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特許7279954アクチュエータ、バルブ、および流体制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】アクチュエータ、バルブ、および流体制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/02 20060101AFI20230516BHJP
   F16K 31/44 20060101ALI20230516BHJP
   H02N 2/04 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
F16K31/02 A
F16K31/44 D
H02N2/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020534078
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2019021983
(87)【国際公開番号】W WO2020026580
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2018143972
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100183380
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 裕司
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 隆
(72)【発明者】
【氏名】中澤 正彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】湯原 知子
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-262065(JP,A)
【文献】特開平01-210673(JP,A)
【文献】米国特許第09625047(US,B2)
【文献】米国特許第09625048(US,B2)
【文献】米国特許第01967418(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00 - 31/05
F16K 31/44
H02N 2/00 - 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシング内に設けられたステムと、
前記ステムへ向かって変位するように前記ケーシングに支持された圧電素子と、
前記圧電素子の変位を増幅させる変位増幅機構と、を備え、
前記変位増幅機構は、第1レバー部と、中間部材と、第2レバー部とを有し、
前記第1レバー部は、前記圧電素子と前記中間部材との間に位置し、前記圧電素子からの変位を受ける第1力点部と、前記ケーシングに当接して前記第1レバー部の回動の中心となる第1支点部と、前記中間部材へ変位を伝える第1作用点部と、を有し、
前記中間部材は、前記第1レバー部と前記第2レバー部との間に位置し、前記第1レバー部からの変位を受けて、前記第2レバー部に向かって変位するように構成され、
前記第2レバー部は、前記中間部材からの変位を受ける第2力点部と、前記ケーシングに当接して前記第2レバー部の回動の中心となる第2支点部と、前記ステムへ変位を伝える第2作用点部と、を有し、
前記ステムの軸に対し直交する方向において、前記第1力点部は、前記第1支点部と前記第1作用点部との間に位置し、
前記ステムの軸に対し直交する方向において、前記第2支点部は、前記第2力点部と前記第2作用点部との間に位置し、
前記第2支点部と前記第2作用点部との距離は、前記第2支点部と前記第2力点部との距離よりも長く構成され、
前記中間部材の前記第2レバー部側への変位により、前記第2レバー部の前記第2作用点部は、前記ステムに向かって変位し、前記ステムを前記圧電素子に向かって移動させる、アクチュエータ。
【請求項2】
前記第1レバー部は、前記ステムの周方向に沿って配置された複数の第1レバーを有し、
前記第2レバー部は、前記ステムの周方向に沿って配置された複数の第2レバーを有する、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記変位増幅機構は、前記複数の第1レバーを保持する第1リテーナと、前記複数の第レバーを保持する第リテーナとを備える、請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
流体通路が形成されたボディと、
前記流体通路を開閉する弁体と、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアクチュエータと、を備えるバルブ。
【請求項5】
複数の流体制御機器により構成される流体制御装置であって、
前記複数の流体制御機器の少なくとも一つは、請求項4に記載のバルブである流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置等の流体管路に使用されるアクチュエータ、バルブ、および流体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータに圧電素子を用い、圧電素子の変位量を増幅させる機構を有するバルブが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-199366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されたバルブは通常開状態であるため、通常閉状態のバルブが求められる半導体製造装置等に適用することができない。
【0005】
そこで本発明は、圧電素子の変位量を増幅することができ、バルブの通常閉状態を実現可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決するために、本発明の一態様であるアクチュエータは、ケーシングと、前記ケーシング内に設けられたステムと、前記ステムへ向かって変位するように前記ケーシングに支持された圧電素子と、前記圧電素子の変位を増幅させる変位増幅機構と、を備え、前記変位増幅機構は、第1レバー部と、中間部材と、第2レバー部とを有し、前記第1レバー部は、前記圧電素子と前記中間部材との間に位置し、前記圧電素子からの変位を受ける第1力点部と、前記ケーシングに当接して前記第1レバー部の回動の中心となる第1支点部と、前記中間部材へ変位を伝える第1作用点部と、を有し、前記中間部材は、前記第1レバー部と前記第2レバー部との間に位置し、前記第1レバー部からの変位を受けて、前記第2レバー部に向かって変位するように構成され、前記第2レバー部は、前記中間部材からの変位を受ける第2力点部と、前記ケーシングに当接して前記第2レバー部の回動の中心となる第2支点部と、前記ステムへ変位を伝える第2作用点部と、を有し、前記ステムの軸に対し直交する方向において、前記第1力点部は、前記第1支点部と前記第1作用点部との間に位置し、前記ステムの軸に対し直交する方向において、前記第2支点部は、前記第2力点部と前記第2作用点部との間に位置し、前記第2支点部と前記第2作用点部との距離は、前記第2支点部と前記第2力点部との距離よりも長く構成され、前記中間部材の前記第2レバー部側への変位により、前記第2レバー部の前記第2作用点部は、前記ステムに向かって変位し、前記ステムを前記圧電素子に向かって移動させる。
【0007】
また、前記第1レバー部は、前記ステムの周方向に沿って配置された複数の第1レバーを有し、前記第2レバー部は、前記ステムの周方向に沿って配置された複数の第2レバーを有してもよい。
【0008】
また、前記変位増幅機構は、前記複数の第1レバーを保持する第1リテーナと、前記複数の第レバーを保持する第リテーナとを備えてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様であるバルブは、流体通路が形成されたボディと、前記流体通路を開閉する弁体と、上記のアクチュエータと、を備える。
【0010】
また、本発明の一態様である流体制御装置は、前複数の流体制御機器により構成される流体制御装置であって、前記複数の流体制御機器の少なくとも一つは、上記のバルブである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圧電素子の変位量を増幅することができ、バルブの通常閉状態を実現可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る閉状態にあるバルブの縦断面図である。
図2】(a)は、第1レバー(第2レバー)と第1リテーナ(第2リテーナ)とを組み合わせた状態の斜視図であり、(b)は、第1リテーナ(第2リテーナ)の斜視図であり、(c)は、第1レバー(第2レバー)の側面図である。
図3】バルブが閉状態にあるときの変位増幅機構の断面図である。
図4】バルブが開状態にあるときの変位増幅機構の断面図である。
図5】半導体製造装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態によるアクチュエータ、バルブ、および流体制御装置について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施形態における閉状態にあるバルブ1の縦断面図を示している。図1に示すように、バルブ1は、ダイヤフラムバルブであり、流体制御装置55(図5)の複数の流体制御機器により構成されるガスライン(例えば、ガスラインの最も上流側)で使用されるバルブである。
【0015】
バルブ1は、ボディ2と、ダイヤフラム3と、アクチュエータ4とを備える。なお、以下の説明において、バルブ1の、アクチュエータ4を上側、ボディ2側を下側として説明する。
【0016】
ボディ2には、円柱状の弁室2aと、弁室2aに連通する流入路2bおよび流出路2cとが形成されている。ボディ2の流入路2bと弁室2aとが連通する箇所の周縁(流入路2bの開口部)には、アクチュエータ4のステム7に向かって突出する円環状のシート2Dが設けられている。シート2Dは、樹脂材料等により構成される。また、ボディ2は、上方に延びるように設けられ、円筒状をなし、内周部に雌ねじ部が形成された円筒部2Eを有する。
【0017】
ダイヤフラム3は、複数枚のダイヤフラムにより構成され、弁室2aに配置されている。ダイヤフラム3は、後述の環状の押さえアダプタ9により、その外周縁部が狭圧され、ボディ2に対し保持されている。弁体であるダイヤフラム3は、略球殻状をなし、上に凸の略円弧状が自然状態となっている。ダイヤフラム3がシート2Dに対し当接および離間することによって、流入路2bと流出路2cとの間の連通または遮断が行われる。バルブ1が閉状態にあるときには、ダイヤフラム3がシート2Dに当接し、流入路2bと流出路2cとが遮断される。バルブ1が開状態にあるときには、ダイヤフラム3がシート2Dから離間し、流入路2bと流出路2cとが連通する。
【0018】
アクチュエータ4は、ケーシング20と、圧電素子5と、ディスク6と、ステム7と、コイルばね8と、押さえアダプタ9と、ダイヤフラム押さえ10と、変位増幅機構30とを有する。
【0019】
ケーシング20は、ボンネット21と、中間ケーシング22と、キャップ23と、第1支持リング24と、第2支持リング25とを備え、全体として略有蓋円筒状をなしている。
【0020】
ボンネット21は、略円筒状をなし、基部21Aと、上円筒部21Bと、下円筒部21Cとを有する。基部21Aは、貫通孔21dを有する円板状をなしている。上円筒部21Bは、円筒状をなし、基部21Aの外周縁から上側に突出している。上円筒部21Bの上端部の外周には、雄ねじ部が形成されている。下円筒部21Cは、円筒状をなし、基部21Aの貫通孔21dと外周縁との間の位置から下側に突出している。下円筒部21Cの外周には、雄ねじ部が形成されている。ボンネット21の下円筒部21Cの雄ねじ部が、ボディ2の円筒部2Eの雌ねじ部に対し螺合されることにより、ボディ2に対し固定されている。
【0021】
中間ケーシング22は、貫通孔22aを有する略円筒状をなしている。中間ケーシング22の下端部の内周には雌ねじ部が形成され、上端部の外周には雄ねじ部が形成されている。中間ケーシング22の下端部の雌ねじ部が、ボンネット21の上円筒部21Bの雄ねじ部に螺合することにより、中間ケーシング22がボンネット21に対し固定されている。
【0022】
キャップ23は、有蓋円筒状をなしている。キャップ23の下端部の内周には雌ねじ部が形成されている。キャップ23の下端部の雌ねじ部が、中間ケーシング22の上端部の雄ねじ部に螺合することにより、キャップ23が中間ケーシング22に対し固定されている。また、キャップ23には、プレート23Aと、ロックナット23Bとが設けられている。
【0023】
第1支持リング24は、略円筒状をなし、ボンネット21の基部21A上に配置されている。第1支持リング24の上端部には、内方に突出する環状の凸部24Aが設けられている。第1支持リング24の外径は、ボンネット21の上円筒部21Bの内径よりも僅かに小さく構成されている。
【0024】
第2支持リング25は、貫通孔25aを有する略円板状をなし、ボンネット21の基部21A上に配置されている。第2支持リング25の上面25Bの中央部には、凹部25cが形成されている。第2支持リング25は、第1支持リング24の内側に設けられ、第2支持リング25の外径は、第1支持リング24の内径よりも僅かに小さく構成されている。
【0025】
圧電素子5は、後述のディスク6上に配置され、中間ケーシング22内に設けられている。圧電素子5には、一対のリード端子5a、5bが接続され、リード端子5a、5bは、キャップ23およびプレート23Aを貫通して外部へ延びている。一対のリード端子5a、5bに所定の電圧を印加すると、逆圧電効果により圧電素子5が変形する。圧電素子5は、その上端がプレート23Aおよびロックナット23Bにより、上側への変形が規制されており、圧電素子5の変形は下側へ伝達され、ディスク6が変位する。ロックナット23Bの締め込み量を調整することで、圧電素子5の変形によるディスク6の変位量が調整される。
【0026】
ディスク6は、圧電素子5の下側に位置し、ボンネット21の上円筒部21B内で上下方向に移動可能に設けられている。ディスク6の下面側には、下方に突出する突出部6Aが設けられている。突出部6Aの中央部には、上方へ凹む凹部6bが形成されている。突出部6Aの外周縁には、下方へ突出する環状の突起部6Cが設けられている。突起部6Cの下面6Dは、平面状をなしている。
【0027】
ステム7は、ディスク6の下側に位置し、上下方向に移動可能に設けられている。ステム7は、上ステム7Aと下ステム7Bとを有する。上ステム7Aは、円板部7Cと、上延出部7Dと、下延出部7Eとを有する。円板部7Cは、円板状をなし、ボンネット21の上円筒部21B内に位置している。円板部7Cの外径は、上延出部7Dおよび下延出部7Eの外径よりも大きく構成されている。
【0028】
上延出部7Dは、正六角柱状をなし、円板部7Cの中央部から上側に延びている。上延出部7Dの上端は、ディスク6の凹部6b内に位置するが、ステム7が上下動してもディスク6に接触しないように構成されている。下延出部7Eは、円板部7Cの中央部から下側に延びている。下延出部7Eは、正六角柱部7E1と、円柱部7E2とを有する。正六角柱部7E1は、円板部7Cの下側に位置し、円柱部7E2は、正六角柱部7E1の下側に位置している。円柱部7E2は、第2支持リング25の貫通孔25aおよび基部21Aの貫通孔21dを貫通して、円柱部7E2の下端部は、下円筒部21C内に位置し、その外周には雄ねじ部が形成されている。
【0029】
下ステム7Bは、略円筒状をなし、下円筒部21C内に位置している。下ステム7Bの上端部の内周には、雌ねじ部が形成されている。下ステム7Bの上端部の雌ねじ部が、上ステム7Aの下端部の雄ねじ部に螺合されることにより、下ステム7Bは、上ステム7Aに対し固定されている。
【0030】
コイルばね8は、下円筒部21C内に設けられ、基部21Aと下ステム7Bとの間に介在し、ステム7を常に下側に付勢している。
【0031】
押さえアダプタ9は、環状をなし、ダイヤフラム3の外周縁部を狭圧し、ダイヤフラム3をボディ2に保持する。
【0032】
ダイヤフラム押さえ10は、ステム7の下側に設けられ、ダイヤフラム3の中央部を押圧可能である。
【0033】
次に、変位増幅機構30について説明する。
【0034】
図2(a)は、第1レバー31(第2レバー34)と第1リテーナ32(第2リテーナ35)とを組み合わせた状態の斜視図を示し、図2(b)は、第1リテーナ32(第2リテーナ35)の斜視図を示し、図2(c)は、第1レバー31(第2レバー34)の側面図を示している。なお、図2における第1レバー31および第1リテーナ32は、図1、3に示した第1レバー31および第1リテーナ32に対し、上下反転させた状態を図示している。よって、図2では、上下反転させた状態の第1レバー31および第1リテーナ32について説明する。
【0035】
変位増幅機構30は、6つの第1レバー31と、第1リテーナ32と、中間部材33と、6つの第2レバー34と、第2リテーナ35とを備える。6つの第1レバー31は、第1レバー部に相当し、6つの第2リテーナ35は、第2レバー部に相当する。
【0036】
6つの第1レバー31は、それぞれ独立して同形状をなし、上延出部7Dの周囲にケーシング20の円周方向に沿って等間隔に配置されている。各第1レバー31は、金属(例えば、ステンレス鋼)、樹脂、セラミックス等により構成され、後述のバルブ1の開閉動作時に変形しない(歪まない)硬さを有している。すなわち、各第1レバー31は、バルブ1の開閉動作に対し剛体として機能する。
【0037】
各第1レバー31は、内側部31Aと、外側部31Bとを有し、外側部31Bから内側部31Aに向かって先細る形状をなしている。外側部31Bは、内側部31Aに対し、上側に屈曲するように接続されている。このように、各第1レバー31は屈曲部31Hを有する。内側部31Aには、挿入孔31cが形成されている。
【0038】
図2(c)に示すように、第1レバー31は、第1主面31Dおよび第2主面31Eを有している。第1主面31Dおよび第2主面31Eの内側部31Aおよび外側部31Bを構成する部分は、それぞれ平面状をなしている。
【0039】
各第1レバー31の外端部31Fおよび内端部31Gは、ステム7の軸を中心とする円の接線方向に平行をなすように延びている。そして、図3に示すように、各第1レバー31は、第1主面31Dが下側、第2主面31Eが上側を向くように配置されており、各第1レバー31の外端部31Fが、第1支持リング24の凸部24Aの上面24Bに線接触し、内端部31Gが、ステム7の上延出部7Dの正六角柱の各面に対向して中間部材33の上面33Fに線接触している。また、第2主面31Eにおける第1レバー31の屈曲部31Hに対しディスク6の下面6Dが線接触している。
【0040】
第1リテーナ32は、ゴム等の柔軟性を有する材料により構成され、平面視で略六角形状をなし、正六角形状の挿入孔32aが形成されている。第1リテーナ32は、環状部32Bと、6つの第1突起32Cと、6つの第2突起32Dとを有する。
【0041】
6つの第1突起32Cは、それぞれ略円柱状をなし、環状部32Bに対しアクチュエータ4の円周方向に等間隔に配置されている。
【0042】
6つの第2突起32Dは、それぞれ隣り合う第1突起32Cの間に設けられており、平面視で環状部32Bの中心に向かって先細る形状をなしている。
【0043】
各第1レバー31は、その内側部31Aの挿入孔31cに、第1リテーナ32の第1突起32Cを挿入することにより、第1リテーナ32に保持される。各第1レバー31は、隣り合う第2突起32Dの間に配置されることにより、各第1レバー31の回転が抑制される。
【0044】
環状部32Bの正六角形状の挿入孔32aに、正六角柱状の上延出部7Dが挿入される。挿入孔32aは、上延出部7Dの外形よりもわずかに大きい寸法を有するので、第1リテーナ32の上延出部7Dに対する回転が抑制される。
【0045】
中間部材33は、略環状をなし、図3に示すように、第1レバー31および第1リテーナ32の下側に位置している。中間部材33は、上伝達部33Aと、下伝達部33Bとを有する。上伝達部33Aは、第1支持リング24の凸部24Aの内側に位置している。上伝達部33Aの中央部には、正六角形状の上貫通孔33cが形成されている。上貫通孔33cの寸法は、上延出部7Dの寸法よりも僅かに大きく構成されている。上貫通孔33cに上延出部7Dが貫通している。
【0046】
下伝達部33Bの上伝達部33A側には、円柱状の中間貫通孔33eが形成され、その下側に下貫通孔33dが形成されている。中間貫通孔33eの内径は、ステム7の円板部7Cの外径よりも僅かに大きく構成されている。円板部7Cは、中間貫通孔33eの内周に沿って上下動可能である。下貫通孔33dの内径は、中間貫通孔33eの内径よりも大きく構成されている。
【0047】
6つの第2レバー34および第2リテーナ35は、中間部材33の下側に位置し、図2に示すように、それぞれ6つの第1レバー31および第1リテーナ32と同様の構成・形状を有する。
【0048】
すなわち、各第2レバー34は、金属(例えば、ステンレス鋼)、樹脂、セラミックス等により構成され、後述のバルブ1の開閉動作時に変形しない(歪まない)硬さを有し、挿入孔34cが形成された内側部34Aと、外側部34Bとを有する。各第2レバー34の外端部34Fおよび内端部34Gは、ステム7の軸を中心とする円の接線方向に平行をなすように延びている。また、図2(c)に示すように、第2レバー34は、第3主面34Dおよび第4主面34Eを有し、第3主面34Dおよび第4主面34Eの内側部34Aおよび外側部34Bを構成する部分は、それぞれ平面状をなしている。
【0049】
そして、図3に示すように、6つの第2レバー34は、正六角柱部7E1の周囲にケーシング20の円周方向に沿って等間隔に配置されている。各第2レバー34は、第3主面34Dが上側、第4主面34Eが下側を向くように配置されており、各第1レバー34の外端部34Fが、中間部材33の下面33Gに線接触し、内端部34Gは、正六角柱部7E1の各面に対向してステム7の円板部7Cの下面7Fに線接触している。また、第2主面34Eにおける第2レバー34の屈曲部34Hに対し第2支持リング25の上面25Bが線接触している。
【0050】
第2リテーナ35は、ゴム等の柔軟性を有する弾性材料により構成され、平面視で略六角環状をなし、正六角形状の挿入孔35aが形成されている。第2リテーナ35は、環状部35Bと、6つの第3突起35Cと、6つの第4突起35Dとを有する。
【0051】
各第2レバー34は、その内側部34Aの挿入孔34cに、第2リテーナ35の第3突起35Cを挿入することにより、第2リテーナ35に保持される。各第2レバー34は、隣り合う第4突起35Dの間に配置されることにより、各第2レバー34の回転が抑制される。
【0052】
第2リテーナ35の正六角形状の挿入孔35aにステム7の正六角柱状の正六角柱部7E1が挿入される。挿入孔35aは、正六角柱部7E1の外形よりもわずかに大きい寸法を有するので、第2リテーナ35の正六角柱部7E1に対する回転が抑制される。
【0053】
次に、本実施形態に係るバルブ1の開閉動作について説明する。
【0054】
図3は、バルブ1が閉状態にあるときの変位増幅機構30の断面図を示す。図4は、バルブ1が開状態にあるときの変位増幅機構30の断面図を示す。
【0055】
図1に示すように、バルブ1が閉状態にある場合には、圧電素子5に所定の電圧が印加されておらず、ステム7は、コイルばね8により下方に付勢されて、最下端に位置している。バルブ1が、図1、3に示す閉状態から図4に示す開状態になるときには、圧電素子5に所定の電圧が印加され、圧電素子5の変形(変位)がディスク6に伝達される。ディスク6が下側へ移動(変位)することにより、各第1レバー31の屈曲部31Hが、ディスク6の下面6Dに押されて、各第1レバー31は、第1支持リング24の凸部24Aの上面24Bに当接する外端部31Fを中心に回動する。これにより、各第1レバー31の内端部31Gが下側へ移動して、中間部材33の上面33Fが押されて、中間部材33が下側へ移動する。
【0056】
中間部材33が下側へ移動することにより、各第2レバー34の外端部34Fが中間部材33の下面33Gより押されて、各第2レバー34は、各第2レバー34の屈曲部34Hを中心に回動する。これにより、各第2レバー34の内端部34Gが上側へ移動して、ステム7の円板部7Cの下面7Fが押されて、ステム7が、コイルばね8の付勢力に抗して上側へ移動する。これにより、ダイヤフラム3を押す力がなくなるので、ダイヤフラム3が、流入路2bを流れる流体の圧力およびダイヤフラム3自身の復元力により押し上げられ、シート2Dから離間し、流入路2bと流出路2cとが連通する。
【0057】
一方、バルブ1が、図4に示す開状態から図1、3に示す閉状態になるときには、圧電素子5に対する所定の電圧の印加が解除され、圧電素子5が元の状態に戻る。このため、変位増幅機構30によりステム7を上に押し上げる力が無くなるので、コイルばね8の付勢力により、ステム7およびダイヤフラム3が押されて、シート2Dに当接し、流入路2bと流出路2cとの連通が遮断される。
【0058】
本実施形態では、圧電素子5の変形によるディスク6の変位が、変位増幅機構30により増幅されて、ステム7に伝達される。すなわち、第1レバー31の外端部31Fの第1支持リング24の上面24Bに対する当接部A1を支点、第1レバー31の屈曲部31Hのディスク6の下面6Dに対する当接部B1を力点、第1レバー31の内端部31Gの中間部材33の上面33Fに対する当接部C1を作用点とした場合、ステム7の軸に直交する方向において、当接部A1と当接部C1との距離は、当接部A1と当接部B1との距離の数倍(本実施形態では約3.5倍)に構成されている。よって、第1レバー31の内端部31Gの変位は、てこの原理により、第1レバー31の屈曲部31Hの変位、すなわち圧電素子5の変形によるディスク6の変位に対し、約3.5倍となる。
【0059】
さらに、第2レバー34の屈曲部34Hの第2支持リング25の上面25Bに対する当接部A2を支点、第2レバー34の外端部34Fの中間部材33の下面33Gに対する当接部B2を力点、第2レバー34の内端部34Gのステム7の円板部7Cの下面7Fに対する当接部C2を作用点とした場合、ステム7の軸に直交する方向において、当接部A2と当接部B2との距離は、当接部A2と当接部C2との距離の数倍(本実施形態では約3.5倍)に構成されている。よって、第2レバー34の内端部34Gの変位は、てこの原理により、第2レバー31の外端部34の変位に対し、約3.5倍となる。したがって、第2レバー34の内端部34Gの変位は、圧電素子5の変形によるディスク6の変位に対し、約12倍となる。
【0060】
このようにして、圧電素子5の変形によるディスク6の変位は、変位増幅機構30により増幅されて、ステム7を上側へ移動させるように構成される。これにより、圧電素子5の変位量(例えば20μm)が小さくても、ステム7の変位量を大きくすることができる。さらに、各第2レバー34の内端部34Gは、電圧印加による圧電素子5の変位により、圧電素子5に向かって変位し、ステム7を圧電素子5に向かって移動させる。これにより、通常閉状態のバルブ1を開状態にすることができる。
【0061】
第1レバー31において、外端部31Fは第1支点部に、屈曲部31Hは第1力点部に、 内端部31Gは第1作用点部に相当する。第2レバー34において、外端部34Fは第2力点部に、屈曲部34Hは第2支点部に、内端部34Gは第2作用点部に相当する。
【0062】
以上のように、本実施形態のアクチュエータ4を備えるバルブ1によれば、変位増幅機構30において、ステム7の軸に対し直交する方向において、第1力点部である屈曲部31Hは、第1支点部である外端部31Fと第1作用点部である内端部31Gとの間に位置し、第2支点部である屈曲部34Hは、第2力点部である外端部34Fと第2作用点部である内端部34Gとの間に位置し、屈曲部34Hと内端部34Gとの距離は、屈曲部34Hと外端部34Fとの距離よりも長く構成されている。そして、中間部材33の各第2レバー34側への変位により、各第2レバー34の内端部34Gは、圧電素子5に向かって変位し、ステム7を圧電素子5に向かって移動させる。よって、圧電素子5の変位を増幅させることができると共に、圧電素子5の変位によりステム7を圧電素子5側へ変位させることができる。したがって、通常閉状態のバルブ1を提供することができる。
【0063】
変位増幅機構30は、複数の第1レバー31と、複数の第2レバー34とを有しているので、当該複数のレバーをステム7の周方向に沿って等間隔に配置することにより、圧電素子5から中間部材33を介したステム7への力の伝達を均等に行うことができ、圧電素子5の変位をステム7にスムーズに伝達することができる。
【0064】
また、複数の第1レバー31は、第1リテーナ32により保持され、複数の第2レバー34は、第2リテーナ35により保持されるので、アクチュエータ4およびバルブ1の組立性を向上させることができる。
【0065】
次に、上記で説明したバルブ1が使用される流体制御装置55および流体制御装置55を備える半導体製造装置60について説明する。
【0066】
図6は、半導体製造装置60の概略図である。半導体製造装置60は、例えば、CVD装置であり、流体制御装置55を有するガス供給手段50と、真空チャンバ70と、排気手段80とを有し、ウェハ上に不動態膜(酸化膜)を形成する装置である。
【0067】
ガス供給手段50は、ガス供給源51と、圧力計52と、流体制御装置55とを備える。流体制御装置55は、複数の流体制御機器により構成される複数のガスラインを有し、流体制御機器として、開閉弁53、54と、MFC1~4(マスフローコントローラ)とを備える。ガス供給手段50と真空チャンバ70との間には、開閉弁61が設けられている。真空チャンバ70は、ウェハ72を載置するための載置台71と、ウェハ72上に薄膜を形成するための電極73とを備える。真空チャンバ70には、商用電源62が接続されている。排気手段80は、排気配管81と、開閉弁82と、集塵機83とを備える。
【0068】
ウェハ72上に薄膜を形成する時には、開閉弁53、54の開閉、MFC1~4、および開閉弁61の開閉により、真空チャンバ70へのガスの供給が制御される。また、ウェハ72上に薄膜を形成した際に発生する副生成物たる粉粒体を除去する時には、開閉弁82が開状態とされ、排気配管81を介して集塵機83により粉粒体が除去される。
【0069】
そして、開閉弁53、54、61、82に対して、本実施形態におけるバルブ1を適用することができる。上記のように、バルブ1は耐久性に優れているので、耐久性に優れた流体制御装置55を提供することができる。
【0070】
なお、半導体製造装置60がCVD装置の場合について説明したが、スパッタリング装置またはエッチング装置であっても良い。エッチング装置(ドライエッチング装置)は、処理室、ガス供給手段(流体制御装置)、排気手段から構成され、反応性の気体による腐食作用によって、材料表面等を加工する装置である。スパッタリング装置は、ターゲット、真空チャンバ、ガス供給手段(流体制御装置)、排気手段から構成され、材料表面を成膜する装置である。
【0071】
なお、本実施形態は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【0072】
例えば、上記の実施形態における変位増幅機構30は、6つの第1レバー31と、第1リテーナ32と、中間部材33と、6つの第2レバー34と、第2リテーナ35とを備えていたが、第1リテーナ32および第2リテーナ35を備えていなくてもよい。また、第1レバー部および第2レバー部は、それぞれ独立した6つの部材により構成されていたが、6つの第1レバー31または6つの第2レバー34が、それらの内周縁または外周縁で接続された一体構造であってもよい。この場合、第1レバー31または第2レバー34は、ディスク6および中間部材33の変位に伴い変形する金属、樹脂等の材料に構成されていてもよい。また、変位増幅機構30は、6つの第1レバー31および6つの第2レバー34を有していたが、それぞれ2つ以上であればよい。
【0073】
また、コイルばね8は、皿ばねにより構成してもよい。弁座は、樹脂からなる環状のシート2Dを埋め込んで構成したが、ボディ2と同じ金属材料により円環状の凸部を形成して、弁座を構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1:バルブ、 2:ボディ、 2b:流入路、 2c:流出路、 3:ダイヤフラム、 4:アクチュエータ、 5:圧電素子、 7:ステム、 20:ケーシング、
30:変位増幅機構、 31:第1レバー部、 31F:外端部、 31G:内端部、 31H:屈曲部、 33:中間部材、 34:第2レバー部、 34F:外端部、 34G:内端部、 34H:屈曲部、 55:流体制御装置
図1
図2
図3
図4
図5