニルスルホニル)フェニルスルフィド-bis-ヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウム=ヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウム=テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリアリールスルホニウム=特殊リン系アニオン塩、ジフェニル(4-メトキシフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル(4-メトキシフェニル)スルホニウム=テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル(4-メトキシフェニル)スルホニウム=特殊リン系アニオン塩、4-メチルフェニルジフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスフェート、4-メチルフェニルジフェニルスルホニウム=テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-メチルフェニルジフェニルスルホニウム=特殊リン系アニオン塩、トリス(4-メチルフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスフェート、トリス(4-メチルフェニル)スルホニウム=テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(4-メチルフェニル)スルホニウム=特殊リン系アニオン塩等を挙げることができる。
【0036】
カチオン重合開始剤は、市販のものを用いることができる。例えば、三新化学工業社製のサンエイドSIシリーズ、和光純薬社製のWPIシリーズ、アデカ社製のSPシリーズ、サンアプロ社製のCPIシリーズ等を挙げることができる。
【0037】
成分(B)の光重合開始剤の含有量は、ラジカル重合開始剤であってもカチオン重合開始剤であっても、成分(A)ラジカル重合性化合物100重量部に対して0.1~5.0質量の範囲であり、好ましくは0.5~5.0質量の範囲である。0.1質量未満の場合は、光学的立体造形用組成物のラジカル重合反応が遅くなる。含有量が5.0質量を超える場合は、光学的立体造形用組成物の硬化特性が低下する。
【0038】
成分(C)は、増感剤であり、光学的立体造形用組成物の光感度を増大させることができる化合物(好ましくは300~500nmの波長を吸収する化合物)であれば、特に限定されないが、多官能チオール化合物が好ましい。
【0039】
多官能チオール化合物の具体例としては、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。
【0040】
成分(C)の増感剤の多官能チオール化合物は、公知の方法で合成できる他、市販のものを用いることができ、例えば、三菱化学社製のQX40、アデカ社製のアデカハードナーEH-317、SC有機化学社製のPEMP、TBMPIC、TMPMP、昭和電工社製のカレンズMTシリーズ等が挙げられる。
【0041】
多官チオール化合物以外の増感剤の具体例としては、ベンゾフェノン等が挙げられる。また、アクリジン系として、9-フェニルアクリジン、9-(P-メチルフェニル)アクリジン、9-(o-メチルフェニル)アクリジン、9-(o-クロロフェニル)アクリジン、9-(o-フロロフェニル)アクリジン、又はクマリン系として、7,7-(ジエチルアミノ)(3,3-カルボニルビスクマリン)、3-ベンゾイル-7-ジエチルアミノクマリン、7,7-ビス(メトキシ)(3,3-カルボニルビスクマリン)等が挙げられる。また、アントラセン系として、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ビス(オクタノイルオキシ)アントラセン、2,4-ジエチルチオキサントン、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル、クルクミン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、2-エチルアンスラキノン、2-イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。更には、ナフタレン誘導体系としては、1-ナフトール、1-メトキシナフタレン、1-エトキシナフタレン、1-n-プロポキシナフタレン、1-i-プロポキシナフタレン、1-n-ブトキシナフタレン、1-n-ヘキシルオキシナフタレン、1-ベンジルオキシナフタレン、1-アリルオキシナフタレン、1-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、1-(2-メトキシエトキシ)ナフタレン、1-(2-エトキシエトキシ)ナフタレン、2-ナフトール、2-メトキシナフタレン、2-エトキシナフタレン、2-n-プロポキシナフタレン、2-2-プロポキシナフタレン、2-n-ブトキシナフタレン、2-n-ヘキシルオキシナフタレン、2-ベンジルオキシナフタレン、2-アリルオキシナフタレン、2-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、2-(2-メトキシエトキシ)ナフタレン、2-(2-エトキシエトキシ)ナフタレン、1,4-ジエトキシナフタレン等が挙げられる。
【0042】
成分(C)の増感剤の含有量は、成分(A)ラジカル重合性化合物100重量部に対して0.1~5.0質量の範囲であり、好ましくは3.0~5.0質量の範囲である。0.1質量未満の場合は、光硬化しなかったり、極端に感度が低くなったりする。含有量が5.0質量を超える場合は、局所的に感度が低下したり、表面の部分でしか硬化しなかったりする。光学的立体造形用組成物に成分(C)の増感剤を加えることで、光硬化の反応をより促進し、組成物中の全ての重合成分を硬化(結合)させて、立体造形物とした際に十分な機械的強度及び耐熱性を得ることが可能となる。
【0043】
光学的立体造形用組成物は、その他の成分として、成分(C)の増感剤を溶解又は分散させるための溶剤、硬化促進剤、増感剤の増感助剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、着色剤(染料、有機顔料、無機顔料)、発光剤、蓄光剤粒子、有機系ポリマー粒子、セルロース系粒子、金属粒子、導電性フィラー、光カチオン重合性硬化成分、生分解性プラスチック、バイオマスプラスチック、デンプン、ジアリルフタレート系ポリマー、ジアリルシクロアルカン系ポリマー等を、光学的立体造形用組成物の特性に悪影響を与えない範囲内において含有することができる。その他の成分の含有量は、特に限定されず、当業者が適宜調整することができる。
【0044】
本実施の形態の立体造形物は、上述した光学的立体造形用組成物の、硬化物からなるものである。立体造形物は、幅広い分野に応用することができる。用途の具体例としては、特に限定されないが、精密部品、電気・電子部品、建築構造物、自動車用部品、金型、母型、ギブスなど医療用固定具、歯を固定するマウスピ-ス、歯科医療用プラスチック造形物、医療用プラスチック器具、自動車部品等を挙げることができる。
【0045】
本実施の形態の立体造形物を製造する方法は、上述した光学的立体造形用組成物に、活性エネルギー線を照射して硬化させる工程を少なくとも含み、従来の光学的立体造形方法及び光造形装置を使用して行うことができる。
【0046】
例えば、(a)3次元CADで入力された形状データを幾層もの薄い断面体にスライスして作成された等高線データに基づき、光学的立体造形用組成物の表面に活性エネルギー線を選択的に照射して硬化層を形成する工程、(b)硬化層上に光学的立体造形用組成物をさらに供給する工程、(c)前記工程(a)と同様に活性エネルギー線を選択的に照射して前述の硬化層と連続した硬化層を新たに形成する積層操作を行う工程、及び(d)この積層操作を繰り返し行う工程を含むことにより、目的とする立体造形物を提供することができる。単層または積層された硬化層の厚さは、例えば20~200μmとすることができる。硬化層の厚さは、小さくするほど造形精度を高められるが、製造に必要な時間及びコストは増えるため、これらのバランスを考慮して適宜調整することができる。
【0047】
光学的立体造形用組成物の硬化物からなる立体造形物の製造に使用する光造形装置としては、特に限定されないが、例えば、ATOMm-4000(シーメット社製)、DigitalWaX(登録商標)020X(シーフォース社製)及びACCULAS(登録商標)BA-85S(ディーメック社製)等の三次元積層造形装置を挙げることができる。
【0048】
光学的立体造形用組成物に照射する活性エネルギー線は、例えば紫外線、可視光線、放射線、X線、又は電子線等であり、好ましくは紫外線又は可視光線である。紫外線又は可視光線の波長は、好ましくは300~500nmである。紫外線又は可視光線の光源としては、半導体励起固体レーザー、カーボンアーク灯、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、白色LED等が挙げられるが、これらに限定されない。特に、造形精度及び硬化性等の観点からレーザーを使用することが好ましい。
【0049】
積層操作の終了後に、得られた立体造形物及び光造形装置に付着した未硬化の光学的立体造形用組成物を除去するため、立体造形物及び光造形装置を洗浄することが好ましい。洗浄には、水、又は水に界面活性剤、殺菌剤、防腐剤及び/又はアルコール等を混合したものを使用することができる。洗浄後には、必要に応じて紫外線又は可視光線等の活性エネルギー線の照射又は加熱によりポストキュアを行うことができる。
【0050】
立体造形物は、上述の光学的立体造形用組成物の硬化物を含む立体造形物であり、好ましくは、光学的立体造形用組成物を硬化して形成される硬化層を積層してなる立体造形物である。立体造形物は、例えば、上述の立体造形物の製造方法により製造される。立体造形物は、硬化層膜が相互に密着するために反り変形が小さくなり、さらに、層間の接着が良いので強度(例えば、曲げ強度、引張り強度、曲げ弾性率、繰り返し曲げ強度等)が高い立体造形物を得ることが可能となる。
【実施例
【0051】
以下に実施例、参考例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
実施例1~6及び比較例1~]光学的立体造形用組成物の調整
実施例1~6及び比較例1~の光学的立体造形用組成物を、以下の手順で調整した。表1に示す組成の質量部に従って全ての成分を、撹拌容器に仕込み、20~40℃で2時間撹拌して液体組成物を得た。この液体組成物を、10ミクロンフイルターバッグ(PO-10-PO3A-503、Xinxiang D.King industry社製)でろ過して異物を除去し、一晩放置後に脱気して透明な液体組成物を得た。なお、調整した光学的立体造形用組成物の各々を数ml取って台の上に配置し、イソプロピルアルコールをかけると、いずれも容易に洗い流すことができた。
【0053】
【表1】
【0054】
表1中の各成分の詳細を以下に示す。
・KAYARAD R-604:成分(A1)のジオキサングリコールジアクリレート、粘度200~400mPa・s(25℃)、酸価<1.0、日本化薬社製
・NKオリゴUA-122P:成分(A2)のポリエステル系ウレタンアクリレート、粘度45000mPa・s(40℃)、分子量1100、新中村化学社製
・NKオリゴUA-160TM:成分(A3)のポリエーテル系ウレタンアクリレート、粘度2500mPa・s(40℃)、分子量1600、新中村化学社製
・アロニックスM-306:成分(A4)のラジカル重合性化合物であるペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレートの混合物(トリ体65~70%)、粘度400~650mPa・s/25℃、東亜合成社製
・ライトアクリレート4EG-A:成分(A4)のラジカル重合性化合物であるPEG400#ジアクリレート(エチレンオイサイド4モル付加物)、粘度10~12mPa・s/25℃、共栄社化学社製
・イルガキュアー907:成分(B)の光重合開始剤である2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、BASF社製
・カレンズMTNR1:成分(C)の増感剤である1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、昭和電工社製
【0055】
[評価サンプルAの製作]
光学的立体造形用組成物の硬化時間を評価するために、以下の手順でサンプルを製作した。実施例1の光学的立体造形用組成物を手製のポリエチレン製長方形型(幅約10mm×長さ100mm×、深さ5mm)に1mm液膜になるように流し込み、3kw高圧水銀等(波長365nm、距離1m)で、5秒間、10秒間、15秒間、20秒間、25秒間、30秒間、各々照射し、評価サンプルAを得た。実施例2~12及び比較例1~4の光学的立体造形用組成物についても、同様にして評価サンプルAを得た。
【0056】
[評価サンプルBの製作]
光学的立体造形用組成物の硬化時間を評価するために、以下の手順でサンプルを製作した。実施例1の光学的立体造形用組成物を手製のポリエチレン製長方形型(幅約10mm×長さ100mm×、深さ5mm)に1mm液膜になるように流し込み、3kw高圧水銀灯(波長365nm、距離1m)で20秒間照射し、これを合計4回繰り返して厚さ約4mmの平面板(幅約10mm×長さ100mm)を作成した。さらに平面板を30分間再照射し、光学的立体造形物である評価サンプルBを得た。実施例2~12及び比較例1~4の光学的立体造形用組成物についても、同様にして評価サンプルBを得た。
【0057】
[評価方法]
1.光学的立体造形用組成物の硬化時間の評価
評価サンプルAを用いて、照謝時間の短いサンプルからその表面状態を観察し、表面のタックが無い評価サンプルAに係る照射時間を硬化時間とした。なお、「表面のタックの有無」は、評価サンプルAをオーブンに入れて35℃で30分間処理し、室温(25℃)まで冷却した後、評価サンプルAの表面にポリエステルフイルムを手で押し当て、ポリエステルフイルムが簡単に剥がれなければタック有りとし、剥がれればタック無しとして判断した。評価サンプルAの硬化時間を表2に示した。
【0058】
2.光学的立体造形物の層(側面)観察
評価サンプルBを用いて、平面板の層(側面)を日本電子JSM-5600型走査電子顕微鏡(加速電圧7kv、倍率200倍)で観察した。評価の基準は、層間の隙間が存在する場合は(「×」)、層間の隙間がない場合は(「〇」)、とした。結果を表2に示した。
【0059】
3.光学的立体造形物の反り変形観察
評価サンプルBの平面板を平台に置いて、その端部が平台から浮いた距離を測定する。判定の基準は、浮いた距離2mm以上の場合は(「×」)、浮いた距離2mm以下で浮いている場合は(「△」)、浮いた距離0mmつまり浮いていない場合は(「〇」)、とした。結果を表2に示した。
【0060】
4.引張試験
評価サンプルBの平面板について、ISO527-1に準拠して、以下の測定条件で引張り強度及び伸度を測定した。伸度は、破断時の最大の伸び率として測定した。結果を表2に示した。
測定装置:インストロン社製3366型万能試験機
引張速度(クロスヘッド速度):5mm/分
測定環境:温度25℃、湿度45%RH
標点間距離:80mm
【0061】
5.3点曲げ試験
評価サンプルBの平面板の3点曲げ試験を、ISO527-1に準拠して、以下の測定条件で行い、曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。結果を表2に示した。
測定装置:インストロン社製3366型万能試験機
試験条件:3点曲げ試験治具 圧子半径5mm
支点間距離64mm
負荷速度(クロスヘッド速度)2mm/分
測定環境:温度25℃、湿度45%RH
【0062】
6.裸落下試験
評価サンプルBについて、以下の測定条件で裸落下試験を行い、割れの有無を目視で観察し、落下割れ観察をした。結果を表2に示した。
落下床面:大理石床タイル
落下高さ:3m
サンプルの重さ:14.5g
サンプルの落下角度:大理石床タイル面に対して60度
判定の基準は、サンプル5つを落下させて、ヒビを含めた割れサンプル個数を記録した。
【0063】
7.繰り返し折り曲げ試験
評価サンプルBの端部10mmを万力で挟んで固定した。評価サンプルBの片方の端部をペンチで挟み、往復10回左右に折り曲げた。試験後、折り曲げた部位の外観を目視で観察する。判定の基準は、〇:変化なし、△:白く変色、▲:ひび割れ、×:割れた、とした。
【0064】
上述した1~7の評価、観察、及び試験結果を表2に示した。成分(A)として成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、及び成分(A4)の4つの成分のラジカル重合性化合物を全て用いた実施例1~6の光学的立体造形用組成物は、4~5秒の硬化時間であることから、比較例の硬化時間と変わらないことが分かる。しかし実施例1~6の配合は、反り変形が観察されず、引張り強度、伸度、曲げ強度及び弾性率、そして繰り返し曲げ強度に優れ、落下割れがほとんど観察されなかった。
【0065】
【表2】