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▶ トモウェーブ ラボラトリーズ,インク.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】定量的撮像システムおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/13 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
A61B8/13 ZDM
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020554267
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 US2019025885
(87)【国際公開番号】W WO2019195614
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】62/652,337
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514185596
【氏名又は名称】トモウェーブ ラボラトリーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】オラエブスキー,アレクサンダー,エー.
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-507947(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0150452(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定量的トモグラフィーのためのシステムであって、
赤から近赤外線のスペクトル範囲内の波長でレーザー光の瞬時パルスを放射するように構成されたレーザーであって、2つの循環する波長の波長循環モードまたは3つの循環する波長の波長循環モードで作動可能である、レーザーと、
最大限の伝送により対象の全組織領域にレーザー光の前記瞬時パルスを放射するように構成された光ファイバーバンドルと
撮像モジュールであって、
対象の組織領域に対応する形状を備えた撮像タンクと
レーザー光の前記瞬時パルスによって対象の前記組織領域において生成された、超広帯域内の超音波周波数の超音波信号を検出するように構成された、超広帯域超音波トランスデューサーの少なくとも1つの光音響アレイと
前記組織領域の中へ超音波のパルスを伝送し、および前記組織領域から反射、または前記組織領域を通って伝送された超音波信号を検出するように構成された、超音波トランスデューサーの少なくとも1つの超音波アレイと
前記撮像タンクを満たす接触媒質であって、これを介してレーザー光の前記瞬時パルスと前記超音波のパルスが伝送されるところの接触媒質と
を含む、撮像モジュールと
多重チャンネルの電子データ取得システムであって、アナログ前置増幅器と、アナログ-デジタル変換器と、デジタルデータ記憶装置と、処理基板と伝送基板とを含み、フィールドプログラマブルゲートアレイ・マイクロプロセッサーによって制御される、多重チャンネルの電子データ取得システムと
コンピューターであって、前記多重チャンネル電子データ取得システムと電子通信状態にあり、および、マルチコア中央処理装置(CPU)とマルチコア・グラフィック処理装置(GPU)を含み、システム制御、信号処理、画像再構成、および画像の相補的な記録のために前記CPUおよび前記GPUを制御するように構成されたソフトウェアを実体的に格納している、コンピューターと
前記実体的に格納されたソフトウェアであって、
検出された光音響信号からの超広帯域超音波トランスデューサーの音響-電気的および空間的なインパルス応答関数のデコンボリューションを使用して、前記瞬時パルスによって前記組織領域において生成された前記光音響信号のオリジナルプロファイルを修復し、
定量的な機能画像または分子画像を得るために、前記2つの循環する波長または前記3つの循環する波長で取得される、相補的に記録された光音響画像を生成し、
すべての表面ボクセルの画像輝度を等しくすることによって前記組織領域の表面に対する入射光量の分布を正規化するように、
構成されたプロセッサーの実行命令を有効にする、前記実体的に格納されたソフトウェアと、
前記定量的トモグラフィーのためのシステムのオペレーターに再構成画像を提示するために前記コンピューターに電子接続される、高解像度ディスプレイと
を含む、システム。
【請求項2】
前記波長の赤から近赤外線のスペクトル範囲は、650nmから1250nmであることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記2つの循環する波長は757nmと850nmであることを特徴とする、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記3つの循環する波長は757nm、800nm、および850nmであるか、または757nm、800nm、および1064nmであることを特徴とする、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
アレイにおける超広帯域超音波トランスデューサーは、50kHzから6MHzの超広帯域内の超音波信号を検出することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記超広帯域超音波トランスデューサーの光音響アレイと前記超音波トランスデューサーの超音波アレイは1つのアレイに組み合わされることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記撮像モジュールにおける前記撮像タンクは球面形状または円筒形状を有することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
対象の前記組織領域は乳房組織の領域であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記ソフトウェアは、信号処理と画像処理のプロセッサの実行命令により対象の前記組織領域または解剖学的構造内の定量的分子濃度または機能パラメーターの画像を生成し、前記実行命令はさらに、
景の幾可学において獲得した完全データ集合を利用する厳密な直接アルゴリズムまたは反復アルゴリズムを介して、前記組織領域の3D光音響トモグラフィー画像を再構成するように
効光減衰の補正によって前記組織領域全体を通る入射光量の分布を正規化するように
前記組織領域において吸収された光エネルギーの光音響画像上の前記組織領域を通った入射光量を正規化した後に、光吸収係数の画像を表示するように
補的に記録された光音響画像、または超音波の反射と減衰の画像のコントラストおよび解像度を改善するために使用される、前記組織領域内の音速分布の画像を取得するように
構成される、ことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
被験体の対象の組織領域における定量的パラメーターまたは機能パラメーターを画像化する方法であって、
請求項1の定量的トモグラフィーのためのシステムの撮像タンクに前記組織領域を配置する工程と
超広帯域超音波トランスデューサーの光音響アレイと超音波トランスデューサーの超音波アレイを前記撮像タンクの内部に位置付ける工程と
前記組織領域に対して瞬時パルスとして照射するために、2つの循環する波長の波長循環モードまたは3つの循環する波長の波長循環モード内でレーザー光の波長を選択する工程と
選択された2つの波長又は選択された3つの波長で体積を持つ前記組織領域にレーザー光の循環瞬時パルスを放射する工程と
前記組織領域内で生成された超音波周波数の超広帯域内で選択された2つの波長各々について又は3つの波長各々について信号を前記光音響アレイにより検出する工程と
選択された2つの波長各々について又は選択された3つの波長各々について検出された前記信号から光音響画像を取得する工程と
前記光音響画像を相補的に記録する工程と
相補的に記録された前記光音響画像から定量的機能パラメーターまたは分子パラメーターの画像を生成する工程と
生成された定量的画像を表示する工程と、を含む、方法。
【請求項11】
前記超音波アレイから超音波パルスを前記組織領域に伝送する工程と
前記超音波アレイにより、前記組織領域から反射した信号または前記組織領域を通って伝送された信号を検出する工程と
前記組織領域内の音速の分布に基づいて音速の画像を生成する工程と
検出された前記超音波信号から、超音波の反射または減衰の解剖学的画像を生成する工程と、
解剖学的構造の中に前記定量的機能パラメーターまたは分子パラメーターの画像を相補的に記録する工程と
前記定量的機能パラメーターの画像と前記解剖学的画像または音速画像とを重ね合わせたものとして相補的に記録された画像を表示する工程と
さらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記音速画像を介して前記光音響画像、および前記超音波の反射または減衰の画像を向上させる工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
選択された各波長で生成される前記信号の検出が同時に行われることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記定量的機能パラメーターは総ヘモグロビン[tHb]または血液酸素飽和度[sO2]、あるいは、これらの組み合わせであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
被験体の体積を持った組織を撮像するためのレーザー光音響超音波撮像システム・アセンブリー(LOUISA)であって、
赤から近赤外線のスペクトル範囲内の波長でレーザー光の瞬時パルスを放射するように構成されたレーザーであって、スペクトル範囲内の2つの循環する波長または3つの循環する波長の波長循環モードにおいて作動可能であるレーザーと
前記体積を持った組織にレーザー光の瞬時パルスを放射するために、前記体積を持った組織のまわりで回転するように構成された、円弧形状の光ファイバーバンドルと
前記体積を持った組織に対応する球面形状を備えた撮像タンクと
円弧形状アレイであって、
超広帯域超音波トランスデューサの光音響アレイと送受信モードで動作可能な超音波トランスデューサの超音波アレイとの組み合わせを含み、前記体積を持った組織で生成された50kHzから6MHzの超広帯域内の超音波信号を検出し、超音波のパルスを前記体積を持った組織内に送信し、前記体積を持った組織から反射された超音波信号と前記体積を持った組織を介して送信された超音波信号を検出するように構成され、前記信号は前記体積を持った組織の解剖学的構造内の機能的画像として処理可能かつ相補的に記録可能である、円弧形状アレイと、
撮像タンクを満たし、これを介してレーザー光の瞬時パルスと超音波のパルスが伝送されるところの、光学的および音響的に透過性の接触媒質と
電子サブシステムであって、
アナログ前置増幅器、アナログ-デジタル変換器と、およびデジタルデータ記憶装置と、処理基板と伝送基板とを含み、および、フィールドプログラマブルゲートアレイ・マイクロプロセッサーによって制御される、多重チャンネルの電子データ取得システムと
多重チャンネル電子データ取得システムと電子通信状態にあり、および、マルチコア中央処理装置(CPU)とマルチコア・グラフィック処理装置(GPU)を含み、システム制御、信号処理、画像再構成、および画像の相補的な記録のために前記CPUとGPUを制御するように構成されたソフトウェアを実体的に格納している、コンピューターと
LOUISAシステムのオペレーターに前記体積を持った組織の再構成画像を提示するためにコンピューターに電子接続される、高解像度ディスプレイと
を含む、電子サブシステムと
を含む、レーザー光音響超音波撮像システム・アセンブリー。
【請求項16】
前記赤から近赤外線のスペクトル範囲内の波長は略650nm乃至略1250nmであることを特徴とする、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
2つの循環する波長は757nmと850nmであることを特徴とする、請求項15に記載のLOUISAシステム。
【請求項18】
3つの循環する波長は757nm、800nm、および850nm、または、757nm、800nm、および1064nmであることを特徴とする、請求項15に記載のLOUISAシステム。
【請求項19】
前記円弧形状の光ファイバーバンドルと前記円弧形状アレイは、前記円弧形状アレイの位置ごとに体積を持った組織全体を照明するために、体積を持った組織の周りを独立して回転するように構成されることを特徴とする、請求項15に記載のLOUISAシステム。
【請求項20】
被験体の対象の体積を持った組織における定量的機能パラメーターを画像化する方法であって、
前記体積を持った組織を、請求項15に記載のLOUISAシステムの撮像タンクに配置する工程と、
波長循環モードの中から、瞬時パルスとして前記体積を持った組織に放射される、赤から近赤外線のスペクトル範囲内のレーザー光の波長を選択する工程と、
前記体積を持った組織に、選択された波長の前記循環瞬時パルスを照射する工程と、
円弧形状アレイから前記体積を持った組織に超音波のパルスを送信する工程と、
前記円弧形状アレイを用いて、選択された波長各々について、前記体積を持った組織内で生成された超広帯域内の超音波周波数の信号を検出する工程と、
前記体積を持った組織から反射された超音波信号と組織体積を介して送信された超音波信号を検出する工程と、
超広帯域内の超音波周波数で検出された前記信号から定量的機能パラメーターの画像を生成する工程と、
検出された前記超音波信号から解剖学的画像を生成する工程と、
前記体積を持った組織内の音速の分布に基づいて音速画像を生成する工程と、
前記音速画像を介して前記定量的機能パラメーターの画像と前記解剖学的画像を向上させる工程と、
前記定量的機能パラメータの画像を前記解剖学的構造と相補的に記録する工程と、
前記定量的機能パラメーターの画像と前記解剖学的画像を重ね合わせたものとして、相補的に記録された画像を表示する工程と、
を含んでなる、方法。
【請求項21】
選択された各波長で生成された前記信号の検出が同時に行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記定量的機能パラメータが総ヘモグロビンおよび血中酸素飽和度である、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この国際出願は、2018年4月4日に出願された、米国仮特許出願第62/652,337号に基づく優先権の利益を米国特許法第119条の下で主張するものであり、その全体は参照により本明細書に引用される。
【0002】
政府資金の説明
本発明は、国立衛生研究所によって与えられた、認可番号R01CA167446下での、政府支援によってなされたものである。政府は本発明において一定の権利を有している。
【背景技術】
【0003】
本発明は、検査下の身体の容積的な対象領域に関する医療情報を提供することができる、生物医学的な撮像およびトモグラフィーシステムの分野に関する。より具体的には、本発明は、解剖学的画像と、機能パラメーターおよび分子パラメーターの画像を得るために、被験体における対象の組織領域の定量的3次元トモグラフィーのためのレーザー光音響超音波撮像システム・アセンブリー(LOUISA)を供給する。
【0004】
関連技術の詳細
Judah Folkmanによって発見されたように、侵襲性の癌は、微小血管構造からの栄養および酸素の補助がなければ、生死にかかわる病気へと進行し得ない(1)。人体の中で酸素化および脱酸素化されたヘモグロビンの光吸収スペクトルは、光音響トモグラフィーの撮像で使用される時、機能撮像モダリティの作成に役立つオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンのコントラストを確立することができる2つの近赤外線波長の選択を可能にする(2)。ヘモグロビンの2つの酸素化状態の識別は、腫瘍に供給する動脈および腫瘍から排出する静脈の位置確認を可能にする。この機能により、放射線科医は、悪性腫瘍増殖の高度に血管形成されかつ低酸素の組織を識別し、および、10のうち7~8の生検手順が陰性の結果を伴うときに、現在予想されるよりも大きな信頼度をもって生検を推奨することが期待される(3)。これらの光音響画像は、腫瘍内の総ヘモグロビン[tHb]および血液酸素飽和度[sO2]の機能情報を提供することにより、超音波単独と比べて検出の感度および医療診断の特異性を改善することができ、乳房の形態的な組織構造内に表示することができる(4)。
【0005】
改良された乳房撮像システムに対する大きな医療のニーズおよび大規模市場によって動機づけられ、光音響トモグラフィーの原則に基づいた多くの臨床的なプロトタイプシステムが21世紀の初め以来開発されており(5-12)、および、すべては、乳癌の検出において十分な技術的能力を報告した。しかしながら、統計的に有効な多施設研究において試験され、および、臨床の実行可能性が報告されたシステムは、IMAGIO (Seno Medical Instruments, San Antonio, TX) のみであった(3)。このデュアル-モダリティ(dual-modality)の光音響/超音波撮像システムは、手持ち式プローブに基づく設計と組み合わされて、利便性と、実時間映像フレームレート機能の利点を持つ(13)。しかしながら、その制限のある視野を備えた手持ち式プローブは、高度に訓練された放射線科医によってのみ解釈することができる、位置分解能が低下し、およびトモグラフィー復元の定量的画像の輝度が不完全な2Dスライスを供給する。
【0006】
従って、当該技術分野において、定量的に正確かつ容易に解釈可能なボリュメトリック画像を備えた乳房全体の自動スクリーニングを提供する三次元全景トモグラフィーシステムに対する、認識されたニーズがある。特に、先行技術には、癌性の腫瘍の同時診断を伴う乳房スクリーニングのための定量的機能・解剖学的撮像システムが欠けている。とりわけ、本発明の定量的撮像システムの設計は、相補的に記録された(coregistered)超音波画像によって視覚化された解剖学的な組織構造内に機能的および分子の画像を表示するものであり、癌と血管疾患の検出において多数の用途がある。本発明はこの長年続くニーズと当該技術分野での要望を満たすものである。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、定量的トモグラフィーのためのシステムを対象とする。前記システムにおいて、レーザーは、赤から近赤外線のスペクトル範囲内の波長でレーザー光の瞬時パルスを放射するように構成され、ここでレーザーはある波長循環モードにおいて動作可能である。光ファイバーバンドルは、最大限の伝送によって対象の全組織領域にレーザー光の瞬時パルスを照射するように構成される。画像モジュールは、対象の組織領域に対応する形状を持った撮像タンク、超広帯域超音波トランスデューサーの少なくとも1つの光音響アレイ、および、超音波トランスデューサーの少なくとも1つの超音波アレイを含む。超広帯域超音波トランスデューサーの光音響アレイは、レーザー光の瞬時パルスによって対象の組織領域において生成された、超広帯域内の超音波周波数の超音波信号を検出するように構成される。超音波トランスデューサーの少なくとも1つの超音波アレイは、組織領域の中へ超音波のパルスを伝送し、および組織領域から反射、または組織領域を通って伝送された超音波信号を検出するように構成される。画像モジュールはまた、撮像タンクを満たす接触媒質も含み、および、これを介してレーザー光の瞬時パルスと超音波のパルスは伝送される。多重チャンネルの電子データ取得システムは、アナログ前置増幅器と、アナログ-デジタル変換器と、デジタルデータ記憶装置と、処理基板と伝送基板と、を含む。データ取得システムはフィールドプログラマブルゲートアレイ・マイクロプロセッサーによって制御される。コンピューターは多重チャンネル電子データ取得システムと電子連通し、および、マルチコア中央処理装置(CPU)とマルチコア・グラフィック処理装置(GPU)を含み、および、システム制御、信号処理、画像再構成、および画像の相補的な記録(coregistration)のために前記CPUとGPUを制御するように構成されたソフトウェアを、実体的に格納している。定量的トモグラフィーのためのシステムのオペレーターに再構成画像を提示するために、高解像度ディスプレイは、コンピューターに電子的に接続される。
【0008】
本発明は、また被験体における対象の組織領域の定量的パラメーターまたは機能パラメーターを画像化する方法を対象とする。組織領域は、本明細書に記載する定量的トモグラフィーのためのシステムの撮像タンクに入れられ、および、超広帯域超音波トランスデューサーの光音響アレイと超音波トランスデューサーの超音波アレイは、撮像タンクの内部に位置づけられる。レーザー光の波長は、波長循環モードで組織領域に対して瞬時パルスとして照射するために、赤から近赤外線のスペクトル範囲内で選ばれ、選択された波長のレーザー光を照射した循環瞬時パルスは、組織領域に対する。各々の選択された波長について、組織領域内で生成された超音波周波数の超広帯域内の信号は、光音響アレイにより検出され、および、検出された信号からの光音響画像は、選択された各波長について得られ、相補的に記録される。定量的機能パラメーターまたは分子パラメーターの画像は相補的に記録された光音響画像から生成され、および、生成された定量的画像が表示される。
【0009】
本発明は、撮像方法に関する。前記方法は、超音波アレイから超音波パルスを組織領域に伝送する工程と、超音波アレイにより組織領域から反射した信号または組織領域を通って伝送された信号を検出する工程をさらに含む。組織領域内の音速の分布に基づいた音速画像、および超音波反射または減衰の解剖学的画像は、検出された超音波信号から生成される。定量的な機能パラメーターまたは分子パラメーターの画像は、解剖学的構造と相補的に記録され、および、定量的パラメーターまたは機能パラメーターの画像と解剖学的画像または音速画像とを重ね合わせたものとして、相補的に記録された画像が表示される。
【0010】
本発明は、音速画像を介して光音響画像、および超音波の反射または減衰の画像を向上させる工程、をさらに含む、別の関連する方法を対象とする。本発明は、定量的な機能パラメーターまたは分子パラメーター、および重ね合わせに表示された解剖学的構造から癌を診断する工程をさらに含む、さらに別の関連する方法を対象にする。本発明は、被験体の乳房を画像化するためのレーザー光音響超音波撮像システム・アセンブリー(LOUISA)をさらに対象とする。レーザーは、赤から近赤外線スペクトル範囲内の波長でレーザー光の瞬時パルスを放射するように構成され、前記レーザーは、スペクトル範囲内の2つまたは3つの波長の波長循環モードにおいて動作可能である。円弧形状の光ファイバーバンドルは、乳房全体にレーザー光の瞬時パルスを放射するために、乳房のまわりで回転するように構成される。乳房に対応する球面形状を備えた撮像タンク。超広帯域超音波トランスデューサーの少なくとも1つの円弧形状の光音響アレイは、レーザー光の瞬時パルスによって乳房中で生成された50kHzから6MHzの超広帯域内の超音波信号を検出するように構成され、および、超音波トランスデューサーの少なくとも1つの円弧形状の超音波アレイは、乳房の中へ超音波のパルスを伝送し、および、乳房から反射、または乳房を通って伝送された超音波信号を検出するように構成される。光学的および音響的に透過的な媒質が撮像タンクに充填され、これを介して伝送されたレーザー光の瞬時パルスと超音波のパルスが伝送される。LOUISA内のエレクトロニクスは、多重チャンネルの電子データ取得システムと、多重チャンネルの電子データ取得システムと電子通信状態にあるコンピューターと、コンピューターに電子接続された高解像度ディスプレイと、を含む。多重チャンネルの電子データ取得システムは、アナログ前置増幅器と、アナログ-デジタル変換器と、デジタルデータ記憶装置と、処理基板と、伝送基板と、を含み、および前記データ取得システムは、フィールドプログラマブルゲートアレイ・マイクロプロセッサーによって制御される。コンピューターは、マルチコア中央処理装置(CPU)と、マルチコア・グラフィック処理装置(GPU)とを含み、および、システム制御、信号処理、画像再構成、および画像の相補的な記録のために前記CPUとGPUを制御するように構成されたソフトウェアを、実体的に格納している。高解像度ディスプレイは、LOUISAシステムのオペレーターに乳房の再構成画像を提示する。
【0011】
本発明の他のものとさらなる態様、特徴、利益および利点は、開示の目的で示された本発明の好ましい実施形態の以下の記載によって明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
上に列挙された本発明の特徴、利点、および目的が、以降明らかになる他のものと同様に達成され、詳細に理解され得ることから、先に簡潔に要約された本発明のさらに特定される記載が、添付の図面で例証される特定の実施形態を参照することによって含まれることもある。これらの図は明細書の一部を形成する。しかしながら、添付の図が本発明の好ましい実施形態を例証しており、したがって、その範囲に限定するものと考慮するものではないことに留意する。
【0013】
図1A図1Aは全景OAT 1Dの基礎的な概略の図解であり、および、図1Bから図1Eは、レーザーの光音響超音波撮像システム・アセンブリー(LOUISA)乳房スキャンシステムを例示する。図1Aは、独立して回転する光音響プローブによって検出可能な腫瘍による光吸収から超音波を生成した回転する円弧形の光ファイバー照明を示しており、これにより、正確なボリュメトリック再構成のための総合信号データセットが提供される。
図1B図1Aは全景OAT 1Dの基礎的な概略の図解であり、および、図1Bから図1Eは、レーザーの光音響超音波撮像システム・アセンブリー(LOUISA)乳房スキャンシステムを例示する。図1Bは単一の円弧形状の光ファイバーパドルを備えた光ファイバーバンドルである(図1Cの(7)を参照)。
図1C図1Aは全景OAT 1Dの基礎的な概略の図解であり、および、図1Bから図1Eは、レーザーの光音響超音波撮像システム・アセンブリー(LOUISA)乳房スキャンシステムを例示する。図1Cは、2つの円弧形の光ファイバーパドルを備えた光ファイバーバンドルである。
図1D図1Aは全景OAT 1Dの基礎的な概略の図解であり、および、図1Bから図1Eは、レーザーの光音響超音波撮像システム・アセンブリー(LOUISA)乳房スキャンシステムを例示する。図1Dは大きな乳房をスキャンするための撮像モジュールを示す。撮像モジュールは、乳房のまわりの撮像タンク(3)全体を回転させるための大きなモーターステージ(2)に位置づけられた撮像モジュール・プラットホーム(1)を有する。撮像モジュールは、非常に薄くて、球面形状の、光学的および音響的に透過的なプラスチックカップである乳房安定器(図1Eを参照)を使用して乳房が撮像モジュールの中に安定させられる、音響結合媒質を満たした撮像タンクと、凹面の円弧形状の超音波トランスデューサーのアレイ(4)と、凹面の円弧形状の光音響トランスデューサーのアレイ(5)と、光音響トランスデューサーの帯域幅を拡張する光音響プローブに直接接続される、前置増幅器ボード(6)と、均質な光線で乳房を照らす円弧形状の光ファイバーバンドル(光ファイバーパドル)(7)であって、乳房全体をより速く照明のために1つ(図1Bを参照)、2つ(図1Cを参照)、または数個の円弧形の光ファイバーパドルを有している場合がある、光ファイバーバンドルと、撮像ボウルのまわりの円弧形状の光ファイバーパドルを回転させる小型モータ(8)と、を含む。
図1E図1Aは全景OAT 1Dの基礎的な概略の図解であり、および、図1Bから図1Eは、レーザーの光音響超音波撮像システム・アセンブリー(LOUISA)乳房スキャンシステムを例示する。図1Eは乳房安定器を示す。
図2A】3つの平らな超広帯域超音波トランスデューサーの2Dアレイからなる1つの円弧形状のプローブを備えた球状に形成された撮像タンクの設計を示す図である。1つのトランスデューサーのアレイは、解剖学的(超音波)および分子(光音響)撮像の両方の用途に役立つ。
図2B】3つの平らな超広帯域超音波トランスデューサーの2Dアレイからなる1つの円弧形状のプローブを備えた球状に形成された撮像タンクの設計を示す図である。1つのトランスデューサーのアレイは、解剖学的(超音波)および分子(光音響)撮像の両方の用途に役立つ。1つのトランスデューサーのアレイは、解剖学的(超音波)および分子(光音響)撮像の両方の用途に役立つ。
図3】円筒状の3Dトモグラフィーシステムのための光音響の超音波トランスデューサーのアレイの模式図であり、ここで、付属の光ファイバー照明を備えた光音響のトランスデューサーの半分のリングまたは完全なリングはいずれも、3D画像を得るために円筒体のz軸に沿って並進する。
図4A図4A図4Bは、平均的な乳房(meff~1.15/cm)の光学的性質を備えたPVCPで作られた乳房模型の写真(図4A)であり、および、757nmと797nmの2つの循環する波長で模型を照らしながら得られた2つの相補的に記録された光音響画像から再構成された模型内の[sO2]の機能画像(図4B)である。
図4B図4A図4Bは平均的な乳房(meff~1.15/cm)の光学的性質を備えたPVCPで作られた乳房模型の写真(図4A)であり、および、 757nmと797nmの2つの循環する波長で模型を照らしながら得られた2つの相補的に記録された光音響画像から再構成された模型内の[sO2]の機能画像(図4B)である。。
図5A図5A図5Bは、LOUISAの手持プローブを用いて得られた動脈/静脈ペアの光音響の2D画像である。静脈が757nmの照明により明るく見えることを図示する。
図5B図5A図5Bは、LOUISAの手持プローブを用いて得られた動脈/静脈ペアの光音響の2D画像である。動脈が1064nmに明るく可視であることを図示する。
図6A】最高輝度投影の一例であり:血管、微小血管で一杯の乳首と小さな腫瘍の成長を視覚化するLOUISAの能力を実証する3Dの光音響画像のコロナルx-y(図6A)、サジタルx-z(図6B)、およびy-z(図6C)である。
図6B】最高輝度投影の一例であり:血管、微小血管で一杯の乳首と小さな腫瘍の成長を視覚化するLOUISAの能力を実証する3Dの光音響画像のコロナルx-y(図6A)、サジタルx-z(図6B)、およびy-z(図6C)である。
図6C】最高輝度投影の一例であり:血管、微小血管で一杯の乳首と小さな腫瘍の成長を視覚化するLOUISAの能力を実証する3Dの光音響画像のコロナルx-y(図6A)、サジタルx-z(図6B)、およびy-z(図6C)である。
図7A図7Aから図7Cは、757nmの波長で取得された3D光音響画像から得られた健康なボランティアの乳房の最高輝度投影の画像である。図7Aは生の加工されていない画像であり、それは乳房を通った光エネルギーの不均質の分布により浅い血管のみを示す。
図7B図7Aから図7Cは、757nmの波長で取得された3D光音響画像から得られた健康なボランティアの乳房の最高輝度投影の画像である。図7Bは、乳房の表面におけるレーザー・エネルギー分布の正規化(等化)によって処理された光音響(OA)画像であり、それは撮像のより大きな深さを示す。
図7C図7Aから図7Cは、757nmの波長で取得された3D光音響画像から得られた健康なボランティアの乳房の最高輝度投影の画像である。図7Cは、深さの関数としての有効光減衰に対する補正によって処理された光音響画像であり、それは、乳房についての撮像の完全な深さを示す。
図8】光音響と超音波の、相補的に記録された3D画像の2Dサジタルスライスの、一例である。超音波映像の対応するグレースケール値を備えた付加された単に最大光度を表示する、輝度閾値と光音響の撮像スライスが示される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で使用されるように、「a(1つの)」又は「an(1つの)」は、1以上を意味し得る。本明細書で使用されるように、請求項において、「含む(comprising)」という単語と共に使用されるとき、単語「1つの((a)または(an))」は1以上を意味してもよい。
【0015】
本明細書で使用されるように、「別の(another)」または「他の(other)」は、少なくとも第2のまたはそれ以上の同じまたは異なる請求項の要素またはその構成要素を意味してもよい。同様に、単語「又は」は、文脈が他に明確に示していない限り、「及び」を含むように意図される。「含む(comprise)」は「含む(include)」を意味する。
【0016】
本明細書で使用されているように、用語「約(about)」は数値を指しており、明示されているかどうかにかかわらず、例えば、全ての数字、分数、および割合を含んでいる。用語「約」は一般に、列挙された値と同等である(例えば、同じ機能または結果を有する)と当業者がみなす数値範囲(例えば、列挙された値の+/-5~10%)を指す。幾つかの例においては、用語「約」は、最も近い有効数字まで四捨五入される数値を含んでもよい。
【0017】
本発明の一実施形態では、定量的トモグラフィーためのシステムが提供され、該システムは、赤から近赤外線のスペクトル範囲内の波長でレーザー光の瞬時パルスを放射するように構成されたレーザーであって、ある波長循環モードにおいて動作可能である前記レーザーと;最大限の伝送により対象の全組織領域にレーザー光の瞬時パルスを放射するように構成された光ファイバーバンドルと;撮像モジュールであって、対象の組織領域に対応する形状を備えた撮像タンクと;レーザー光の瞬時パルスによって対象の組織領域において生成された、超広帯域内の超音波周波数の超音波信号を検出するように構成された、超広帯域超音波トランスデューサーの、少なくとも1つの光音響アレイと;組織領域の中へ超音波のパルスを伝送し、および組織領域から反射、または組織領域を通って伝送された超音波信号を検出するように構成された、超音波トランスデューサーの少なくとも1つの超音波アレイと;撮像タンクを満たし、これを介してレーザー光の瞬時パルスと超音波のパルスが伝送されるところの接触媒質と、を含む、撮像モジュールと;多重チャンネルの電子データ取得システムであって、アナログ前置増幅器と、アナログ-デジタル変換器と、デジタルデータ記憶装置と、処理基板と伝送基板とを含み、フィールドプログラマブルゲートアレイ・マイクロプロセッサーによって制御される、多重チャンネルの電子データ取得システムと;コンピューターであって、多重チャンネル電子データ取得システムと電子通信状態にあり、および、マルチコア中央処理装置(CPU)とマルチコア・グラフィック処理装置(GPU)を含み、および、システム制御、信号処理、画像再構成、および画像の相補的な記録のために前記CPUとGPUを制御するように構成されたソフトウェアを実体的に格納している、コンピューターと;定量的トモグラフィーのためのシステムのオペレーターに再構成画像を提示するためにコンピューターに電子接続される、高解像度ディスプレイと、を含む。
【0018】
この実施形態において、波長の赤と近赤外線のスペクトル範囲は約650nmから約1250nmである。また、波長循環モードは、赤から近赤外線のスペクトル範囲内の2つまたは3つの波長であってもよい。この実施形態のある態様において、2つの循環する波長は757nmと850nmである。この態様において、レーザーは、定量的分子撮像のためのNd:YAG励起OPOレーザーであり得る。別の態様において、3つの循環する波長は757nm、800nm、および850nm、または、757nm、800nm、および1064nmである。この態様において、レーザーは定量的機能撮像のためのCr:LICAFレーザーである場合がある。さらに、レーザー光の瞬時パルスの最大限の伝送は、バンドルにおいてファイバーのハニカム形状を作る、ホットヒューズされた(hot fused)力先端により実行される場合がある。
【0019】
また、この実施形態において、アレイにおける超広帯域超音波トランスデューサーは、50kHzから6MHzの超広帯域内の超音波信号を検出する場合がある。ある態様において、超広帯域超音波トランスデューサーの光音響アレイと超音波トランスデューサーの超音波アレイは1つのアレイに組み合わされる。
【0020】
さらに、ここで、撮像モジュールにおける撮像タンクは球面形状または円筒形状を有する。対象の組織領域の一例は乳房組織の領域である。
【0021】
さらに、本実施形態において、ソフトウェアは、対象の組織領域または解剖学的構造内の定量的分子濃度または機能パラメーターの画像を生成するために、信号処理と画像処理のためのプロセッサ実行命令を作動させる。その態様において、命令は、検出された光音響信号からの超広帯域超音波トランスデューサーの音響-電気的および空間的なインパルス応答関数のデコンボリューションを使用して、瞬時レーザーパルスによって組織領域において生成された光音響信号のオリジナルプロファイルを修復するように;全景の幾可学において獲得した完全データ集合を利用する厳密な直接アルゴリズムまたは反復アルゴリズムを介して、組織領域の3D光音響トモグラフィー画像を再構成するように;すべての表面ボクセルの画像輝度を等しくすることによって組織領域の表面に対する入射光量の分布を正規化するように;有効光減衰の補正によって組織領域全体を通る入射光量の分布を正規化するように;組織領域において吸収された光エネルギーの光音響画像上の組織領域を通った入射光量を正規化した後に、光吸収係数の画像を表示するように;定量的な機能画像または分子画像を得るために、2つまたは3つの循環するレーザー波長で取得された、相補的に記録された光音響画像を生成するように;および、相補的に記録された光音響画像、または超音波の反射と減衰の画像のコントラストおよび解像度を改善するために使用される、組織領域内の音速分布の画像を取得するように、構成される。
【0022】
本発明の関連する実施形態において、被験体の乳房を画像化するためのレーザー光音響超音波撮像システムアセンブリー(LOUISA)が提供され、該アセンブリーは、赤から近赤外線スペクトル範囲内の波長でレーザー光の瞬時パルスを放射するように構成されたレーザーであって、スペクトル範囲内の2つまたは3つの波長の波長循環モードにおいて動作可能である、前記レーザーと;乳房全体にレーザー光の瞬時パルスを放射するために、乳房のまわりで回転するように構成された、円弧形状の光ファイバーバンドルと;乳房に対応する球面形状を備えた撮像タンクと;レーザー光の瞬時パルスによって乳房中で生成された50kHzから6MHzの超広帯域内の超音波信号を検出するように構成された、超広帯域超音波トランスデューサーの少なくとも1つの円弧形の光音響アレイと;乳房の中へ超音波のパルスを伝送し、および乳房から反射、または乳房を通って伝送された超音波信号を検出するように構成された、超音波トランスデューサーの少なくとも1つの超音波アレイと;撮像タンクを満たし、これを介してレーザー光の瞬時パルスと超音波のパルスが伝送されるところの、光学的および音響的に透過性の接触媒質と;電子サブシステムであって、多重チャンネルの電子データ取得システムであって、アナログ前置増幅器と、アナログ-デジタル変換器と、デジタルデータ記憶装置と、処理基板と、伝送基板とを含み、フィールドプログラマブルゲートアレイ・マイクロプロセッサーによって制御される、前記電子データ取得システムを含む、電子サブシステムと;多重チャンネル電子データ取得システムと電子通信状態にあり、および、マルチコア中央処理装置(CPU)とマルチコア・グラフィック処理装置(GPU)を含み、および、システム制御、信号処理、画像再構成、および画像の相補的な記録のために前記CPUとGPUを制御するように構成されたソフトウェアを実体的に格納している、コンピューター;LOUISAシステムのオペレーターに乳房の再構成画像を提示するためにコンピューターに接続される、高解像度ディスプレイ、を含む。
【0023】
この実施形態において、2つの循環する波長は757nmと850nmであり得る。また、この実施形態において、3つの循環する波長は757nm、800nm、および850nm、または、757nm、800nm、および1064nmである。さらに、超広帯域超音波トランスデューサーの光音響アレイと超音波トランスデューサーの超音波アレイは1つのアレイに組み合わされ得る。さらに、円弧形状の光ファイバーバンドル、円弧形状の光音響アレイ、および円弧形状の超音波アレイは、光音響アレイおよび超音波アレイの各々の位置の乳房全体の照明のために乳房のまわりで独立して回転するように構成される。
【0024】
本発明の別の実施形態において、被験体における対象の組織領域の定量的パラメーターまたは機能パラメーターを撮像する方法が提供され、該方法は、先に記載されたように、定量的トモグラフィーのためのシステムの撮像タンクに組織領域を配置する工程と;超広帯域超音波トランスデューサーの光音響アレイと超音波トランスデューサーの超音波アレイを撮像タンクの内部に位置づける工程と;波長循環モードで組織領域に対して瞬時パルスとして照射するために、赤から近赤外線のスペクトル範囲内でレーザー光の波長を選択する工程と;選択された波長で組織体積にレーザー光の循環瞬時パルスを放射する工程と;組織領域内に生成された超音波周波数の超広帯域内で選択された各々の波長の信号を光音響アレイにより検出する工程と;選択された各波長の検出された信号から光音響画像を取得する工程と;光音響画像を相補的に記録する工程;相補的に記録された光音響画像から定量的機能パラメーターまたは分子パラメーターの画像を生成する工程;および、生成された定量的画像を表示する工程を含む。
【0025】
この実施形態に対し、前記方法は、超音波アレイから超音波のパルスを組織領域に伝送する工程;超音波アレイにより、組織領域から反射した信号または組織領域を通って伝送された信号を検出する工程;組織領域内の音速の分布に基づいて音速画像を生成する工程;検出された超音波信号から、超音波の反射または減衰の解剖学的画像を生成する工程;解剖学的構造の中に定量的な機能パラメーターまたは分子パラメーターの画像を相補的に記録する工程;および、定量的パラメーターまたは機能パラメーターの画像と解剖学的画像または音速画像とを重ね合わせたものとして相補的に記録された画像を表示する工程、を含む。別のさらなる実施形態では、方法は、音速画像を介して光音響画像、および超音波の反射または減衰の画像を向上させる工程を含む。また別のさらなる実施形態において、方法は、定量的な機能パラメーターまたは分子パラメーター、および重ね合わせに表示された解剖学的画像から癌を診断する工程を含む。癌の一例は乳癌である。
【0026】
すべての実施形態において、選択された各波長で生成された信号の検出は同時に行われる場合がある。また、すべての実施形態において、定量的機能パラメーターは、タンパク質の濃度、タンパク質受容体の濃度、または乳癌に関連する分子の濃度、またはそれらの組合せを含む場合がある。さらに、分子パラメーターは[tHb]または[sO2]、あるいはこれらの組み合わせであり得る。
【0027】
すべての実施形態の1つの態様において、対象の組織領域は球状に形成される場合があり、および、トランスデューサーのアレイは円弧形状であり、トランスデューサーのアレイはコンピューター制御のモーターで対象領域の回りを回転する。また、球状に形成された対象の組織領域のために、トランスデューサーのアレイの回転とは独立に、ファイバーバンドルは対象領域の回りを回転し、結果として、スキャンしている間、トランスデューサーのアレイの各々の位置のために対象の組織領域の全面的な照明が得られる。
【0028】
すべての実施形態の別の態様において、対象の組織領域は円筒状に形成されてもよく、トランスデューサーのアレイは円弧形状か完全なリング形状であってもよく、および、コンピューター制御のモーターによって、対象領域に沿って並進する。また、円筒状に形成された対象の組織領域について、光ファイバーバンドルはトランスデューサーのアレイと共に円筒体の軸線に沿って並進する。
【0029】
全景三次元(3D)ボリュメトリック画像診断システムは、腫瘍およびそれらの環境などの、特定の解剖学的構造内の定量的分子情報を提供することができる定量的トモグラフィーシステム(QTシステム)に対する診断放射線科医からの要求に応えて開発された。そのようなシステムの多くの重要な応用のうちの1つは、癌の検出および診断である。従って、本発明は乳癌の検出および診断のためにレーザー光音響超音波撮像システム・アセンブリー(LOUISA)を供給する。
【0030】
このシステムの技術的特徴は、周密で種々様々な乳房の、断層合成マンモグラフィーのエックス線をベースとするモダリティの低い検出感度と、磁気共鳴撮像の低い診断特異性とを改善することを支援する。我々は、腫瘍とそれらの環境を含む乳房の形態的な構造内で総ヘモグロビン[tHb]および血液酸素飽和度[sO2]の機能パラメーターを示している定量的に正確な乳房の分子画像の相補的な記録が、乳癌医療のための臨床的に実行可能な解決策を供給するであろうことを教示する。LOUISA内の定量的分子撮像は、以下に記載される光音響サブシステムのユニークなハードウェアの機能、およびソフトウェアの方法とアルゴリズムによって可能となる。腫瘍などの対象の組織領域(ROI)内の特定構造物の解剖学的な撮像は、以下に記載される超音波サブシステムのハードウェアの機能、およびソフトウェアの方法とアルゴリズムによって可能となる。このシステムを臨床的に実行可能なだけでなく実際的にもするのは、新しい信号取得およびスキャンの設計であり、それは、時間の第四次元をシステムの3D機能に追加して、全ROIの迅速なボリュメトリック3Dスキャニングを可能にする。結局、システムは空間分解能がある撮像だけでなく、時間分解能がある3D撮像を行うことができる。
【0031】
システム概要
QTシステムは、そのオペレーションを可能にする6つの主要構成要素、および、新規な特徴と能力を有し:
【0032】
1.波長循環機能を備えた、赤から近赤外線スペクトル範囲にある光エネルギーの瞬時パルスを放射するパルスレーザー。本発明に使用されるような「瞬時パルス」は、これらのレーザーパルスの持続時間が、音波がボクセルを通って音速で伝播し、光音響画像上に解決されるまでに要する時間よりもはるかに短いことを意味する。例えば、望ましい分解像、つまり、ボクセルサイズ0.15mmの場合、音速は1.5mm/マイクロ秒であると考えられ、音波がこのボクセルを通って伝播するために所要する時間は0.1マイクロ秒である。「はるかに短い」とは、少なくとも3倍の短さであることを意味する。従って、この特定の一例のために、レーザーパルスは30ナノ秒より短くなる。だが同時に、短過ぎるパルスは、システムの光学エレメントを、第一には光ファイバー光照射サブシステムを、破損しかねないため、許容可能ではない。
【0033】
赤と近赤外線のスペクトル範囲は、650nmから1250nmの波長の範囲である。この波長範囲は、生物学的組織の中への光エネルギーの深い浸透にとって、および、同時に、ヘモグロビン、オキシヘモグロビン、脂質、水、そして医療の診断と治療において使用される外来性の対比剤、などの、医学的に重要な分子による強い光吸収にとって重要である。波長循環機能は、放射された波長がレーザーパルスごとに変化していることを意味する。定量的分子撮像のために選ばれる波長の最適な数は2であり、それは2つ未知の濃度の分子、または2つの未知の機能パラメーターに対応する。
【0034】
対象の分子がヘモグロビンとオキシヘモグロビンである場合、総ヘモグロビン[tHb]と血液酸素飽和度[sO2]の機能パラメーターを表示する画像は、機能画像と呼ばれる。これらの画像は2つの波長で得られた光音響画像に基づいて計算することができ、その1つ、例えば757nmは、ヘモグロビンの光吸収のピークに一致し、および他方、例えば850nmは、オキシヘモグロビンの光吸収のピークと一致する。2つの波長はまた、内在性の分子または外来性の対比剤の濃度を測定し、および表示するために不可欠でもある。この場合、1つの波長は、対象の分子の光吸収ピークにおいて選択され、および、第2の波長は、この対象の分子の光吸収ピークの外部で選択されている。
【0035】
分子画像または機能画像からの定量的情報の精度を上げるために、3つの循環波長が使用され得る。例えば、800nmの第3の波長は、[tHb]と[sO2]の機能撮像のために使用することができる。この第3の波長は、ヘモグロビンとオキシヘモグロビンの吸収係数が等しくなるところの、光吸収スペクトルの等吸収点に対応するため、機能画像の正規化のために使用することができる。定量的画像を得るための合計画像取得時間は可能な限り短くあらねばならないため、循環における3つを超える波長は、医療用撮像において実際的ではない。
【0036】
波長循環は、光音響画像の相補的な記録にとって決定的に重要であり、それは加法、減法、および除法などの数学的演算によって分子(機能)画像の生成を可能にする。数学的演算に耐えることができるのは、相補的に記録された画像のみであり、さもなければ、結果として得られた画像は大変高い水準のエラーを有するだろう。1つの画像の各ボクセルが第2の画像上と同じ場所(座標)にある時、画像が相補的に記録され、両画像が取得される間に生きている組織が動かない場合にのみ、それを達成することができる。従って、相補的な記録を達成するために、2つの画像は同時に、またはできるだけ早く交互に、取得されなければならない。レーザーパルスの望ましい繰返数は10Hzから50Hzであり、それは、2つの異なる波長で獲得した画像の間で100msから20msの時間遅延を可能にする。しかし、2つの画像の取得間で時間遅延を最小値にすることは可能であり、それは、ROIにおける最も遠いボクセルから検出器アレイにおける超音波トランスデューサーへの超音波伝搬の時間に対して等しい(およそ0.15ms)。この究極の相補的な記録は、デュアルレーザー設計で達成することができ、それは、あらゆる所定の遅延を備えた2つの循環波長の放出を引き起こすことを可能にする。このことにより、次に、各光音響信号における第1のサンプルの位置が同期トリガーによって正確に画定されて、2つの循環する波長において得られた2つの連続する光音響信号を、データ取得システムによって記録された1つの信号として記録することが可能となる。
【0037】
2.光ファイバー光送達(FLD)サブシステム。光ファイバーバンドルは、入射レーザー光の形状と一致するように円形の入力を有する。先端のファイバーは、ハニカム形状にホットヒューズされる。バンドルのファイバーの六角形の形状は、ファイバー間での光の損失を最小化することを可能にし、出力への光の最大限の伝送(最大85%)を達成する。その出力は組織ROIの形状に従って形成される。ほとんどの人間臓器のRIOは球状または円筒状のいずれかの形状を有するため、光ファイバー出力の最も有益な形状は円弧である。円弧は、円弧形状のパターンに配置された多くの平坦線で適切に近似することができる。同じレーザーパルスによって同時に照らされるROIの部分を増やすために複数の円弧形状の光ファイバーバンドルを使用することができる。例えば、乳房は乳癌の画像診断のためのROIである。女性の乳房の自然な形態が半球であるので、FLDサブシステムの設計は、花の花弁のような1つの中心から放射する90degの円弧または複数の円弧である(図1A-1C)。首、腕、脚、指などの、他の臓器およびROIのためにもなお、FLD出力は円弧として形成され、および、ファイバーの複数の円弧は円筒表面としての形成することができる。FLDサブシステムはコンピューター制御のモーター上に配置され、従って、それは全ROIを照らすために回転するか、または並進することができる(図1D)。
【0038】
3.圧力の過渡的変化を感知できる超音波トランスデューサーのアレイにより代表される2つのプローブを備えた撮像モジュール。第1のプローブは光音響(OA)であり、受信モードにおいて動作する超広帯域超音波トランスデューサー(UBT)の円弧形状のアレイにより代表される。第2のプローブは超音波(US)であり、伝送および受信モードにおいて動作する超音波トランスデューサーの円弧形のアレイにより代表される。プローブの円弧形状は、円弧に沿って配置された多くの平坦線によって代表され得る。プローブの円弧形状は、小さな物理的寸法で音響開口の大幅な拡大を可能にし、次に、画像の高い位置分解能を可能にする。
【0039】
両方のプローブは、光学的に透過性のタンクに入れられ、次にコンピューター制御のモーターに(FLDサブシステムの回転または並進のために使用されるモーターとは独立に)接続され、どれが球形に形状の組織ROIのまわりで回転、または、円筒状形状の組織ROIの対称軸に沿って並進することができる。プローブに組織ROIのまわりを回転させること、および並進させることは、全景撮像ための完全なデータセットを、次に、定量的トモグラフィー画像の再構成を可能にする。FLDサブシステムのモーターおよび撮像タンクのモーターからの独立は、プローブの各位置のために、組織ROI全体の完全な照明を可能にする。大きな臓器全体のこの完全な照明は、より小さなパルス化エネルギーを有する、それほど高価でないレーザーで達成され、QTシステムをより実際的にする。
【0040】
あるいは、OAおよびUSプローブは1つのプローブに組み合わせられる場合があり、それは分子撮像と解剖学撮像の両方の用途に役立ち、および、そのことはQTシステムをより低価格にし、よりコンパクトにする。さらに、分子(光音響)画像の、解剖学的(超音波)画像との相補的な記録の目標は、OAとUSプローブが1つに組み合わせられる時、より容易に、および自然に達成される。プローブは、トランスデューサーの線形アレイ、または超音波トランスデューサーの二次元マトリックスのいずれかであり得る。超音波トランスデューサーの二次元のマトリックスは、プローブ指向性の融通性のあるステアリングを可能にし、音響レンズに対する必要性をなくし、プローブの感度を増加させ、ビデオレートでの3D画像の再構成を可能にし、大きな組織ROIのスキャニングの合計処理時間を低減させるため、QTシステムのために最も有益である。
【0041】
プローブにおけるトランスデューサーのための材料は、超広帯域超音波トランスデューサーの設計を可能にするものから選ばれるが、そのことは、QTシステムにとって決定的に重要である。UBTがなければ、検出された光音響信号は著しく歪んでおり、そのことは次に、分子画像および機能画像における定量的情報の精度を著しく劣化させる結果となる。超広帯域超音波トランスデューサーを設計し、および製作するための、トランスデューサー材料の一例は、限定されないが、PZTやPMN-PTなどの、単結晶複合圧電材料を含む。静電容量微細加工超音波トランスデューサー、cMUTもまた、UBTアレイの設計の好適な候補である。しかしながら、高周波および低周波の両方に延在する検出可能な超音波周波数の最も広い帯域を備えた最も感度のよいUBTアレイは、圧電微細加工超音波トランスデューサー(pMUT)から設計および製作され、そのことにより、50kHzから20MHzの検出された超音波周波数の最も広い超広帯域がもたらされ、および次に、最も高い定量的精度、最も高いコントラスト、および最高の解像度を同時に備えた光音響画像がもたらされ得る。また過渡的超音波の光検出器は、超広帯域超音波トランスデューサーとして使用することができる。光学のUBTの最も有望な設計は、組織変位を測定するファブリペローエタロン、およびレーザー光線偏向角を測定するバランスドフォトダイオードアレに基づく。
【0042】
4.低ノイズアナログ前置増幅器、アナログ-デジタル変換器およびデジタルデータ記憶装置、フィールドプログラマブルゲートアレイ・マイクロプロセッサーによって制御された処理基板および送信基板、USB3またはPCIエクスプレスなどの高速データポートを経由するコンピューターへの迅速なデータ伝送、を備えた、多重チャンネルの電子データ取得システム(DAS)。DASの重要な特徴は、(i)組織ROI表面からの強い信号、および同時に組織深部からの弱い信号の検出を可能にする、高ダイナミックレンジ(少なくとも14ビット)、(ii)アナログ信号の正確なデジタル化を可能にする、高いサンプリングレート(少なくとも30MHz)、および、(iii)2つの光音響の信号を同時に1つの信号として検出し、従って画像取得の時間を低減させ、および、完全な相補的記録ための条件をもたらす、新規な設計を可能にする、長く検出可能な信号長(少なくとも8000サンプル)、である。
【0043】
5.プロセッサ、メモリー、および少なくとも1つのネットワーク接続を備え、および、システム制御、データ後処理、および画像再構成、画像変換、画像の相補的な記録、および画像後処理のための、ソフトウェアを備えた、コンピューター。QTシステムにおける信号処理と画像処理は、システム設計の決定的に重要な新規性であり、それは、超広帯域超音波トランスデューサーを使用して、最小の歪みで記録された光音響信号のフルセットを利用する。以下の数学的処理は精密な定量的トモグラフィーを可能にし、 [tHb]および[sO2]などの機能パラメーター、同様に、特定のタンパク質受容体や他の生理学上重要な分子の濃度を測定することへの医療診断(特に癌の診断)における長年のニーズを満たす:
【0044】
a.検出された光音響信号からの超広帯域超音波トランスデューサーの音響-電気的および空間的なインパルス応答関数のデコンボリューションを使用する、瞬時レーザーパルスによって組織ROIにおいて生成された光音響信号のオリジナルプロファイルの修復。
【0045】
b.全景の幾可学において獲得した完全データ集合を利用する厳密なアルゴリズムを使用する、組織ROIの3D光音響トモグラフィー画像の再構成。画像精度をさらに増加させるために、光音響トモグラフィーの反復的方法を利用することができる。
【0046】
c.すべての表面ボクセルの画像輝度を等しくすることによる、組織ROI表面に対する入射光量分布の正規化;ROI表面ボクセルの光吸収係数が等しくない場合は、組織ROI安定器を使用して、入射光量を正規化するこの工程を実行する。組織ROI安定器は球状にまたは円筒状に形成された薄いプラスチックカップであり、それは、ROIが特定の明確に画定された形状と寸法を有していることを確実にするために、組織ROIに配置される。光学的かつ音響的に透過性のプラスチック製であるそのような安定器は、スキャン中、いかなる組織の動きも回避させ、ROI表面の正確な座標を提供することにより、相補的に記録された画像の再構成の精度を著しく向上する。組織ROI安定器の一例は、図1Dにおいて示される、各患者のために個別に選ばれた球面のパラメーターを備えた乳房カップである。
【0047】
d.有効光減衰の補正によって組織ROI体積全体を通る入射光量の分布を正規化;FLDサブシステムは、各表面のボクセルを球形の撮像タンクの焦点に結び付けるか、円筒状の撮像タンクの対称軸に結び付ける動径に沿って組織ROI表面に光エネルギーを垂直に放射するように設計されている。従って、有効光減衰の補正はこれらの動径Rに沿って実行することができる。生物学的組織における典型的な有効光減衰はベールの法則(Beer’s law)によって、~exp-(mueff R)と記載することができ、ここで、mueffは所与のレーザー波長の有効光減衰係数であり、および、Rは、光伝搬の動径沿って表面ボクセルから測定された組織における深さである。有効光減衰のより精密な機能は、工程(b)において再構成された画像上の徐々に減少する背景ボクセル輝度から実験的に測定することができる。たとえ、そのような測定が当該技術分野の現状において可能でなくとも、我々のQTシステムは超広帯域超音波トランスデューサーを利用し、このことは、生物学的組織による有効光減衰の勾配として光音響の画像上のそのような低周波勾配の測定を可能にする。組織ROIの体積にわたる光量の正規化(等化)の後に、工程(b)においてまず再構成された画像のボクセル輝度は光吸収係数に比例するようになる。
【0048】
e.撮像試験のために選ばれた循環レーザーの波長のそれぞれについて、信号処理工程(a)とイメージ処理工程(b)、(c)、(d)を実行する。
【0049】
f.2つまたは3つの循環するレーザー波長について定量的分子画像または機能画像を計算するために、工程(d)において得られた、相補的に記録された光音響画像を使用する。
【0050】
g.超音波の反射または減衰の画像または音速画像を再構成し、および分子(機能)画像でそれらの相補的な記録を確実にするために、超音波信号の完全セットを使用する。光音響画像と超音波画像の両方は、組織ROIにおける音速分布の知識を必要とする。従って、SoS(音速(speed of sound))画像は、光音響画像および超音波の反射または減衰の画像の精度(コントラストと解像度)を向上させるために使用することができる。
【0051】
h.相補的に記録された、超音波反射、減衰または音速に基づく解剖学的画像と重ね合わされた分子(機能)画像を表示する。これらの最終な重ね合わせ画像は、超音波画像においてグレースケール・コントラストによって表示された解剖学的な組織構造内に、カラーで分子濃度と機能パラメーターの定量値を表示する。
【0052】
i.コンピューターは、また、キーボードまたは人工知能ソフトウェアを使用する音声を介する対システム通信コマンドのためのオペレーター・インタフェースを有している。
【0053】
6.画像ディスプレイのための高解像度スクリーン。ディスプレイは物理的(LCD、LEDなど)またはホログラフィーであり得る。そのディスプレイは、コンピューターに対する通信コマンドのためのタッチ・スクリーン機能を有することができる。
【0054】
分子-解剖学的撮像のデュアルモダリティ
乳癌医療のための現在のテクノロジーの限界
現在利用されるX線に基づく乳房スクリーニングとマンモグラフィーと断層合成の画像診断モダリティは、特により若い女性の周密で種々様々な乳房において、感度および特異性の重大な限界を有する。電離放射線へ被爆の危険と早期発見の利点間の最適比に基づいた、米国癌学会は、マンモグラフィーを2年ごとに1回、および50歳以降にのみ推奨する(14)。乳房超音波は従って、X線スクリーニング・モダリティ(15)への補助として使用される。2Dおよび3Dバージョンの超音波は、偽陽性所見の極めて高い割合のせいで、画像診断モダリティとして利用される。しかしながら、マンモグラフィーと超音波の両方が癌を示唆し、生検を推奨するときでさえ、陰性の生検手順の割合は70%を超過する(16)。
【0055】
光音響(OA)による機能撮像
乳癌の光音響撮像についての極めて初期の研究から、それは腫瘍血管形成の機能撮像としての想を描かれた(17)。OAでは、主な発色団はヘモグロビンであり、従って、腫瘍に血液が充満している場合、血管と、それ故に腫瘍は、よりよく見える。超音波もまた、単独では偽陽性の診断をもたらす可能性があり、このことによって光音響撮像の付属物にまで格下げされ得る(10)。以前のシステムからの原初の研究において、LOUISAは、トランスデューサーがより大きいかったため(2cm)、それは脈管構造を一緒に束ねたように示した。現行システムは、より小さなトランスデューサー(1.1mm)を有し、また同様に、以前のシステムにおける線形のものとは反対に、球面の対物系を有する。過去には、腫瘍はいくつかの脈管構造を伴って見ることができたが、現在は、腫瘍および高度に明瞭に表現された脈管構造を見ることができ、臨床試験を始める用意は整っていると考えられる。
【0056】
近赤外線スペクトル範囲における少なくとも2つの光波長を備えた組織照明を使用する、ヘモグロビンとオキシヘモグロビンを判別する機能撮像は、まず、偶然実証された(18)。
【0057】
【数1】
【0058】
【数2】

光音響顕微鏡法で集められたデータに適用されるのと同じ式を使用して、Wangは、生きているネズミにおける血液酸素飽和度における機能変化を実証した(19)。現在、多くの研究集団が機能撮像の定量的精度を増加させる方法を開発しており、特に、組織深部におけるボリュメトリック撮像に挑戦している(20)。
【0059】
光量減衰に対する補正を介した定量的撮像
LOUISAの回転する光ファイバー光放射システムは、実験的にのみ可能である程の乳房の均質な全体の照明を提供するように設計されている。他方では、乳房組織の中で近赤外線光の光減衰を回避することは可能ではなく、この結果として乳房半球における有効光量の球状に対称な勾配が生じる。乳房半球の焦点における低減された有効光量は、トランスデューサーのアレイの焦点領域における高められた解像度によって部分的に補われることに留意することは、興味深い。空間分解能より小さな直径を備えた微小血管の輝度は、組織内の制限された光の透入のためにより低くなるが、このシステムの高められた解像度により高くなるだろう。
【0060】
照明が当たる表面からの深さに影響されない輝度を備えたボリュメトリック画像の再構成のために、ボクセルの輝度は、乳房の半径に沿って肌表面から焦点中心へ指数関数的に高められる。755nmから800nmの範囲における乳房の平均的な光減衰は、ほぼ、meff~1.15/cmであることがわかった。従って、関数exp(1.15R)は光音響画像の輝度パレットに適用され、式中、Rは半球の半径である。この手法は、赤色の酸素化血液、または、青色の非酸素化血液、のいずれかを示す、[sO2]の二項的な機能画像の再構成のために十分であった。
【0061】
機能画像と解剖学的画像の相補的な記録
たとえ乳房の超音波が乳癌診断において低い特異性しか持たなくとも、このモダリティは非常に感度がよく、および、乳房モフォロジーの一般的な理解を可能にする解剖学的特徴の良好な視野を提供する。超音波は、腫瘍影の形状に基づいたある程度の水準の特異性を伝えることができ、すなわち、良性腫瘍は丸胴形であり、その一方で癌性の病変は種々様々なモフォロジーを有し、およびしばしば芽を備えた「醜い」形状である。超音波に欠けているのは、血管形成密度と血液酸素飽和度などの機能/分子情報であり、それは、良性の塊および膿胞と悪性腫瘍を判別することに特異的である(21)。すなわち、光音響と超音波映像の相補的な記録は、特に両方のモダリティのために単一かつ同一のプローブおよび単一かつ同一のエレクトロニクスを利用可能な場合、適切に正当化される、(22-23)。
【0062】
初期の研究において、光音響画像において適切に視覚化された腫瘍のモフォロジーがBモード超音波において示されたモフォロジーに類似していることが実証された(5)。次の階段は、腫瘍内およびその近傍の総ヘモグロビンと血液酸素飽和度の機能パラメーターをグレースケールの超音波画像で表示することである。相補的に記録された光音響画像と超音波画像の2Dの重ね合わせは、統計的に有意な臨床研究において成功裡に実証され、それは、デュアルモダリティの診断特異性において、超音波単独と比較して2倍の上昇を示した(3)。
【0063】
全景の3D光音響画像と部分的視野の2D光音響画像は、近赤外線スペクトル範囲の2つの素早く循環するレーザー波長で取得される。乳房の2D解剖学的画像は、より広い音響アパチャーとより大きな位置分解能を得るために円弧形状のプローブを使用して、Bモード超音波によって提供される。乳房のまわりを回転するトランスデューサーのアレイで獲得した一連のBモード超音波スライスによって、乳房の解剖学的なバックグラウンドの3D画像はLOUISAにおいて使用可能となる。このことは、腫瘍近傍における腫瘍血管形成の微小血管構造およびより大きな脈管構造などの特異的な形態構造内の総ヘモグロビンと血液酸素飽和度の分布を視覚化する可能性を生み出す。
【0064】
2D光音響トモグラフィーの挑戦
超音波トランスデューサーの手持ち式プローブに基づいた光音響撮像システムは、生物医学撮像の関係者の間で人気が高まっている。これらのシステムは、癌と血管の異常の検出に関する用途において、標準ビデオレートの二次元画像を提供する。手持ち式プローブのコンパクトな寸法により、これらのリアルタイムの撮像システムは、生検中に、腫瘍の最も侵襲的な部分への針の挿入を誘導するために、および、外科手術の最中に循環と神経のネットワークを写像するために、役立つことができる。他方では、手持ち式プローブには、それらの小さなサイズ、およびそれが故の超音波トランスデューサーのアレイの小さな音響アパチャーに伴って、大幅な制限がある:(i)再構成トモグラフィーを使用して正確な輝度/コントラストを表示することを理論上不可能にする、不完全なデータセットを提供すること;(ii)画像平面内の位置分解能が乏しいこと、(iii)画像平面の外部の信号、特に大きな対象によって放射された低い超音波周波数を含んでいるものに対する除去率が乏しいこと。皮膚の同じ側の同一プローブ内でレーザー照明と超音波検出を伴う光音響撮像の後方モードは、低エコー性のプローブ・ハウジングや、音響レンズを照らして超音波トランスデューサーを機能不全にさせる分散したレーザー光に対する除去フィルタについての難しい設計要件をもたらす。これにより、関連する信号を背景から区別することを非常に困難にするアーティファクト信号と非ゼロ信号の勾配が生じる。我々の手持ち式プローブの設計は、後方モード撮像の問題を解決した(8)。進歩的なプローブ設計と超広帯域超音波トランスデューサーによって、光音響システムは、乳房の腫瘍のボリュメトリックのより高いコントラストとより大きな撮像深度を達成することができ、このことは、このシステム(3)の臨床での実用を可能にした。しかしながら、手持ち式プローブに基づいた2Dシステムは、極端に長い検査時間とオペレーターへの依存により、乳房スクリーニングのために使用することができない。従って、3Dの自動的な全景システムは、乳房を囲み、および主な乳房腫瘍からの癌細胞の排出を受け取る可能性があるリンパ節の撮像を担う2Dシステムと共に、スクリーニングに使用されなければならない。
【0065】
LOUISAにおける改善
上記の限界はすべて三次元の全景トモグラフィーシステム、LOUISAにおいて緩和、または補正された。レーザー照明はLOUISAにおいてトランスデューサーのアレイから引き離され、および、光音響プローブは超音波プローブから引き離される。
【0066】
定量的トモグラフィーシステム
全景3D光音響システム
制限された視野の二次元の光音響撮像システムの限界の多くは、全景3Dシステムにおいて回避することができる。先に、全景3D光音響トモグラフィーの利点は、マウスにおける臨床前研究のために設計されたレーザー光音響撮像システム(LOIS-3D)の開発によって実証された。LOIS-3Dは、96個の超広帯域超音波トランスデューサーの円弧形状アレイを使用し、および、被験体が360度回転されることで、96×360= 34,560個の検出器が仮想的に作成される(24)。LOIS-3Dの設計は多くの進歩的な設計的特徴によって発展および向上し、このことは結果としてLOUISAの現在の設計もたらした。これらの進歩は、乳房のまわりで回転する新しい半球撮像モジュールと、およそ50kHzからおよそ6MHzの周波数範囲を感知できる増幅された超広帯域超音波トランスデューサーのアレイと、乳房の回りを独立して回転する円弧形状の光ファイバー照明パドルと、および、およそ757±2 nmとおよそ797±2 nmの2つの循環する波長をもつ、新しい二波長パルス化アレキサンドライトレーザーとを含む。全景光音響トモグラフィ・サブシステムの基本原理の模式図、撮像モジュールの設計、およびシステム写真は、図1A-1Dに描写される。
【0067】
乳房スキャンシステム(LOUISA)の撮像モジュールは、臨床前の研究システム(LOIS-3D)と同様に、96の超広帯域(50kHz~6MHz)超音波トランスデューサーの90度の円弧形状のアレイを含んでいる。これらのトランスデューサーのノイズ等価圧力NEP~1.5Paは、高感度での深部組織撮像を可能にする。このシステムの向上した空間分解能~0.3mmは、3つの因子によるもので、それらは(i)6MHzの高いカットオフ周波数、(ii)光学的に透明で音響的に薄いプラスチックカップ安定器を用いた乳房形状の半球への3D理想化、および(iii)乳房全体の照明、およびプローブの320の回転位置の各々についてすべての光音響信号を統合すること、である。システムにおいて使用されたアレキサンドライトLASER(Light Age, Somerset, NJ)は、757nmと797nmの2つの循環する波長で、50msまたは100msのいずれかの時間遅延によって区切られた50nsのパルスを放射し、このことは2つの光音響画像の正確な相補的な記録と、[tHb]と[sO2]の機能画像の計算を可能にする(25)。このレーザーから利用可能なレーザーパルス・エネルギーは最大800mJであり、このことは、40cmの合計ビームエリアを備えた乳房照明のためにF~20mJ/cmの最適な(安全な)光量の達成を可能にする。従って、およそ400cm(8cmの半径を備えた半球に相当する)の表面積がある大きな乳房全体を照らすためにそれが要するのは最大10ステップを要する。2つの波長を考慮に入れると、および、1つの完全に照らされた乳房のために、トランスデューサーのステップごとに、1つの波長当たり10ステップの照明を設定すると、2つの波長の、10Hzのインタリーブしたスキャンのための理論的な最小時間は、次のとおりである:1つの乳房当たり、320 x 10×2 x 0.1s=640s~10.6分。現在、パルスの繰り返し周期を20Hzに増加させ、光ファイバーパドルの数を2つに増やし、およびそれによって照明ステップの数を5に減らすことによって、より速い臨床のスキャンを達成するという改善が試験されており、それはスキャンの時間を2.5分までに減らすことになる。
【0068】
回転スキャン対並進スキャン
全景トモグラフィーシステムは、回転スキャンを実行し、および球座標で画像を再構成するように設計される場合があり、(図1A-1D)。あるいは、並進スキャンを実行し、および円筒座標で画像を再構成するように設計される場合がある(図2A-2B)。回転スキャンシステムの利点は、それが3つの座標方向すべて(x、y、z)が等しい空間的な3D解像度を備えた正確な三次元のボリュメトリック画像を取得することができるということである。
【0069】
並進スキャンシステムの利点は、それがトランスデューサーの完全なリングを使用し、およびビデオレート(10-40Hz)での、つまり、生理学的事象の実時間における、円形スライスの2D画像を取得し、再構成することができるということである。並進システムには、円形の2D(x-y)スライス内で優れた解像度があるが、円筒状の体積の中へ2Dスライスを積み重ねることによって得ることができる、垂直の(z軸)方向における解像度は、2Dの円形のスライス内のものと比較して、およそ2~5倍劣っている。
【0070】
超広帯域超音波トランスデューサー
標準的な医療用の超音波トランスデューサーは、較的狭い周波数帯域内だけを検出することができ、短いレーザーパルスで照らされた生物学的組織によって放射されたインパルスに反応して電気的な残響を生成する。このことは、商用超音波検出器によって検出された光音響の信号が著しく歪んでいるかもしれず、ひいては光音響画像のコントラストと解像度が制限されることを意味する。より重大なことに、短いレーザーパルスによって組織において生成された固有圧プロファイルは、標準トランスデューサーによって大幅に歪められ、それによって光音響撮像システムが画像ボクセルの正確な輝度を生成する能力が失われ、および従って、機能撮像の能力が無効になることがあり得る。光音響トモグラフィーシステムのための超広帯域超音波トランスデューサー(UBT)の開発において、特別な努力がなされた。
【0071】
光エネルギー吸収の分布は、組織の光学的性質のバリエーションに基づく様々な組織構造やその生理学的機能を定量的に視覚化し、および特徴づけるために、使用される。光音響画像に組織構造を関連づけるために、音響検出器は、組織においてくっきりとしたエッジと境界に関連した光音響信号における急激な変化を分解することができるだけでなく、1つの組織タイプ内の光学的性質における穏やかなバリエーションに関連したゆっくりとした変化を再現することもできなければならない。すなわち、音響検出器は、音圧信号の高い超音波周波数と低い超音波周波数の両方を検出することができなければならない。これらのタイプの音響検出器は超広帯域音響トランスデューサー(UBT)と呼ばれる。最良のUBTは、20kHzから20MHzの全超音波領域にわたり比較的均等な検出感度を有しているが、実用的で、臨床利用可能な深部組織撮像のためのUBTの帯域幅は50kHzからおよそ10MHzである。音響トランスデューサーの超音波の検出帯域幅は、距離分解能の限界を画定する。他方では、OATの位置分解能は、各々の音響トランスデューサーの寸法、アレイにおける2つの近接するトランスデューサー間のピッチ(またはスキャニングモードにおける2つの測定地点の間の距離)、アパチャーの合計、およびトランスデューサーのアレイの幾可学的形状(測定表面)によって画定される。精密なトモグラフィー像を取得するために、すべての検出器の位置づけが閉曲面を形成するように、対象の物体はトランスデューサーに囲まれるべきである(図3)。さもなければ、再構成は不完全な測定データセットを使用してなされ、定量的に正確でないものになる。一時的に分解された光音響データの完全なセットは、トランスデューサーの二次元アレイか、トランスデューサーの線形アレイによる一次元のスキャニングか、または単一トランスデューサーの二次元のスキャニングか、のいずれかを使用して取得することができる。
【0072】
従来、超広帯域超音波変換器はポリ塩化ビニリデンジフルオリド(PVDF)共重合体を基に開発され、および、これらのトランスデューサーのアレイが乳癌の画像診断のために使用された(5)。しかしながら、PVDFトランスデューサーの低い静電容量のために、それらは十分に小さく作ることができず、このことは乳房撮像システムの最初のプロトタイプにおける空間分解能を制限した。近年、ポリマーマトリクスに埋め込まれた、単結晶PMN-PTまたは単結晶PZT圧電セラミックでつくられた複合材料、または微細加工圧電超音波トランスデューサーなどの、圧電材料における進歩は、高い静電容量(~100pF)と小さなサイズ(~1mm)を備えたUBTの線形および2次元のアレイを製作することを可能にした。これらの圧電複合材料トランスデューサーは、高分解能撮像を可能にする高い超音波周波数範囲と、大きな血管と腫瘍などの大きな物体の高コントラストの光音響撮像を可能にする低い超音波周波数範囲とにおいて、共に感度がよい。標準の商用トランスデューサーは乳房におけるより大きな物体の境界のみを視覚化することができるが、UBTはより大きな物体のボリュメトリック輝度を、それらの輝度を定量的に正確に表現して視覚化することができ、それによって、正確な機能画像の取得を可能にする。
【0073】
撮像の感度と深度
LOUISAにおいて使用される超音波トランスデューサーの音響の電気的・空間的なインパルス応答は、従来開発されたレーザー超音波のデルタソース(Delta-source)を使用して測定された(26)。また、既知の光吸収係数を備えた球状の包含物を有する、適切に特徴づけられた模型から検出された光音響信号の測定は、~1.3Paのノイズ等価圧力(NEP)とNEPに対して16μV/Paの電圧上昇を与えるトランスデューサー感度を示した。70dBのアナログ信号増幅で、アナログ-デジタル変換器(ADC)に記録されたところでは、ノイズ増幅レベルは47mVになり、それは、30,720のトランスデューサーから各画像ボクセルへの信号の追加により大いに平均化される。そのような感度で、LOUISAは、0.01 mJ/cmの有効光量で照らされた、典型的な1/cmの光吸収係数を伴う、腫瘍などの物体を含んでいる比較的大きな(~1cm)血液を検出することができる。そのような有効光量は、Z~50mmの深度において、20 mJ/cmの安全な入射レーザー光量(27)と乳房における~exp(-1.15Z)有効光減衰で達成することができる(28)。
【0074】
超音波サブシステムの一例
超音波Bモードスキャンは、形態的な組織構造を視覚化し、および確認するために利用される。
【0075】
回転スキャンシステム
回転スキャンのための超音波サブシステムは、Bモード乳房超音波に対して最適化された、半径80mmの、90度の円弧形状の超音波トランスデューサーのアレイに基づく。±3.5MHzの広い帯域幅を備えた中央周波数7MHzの192個のトランスデューサーのアレイ。超音波サブシステムは乳房解剖学の2Dスライスを提供し、それは3D機能画像から選ばれた、対応する光音響のスライスと容易に重ね合わせることができる。
【0076】
並進スキャンシステム
並進スキャンのための超音波サブシステムは、Bモード乳房超音波に対して最適化された、80mmの半径を備えた、180度の円弧形状か、または360度の完全なリング形状の、どちらかの超音波トランスデューサーのアレイに基づく。±3.5MHzの帯域幅を備えた、中央周波数5から10MHzの256個の(半分のリングのための)、または512個の(完全なリングのための)、超音波トランスデューサーのアレイ。超音波サブシステムは乳房解剖学の2Dスライスを提供し、それは対応する光音響スライスと容易に重ね合わせることができる。トランスデューサーのリングは、3D超音波トモグラフィー画像を含む2D画像のスタックを得るために、並進させられる。
【実施例
【0077】
実施例1
模型における機能的な撮像検証
先に報告されたシステムに対するこの最新のシステム設計の最も重要な進歩は、検出プローブの回転から独立して乳房のまわりを回転する光ファイバー照明を使用する、光音響トランスデューサーのアレイの各回転ステップにて遂行される乳房全体の照明である。1人の健康なボランティアと乳房に疑わしい小さな病変のある患者の試行的ケーススタディが、本明細書に報告される。LOUISAは癌性の腫瘍における低酸素の微小血管構造を視覚化する機能を示し、健康なボランティアのヘモグロビンが減少した静脈と酸素化された動脈を視覚化した。患者の光音響画像上に検出された小さな病変は、超音波上では可視ではなく、小さいが高密度の微小血管の形成を伴う侵襲的に成長する癌性の病変への光音響サブシステムの高いシステム感度を潜在的に示している。安全な水準のNIR光量で、乳房の主な脈管構造(0.5-1mm)は0.3mmの解像度で最大50mmの深度まで可視化された。LOUISAの試行的な臨床検証の結果は、統計的に有意な臨床実施可能性調査についてシステムが用意できていることを実証した。
【0078】
インクリメンタルな回転ごとにLASER照明の2つの波長を循環させることで、1ボクセル(0.2mm)よりよい精度で、これらの波長で得られた画像を物理的に相補的に記録ことが可能である。光音響画像上で動脈と静脈を識別することは、低酸素の悪性病変と正常に酸素化された良性の塊の識別と同様に、一般に利用可能な乳房モフォロジーに加え、価値のある機能情報を放射線科医に提示する。動脈と静脈、癌性と良性の腫瘍を視覚化するLOUISAの能力は、ポリ(塩化ビニル)-プラスチゾル、光散乱のためのTiO2パウダー、および光吸収のためのプラスチック着色染料でできた、現実的な乳房組織模型を使用して実験的に検証される(29)。
【0079】
図4A-4Bは、乳房模型の写真と、[sO2]>80%に対して赤色が設定され、および[sO2]<75%に対して青色が設定された、血液酸素飽和度の機能画像とを示す。75%と80%間の範囲はゼロ(黒)輝度にされた。6つの埋め込まれた物体の光学的性質は現実的な脈管構造および腫瘍を表現するために選ばれた:(1)[sO2]=100%の動脈(赤)、(2)[sO2]~70%の静脈(青)、[sO2]~95%良性腫瘍(赤)および[sO2]~85%の良性腫瘍(赤)、[sO2]~65%の侵襲的な悪性腫瘍、および[sO2]~80%の混合された侵襲性でない腫瘍。
【0080】
図4Bの画像は、この模型内の物体の選ばれた光学的性質を与えられ、LOUISA3Dの機能撮像における十分な精度を確証する。動脈と静脈は、はっきり可視化され、および適切に着色されている。2つの良性腫瘍は可視化され、適切に着色されている。1つの悪性で非常に低酸素の腫瘍は、適切に可視化され、適切に着色されている。境界線レベルの血液酸素飽和度にある第2の「混合された」腫瘍は、部分的に非可視であり、部分的に赤で着色されている。
【0081】
実施例2
LOUISAの臨床的な検証
LOUISAシステムは3D撮像モジュールと2D撮像手持プローブを含んでいる。LOIS-3D(LOUISAの前身)は球座標においてハーフタイムの再構成アルゴリズムを利用したが(30)、乳房撮像のための、全景の正確な再構成結果を保持するために、半球の幾可学的形状の3D画像再構成にとってはフルタイムの再構成を利用することが不可欠だった(31)。この患者の画像は757nmの単一波長で得られ、従って、血管と腫瘍の血液酸素飽和度は可能ではなかった。3つの投射のうちの2つの投射(図6Cではなく図6A図6B)において可視の比較的小さな(3.5mm)腫瘍の性質は、決定的に確認されなかった。図6Aから図6Cは、腫瘍判別の特異性ではなく、LOUISA感度の実証である。
【0082】
撮像モジュールの設計における多くの改善、および信号処理および画像再構成アルゴリズムの強化は、乳房の脈管構造の詳細を示す乳房の高コントラストで高精細の画像を結果としてもたらした。図7Aは、普通の乳房の、波長757nmによるボリュメトリック光音響画像のサジタル方向の投射を示す。静脈はこの画像上の恐らく支配的な血管である。図7Bから図7Cは、酸素飽和度が低下した静脈(青)および完全に酸素化した動脈(赤)の分離が可能となった、血液酸素飽和度の3D機能画像のコロナル方向の投射を示す。この機能画像は、757nmと797nmで得られた、2つの相補的に記録された光音響画像に式(1)および式(2)を適用することによって再構成された。青/赤の二項的な色パレットの閾値には、[sO2]=80%のレベルが選択された。図7Aから図7Cにおいて提示された、画像上に視覚化される血管および微小血管細部の多さは、乳癌のスクリーニングおよび画像診断において、LOUISAが臨床実施可能性の試行について潜在的に用意できていることを示している。
【0083】
図8は、健康なボランティアから取得された、乳房の半球体積の重心軸を通して撮影された、OA画像とUS画像のスライスの相補的な記録の一例を示す。脈管構造の分布に関する情報を提供するこの種の画像は、脈管構造と微小血管構造の密度、および腫瘍の近傍におけるそれらの幾可学的形状が診断の情報を表すことから、腫瘍の存在について、放射線科医にとって最も価値のあるものになるだろう。同様に、相補的に記録された超音波映像から腫瘍および隣接した組織のモフォロジーを参照したとき、[sO2]および[tHb]の機能画像は良性と悪性の腫瘍の判別に特に高い特異性をもたらすことができる。
【0084】
実施例3
超音波トモグラフィーと相補的に記録された全景光音響トモグラフィーに基づく、三次元レーザー光音響超音波撮像システム・アセンブリーのQTシステムの一例としての、乳癌医療のためのLOUISA3Dは、乳癌のスクリーニングおよび画像診断における用途のために開発された。システムは、比較または健康な対照としての1人の正常なボランティアと、癌と疑われる乳房の腫瘍がある1人の患者に対して試験された。検証の間、LOUISAの性能は、多くの技術的な進歩が、この機能撮像と解剖学的撮像とを組み合わせたシステムを、乳癌医療において満たされていないニーズに対する潜在的に実行可能な解決策とすることを、明らかにした。
【0085】
以下のLOUISAの機能が、臨床的な性能にとって重要であることが判明した:(i)50kHzから6MHzの周波数範囲にわたり感度のよい超広帯域超音波トランスデューサー;(ii)ノイズ等価圧力、NEP~1.3Paと、感度S~0.012mV/Paとを備えた、極めて低いノイズのトランスデューサーとエレクトロニクス;(iii)球座標における正確な再構成を可能にした乳房全体照明/全景データ収集;(iv)深度に依存しない画像輝度を可能にする、有効光減衰の逆関数の応用。LOUISAは、腫瘍と血管の十分なコントラストと、3つのすべての次元で0.3mm-0.5mm(乳房サイズに依存)の十分な解像度を備えたハイブリッド撮像モダリティを代表する。正常に酸素化された組織と低酸素の組織の臨床的な判別のために850nmの波長を1064nmに交換することが必要とされる場合はあるものの、757nmと850nmで急速に循環するNIR照明は、脈管構造の機能撮像を可能にする。スキャンの持続時間は、各波長につき20ステップの「単一パルス」照明、80度円弧アレイの96のトランスデューサーの320の角度視野で、およそ10分である。画像再構成の時間は、1億以上のボクセルおよび30,720の仮想トランスデューサーの各々からの1536のデータサンプルのために、およそ4分である。
【0086】
機能情報と解剖学的情報の空間的な相補的記録を備えた、光音響と超音波を組み合わせた3Dの撮像システムは、定量的情報の臨床的に十分な精度を実証する。LOUISAは、オペレーターの経験に依存しない、自動化された乳房全体の検診およびスクリーニングの可能性をもたらす。乳癌のスクリーニングおよび診断の判別における臨床応用は、特により若い女性の周密で種々様々な乳房のために、高価で感度がよいが特異的ではないMRIにとって代わる価値があると予想される。
【0087】
以下の引用文は本明細書に引用される。
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