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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】スネアドラム用練習パッド
(51)【国際特許分類】
   G10D 13/03 20200101AFI20230516BHJP
   G10D 13/18 20200101ALI20230516BHJP
   G10D 13/20 20200101ALI20230516BHJP
【FI】
G10D13/03
G10D13/18
G10D13/20
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020171007
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022062849
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000195018
【氏名又は名称】星野楽器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】平澤 諭
(72)【発明者】
【氏名】本庄 厚志
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-237877(JP,A)
【文献】特表2008-537169(JP,A)
【文献】特開2015-230362(JP,A)
【文献】特開平11-219168(JP,A)
【文献】特開2004-287356(JP,A)
【文献】米国特許第6239340(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 13/00-13/24
G10H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スネアドラム用練習パッドであって、
パッド本体と、
前記パッド本体に取り付けられた打面部材と、
前記パッド本体内に設けられ、前記打面部材を叩打することでスネアワイヤの疑似音が発生する疑似スネアワイヤ部材とを備え、
前記疑似スネアワイヤ部材は、第1の剛性部材と、前記第1の剛性部材と接触可能に配置される第2の剛性部材とからなり、前記第1の剛性部材と前記第2の剛性部材とが接触及び非接触を繰り返すことで前記スネアワイヤの疑似音を生成するように構成され、
前記打面部材は、前記打面部材と前記疑似スネアワイヤ部材との間に前記パッド本体を介在させずに、前記パッド本体に取り付けられている、スネアドラム用練習パッド。
【請求項2】
請求項1に記載のスネアドラム用練習パッドにおいて、
前記打面部材は、スネアドラムの擬似的な打感を生成するドラムヘッドを含み、
前記スネアドラム用練習パッドは、更に、
前記ドラムヘッドに張力を付与しながら前記打面部材を前記パッド本体に取り付けると共に前記ドラムヘッドの張力を調整可能に構成した張力調整装置を備える、スネアドラム用練習パッド。
【請求項3】
請求項2に記載のスネアドラム用練習パッドにおいて、
前記パッド本体は、開口端を有し、
前記パッド本体における前記打面部材の取付位置には、ボルト孔が形成され、
前記張力調整装置は、前記ボルト孔に挿入されるボルトを備え、
前記打面部材は、前記開口端の外周に嵌め込まれるフープによって、前記パッド本体の開口端に取り付けられ、
前記張力調整装置は、前記ボルト孔に対する前記ボルトの螺合量を調整し、前記パッド本体に対する前記フープの嵌め込み量を変更することで、前記ドラムヘッドの張力を調整するように構成されている、スネアドラム用練習パッド。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のスネアドラム用練習パッドにおいて、
前記ドラムヘッドは、メッシュ素材からなる、スネアドラム用練習パッド。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか一項に記載のスネアドラム用練習パッドにおいて、
前記第1の剛性部材は、板状であり、
前記第1の剛性部材は、前記打面部材と同形状でかつ同じ表面積を有している、スネアドラム用練習パッド。
【請求項6】
請求項5に記載のスネアドラム用練習パッドにおいて、
前記第1の剛性部材は、前記打面部材と前記第2の剛性部材との間に配置されている、スネアドラム用練習パッド。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか一項に記載のスネアドラム用練習パッドにおいて、
前記第2の剛性部材は、線状又は粒状である、スネアドラム用練習パッド。
【請求項8】
請求項1~7のうちいずれか一項に記載のスネアドラム用練習パッドは、更に、
前記疑似スネアワイヤ部材と前記パッド本体の底部との間に配置される下側弾性部材を備える、スネアドラム用練習パッド。
【請求項9】
請求項1~8のうちいずれか一項に記載のスネアドラム用練習パッドは、更に、
前記打面部材と前記疑似スネアワイヤ部材との間に配置される上側弾性部材を備える、スネアドラム用練習パッド。
【請求項10】
スネアドラム用練習パッドであって、
開口端を有するパッド本体と、
前記開口端の外周に嵌め込まれるフープと、
前記フープによって前記開口端に取り付けられる打面部材であって、前記打面部材を叩打することでスネアドラムの擬似的な打感を生成するドラムヘッドを含む打面部材と、
前記パッド本体に設けられ、前記パッド本体の外周に沿って延びるリム部材とを備え、
前記リム部材は、前記フープと別体に設けられている、スネアドラム用練習パッド。
【請求項11】
請求項10に記載のスネアドラム用練習パッドにおいて、
前記リム部材の上面には、カバー部材が取り付けられている、スネアドラム用練習パッド。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のスネアドラム用練習パッドにおいて、
前記ドラムヘッドは、メッシュ素材からなる、スネアドラム用練習パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スネアドラム用練習パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
自室内でのドラムの練習を可能にしたドラム用練習パッドが知られている。ドラム用練習パッドは、アコースティックドラムのように大きな音を鳴らさずに、静かな叩打音でドラムを練習できるように構成されている。このため、練習用パッドには、アコースティックドラムのような打感に加え、静粛性が求められている。特にスネアドラム用の練習パッドでは、打感、静粛性に加えて、スネアワイヤの疑似音を、アコースティックドラムを叩いたときのスネアワイヤの音に近付けることも求められている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示のスネアドラム用練習パッド(以下、スネアパッドと称す)は、木製のパッド本体と、パッド本体の上面に貼り付けられたゴム製の打面シートと、パッド本体の下面に貼り付けられたスポンジ製の保護シートとを備えている。パッド本体内には、打面シートを叩打することでスネアワイヤの疑似音が発生する疑似スネアワイヤ部材が設けられている。
【0004】
パッド本体の下面中央には、四角枠状の溝が形成されている。溝は、断面矩形状である。溝内には、第1金属板及び第2金属板が、固定ボルトを用いて、金属製のペレットと共に固定されている。第1金属板及び第2金属板は、溝とほぼ同形状及び同寸法である。ペレットは、第1金属板と第2金属板との間の隙間に敷き詰められている。疑似スネアワイヤ部材は、第1金属板及び第2金属板と、両金属板間に保持されたペレットとから構成されている。
【0005】
スティックにより打面シートが叩打されると、叩打による衝撃が、パッド本体を通過して疑似スネアワイヤ部材に伝達される。これにより、疑似スネアワイヤ部材では、ペレットが、第1金属板及び第2金属板間で上下に振動して、第1金属板及び第2金属板との衝突を繰り返す。その結果、ペレットと第1及び第2金属板との衝突による音が、スネアワイヤの疑似音として発生する。スネアパッドは、上記のように打面シートを叩打することでスネアワイヤの疑似音が鳴るように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6239340号明細書
【発明の概要】
【0007】
特許文献1に開示のスネアパッドでは、疑似スネアワイヤ部材と打面シートとの間に、スネアパッドの主要部をなすパッド本体が配置されている。この構成では、叩打による衝撃が、打面シートからパッド本体を通過して疑似スネアワイヤ部材に到達するまでに、パッド本体によって吸収され易い。このため、叩打による衝撃は、疑似スネアワイヤ部材に到達するまでに、パッド本体によって弱められてしまう。
【0008】
このため、打面シートを強く叩いた場合には、叩打による衝撃を疑似スネアワイヤ部材に到達させることができ、スネアワイヤの疑似音を鳴らすことができる。しかしながら、打面シートを弱く叩いた場合には、叩打による衝撃を疑似スネアワイヤ部材に到達させることが難しく、スネアワイヤの疑似音を鳴らせないことがある。よって、この文献に開示のスネアパッドでは、打面シートを弱く叩いてスネアワイヤの疑似音を小さな音で鳴らすことが困難である。
【0009】
また、この文献に開示のスネアパッドでは、叩打による衝撃を、パッド本体を通過して疑似スネアワイヤ部材に到達させるため、打面シートに、衝撃を吸収し難い硬めのゴムからなるシートを用いている。しかしながら、硬めのゴムからなるシートを用いると、叩打による衝撃が疑似スネアワイヤ部材に到達し易くなるものの、アコースティックドラムのような打感が得られず、静粛性も確保できない。
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、アコースティックドラムのような打感やスネアワイヤの疑似音を容易に再現でき、静粛性も確保できるスネアドラム用練習パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、スネアドラム用練習パッドであって、パッド本体と、前記パッド本体に取り付けられた打面部材と、前記パッド本体内に設けられ、前記打面部材を叩打することでスネアワイヤの疑似音が発生する疑似スネアワイヤ部材とを備え、前記疑似スネアワイヤ部材は、第1の剛性部材と、前記第1の剛性部材と接触可能に配置される第2の剛性部材とからなり、前記第1の剛性部材と前記第2の剛性部材とが接触及び非接触を繰り返すことで前記スネアワイヤの疑似音を生成するように構成され、前記打面部材は、前記打面部材と前記疑似スネアワイヤ部材との間に前記パッド本体を介在させずに、前記パッド本体に取り付けられていることを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、打面部材と疑似スネアワイヤ部材との間にパッド本体が介在しないため、打面部材を叩打したことによる衝撃は、打面部材から疑似スネアワイヤ部材に到達するまでに、パッド本体によって吸収されない。これにより、叩打による衝撃は、疑似スネアワイヤ部材に到達するまでに、パッド本体によって弱められない。このため、打面部材を弱く叩いた場合であっても、叩打による衝撃を疑似スネアワイヤ部材にまで到達させることができ、スネアワイヤの疑似音を小さな音で鳴らすことができる。よって、叩打の強弱によらず、スネアワイヤの疑似音を容易に再現することができる。また、この構成によれば、叩打による衝撃がパッド本体によって吸収されないため、打面シートに、衝撃を吸収し易い柔らかい材料からなるシートを用いることができる。このため、アコースティックドラムのような打感が得られると共に、静粛性も確保できる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記打面部材は、スネアドラムの擬似的な打感を生成するドラムヘッドを含み、前記スネアドラム用練習パッドは、更に、前記ドラムヘッドに張力を付与しながら前記打面部材を前記パッド本体に取り付けると共に前記ドラムヘッドの張力を調整可能に構成した張力調整装置を備えることを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、打面部材は、張力調整装置によりドラムヘッドに張力が付与された状態で、パッド本体に取り付けられる。このため、ユーザは、ドラムヘッドを叩いたときに、ドラムヘッドの張力による跳ね返りを感じることができる。よって、スネアドラムの擬似的な打感を実現するため、打面部材を叩打したときの感触を、アコースティックドラムを叩いたときの感触に近付けることができる。また、張力調整装置を用いることで、パッド本体に取り付けられたドラムヘッドの張力を調整することもできる。これにより、打面部材を叩いたときの跳ね返りの強さを変更でき、打面部材を叩いたときの感触を調整することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記パッド本体は、開口端を有し、前記パッド本体における前記打面部材の取付位置には、ボルト孔が形成され、前記張力調整装置は、前記ボルト孔に挿入されるボルトを備え、前記打面部材は、前記パッド本体の開口端の外周に嵌め込まれるフープによって、前記パッド本体の開口端に取り付けられ、前記張力調整装置は、前記ボルト孔に対する前記ボルトの螺合量を調整し、前記パッド本体に対する前記フープの嵌め込み量を変更することで、前記ドラムヘッドの張力を調整するように構成されていることを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、パッド本体のボルト孔に挿入されたボルトを締め付けたり緩めたりすることで、ドラムヘッドの張力が変更される。このため、ユーザは、アコースティックドラムのチューニング操作と同じように、ドラムヘッドの張力を調整することができる。よって、アコースティックドラムと同じようにスネアドラム用練習パッドを取り扱うことができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、前記ドラムヘッドは、メッシュ素材からなることを要旨とする。
この構成によれば、柔軟性や吸音性に優れたメッシュ素材をドラムヘッドに採用することで、打面部材を叩打したことによる衝撃音が効果的に吸収される。これにより、スネアドラム用練習パッドの静粛性が向上し、商品価値を高めることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のうちいずれか一項に記載の発明において、前記第1の剛性部材は、板状であり、前記第1の剛性部材は、前記打面部材と同形状でかつ同じ表面積を有していることを要旨とする。
【0019】
この構成によれば、第1の剛性部材が打面部材と同形状でかつ同じ表面積を有する板状であるため、打面部材の直下に、打面部材の全面に亘って疑似スネアワイヤ部材を配置することができる。このため、打面部材の中央付近を叩打しても、打面部材の外周縁付近を叩打しても、叩打による衝撃を、打面部材から疑似スネアワイヤ部材にまで確実に到達させることができる。よって、打面部材を叩打する場所によらず、スネアワイヤの疑似音を容易に再現することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記第1の剛性部材は、前記打面部材と前記第2の剛性部材との間に配置されていることを要旨とする。
この構成によれば、打面部材を叩打したときに生じる衝撃を、第1の剛性部材により面で受けてから、第2の剛性部材に伝達することができる。これにより、打面部材を弱く叩いた場合であっても、叩打による衝撃を疑似スネアワイヤ部材にまで到達させることが容易となる。よって、スネアワイヤの疑似音を小さな音で鳴らすことが容易となる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1~6のうちいずれか一項に記載の発明において、前記第2の剛性部材は、線状又は粒状であることを要旨とする。
この構成によれば、第2の剛性部材が線状又は粒状であるため、第1の剛性部材と第2の剛性部材とが接触したことによる音を、スネアワイヤの音に近付けることができる。よって、打面部材を叩いたときに生じるスネアワイヤの疑似音を、アコースティックドラムを叩いたときのスネアワイヤの音に近付けることができる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項1~7のうちいずれか一項に記載の発明において、前記疑似スネアワイヤ部材と前記パッド本体の底部との間に配置される下側弾性部材を備えることを要旨とする。
【0023】
この構成によれば、打面部材を叩打したことによる衝撃によって、第2の剛性部材が第1の剛性部材から離間する。第2の剛性部材は、第1の剛性部材から離間した後、下側弾性部材の弾性力により跳ね返されることによって、第1の剛性部材と衝突する。こうして、第2の剛性部材は、第1の剛性部材から離間したり第1の剛性部材と衝突したりして、第1の剛性部材との接触及び非接触を繰り返す。このとき、下側弾性部材が弾性力を有することによって、第2の剛性部材と第1の剛性部材との衝突が促進される。このため、スネアワイヤの疑似音を明瞭な音で鳴らすことができる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項1~8のうちいずれか一項に記載の発明において、前記打面部材と前記疑似スネアワイヤ部材との間に配置される上側弾性部材を備えることを要旨とする。
【0025】
この構成によれば、打面部材と疑似スネアワイヤ部材との間に配置される上側弾性部材によって、打面部材を叩打したことによる衝撃が疑似スネアワイヤ部に直接加えられることを防止できる。これにより、打面部材の叩打音が効果的に消音される。よって、スネアドラム用練習パッドの静粛性が向上し、商品価値を高めることができる。
【0026】
請求項10に記載の発明は、スネアドラム用練習パッドであって、開口端を有するパッド本体と、前記開口端の外周に嵌め込まれるフープと、前記フープによって前記開口端に取り付けられる打面部材であって、前記打面部材を叩打することでスネアドラムの擬似的な打感を生成するドラムヘッドを含む打面部材と、前記パッド本体に設けられ、前記パッド本体の外周に沿って延びるリム部材とを備え、前記リム部材は、前記フープと別体に設けられていることを要旨とする。
【0027】
通常のスネアドラムには、フープと一体型のリム部材が採用されている。この場合、ドラムヘッドの張力を調整するため、パッド本体の開口端に対するフープの嵌め込み量が変更されると、フープの高さ位置と共にリム部材の高さ位置も変更される。一方で、スネアドラム用練習パッドには、静粛性向上のため、柔らかい素材からなるドラムヘッドが採用されている。柔らかいドラムヘッドは、硬い素材からなるドラムヘッドよりも伸び易く、ドラムヘッドの張力が低下し易い。このため、柔らかいドラムヘッドを採用した場合、硬いドラムヘッドを採用した場合よりも、ドラムヘッドの張力を高くするためにフープの嵌め込み量を調整するときの調整量が大きい。
【0028】
また、スネアドラム用練習パッドを用いて、ドラムヘッドとリム部材とを同時に叩打するオープンリムショットを練習することがある。例えば、フープと一体型のリム部材をスネアドラム用練習パッドに採用した場合、ドラムヘッドの張力を変更するためにフープの嵌め込み量を調整すると、フープの高さ位置と共にリム部材の高さ位置が変更されると共に、打面の高さ位置に対するリム部材の高さ位置も変更される。また、スネアドラム用練習パッドに柔らかい素材のドラムヘッドを採用した場合、フープの嵌め込み量を調整するときの調整量が大きいため、打面の高さ位置に対するリム部材の高さ位置の変更量が大きくなりやすい。このため、オープンリムショットの感覚にずれが生じ、違和感が生じる。
【0029】
この点、本発明によれば、リム部材がフープと別体に設けられている。この構成によれば、フープの高さ位置とは関係無く、リム部材の高さ位置を設定することができる。このため、ドラムヘッドの張力を変更するためにフープの嵌め込み量を調整する場合、リム部材の高さ位置を固定したまま、フープの高さ位置のみを変更することができる。よって、打面の高さ位置に対するリム部材の高さ位置が固定されるため、オープンリムショットの感覚にずれが生じなくなり、違和感が生じなくなる。従って、柔らかい素材のドラムヘッドをスネアドラム用練習パッドに採用した場合であっても、打面の高さ位置に対するリム部材の高さ位置が固定されるため、違和感なくオープンリムショットを練習することができる。
【0030】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発明において、前記リム部材の上面には、カバー部材が取り付けられていることを要旨とする。
この構成によれば、スティックにより叩打されるリム部材の上面にカバー部材を設けたことで、スティックがリム部材に直接当たらなくなる。これにより、スネアドラム用練習パッドの静粛性が向上し、商品価値をより一層高めることができる。
【0031】
請求項12に記載の発明は、請求項10又は11に記載の発明において、前記ドラムヘッドは、メッシュ素材からなることを要旨とする。
この構成によれば、請求項4に記載の発明と同等の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、アコースティックドラムのような打感やスネアワイヤの疑似音を容易に再現でき、静粛性も確保できるスネアドラム用練習パッドを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態に係るスネアパッドを専用のドラムスタンドに取り付けた状態を示す斜視図。
図2】スネアパッドの斜視図。
図3】スネアパッドの上面図。
図4】スネアパッドの分解斜視図。
図5】パッド本体の分解斜視図。
図6図3の6-6線に沿った断面図。
図7】スネアパッドのボルト付近を拡大して示す部分断面図。
図8】(a)~(c)はスネアパッドの作用を説明するための部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明のスネアドラム用練習パッド(以下、スネアパッドと称す)を具体化した一実施形態について図1図8(c)を参照して説明する。
図1に示すように、スネアパッド10は、専用のドラムスタンド200に取り付けられた状態で使用される。ドラムスタンド200は、スタンド本体210及びドラム支持体220を備えている。スタンド本体210は、支柱201及び脚部202を有している。ドラム支持体220は、スネアパッド10や図示しないスネアドラムを把持する複数のアーム221を有している。スネアパッド10は、叩打部材としてのスティックSTにより叩打される打面を上向きにして、複数のアーム221によりドラム支持体220に固定されることで、ドラムスタンド200に取り付けられる。
【0035】
図2及び図3に示すように、スネアパッド10は、略円盤状である。スネアパッド10は、ドラムスタンド200から取り外した状態で使用することもできる。例えば、スネアパッド10は、打面を上向きにして、平らな台の上に置いたり、ユーザの膝の上に置いたりして使用することもできる。
【0036】
図4に示すように、スネアパッド10は、打面部材11、フープ12、パッド本体14、上側弾性部材16、疑似スネアワイヤ部材17、下側弾性部材18を備えている。疑似スネアワイヤ部材17は、円板状の第1の剛性部材21と、第1の剛性部材21と接触可能に配置される複数の第2の剛性部材22とからなる。スネアパッド10は、打面部材11、フープ12、パッド本体14、上側弾性部材16、第1の剛性部材21、下側弾性部材18を同軸上に配置し、これらの部品を一体に組み付けることで構成されている。
【0037】
打面部材11は、フレーム11aとドラムヘッド11bとを有している。フレーム11aは、パッド本体14の開口端の外周に嵌め込まれるリング状の部材である。フレーム11aは、アルミニウム等の金属材料からなる。フレーム11aの外径は、フープ12の内径よりも大きくフープ12の外径よりも小さい。フレーム11aは、フープ12と共に、打面部材11をパッド本体14に取り付ける部位を構成している。
【0038】
ドラムヘッド11bは、フレーム11aの開口全体を覆うように配置される膜状の部材である。ドラムヘッド11bは、シート状のメッシュ素材からなる。ドラムヘッド11bは、フレーム11aの内周全体に亘って固定されることで、フレーム11aと一体化している。ドラムヘッド11bは、図1に示すスティックSTにより叩打されることでスネアドラムの擬似的な打感を生成する部位を構成している。
【0039】
フープ12は、リング状の板部材である。ここで、フープ12には、フープと一体型のリム部材と異なり、リム部材が設けられていない。フープ12には、6つの挿通孔12aが等角度間隔で形成されている。各挿通孔12aには、打面部材11をパッド本体14に取り付けるためのボルト13が挿入される。
【0040】
上側弾性部材16及び下側弾性部材18は、丸い板状のスポンジからなる。上側弾性部材16は、打面部材11と疑似スネアワイヤ部材17との間に配置されることで、ドラムヘッド11bを叩打したことによる衝撃が疑似スネアワイヤ部材17の第1の剛性部材21に直接加えられることを防止する。また、上側弾性部材16には、叩打による衝撃を疑似スネアワイヤ部材17の第1の剛性部材21にまで到達させ易くするような特性が求められる。このため、上側弾性部材16には、衝撃を吸収し難い硬めのスポンジが用いられている。
【0041】
下側弾性部材18は、疑似スネアワイヤ部材17とパッド本体14の底部との間に配置することで、下側弾性部材18の弾性力により第2の剛性部材22を跳ね返すことができ、第2の剛性部材22と第1の剛性部材21との衝突を促進する。また、下側弾性部材18には、下側弾性部材18上で第2の剛性部材22が上下に動き易くなるような特性が求められる。このため、下側弾性部材18には、上側弾性部材16よりも柔らかめのスポンジが用いられている。
【0042】
上側弾性部材16及び下側弾性部材18は、打面部材11と同形状でかつ同じ表面積を有している。下側弾性部材18の中心を含む領域には、両面テープ19が貼り付けられている。下側弾性部材18の中心を含む領域は、疑似スネアワイヤ部材17においてスネアワイヤの疑似音が生成される箇所と対応している。
【0043】
図4及び図5に示すように、パッド本体14は、ベースプレート41とシェル42とを備えている。パッド本体14には、3つのリム部材43が取り付けられている。ベースプレート41は、略円板状である。ベースプレート41は、円形の鋼板を肉抜き加工することで形成されている。ベースプレート41の最外周部には、9つのネジ孔41aが等角度間隔で形成されている。ネジ孔41aには、リム部材43をベースプレート41に固定するためのネジ44が挿入される。
【0044】
ベースプレート41において、ネジ孔41aよりも内側の外周部には、6つのボルト孔41bが等角度間隔で形成されている。ボルト孔41bには、打面部材11をパッド本体14に取り付けるためのボルト13が挿入される。ベースプレート41の中心部には、シェル42の位置決め用を行うための貫通孔41cが形成されている。
【0045】
シェル42は、有底筒状である。シェル42は、底板部42aと、底板部42aの外周縁に設けられた筒状部42bとからなる。シェル42は、ナイロン等の樹脂材料を成型加工することで形成されている。シェル42内には、疑似スネアワイヤ部材17、上側弾性部材16及び下側弾性部材18を収容可能な凹部23が形成されている。
【0046】
図6及び図7に示すように、底板部42aは、パッド本体14の底部を形成している。底板部42aには、ベースプレート41の貫通孔41cと嵌合する位置決め用の突起42cが設けられている。筒状部42bの先端42dは、シェル42の開口端、即ち、パッド本体14の開口端を形成している。筒状部42bの先端42dは、半円状の断面を有している。
【0047】
図4及び図5に示すように、3つのリム部材43はいずれも、同形状及び同構造を有している。リム部材43は、リム本体45と、リム本体45に取り付けられるカバー部材46を備えている。リム本体45は、ナイロン等の樹脂材料を成型加工することで形成されている。リム本体45及びカバー部材46は、円弧に沿って延びる長尺状である。リム本体45は、カバー部材46と同じ長さを有している。
【0048】
図6及び図7に示すように、リム本体45には、内周面45aから外周面45b付近まで延びる第1固定溝45eが形成されている。また、リム本体45には、上端面45cから、上端面45cと下端面45dとの間の中間位置まで延びる第2固定溝45fが形成されている。リム本体45は、第1固定溝45eにベースプレート41の外周縁が挿入されると共に、図5に示す3つのネジ44を用いることで、ベースプレート41の最外周部に固定されている。
【0049】
カバー部材46は、表面部46aと、表面部46aから突出する突出部46bとを有している。カバー部材46は、ゴム製である。表面部46aは、カバー部材46の内周縁に向けて傾斜した形状を有している。これは、ドラムヘッド11bとリム部材43とを同時に叩打するオープンリムショットの際、スティックSTを表面部46aと平行に当て易くすることで、表面部46aの摩耗を抑えるためである。カバー部材46は、突出部46bが第2固定溝45fに嵌め込まれることで、リム本体45の上面に取り付けられている。
【0050】
図4及び図5に示すように、3つのリム部材43は、ベースプレート41の最外周部を3等分した部分のそれぞれに取り付けられる。3つのリム部材43は、ベースプレート41の外周部の全体に取り付けられることで、ベースプレート41の外周縁に沿って延びる環状部材を形成している。
【0051】
図4図6及び図7に示すように、疑似スネアワイヤ部材17は、上側弾性部材16及び下側弾性部材18により挟まれるようにして、シェル42の凹部23内に収容される。疑似スネアワイヤ部材17は、第2の剛性部材22と第1の剛性部材21とが接触及び非接触を繰り返すことでネアワイヤの疑似音を生成するように構成されている。
【0052】
第1の剛性部材21は、ステンレスやアルミ合金等の金属からなる。第1の剛性部材21は、打面部材11と同形状でかつ同じ表面積を有している。疑似スネアワイヤ部材17において、スネアワイヤの疑似音が生成される中心付近では、第1の剛性部材21が、上側弾性部材16と第2の剛性部材22との間に配置されている。
【0053】
複数の第2の剛性部材22は、ほぼ均一な直径を有する粒状部材からなる。第2の剛性部材22は、ステンレスやアルミ合金等の金属からなる。第2の剛性部材22は、第1の剛性部材21と下側弾性部材18との間で層状に敷き詰められている。第2の剛性部材22は、第1の剛性部材21の中心を含む領域と接触可能に配置されている。第2の剛性部材22は、両面テープ19によって、下側弾性部材18の表面上で転がって分散しないように、下側弾性部材18の中心を含む領域に保持されている。
【0054】
打面部材11は、フレーム11aをパッド本体14の開口端の外側に配置すると共にドラムヘッド11bによりパッド本体14の開口端を覆うように、シェル42の筒状部42b上に配置される。フープ12は、フープ12の内周部をフレーム11aの上面に当接させた状態で、パッド本体14の開口端の外側に嵌め込まれる。6つのボルト13は、フープ12の挿通孔12aを挿通してベースプレート41のボルト孔41bに締め付けられることで、フープ12と共に、打面部材11をパッド本体14に取り付ける。
【0055】
こうして、打面部材11は、ドラムヘッド11bに張力が付与された状態で、パッド本体14の開口端に取り付けられる。また、シェル42は、突起42cをベースプレート41の貫通孔41cに嵌合させた状態で、ドラムヘッド11bにより押さえ付けられることで、ベースプレート41の表面上に固定される。ここで、打面部材11は、打面部材11と疑似スネアワイヤ部材17との間にスポンジ製の上側弾性部材16のみを介在させた状態で、パッド本体14に取り付けられる。即ち、打面部材11をパッド本体14に取り付けた状態では、打面部材11と疑似スネアワイヤ部材17との間にパッド本体14が介在していない。
【0056】
また、ボルト孔41bに対するボルト13の螺合量を調整し、パッド本体14に対するフープ12の嵌め込み量を変更することで、ドラムヘッド11bの張力が調整される。即ち、パッド本体14に対するフープ12の嵌め込みを深くすることで、ドラムヘッド11bの張力が大きくなり、パッド本体14に対するフープ12の嵌め込みを浅くすることで、ドラムヘッド11bの張力が小さくなる。よって、ボルト13は、ドラムヘッド11bに張力を付与しながら打面部材11をパッド本体14に取り付けると共にドラムヘッド11bの張力を調整可能に構成した張力調整装置を構成している。
【0057】
次に、上記のスネアパッド10の作用について図8(a)~図8(c)を参照して説明する。
図8(a)に示すように、ドラムヘッド11bを叩打する前は、第2の剛性部材22は、第1の剛性部材21と下側弾性部材18との間に、第1の剛性部材21と接触した状態で配置されている。
【0058】
図8(b)に示すように、ドラムヘッド11bを叩打すると、ドラムヘッド11bを叩打したことによる衝撃によって、第2の剛性部材22が第1の剛性部材21から同時に離間する。ここで、打面部材11と疑似スネアワイヤ部材17との間には、パッド本体14が介在しておらず、スポンジ製の上側弾性部材16のみが配置されている。このため、ドラムヘッド11bを叩打したことによる衝撃は、上側弾性部材16によって弱められずに、上側弾性部材16の内部空間を通過する。このため、叩打による衝撃のほとんどが第1の剛性部材21に到達する。そして、その衝撃によって、第2の剛性部材22が第1の剛性部材21から離間する。
【0059】
図8(c)に示すように、第2の剛性部材22は、第1の剛性部材21から離間した後、下側弾性部材18の弾性力により跳ね返される。そして、第2の剛性部材22は、下側弾性部材18により跳ね返されることで、第1の剛性部材21と衝突する。こうして、第2の剛性部材22は、叩打による衝撃により第1の剛性部材21から離間したり、下側弾性部材18により跳ね返されて第1の剛性部材21と衝突したりすることで、第1の剛性部材21との接触及び非接触を繰り返す。その結果、第2の剛性部材22と第1の剛性部材21との衝突音が、スネアワイヤの疑似音として生成される。
【0060】
従って、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)打面部材11は、打面部材11と疑似スネアワイヤ部材17との間にパッド本体14を介在させずに、パッド本体14に取り付けられている。この構成によれば、ドラムヘッド11bを叩打したことによる衝撃は、打面部材11から疑似スネアワイヤ部材17に到達するまでに、パッド本体14によって吸収されない。これにより、叩打による衝撃は、疑似スネアワイヤ部材17に到達するまでに、パッド本体14によって弱められない。このため、スティックSTで打面部材11を弱く叩いても、叩打による衝撃を疑似スネアワイヤ部材17にまで到達させることができ、スネアワイヤの疑似音を小さな音で鳴らすことができる。よって、叩打の強弱によらず、スネアワイヤの疑似音を容易に再現することができる。
【0061】
また、この構成によれば、叩打による衝撃がパッド本体14によって吸収されないため、打面部材11のドラムヘッド11bに、衝撃を吸収し易い柔らかい材料からなるシート状のメッシュ素材を用いることができる。このため、アコースティックドラムのような打感が得られると共に、静粛性も確保できる。
【0062】
また、シート状のメッシュ素材は、柔軟性や吸音性に優れている。よって、メッシュ素材をドラムヘッド11bに採用することで、ドラムヘッド11bを叩打したことによる衝撃音が効果的に吸収される。これにより、スネアパッド10の静粛性が向上し、商品価値を高めることができる。
【0063】
(2)ボルト13は、ドラムヘッド11bに張力を付与しながら打面部材11をパッド本体14に取り付けると共にドラムヘッド11bの張力を調整可能に構成した張力調整装置を構成している。この構成によれば、打面部材11は、ボルト13によりドラムヘッド11bに張力が付与された状態で、パッド本体14に取り付けられる。このため、ユーザは、ドラムヘッド11bを叩いたときに、ドラムヘッド11bの張力による跳ね返りを感じることができる。よって、ドラムヘッド11bを叩いたときの感触を、アコースティックドラムを叩いたときの感触に近付けることができる。また、ボルト13を用いることで、パッド本体14に取り付けられたドラムヘッド11bの張力を調整することができる。これにより、ドラムヘッド11bの張力による跳ね返りの強さを変更でき、ドラムヘッド11bを叩いたときの感触を調整することができる。
【0064】
(3)ボルト孔41bに対するボルト13の螺合量を調整し、パッド本体14に対するフープ12の嵌め込み量を変更することで、ドラムヘッド11bの張力が調整される。この構成によれば、ボルト孔41bに挿入されたボルト13を締め付けたり緩めたりすることで、ドラムヘッド11bの張力が変更される。このため、ユーザは、アコースティックドラムのチューニング操作と同じように、ドラムヘッド11bの張力を調整することができる。よって、アコースティックドラムと同じようにスネアパッド10を取り扱うことができる。
【0065】
(4)第1の剛性部材21は、打面部材11と同形状でかつ同じ表面積を有する円板状である。この構成によれば、打面部材11の直下に、打面部材11の全面に亘って疑似スネアワイヤ部材17を配置することができる。このため、ドラムヘッド11bの中央付近を叩打しても、ドラムヘッド11bの外周縁付近を叩打しても、叩打による衝撃を、打面部材11から疑似スネアワイヤ部材17にまで確実に到達させることができる。よって、ドラムヘッド11bを叩打する場所によらず、スネアワイヤの疑似音を容易に再現することができる。
【0066】
(5)疑似スネアワイヤ部材17において、スネアワイヤの疑似音が生成される中心付近では、第1の剛性部材21が、上側弾性部材16と第2の剛性部材22との間に配置されている。言い換えれば、第1の剛性部材21は、打面部材11と第2の剛性部材22との間に配置されている。この構成によれば、打面部材11を叩打したときに生じる衝撃を、第1の剛性部材21により面で受けてから、第2の剛性部材22に伝達することができる。これにより、打面部材11を弱く叩いた場合であっても、叩打による衝撃を疑似スネアワイヤ部材17にまで到達させることが容易となり、スネアワイヤの疑似音を小さな音で鳴らすことが容易となる。
【0067】
(6)第2の剛性部材22は、粒状である。この構成によれば、第1の剛性部材21に第2の剛性部材22が接触したことによる音を、スネアワイヤの音に近付けることができる。よって、打面部材11を叩いたときに生じるスネアワイヤの疑似音を、アコースティックドラムを叩いたときのスネアワイヤの音に近付けることができる。
【0068】
(7)下側弾性部材18は、疑似スネアワイヤ部材17とパッド本体14の底部との間に配置されている。この構成によれば、ドラムヘッド11bを叩打したことによる衝撃によって、第2の剛性部材22が第1の剛性部材21から離間する。第2の剛性部材22は、第1の剛性部材21から離間した後、下側弾性部材18の弾性力により跳ね返されることによって、第1の剛性部材21と衝突する。こうして、第2の剛性部材22は、第1の剛性部材21から離間したり第1の剛性部材21と衝突したりして、第1の剛性部材21との接触及び非接触を繰り返す。このとき、下側弾性部材18が弾性力を有することによって、第2の剛性部材22と第1の剛性部材21との衝突が促進される。このため、スネアワイヤの疑似音を明瞭な音で鳴らすことができる。
【0069】
(8)上側弾性部材16は、打面部材11と疑似スネアワイヤ部材17との間に配置されている。この構成によれば、上側弾性部材16によって、ドラムヘッド11bを叩打したことによる衝撃が疑似スネアワイヤ部材17に直接加えられることを防止できる。これにより、ドラムヘッド11bの叩打音が効果的に消音される。よって、スネアパッド10の静粛性が向上し、商品価値を高めることができる。
【0070】
(9)通常のスネアドラムには、フープと一体型のリム部材が採用されている。この場合、ドラムヘッドの張力を調整するため、パッド本体の開口端に対するフープの嵌め込み量が変更されると、フープの高さ位置と共にリム部材の高さ位置も変更される。一方で、スネアドラム用練習パッドには、静粛性向上のため、柔らかい素材からなるドラムヘッドが採用されている。柔らかいドラムヘッドは、硬い素材からなるドラムヘッドよりも伸び易く、ドラムヘッドの張力が低下し易い。このため、柔らかいドラムヘッドを採用した場合、硬いドラムヘッドを採用した場合よりも、ドラムヘッドの張力を高くするためにフープの嵌め込み量を調整するときの調整量が大きい。
【0071】
また、スネアドラム用練習パッドを用いて、ドラムヘッドとリム部材とを同時に叩打するオープンリムショットを練習することがある。例えば、フープと一体型のリム部材をスネアドラム用練習パッドに採用した場合、ドラムヘッドの張力を変更するためにフープの嵌め込み量を調整すると、フープの高さ位置と共にリム部材の高さ位置が変更されると共に、打面の高さ位置に対するリム部材の高さ位置も変更される。また、スネアドラム用練習パッドに柔らかい素材のドラムヘッドを採用した場合、フープの嵌め込み量を調整するときの調整量が大きいため、打面の高さ位置に対するリム部材の高さ位置の変更量が大きくなりやすい。このため、オープンリムショットの感覚にずれが生じ、違和感が生じる。
【0072】
この点、本発明によれば、パッド本体14には、フープ12と別体に設けられたリム部材43が取り付けられている。この構成によれば、フープ12の高さ位置とは関係無く、リム部材43の高さ位置を設定することができる。このため、ドラムヘッド11bの張力を変更するためにフープ12の嵌め込み量を調整する場合、リム部材43の高さ位置を固定したまま、フープ12の高さ位置のみを変更することができる。よって、打面の高さ位置に対するリム部材43の高さ位置が固定されるため、オープンリムショットの感覚にずれが生じなくなり、違和感が生じなくなる。従って、柔らかいメッシュ素材からなるドラムヘッド11bをスネアパッド10に採用した場合であっても、打面の高さ位置に対するリム部材43の高さ位置が固定されるため、違和感なくオープンリムショットを練習することができる。
【0073】
(10)リム部材43は、リム本体45とカバー部材46とを備えている。この構成によれば、スティックSTにより叩打されるリム部材43の上面にゴム製のカバー部材46を設けたことで、スティックSTがリム部材43に直接当たらなくなる。これにより、スネアパッド10の静粛性が向上し、商品価値をより一層高めることができる。
【0074】
本実施形態は、以下のように変更してもよい。
・本実施形態において、打面部材11と疑似スネアワイヤ部材17との間に配置した上側弾性部材16を省略してもよい。また、スポンジ製の上側弾性部材16に代えて、例えば、ウレタン、フェルト、グラスウール、ゴム等のスポンジ以外の弾性材料からなる上側弾性部材16を用いてもよい。
【0075】
・本実施形態において、スネアパッド10から、ボルト13によりドラムヘッド11bの張力を調整可能にする構成を省略してもよい。例えば、フープ12を用いずに、打面部材11をパッド本体14の開口端に直接固定してもよい。また、ドラムヘッド11bに代えて、ゴムシートからなるパッドをパッド本体14の開口端に直接固定してもよい。
【0076】
・本実施形態において、ボルト13によりドラムヘッド11bの張力を調整可能にする構成を、以下のように変更してもよい。例えば、フープ12を用いずに、打面部材11のフレーム11aにボルト13が挿通される6つの挿通孔を形成してもよい。この場合、ボルト孔41bに対するボルト13の螺合量を調整し、パッド本体14に対するフレーム11aの嵌め込み量を変更することで、ドラムヘッド11bの張力を調整することができる。
【0077】
・本実施形態において、第1の剛性部材21は、打面部材11と同形状でかつ同じ表面積を有する円板状であったが、投影図で見て、打面部材11の大部分と重複するのであれば、例えば、八角形等の多角形や楕円形等の任意の形状であってもよい。また、第1の剛性部材21は、ステンレスやアルミ合金等の金属製であったが、例えば、セラミックスやプラスチック等の金属以外の剛性材料から形成してもよい。
【0078】
・本実施形態において、第2の剛性部材22は、粒状部材であったが、例えば、スチールウールやグラスファイバー等の線状の材料を用いてもよい。また、第2の剛性部材22は、ステンレスやアルミ合金等の金属製であったが、剛性を有するのであれば、例えば、セラミックスやプラスチック等の金属以外の材料から形成してもよい。
【0079】
・本実施形態において、疑似スネアワイヤ部材17とパッド本体14の底部との間に配置した下側弾性部材18には、スポンジを用いたが、例えば、ウレタン、フェルト、グラスウール、ゴム等のスポンジ以外の弾性材料を用いてもよい。
【0080】
・本実施形態において、リム部材43は、パッド本体14の外周縁に沿って延びる環状部材を等角度間隔で3つに分割したものの一つであったが、環状部材の分割数は、スネアパッド10の設計仕様に応じて任意に設定してもよい。
【0081】
・本実施形態において、リム部材43は、パッド本体14の外周部の全体に亘って取り付けたが、パッド本体14の外周部の一部に取り付けてもよい。
・本実施形態において、リム部材43は、パッド本体14に取り付けられる部品として構成したが、フープ12と別体であれば、例えば、パッド本体14のベースプレート41に一体形成してもよい。
【0082】
・本実施形態において、リム部材43は、リム本体45とカバー部材46とを備えていたが、リム本体45のみから構成してもよい。
・本実施形態において、ドラムヘッド11bには、シート状のメッシュ素材を用いたが、例えば、皮やプラスチック製のシート等のメッシュ素材以外のシート材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10…スネアパッド、11…打面部材、11a…フレーム、11b…ドラムヘッド、12…フープ、13…ボルト、14…パッド本体、16…上側弾性部材、17…疑似スネアワイヤ部材、18…下側弾性部材、21…第1の剛性部材、22…第2の剛性部材、41b…ボルト孔、42d…開口端、43…リム部材、46…カバー部材、ST…スティック(叩打部材)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8