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特許7279970脳によって生じる電気的活動をモニタリングするためのデバイス及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】脳によって生じる電気的活動をモニタリングするためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/372 20210101AFI20230516BHJP
   A61B 5/31 20210101ALI20230516BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
A61B5/372 ZDM
A61B5/31
A61B5/16 120
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021162071
(22)【出願日】2021-09-30
(62)【分割の表示】P 2018556448の分割
【原出願日】2017-04-26
(65)【公開番号】P2022000237
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】62/329,259
(32)【優先日】2016-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518376152
【氏名又は名称】フリーア、ロジック、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FREER LOGIC, INC.
【住所又は居所原語表記】360 Cane Creek Road, Fletcher, NC, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーター、アンソニー、フリーア
(72)【発明者】
【氏名】グエン、キャスリン、フリーア
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0265080(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0318827(US,A1)
【文献】国際公開第2004/089209(WO,A1)
【文献】特開2011-182973(JP,A)
【文献】国際公開第2015/034065(WO,A1)
【文献】特表2008-525063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
A61B 5/16-5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人と接触することなく、前記人の脳によって生成された電場を検出するように構成された非接触式センサであって、前記非接触式センサは、使用中に前記人から分離されるように構成された外部デバイスに接続されている、非接触式センと、
前記検出された電場の分析信号に関係のない周波数成分を減衰させ、前記検出された電場の前記分析信号に関係する周波数成分を増幅することによって、前記非接触式センサに近接する前記人の前記脳によって生じる電気的活動に相当する前記分析信号を生成するように構成された、前記非接触式センサに結合された増幅装置と、
を備える、前記人の前記脳によって生じる前記電気的活動をモニタリングするためのデバイスであって、
前記増幅装置はさらに、
前記非接触式センサに結合され、かつ前記検出された電場の低周波数成分を減衰させることによって第1のフィルタ後の信号を生成するように構成されたハイパスフィルタであって、前記減衰された周波数成分は、第1のカットオフ周波数より低い、ハイパスフィルタと、
前記ハイパスフィルタに結合され、かつ前記分析信号に関係する前記第1のフィルタ後の信号の成分を増幅することによって第1の増幅後の信号を生成するように構成された第1の増幅器と、
前記第1の増幅器に結合され、かつ前記分析信号に関係する前記第1のフィルタ後の信号の成分を増幅することによって第2の増幅後の信号を生成するように構成された第2の増幅器と、
前記第2の増幅器に結合され、かつ前記第2の増幅後の信号の高周波数成分を減衰させることによって第2のフィルタ後の信号を生成するように構成されたローパスフィルタと、
を含む、デバイス
【請求項2】
前記分析信号を分析して、前記分析信号における前記人の状態に相当するパターンを検出するように構成されたプロセッサをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記人の前記状態が、前記人の感情状態、認知負荷状態、認知状態及び警戒状態のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記プロセッサが前記人の所定の状態に相当するパターンを検出した場合、前記プロセッサは、その後の行動をとるために行動信号を別のデバイスに伝達する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記電場は、前記人から少なくとも25.4cm以上の距離から検出される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記増幅装置はさらに、前記ローパスフィルタに結合され、かつ前記分析信号に関係する前記第2のフィルタ後の信号の成分を増幅することによって前記分析信号を生成するように構成された第3の増幅器を含む、請求項に記載のデバイス。
【請求項7】
人と接触することなく、前記人の脳によって生成された電場を検出するように構成された非接触式センサであって、前記非接触式センサは、使用中に前記人から分離されるように構成された外部デバイスに接続されている、非接触式センサと、
前記検出された電場の分析信号に関係のない周波数成分を減衰させ、前記検出された電場の前記分析信号に関係する周波数成分を増幅することによって、前記非接触式センサに近接する前記人の前記脳によって生じる電気的活動に相当する前記分析信号を生成するように構成された、前記非接触式センサに結合された増幅装置と、
を備える、前記人の前記脳によって生じる前記電気的活動をモニタリングするためのデバイスであって、
前記増幅装置が、さらに、
前記非接触式センサに接続されたハイパスフィルタであって、前記ハイパスフィルタは、第1のフィルタされた信号を生成するように構成された、ハイパスフィルタと、
前記ハイパスフィルタから前記第1のフィルタされた信号を受信し、第1の増幅された信号を生成するように構成された、第1の増幅器と、
前記第1の増幅器から前記第1の増幅された信号を受信し、第2の増幅された信号を生成するように構成された、第2の増幅器と、
前記第2の増幅器から前記第2の増幅された信号を受信し、第2のフィルタされた信号を生成するように構成された、ローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタから前記第2のフィルタされた信号を受信し、分析信号を生成するように構成された、第3の増幅器と、
前記第3の増幅器から前記分析信号を受信し、前記分析信号をデジタル化するように構成された、アナログ-デジタル変換器と、
をさらに含む、デバイス。
【請求項8】
前記非接触式センサは、少なくとも100ナノボルトの電場を検出できる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
人の脳によって生成される電場を、非接触式センサによって検出することであって、前記非接触式センサは、使用中に前記人から分離されるように構成された外部デバイスに接続される、検出することと、
分析信号と関係ない検出された電場に対応する周波数成分を減衰し、前記分析信号に関係する前記検出された電場の周波数成分を増幅することによって、前記非接触式センサに接続された増幅装置によって、前記人の前記脳によって生成された前記電場に対応する分析信号を生成することと、
を含む、脳によって生じる電気的活動をモニタリングするための方法であって、
前記増幅装置はさらに、
前記非接触式センサに結合され、かつ前記検出された電場の低周波数成分を減衰させることによって第1のフィルタ後の信号を生成するように構成されたハイパスフィルタであって、前記減衰された周波数成分は、第1のカットオフ周波数より低い、ハイパスフィルタと、
前記ハイパスフィルタに結合され、かつ前記分析信号に関係する前記第1のフィルタ後の信号の成分を増幅することによって第1の増幅後の信号を生成するように構成された第1の増幅器と、
前記第1の増幅器に結合され、かつ前記分析信号に関係する前記第1のフィルタ後の信号の成分を増幅することによって第2の増幅後の信号を生成するように構成された第2の増幅器と、
前記第2の増幅器に結合され、かつ前記第2の増幅後の信号の高周波数成分を減衰させることによって第2のフィルタ後の信号を生成するように構成されたローパスフィルタと、
を含む、方法
【請求項10】
前記人に物理的に触れない距離から前記人の頭部または身体に向けて配置される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記非接触式センサは、前記人から少なくとも25.4cm離れている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記非接触式センサは、少なくとも100ナノボルトの電場を検出できる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記減衰された周波数成分は、関係のない周波数成分を減衰させることによって、前記検出された電場から脳の電気的活動に関連する周波数成分を有する分析信号の一部を、ローパスフィルタによってフィルタリングすること、を含む請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ローパスフィルタは、20Hzから40Hzの範囲内のカットオフ周波数を有する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照による組み入れ
本開示は、2016年4月29日に提出された米国仮出願第62/329,259号「Non-Contact Body and Head-Based Monitoring of Brain Electrical Activity」の利益を主張しており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
本明細書に提供された背景技術の記載は、本開示の文脈を概ね提示する目的のためである。目下名前を挙げられた発明者等の研究は、この背景技術セクションに記載される研究、ならびにそれ以外では出願時に従来技術として権限が与えられない可能性のある記載の態様の範囲で、本開示に対抗する従来技術として明示的または黙示的を問わず承認されない。
【0003】
用語脳波記録法(EEG)は一般に、人の頭皮に配置された電極から測定または記録される際に脳によって生成される電気的活動の測定を指す。電極から結果として生じる電気信号は、対応してEEG信号と呼ばれ、人の脳内の電気的活動に基づいている。そのような電気的活動は一般に「脳波」活動と名付けられる。関連する用語、脳波図は、EEGによって生成されるグラフの記録を指している。
【0004】
EEG電極が装着される頭皮または頭部にある地点を指定するためのシステムが開発されてきた。これゆえ、国際「10-20」システムは、標準化のためにEEG頭皮電極の場所を説明するのに広く利用されている。10-20システムは、電極の表面の位置と、大脳皮質の下にある領域に対するその関係性とに基づいている。「10」及び「20」は、頭蓋骨の前後の距離全体または左右の距離全体の10%または20%のいずれかのような、隣接する電極の間の実際の距離を指している。さらに、文字F、T、C、P及びOは、前頭部、側頭部、中心部、頭頂部及び後頭部をそれぞれ意味しており、センサが配置される突出部を識別するために使用される。数字をさらに使用して、脳半球の場所を識別する。偶数(2、4、6、8)は、右半球にある電極の位置を指し、奇数(1、3、5、7)は、左半球にある電極に位置を指している。
【発明の概要】
【0005】
本開示の態様は、これに限定するものではないが、バイオフィードバックベースの注意訓練、認知状態のモニタリング、感情のモニタリング、眠気のモニタリング、ストレスのモニタリング、認知負荷のモニタリング、人の能力の訓練、ゲーミング及びリラクゼーション訓練などの目的のために、人の脳または身体に接触することなく、一定の距離から取得される人の脳または身体の中での電気的活動のモニタリングに関する。
【0006】
本開示の態様は、人の脳によって生じる電気的活動をモニタリングするための非接触式の脳波記録(EEG)デバイスを提供することができる。デバイスは、人と接触することなく、人の脳によって生成される電気信号を含む電気信号を検出するように構成され得る非接触式センサを含むことができる。デバイスはさらに、検出された電気信号の分析信号に関係のない周波数成分を減衰させ、検出された電気信号の分析信号に関係する周波数成分を増幅することによって、非接触式センサに近接する人の脳によって生じる電気的活動に相当する分析信号を生成するように構成された、非接触式センサに結合された増幅装置を含んでよい。非接触式脳波記録(EEG)デバイスはまた、この分析信号を分析して、分析信号における非接触式センサに近接する人の状態に相当するパターンを検出するように構成されたプロセッサを含むこともできる。
【0007】
開示の別の態様では、非接触式脳波記録(EEG)デバイスは、非接触式センサに近接する人の感情状態、認知負荷状態及び警戒状態のうちの少なくとも1つを含む、非接触式センサに近接する人の状態を検出することができる。さらに、プロセッサが非接触式センサに近接する人の所定の状態に相当するパターンを検出した場合、プロセッサは、行動信号を別のデバイスに伝達してその後の行動をとることができる。
【0008】
本開示による非接触式脳波記録(EEG)デバイスは、分析信号を分析して、非接触式センサに近接する人の活動に相当する分析信号におけるパターンを検出するように構成されたプロセッサを含むことができる。非接触式センサに近接する人の活動には、肯定的なジェスチャーまたは否定的なジェスチャーにおける人の頭部の動きが含まれてよい。さらに、非接触式センサに近接する人の活動は、非接触式センサの近傍に進入する、またはそこから出る人の頭部または身体の動きを含むことができるため、非接触式脳波記録(EEG)デバイスは、非接触式センサによってモニターされる空間が、人によってそれぞれ占拠されているか、占拠されていないかを検出する。加えて、プロセッサが、非接触式センサに近接する人の活動に相当する特定のパターンを検出する場合、プロセッサは、その後の行動をとるために行動信号を別のデバイスに伝達することができる。
【0009】
本開示の態様はまた、非接触式センサが、ヘッドレスト、シート、支柱及びサンバイザーのうちの少なくとも1つに組み込まれる非接触式脳波記録(EEG)デバイスを含むこともできる。さらに、非接触式センサは、人の頭部から離れて、かつ人の首、背中及び臀筋のうちの少なくとも1つに隣接して配置される場合もある。非接触式センサは、バー配列構成または同心リング配列構成で構成することができる。
【0010】
本開示の追加の態様は、増幅装置が、非接触式センサに結合され、かつ検出された電気信号の低周波数成分を減衰させることによって第1のフィルタ後の信号を生成するように構成されたハイパスフィルタをさらに含むことができる非接触式脳波記録(EEG)デバイスを提供することができる。増幅装置はまた、ハイパスフィルタに結合され、かつ分析信号に関係する第1のフィルタ後の信号の成分を増幅することによって第1の増幅後の信号を生成するように構成された第1の増幅器を含んでよい。増幅装置はさらに、第1の増幅器に結合され、かつ分析信号に関係する第1のフィルタ後の信号の成分を増幅することによって第2の増幅後の信号を生成するように構成された第2の増幅器を含むことができる。増幅装置はまた、第2の増幅器に結合され、かつ第2の増幅後の信号の高周波数成分を減衰させることによって第2のフィルタ後の信号を生成するように構成されたローパスフィルタを含んでよい。さらなる実施形態では、増幅装置は、ローパスフィルタに結合され、かつ分析信号に関係する第2のフィルタ後の信号の成分を増幅することによって分析信号を生成するように構成された第3の増幅器を含むことができる。
【0011】
例として提案される本開示の種々の実施形態は、同様の数字が同様の要素を参照している以下の図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一例の実施形態による非接触式の指向性EEGデバイスの概略図である。
図2】本開示の一例の実施形態による非接触式の指向性EEGデバイスの概略図である。
図3】本開示の一例の実施形態による非接触式の指向性EEGデバイスの概略図である。
図4】人の後頭部に向けられた、本開示の一例の実施形態による非接触式の指向性EEGデバイスの概略図である。
図5】ヘッドレストから人の後頭部に向けられた、本開示の一例の実施形態による非接触式の指向性EEGデバイスの概略図である。
図6】背もたれから人の後頭部に向けられた、本開示の一例の実施形態による非接触式の指向性EEGデバイスの概略図である。
図7】人の皮膚に触れずに、人の首の後部に向けられた、本開示の一例の実施形態による非接触式の指向性EEGデバイスの概略図である。
図8】人の皮膚に触れずに、自動車のサンバイザーから人の額に向けられた、本開示の一例の実施形態による非接触式の指向性EEGデバイスの概略図である。
図9】自動車の天井から人の皮膚に触れずに、人の頭頂部に向けられた、本開示の一例の実施形態による非接触式の指向性EEGデバイスの概略図である。
図10】シートの底部から人の皮膚に触れずに人の臀筋に向けられた、本開示の一例の実施形態による非接触式の指向性EEGデバイスの概略図である。
図11】支柱から人の皮膚に触れずに人の側部に向けられた、本開示の一例の実施形態による非接触式の指向性EEGデバイスの概略図である。
図12】手持ち式デバイスから人の皮膚に触れずに人の身体または頭部のいずれかの場所に向けられた、本開示の一例の実施形態による非接触式の指向性EEGデバイスの概略図である。
図13図13Aは、本開示による非接触式の指向性EEGデバイスと共に使用するための一例のバー配列のセンサ構成を示し、図13Bは、本開示による非接触式の指向性EEGデバイスと共に使用するための一例の同心リング配列のセンサ構成を示す。
図14図14Aは、ユーザの近接して位置決めされた一例の非接触式の指向性EEGデバイスを示し、図14Bは、ユーザの近接して位置決めされた非接触式の指向性EEGデバイスによって検出することができる一例の信号を示す。
図15図15Aは、人の近接して位置決めされた一例の非接触式の指向性EEGデバイスを示し、図15Bは、ユーザの近接して位置決めされた非接触式の指向性EEGデバイスによって検出することができる一例の信号を示す。
図16A】人がデバイスの近傍にいるとき、非接触式の指向性EEGデバイスによって検出される一例の信号を示す。
図16B】人がデバイスの近傍にいないとき、非接触式の指向性EEGデバイスによって検出される一例の信号を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示に記載される装置及び方法は、電極を個人の頭部または身体に装着することなく個人の脳波の活動をモニターすることができる。本開示によって記載されるように、非接触式センサを、頭部または身体の皮膚のいずれにも触れずに頭部または身体の一部に近接して配置することができる。例えば非接触式センサは、身体から6インチ以上離れた距離のところで使用され、頭髪、衣服、室内装飾品などの様々な物質を通してEEG信号を取得することができる。加えて、本開示によって記載される脳波をモニタリングするための装置及び方法は、被検者への信号注入を必要としない。さらに、本開示によって記載される脳波をモニタリングするための装置及び方法は、スタートレックテレビシリーズの有名な「トリコーダー」と同様の方法でEEG信号を取得するために身体のどこででも使用することができる。
【0014】
実施形態において、装置は、センサを、信号処理及び分析機能を実行するように構成されたプロセッサを典型的に含む電子回路に有線または無線で結合することができる単一のデバイスまたは複数のデバイスに統合されてよい。そのような一実施形態では、センサを含む身体指向性の支持台は、個人の頭部または身体の方に向けられ、例えば信号処理作業などの分析を行うように構成された別個のプロセッサと通信することができる。代替の実施形態は、データ収集、信号処理作業及び分析機能の全てを実行する、頭部または身体に向けられた単一の自給式ユニットを利用する場合もある。別の実施形態は、別個の分析コンピュータと通信する、頭部の方に向けられた身体指向性の支持台を利用する。さらに別の実施形態は、データ収集、信号処理作業及び分析機能の全てを実行する、頭部より下の身体に向けられた単一の自給式ユニットを利用する。本明細書に記載されるように、これらの実施形態のいずれも、モニターされている人の身体または頭部の皮膚に接触することはない。
【0015】
脳の研究は、EEG信号は、いくつかの成分を含んでおり、いくつかの周波数帯域の範囲内にある律動的な活動から生じる信号が含まれていることを見いだした。このような多様な周波数帯域内の信号に関して一般的に容認される専門用語には、デルタ(3Hzまで)、シータ(4Hzから8Hzまで)、アルファ(8Hzから12Hzまで)、ベータ(12Hzからおよそ30Hzまで)及びガンマ(おおよそ26Hzから100Hzまで)が含まれる。このような異なる脳波信号は、同時にかつ組み合わせて生成されるが、信号が所定の時間の任意の時点において優位である(最も強力である)周波数帯域は、人の意識の状態または人の生理学的状態を示すものである。
【0016】
例として、睡眠時、脳は、3Hzまでの周波数範囲を有する優位の遅いデルタ波を生成する。これらは、振幅が最も高くなり易く、最も遅い波である。4Hzから8Hzまでの周波数範囲のシータ波は、白日夢を見ている、または朦朧とした眠りもしくは眠気を催した状態に一般に関連している。8Hzから12Hzまでの周波数範囲のアルファは、リラクゼーションを示している。12Hzから及び30Hzまでの周波数範囲のベータ波は、活発な思考、または警戒に関連している。26Hzから100Hzまで周波数範囲のガンマ波は、特定の認知機能または運動機能を行う目的で、一緒に作用してネットワークを形成するニューロンの異なる集団の結束を表すように理論化される。頭蓋骨及び頭皮のフィルタリング特性が理由で、ガンマ波は、開頭術を必要する皮質脳波記録法(ECoG)として知られる侵襲的な方法によって脳の露出された表面に直接配置された電極を利用することによって一般に記録される。
【0017】
脳内の電気的活動をモニタリングするための信号の取得は、様々な理由のために、人の頭部に、及び典型的には頭皮に装着された電極の利用に従来より限定されてきた。頭部への電極の配置は、様々な理由のために制限される場合がある。一例として、人がスポーツまたは運動中に活動している場合、活動中の頭部の動きが、人為的結果を生み出すことによってそれ自体が信号取得を妨げることから、頭部に拘束されたEEG電極を用いて脳内の電気的活動を正確にモニターすることはできない。動いている電極は、信号の入/出力を中断させる場合がある。また、人に、頭部外傷または外傷性脳損傷(TBI)がある場合、その人は、組織損傷のために、頭部に配置されたセンサに耐えることができない場合がある。乗り物内で使用する場合、頭部への電極の装着は、一般大衆により拒絶されてきた。従来式の有線EEG取得センサ及び最新の消費者ヘッドセットに組み込まれた頭部の皮膚への接触またはさらには皮膚に近接近することは、消費者の市場におけるEEGの利用をいくぶん禁止してきた。例えば、それらは、頭部に装着された目に見えるワイヤに起因し得る、おびえさせたり怖がらせたりする作用を伴う否定的なサイエンスフィクションの固定観念を強める可能性がある。
【0018】
本明細書に開示される装置は、EEGベースのバイオフィードバックのモニタリング、認知状態の検出、人の感情の検出、認知負荷の検出ならびに眠気及び睡眠の検出の分野においてとりわけ有益であり得る。しかしながら、そのようなものは、単なる例という意図であり、制限的なものではない。したがって開示の実施形態を利用して、幅広い多様な目的のために、人の脳内の電気的活動に基づいた信号を取得し、分析することができる。
【0019】
例えば装置は、乗り物の操作者の注意/注意散漫を検出するために、自動車または飛行機などの乗り物の中で使用することができる。加えて、装置を使用して、乗り物の操作者の認知負荷を測定する、例えば短い間情報を記憶する短期記憶と、長期記憶に入れられる前に情報を最低限情報を処理する作業記憶とのバランスを測定することもできる。乗り物の操作者の能力は、あまりに大きな認知負荷を持った場合、すなわち処理する情報が多すぎる場合、損なわれる可能性がある。これは、セーフティクリティカルな事象を検知する操作者の能力を含めることができる。認知過負荷に貢献するものは、最新の乗り物においては設計される場合が多く、情報システム、ナビゲーションシステム、電気通信などを含むことができる。このようなデバイスは、そういったデバイスと対話するために道路から目を離すことによって生じる注意散漫と合わさったとき、命取りになる可能性がある。
【0020】
装置はまた、操作者の眠気を検出するために乗り物内で使用することもできる。従来の眼球検出または接眼技術は、目の垂下及び目のまばたきを検出して眠気を検出する。このような技術による検出は、眠気が実際に検出されたときには、運転手は完全な睡眠状態にかなり近づいているため、行われるのが遅すぎることが多い。本開示に記載される装置は、従来式の接眼技術よりかなり速やかに眠気を検出する可能性を有する。
【0021】
さらに、装置を使用してデバイスを制御することもできる。例えば、検出された脳の活動に基づいて、装置を使用して、運転手の感情の状態に基づいて乗り物内で再生される音楽を変更する、運転手のストレスのレベルをモニタリングすることによって空気の温度を変更する、または運転手の認知負荷があまりに大きくなった場合、デジタルディスプレイをさらに簡素化することもできる。
【0022】
一実施形態において、装置は、例えばシートのヘッドレストなど、モニターされるべき人と近接するようになるいかなるものにも組み込まれてよい。装置は、例えば10インチ離れるなど、装置から一定の距離離れている個人の非接触式のモニタリングを行うことが可能である。さらに、ターバン、帽子、頭髪などの物質は、信号検出に対してほとんど影響しない。ヘッドレストに組み込まれた場合、ヘッドレストの関連する部分は、最小限の電磁障害(EMI)しか生じない物質から選択することができる。
【0023】
さらに他の実施形態では、装置は、任意の活動を示す脳波活動を測定するのに使用することができる。ひとたび活動が感知されると、装置は、別の行動のきっかけを与えることができる。例えば、装置をヘッドレスト内に配置することで、例えば製造「ピッチ」において、新しい製品を見ている視聴者に対して反応をモニターすることができる。装置はまた、ビデオ賭博を伴うカジノでヘッドレスト内に配置され得ることで、例えば装置は、無関心を検知することができ、ゲームが自分で修正し、賭博者がより長くイスに座り続けることを可能にする。加えて、装置はマットレスの中に配置される場合もあり、その場合、それは、眠っている人の睡眠をモニターすることができ(受動的モニタリング)、眠っている人が不眠を感じている場合、それは、彼らが、例えばタブレット、PCまたは電話などにあるアプリケーションを制御することを可能にし、これらは睡眠時の脳のパターンを誘発させるのを助けるため、彼らが眠りに落ちる、または眠った状態であることを可能にすることもできる。さらに、装置は、家具(ならびに一部のマットレス)の中に配置される場合もあり、その場合、それが、ユーザが眠りに落ちたと感知した場合、リクライナーが完全に倒れることを可能にすることができる。スマートフォンまたはオフィス環境では、装置は、スマートデバイスと対話することができる。例えば装置が人が眠りに落ちたことを検知した場合、このとき装置は、他のデバイスに信号で知らせて、照明を消す、ドアをロックする、テレビを消す、及びサーモスタットを気に入った睡眠温度に設定することができる。
【0024】
注意訓練及びコンピュータ化された訓練装置において利用されるEEGベースのバイオフィードバックの特有の例は、「Electroencephalograph Based Biofeedback System and Method」という題名のFreerの米国特許第6,097,981号、「Electroencephalograph Based Biofeedback System For Improving Learning Skills」という題名のFreerの米国特許第6,402,520号及び6,626,676号、ならびに「Systems and Methods for Behavioral Modification and Behavioral Task Training Integrated with Biofeedback and Cognitive Skills Training」という題名のFreerの米国特許出願第2004/0230549号に開示されている。人の能力の訓練において利用されるEEGベースのバイオフィードバックの特有の例は、2008年4月30日に提出された「Training Method and Apparatus Employing Brainwave Monitoring」という題名のFreerの米国特許出願第12/112,528号に開示される。上記の全ては、これによりその全体が参照により本出願に組み込まれている。
【0025】
一般に、シナプス間隙における神経伝達物質のイオン化によって生じる電場は、検出するには小さすぎる場合があるため、個々のニューロンは、EEGベースのバイオフィードバックによって測定されない。代わりに、EEG信号は、数十万から百万のニューロン発火作用の結果である。錐体神経は、それらが大脳皮質の表面に接近し、空間的に整列される際、EEG信号を生成すると思われている。よって、EEGは、体積伝導とも呼ばれる電場を生成する少なくとも数十万から百万のニューロンの総和である。大脳皮質の表面に近い細胞によって生じた微小なEEG信号は、センサがそれを検出する真皮の表面に達するまでに、多数の媒介物(脳せき髄液、髄膜、頭蓋骨及び真皮)を通って進まなければならない。よって、それは、汚染される、汚される、またはそうでなければ最適な環境の下ですら歪んでしまう場合がある。さらに言えば、EEGは、脳の上側の層(大脳皮質)より下で起きる神経活動を測定するのに不十分である。さらに活動中の脳の領域を観察することができる機能磁気共鳴映像、すなわち機能MRI(fMRI)と異なり、EEGは、どのエリアが特定の反応によって活性化されるかをさらに提示するために、長引く分析を要する。
【0026】
EEGはこの場合、信号を生成しているニューロンを覆う広いエリアを包囲するエネルギーの場である。従来より、このような微細な信号は、人によって装着されるスカルキャップの中など、場を直接覆うように、またはそこから数ミリメートルのところにセンサプレートを配置することによってモニターすることができる。この方法は基本的に、場全体を見るための能力は諦める代わりに、特有の局所化されたデータポイントをモニターしようとする入念な試みに集中している。臨床利用の場合、特定の局所的な場所が、異常性、機能障害または異常調節を診断し、処置するのに必要とされる脳に関する異なる情報を提供すると考えられるため、これは非常に機能的である。典型的には、臨床EEGでは、電子機器は、各段に低利得を有する複数の段で構成されている。複数の段、例えば6から10の増幅器段の各々は、増幅と、二極フィルタの両方を行うことで、信号雑音比を改善する。一例は、12-極フィルタに等しい6段での2-極フィルタである。
【0027】
そのような従来式のEEGの取得、すなわち増幅器-フィルタの積み重ねは、局所的な電場のエネルギーをモニタリングする際、臨床利用のための最適な解決策を提供する。しかしながら、本開示に記載される技術とは対照的に、従来式のEEG取得は、信号が失われる前に、頭部より下の身体から、さらには頭部から数ミリメートルを超える場所からEEG信号を取得することはない。これは、増幅器-フィルタの固有の信号ロス及び増大した信号雑音比、従来の臨床EEGデバイスに見られる増幅器-フィルタ積み重ね法に起因している。本質において、増幅器-フィルタ、すなわち増幅器-フィルタ積み重ね法を利用すると、頭部から離れてEEGを測定しようとする場合、単にノイズを増幅するだけになる。よって、従来の臨床EEGデバイスは、頭部より下の身体からのEEG信号を識別することもできないし、そのセンサプレートが1ミリメートルを超えた場所、またはかように離れた場所にある場合、頭部からのEEGを感知することもできない。これは、頭部より下の身体から、または頭部からかなりの距離離れた場所からEEGを測定することが不可能であると考えられる理由でもある。
【0028】
図1は、本開示の一実施形態による非接触式指向性EEGデバイス22の一例のブロック図を示している。図示されるように、デバイス22は、3つの増幅器50、51及び53に結合されたハイ-パスフィルタ60を含むことができる。さらにアンチエイリアシングフィルタ62を、2つの最初の増幅器50、51と、最後の増幅器53との間に配置することができる。最後の増幅器53の出力は、アナログ-デジタル変換器(ADC)64によって受信され、その後、制御装置/無線送信機70に送信される。上記の構成要素は、非接触式指向性EEGデバイス22の増幅器と無線送信機のユニット24の中に一括してグループ化されている。
【0029】
デバイス22はさらに、人からEEGデータを収集し、ハイパスフィルタ(HPF)60に結合された非接触式センサ26及び28を含むことができる。さらに、接地電極または基準電極30が、センサアレイの一部として含まれる場合もある。非接触式センサ26及び28は、ハイパスフィルタ60にAC結合されることで、DC電流が人である被検体に流れ込むいかなる可能性も低下させる、または阻止することができ、増幅器内のDC入力オフセットがその後の段を過度に働かせるのを阻止することができる。例えば、HPF60は、電気化学反応により、電極と、皮膚との間の空間に生じ得るDCオフセットを阻止することができる。このシステムにおけるカットオフ周波数は、1Hzまでに設定することができ、よって1Hzを超えるいかなる信号もフィルタを通過し、1Hz未満のいかなる信号も60dB/デケードだけ減衰される。係る方法は、60Hzを含めた全てのノイズを大きく増幅することができる。
【0030】
作動中、及びハイパスフィルタ60を通過した後、人からの減衰されたEEG生信号を含む第1のフィルタ後の信号は、最初の単一段増幅器50によって大きく増幅されて第1の増幅後の信号を生成することができる。第1の増幅段50は例えば、従来のシステムにおいてなされるようにフィルタではなく、第2の増幅段に結合させることができる、73の利得を有する差動計装用増幅器であり得る。
【0031】
第2の増幅段51は、第1の増幅後の信号を受け取ることができ、例えば第1の段50にAC結合され得る、101の利得を有するシングルエンド反転増幅器であってよい。作動中、第2の段51は、8次楕円ローパスフィルタ、例えばアンチエイリアシングフィルタ62などに送信することができる第2の増幅後の信号を出力することができ、かつモノリシックスイッチキャパシタ集積回路を有するように実装することができる。フィルタの-3dbまたはコーナー周波数は、40Hzに設定することができ、これはたまたまベータ周波数帯域に関して上限である。この周波数設定は、75Hzを下回り(サンプルレート=150サンプル/秒)、それが、アンチエイリアシングフィルタ62として機能することを可能にし、これによりADCサンプリングの前に、50/60HzACラインノイズである最大干渉信号及び75Hzのナイキスト周波数を超える成分を除去する。
【0032】
作動中、アンチエイリアシングフィルタ62は、対象の周波数帯域を超え、かつ人の脳内の電気的活動に関係のない信号の周波数成分を減衰させる、または最小限にするように構成することができる。脳の電気的活動に関係がなく、かつ脳の電気的活動に関連しない潜在的な周波数成分は、50Hzまたは60HzのAC電力ラインから結合した信号である。一例として、20から40Hzの範囲内のカットオフ周波数を有するローパスフィルタが好適であり得る。より詳細な例では、ローパスフィルタ62は、22Hzのカットオフ周波数を有する5次スイッチキャパシタローパスフィルタである。図1の実施形態では、対象の脳波信号成分は、50Hzまたは60Hzを十分に下回るため、22Hzのローパスフィルタが扱い易く、効率的である。対象の脳波信号成分の周波数範囲が、50Hzまたは60Hzを含む用途では、ローパスフィルタの代わりにノッチフィルタが利用される場合もある。
【0033】
アンチエイリアシングフィルタ62は、例えばアンチエイリアシングフィルタ62にAC結合された、2の利得を有するシングルエンド反転増幅器であり得る第3の増幅段53へとその後進むことができる第2のフィルタ後の信号を出力する。第3の増幅段53は、ADC64に分析信号を送信することができる。一例の実施形態では、使用されるADC64は12ビットであってよく、12ビットの2進数は、0から2の間から12番目の出力マイナス1までの範囲を有し、故に0から4095までの出力を可能にする。ADC64(12ビット)は、特定の範囲、すなわち670マイクロVの精度を有する2.7ボルトの範囲を有することができる。システムに関する総利得は、14,746からフィルタ段の減衰を引いたものであり得る。これは、センサアレイの表面において100ナノボルト(nV)に至るまでのEEG信号の検出を実現する(「ナノ」は、10-9倍であり、そのため1ナノボルト=10-9ボルトである)。
【0034】
これは、ミリボルト(mV、電位差は、1ボルトの1000分の1に等しい、またはほんの1ボルトの10-3ボルトにすぎない単位)しか検出することができない従来のEEG取得技術とは大きな違いである。頭部に直接装着された、または頭部に近接して装着されたセンサの利用は、1Hzにつきボルトの2乗など(V2/Hz)の単位で報告されるパワースペクトル帯域電力を検出するために、はるかに少ない増幅しか必要としないため、これは、利便性の問題でもあり得る。センサがそれらが検出するエネルギーに近接しているため、ミリボルトが使用される。これは、脳の特有のエリアにおいて局所化されたエネルギーを観察するための臨床用途において必須である。
【0035】
ADC64の出力は、分析信号のデジタル版であってよく、マイクロコントローラ70及びBluetooth(登録商標)デバイス32などの無線送信機に結合させることができる。作動中、マイクロコントローラ70は、分析信号を分析して、特定の脳波活動に相当する信号内のパターンを認識することができる。例えばマイクロコントローラ70は、モニターされている人の感情の状態、認知負荷及び警戒状態などの個人の精神状態に相当するパターンを分析信号において識別することができる。加えて、マイクロコントローラ70は、例えば人が肯定または否定の動作において自分の頭部を動かすときを含め、非接触式センサに近接する人の活動に相当するパターンを分析信号において識別することもできる。また、マイクロコントローラ70は、人が自分の頭部または身体を非接触式センサの近傍に進入させる、またはそこから出るように移動させる場合を含め、非接触式センサに近接する人の活動に相当するパターンを分析信号において識別することもできるため、非接触式脳波記録(EEG)デバイスは、非接触式センサによってモニターされる空間が占拠されているか、占拠されていないかを検出する。
【0036】
さらに、マイクロコントローラ70は、必要に応じて、増幅器と無線送信機のユニット24の構成要素を制御して、検出されたEEGデータを処理し、EEGデータを他のデバイスに無線送信するように構成される場合もある。加えて、マイクロコントローラ70の制御の下で、検出されたEEGデータは、さらなる処理作業及び/または他のデバイスの制御のために他のデバイスに伝達される場合もある。
【0037】
本開示に記載される非接触式指向性EEGデバイス22は、このシステムが、個人から10インチ以上離れた場所から頭部または身体と接触せずに、頭部より下の身体からEEG信号を取得することを可能にする。本開示に記載される非接触式指向性EEGデバイス22は、EEG信号を取得するために、頭部または頭部より下の身体に近接したり、それらに接触したりする必要がない。大きく異なる技術は、リアルタイムで脳から生じる全ての利用可能な場のエネルギーのモニタリングを必要とする。従来のシステムと比べると、これは、石油の掘削作業が金の採鉱作業に対するのと同じくらい異なるとみなすことができる。換言すると、脳から局所化された情報を得るためにセンサを装着する代わりに、提案されるシステムは、脳の情報の全ての利用可能な電場データを継続的に引き入れ、このデータを利用可能なEEGデータにパースするための広範囲な処理をすることができる。
【0038】
加えて、本開示に記載される非接触式指向性EEGデバイス22は、非常に少量の検出されたナノボルトエネルギーを利用可能な情報に変換することも可能である。例えば、獲得された値は、2桁の基数64の数値から基数10までを利用して変換され、2048を引くことで、情報を-2048から+2047までの符号付きの波形に再構成することができる。これは、およそ0に中心があるAC波形である。使用可能な情報はその後、デジタルフィルタリングアルゴリズム、RMS(二乗平均)アルゴリズムならびに他のアルゴリズム、例えば脳波情報を、注意力、不安レベル、眠気または脳の状態の別の基準に書き換えるように設計されたものなどに通すことができる。こうして、従来のシステムとは対照的に、値は、元々の電圧測定値からいくつかの複雑な変換及びリスケール演算を受けており、ボルトの単位に対する簡素な線形相関はもはや存在しない。
【0039】
非接触式指向性EEGデバイス22の別の特徴を成す機構は、体積伝導から発生するEEG電場エネルギーを取得するための非接触式センサアレイの利用である。従来のシステムは、EEG信号の局所化された取得のために、単一のセンサを利用する。このようなセンサは、信号を取得するために頭部に非常に近づける、または頭部に直接装着する必要がある。本開示に記載されるように、非接触アレイは、単一チャネルの電場検出システムとして利用することができる。この方法は、センサアレイが、10インチまで、またはそれ以上の所から脳の信号を検出することができるだけでなく、頭部の位置も検出することができるため、他のシステムに対して全く異なる利点を提供することができる。例えば、ヘッドレストに設置された場合、アレイは、席乗員が、左か、右か、下か、上を見ているかを検出することができる。
【0040】
加えて、アレイの利用はまた、席乗員の頭部の動きを検出することも可能にすることができる。非制限的な例として、人の頭部が、人の頭部が「いいえ」のために世界共通のサインで左から右に振られた場合、この動きは、頭部がアレイを横切って左から右に、または右から左に移動する際、特有の波のパターンを生み出す。加えて、席乗員が、「はい」を示すために自分の頭部を縦に軽く振った場合、その動作は、その独自の特有のパターンを生み出す。そのため、乗り物内では、コマンド「はい」及び「いいえ」を、運転手の手が決してハンドルから離れたり、目が道路から離れたりすることなく認識することが可能である。
【0041】
本開示に記載される非接触式指向性EEGデバイス22の別の利用は、空港またはホテルにおけるスクリーニング装置としてアレイを利用することを含むことができる。例えば、アレイを通路の支柱の中に配置することができる場合、装置を使用して、そこを通過する個人の不安、ストレス及び/または気質を計測することができる。同様に、ヘッドレストまたは背もたれの中で使用される場合、アレイは、席乗員の気質またはパイロットの警戒を客室乗務員に警告することができる。さらに、アレイを使用して、シートが占拠されているか、されていないかを簡単に突き止めることもでき、これは、自動運転中の状況において有益であり得る。
【0042】
図1において、非接触式センサ26及び28は、任意のタイプの非接触電極であってよく、導電ゲルまたはペーストを必要とせず、身体と物理的に接触しない「ドライ」電極、ならびに非接触式または無接点の生体電位センサなどであってよい。能動的センサとして、センサ26及び28は、種々のアレイの中に構成され得る、または異なるサイズ及び形状の電極を有する場合もある。例えば複数のセンサを、設計の考慮事項、ならびにその意図される用途に応じて、例えば同心リング、または平行バーのパターンなど多様なパターン及びサイズで設計することができる。
【0043】
作動中、センサアレイは、EEGデータを収集し、受信した信号の指向性も提供する。換言すると、非接触式センサアレイ26及び28は、頭部または身体のいずれかの様々な部分から信号を受信することを目的とすることができる。これは、それが単一のアレイから多量のEEGデータを収集することができるという点において技術の独自の利用を確立する。チャネル容量を追加することによるより多くのセンサアレイの追加は、収集される情報の量を増大させることができる。これは、干渉法を利用してより高度の解像度を提供するために単一の望遠鏡として協働する宇宙の広さを調べる電波望遠鏡のアレイと似ている。現行のシステムにおけるこの技術の利点は、それが、面倒で、侵襲式で、かつ消費者が使用するのに不適切なスカルキャップを使用することなく、多数の臨床的EEGスカルキャップにおいてEEGデータを生成することができることである。加えて、例えば5から6の複数の非接触式の隠れたアレイを使用することは、しばしば臨床的スカルキャップにおいて30から60のプラスになる多くのセンサの必要性を最小限にする。2番目に、そのようなアレイの構成は、信号の厳密さを高め、データ量を増大させるだけでなく、各アレイ内で検出中の信号強度は頭部の位置に伴って変化するため、それは人の頭部が見ている方向を突き止めるのに利用することもできる。移動中の乗り物では、例えば、この情報は、運転手がどこに注意を払っているかに関して絶対に必要である。サイドウィンドウから道路前方から離れた場所を見ている、またはディスプレイコンソールの設計された娯楽を見ていることは、悲惨な結果を生み出す可能性がある。
【0044】
非接触式指向性EEGデバイス22は、人の頭部または身体の一部の近くに配置するように構成することができる。その種々の特有の実施形態が、図4図12を参照して以下で本明細書に詳細に記載される。よって、使用中、非接触センサ26及び28は、少なくとも人の身体のいずれかの場所の一部に近接して配置される。非接触センサ26及び28は、脳の電気的活動に関連する周波数成分を含む生信号(「脳波」信号)を創り出す。これは基本的に、信号収集の力ずくの方法であるが、その理由は、最初の信号は、a)発生源(脳)からかなり離れている、場合によっては頭部から特定の距離の場所のところ、またはことによると身体から、例えば肩または腰から収集される場合もあり、頭部ベースの臨床ユニットからの信号より、かなり小さい、b)6から10インチの距離のところから、例えば軽量の衣服または頭髪などの物質を通して取得される、c)身体の皮膚から6から10インチの距離のところから取得される場合があるためである。
【0045】
信号は距離の2乗で減衰するため、頭部から離れた身体における信号はナノボルトになる場合がある。これらの例では、ハイパスフィルタ60内に収集された微小信号は、その後、73の平均利得を有する単一段増幅器50において大きく増幅されるべきである。差動計装用増幅器50は、101の平均利得を有する演算増幅器51、すなわち「op-amp」にAC結合される。モノリシックスイッチキャパシタデバイスを備えて実装された8次ローパスフィルタであるアンチエイリアシングフィルタ62を、その後適用させることができる。この機能のための-3db周波数は40Hzであり、これもまた、たまたまベータ周波数帯域に関する上限である。アンチエイリアシングフィルタは、ADCサンプリングの前に75Hzのナイキスト周波数を超える成分を除去することができる。アンチエイリアシングフィルタ62はその後、2の平均利得を有する最終増幅器53に結合させることができる。この独自の組み合わせは、100ナノボルトに至るまでの非常に強力なEEG検出器を生み出し、これにより頭部から6インチを超える距離から、または接触せずに頭部から離れた身体を通して、これまでは検出できなかったデータを検出する能力を提供する。
【0046】
図1の増幅器と無線送信機のユニット24内の種々の要素は、デジタル技術とアナログ技術の組み合わせを利用して実装されてよい。さらに、増幅器と無線送信機のユニット24は、様々な機能を実行するためにソフトウェアを実行するマイクロコントローラ70を備えた「インテリジェントな」再プログラム可能なデバイスとして実装されてよい。マイクロコントローラ70は、無線の二方向データ通信が可能であり、例えば「ファームウェア」を更新することによって増幅器と無線送信機のユニットの機能の修正及び調節を促進する。
【0047】
単一のデバイスとして示される限り、デバイスの機能は、例えば図1に示される増幅器と無線送信機のユニット24などの単一のデバイスの利用を通して様々な方法で達成することができる、または代替として複数のデバイスにわたって分散された様々な方法で達成される場合もあることを理解されたい。例えば脳波信号は、第1のデバイスによって収集され、処理作業のために第2のデバイスに送信することができる。
【0048】
図2は、脳の電気的活動に関連する周波数成分を含む分析信号を生成する汎用装置100の一例の実施形態を示す。図2の装置100は、活性電極などの2つの代表的な非接触式センサ102及び104を含むことができ、これらは、キャパシタ106及び108を通して増幅器114のハイインピーダンス入力110及び112に結合させることができる。非接触式センサ102及び104は、生の脳波信号を検出するために人の身体の一部に近接して位置決めすることができる。増幅器114は、フィルタ120の入力118に接続された出力116を有する。図2における信号処理作業は、アナログ、デジタルまたはそれらの任意の組合わせであってよい。
【0049】
フィルタ120は、対象の周波数成分に関係がなく、脳の電気的活動に関連しない周波数成分を減衰させる。さらなる処理作業及び分析のために、脳波信号に相当する分析信号と呼ばれるものがフィルタ120の出力122において生成されてよく、この分析信号は、脳の電気的活動に関連する周波数成分を含んでいる。図1のフィルタ62を参照して上記に記載したように、図2のフィルタ120は、例としてローパスフィルタまたはノッチフィルタであってよい。フィルタ120の選択及び設計は、脳波の電気的活動に関連する対象の周波数成分、ならびに予想される特定の関係のない周波数成分に左右される。フィルタ120は、デジタル信号処理(DSP)技術を利用して実装されてよく、適応性があり得る。
【0050】
ローパスフィルタ120の出力122における「脳波」信号は、様々な目的のために利用されてよい。上記に記載したように、出力122における信号は、脳の電気的活動に関連する周波数成分を含む分析信号であり、関係のない周波数成分は減衰されている。非接触式センサ102及び104は、生信号を創り出すために、少なくとも頭部より下の人の身体の一部に近接して位置決めされる。
【0051】
一般に脳の電気的活動に関連する周波数成分が対象となる場合、とりわけデルタ波(3Hzまで)を含む周波数成分が対象である場合、人の心拍に相当する信号成分(おおよそ1Hzから2Hz)は、特に重要な関係しない周波数成分である。人の心臓の電気的活動に相当する関係しない周波数成分は、センサが頭部より下の身体の一部に接続される際、特に重要性が高い。本明細書に記載される装置は、人の心臓の電気的活動から生じる生信号における信号成分が能動的に減衰されるシステムにおいて具現化されてよい。理想的なケースでは、人の心臓の電気的活動から生じる信号成分は、能動的な消去によって完全に消去される。
【0052】
図3は、そのような能動的な減衰を利用して脳の電気的活動に関連する周波数成分を含む分析信号を生成する汎用装置130の図である。図3の装置130もやはり、キャパシタ136及び138を通して増幅器144のハイインピーダンス入力140及び142に接続された2つの代表的な非接触式センサ132及び134を利用する。少なくとも非接触式センサ132及び134は、生信号を創り出すために、頭部より下の人の身体の一部に近接して位置決めされる。
【0053】
図3の増幅器144は、2つの信号分岐に接続された出力146を有する。一方の分岐は、加算点150の(+)入力148に接続され、他方は、人の心臓の電気的から生じる信号成分を抜き取る心拍数信号抽出器154の入力152に接続されている。心拍数信号抽出器154の出力156は、加算点150の(-)入力158に接続される。関係のない周波数成分が減衰された状態で、脳の電気的活動に関連する周波数成分を含む分析信号が加算点150の出力160において生成される。
【0054】
こうして、加算点150において、人の心臓の電気的活動から生じる信号成分は能動的に減衰される。ここでもまた、理想的なケースでは、人の心臓の電気的活動から生じる信号成分は、能動的な消去によって完全に消去される。
【0055】
心拍数信号抽出器154は、デジタル信号処理(DSP)技術を利用して、人の心臓の電気的活動から生じる信号成分を認識し、隔離し、追跡することができる。心拍モニターは、人の心臓の鼓動、すなわち心拍数を認識及び追跡し、典型的にはデジタル表示を提示することができる。こうして認識され、隔離され追跡された信号は、心拍数信号抽出器154の出力として提供される。適切な規模の調整によって、人の心臓の電気的活動から生じる周波数または信号成分を減衰させる、または消去することができる。したがって、人の心臓の電気的活動を含まない脳波信号を加算点150の出力160において生成することができる。
【0056】
ここでもまた、加算点150の出力160における脳波信号は、様々な目的のために利用されてよい。出力160における信号は、分析信号であり、これは脳の電気的活動に関連する周波数成分を含み、関係のない周波数成分は減衰されている。ここでもまた、重要なことは、少なくともセンサ132及び134は、生信号を創り出すために、頭部より下の人の身体の一部に近接して位置決めされることである。
【0057】
図3の心拍数信号抽出器154及び加算点の1つの代替として、図2の空間的な配列を利用して同様の機能性を提供する場合もある。より詳細には、図2のフィルタ120は、人の心臓の電気的活動から生じる信号、ならびに脳の電気的活動に関係なく、それに関連しない他の信号(例えば結合された50Hzまたは60HzAC電力線信号など)を減衰させるようにプログラムされた適応性のあるDSPフィルタであってよい。
【0058】
人の心臓の電気的活動から生じる信号成分は、本開示の実施形態において少なくとも2つの他の目的のために使用することができる。1つのそのような他の目的は、身体指向性デバイス、及び詳細には非接触式センサ26及び28、102及び104または132及び134が実際には、人の身体に向けられるが、それと接触しないこと、またはそうでなければ人の身体に作動可能に近接していること、簡便にするために総称して「存在する」と呼ばれる状態を保証することである。そのような存在の保証を利用して、脳波の周波数帯域内で検知された信号成分が実際に脳波を表しており、環境上の信号源から結合された浮遊信号の結果ではないことを保証し、換言すると、EEG信号が収集されていることを実証することができる。そのような存在の保証を利用することで、人の心臓の電気的活動から生じる信号成分の欠如が、人が存在しないことを示す場合、ローパワーの「スタンドバイ」モードに入ることによって電池の寿命を節約することもできる。
【0059】
別のそのような他の目的は、より総合的な分析及び人の認知及び生理学的状態の指示のために、脳の電気的活動から生じる指示(すなわちEEG)と、人の心臓の電気的活動から生じる指示(すなわちEKG)とを組み合わせることである。本開示の実施形態はこうして、より総合的な生理学的状態のモニタリングのために、二重の技術的アプローチ(EEGと、EKG)のための基盤を提供する。
【0060】
図4図12は、本開示の種々の実施形態による、非接触式指向性EEGデバイスを人と共に使用する例を例示している。
【0061】
図4から図5の非接触式指向性EEGデバイス170または少なくとも非接触式センサ198及び199は、人174の頭部の一部に指向的に照準を合わせるように構成されている。非接触式指向性EEGデバイス170は、少なくとも非接触式センサ198及び199、基準電極196、ならびに増幅器と無線送信機のユニット172を含むことができ、より詳細には、頭部176にデバイスを指向的に照準を合わせるように構成された筐体170の形態をとる(図4)。図5に示されるように、非接触式センサ198及び199は、人174が座っているシートのヘッドレスト180の一部に組み込まれ(図5)、人174の脳波活動を検出することができる。
【0062】
図6図7において、非接触式指向性EEGデバイス172または少なくとも非接触式センサ198及び199は、人174の背中181の一部に指向的に照準を合わせるように構成することができる。ここでもまた、非接触式指向性EEGデバイス170は、少なくとも非接触式センサ198及び199、ならびに増幅器と無線送信機のユニット172を含むことができ、より詳細には、人174の背中181(図6)または首182の後部(図7)にデバイスを指向的に照準を合わせるように構成された筐体170の形態をとる。図6に示されるように、非接触式センサ198及び199は、人174が座っているシートに組み込まれ、人174の脳波活動を検出することができる。
【0063】
これもまた図1における接地電極30に相当する接地電極196を含み得る、図1を参照して上記に記載したセンサ26及び28に対応する一対の非接触式センサ198及び199が筐体170に結合される、及び/または筐体170によって支持される。センサ198及び199は、増幅器と無線送信機のユニット172に電気的に接続され、図1を参照して上記に記載したように作動することができる。センサ198及び199はこうして、使用中、少なくとも人174の頭部の一部(図5)または身体182の背部(図6)に近接して配置される。
【0064】
図8及び図9において、非接触式指向性EEGデバイスは、人174の頭部176の一部に隣接して配置されるように構成することができる。非接触式指向性EEGデバイス170は、増幅器と無線送信機のユニット172のための構造的支持体を提供し、非接触式センサ198及び199は、人174の頭部176の方向に向くように構成された自動車用サンバイザー184に組み込むことができる。
【0065】
図9では、非接触式指向性EEGデバイスまたは少なくとも非接触式センサ198及び199は、人174の頭部176に近接して配置されるように構成することができる。増幅器と無線送信機のユニット172、ならびに非接触式センサ198及び199を含む非接触式指向性EEGデバイス170は、人174の頭部176に向かう方向に向くように構成された、例えば自動車の内部の天井185に組み込むことができる。
【0066】
図1における接地電極30に相当する接地電極196を含み得る、図1を参照して上記に記載した非接触センサ26及び28に対応する一対の能動的非接触式センサ198及び199も、図8図9のサンバイザー及び天井の配置によって支持される。非接触センサ198及び199は、増幅器と無線送信機のユニット172に電気的に接続され、図1を参照して上記に記載したように作動する。非接触センサ198及び199はこうして、使用中、少なくとも頭部176に近い人174の身体の一部に近接して配置され、人174の脳波活動を検出する。
【0067】
図10は、例えば自動車186のシートを介する非接触式指向性EEGデバイスと人との接触を利用する一例を示している。この実施形態では、EEGデバイス170のセンサは、人174の臀筋177から信号を検出するように向けられている。
【0068】
図11及び図12は、本開示の種々の実施形態による、人と共に非接触式指向性EEGデバイスを利用する例を示している。
【0069】
図11では、非接触式指向性EEGデバイス170または少なくとも非接触式センサ198及び199は、頭部より下の人174の身体の一部に近接して配置されるように構成されている。非接触式指向性EEGデバイス170は、増幅器と無線送信機のユニット172のための構造的支持体を提供し、より詳細には、人174の身体の近くに配置するために支柱187の形態をとる(図11)。
【0070】
図12の例示の実施形態では、増幅器と無線送信機のユニット172は、無線の手持ち式非接触式指向性EEGデバイスの一体式の部品または検出可能要素のいずれかであってよい。手持ち式非接触式指向性EEGデバイス188は内側面に、図1を参照して上記に記載した非接触式センサ26及び28に相当する一対の非接触式センサ198及び199がある。図12では、センサを見ることができないが、それらは、増幅器と無線送信機のユニット172の全体の位置において手持ち式ユニット188の内側面に位置決めされてよい。非接触式センサ198及び199を含むセンサは、増幅器と無線送信機のユニット172に電気的に接続され、図1を参照して上記に記載したように作動する。作動中、非接触式センサ198及び199は、少なくとも頭部より下の人174の身体の一部に近接して及び/または頭部176に配置される(図12)。
【0071】
加えて、図12に示される実施形態は、データ収集、信号処理作業及び分析機能の全てが、人の身体または頭部のいずれかに近接して配置された単一の自給式ユニットにおいて実施される代替の一実施形態を例示している。図12におけるデバイス188上のディスプレイによって表わされるように、信号処理は、対象の異なる脳波周波数帯域における脳波活動の大きさを決定し、その表示を推進するのに利用されてよい。図12では、ディスプレイは、「シータ」「アルファ」及び「ベータ」周波数帯域における脳波活動の大きさを表わしている。あるいは、人の注意のレベルまたは他の測定値の単一の表示が提供される場合もある。いずれのケースにおいても、特定の事前にプログラムされた閾値を超えた場合、または閾値が達成されない場合、聴覚による信号発信または触覚反応を利用して知らせることで、ユーザに生理学的変化が不可避であることを警告する場合もある。
【0072】
図13Aは、複数の非接触式センサを配置することができる一例の3つのバー配列の構成を図示している。図示されるようにセンサ1310、1320及び1330は、平行なバーとしてヘッドレスト1300の中に位置決めされ、デバイス1340に結合される。よって人がシートに座ったとき、その頭部は自然にヘッドレスト1300に隣接して位置決めされ、これによりセンサ1310、1320及び1330にも隣接して位置決めされることになる。ヘッドレスト1300及びバー配列は、センサ1310、1320及び1330の検出する能力を妨害しない物質によって覆うことができる。当然のことながら、センサ1310、1320及び1330のバー配列構成は、用途に応じて任意の数の他の製品に組み込まれる場合もあることを理解されたい。
【0073】
図13Bは、複数の非接触式センサを配置することができる一例の同心リング配列の構成を図示している。図示されるようにセンサ1310、1320及び1330は、同心リングとしてシートのヘッドレスト1300の中に位置決めされ、デバイス1340に結合される。よって人がシートに座ったとき、その頭部は自然にヘッドレスト1300に隣接して位置決めされ、これによりセンサ1310、1320及び1330にも隣接して位置決めされることになる。上記と同様に、センサ1310、1320及び1330の同心リング配列構成は、用途に応じて被覆され、任意の数の他の製品に組み込まれる場合もあることを理解されたい。
【0074】
センサ1310、1320及び1330の同心リング配列構成は、構成が高度に指向性であり得ることを含め、多くの利点を含んでいる。よって人の頭部または身体の特定の部分に同心リング配列の照準を合わせることが可能であることに加えて、人の頭部の向きまたは動きを検出することもできる。検出された向きまたは動きはその後、この動きを認識し、場合によって他のデバイスを制御するためにさらに処理することができる。加えて、同心リング配列構成は、ヘッドレスト1300などの製品の中にセンサを高密度に配置することも可能にする。ヘッドレスト1300の例では、平方インチ当たりのより多くのセンサ要素は、人から生信号を検出するセンサの能力の増大につながる場合がある。
【0075】
図14Aは、少なくとも人に近接して位置決めされるセンサを有する一例の非接触式指向性EEGデバイスを例示している。この例では、ヘッドレスト1400は、センサ1410の同心リング配列構成と適合される。センサ1410は、センサ1410に近接して、またはそこから離れて位置決めされ得る非接触式指向性EEGデバイスと結合される。人1450が座ったとき、その頭部は、ヘッドレスト1400に隣接して位置決めされ、これによりセンサ1410は、人1450から生の脳波活動信号を検出することができる。
【0076】
上記に記載したように、センサ1410の同心リング配列構成は、センサ1410によって検出される信号が、人の頭部などの対象物が発する信号の向きが変わる際に変化し得る点において、指向性であり得る。したがって、人1450が「はい」の動作において自分の頭部を縦に軽く振るとき(矢印1460)、センサ1410によって検出される信号が変化し得る。頭部のそのような特有の動きは、非接触式指向性EEGデバイス1420が識別することができる特定のサインを有することができる信号の変化を生じさせる場合がある。この例では、非接触式指向性EEGデバイス1420は、信号のサインを肯定的なジェスチャーまたは応答として識別することができる。
【0077】
ひとたび検出されると、非接触式指向性EEGデバイス1420は、行動する、またはそのジェスチャーと一致するその後の行動をとるために、検出された応答を別のデバイスに転送する場合もある。例えば、自動車の環境では、自動制御方式が、運転中に入ってくる電話の呼び出しに応答するかどうかを運転手に尋ねる場合がある。人1450が、肯定的なジェスチャーによって応答した場合、この場合通話は自動的に接続され得る、そうでない場合は、通話が拒否される場合もある。
【0078】
図14Bは、センサ1410によって検出することができる一例の信号1460を示している。この例では、信号1460を処理することで、センサ1410に近接する人1450の特定の行動に相当するサインパターンを識別することができる。図示されるように、上記に記載した肯定的なジェスチャーまたは応答に相当する信号1460の一部は、「はい」の行動1470として識別される。またひとたび識別されると、検出された「はい」の行動1470は記録される、及び/またはさらなる事象を誘導するために使用される
場合もある。
【0079】
上記の図14Aと同様のやり方で、図15Aは、人に近接して位置決めされた一例の非接触式指向性EEGデバイスを例示している。ここでもまた、ヘッドレスト1500は、センサ1510の同心リング配列構成と適合されている。センサ1510は、脳波の活動信号を検出するセンサ1510に近接して、またはそこから離れて位置決めすることができる非接触式指向性EEGデバイスと結合されている。
【0080】
この例では、人1550が「いいえ」の動作において自分の頭部を動かすとき(矢印1560)、センサ1510によって検出される信号は変化し得る。この例では、非接触式指向性EEGデバイス1520は、信号のサインを否定的なジェスチャーまたは応答として識別することができる。
【0081】
図15Bは、センサ1510によって検出することができる一例の信号1560を示している。ここでもまた、信号1560を処理することで、人の特定の行動に相当するサインパターンを識別することができる。図示されるように、否定的なジェスチャーまたは応答に相当する信号1560の一部は、「いいえ」の行動1570として識別される。ひとたび識別されると、検出された「いいえ」の行動1570は記録される、及び/またはさらなる事象を誘導するために使用される場合もある。
【0082】
図16A及び図16Bは、人がデバイスのすぐ近くにいる場合、またはデバイスのすぐ近くにいない場合に非接触式指向性EEGデバイスによって検出される信号をそれぞれ示している。このような検出は、椅子に座っているなど、人が空間内に存在しているかどうかを知るのに有益であり得る。例えば、図16Aでは、検出される信号1610(シータ帯域)は、人がセンサに近傍にいることを示すサインパターンを有しており、図16Bでは、検出される信号1620は、人がセンサの近傍にいないことを示す異なるサインパターンを有する。異なるサインパターンは、大きさ及び/または周波数パターンが異なる場合があり、非接触式指向性EEGデバイスによって識別することができる。ひとたび識別されると、それらは記録される、及び/またはさらなる事象を誘導するために使用される場合がある。
【0083】
本発明の特有の実施形態が本明細書に例示され、記載されてきたが、多くの修正及び変更を当業者が思いつくことが認識される。故に、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神及び範囲内にある全てのそのような修正及び変更を包含することが意図されると理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B