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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】神経変性疾患の予防又は治療薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20230516BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K31/05 ZMD
A61K9/08
A61P25/00
A61P25/28
A61P43/00 121
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020565193
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 JP2020000392
(87)【国際公開番号】W WO2020145331
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/000278
(32)【優先日】2019-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519442760
【氏名又は名称】株式会社メディラボRFP
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】富山 貴美
(72)【発明者】
【氏名】梅田 知宙
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 徹
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0111014(US,A1)
【文献】特表2010-524959(JP,A)
【文献】特表2013-518034(JP,A)
【文献】特表2008-527002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0251697(US,A1)
【文献】梅田知宙、ほか5名,経鼻リファンピシン-リファンピシンの新しい投与経路による認知症予防,Dementia Japan,Vol.32, No.3,2018年09月15日,p.442
【文献】富山貴美,3.ドラッグ・リポジショニングによる抗認知症薬の探索,実験医学,2017年,Vol.35, No.12,pp.233-239
【文献】NICOLETTI, Natalia F. et al.,Protective effects of resveratrol on hepatotoxicity induced by isoniazid and rifampicin via SIRT1 mo,J Nat Prod,2014年,Vol.77,pp.2190-2195
【文献】ADELINA, Maria J.A. et al.,Medical plant extracts and natural compounds with a hepatoprotective effect against damage caused by,Asian Pac J Trop Med,2016年,Vol.9, No.12,pp.1141-1149
【文献】UMEDA, Tomohiro et al.,Intranasal rifampicin for Alzheimer's disease prevention,Alzheimer's & Dementia,2018年07月14日,Vol.4,pp.304-313
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リファンピシン及その塩よりなる群から選択されるリファンピシン類とレスベラトロールとを組み合わせてなり、経鼻投与に用いられる、神経変性疾患の予防又は治療薬。
【請求項2】
前記リファンピシン類1重量部当たり、前記レスベラトロールが1/500~500重量部含まれる、請求項1に記載の予防又は治療薬。
【請求項3】
前記リファンピシン類の投与量が3.75mg/kg・日以下である、請求項1又は2に記載の予防又は治療薬。
【請求項4】
前記リファンピシン類の投与量が0.001~1.5mg/kg・日である、請求項1~3のいずれかに記載の予防又は治療薬。
【請求項5】
前記レスベラトロールの投与量が3.75mg/kg・日以下である、請求項1~4のいずれかに記載の予防又は治療薬。
【請求項6】
前記レスベラトロールの投与量が0.001~2.5mg/kg・日である、請求項1~5のいずれかに記載の予防又は治療薬。
【請求項7】
認知症の予防又は治療に用いられる、請求項1~のいずれかに記載の予防又は治療薬。
【請求項8】
前記リファンピシン類と前記レスベラトロールとの配合剤である、請求項1~のいずれかに記載の予防又は治療薬。
【請求項9】
前記リファンピシン類を含む薬剤と前記レスベラトロールを含む薬剤とを含むキットである、請求項1~のいずれかに記載の予防又は治療薬。
【請求項10】
レスベラトロールを含み、前記レスベラトロールの投与量が0.28mg/kg・日以下である、経鼻投与用神経変性疾患の予防又は治療薬。
【請求項11】
認知症の予防又は治療に用いられる、請求項10に記載の予防又は治療薬。
【請求項12】
投与期間が1ヶ月以上である、請求項10又は11に記載の予防又は治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性疾患の予防又は治療に有用で、且つ、副作用が抑制された医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
神経変性疾患は、中枢神経系に発症する疾患であり、その病理学的な特徴としては、特定の神経細胞群の減少、及び神経細胞の内外に頻繁に発現する繊維状物質の蓄積が挙げられる。
【0003】
神経変性疾患には、アミロイドβ(Aβ)が蓄積するアルツハイマー病(AD)、タウが蓄積するタウオパチー、及びαシヌクレインが蓄積するシヌクレイノパチー等がある。タウオパチーには、ピック病、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)等の前頭側頭葉変性症(FTLD)が含まれ、ADも、Aβの他にタウを蓄積する点で含まれることもある。FTLDは、臨床症状である認知症に着目した場合は、前頭側頭型認知症(FTD)と呼ばれる。シヌクレイノパチーには、レビー小体型認知症(DLB)、パーキンソン病(PD)、及び多系統萎縮症(MSA)等がある。神経変性疾患は、これらタンパク質が脳内でオリゴマーを形成し、神経細胞の機能を障害することで病気が発症すると考えられている。この考えに基づき、神経変性疾患の治療薬として、これらタンパク質の産生を抑える、オリゴマーの形成を抑制する、凝集したタンパク質を脳から除去する、などの作用を持つ薬の開発が進められている。
【0004】
例えば、ADに対しては、Aβの産生に関わる酵素(βセクレターゼやγセクレターゼ)の阻害薬、Aβを脳から除去するAβワクチン、Aβ抗体などが開発され、臨床試験に供されてきた。しかしこれまでのところ、予期せぬ副作用の出現や期待された薬効が出ないなどの理由でそのほとんどが臨床的に失敗している。
【0005】
一方、抗生物質として周知であるリファンピシンは、その抗菌作用により、従前から経口薬として用いられている。さらに、リファンピシンは、フリーラジカル除去作用を有することも知られており、その作用の1つとして、Aβ凝集反応の抑制への関与が報告されている(非特許文献1)。
【0006】
また、レスベラトロールは、ブドウの果皮、赤ワイン、ピーナッツの渋皮などに含まれるポリフェノールの一種であり、抗がん、抗動脈硬化、抗肥満、抗糖尿病、抗炎症等への効果が報告されている(非特許文献2)。また、レスベラトロールに神経様細胞の酸化ストレスを低減する作用があることも報告されており、具体的には、レスベラトロールが、分化及び未分化ヒト神経芽細胞SH-SY5Yにてマイトジェン(分裂促進因子)活性化タンパク(MAP)キナーゼのリン酸化を誘導したことが確認されている(非特許文献3)。一方で、レスベラトロールのアルツハイマー病への効果が期待されているものの、実際には、軽度及び中程度までのアルツハイマー病の人119人を無作為に2グループに分け、一方にはレスベラトロール500mgを、もう一方にはプラセボを服用させる52週間の検証で、13週ごとにレスベラトロールを500mgずつ増量し、最後には1000mgを1日2回まで増量する投与スケジュールを実施しても、レスベラトロールを投与したグループにおいてプラセボを投与したグループに対して有効性は確認できなかったことが報告されている(非特許文献4)。さらに一方で、高用量または長期間摂取した場合のレスベラトロールの副作用として、吐き気、下痢、体重減少(非特許文献5)、腹痛(非特許文献4)、膀胱障害(非特許文献6)、及び腎障害(非特許文献7)等が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Tomiyama, T.他6名著、「Inhibition of amyloid beta protein aggregation and neurotoxicity by rifampicin. Its possible function as a hydroxyl radical scavenger.」、J Biol Chem、1996年、Vol.271、p.6839-6844
【文献】Yu W. 他、「Cellular and molecular effects of resveratrol in health and disease」、J Cell Biochem、2012年、113、p.752-759
【文献】Tredici G他、「Resveratrol, map kinases and neuronal cells: might wine be a neuroprotectant?」Drug Exp Clin Res、1999年、25、p.99-103
【文献】R. Scott Turner他、「A randomized, double-blind, placebo-controlled trial of resveratrol for Alzheimer disease」2015年、American Academy of Neurology, DOI: 10.1212/WNL.0000000000002035
【文献】Brown VA. 他、「Repeat dose study of the cancer chemopreventive agent resveratrol in healthy volunteers: safety, pharmacokinetics, and effect on the insulin-like growth factor axis」、Cancer Res、2010年、70、p.9003-9011
【文献】Edwards JA 他、「 Safety of resveratrol with examples for high purity, trans-resveratrol, resVida((R))」、Ann N Y Acad Sci、2011年、1215, p.131-137
【文献】Popat R 他、「A phase 2 study of SRT501 (resveratrol) with bortezomib for patients with relapsed and or refractory multiple myeloma」、Br J Haematol、2013年、160、p.714-717
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ADを対象とする臨床試験でのAβ標的薬(Aβ産生酵素阻害薬、Aβワクチン、Aβ抗体など)の失敗の原因は、副作用の問題を別とすれば、投与時期が遅すぎることにあると考えられている。つまり、Aβを取り除くのは、神経細胞が死に始める認知症発症前でないと意味がないと考えられている。したがって、Aβ標的薬の役割は治療ではなく予防にあるべきである。なお、タウ標的薬で最初に臨床試験に入ったタウ凝集阻害薬によっても、ADを対象とする臨床試験では、認知機能改善作用はみられないことが報告されている。この結果も、タウ標的薬といえども、疾患が発症してからの投与では遅すぎることを示していると考えられる。
【0009】
しかしながら、現在開発中の治療薬の多くは予防投与を前提として開発されたものではなく、費用・副作用・投与法などの点で問題を抱えている。一方で、神経変性疾患を予防のために投薬するには、発症時期が不明であることから、投薬期間としては相当に長い期間を想定する必要がある。
【0010】
一方で、本発明者は、リファンピシンがin vitroでAβ、タウ、αシヌクレインのオリゴマー形成を抑えること、Aβを蓄積するADのモデルマウスやタウを蓄積するFTDのモデルマウスに経口投与すると、これらタンパク質オリゴマーの脳内蓄積を抑制し、マウスの認知機能を回復させることを見出した。そこで本発明者は、リファンピシンのこのような作用を利用して、抗生物質として用いられてきたリファンピシンの神経変性疾患予防薬へのリポジショニングを実用化すべく、検討を行った。
【0011】
しかしながらそのような検討を行ったところ、神経変性疾患対象においては、リファンピシンによる肝障害や薬物相互作用などの副作用が深刻であり、従って、リファンピシンが予防薬の前提となる長期服用を不可能にしている課題に直面した。つまり、神経変性疾患対象においては、リファンピシンによる副作用の課題が顕著であることを見出した。ここでの薬物相互作用とは、リファンピシンが肝細胞で薬物代謝に関わるチトクロムP450(CYP)とP-糖タンパク質を誘導することにより、同時に服用した別の薬の効果が減弱してしまう現象をいう。
【0012】
そこで、本発明の第1の目的は、副作用を低減し、長期投与が可能なリファンピシンの製剤処方を提供することにある。
【0013】
また、レスベラトロールについては、上述の用量では実際にアルツハイマーに対する効果は確認されていない。アルツハイマーに対するレスベラトロールの効果発現を期待する場合、より高用量、より長期期間の投与を行うことが考えられるが、レスベラトロールの高用量及び/又は長期間摂取で報告されている、吐き気、下痢、体重減法、腹痛、膀胱障害、腎障害等の副作用のリスクが懸念される。このため、これまでの報告によると、レスベラトロールについて、アルツハイマーのような神経変性疾患に対する有効量を確保しながら長期にわたって投与又は摂取することはできないと考えられる。
【0014】
そこで、本発明の第2の目的は、長期投与が可能な神経変性疾患の予防又は治療薬、及び長期摂取が可能な脳機能改善用食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、リファンピシンにレスベラトロールを組み合わせることによって、驚くべき副作用低減効果が認められ、長期投与が可能となることを見出した。また、本発明者は、レスベラトロールが、極めて低い用量でもAβオリゴマーを低減できることを予期せず見出し、極めて低い用量でも長期投与又は摂取すれば認知機能を向上できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0016】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. リファンピシン、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択されるリファンピシン類と、レスベラトロール及びその誘導体からなる群より選択されるレスベラトロール類とを組み合わせてなる、神経変性疾患の予防又は治療薬。
項2. 前記リファンピシン類1重量部当たり、前記レスベラトロール類が1/500~500重量部含まれる、項1に記載の予防又は治療薬。
項3. 前記リファンピシン類の投与量が3.75mg/kg・日以下である、項1又は2に記載の予防又は治療薬。
項4. 前記リファンピシン類の投与量が0.001~1.5mg/kg・日である、項1~3のいずれかに記載の予防又は治療薬。
項5. 前記レスベラトロール類の投与量が3.75mg/kg・日以下である、項1~4のいずれかに記載の予防又は治療薬。
項6. 前記レスベラトロール類の投与量が0.001~2.5mg/kg・日である、項1~5のいずれかに記載の予防又は治療薬。
項7. 経鼻投与に用いられる、項1~6のいずれかに記載の予防又は治療薬。
項8. 認知症の予防又は治療に用いられる、項1~7のいずれかに記載の予防又は治療薬。
項9. 前記リファンピシン類と前記レスベラトロール類との配合剤である、項1~8のいずれかに記載の予防又は治療薬。
項10. 前記リファンピシン類を含む薬剤と前記レスベラトロール類を含む薬剤とを含むキットである、項1~8のいずれかに記載の予防又は治療薬。
項11. レスベラトロール及びその誘導体からなる群より選択されるレスベラトロール類を含み、前記レスベラトロール類の投与量が0.28mg/kg・日以下である、経鼻投与用神経変性疾患の予防又は治療薬。
項12. 認知症の予防又は治療に用いられる、項11に記載の予防又は治療薬。
項13. 投与期間が1ヶ月以上である、項11又は12に記載の予防又は治療薬。
項14. レスベラトロール及びその誘導体からなる群より選択されるレスベラトロール類を含み、前記レスベラトロール類の摂取量が3.75mg/kg・日以下である、脳機能改善用食品。
項15. 神経変性疾患の予防又は治療のための医薬品の製造のための、リファンピシン、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択されるリファンピシン類と、レスベラトロール及びその誘導体からなる群より選択されるレスベラトロール類との使用。
項16. 神経変性疾患患者に、有効量のリファンピシン、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択されるリファンピシン類と、レスベラトロール及びその誘導体からなる群より選択されるレスベラトロール類とを投与する工程を含む、神経変性疾患の治療方法。
項17. 神経変性疾患発症リスクの高い未発症者に、有効量のリファンピシン、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択されるリファンピシン類と、レスベラトロール及びその誘導体からなる群より選択されるレスベラトロール類とを投与する工程を含む、神経変性疾患の予防方法。
項18. 0.28mg/kg・日以下の用量で投与される神経変性疾患の予防又は治療のための経鼻投与医薬品の製造のための、レスベラトロール及びその誘導体からなる群より選択されるレスベラトロール類の使用。
項19. 神経変性疾患患者に、0.28mg/kg・日以下のレスベラトロール及びその誘導体からなる群より選択されるレスベラトロール類を経鼻投与する工程を含む、神経変性疾患の治療方法。
項20. 投与期間が1ヶ月以上である、項19に記載の方法。
項21. 神経変性疾患発症リスクの高い未発症者に、0.28mg/kg・日以下のレスベラトロール及びその誘導体からなる群より選択されるレスベラトロール類を経鼻投与する工程を含む、神経変性疾患の予防方法。
項22. 投与期間が1ヶ月以上である、項21に記載の方法。
項23. 3.75mg/kg・日以下のレスベラトロール及びその誘導体からなる群より選択されるレスベラトロール類を経口摂取させる工程を含む、脳機能改善方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の予防又は治療薬によれば、リファンピシンをレスベラトロールと組み合わせた合剤として処方することで、副作用が低減されるため、神経変性疾患に対する長期投与が可能となる。また、本発明の予防又は治療薬によれば、レスベラトロールを単剤として処方することでも、極めて低用量でも神経変性疾患に対する有効性を示すため、神経変性疾患に対する長期投与が可能となる。さらに、本発明の食品によれば、レスベラトロールを配合することで、脳機能改善を目的とした長期摂取が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】試験例1で行われた行動試験の結果であり、マウスの認知機能に対するリファンピシン投与の効果を示す。
図2】試験例1で行われた免疫染色の結果であり、リファンピシンによるAβオリゴマーの除去効果及びシナプトフィジンの回復効果を示す。
図3図2の免疫染色に基づいたAβオリゴマーの定量結果を示す。
図4図2の免疫染色に基づいたシナプトフィジンの定量結果を示す。
図5】試験例1で行われた免疫染色の結果であり、リファンピシンによるリン酸化タウの除去効果を示す。
図6図5の免疫染色に基づいたリン酸化タウの定量結果を示す。
図7】試験例2で用いられたαSyn-Tgの6か月(6mo)マウスの運動機能試験結果を示す。
図8】試験例2で用いられたαSyn-Tgの9か月(9mo)マウスの認知機能試験結果を示す。
図9】試験例2で行われた行動試験の結果であり、マウスの認知機能に対するリファンピシン投与の効果を示す。
図10】試験例2で行われたウェスタンブロットの結果であり、αシヌクレインに対するリファンピシンの効果を示す。
図11図10のウェスタンブロットに基づいたαシヌクレインの定量結果を示す。
図12】試験例3で行われた行動試験の結果であり、アルツハイマーモデルマウスの認知機能に対するリファンピシン(レスベラトロールとの組み合わせ)投与の効果を示す。
図13】試験例3で行われた免疫染色の結果であり、リファンピシン(レスベラトロールとの組み合わせ)によるAβオリゴマーの除去効果を示す。
図14】試験例3で行われたAST測定結果であり、リファンピシン(レスベラトロールとの組み合わせ)投与による肝機能障害の程度を示す。
図15】試験例4で行われた行動試験の結果であり、シヌクレイノパチーモデルマウスの認知機能に対するリファンピシン(レスベラトロールとの組み合わせ)投与の効果を示す。
図16】試験例5で行われた行動試験の結果であり、タウオパチーモデルマウスの認知機能に対するリファンピシン(レスベラトロールとの組み合わせ)投与の効果を示す。
図17】試験例6で行われた行動試験の結果であり、アルツハイマーモデルマウスの認知機能に対するレスベラトロール投与の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[1.リファンピシン類及びレスベラトロール類を組み合わせてなる神経変性疾患の予防又は治療薬]
本発明の第1の予防又は治療薬(以下、本発明の第1の医薬品とも記載する)は、リファンピシン、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択されるリファンピシン類と、レスベラトロール及びその誘導体からなる群より選択されるレスベラトロール類とを含み、神経変性疾患の予防又は治療に用いられることを特徴とする。
【0020】
[リファンピシン類]
本発明の第1の医薬品は、リファンピシン、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択されるリファンピシン類を含む。リファンピシンは、抗生物質として公知の成分である。
【0021】
本発明の第1の医薬品において、リファンピシン類は、神経変性疾患の原因タンパク質のオリゴマーを除去する有効成分として作用する。例えば、アルツハイマー病(AD)の原因タンパク質であるアミロイドβ(Aβ)のオリゴマー、タウオパチーの原因タンパク質であるタウのオリゴマー、及びシヌクレイノパチーの原因タンパク質であるαシヌクレインのオリゴマーを除去する作用がある。リファンピシン類は、ナフトハイドロキノンまたはナフトキノン構造を有し、この構造が、リファンピシンのフリーラジカルスカベンジャーとしての作用に寄与していると考えられる。また、リファンピシンは、神経変性疾患の原因タンパク質の凝集毒性抑制効果にも優れており、例えば、より高い凝集能と強力な神経毒性を有するAβ42による毒性を完全に抑制できることが本発明者によって確認されている。
【0022】
リファンピシンは、通常、下記式(I)で表される化合物である。
【0023】
【化1】
【0024】
リファンピシンの誘導体としては、ナフトハイドロキノンまたはナフトキノン構造を有し、薬学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、3-Folmyl-Rifamycin SV、Rifamysin S、Rifamycin B、Rifamycin SV、主活性代謝物の25-Desacetyl-RFP等が挙げられる。リファンピシン誘導体の中でも、長期投与による耐性菌の誘導を抑制する観点から、抗生物質活性を担う1,4-ジハイドロキシナフタレン構造の3位置換基を有しない誘導体、例えばRifamycin SVが好ましい。これらリファンピシンの誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
リファンピシンの塩としては、リファンピシン又はリファンピシンの誘導体と塩を形成し、且つ薬学的に許容されるものであれば特に限定されない。例えば、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)の塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)の塩、アンモニウム塩、薬学的に許容される有機アミン(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リジン、アルギニン、N-メチル-D-グルカミン等)の塩、無機酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等)、有機酸塩(酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩等)が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
リファンピシン類としては、リファンピシン、リファンピシンの塩、リファンピシンの誘導体、リファンピシンの誘導体の塩の中から、1種を選択して使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
上述のリファンピシン類の中でも、リファンピシン及びRifamycin SVが好ましく挙げられる。
【0028】
本発明の第1の医薬品中、リファンピシン類の含有量としては、特に限定されず、後述の用量で投与できるように適宜調整される。例えば、本発明の第1の医薬品中のリファンピシン類の含有量として、0.19w/v%以上、好ましくは0.4w/v%以上、より好ましくは0.5w/v%以上が挙げられる。また、少ない投与回数で所定の投与量を効率的に投与する観点からは、本発明の第1の医薬品中のリファンピシン類の含有量は、好ましくは2w/v%以上、2.5w/v%以上、5w/v%以上、又は30w/v%以上であってもよい。さらに、本発明の第1の医薬品中のリファンピシン類の含有量としては、95w/v%以下が挙げられ、好ましくは85w/v%以下、又は50w/v%以下が挙げられる。本発明の第1の医薬品が経鼻投与用として調製される場合は、経鼻投与薬の噴霧性を良好に得る等の観点から、好ましくは85w/v%以下、又は50w/v%以下が挙げられる。本発明の第1の医薬品中のリファンピシン類の含有量の具体的な範囲としては、例えば、0.19~95w/v%、0.19~85w/v%、0.19~50w/v%、0.4~95w/v%、0.4~85w/v%、0.4~50w/v%、0.5~95w/v%、0.5~85w/v%、0.5~50w/v%、2~95w/v%、2~85w/v%、2~50w/v%、2.5~95w/v%、2.5~85w/v%、2.5~50w/v%、5~95w/v%、5~85w/v%、5~50w/v%、30~95w/v%、30~85w/v%、30~50w/v%が挙げられる。
【0029】
[レスベラトロール類]
本発明の第1の医薬品は、レスベラトロール及びその誘導体よりなる群から選択されるレスベラトロール類を含む。レスベラトロールは、3,5,4’-トリヒドロキシスチルベンである。レスベラトロール類は、ガン予防、認知症予防(Aβ生成抑制)、動脈硬化・心臓病予防、抗メタボリック、寿命延長効果、眼病予防が報告されている成分である。また、レスベラトロール類は、肝臓を保護する作用もある。一方、レスベラトロールには、すでに生じた神経変性疾患の原因タンパク質のオリゴマーを除去する作用は知られていない。また、レスベラトロールによる神経変性疾患の原因タンパク質の凝集を抑制する効果は弱く、例えば、より高い凝集能と強力な神経毒性を有するAβ42による毒性に対する抑制効果はリファンピシンに比べるとかなり弱いことが本発明者によって確認されている。
【0030】
本発明の第1の医薬品は、リファンピシンにレスベラトロール類が組み合わせられることで、顕著な副作用低減効果を図ることができる。レスベラトロール類は、単独では有効な肝保護作用を示さない用量であっても、リファンピシンと組み合わされた場合には有効な肝保護作用を奏するという驚くべき副作用低減効果を奏する。
【0031】
本発明の第1の医薬品は、リファンピシンにレスベラトロール類が組み合わせられることで、神経変性疾患の原因タンパク質のオリゴマーを除去する作用を顕著に向上させる。レスベラトロールは、単独では不十分なAβ生成抑制作用しか示さない用量であっても、リファンピシンと組み合わされた場合に、神経変性疾患原因タンパク質に対する除去効果を顕著に向上させる。
【0032】
本発明におけるレスベラトロールとしては、レスベラトロールのシス異性体、レスベラトロールのトランス異性体、それら異性体の混合物が挙げられ、好ましくはレスベラトロールのトランス異性体が挙げられる。レスベラトロールのトランス異性体は、下記式(II)で表される化合物である。
【0033】
【化2】
【0034】
レスベラトロールは、リンゴンベリー抽出物、ブドウ抽出物、ビルベリー抽出物、イタドリ抽出物、メリンジョ抽出物等の植物抽出物から精製されたものであってもよいし、化学合成法、遺伝子工学的方法、又は微生物学的方法により取得されたものであってもよい。
【0035】
また、レスベラトロールの誘導体としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、N-フェニルアセチル基、4,4’-ジメトキシトリチル(DMT)基等の保護基;タンパク質、ペプチド、糖、脂質、核酸等の生体高分子;ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニル、ポリエステル等の合成高分子;エステル基等の官能基を誘導体基として有するものが挙げられる。また、上記エステル基としては、メチルエステル基、エチルエステル基等の脂肪族エステル基、及び芳香族エステル基等が挙げられる。
【0036】
レスベラトロール類としては、レスベラトロール、及びレスベラトロール誘導体の中から、1種を選択して使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
これらのレスベラトロール類の中でも、好ましくは、レスベラトロールが挙げられ、より好ましくはレスベラトロールのトランス異性体(3,5,4’-トリヒドロキシ-trans-スチルベン)が挙げられる。
【0038】
本発明の第1の医薬品におけるレスベラトロール類の含有量としては、特に限定されず、後述の用量で投与できるように適宜調整される。例えば、本発明の第1の医薬品中のレスベラトロール類の含有量として、0.19w/v%以上、好ましくは0.4w/v%以上、より好ましくは0.5w/v%以上が挙げられる。また、少ない投与回数で所定の投与量を効率的に投与する観点からは、本発明の第1の医薬品中のレスベラトロール類の含有量は、好ましくは2w/v%以上、2.5w/v%以上、5w/v%以上、又は30w/v%以上であってもよい。さらに、本発明の第1の医薬品中のレスベラトロール類の含有量としては、95w/v%以下が挙げられ、好ましくは85w/v%以下、又は50w/v%以下が挙げられる。本発明の第1の医薬品が経鼻投与用として調製される場合は、経鼻投与薬の噴霧性を良好に得る等の観点から、好ましくは85w/v%以下、又は50w/v%以下が挙げられる。本発明の第1の医薬品中のレスベラトロール類の含有量の具体的な範囲としては、例えば、0.19~95w/v%、0.19~85w/v%、0.19~50w/v%、0.4~95w/v%、0.4~85w/v%、0.4~50w/v%、0.5~95w/v%、0.5~85w/v%、0.5~50w/v%、2~95w/v%、2~85w/v%、2~50w/v%、2.5~95w/v%、2.5~85w/v%、2.5~50w/v%、5~95w/v%、5~85w/v%、5~50w/v%、30~95w/v%、30~85w/v%、30~50w/v%が挙げられる。
【0039】
本発明の第1の医薬品において、リファンピシン類とレスベラトロール類との比率としては特に制限されず、上記の各成分の含有量に応じて決定することができる。また、本発明の第1の医薬品が経鼻投与用に調製される場合は、リファンピシン類の水への溶解性(例えばリファンピシンの場合、25℃で2.5mg/mL)及びレスベラトロール類の水への溶解性(例えばレスベラトロールの場合、25℃で0.03mg/mL)の差と、水への溶解性が低い成分ほど鼻腔内で繊毛細胞による粘液層の移動の影響を受けて消化管に流されやすくなる傾向とを加味し、レスベラトロール類の含有量の方を、所定の有効量よりも多くなるように調製されてもよい。例えば、リファンピシン類及びレスベラトロール類を、約1:1の重量比率で副鼻腔内から吸収させることを目的として本発明の第1の医薬品を調製する場合、リファンピシン類1重量部当たりのレスベラトロール類の含有量が1重量部超となる含有量で調製することもできる。このようにリファンピシン類とレスベラトロール類と水への溶解性の差を考慮する場合としては、本発明の第1の医薬品をリファンピシン類とレスベラトロール類との配合剤として調製される場合、リファンピシン類を含む薬剤とレスベラトロール類を含む薬剤とを含むキットとして調製される場合であって両薬剤とも少なくとも水を含む同じ基剤を用いて調製される場合が挙げられる。
【0040】
これらの観点から、リファンピシン類1重量部当たりのレスベラトロール類の含有量の下限としては、例えば1/500重量部以上、好ましくは1/300重量部以上、より好ましくは1/200重量部以上、更に好ましくは1/100重量部以上、一層好ましくは0.05重量部以上、より一層好ましくは0.1重量部以上が挙げられ、特に好ましくは0.2重量部以上が挙げられる。より一層好ましい副作用低減効果を得る観点、及び/又は、より一層好ましい神経変性疾患原因タンパク質オリゴマーに対する除去作用を得る観点から、リファンピシン1重量部当たりのレスベラトロール類の含有量としては、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは0.8重量部以上、更に好ましくは1重量部以上が挙げられる。また、リファンピシン1重量部当たりのレスベラトロール類の含有量として、1重量部超、例えば1.2重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上、3重量部以上であっても構わない。
【0041】
また、リファンピシン類1重量部当たりのレスベラトロール類の含有量の上限としては、例えば500重量部以下、好ましくは300重量部以下、より好ましくは200重量部以下、更に好ましくは100重量部以下、75重量部以下、50重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、一層好ましくは10重量部以下、より一層好ましくは5重量部以下、特に好ましくは3重量部以下、2重量部以下、1.5重量部以下、1.2重量部以下が挙げられる。
【0042】
リファンピシン類1重量部当たりのレスベラトロール類の含有量の具体的な範囲としては、1/500~500重量部、1/500~300重量部、1/500~200重量部、1/500~100重量部、1/500~75重量部、1/500~50重量部、1/500~30重量部、1/500~20重量部、1/500~10重量部、1/500~5重量部、1/500~3重量部、1/500~2重量部、1/500~1.5重量部、1/500~1.2重量部、1/300~500重量部、1/300~300重量部、1/300~20重量部、1/300~100重量部、1/300~75重量部、1/300~50重量部、1/300~30重量部、1/300~20重量部、1/300~10重量部、1/300~5重量部、1/300~3重量部、1/300~2重量部、1/300~1.5重量部、1/300~1.2重量部、1/200~500重量部、1/200~300重量部、1/200~200重量部、1/200~100重量部、1/200~75重量部、1/200~50重量部、1/200~30重量部、1/200~20重量部、1/200~10重量部、1/200~5重量部、1/200~3重量部、1/200~2重量部、1/200~1.5重量部、1/200~1.2重量部、1/100~500重量部、1/100~300重量部、1/100~200重量部、1/100~100重量部、1/100~75重量部、1/100~50重量部、1/100~30重量部、1/100~20重量部、1/100~10重量部、1/100~5重量部、1/100~3重量部、1/100~2重量部、1/100~1.5重量部、1/100~1.2重量部、0.05~500重量部、0.05~300重量部、0.05~200重量部、0.05~100重量部、0.05~75重量部、0.05~50重量部、0.05~30重量部、0.05~20重量部、0.05~10重量部、0.05~5重量部、0.05~3重量部、0.05~2重量部、0.05~1.5重量部、0.05~1.2重量部、0.1~500重量部、0.1~300重量部、0.1~200重量部、0.1~100重量部、0.1~75重量部、0.1~50重量部、0.1~30重量部、0.1~20重量部、0.1~10重量部、0.1~5重量部、0.1~3重量部、0.1~2重量部、0.1~1.5重量部、0.1~1.2重量部、0.2~500重量部、0.2~300重量部、0.2~200重量部、0.2~100重量部、0.2~75重量部、0.2~50重量部、0.2~30重量部、0.2~20重量部、0.2~10重量部、0.2~5重量部、0.2~3重量部、0.2~2重量部、0.2~1.5重量部、0.2~1.2重量部、0.5~500重量部、0.5~300重量部、0.5~200重量部、0.5~100重量部、0.5~75重量部、0.5~50重量部、0.5~30重量部、0.5~20重量部、0.5~10重量部、0.5~5重量部、0.5~3重量部、0.5~2重量部、0.5~1.5重量部、0.5~1.2重量部、0.8~500重量部、0.8~300重量部、0.8~200重量部、0.8~100重量部、0.8~75重量部、0.8~50重量部、0.8~30重量部、0.8~20重量部、0.8~10重量部、0.8~5重量部、0.8~3重量部、0.8~2重量部、0.8~1.5重量部、0.8~1.2重量部、1~500重量部、1~300重量部、1~200重量部、1~100重量部、1~75重量部、1~50重量部、1~30重量部、1~20重量部、1~10重量部、1~5重量部、1~3重量部、1~2重量部、1~1.5重量部、1~1.2重量部、が挙げられる。
【0043】
また、リファンピシン類1重量部当たりのレスベラトロール類の含有量の具体的な範囲は、1.2~500重量部、1.2~300重量部、1.2~200重量部、1.2~100重量部、1.2~75重量部、1.2~50重量部、1.2~30重量部、1.2~20重量部、1.2~10重量部、1.2~5重量部、1.5~500重量部、1.5~300重量部、1.5~200重量部、1.5~100重量部、1.5~75重量部、1.5~50重量部、1.5~30重量部、1.5~20重量部、1.5~10重量部、1.5~5重量部、2~500重量部、2~300重量部、2~200重量部、2~100重量部、2~75重量部、2~50重量部、2~30重量部、2~20重量部、2~10重量部、2~5重量部、3~500重量部、3~300重量部、3~200重量部、3~100重量部、3~75重量部、3~50重量部、3~30重量部、3~20重量部、3~10重量部、3~5重量部、であってもよい。
【0044】
[剤型]
本発明の第1の医薬品は、上述のリファンピシン類及びレスベラトロール類を配合し、それ自体公知の手段によって製剤化されたものであり、第1の医薬品の投与方法に応じて、薬理学的に許容される基剤及び/又は添加物が適宜混合されていてよい。
【0045】
薬理学的に許容される基剤及び/又は添加物としては、例えば賦形剤、粘稠剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、安定化剤等が挙げられる。また必要に応じて保存剤(防腐剤)、pH調整剤、清涼化剤、抗酸化剤、湿潤化剤、粘着剤、矯臭剤等の添加物を含んでもよい。
【0046】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、D-マンニトール、澱粉、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。粘稠剤としては、例えば、グリセリン、マクロゴール等の多価アルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等(好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム)の親水性高分子、アルギン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、シクロデキストリン、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸、ポリエチレングリコール等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。結合剤としては、例えば、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、澱粉、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、澱粉、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L-ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。溶剤としては、例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油等が挙げられ、少なくとも水を含むことが好ましい。溶解補助剤としては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類;ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等が挙げられる。懸濁化剤としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート等の界面活性剤、グリセリン、マクロゴール等の多価アルコール、ソルビトール、マンニトール、ショ糖等の糖類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子、コンドロイチン硫酸等が挙げられる。等張化剤としては、例えば、ブドウ糖、D-ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール、塩化カリウム、濃グリセリン、プロピレングリコール、ショ糖等が挙げられる。 緩衝剤としては、例えば、リン酸塩(リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等)、ホウ酸、ホウ砂、酢酸塩(酢酸ナトリウム等)、炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム等)、クエン酸、L-グルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。 無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコール、クロロブタノール、プロピレングリコール、アミノ安息香酸エチル、リドカイン等が挙げられる。安定化剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオ乳酸、システイン、グルタチオン、チオ酢酸、メチオニン、チオソルビトール、チオグルコース、チオ尿素等の硫黄化合物、ホウ酸、ホウ砂、リン酸、メタリン酸、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機酸およびその塩類、ギ酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、エデト酸等の有機酸およびその塩類(エデト酸ナトリウム等)、アセトアミド、ジエチルアセトアミド、ニコチン酸アミド、尿素、バルビタール等の酸アミド、尿素誘導体、グリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ブドウ糖、アスコルビン酸等の多価アルコール、糖類、フェノール、チモール、キノン、クマロン、イソクマロン等のフェノール類、ジブチルヒドロキシトルエン、グリシン、グルタミン酸、リジン、フェニルアラニン、カゼイン、エデスチン等のアミノ酸、タンパク質等が挙げられる。乳化剤としては、例えば、グリセリンエステル(モノオレイン酸グリセリン)、サポニン(エンジュサポニン、キラヤ抽出物、ダイズサポニン等)、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン(植物レシチン、卵黄レシチン、大豆レシチン等)、多価アルコール(オレイルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール等)、脂肪エステル(ミリスチン酸オクチルドデシル等)、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、各種界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩型乳化剤、塩化ベンザルコニウム、セスキオレイン酸ソルビタン、ドデシルベンゼンスルホン酸等)、トリエタノールアミン等が挙げられる。保存剤(防腐剤)としては、例えば、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル類、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルバラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジウム等の逆性石鹸類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等のアルコール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム等の有機酸およびその塩類、パラクロルメトキシフェノール、パラクロルメタクレゾール等のフェノール類等が挙げられる。pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、塩酸、硝酸、クエン酸、ホウ酸、酢酸等が挙げられる。清涼化剤としては、例えば、l-メントール、カンファー、ハッカ水等が挙げられる。抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸、クエン酸、エデト酸ナトリウム等が挙げられる。湿潤化剤としては、プロピレングリコール、ポリソルベート、マクロゴール、グリセリン等が挙げられる。 粘着剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、カルボキシビニルポリマー、プロピレングリコール、ポリソルベート80等が挙げられる。矯臭剤としては、トレハロース、リンゴ酸、マルトース、グルコン酸カリウム、アニス精油、バニラ精油、カルダモン精油、生薬成分等が挙げられる。
【0047】
本発明の第1の医薬品は、液剤、固形剤のいずれであってもよく、好ましくは液剤が挙げられる。液剤とする場合には、リファンピシン類及びレスベラトロール類と、必要により溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等とを混合し、溶解、懸濁または乳化することにより製造することができる。本発明の第1の医薬品が経鼻投与薬として調製される場合は、さらに粘稠剤を加えて粘性を高め、滞留性を付与することも好ましい。固形剤とする場合は、リファンピシン類及びレスベラトロール類と、必要により賦形剤、結合剤、崩壊剤またはその他の適当な添加剤とを均等に混和し、適当な造粒法によって造粒物を得て、さらに適宜乾燥によって粉末または微粒状とすることにより製造することができる。
【0048】
本発明の第1の医薬品は、経鼻投与薬として調製される場合は、経鼻投与用の容器に充填されて使用することができる。経鼻投与用の容器は、適宜市販のものを使用することができる。
【0049】
本発明の第1の医薬品のより具体的な態様の例として、リファンピシン類とレスベラトロール類との配合剤が挙げられる。この配合剤は、リファンピシン類とレスベラトロール類とを混合状態で含む医薬組成物である。この配合剤によれば、いずれの投与形態でも、リファンピシン類とレスベラトロール類とを同時に投与することができる。
【0050】
本発明の第1の医薬品のより具体的な態様の別の例として、リファンピシン類を含む薬剤とレスベラトロール類を含む薬剤とを含むキットが挙げられる。それぞれの薬剤は、いずれも同じ基剤及び/又は添加物を用いて調製されてもよいし、リファンピシン類及びレスベラトロール類にそれぞれ応じて選択された基剤及び/又は添加物を用いて調製されてもよい。このキットによれば、いずれの投与形態でも、リファンピシン類とレスベラトロール類とを別々に投与することができる。また、1個の経鼻投与薬装置にリファンピシン類を含む薬剤を充填したカートリッジとレスベラトロール類を含む薬剤を充填した別途のカートリッジとを備える経鼻投与装置に適用する場合は、キットでありながら両成分を同時投与することもできる。
【0051】
[用量及び用法]
本発明の第1の医薬品は、リファンピシンにレスベラトロールが組み合わされていることで、副作用を顕著に低減させることができ、長期投与が可能となる。また、本発明の第1の医薬品は、リファンピシンにレスベラトロールが組み合わされていることで、神経変性疾患原因タンパク質オリゴマーに対する除去効果を顕著に向上させることができるため、抗生物質としての有効量よりも少ない用量で投与することができる。従って、本発明の第1の医薬品は、抗生物質として投与される場合よりも少ない用量を、当該場合よりも長期間連続して投与することができる。本発明の医薬組成は、経口投与用、皮下投与用及び経鼻投与用のいずれの投与方法用として調製されてもよい。これらの中でも、本発明の第1の医薬品は、非侵襲的であり、より一層好ましい副作用低減効果を得る観点、ひいては、より少ない用量での投与及び/又はより長期の投与の観点から、経鼻投与用に調製されることがより好ましい。
【0052】
本発明の第1の医薬品は、副作用が顕著に低減されるため、本発明の第1の医薬品のヒトへの投与量については、リファンピシン類の投与量としては、抗生物質として投与される場合の用量(例えば7.5~10mg/kg・日)よりも低い用量でよい。例えば、リファンピシン類の投与量としては、抗生物質として投与される場合の用量(例えば7.5~10mg/kg・日)の1/2以下、好ましくは1/3以下、より好ましくは1/3.75以下が挙げられる。本発明の第1の医薬品が経鼻投与用に調製される場合は、リファンピシン類の投与量としては、抗生物質として経口投与される場合の用量(例えば7.5~10mg/kg・日)の例えば1/5以下が挙げられる。
【0053】
より具体的な本発明の第1の医薬品のヒトへの投与量については、リファンピシン類の投与量の下限として、薬効発現の観点から、例えば0.15mg/kg・日以上、好ましくは0.3mg/kg・日以上、より好ましくは0.75mg/kg・日以上、さらに好ましくは1mg/kg・日以上が挙げられる。また、リファンピシン類のヒトへの投与量の上限として、副作用抑制の観点から、例えば3.75mg/kg・日以下、好ましくは2.5mg/kg・日以下、より好ましくは2mg/kg・日以下が挙げられる。
【0054】
なお、本発明の第1の医薬品が経鼻投与用に調製される場合は、リファンピシン類の投与量はさらに少なくてもよい。また、本発明の第1の医薬品は、リファンピシン類にレスベラトロール類が組み合わされていることで、神経変性疾患原因タンパク質オリゴマーに対する除去効果を顕著に向上させることができるため、リファンピシン類単独では有効な神経変性疾患原因タンパク質の除去効果を示さない用量であっても、リファンピシン類と組み合わされた場合には神経変性疾患原因タンパク質の除去効果を効果的に発揮させることができる。このようなレスベラトロール類と組み合わせによるリファンピシン類による効果に鑑みると、リファンピシン類のヒトへの投与量の下限として、薬効発現の観点から、例えば0.001mg/kg・日以上、好ましくは0.002mg/kg・日以上、より好ましくは0.003mg/kg・日以上、更に好ましくは、0.005mg/kg・日以上、一層好ましくは0.01mg/kg・日以上も挙げられる。より一層好ましい薬効発現の観点から、リファンピシン類のヒトへの投与量の下限として、例えば0.025mg/kg・日以上、好ましくは0.05mg/kg・日以上、より好ましくは0.1mg/kg・日以上も挙げられる。さらに、リファンピシン類のヒトへの投与量の上限として、より一層の副作用抑制の観点から、1.5mg/kg・日以下、好ましくは1mg/kg・日以下、より好ましくは0.5mg/kg・日以下、さらに好ましくは0.1mg/kg・日以下、一層好ましくは0.07mg/kg・日以下も挙げられる。
【0055】
本発明の第1の医薬品のリファンピシン類の投与量の具体的な範囲としては、0.001~3.75mg/kg・日、0.001~2.5mg/kg・日、0.001~2mg/kg・日、0.001~1.5mg/kg・日、0.001~1mg/kg・日、0.001~0.5mg/kg・日、0.001~0.1mg/kg・日、0.001~0.07mg/kg・日、0.002~3.75mg/kg・日、0.002~2.5mg/kg・日、0.002~2mg/kg・日、0.002~1.5mg/kg・日、0.002~1mg/kg・日、0.002~0.5mg/kg・日、0.002~0.1mg/kg・日、0.002~0.07mg/kg・日、0.003~3.75mg/kg・日、0.003~2.5mg/kg・日、0.003~2mg/kg・日、0.003~1.5mg/kg・日、0.003~1mg/kg・日、0.003~0.5mg/kg・日、0.003~0.1mg/kg・日、0.003~0.07mg/kg・日、0.005~3.75mg/kg・日、0.005~2.5mg/kg・日、0.005~2mg/kg・日、0.005~1.5mg/kg・日、0.005~1mg/kg・日、0.005~0.5mg/kg・日、0.005~0.1mg/kg・日、0.005~0.07mg/kg・日、0.01~3.75mg/kg・日、0.01~2.5mg/kg・日、0.01~2mg/kg・日、0.01~1.5mg/kg・日、0.01~1mg/kg・日、0.01~0.5mg/kg・日、0.01~0.1mg/kg・日、0.01~0.07mg/kg・日、0.025~3.75mg/kg・日、0.025~2.5mg/kg・日、0.025~2mg/kg・日、0.025~1.5mg/kg・日、0.025~1mg/kg・日、0.025~0.5mg/kg・日、0.025~0.1mg/kg・日、0.025~0.07mg/kg・日、0.05~3.75mg/kg・日、0.05~2.5mg/kg・日、0.05~2mg/kg・日、0.05~1.5mg/kg・日、0.05~1mg/kg・日、0.05~0.5mg/kg・日、0.05~0.1mg/kg・日、0.05~0.07mg/kg・日、0.1~3.75mg/kg・日、0.1~2.5mg/kg・日、0.1~2mg/kg・日、0.1~1.5mg/kg・日、0.1~1mg/kg・日、0.1~0.5mg/kg・日、0.15~3.75mg/kg・日、0.15~2.5mg/kg・日、0.15~2mg/kg・日、0.15~1.5mg/kg・日、0.15~1mg/kg・日、0.15~0.5mg/kg・日、0.3~3.75mg/kg・日、0.3~2.5mg/kg・日、0.3~2mg/kg・日、0.3~1.5mg/kg・日、0.75~3.75mg/kg・日、0.75~2.5mg/kg・日、0.75~2mg/kg・日、0.75~1.5mg/kg・日、1~3.75mg/kg・日、1~2.5mg/kg・日、1~2mg/kg・日、1~1.5mg/kg・日が挙げられる。
【0056】
より具体的な本発明の第1の医薬品のヒトへの投与量については、レスベラトロール類の投与量として、副作用低減の観点及び神経変性疾患原因タンパク質オリゴマーの除去効果向上の観点から、例えば0.025mg/kg・日以上、好ましくは0.05mg/kg・日以上、より好ましくは0.1mg/kg・日以上が挙げられ、さらに好ましくは0.15mg/kg・日以上、一層好ましくは0.3mg/kg・日以上、より一層好ましくは0.75mg/kg・日以上、特に好ましくは1mg/kg・日以上が挙げられる。レスベラトロール類のヒトへの投与量の上限としては特に限定されず、例えば3.75mg/kg・日以下が挙げられる。
【0057】
なお、リファンピシンと組み合わされるレスベラトロール類は、単独では有効な肝保護作用を示さない用量であっても、リファンピシンと組み合わされた場合には有効な肝保護作用を奏する。さらに、リファンピシンと組み合わされるレスベラトロール類は、それ自体に、すでに生じた神経変性疾患の原因タンパク質のオリゴマーを除去する作用は知られておらず、本発明者によって神経変性疾患の原因タンパク質のオリゴマーを除去する作用が見出されている。本発明においては、レスベラトロール類が単独では緩徐なAβ生成抑制作用しか示さない用量であっても、リファンピシンと組み合わされた場合には神経変性疾患原因タンパク質の除去効果を顕著に向上させる。このようなレスベラトロールによる効果に鑑みると、レスベラトロール類のヒトへの投与量の下限として、薬効発現の観点から、例えば0.001mg/kg・日以上、好ましくは0.002mg/kg・日以上、より好ましくは0.003mg/kg・日以上、更に好ましくは、0.005mg/kg・日以上、最も好ましくは0.01mg/kg・日以上も挙げられ、レスベラトロール類のヒトへの投与量の上限として、好ましくは2.5mg/kg・日以下、より好ましくは2mg/kg・日以下、さらに好ましくは1.5mg/kg・日以下も挙げられる。さらに、レスベラトロール類のヒトへの投与量の上限として、好ましくは1mg/kg・日以下、より好ましくは0.5mg/kg・日以下、さらに好ましくは0.1mg/kg・日以下、一層好ましくは0.07mg/kg・日以下も挙げられる。
【0058】
本発明の第1の医薬品におけるレスベラトロール類の投与量の具体的な範囲としては、0.001~3.75mg/kg・日、0.001~2.5mg/kg・日、0.001~2mg/kg・日、0.001~1.5mg/kg・日、0.001~1mg/kg・日、0.001~0.5mg/kg・日、0.001~0.1mg/kg・日、0.001~0.07mg/kg・日、0.002~3.75mg/kg・日、0.002~2.5mg/kg・日、0.002~2mg/kg・日、0.002~1.5mg/kg・日、0.002~1mg/kg・日、0.002~0.5mg/kg・日、0.002~0.1mg/kg・日、0.002~0.07mg/kg・日、0.003~3.75mg/kg・日、0.003~2.5mg/kg・日、0.003~2mg/kg・日、0.003~1.5mg/kg・日、0.003~1mg/kg・日、0.003~0.5mg/kg・日、0.003~0.1mg/kg・日、0.003~0.07mg/kg・日、0.005~3.75mg/kg・日、0.005~2.5mg/kg・日、0.005~2mg/kg・日、0.005~1.5mg/kg・日、0.005~1mg/kg・日、0.005~0.5mg/kg・日、0.005~0.1mg/kg・日、0.005~0.07mg/kg・日、0.01~3.75mg/kg・日、0.01~2.5mg/kg・日、0.01~2mg/kg・日、0.01~1.5mg/kg・日、0.01~1mg/kg・日、0.01~0.5mg/kg・日、0.01~0.1mg/kg・日、0.01~0.07mg/kg・日、0.025~3.75mg/kg・日、0.025~2.5mg/kg・日、0.025~2mg/kg・日、0.025~1.5mg/kg・日、0.025~1mg/kg・日、0.025~0.5mg/kg・日、0.025~0.1mg/kg・日、0.025~0.07mg/kg・日、0.05~3.75mg/kg・日、0.05~2.5mg/kg・日、0.05~2mg/kg・日、0.05~1.5mg/kg・日、0.05~1mg/kg・日、0.05~0.5mg/kg・日、0.05~0.1mg/kg・日、0.05~0.07mg/kg・日、0.1~3.75mg/kg・日、0.1~2.5mg/kg・日、0.1~2mg/kg・日、0.1~1.5mg/kg・日、0.1~1mg/kg・日、0.1~0.5mg/kg・日、0.15~3.75mg/kg・日、0.15~2.5mg/kg・日、0.15~2mg/kg・日、0.15~1.5mg/kg・日、0.15~1mg/kg・日、0.15~0.5mg/kg・日、0.3~3.75mg/kg・日、0.3~2.5mg/kg・日、0.3~2mg/kg・日、0.3~1.5mg/kg・日、0.75~3.75mg/kg・日、0.75~2.5mg/kg・日、0.75~2mg/kg・日、0.75~1.5mg/kg・日、1~3.75mg/kg・日、1~2.5mg/kg・日、1~2mg/kg・日、1~1.5mg/kg・日が挙げられる。
【0059】
本発明の第1の医薬品は、副作用が抑制されているため、連続投与に適している。さらに、本発明の第1の医薬品は、少ない用量での投与も可能であるため、連続投与により適している。本発明の第1の医薬品のヒトへの投与期間としては、例えば1ヶ月以上、好ましくは3ヶ月以上が挙げられる。本発明の第1の医薬品は、更に長期にわたって投与することができるため、ヒトへの投与期間の更に好ましい例として、たとえば、6ヶ月以上、好ましくは1年以上、より好ましくは1.5年以上、さらに好ましくは2年以上、一層好ましくは2.5年以上が挙げられ、また、投与期間は3年以上であってもよい。ヒトへの投与期間の上限としては特に限定されないが、例えば10年以下、8年以下、6年以下、又は4年以下が挙げられる。また、投与期間の上限は3年以下であってもよい。具体的な投与期間としては、1ヶ月~10年、1ヶ月~8年、1ヶ月~6年、1ヶ月~4年、1ヶ月~3年、3ヶ月~10年、3ヶ月~8年、3ヶ月~6年、3ヶ月~4年、3ヶ月~3年、6ヶ月~10年、6ヶ月~8年、6ヶ月~6年、6ヶ月~4年、6ヶ月~3年、1~10年、1~8年、1~6年、1~4年、1~3年、1.5~10年、1.5~8年、1.5~6年、1.5~4年、1.5~3年、2~10年、2~8年、2~6年、2~4年、2~3年、2.5~10年、2.5~8年、2.5~6年、2.5~4年、2.5~3年、3~10年、3~8年、3~6年、3~4年が挙げられる。また、投与間隔としては、毎日、隔日、又は1週間に1~2回、好ましくは隔日又は毎日、さらに好ましくは毎日が挙げられる。
【0060】
[投与対象]
本発明の第1の医薬品は、神経変性疾患の予防及び神経変性疾患の治療に用いることができる。
【0061】
本発明の第1の医薬品は長期投与に適しているため、好ましくは、神経変性疾患の予防に用いることができる。神経変性疾患としては、アルツハイマー病(AD)、タウオパチー及びシヌクレイノパチー等が挙げられる。タウオパチーとしては、ピック病、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)等の前頭側頭葉変性症(FTLD)、ADが挙げられる。シヌクレイノパチーとしては、レビー小体型認知症(DLB)、パーキンソン病(PD)、及び多系統萎縮症(MSA)等(好ましくは、レビー小体型認知症及びパーキンソン病)が挙げられる。本発明の第1の医薬品を神経変性疾患の予防に用いる場合は、投与対象としては、発症リスクの高い未発症者であれば特に限定されない。発症リスクの高い未発症者としては、ADの場合は、アミロイドイメージングで老人斑陽性の健常者、家族性アルツハイマー病家系の家族等が挙げられ、タウオパチーの場合は、タウイメージングでタウ封入体陽性の健常者、家族性タウオパチー(FTDP-17など)家系の家族等が挙げられ、シヌクレイノパチーの場合は、シヌクレインイメージングでレビー小体陽性の健常者、ドパミントランスポーターシンチグラフィでシグナル異常の健常者、家族性シヌクレイノパチー(家族性パーキンソン病など)家系の家族等が挙げられる。
【0062】
また、本発明の第1の医薬品は、神経変性疾患の原因タンパク質のオリゴマーを除去する作用に非常に優れているため、発症した神経変性疾患の治療に用いることもできる。シヌクレイノパチーの治療に用いる場合は、投与対象としては、シヌクレイノパチーの診断がなされ、シヌクレイノパチーの病状(例えば認知機能)の進行阻止又は改善を要する患者であれば特に限定されない。好ましくは、レビー小体型認知症患者に対して適用することができる。
【0063】
[薬理作用]
リファンピシン類は、投与により脳へ到達し、神経変性疾患の原因タンパク質のオリゴマーの形成又は凝集抑制、若しくは形成又は凝集した神経変性疾患の原因タンパク質のオリゴマーの除去をもたらす。これによって、神経変性疾患の発症を遅延化、又は発症した神経変性疾患の症状改善(例えば、シナプスが復活することによる記憶障害の回復)をもたらす。
【0064】
また、鼻腔上部の鼻粘膜には嗅上皮ニューロンの樹状突起が来ており、その細胞表面にある嗅覚受容体で得られたにおい情報は嗅上皮ニューロンの軸索を伝って脳の嗅球へ送られる。鼻粘膜と嗅上皮ニューロンの間には血液脳関門(BBB)は存在しない。嗅上皮ニューロンの軸索を束ねた神経束の周囲には脳脊髄液が存在するが、血液と脳脊髄液の間での物質交換を阻む血液脳脊髄液関門(BCSFB)もここには存在しない。したがって、本発明の第1の医薬品が経鼻投与される場合、鼻粘膜に到達した有効成分リファンピシン類は、BBB及びBCSFBによる障害を受けることなく嗅上皮ニューロンや脳脊髄液に取り込まれ、脳内に移行することができる。
【0065】
このように、本発明の第1の医薬品が経鼻投与される場合、リファンピシン類の脳への直接移行性が高められるため、肝臓への初回通過を抑制することができる。したがって、この場合、本発明の第1の医薬品は、投与形式の点で非侵襲的であるだけでなく、脳への直接移行性が高められたことによるより一層向上した高薬効だけでなく、肝臓への初回通過を抑制することによるより一層顕著な副作用低減効果が奏される。
【0066】
[2.レスベラトロール類を含む神経変性疾患の予防又は治療薬]
本発明の第2の予防又は治療薬(以下、本発明の第2の医薬品とも記載する)は、レスベラトロール及びその誘導体からなる群より選択されるレスベラトロール類を含み、所定の用量で神経変性疾患の予防又は治療に用いられる経鼻投与用医薬品であることを特徴とする。なお、本発明の第2の医薬品は、レスベラトロール類を単剤で含む。本発明の第2の医薬品においてレスベラトロール類を単剤で含むとは、本発明の第1の医薬品と区別するため、レスベラトロール類がリファンピシン類と併用されないことを意味し、その限りにおいて、その他の薬効成分を含むことは許容する。
【0067】
[レスベラトロール類]
本発明の第2の医薬品は、レスベラトロール及びその誘導体よりなる群から選択されるレスベラトロール類を含む。本発明の第2の医薬品におけるレスベラトロール類は、単剤でありながらも、低用量で経鼻投与され続けることで、神経変性疾患の原因タンパク質のオリゴマーを緩徐に除去し、認知機能の向上効果等を奏する。
【0068】
レスベラトロール類の詳細については、上記「1.リファンピシン類及びレスベラトロール類を組み合わせてなる神経変性疾患の予防又は治療薬」に記載の通りである。また、本発明の第2の医薬品におけるレスベラトロール類の含有量としては、上記「1.リファンピシン類及びレスベラトロール類を組み合わせてなる神経変性疾患の予防又は治療薬」に記載の第1の医薬品におけるレスベラトロール類の含有量と同様である。
【0069】
[剤型]
本発明の第2の医薬品の剤型としては、上記「1.リファンピシン類及びレスベラトロール類を組み合わせてなる神経変性疾患の予防又は治療薬」に記載の第1の医薬品の剤型と同様である。
【0070】
[用法・用量]
本発明の第2の医薬品は、所定の低用量で神経変性疾患に対する効能を得るために経鼻投与用に調製される。本発明の第2の医薬品のヒトへの投与量については、レスベラトロール類の投与量として、0.28mg/kg・日以下である。本発明の第2の医薬品は、低用量でも緩徐に薬効発現することから、レスベラトロール類の投与量としては、0.24mg/kg・日以下、0.2mg/kg・日以下、0.15mg/kg・日以下、0.1mg/kg・日以下、0.08mg/kg・日以下、又は0.06mg/kg・日以下であってもよい。
【0071】
本発明の第2の医薬品におけるレスベラトロール類の投与量の下限として、薬効発現の観点から、例えば0.01mg/kg・日以上、好ましくは0.025mg/kg・日以上、より好ましくは0.05mg/kg・日以上、更に好ましくは0.1mg/kg・日以上、一層好ましくは0.2mg/kg・日以上、特に好ましくは0.25mg/kg・日以上が挙げられる。
【0072】
本発明の第2の医薬品におけるレスベラトロール類の投与量の具体的な範囲としては、0.01~0.28mg/kg・日、0.01~0.24mg/kg・日、0.01~0.2mg/kg・日、0.01~0.15mg/kg・日、0.01~0.1mg/kg・日、0.01~0.08mg/kg・日、0.01~0.06mg/kg・日、0.025~0.28mg/kg・日、0.025~0.24mg/kg・日、0.025~0.2mg/kg・日、0.025~0.15mg/kg・日、0.025~0.1mg/kg・日、0.025~0.08mg/kg・日、0.025~0.06mg/kg・日、0.05~0.28mg/kg・日、0.05~0.24mg/kg・日、0.05~0.2mg/kg・日、0.05~0.15mg/kg・日、0.05~0.1mg/kg・日、0.05~0.08mg/kg・日、0.05~0.06mg/kg・日、0.1~0.28mg/kg・日、0.1~0.24mg/kg・日、0.1~0.2mg/kg・日、0.1~0.15mg/kg・日、0.2~0.28mg/kg・日、0.2~0.24mg/kg・日、0.25~0.28mg/kg・日が挙げられる。
【0073】
本発明の第2の医薬品は、レスベラトロール類を上記の用量で1日1~4回程度投与することができる。ヒトへの投与期間としては、例えば1ヶ月以上、好ましくは3ヶ月以上、より好ましくは6か月以上、さらに好ましくは1年以上、一層好ましくは1.5年以上が挙げられる。本発明の第1の医薬品は、相当に長期にわたって投与することができるため、ヒトへの投与期間の更に好ましい例としては、例えば2.5年以上、一層好ましくは2.8年以上、特に好ましくは3年以上が挙げられる。ヒトへの投与期間の上限としては特に限定されないが、例えば10年以下、8年以下、6年以下、又は4年以下が挙げられる。具体的な投与期間としては、1ヶ月~10年、1ヶ月~8年、1ヶ月~6年、1ヶ月~4年、3ヶ月~10年、3ヶ月~8年、3ヶ月~6年、3ヶ月~4年、6ヶ月~10年、6ヶ月~8年、6ヶ月~6年、6ヶ月~4年、1~10年、1~8年、1~6年、1~4年、1.5~10年、1.5~8年、1.5~6年、1.5~4年、2~10年、2~8年、2~6年、2~4年、2.5~10年、2.5~8年、2.5~6年、2.5~4年、3~10年、3~8年、3~6年、3~4年が挙げられる。また、投与間隔としては、毎日、隔日、又は1週間に1~2回が挙げられる。また、投与間隔としては、毎日、隔日、又は1週間に1~2回、好ましくは隔日又は毎日、さらに好ましくは毎日が挙げられる。
【0074】
[投与対象]
本発明の第2の医薬品は、神経変性疾患の予防及び神経変性疾患の治療に用いることができる。
【0075】
本発明の第2の医薬品の投与対象については、上記「1.リファンピシン類及びレスベラトロール類を組み合わせてなる神経変性疾患の予防又は治療薬」に記載の投与対象と同様である。
【0076】
その中でも、好ましくは、本発明の第2の医薬品は、アルツハイマー病(AD)の予防に用いることができ、その場合の具体的な投与対象としては、アミロイドイメージングで老人斑陽性の健常者、家族性アルツハイマー病家系の家族等が挙げられる。加えて、本発明の第2の医薬品は、脳機能の衰えによる症状、具体的には認知機能(例えばもの忘れ)の改善を目的として用いることができ、その場合の具体的な投与対象としては、脳機能の衰え、具体的には認知機能の衰えがある人、加齢に伴う認知機能の低下の抑制又は改善を所望する人が挙げられる。
【0077】
[3.レスベラトロール類を含む脳機能改善用食品]
本発明の脳機能改善用食品は、レスベラトロール及びその誘導体からなる群より選択されるレスベラトロール類を含み、所定の用量で脳機能改善用に用いられることを特徴とする。なお、本発明の脳機能改善用食品は、レスベラトロール類を単剤で含む。本発明の脳機能改善用食品においてレスベラトロール類を単剤で含むとは、本発明の第2の医薬品においてレスベラトロール類を単剤で含むのと同様の意味である。
【0078】
[レスベラトロール類]
本発明の脳機能改善用食品は、レスベラトロール及びその誘導体よりなる群から選択されるレスベラトロール類を含む。本発明の脳機能改善用食品におけるレスベラトロール類は、単剤でありながらも、低用量で摂取され続けることで、認知機能の向上効果等を奏する。
【0079】
レスベラトロール類の詳細については、上記「1.リファンピシン類及びレスベラトロール類を組み合わせてなる神経変性疾患の予防又は治療薬」に記載の通りである。また、本発明の脳機能改善用食品におけるレスベラトロール類の含有量としては、上記「1.リファンピシン類及びレスベラトロール類を組み合わせてなる神経変性疾患の予防又は治療薬」に記載の第1の医薬品におけるレスベラトロール類の含有量と同様である。
【0080】
[剤型]
本発明の脳機能改善用食品の剤型としては、液状であってもよいし、固形状であってもよい。液状の例としては、液剤、飲料剤、乳剤、懸濁剤、酒精剤、シロップ剤、エリキシル剤、軟エキス剤等を含む)等が挙げられ、固形状の例としては、錠剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤(ハードカプセル及びソフトカプセルを含む)、トローチ剤、チュアブル剤、乾燥エキス剤等が挙げられる。
【0081】
本発明の脳機能改善用食品は、一般食品(飲料を含む)、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、サプリメント等を含む)、病者用食品、医薬品、医薬部外品として使用することができ、また、他の食品、医薬品、医薬部外品等への添加剤等として使用することもできる。
【0082】
本発明の脳機能改善用食品は、剤型に応じて、1種または2種以上の食品学的または薬学的に許容される賦形剤、崩壊剤、希釈剤、滑沢剤、着香剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、懸濁剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、補助剤、防腐剤、緩衝剤、結合剤、安定剤、増量剤、増粘剤、pH調整剤、界面活性剤、コーティング剤、栄養成分等を含有していてもよい。
【0083】
[用法・用量]
本発明の脳機能改善用食品のヒトの摂取量については、レスベラトロール類の摂取量として、3.75mg/kg・日以下である。本発明の脳機能改善用食品は、低用量でも緩徐に薬効発現することから、レスベラトロール類の摂取量としては、2.5mg/kg・日以下、2mg/kg・日以下、又は1.5mg/kg・日以下であってもよい。
【0084】
本発明の脳機能改善用食品におけるレスベラトロール類の摂取量の下限としては、脳機能改善効果発現の観点から、0.1mg/kg・日以上、好ましくは0.15mg/kg・日以上、より好ましくは0.3mg/kg・日以上、更に好ましくは0.75mg/kg・日以上、一層好ましくは1mg/kg・日以上が挙げられる。
【0085】
本発明の脳機能改善用食品におけるレスベラトロール類の摂取量の具体的な範囲としては、0.1~3.75mg/kg・日、0.1~2.5mg/kg・日、0.1~2mg/kg・日、0.1~1.5mg/kg・日、0.15~3.75mg/kg・日、0.15~2.5mg/kg・日、0.15~2mg/kg・日、0.15~1.5mg/kg・日、0.3~3.75mg/kg・日、0.3~2.5mg/kg・日、0.3~2mg/kg・日、0.3~1.5mg/kg・日、0.75~3.75mg/kg・日、0.75~2.5mg/kg・日、0.75~2mg/kg・日、0.75~1.5mg/kg・日、1~3.75mg/kg・日、1~2.5mg/kg・日、1~2mg/kg・日、1~1.5mg/kg・日が挙げられる。
【0086】
本発明の脳機能改善用食品は、レスベラトロール類を上記の用量で1日1~4回程度服用することができる。ヒトの摂取期間としては、例えば1ヶ月以上、好ましくは3ヶ月以上、より好ましくは6か月以上、さらに好ましくは1年以上、一層好ましくは1.5年以上が挙げられる。本発明の脳機能改善用食品は、相当に長期にわたって摂取することができるため、ヒトの摂取期間の更に好ましい例としては、例えば好ましくは2.5年以上、さらに好ましくは2.8年以上、一層好ましくは3年以上が挙げられる。ヒトの摂取期間の上限としては特に限定されないが、例えば10年以下、8年以下、6年以下、又は4年以下が挙げられる。具体的な摂取期間としては、1ヶ月~10年、1ヶ月~8年、1ヶ月~6年、1ヶ月~4年、3ヶ月~10年、3ヶ月~8年、3ヶ月~6年、3ヶ月~4年、6ヶ月~10年、6ヶ月~8年、6ヶ月~6年、6ヶ月~4年、1~10年、1~8年、1~6年、1~4年、1.5~10年、1.5~8年、1.5~6年、1.5~4年、2~10年、2~8年、2~6年、2~4年、2.5~10年、2.5~8年、2.5~6年、2.5~4年、3~10年、3~8年、3~6年、3~4年が挙げられる。また、摂取間隔としては、毎日、隔日、又は1週間に1~2回、好ましくは隔日又は毎日、さらに好ましくは毎日が挙げられる。
【0087】
[摂取対象]
本発明の脳機能改善用食品は、脳機能の衰えによる症状、具体的には認知機能(例えばもの忘れ)の改善を目的として用いることができ、その場合の具体的な投与対象としては、脳機能の衰え、具体的には認知機能の衰えがある人、加齢に伴う認知機能の低下の抑制又は改善を所望する人が挙げられる。また、本発明の脳機能改善用食品は、脳機能の使用による疲労を予防又は改善することを目的として用いることもできる。
【0088】
本発明の脳機能改善用食品のより具体的な摂取対象としては、例えば、中高年の物忘れの改善、加齢とともに増えてくる物忘れの改善、加齢とともに低下する記憶力(日常生活で生じる行動や判断を記憶し、思い出す力)の維持、加齢とともに低下する注意力(注意を持続させて、一つの行動を続ける力)の維持、加齢とともに低下する記憶(知覚・認識した物事の想起)の精度向上等を所望する人が挙げられる。また、本発明の脳機能改善用食品のより具体的な摂取対象としては、頭(脳)の疲労感の軽減、頭(脳)の冴え、心(脳)の鎮静化、頭(脳)の働きのサポート等を所望する人も挙げられる。
【実施例
【0089】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[試験例1(参考用)]
リファンピシンを含有する又は含有しない投与組成物を、表1に示す用量及び用法で、表1に示すアルツハイマー病モデルマウスへ1ヶ月毎日投与した。
【0090】
(投与対象)
11カ月齢の雄のAPPOSKマウス(Tomiyama et al. J Neurosci. 2010; 30: 4845-56)を用意した。APPOSKマウスの体重は約30gである。APPOSKマウス60匹を、12匹ずつA-Eの5群に分けた。別途、同月齢の野生型マウス(non-Tg littermate)12匹用意した。なお、APPOSKマウスは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)トランスジェニックマウス(アルツハイマー病モデル)であり、アミロイドβ(Aβ)タンパク質の蓄積を示す。
【0091】
(投与組成物)
0.5w/v%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC;Sigma-Aldrich, Carboxymethylcellulose sodium salt low viscosity, C5678)水溶液(以下、「CMC」と記載する。)にリファンピシン薬(RFP;Sigma-Aldrich, Rifampicin ≧97% (HPLC), powder、別名:3-(4-メチルピペラジニルイミノメチル)リファマイシンSV, リファマイシンAMP, リファンピン, R3501)を表1の参考実施例1~4に示す用量となる配合量で懸濁し、投与組成物を調製した。なお、参考例1~2については、リファンピシン薬を含まないことを除いて上記と同様に投与組成物を調製した。
【0092】
(投与方法)
経口投与はげっ歯類用経口ゾンデを用い、経鼻投与はピペットマン(ホワイトチップ)を用い、皮下投与は注射器を用い、すべて無麻酔下で行った。
【0093】
【表1】
【0094】
(結果1-行動試験(認知機能))
投与終了後(12カ月齢)のマウスを行動試験に供し、マウスの認知機能に対するリファンピシンの効果を比較した。行動試験は、Umeda et al. Brain 2016; 139: 1568-86の方法に従ってモリス水迷路によるマウスの空間参照記憶を測定することにより行った。なお、行動試験に供したマウスは、投与期間中に死亡したマウスを除く、12匹(参考実施例1、参考実施例2、参考実施例3)、11匹(参考例1、参考例2、参考実施例4)である。
【0095】
行動試験の結果を図1に示す。経口投与(oral)、経鼻投与(intranasal)、皮下投与(subcutaneous)のいずれの場合においてもAPPOSKマウスの記憶障害の改善を確認した。しかしながら、経口投与(参考実施例1)によるとその改善効果は不完全であった。これに対し、経鼻投与(参考実施例2及び参考実施例3)と皮下投与(参考実施例4)とによると、その改善効果は野生型マウスと同レベルまで達した。さらに経鼻投与によると、用量を5分の1(0.05 mg/day)に下げた場合(参考実施例3)であっても、改善効果は経口投与による場合(参考実施例1)よりも高いことを確認した。
【0096】
(結果2-肝機能障害)
行動試験終了後のマウスから採血し、血清を分離して血清試料を調製した。血清試料の肝酵素AST(GOT)及びALT(GPT)の測定を行い、リファンピシンによる肝機能障害の程度を比較した。
【0097】
肝酵素の測定結果を表2に示す。CMC投与APPOSKマウス(参考例2)と比較して、RFP経口投与マウス(参考実施例1)で有意にASTが上昇し、肝毒性が示唆された。これに対し、経鼻投与マウス(参考実施例2、参考実施例3)では、参考実施例1に比べて顕著なAST減少傾向が認められた。これらの中でも、より低用量の経鼻投与マウス(参考実施例3)では、さらに顕著なAST減少傾向が認められた。皮下投与(参考実施例4)ではASTの上昇は見られなかった。ALTについてはいずれの投与法によっても有意な変化は見られなかった。
【0098】
【表2】
【0099】
(結果3-免疫組織染色(脳病理))
行動試験終了後のマウスから脳を取り出し、免疫組織化学染色によって、Aβオリゴマー、シナプトフィジン、リン酸化タウに対するリファンピシンの効果を比較した。
【0100】
Umeda et al. Brain 2016; 139: 1568-86に記載された手順に従い、免疫組織化学染色法により、Aβオリゴマー(Aβオリゴマーは、タウのリン酸化及びシナプトフィジンの減少を引き起こすと考えられている)、シナプトフィジン(シナプスのマーカータンパク質)、及びリン酸化タウの染色を行った。Aβオリゴマーの染色には11A1抗体(株式会社免疫生物研究所製)を用い、シナプトフィジンの染色にはSVP-38抗体(Sigma社製)を用い、リン酸化タウの染色にはマウスモノクローナルPHF-1抗体(抗p-Ser396/404-tau抗体、アルベルト・アインシュタイン医学校Peter Davies博士より提供)を用いた。染色後は、NIH image-Jを用いて、Aβオリゴマー、シナプトフィジン、及びリン酸化タウの定量を行った。
【0101】
Aβオリゴマー(Aβ oligomers)及びシナプトフィジン(Synaptophysin)の免疫染色後の組織の写真を図2に示す。図2において、上段は海馬CA3組織を示し、下段は海馬CA2/3組織を示す。RFPの経口投与(参考実施例1)、経鼻投与(参考実施例2、参考実施例3)、皮下投与(参考実施例4)のいずれの場合も、脳に蓄積していたAβオリゴマーは減少し、減少していたシナプトフィジンは回復した。
【0102】
図2の免疫染色結果から得たAβオリゴマーの定量結果を図3に示す。RFPの経口投与(参考実施例1)、経鼻投与(参考実施例2、参考実施例3)、皮下投与(参考実施例4)のいずれでも、Aβオリゴマーは野生型マウス(参考例1)と少なくとも同レベルにまで減少した。中でも、同じ用量で比較すると、Aβオリゴマーの除去による減少効果は経鼻投与(参考実施例2)で最も高かった。
【0103】
図2の免疫染色結果から得たシナプトフィジンの定量結果を図4に示す。RFPの経口投与(参考実施例1)、経鼻投与(参考実施例2、参考実施例3)、皮下投与(参考実施例4)のいずれでも、海馬のシナプトフィジンは回復傾向を示した。中でも、経口投与(参考実施例1)による効果は弱く、一方で、経鼻投与(参考実施例2、参考実施例3)、皮下投与(参考実施例4)によると、野生型マウス(参考例1)と同レベルにまで回復した。さらに、行動試験の結果と同様に、経鼻投与の場合、用量を5分の1(0.05 mg/day)に下げた場合(参考実施例3)であっても、その効果は経口投与(参考実施例1)よりも高いことを確認した。
【0104】
リン酸化タウ(Phosphorylated tau)の免疫染色後の組織の写真を図5に示す。図5は、海馬CA2/3組織を示す。RFPの経口投与(参考実施例1)、経鼻投与(参考実施例2、参考実施例3)、皮下投与(参考実施例4)のいずれの場合も、脳に蓄積していたリン酸化タウは減少した。
【0105】
図5の免疫染色結果から得たリン酸化タウの定量結果を図6に示す。RFPの経口投与(参考実施例1)、経鼻投与(参考実施例2、参考実施例3)、皮下投与(参考実施例4)のいずれでも、海馬のリン酸化タウは減少傾向を示した。中でも、経口投与(参考実施例1)による効果は弱く、一方で、経鼻投与(参考実施例2、参考実施例3)、皮下投与(参考実施例4)による効果が高かった。さらに、同じ用量で比較すると、リン酸化タウの除去による減少効果は、経鼻投与(参考実施例2)で最も高かった。
【0106】
以上の結果より、リファンピシンの投与において、経鼻投与は薬効が高く副作用が低い点で経口投与よりも優れており、且つ、非侵襲性である点で皮下投与よりも優れていることが実証された。また、このような効果を生じさせたマウスに対する1ヶ月の投与期間は、ヒトでいう3.3年程度に相当する。したがって、リファンピシンの経鼻投与は、長期の投与に適しているため、認知症の治療に好適であるだけでなく、認知症の予防にも好適であることが示された。
【0107】
マウスにおける有効量をヒトにおける有効量に外挿するには、鼻、鼻粘膜、嗅神経の、大きさ、形状、機能の違いを考慮して適宜決定することができる。上述の参考実施例では、マウス(体重約30g)に対し経鼻投与量として0.05mg/匹/日(1.67mg/kg・日)及び0.25mg/匹/日(8.33mg/kg・日)の有効投与量が示され、得られた結果から、これらの投与量の1割程度の投与量でも効果が期待できる。また、より長期の投与も可能と考えられるため、このようなより長期の投与を考慮すると、さらに少ない投与量(たとえば0.15mg/kg・日)でも効果が期待できる。一方で、ヒトへのリファンピシンの経口投与量が450~600mg/60kg・日(7.5~10mg/kg・日)で処方されていることと、上述の参考実施例で、経鼻投与が経口投与の5分の1の量という少量であっても効果が示されたこととに鑑みると、ヒトへの投与においては、これまでの1/2の投与量(例えば3.75mg/kg・日)でも当然有効であると考えられる。以上より、ヒトへの投与においては、0.15~3.75mg/kg・日を有効投与量とすることができる。また、後述の試験例2に示す通り、リファンピシンの経鼻投与がシヌクレイノパチーの予防又は治療に好適であることから、シヌクレイノパチーに対しても同様の有効投与量とすることができる。
【0108】
[試験例2(参考用)]
リファンピシンを含有する又は含有しない投与組成物を、表3に示す用量及び用法で、表3に示すシヌクレイノパチーモデルマウスへ1ヶ月毎日投与した。
【0109】
(投与対象)
シヌクレイノパチーのモデルとして、A53T変異を持つαシヌクレイントランスジェニック(αSyn-Tg)マウスをJackson Laboratoriesから購入した。このマウスは9か月齢頃より運動機能障害を示す、パーキンソン病のモデル(以下において、αSyn-Tgの9か月(9mo)マウスとも記載する)として報告されている(Lee et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2002; 99: 8968-73)。しかし、後述するように、本発明者らが詳細に検討した結果、このマウスは6か月齢頃より運動機能は正常である一方で認知機能の障害を示すことが明らかとなり、6か月齢頃から9か月齢頃まではレビー小体型認知症のモデル(以下において、αSyn-Tgの6か月(6mo)マウスとも記載する)としても使えることがわかった。従って、本試験例では、投与対象として、αSyn-Tgの6か月(6mo)マウス及びαSyn-Tgの9か月(9mo)を用いた。
【0110】
モデルマウスの運動機能及び認知機能は、以下の運動機能試験及び認知機能試験により確認した。運動機能試験は、ロータロッドを用いて行った。マウスを5 rpm(毎分5回転)のスピードで回転するローターに乗せ、3分間ローター上で歩かせる訓練を行った後、次に4 rpmから40 rpmまで4分かけて回転スピードが上昇するローターに乗せ、ローターから落下するまでの時間(秒数)を測定した(ローターにしがみついたまま1回転した場合は落下とみなした)。1日に2回の測定を行い、平均値を算出した。認知機能試験は、Umeda et al. Brain 2016; 139: 1568-86の方法に従ってモリス水迷路によるマウスの空間参照記憶を測定することにより行った(以下、本試験例において同様)。運動機能試験結果を図7に示し、認知機能試験結果を図8に示す。図7及び図8に示すように、αSyn-Tgの6か月(6mo)マウスは、運動機能の異常が無く認知機能が低下しているためレビー小体型認知症(DLB)モデルとなることが見出された。また、αSyn-Tgの9か月(9mo)マウスは、αシヌクレインの蓄積を示し、後述するように運動機能及び認知機能のいずれも低下しているためパーキンソン病(PD)モデルである。
【0111】
(投与組成物)
0.5w/v%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC;Sigma-Aldrich, Carboxymethylcellulose sodium salt low viscosity, C5678)水溶液(以下、「CMC」と記載する。)にリファンピシン薬(RFP;Sigma-Aldrich, Rifampicin ≧97% (HPLC), powder、別名:3-(4-メチルピペラジニルイミノメチル)リファマイシンSV, リファマイシンAMP, リファンピン, R3501)を表3の参考実施例5~6に示す用量となる配合量で懸濁し、投与組成物を調製した。なお、参考例4~5については、リファンピシン薬を含まないことを除いて上記と同様に投与組成物を調製した。
【0112】
(投与方法)
試験例1と同様にして経鼻投与を行った。
【0113】
【表3】
【0114】
(結果1-行動試験(認知機能))
投与前(6か月)及び投与後(7か月)のαSyn-Tgマウスをモリス水迷路による行動試験に供し、マウスの認知機能に対するリファンピシンの効果を比較した。行動試験の結果を図9に示す。投与前において、αSyn-Tgマウス(参考例5、参考実施例5)に記憶障害が認められたが、リファンピシンを経鼻投与されたマウスαSyn-Tgマウス(参考実施例5)では、投与後1日目から記憶障害の改善が認められ、投与後4日目には正常のNon-Tgマウス(参考例4)と同等まで認知機能が回復した。つまり、認知機能が正常に改善するほどにリファンピシンのαシヌクレインを除去する効果が高いことが示された。また、試験例1と同様に、参考実施例5はリファンピシンの経鼻投与であることから、肝機能障害に対する副作用も顕著に低減されている。さらに、参考実施例5は、リファンピシンの投与量が0.1mg/日/匹と低用量であることからも、肝機能障害に対する副作用は一層顕著に低減されている。
【0115】
(結果2-ウェスタンブロット(脳病理))
αSyn-Tgの9か月(9mo)マウスから脳を取り出し、ウェスタンブロットによって、αシヌクレインオリゴマーに対するリファンピシンの効果を比較した。
【0116】
脳の重さを測定し、その5倍量(1g=1 mLとみなす)のbuffer A(Masuda-Suzukake etal. Acta Neuropathol Commun. 2014; 2: 88)を加えて、sonicationによりホモジネートを作製した。ホモジネートを10万g, 4℃で30分間遠心した。遠心上清を回収し、2×SDS sample bufferを等量加え、5分間煮沸した。得られたサンプルを12% アクリルアミドゲルで電気泳動し、Immobilon-P膜(Merck Millipore, IPVH304F0)に転写した。抗αシヌクレイン抗体(Santa Cruz Biotechnology, sc-58480)、HRP(ホースラディッシュパーオキシダーゼ)-抗マウスIgG抗体(Bio-Rad Laboratories, 170-6516)を反応させたのち、基質としてImmunoStar LD(和光純薬, 290-69904)を加え、ImageQuant LAS 500(GEヘルスケア・ジャパン)でαシヌクレインのバンドを可視化した。バンドの定量はMulti Gauge Ver2.0(富士フィルム)を用いて行った。
【0117】
ウェスタンブロットの結果を図10に示す。図10に示すように、αSyn-Tgマウス(参考例7)では、正常であるNon-Tgマウス(参考例6)では見られないαシヌクレインオリゴマーが認められるが、リファンピシンを経鼻投与したαSyn-Tgマウス(参考実施例5)では、αシヌクレインオリゴマーの減少が認められた。図10のウェスタンブロット結果から得たαシヌクレインの定量結果を図11に示す。図11に示すように、リファンピシンを経鼻投与したαSyn-Tgマウス(参考実施例5)では、投与前のαSyn-Tgマウス(参考例7)と比べて、αシヌクレインオリゴマーが有意に減少していた。
【0118】
[試験例3:アルツハイマー病モデルマウスに対する第1の医薬品の経鼻投与]
リファンピシン(RFP)を単独で含有する投与組成物、レスベラトロール(Res)を単独で含有する投与組成物、リファンピシンとレスベラトロールとを含有する投与組成物、及びリファンピシンもレスベラトロールも含有しない投与組成物を、表4に示す用量及び用法で、表4に示すアルツハイマー病モデルマウスへ1ヶ月毎日投与した。
【0119】
(投与対象)
試験例1と同じAPPOSKマウスを投与対象とした。
【0120】
(投与組成物)
0.5w/v%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC;Sigma-Aldrich, Carboxymethylcellulose sodium salt low viscosity, C5678)水溶液(以下、「CMC」と記載する。)に、リファンピシン薬(RFP;Sigma-Aldrich, Rifampicin ≧97% (HPLC), powder、別名:3-(4-メチルピペラジニルイミノメチル)リファマイシンSV, リファマイシンAMP, リファンピン, R3501)、及び/又は、レスベラトロール(Res;富士フィルム和光純薬, ≧98% (HPLC),別名:3,5,4'-トリヒドロキシ-trans-スチルベン)を、表4の参考例10、比較例1、及び実施例1に示す用量となる配合量で懸濁し、投与組成物を調製した。なお、参考例8~9については、リファンピシン薬及びレスベラトロールのいずれも含まないことを除いて上記と同様に投与組成物を調製した。
【0121】
(投与方法)
試験例1と同様にして経鼻投与を行った。
【0122】
【表4】
【0123】
(結果1-行動試験(認知機能))
試験例1と同様にして、参考例8~11、比較例1、及び実施例1のマウスに対してモリス水迷路による試験を行った。その結果を図12に示す。リファンピシンを投与しなかったAPP OSKマウス(参考例9)に対し、0.02mgのリファンピシンを投与したAPP OSKマウス(比較例1)では認知機能の改善の傾向が認められた。また、リファンピシンを投与しなかったAPP OSKマウス(参考例9)に対し、0.02mgのレスベラトロールを投与したAPP OSKマウス(参考例10)でも認知機能の改善の傾向が認められた。これに対し、リファンピシンにレスベラトロールを組み合わせて投与したAPP OSKマウス(実施例1)では有意に認知機能が改善され、その改善の程度は、正常のNon-Tgマウス(参考例8)と同程度に達していた。つまり、リファンピシン及びレスベラトロールをそれぞれ単独で投与した場合(比較例1、参考例10)はいずれも認知機能に有意差が出なかったことに鑑みると、リファンピシン及びレスベラトロールを組み合わせること(実施例1)で得られる認知機能改善効果は、リファンピシン及びレスベラトロールそれぞれの単独投与(比較例1、参考例10)による効果の足し合わせで予想される程度を超える顕著な効果であった。
【0124】
(結果2-免疫組織染色(脳病理))
試験例1と同様にして、免疫組織化学染色によって、Aβオリゴマーに対するリファンピシンの効果を比較した。結果を図13(a)に示す。また、図13(a)における染色強度をグラフ化した結果を図13(b)に示す。これらの結果に示されるとおり、正常のNon-Tgマウス(参考例8)ではAβオリゴマーの集積は認められないが、リファンピシンを投与しなかったAPP OSKマウス(参考例9)ではAβオリゴマーの集積が認められた。0.02mgのリファンピシンを投与したAPP OSKマウス(比較例1)及び0.02mgのレスベラトロールを投与したAPP OSKマウス(参考例10)のいずれの場合も、集積したAβオリゴマーの除去効果は認められたものの、その程度としては後述の実施例1ほどではなかった。これに対し、リファンピシンにレスベラトロールを組み合わせて投与したAPP OSKマウス(実施例1)では、集積したAβオリゴマーが充分に除去されたことが示された。
【0125】
(結果3-肝機能障害)
試験例1と同様にして、参考例8~10、比較例1、及び実施例1のマウスについて、リファンピシンによる肝機能障害の程度を、ASTの測定結果に基づいて比較した。結果を図14に示す。
【0126】
図14に示されるように、正常のNon-Tgマウス(参考例8)及びリファンピシンを投与しなかったAPP OSKマウス(参考例9)については、肝機能障害による副作用を示すASTの上昇は認められなかった。これに対して、図示していないが、レスベラトロール0.1mgを単独で投与したAPP OSKマウスでは、リファンピシンを投与しなかったAPP OSKマウス(参考例9)に対してASTが低減しており、積極的な肝保護作用が認められたことが確認された。一方で、レスベラトロール0.02mgを単独で投与したAPP OSKマウス(参考例10)では、レスベラトロール用量が少なすぎるためにASTが低減しなかった。
【0127】
また、図14に示されるように、リファンピシン0.02mgを単独で投与したAPP OSKマウス(比較例1)では、副作用を示すASTの上昇が認められた。比較例1によるASTの上昇は、上記の試験例1で示したように、経口投与に比べると顕著に低減され、0.05mgを投与した参考実施例3に比べてもさらに低減されているレベルである。しかしながら、さらに、リファンピシンにレスベラトロールを組み合わせて投与したAPP OSKマウス(実施例1)では、リファンピシンを投与しなかったAPP OSKマウス(参考例9)と近いレベルまでASTが減少した。しかも、実施例1で、リファンピシンに組み合わされたレスベラトロールの投与量は、レスベラトロール単独では有効な肝保護作用が認められなかった参考例10と同じ低用量である(実際に、図14で、参考例9と対比しても参考例10でASTは低減していない)にも関わらず、リファンピシンと組み合わされることで、有効な肝保護作用が認められた。また、図示していないが、上記で積極的な肝保護作用が認められたことが確認されたレスベラトロール0.1mgを単独で投与したAPP OSKマウスでは、ASTが約86IU/Lであった。比較例1におけるAST量に対する実施例1におけるAST量の低減の程度(つまり、組み合わせられたレスベラトロール0.02mgによる肝保護作用)が、参考例9におけるAST量に対するレスベラトロール0.1mgにおけるAST量の低減の程度(つまり、単独レスベラトロール0.1mgによる肝保護作用)と比べても遜色ないことに鑑みると、リファンピシンと組み合わされたレスベラトロールによる副作用低減効果は極めて顕著であるといえる。
【0128】
[試験例4:シヌクレイノパチーモデルマウスに対する第1の医薬品の経鼻投与]
リファンピシン及びレスベラトロールを含有する又は含有しない投与組成物を、表5に示す用量及び用法で、表5に示すシヌクレイノパチーモデルマウスへ1ヶ月毎日投与した。
【0129】
(投与対象)
試験例2に記載したシヌクレイノパチーモデルマウス([A53T]αSyn-Tg)の7月齢(7mo)マウスを投与対象とした。このマウスは、運動機能の異常が無く認知機能が低下しているレビー小体型認知症(DLB)モデルである。
【0130】
(投与組成物)
0.5w/v%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC;Sigma-Aldrich, Carboxymethylcellulose sodium salt low viscosity, C5678)水溶液にリファンピシン薬(RFP;Sigma-Aldrich, Rifampicin ≧97% (HPLC), powder、別名:3-(4-メチルピペラジニルイミノメチル)リファマイシンSV, リファマイシンAMP, リファンピン, R3501)及びレスベラトロール(Res;富士フィルム和光純薬, ≧98% (HPLC),別名:3,5,4'-トリヒドロキシ-trans-スチルベン)を、表5の実施例2、3に示す用量となる配合量で懸濁し、投与組成物を調製した。なお、参考例11及び12については、リファンピシン薬及びレスベラトロールのいずれも含まないことを除いて上記と同様に投与組成物を調製した。
【0131】
(投与方法)
試験例1と同様にして経鼻投与を行った。
【0132】
【表5】
【0133】
(結果-行動試験(認知機能))
試験例1と同様にして、参考例11及び12並びに実施例1及び2のマウスに対してモリス水迷路による試験を行った。その結果を図15に示す。リファンピシン及びレスベラトロールの合剤を投与しなかったシヌクレイノパチーモデルマウス(参考例12)では、認知機能の改善の傾向はわずかであったことに対し、リファンピシン及びレスベラトロールの合剤を投与したシヌクレイノパチーモデルマウス(実施例2及び3)は、認知機能の改善傾向が顕著にみられ、野生型マウス(参考例11)に近い程度まで認知機能の改善が認められた。更に、リファンピシン及びレスベラトロールの合剤による認知機能の改善効果は、実施例2と実施例3との対比に認められるように、用量依存性が確認できた。
【0134】
[試験例5:タウオパチーモデルマウスに対する第1の医薬品の経鼻投与]
リファンピシン及びレスベラトロールを含有する又は含有しない投与組成物を、表6に示す用量及び用法で、表6に示すタウオパチーモデルマウスへ1ヶ月毎日投与した。
【0135】
(投与対象)
タウオパチーモデルマウス(Umeda T et al., Am. J. Pathol. 183, 211-225, 2013)を用意し、モデルマウスの14~15月齢(14-15mo)のマウスを投与対象として用いた。
【0136】
(投与組成物)
0.5w/v%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC;Sigma-Aldrich, Carboxymethylcellulose sodium salt low viscosity, C5678)水溶液に、リファンピシン薬(RFP;Sigma-Aldrich, Rifampicin ≧97% (HPLC), powder、別名:3-(4-メチルピペラジニルイミノメチル)リファマイシンSV, リファマイシンAMP, リファンピン, R3501)、及び/又は、レスベラトロール(Res;富士フィルム和光純薬, ≧98% (HPLC),別名:3,5,4'-トリヒドロキシ-trans-スチルベン)を、表6の比較例2、参考例15、実施例4、及び実施例5に示す用量となる配合量で懸濁し、投与組成物を調製した。なお、参考例13~14については、リファンピシン薬及びレスベラトロールのいずれも含まないことを除いて上記と同様に投与組成物を調製した。
【0137】
【表6】
【0138】
(結果-行動試験(認知機能))
試験例1と同様にして、参考例13~15、並びに比較例2、及び実施例4~5のマウスに対してモリス水迷路による試験を行った。その結果を図16に示す。リファンピシンもレスベラトロールも投与しなかったタウオパチーモデルマウス(参考例14)では、認知機能の改善の傾向はわずかであり、リファンピシン単剤又はレスベラトロール単剤を投与したタウオパチーモデルマウス(比較例2及び参考例15)における認知機能の改善効果は緩徐であったことに対し、リファンピシン及びレスベラトロールの合剤を投与したタウオパチーモデルマウス(実施例4及び5)は、認知機能の改善傾向が顕著にみられ、野生型マウス(参考例13)と変わらない程度まで認知機能の改善が認められた。また、リファンピシンとレスバラトロールの合計量が0.02mgである実施例5において、リファンピシン及びレスベラトロールそれぞれの0.02mg単独投与である比較例2又は参考例15と対比して顕著な認知機能の改善効果が得られていることから、リファンピシン及びレスベラトロールを組み合わせること(実施例5)で得られる認知機能改善効果は、リファンピシン及びレスベラトロールそれぞれの単独投与(比較例2、参考例15)による効果の足し合わせで予想される程度を超える顕著な効果であるといえる。
【0139】
[試験例6:アルツハイマー病モデルマウスに対する第2の医薬品の経鼻投与]
図12の参考例10及び図16の参考例15に示したとおり、0.02mgのレスベラトロールを単独でマウスに1ヶ月投与した場合、神経変性疾患に対して緩徐な認知機能改善効果が得られており、このような効果が緩徐ながら確実に奏されていることは、図13(a)及び図13(b)の参考例10に示した通り、0.02mgのレスベラトロールを単独でマウスに1ヶ月投与した場合も、集積したAβオリゴマーの除去効果が認められていることに実証されている。本試験例では、さらにレスベラトロールを0.1mgの用量でアルツハイマーモデルに投与した場合についても効果を検証した。具体的には、レスベラトロールを単独で含有する又は含有しない投与組成物を、表7に示す用量及び用法で、表7に示すアルツハイマー病モデルマウスへ1ヶ月毎日投与した結果を示す。
【0140】
(投与対象)
試験例1に記載のAPPOSKマウスの13月齢(13mo)を用いた。
【0141】
(投与組成物)
0.5w/v%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC;Sigma-Aldrich, Carboxymethylcellulose sodium salt low viscosity, C5678)水溶液にレスベラトロール(Res;富士フィルム和光純薬, ≧98% (HPLC),別名:3,5,4'-トリヒドロキシ-trans-スチルベン)を、表7の実施例6、7に示す用量となる配合量で懸濁し、投与組成物を調製した。なお、参考例16及び17については、レスベラトロールを含まないことを除いて上記と同様に投与組成物を調製した。
【0142】
(投与方法)
試験例1と同様にして経鼻投与を行った。
【0143】
【表7】
【0144】
(結果-行動試験(認知機能))
試験例1と同様にして、参考例16、17及び実施例6、7のマウスに対してモリス水迷路による試験を行った。その結果を図17に示す。レスベラトロールを投与しなかったアルツハイマー病モデルマウス(参考例17)の認知機能の改善効果と対比して、レスベラトロールを投与したアルツハイマー病モデルマウス(実施例6、7)では、認知機能の改善効果が認められた。中でも、実施例7に示される通り、レスベラトロールを0.1mg/日の用量で投与した場合(実施例7)は、野生型マウス(参考例16)に近い程度まで認知機能の改善が認められたが、レスベラトロールを0.02mg/日の用量で投与した場合(実施例6)でも、緩徐でありながらも認知機能改善効果が認められた。
【0145】
なお、本試験例で使用したマウスが、Aβオリゴマーの蓄積により認知機能低下を来すように作成されたモデルであることと、図13(a)及び図13(b)の参考例10に示した通り、0.02mgのレスベラトロールを単独で当該モデルのマウスに1ヶ月投与した場合に、集積したAβオリゴマーが有意に除去されたことが認められたという病理所見とに鑑みると、0.02mgのレスベラトロール投与により認知機能を改善できることはメカニズム上明らかである。従って、本試験例で用いたn=10のマウスによれば、0.02mgのレスベラトロールによる認知機能改善効果は図17に示す通りであったものの、メカニズム上、実施例7のマウスによって認められたような有意性をもって認知機能改善効果が認められ得ることは明らかである。
【0146】
[結論]
上記の実施例に示される通り、第1に、リファンピシン及びレスベラトロールの合剤を、アルツハイマー病モデル、シヌクレイノパチーモデルマウス、及びタウオパチーモデルマウスに投与した結果から、リファンピシン及びレスベラトロールの合剤が、副作用を低減し、低用量で神経変性疾患に対して有効となることが確認され、これにより、長期投与が可能であることが示唆され;第2に、レスベラトロールの単剤をアルツハイマー病モデルに投与した結果から、レスベラトロールの合剤が、低用量で神経変性疾患に対して有効となることが確認され、これにより、長期投与、長期摂取が可能であることが示唆された。事実、上記の実施例に示される通り、マウスに対して1か月という長期間にわたって連続投与が可能であった。
【0147】
マウスにおける有効量をヒトにおける有効量に外挿するには、鼻、鼻粘膜、嗅神経の、大きさ、形状、機能の違いを考慮して適宜決定することができる。第1の医薬品に関する上述の実施例では、マウス(体重約30g)に対するリファンピシンの投与量として0.02mg/匹/日(0.66mg/kg・日)又は0.01mg/匹/日(0.33mg/kg・日)という更なる低用量による効果が示され、得られた結果から、これらの投与量の1割程度の投与量でも当然に効果が期待できる。また、より一層の長期投与も可能と考えられるため、このようなより一層の長期投与を考慮すると、さらに少ない投与量(たとえば0.001mg/kg・日)でも効果が期待できる。一方で、ヒトへのリファンピシンの経口投与量が450~600mg/60kg・日(7.5~10mg/kg・日)で処方されていることと、上述の参考実施例で、経鼻投与が経口投与(試験例1の参考実施例1)の12.5分の1の量という少量であっても効果が示されたこととに鑑みると、ヒトへの投与においては、これまでの1/5の投与量(例えば1.5mg/kg・日)でも当然有効であると考えられる。以上より、ヒトへの投与においては、0.001~1.5mg/kg・日を投与量とすることもできる。試験例1で導出した投与量0.15~3.75mg/kg・日と総括すると、ヒトへの投与においては、0.001~3.75mg/kg・日を投与量とすることができる。
【0148】
上述の第1の医薬品に関する実施例では、経鼻投与組成物は、リファンピシン及びレスベラトロールが同量となるように調製されたものであるため、レスベラトロールのヒトへの投与量も、上記導出したリファンピシンのヒトへの投与量と同様とすることができる。なお、レスベラトロール類が単独で積極的な肝保護作用を示す投与量0.1mg/匹/日(3.3mg/kg・日)を下回る、単独では有効な肝保護作用を示さない投与量0.02mg/匹/日(0.66mg/kg・日)又は0.01mg/匹/日(0.33mg/kg・日)であっても、リファンピシンと組み合わされることで顕著な副作用低減効果が得られることに鑑みると、レスベラトロールのヒトへの投与量は、更に少ない0.001~2.5mg/kg・日を投与量とすることもできる。
【0149】
また、マウスにおける有効量をヒトにおける有効量に外挿するには、より具体的には、FDA Guidance Document UCM078932に掲載されているヒト等価用量に基づいて導出することもできる。例えば、マウスの体表面積に基づくヒト等価用量換算を行う場合、12.3という除数が用いられ、具体的には、体重30gのマウスの用量(mg/kg)を12.3で除することで、体重60kgのヒトの用量(mg/kg)を導出することができる。これに基づくと、第1の医薬品に関する実施例で用いられたマウスへのリファンピシン及びレスベラトロールの0.02mg/匹/日(0.66mg/kg・日)又は0.01mg/匹/日(0.33mg/kg・日)という用量は、ヒトに換算すると、それぞれ、0.054mg/kg・日又は0.027mg/kg・日となる。また、第2の医薬品に関する実施例で用いられたマウスへのレスベラトロールの0.02mg/匹/日(0.66mg/kg・日)又は0.1mg/匹/日(3.3mg/kg・日)という用量は、ヒトに換算すると、それぞれ、0.054mg/kg・日又は0.27mg/kg・日となる。
【0150】
更に、上記の実施例では、カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液を溶媒とし、リファンピシン1重量部当たりレスベラトロール1重量部の比率とした経鼻投与用組成物を調製することでマウスにおいて十分な有効性が示された。上述のとおり、マウスにおける有効量をヒトにおける有効量に外挿するには、鼻、鼻粘膜、嗅神経等の、大きさ、形状、機能等の違いを考慮して適宜決定することができる。さらに、経鼻投与用組成物を鼻粘膜より薬剤を吸収させやすくするには、鼻腔内吸収部位に経鼻投与用組成物を長く滞留させることが望まれるため、水への溶解性が低い成分ほど鼻腔内で繊毛細胞による粘液層の移動の影響を受けて消化管に流されやすくなる傾向も併せて考慮することができる。リファンピシンの水への溶解性は25℃で2.5mg/mL、レスベラトロールの水への溶解性は25℃で0.03mg/mLである。このような水への溶解性の違いが鼻腔内から消化管への薬剤の流されやすさの違いに与える影響が、ヒトにおいてより一層大きくなる場合は、リファンピシン類1重量部当たりのレスベラトロール類の含有量としては、1~500重量部であってもよい。反対に、水への溶解性の違いが鼻腔内から消化管への薬剤の流されやすさの違いに与える影響が、ヒトにおいてより一層小さくなる場合は、リファンピシン類1重量部当たりのレスベラトロール類の含有量としては、1/500~1重量部であってもよい。これらを総括して、リファンピシン類1重量部当たりのレスベラトロール類の含有量としては、1/500~500重量部とすることができる。
【0151】
加えて、上記の実施例では、第1の医薬品及び第2の医薬品をマウスへ1か月投与することによって、神経変性疾患に対する効果が確認された。ここで、マウスの寿命は、一般的に約2~約2.2年といわれている。例えば、Yuichi Yamashita他、「Induction of prolonged natural lifespans in mice exposed to acoustic environmental enrichment」2018年、Scientific Reports volume 8, Article number: 7909では、C57BL/6Jラット(オス4匹、メス4匹)を通常の実験動物飼育環境にて飼育したところ、平均寿命が約700日(約2年)であったことが示されている。一方、World Health Organization著、WORLD HEALTH STATISTICS OVERVIEW 2019 MONITORING HEALTH FOR THE SDGsによれば、ヒトの寿命は高所得国で約80歳であることが示されている。そうすると、実験用マウスの寿命とヒトの寿命との対比から、実験用マウスの生命時間の約36~約40倍がヒトの生命時間に相当するため、実験用マウスへの1か月間(31日)の投与は、ヒトの約3年間又はそれ以上の投与に相当する。従って、第1の医薬品及び第2の医薬品をヒトに投与する場合の投与期間としては、好ましくは2.5年以上、さらに好ましくは2.8年以上、一層好ましくは3年以上とすることができる。
図1
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