(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】金剥離方法
(51)【国際特許分類】
C22B 11/00 20060101AFI20230516BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C22B11/00 101
C22B7/00 G
(21)【出願番号】P 2021180840
(22)【出願日】2021-11-05
(62)【分割の表示】P 2016182400の分割
【原出願日】2016-09-16
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】510302308
【氏名又は名称】株式会社クラミー技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100100398
【氏名又は名称】柴田 茂夫
(74)【代理人】
【識別番号】100100169
【氏名又は名称】大塩 剛
(72)【発明者】
【氏名】倉本 俊司
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-287230(JP,A)
【文献】特開昭63-246828(JP,A)
【文献】特開2014-203731(JP,A)
【文献】特開2012-188681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 11/00
C22B 7/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離液として、界面活性機能を有する物質と、セラミックを溶解する機能を有する物質とを含む水溶液で、
前記界面活性機能を有する物質としてスルホン酸
及びリン酸
を含み、前記セラミックを溶解する機能を有する物質としてフッ化アンモニウム
及びサリチル酸メチルを含む水溶液で、剥離液濃度が20%~30%(水以外の成分4.9%~7.3%)の水溶液に、セラミック上に金を搭載する剥離対象物を浸漬して、前記剥離対象物から前記金を薄膜状態で剥離する;
金剥離方法。
【請求項2】
前記剥離対象物は、前記剥離対象物を入れる容器に回転可能に取り付けられ、かつ島状の複数の穴が開けられたバレルに入れられて前記剥離液に浸漬され、前記剥離液中で回転される;
請求項1に記載の金剥離方法。
【請求項3】
前記金薄膜の厚さは約10μmで、四角形である;
請求項1又は請求項2に記載の金剥離方法。
【請求項4】
剥離液に浸漬する前に、前記金を搭載する剥離対象物を亜臨界水にさらす;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の金剥離方法。
【請求項5】
剥離液として、界面活性機能を有する物質と、セラミックを溶解する機能を有する物質とを含む水溶液で、
前記界面活性機能を有する物質としてスルホン酸
及びリン酸
を含み、前記セラミックを溶解する機能を有する物質としてフッ化アンモニウム
及びサリチル酸メチルを含む水溶液で、剥離液濃度が20%~30%(水以外の成分4.9%~7.3%)の水溶液に、セラミック上に金を搭載する剥離対象物を浸漬して、前記剥離対象物から前記金を薄膜状態で剥離することにより、金薄膜を製造する;
金薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金剥離方法及び金薄膜の製造方法に関する。詳しくは金を薄膜状態で剥離可能な金剥離方法及び金薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貴金属資源が枯渇すると言われている現状においては、都市鉱山といわれる廃棄物、特に電子回路の電気接点に使用されている金を剥離する技術が重要になっている。現在の主流となっている剥離技術は王水で金を溶解し、リサイクル回収する方法である。また、王水に代えてシアン系溶解液又は沃素系溶解液が使用されている(非特許文献1参照)。これらはいずれも金を酸化溶解(エッチング)して、金錯体を形成する。そして、金錯体から金を還元して回収する。そして、酸化・還元を繰り返して純度の高い金を得ている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】加藤勝、「金属エッチング液」、THE CHEMICAL TIMES、2004 No.3(通巻193号)10-15頁、2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エッチング反応、還元反応とも化学反応であり、危険な薬品を使用するため、厳重な管理が必要となり、また、設備も高額になるという問題があった。また、薄膜状態で剥離できると、薄膜として再利用する場合便宜なのであるが、エッチング反応では金を溶解してしまうので、薄膜状態で剥離することはできないという問題があった。
【0005】
本発明は、金の溶解反応を用いず、安価で安全な金剥離方法及び金薄膜の製造方法を提供することを目的とする。また、薄膜状態で剥離可能な金剥離方法及び金薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る金剥離方法は、例えば
図1及び表1に示すように、
剥離液として、界面活性機能を有する物質と、セラミックを溶解する機能を有する物質とを含む水溶液で、スルホン酸、リン酸、フッ化アンモニウム、サリチル酸メチルを含む水溶液で、剥離液濃度が
20%~30%(水以外の成分
4.9%~7.3%)の水溶液に、セラミック上に、金を搭載する剥離対象物6を浸漬して、剥離対象物6から金を
薄膜状態で剥離する。
【0007】
ここにおいて、界面活性機能を有する物質として、例えば、スルホン酸(スルホン酸型界面活性剤になる)、リン酸(リン酸型界面活性剤になる)、を使用できる。また、例えばセラミックを溶解する機能を有する物質として、フッ化水素酸、フッ化アンモニウムが挙げられる。剥離対象物は例えば都市鉱山の電子回路や電子機器、また、これらを破砕したもの等が含まれる。また、美術品・時計・食器・アクセサリー等の金を含むものが含まれる。また、剥離対象物が金を搭載する態様には、例えば、配線として使用されている態様(金が混入されている場合を含む)、メッキに使用されている態様、美術品・時計・食器・アクセサリー等に使用されている態様、セラミック上に金属膜が形成されている態様等が含まれる。
【0008】
本態様のように構成すると、金の溶解反応を用いず、安価で安全な金剥離方法及び金薄膜の製造方法を提供できる。また、薄膜状態で剥離可能な金剥離方法及び金薄膜の製造方法を提供できる。
【0009】
また、本発明の第2の態様に係る金剥離方法は、第1の態様において、例えば
図2に示すように、剥離対象物6は、剥離対象物6を入れる容器3に回転可能に取り付けられ、かつ島状の複数の穴が開けられたバレル2に入れられて剥離液1に浸漬され、剥離液1中で回転される。
このように構成すると、剥離対象物6がバレル2と共に回転し、剥離液1から外に出るが、重力により落下して再び剥離液1に入る。このように、浸漬により剥離が促進され(S030)、回転により、剥離対象物6が剥離液1中で移動し、又相互に衝突し合って剥離がさらに促進される。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る金剥離方法は、第1又は第2の態様において、例えば
図3に示すように、金薄膜10の厚さは約10μmで、四角形である。
このように、薄膜状態で金剥離が可能である。
【0013】
また、本発明の第4の態様に係る金剥離方法は、第1乃至第3のいずれかの態様において、剥離液に浸漬する前に、金を搭載する剥離対象物を亜臨界水にさらす。
このように構成すると、亜臨界水の作用によりプラスチックと、金属・セラミックス・半導体基板とを分離できるので、分離後は金属とセラミックス・半導体基板とを分離すれば良く、セラミックス・半導体基板からの金剥離が可能になる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る金薄膜の製造方法は、剥離液として、界面活性機能を有する物質と、セラミックを溶解する機能を有する物質とを含む水溶液で、スルホン酸、リン酸、フッ化アンモニウム、サリチル酸メチルを含む水溶液で、剥離液濃度が20%~30%(水以外の成分4.9%~7.3%)の水溶液に、セラミック上に金を搭載する剥離対象物6を浸漬して、剥離対象物6から金を薄膜状態で剥離することにより、金薄膜を製造する。
このように構成すると、金の溶解反応を用いず、安価で安全な金薄膜の製造方法を提供できる。また、薄膜状態で剥離可能な金薄膜の製造方法を提供できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金の溶解反応を用いず、安価で安全な金剥離方法及び金薄膜の製造方法を提供することができる。また、薄膜状態で剥離可能な金剥離方法及び金薄膜の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1における金剥離方法の処理フロー例を示す図である。
【
図2】実施例1における金剥離設備の例を示す図である。
【
図3】実施例1における剥離後の金剥離膜の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各実施例において同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【実施例1】
【0018】
実施例1では、セラミックス上、又は半導体基板上に形成された金膜を剥離する例について説明する。
【0019】
まず、剥離液について説明する。
表1に剥離液の成分を示す。
【表1】
【0020】
剥離液は、例えば、M・S・D・S(労働安全衛生マテリアルセーフティーデーターシート)認定製品(製品名:LUSTER BOWL)で、OMR(オーエムアール)と称されている。米国NASAに勤めていた7名が集まって開発した洗浄液であり、主として米軍用に使用されて来た。剥離液の成分は、スルホン酸、リン酸、フッ化アンモニウム、サリチル酸メチル、及び着色剤を含む水溶液である。界面活性機能を有し、洗剤として使用される。活性剤(界面活性剤)とは親水基と疎水基(親油基)とを併せ持つ。親油基で油汚れを取り込み、親水基で水と共に流れるので、洗浄に使用される。極性物質(分極する物質、その多くが水に溶け易い)と非極性物質を均一に混合させる、表面張力を弱める作用をするので、多くの洗剤に使用されている。
【0021】
スルホン酸は、炭化水素基にスルホ基が結合した有機化合物をいう。強酸性のスルホ基を有し、その陰イオンは水と良く水和する。炭化水素基は親油性であり、スルホ基を導入したスルホン酸型界面活性剤は中性洗剤として使用される。すなわち、スルホン酸は溶液に界面活性剤の機能を持たせ、水との親和性を高め、洗浄能力を高める。
リン酸はリンのオキシ酸の一種で、化学式H3PO4の無機酸である。リン酸エステル塩はリン酸型界面活性剤として用いられ、高級アルコールやそのポリオキシエチレン誘導体にリン酸基を付け加えて作られる。皮膚へのダメージが少ない界面活性剤で、化粧品やシャンプーに用いられる。
【0022】
フッ化アンモニウムは、フッ化水素酸と同様にシリカスケール(二酸化珪素からなる、がんこな水あか汚れ)をきれいに落とせる。なお、フッ化水素酸及びフッ化アンモニウムはセラミックのエッチングにも使用される。金がセラミック基板に積層されている場合には、セラミック基板を溶かすために使用される。フッ化水素酸は劇薬で洗浄剤に使用できないが、フッ化アンモニウムは劇薬ではなく、洗浄剤に入れられる。また、フッ化水素酸又はフッ化アンモニウムにリン酸又はリン酸アンモニウム塩を混在させると、ガラスをエッチングする際に表面を粗面化する作用がある。
【0023】
サリチル酸メチルはフェノール類の一種でサリチル酸とメタノールのエステルである。炭酸水素ナトリウムと反応してサリチル酸メチル陰イオンとなる。すると、この物質は界面活性剤となって、サリチル酸メチルと水の間の反発力を下げる。
着色剤は、液の種類を見分けるために使用される。例えば、酸性を赤、アルカリ性を青に着色する等である。
以上により、剥離液は界面活性機能を有し、また、ガラスなどのセラミックをエッチングする機能を有するといえる。
【0024】
図1に実施例1における金剥離方法の処理フロー例を示す。また、
図2に金剥離の設備を示す。
図2(a)は設備の正面から見た模式的断面図、
図2(b)は設備の側面から見た模式的断面図、
図2(c)はバレル2の斜視図である。バレル2は剥離液1を入れる容器3に回転可能に取り付けられ、モータMで回転駆動される。また、バレル2には例えば剥離した金等の固形物4が落下するように、島状の複数の穴5が開けられている。まず、剥離液1をバレル(容器)2に注入する(S010)。剥離液1はバレル2の約半分の高さまで満たされる。
【0025】
次に、電子回路等の対象物(剥離対象物)6をバレル2内の剥離液1に浸漬する(S020)。バレル2の側面に設けられた穴5Aは剥離対象物6を出し入れするためのものである。モータMを回転すると、電子回路等の剥離対象物6がバレル2と共に回転し、剥離液1から外に出るが、重力により落下して再び剥離液1に入る。このように、浸漬により剥離が促進され(S030)、回転により、剥離対象物6が剥離液1中で移動し、又相互に衝突し合って剥離がさらに促進される。
また、剥離液1は、ポンプPを駆動して、バルブ7を開くと、ポンプPにより容器2から吸引され、フィルタFで金等の固形物4が剥離液1から分離され、バルブ7Aを開にすると回収箱8に送られる。剥離液1は剥離液循環パイプ9から容器2に戻され、再利用される。剥離液1循環によっても剥離が促進される。
【0026】
【表2】
表2に浸漬条件と結果の例を示す。液温は40~45℃で一定である。剥離液1の濃度を高くするにつれて、浸漬速度が増していくことがわかる。濃度5%では2週間で100%剥離したが、濃度20%では10時間で100%剥離した。濃度15%では、4~6時間で剥離し、適当な条件の1つといえる。超音波洗浄を用いると30%程、時間を短縮できる。
【0027】
セラミック基板上に金が積層された対象物については、剥離の詳しいメカニズムは不明であるが、界面活性機能にてセラミック基板と金の表面を洗浄して、清浄にし、フッ化水素酸又はフッ化アンモニウム(又はこれらがリン酸又はリン酸アンモニウム塩と協働して)がセラミックに又はセラミックと金の境界に浸透してセラミックをエッチングし、金膜が薄膜状態で剥離したと解される。セラミックでの浸透に活性剤が幇助している可能性もある。セラミック基板の代わりにシリコン基板上に金が積層された対象物については、通常シリコン基板表面は自然酸化によりSiO2膜が形成されているので、セラミック基板上と同等に考えることがきる。
【0028】
次に、バルブ7及び7Aを閉にし、バレル2から金剥離後の剥離対象物6を取り出し、回収箱8から剥離された金4を取り出す(S040)。次に、剥離された金4について緩やかな水洗浄と乾燥を行う。
なお、水等の高い表面張力を有する液体において、界面活性剤が存在すると泡が安定に存在する。シリコーン等の泡消剤を入れると泡が消えて、剥離液が浸透し易くなる。
【0029】
図3に、実施例1における剥離後の金剥離膜10の例を示す。セラミックス製IC基板(52mm×40mm)に搭載されたAu膜を剥離したものである。つまり、これらの薄膜の寸法は、52mm×40mmである。薄膜状態で剥離されていることが解る。剥離された金薄膜10の厚さは約10μmである。従来は、王水等で溶解するため、通常は粒状で採取される。薄膜状態で剥離されることはこれまでなかったことであり、画期的なことである。金剥離に必要な設備の費用も大幅に節減できる。
【0030】
以上説明したように、本実施例によれば、金の溶解反応を用いず、安価で安全な金剥離方法及び金薄膜の製造方法を提供することができる。また、薄膜状態で剥離可能な金剥離方法及び金薄膜の製造方法を提供することができる。
【実施例2】
【0031】
実施例2では、セラミックス上、又は半導体基板上に金属バインダーを介して形成された金膜を剥離する例について説明する。なお、前述の実施例と重複する部分については説明を省略し、異なる部分を主に説明する
金膜をセラミックス上、又は半導体基板上に形成する場合、金を付着し易くするために、金属バインダーが使用される場合がある。かかる場合、金属バインダーを溶解する溶解剤を使用すると、金膜とセラミックス又は半導体基板の間に剥離液が侵入し易くなるので、金膜の剥離が容易になる。
例えば、金属バインダーが銅の場合には、溶解剤として硝酸を使用できる。金属バインダーがニッケルークロム合金の場合又はパラジウムの場合にも、溶解剤として硝酸を使用できる。
また、本実施例によれば、実施例1と同様に、金の溶解反応を用いず、安価で安全な金剥離方法及び金薄膜の製造方法を提供することができる。また、薄膜状態で剥離可能な金剥離方法及び金薄膜の製造方法を提供することができる。
【実施例3】
【0032】
実施例3では、剥離液に浸漬する前に前処理として、亜臨界水で処理を行ない、金属とプラスチックを分離する例について説明する。
水は大気圧では100℃で沸騰するが、高圧下では300℃を超えても液体の状態である。水と水蒸気の区別がつかなくなる374℃、218気圧を臨界点といい、これより低い温度・圧力の水が亜臨界水である。なお、下限は10℃、10気圧以上を取扱うものとする。亜臨界水は有機物であれば、高分子を分解して低分子にする。したがって、プラスチックは低分子有機物に分解される。半導体回路を有する電子部品には、プラスチックケース・基板やモールド樹脂等が使用されているが、亜臨界水で処理することにより、これらは低分子有機物となり、金属及びセラミックスと分離される。そして、有機物から分離された金属及びセラミックスの塊について、セラミックスから金を剥離すれば良い。
【0033】
分離後の金の剥離は実施例1で説明した剥離方法を使用可能である。
なお、亜臨界水処理で金属とセラミックスが分離された場合は、実施例1の剥離方法は不要である。
亜臨界水の作用によりプラスチックと金属及びセラミックス・半導体基板を分離できるので、その分離後に金属とセラミックス・半導体基板を分離すれば良く、セラミックス・半導体基板からの金剥離が可能になる。
また、本実施例によれば、実施例1と同様に、金の溶解反応を用いず、安価で安全な金剥離方法及び金薄膜の製造方法を提供することができる。また、薄膜状態で剥離可能な金剥離方法及び金薄膜の製造方法を提供することができる。
【0034】
本発明に係る課題を解決するために、本発明の第7の態様に係る金剥離方法は、例えば
図1及び表1に示すように、
剥離液として、界面活性機能を有する物質と、セラミックを溶解する機能を有する物質とを含む水溶液に、金を搭載する剥離対象物6を浸漬して、剥離対象物6から金を剥離する。
【0035】
ここにおいて、界面活性機能を有する物質として、例えば、スルホン酸(スルホン酸型界面活性剤になる)、リン酸(リン酸型界面活性剤になる)、を使用できる。また、例えばセラミックを溶解する機能を有する物質として、フッ素酸、フッ化アンモニウムが挙げられる。剥離対象物は例えば都市鉱山の電子回路や電子機器、また、これらを破砕したもの等が含まれる。また、美術品・時計・食器・アクセサリー等の金を含むものが含まれる。また、剥離対象物が金を搭載する態様には、例えば、電気接点や配線として使用されている態様(金が混入されている場合を含む)、メッキに使用されている態様、美術品・時計・食器・アクセサリー等に使用されている態様、セラミック・メタル上に金属膜が形成されている態様等が含まれる。
【0036】
本態様のように構成すると、金の溶解反応を用いず、安価で安全な金剥離方法及び金薄膜の製造方法を提供できる。また、薄膜状態で剥離可能な金剥離方法及び金薄膜の製造方法を提供できる。
【0037】
また、本発明の第8の態様に係る金剥離方法は、第7の態様において、剥離液として、さらに金と基板を結合する金属バインダーを溶解するための溶解剤を含む。
【0038】
ここにおいて、例えば、金属バインダーが銅の場合には、溶解剤として硝酸を使用できる。金属バインダーがニッケルークロム合金の場合又はパラジウムの場合にも、溶解剤として硝酸を使用できる。
このように構成すると、溶解剤が金属バインダーを溶解するので、金剥離が容易になる。
【0039】
また、本発明の第9の態様に係る金剥離方法は、第7又は第8の態様において、剥離液に浸漬する前に、亜臨界水にさらす。
このように構成すると、亜臨界水の作用によりプラスチックと、金属・セラミックス・半導体基板とを分離できるので、分離後は金属とセラミックス・半導体基板とを分離すれば良く、セラミックス・半導体基板からの金剥離が可能になる。
【0040】
また、本発明の第10の態様に係る金薄膜の製造方法は、剥離液として、界面活性機能を有する物質と、セラミックを溶解する機能を有する物質とを含む水溶液に、金を搭載する剥離対象物6を浸漬して、剥離対象物6から金を剥離することにより、金薄膜を製造する。
このように構成すると、金の溶解反応を用いず、安価で安全な金薄膜の製造方法を提供できる。また、薄膜状態で剥離可能な金薄膜の製造方法を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は金の剥離方法及び金薄膜の製造方法として利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 剥離液
2 バレル
3 容器
4,4A 金等の固形物
5、5A 穴
6 剥離対象物
7,7A バルブ
8 回収箱
9 剥離液循環パイプ
10 金剥離膜
F フィルタ
M モータ
P ポンプ