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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】時計テンプピボット用案内軸受
(51)【国際特許分類】
   G04B 31/00 20060101AFI20230516BHJP
   G04B 17/06 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
G04B31/00 Z
G04B17/06 Z
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018063897
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2018200303
(43)【公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】17163973.5
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セトゥール-バロン, ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ハンジカー, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】テストリ, レオナール
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-61773(JP,A)
【文献】特開2011-80879(JP,A)
【文献】米国特許第2654990(US,A)
【文献】特開2014-41124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 31/00-31/08
G04B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(21)周りに時計共振器軸(2)の部分(2)を案内するための軸受(1a;1b;1a’;1b’;1c’)であって、前記回転軸に対して径方向または実質的に径方向に、前記時計共振器軸へ常に作用を発揮するよう配置される少なくとも1つの押圧要素(13a;13b;131a;132a;13a’;13b’;13c’)を含む軸受であって、
前記押圧要素は、カンチレバーの側面に設けられ、
前記時計共振器軸への前記押圧要素の負荷がもたらす摩擦トルクの強度は、前記軸受の傾きに係らず本質的に同一に維持される、軸受。
【請求項2】
前記軸受は、前記少なくとも1つの押圧要素と協働する、少なくとも1つの戻し要素(12a;12b;12a’;12b’;12c’)を含む、請求項1に記載の軸受。
【請求項3】
前記少なくとも1つの戻し要素(12a;12b;12a’;12b’;12c’)と前記少なくとも1つの押圧要素は、一体として形成される、請求項2に記載の軸受。
【請求項4】
前記軸受は、前記回転軸(21)周りに時計共振器軸を圧迫するための、少なくとも2つの押圧要素(13a;13b;131a;132a;13a’;13b’;13c’)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項5】
前記軸受は、少なくとも2つの戻し要素、少なくとも同数の押圧要素とを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項6】
前記少なくとも1つの押圧要素のそれぞれは、少なくとも1つの平面または凹面または凸面押圧表面(9)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項7】
前記軸受は、少なくとも1つのブレード(14a;14b)を含み、前記ブレードは、
前記時計共振器軸を圧迫するための、少なくとも1つの押圧要素(13a;13b;131a;132a)と、
前記時計共振器軸を圧迫するよう前記少なくとも1つの押圧要素を戻すための戻し要素(12a;12b)を構成する、請求項1から6のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項8】
前記単数または複数のブレードの前記押圧要素以外の部位は、前記押圧要素の近傍で前記押圧要素に平行または実質的に平行に延び、または前記押圧要素の近傍で前記回転軸に対して直交方向または実質的に直交方向に延びる、
請求項7に記載の軸受。
【請求項9】
前記単数または複数のブレードは、少なくとも実質的にストレートに延び、または前記単数または複数のブレードは湾曲して延びる、請求項7または8に記載の軸受。
【請求項10】
前記軸受は、少なくとも1つの径方向または実質的に径方向の突起(14a’;14b’)を含み、各突起は、
前記時計共振器軸を圧迫するための、少なくとも1つの押圧要素(13a’;13b’;13c’)と、
前記時計共振器軸を圧迫するよう前記少なくとも1つの押圧要素を戻すための戻し要素(12a’;12b’;12c’)と、
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項11】
前記軸受は、環状シャーシ(11a;111a;112a;11b;112b;11a’;11b’;11c’)を含み、前記押圧要素は戻し要素経由で前記環状シャーシに機械的に接続され、及び前記環状シャーシは、一体品として製造されまたはいくつかの独立した部品として製造され、及び前記軸受は、前記戻し要素の変形を制限する傾斜(133a)を含み、及び前記押圧要素及び前記戻し要素は、前記回転軸(21)周りに角度的に均一に配置される、
請求項1から10のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の軸受(1)と、受け石ジュエルと、を含む、緩衝器(100)。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの軸受、または請求項12に記載の緩衝器と、前記少なくとも1つの軸受に搭載される時計共振器軸(2)とを含む、時計機構(110)。
【請求項14】
前記時計機構は、てんぷを含む共振器を含み、または前記時計機構は、軸部分またはピボットシャンクが前記軸受で案内される共振器を含み、及び前記少なくとも1つの戻し要素が予圧される、請求項13に記載の時計機構。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか一項に記載の軸受(1)、または請求項12に記載の緩衝器、または請求項13または14に記載の時計機構を含む、時計ムーブメント(120)。
【請求項16】
請求項15に記載の時計ムーブメント、または請求項13または14に記載の時計機構、または請求項12に記載の緩衝器(100)、または請求項1から11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの軸受を含む、時計(130)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計軸の回転を案内するための軸受、とりわけ時計軸部分または共振器ピボット用案内軸受、特に時計テンプピボットシャンク用案内軸受に関する。本発明はまた、当該軸受を含む時計緩衝器または緩衝装置に関する。本発明はまた、当該軸受または当該緩衝器を含む時計機構に関する。本発明はまた、当該軸受または当該緩衝器または当該機構を含む時計ムーブメントに関する。本発明はまた、当該軸受または当該緩衝器または当該機構または当該ムーブメントを含む時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のテンプ案内軸受またはピボット装置は、テンプピボットに摩擦を導入し、その摩擦の大きさは発振器の位置により変化する。一般的に摩擦は、小型時計が水平位置つまり「平坦」位置にあるときに比べて、小型時計が「吊り下げ」位置とも呼ばれる垂直位置にあるときに高くなる。これは、テンプの発振の振幅が、小型時計が水平位置にあるときよりも垂直位置にあるときのほうが低いことを意味する。振幅の差は、とりわけ進みの差として現れることがあり、故に「平坦-吊り下げ」差、すなわち「平坦」位置と「吊り下げ」位置との間の進みの差を最小限にする、時計の正確性に対する重要性に現れる。
【0003】
従来のテンプピボット装置内においては、テンプピボットと案内ジュエルとの間の接触が変更する構成により、様々な位置の摩擦は変化する。小型時計が水平位置にあると、天真は垂直であり、軸ピボットの先端は受け石として知られるジュエルに押し当てられる。一般的に、当該ジュエルは平面的であり、ピボットの先端は丸められている。これは、摩擦面の半径が小さく、結果としての摩擦も低いことを意味する。小型時計が垂直位置にあるとき、天真は水平位置にあり、一般的にはジュエルに形成されたオリーブ穴及びまたは丸められた縁を有する穴の縁と擦れる。摩擦は高くなり、このためテンプの発振の振幅は、小型時計が水平位置にあるときよりも低くなる。
【0004】
特許文献1は、オリーブジュエルと、軸に対して傾斜する受け石傾斜とを組み合わせるピボット装置を開示する。これは、軸の円筒部とオリーブジュエルとの間の摩擦が、小型時計が水平位置にあるときに常に発生することを意味するため、当該位置において摩擦が増加する。
【0005】
特許文献2は、半球状窪みが設けられた受け石に対して擦り合う、縁がわずかに丸められた平坦な先端のピボットを開示する。ここでの目的も、小型時計が水平位置にあるときの、ピボット接触面の摺り合い半径を最大化することで、当該位置における摩擦を増加させることである。
【0006】
同様のパターンで、特許文献3は、小型時計が水平位置にあるときに摩擦を増加する目的で、面取りで終わるピボットを提案する。
【0007】
旋回余裕、とりわけ径方向余裕のため、上記実施形態は、小型時計の位置に応じて、ピボットとジュエルとの間の様々な接触形態を引き起こす。このため、水平及び垂直位置間の進みの差はそのままである。
【0008】
テンプピボットの旋回手段が、戻し手段と一体に製造される、一体の緩衝器も既知である。例えば、特許文献4は、テンプピボットブッシング案内手段が、緩衝器本体を弾性的に戻す手段により具現化された、簡素化された一体緩衝器に関連する。従来の時計稼働において、これら弾性戻し手段は、ピボットブッシングを緩衝器の本体に形成された傾斜に対して堅固に押圧し、このためテンプピボットに何ら影響を及ぼさない。更に当該装置の時間測定性能に関する情報は何ら与えられていない。
【0009】
特許文献5は、テンプピボット軸に対して径方向に向けられた力を付与するよう設計されたばねの影響下でテンプピボットに対して堅固に押圧される特徴を示す軸受に関する。軸受とばねは、時計ムーブメントへの搭載準備ができているピボット構造内に、予め組み立てられる。目的は、ピボットの移動を除去することであり、このため、小型時計の位置の変化の結果としてのピボットと軸受間の接触の構造の変化を除去することである。このため、時計の稼働中、ばねは、テンプピボットの縦の動きの影響下における衝撃を受けた場合の反発だけで作用する従来の緩衝器の対衝撃ばねとは異なり、テンプピボットに作用可能なように予圧される。好ましい実施形態において、ばねは、耐衝撃ばねの形状と類似の形状を有する。代替的に、ばねは、巻きばねの形状を取ってもよい。軸受とばねが一体として製造可能なことも触れられている。当該解決策は、ばねの予圧が旋回構造の軸方向配置によって、そのためとりわけ多数の組立公差によって、左右されるため、最適ではない。特許文献5はまた、例えば外周にてんぷ受けに設けられたねじ立てと協働できるようにねじ山がつけられた軸受本体の作用により、ピボット構造を軸方向に動かすことでばね予圧を調整する方法を開示する。更に、特許文献5は、ばねが作る力は、ピボット装置が衝撃を受けた時に適切に動くことを可能にするように評価される。このため、旋回と耐衝撃機能は、互いに依存する。
【0010】
特許文献6は、ブレード付ピボットの様々な実施形態を開示する。実施形態の一変型形態において、テンプにより支持される2つのブレードは、弾性変形可能なアームの影響下で、溝の底に対して押し当て続けられる。当該構造は、2つの別個の仮想ピボット軸を定義するという、複雑な構造を伴う。実施形態の代替形態において、弾性変形可能なアームにより戻されたブレードは、単一の仮想旋回軸を定義可能だが、別個の平面に配置されることが必要となる。こうした実施形態は、従来のテンプ構造に適切ではない。特に、当該ピボットの発振の振幅は、非常に限定的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】スイス国特許出願公開第239786号明細書
【文献】米国特許第2654990号明細書
【文献】スイス国特許出願公開第704770号明細書
【文献】スイス国特許出願公開第700496号明細書
【文献】スイス国特許出願公開第701995号明細書
【文献】スイス国特許出願公開第709905号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上述の欠点を克服可能であり、従来から既知の時計軸受を改善可能な案内軸受を提供することである。特に、本発明は、様々な時計装置位置における共振器の発振に抵抗するトルク間に存在する相違を最小限にすることができる、簡単な構造の案内軸受を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる案内軸受は、請求項1に定義される。
【0014】
軸受の各種実施形態は、請求項2から11に定義される。
【0015】
本発明にかかる緩衝器は、請求項12に定義される。
【0016】
本発明にかかる機構は、請求項13に定義される。
【0017】
軸受の一実施形態は、請求項14に定義される。
【0018】
本発明にかかるムーブメントは、請求項15に定義される。
【0019】
本発明にかかる時計は、請求項16に定義される。
【0020】
添付の図面は、本発明にかかる時計の実施形態を、例として図示する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、案内軸受の第1実施形態を含む時計の一実施形態の概略図である。
図2図2は、案内軸受の第1実施形態の第1代替形態の斜視図である。
図3図3は、天真が軸受により案内される、案内軸受の第1実施形態の第1代替形態の部分図である。
図4図4は、天真が軸受により案内される、案内軸受の第1実施形態の第1代替形態の部分図である。
図5図5は、案内軸受の第1実施形態の第2代替形態の概略図である。
図6図6は、案内軸受の第1実施形態の第3代替形態の概略図である。
図7図7は、案内軸受の第2実施形態の斜視図である。
図8図8は、天真が軸受により案内される、案内軸受の第2実施形態の概略図である。
図9図9は、天真が軸受により案内される、案内軸受の第2実施形態の概略図である。
図10図10は、軸受により案内される天真の無い、案内軸受の第2実施形態の概略図である。
図11図11は、特に案内軸受の第1実施形態または案内軸受の第2実施形態に適用可能な、軸受構造全体を図示する概略図である。
図12図12は、特に案内軸受の第1実施形態または案内軸受の第2実施形態に適用可能な、軸受構造全体を図示する概略図である。
図13図13は、特に案内軸受の第1実施形態または案内軸受の第2実施形態に適用可能な、軸受構造全体を図示する概略図である。
図14図14は、案内軸受の第3実施形態の第1代替形態の上面図である。
図15図15は、案内軸受の第3実施形態の第2代替形態の上面図である。
図16図16は、案内軸受の第3実施形態の第3代替形態の上面図である。
図17図17は、共振器の共振の振幅Aの係数としての、各種時計装置位置における、従来技術の軸受で案内されるテンプの共振器の品質係数FQの変化を示すグラフである。
図18図18は、共振器の共振の振幅Aの係数としての、各種時計装置位置における、第2実施形態に係る軸受で案内されるテンプの共振器の品質係数FQの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
時計130の一実施形態を、図1を参照して以下に説明する。時計は、例えば小型時計であり、特に腕時計である。時計は、時計ムーブメント120、とりわけ機械式時計ムーブメントを含む。
【0023】
ムーブメントは、時計機構110、とりわけ主ぜんまい香箱といった動力源に対して、時方輪列により接続された発振器を含む。発振器は共振器、とりわけてん輪及びひげぜんまいタイプの共振器を含む。共振器は、(例えば図3、4に概略的に図示される)軸2、例えば天真を含む。
【0024】
機構は、軸部分上に、共振器の回転を案内するための少なくとも1つの案内軸受、とりわけ少なくとも1つの軸受1a;1b;1a’;1b’;1c’を有する。当該少なくとも1つの軸受は、有利には、機構の一部を形成する緩衝器100の一部を形成する。好みにより、共振器の回転を案内するために、機構は、それぞれ共振器案内軸受を含む2つの緩衝器100を含む。好みにより、共振器は、2つの軸受により、軸2の両側で旋回する。また有利には、共振器軸を案内軸受に搭載することは、軸受の少なくとも一部の弾性変形を引き起こす。軸が案内軸受に搭載されると、案内軸受は予圧されるということになる。
【0025】
有利には、1つのまたは複数の緩衝器100は、ばねの作用により安定位置に戻され、共振器を受け石ジュエルに対して移動させる衝撃または加速を受けた場合にはばねの作用に対抗して共振器の軸に対して軸方向に移動可能な、受け石ジュエルを含む。耐衝撃ばねとして知られるばねは、受け石ジュエルを介して共振器軸の力を吸収するよう設計され、その機能は共振器軸の振動、とりわけ軸方向振動を区切ることである。衝撃を受けた場合、軸が経験する力は、受け石ジュエルを介して耐衝撃ばねにより吸収される。従来の時計稼働において、耐衝撃ばねは、受け石ジュエルとピボットジュエルとを、緩衝器本体で予め定められた傾斜に対して強く押すため、耐衝撃ばねは共振器軸に対してなんら軸方向効果を有さない。こうして共振器軸は、緩衝器内で軸方向余裕を有して搭載される。
【0026】
1つのまたは複数の緩衝器100は、ピボットジュエルを含んでもよい。含む場合、共振器を案内軸受の作用に対抗して共振器の軸に対して径方向に移動させる衝撃または加速の場合に、共振器は、軸受が一定限度まで変形した後、ピボットジュエルに当接することがある。
【0027】
代替的に、1つのまたは複数の緩衝器100は、ピボットジュエルを含まなくてもよい。含まない場合、軸受1a;1b;1a’;1b’;1c’が、従来技術から既知の緩衝器のピボットジェルを代替してもよい。
【0028】
一般的に、軸受1a;1b;1a’;1b’;1c’は、軸2を、とりわけ共振器軸を、回転軸21に沿って案内する。軸受は、回転軸に対して径方向にまたは実質的に径方向に、軸上に常に作用する、特に軸上に力を発揮するように配置される少なくとも1つの押圧要素13a;13b;131a;132a;13a’;13b’;13c’を含む。しかしながら、当該作用は、押圧要素/軸インターフェースでの摩擦係数の結果、軸21の半径方向に対して傾斜してもよい。
【0029】
好みにより、当該1つのまたは複数の作用は、軸の回転軸21に垂直に発揮される。このため、回転案内機能は軸方向負荷を吸収する機能から分離してもよい。例えば、1つのまたは複数の作用は、回転軸21に垂直な平面に対して20°以下のまたは10°以下のまたは5°以下の角度を形成する。
【0030】
「常に発揮する」との意味は、共振器が、空間内でのムーブメントの位置に係らず、とりわけ空間内での共振器の位置に係らず、ムーブメントの残余での定位置にあるときに、作用または複数の作用が経時的に常に発揮されることを意味する。にもかかわらず、押圧要素と軸との間の接触は、ムーブメントが所定の閾値を、例えば地球の重力場の強さに対応する1g程度の閾値を、とりわけ0.1gから1gの間の閾値を、超える加速に曝されると一時的に中断される。当該閾値の範囲は、有利にはエネルギー的考察に関して、とりわけ軸に対して軸受が引き起こす摩擦に関して、軸受を最適に評価可能にする。にもかかわらず、加速閾値はその他の値、とりわけ好みにより1g以上の、とりわけ2g程度のその他の値に設定してもよい。
【0031】
有利には、軸へ少なくとも1つの押圧要素が発揮する1つのまたは複数の作用の結果としての共振器の移動に抵抗するトルクの強さは、共振器がムーブメントの残余での定位置にあって共振器が稼働している間は、ムーブメントの空間での位置に係らず、とりわけ共振器の空間での位置に係らず、一定または実質的に一定、特に経時的に一定である。有利には、軸へ少なくとも1つの押圧要素が発揮する1つまたは複数の作用は、共振器がムーブメントの残余で定位置にある時点で、ムーブメントの空間での位置に係らず、とりわけ共振器の空間での位置に係らず、一定または実質的に一定、特に経時的に一定である。
【0032】
軸受により案内される軸部分は、ピボットまたはピボットシャンクであってもよい。ピボットは、円筒形のまたは円錐台形の断面を示しても良い。
【0033】
好みにより、軸受は、少なくとも1つの押圧要素と協働する少なくとも1つの戻し要素12a;12b;12a’;12b’;12c’を含む。このため、少なくとも1つの押圧要素13a;13b;131a;132a;13a’;13b’;13c’を軸2と接触するよう戻すのは、少なくとも1つの戻し要素12a;12b;12a’;12b’;12c’である。この少なくとも1つの戻し要素は、有利には、弾性変形可能である。このため、軸を圧迫するように少なくとも1つの押圧要素を戻す戻し力は、少なくとも1つの戻し要素の弾性変形により生成される。この少なくとも1つの戻し要素は、時計が経験する加速が上述の加速閾値以下に維持される限り、接触が一定であることを保証するように定義または加工される。
【0034】
図2から6を参照して以下に説明する第1実施形態において、軸受は、少なくとも1つの湾曲ブレード14a、とりわけ3つの湾曲ブレード、または3つ以上の湾曲ブレード、とりわけ4つまたは5つの湾曲ブレードを含み、各湾曲ブレードは、
- 軸を圧迫するための少なくとも1つの押圧要素13aと、
- 軸を圧迫するよう少なくとも1つの押圧要素を戻すための戻し要素12aと、
を構成する。
【0035】
好みにより、ブレードは螺旋の形状に湾曲される。螺旋は、とりわけ半径が角度に比例するまたは半径が角度のべき乗に比例する、極方程式により定義されてもよい。代替策として、ブレードは、適切な剛性を発揮するという条件で、他の任意の形状を取っても良い。ブレードは、ジグザグ、直線または湾曲形状を有してもよい。ブレードは、両端の間で、180°以上、とりわけ270°程度まで、湾曲されてもよい。ブレードの湾曲形状は、当該適用に適したブレードの機械的負荷特性とブレード剛性特性とを得るために、ブレードが所定のサイズにおいて占拠する空間を最適化することを可能にする。ブレードの形状は、平坦(とりわけベアリングの回転軸に垂直の平面における平坦)でもよい。ブレードの形状はまた、非平坦でもよい。このため、ブレードの有効長を増加させることができる。
【0036】
図2から4を参照して以下に説明する第1実施形態の第1代替形態において、軸受は、主としてシャーシ11a、とりわけ環状シャーシと、シャーシの内側に向けて延長するブレード14a、とりわけ3つのブレードとを含む。ブレードは、例えば環状シャーシの内表面から延長する。各ブレードは、凸面と凹面とを有する。各ブレードの第1端は、シャーシに取り付けられまたは固定される。各ブレードの第2端部は自由である。各自由第2端の近傍において、凹面は、軸を圧迫する押圧要素を形成してもよい。各押圧要素は、例えば、ブレードの自由端の近傍の凹面の一部分である。図示する代替形態において、押圧要素は、凹曲面によって表面部に形成される。これら凹曲面の曲半径は、軸受が受け入れることを意図する軸2の半径よりも大きい。例えば、押圧要素の高さにおけるこれら凹曲面の曲半径は、軸受が受け入れることを意図する軸2の半径の5倍より大きい。
【0037】
各押圧要素は、戻し要素経由でシャーシに機械的に接続される。当該戻し要素は、
- 押圧要素を構成する凹面部分を、
- シャ-シから、
分離するブレードの当該部分からなる。
【0038】
シャーシの内面の直径は、軸2の直径の30倍、さらには40倍に相当しても良い。
【0039】
図5を参照して以下に説明する第1実施形態の第2代替形態において、軸受は押圧要素131aが回転軸21に垂直の平面においてブレードの自由端に対して垂直または実質的に垂直に延長する点で、第1実施形態の第1代替形態で説明した軸受と異なる。このため、当該代替形態における押圧要素131aは、ブレードの自由端に対して垂直または実質的に垂直に配置された、円筒部分である。当該構成は、とりわけ軸受に対するピボットの位置決めと安定性を支持する。このため、軸2の回転軸21は、共振器の著しい負荷の影響下であっても、軸受内の中心に置かれる位置の所定の近傍に維持されることが保証可能となる。
【0040】
図6を参照して以下に説明する第1実施形態の第3代替形態において、軸受は押圧要素132aが戻し要素12aの変形を制限するよう設計された傾斜またはフック133aを含む点で、第1実施形態の第2代替形態で説明した軸受と異なる。このため、軸2の回転軸21は、共振器の著しい負荷の影響下であっても、軸受内の中心に置かれる位置の所定の近傍に維持されることが保証可能となる。また、軸受が組み立てられる際に、特に軸2が軸受に取付けられる際にまたは共振器が運動中のムーブメントの動作中に、ブレードが破損する危険性を回避する。傾斜は、例えば、軸を押圧する押圧要素の表面に対して実質的に垂直に延長するアームにより形成される。傾斜は、軸受の他の隣接する押圧要素と協働することが意図される。図6において、傾斜が不活性の構成、すなわち傾斜が隣接要素と接触により協働していない構成での各種要素が図示される。
【0041】
図7から10を参照して以下に説明する第2実施形態において、軸受はブレード14bが(湾曲ではなく)直線または直線的である点で、第1実施形態で説明した軸受と異なる。加えて、当該実施形態において、軸2と接触する押圧要素の表面は平面状である。このため柔軟ブレードは、直線角材の形状を有する。その断面は一定でもよい。
【0042】
当該実施形態において、軸受は、戻し要素の変形を制限する傾斜を含む。特にブレードは、傾斜を構成するシャーシの表面16への近接状態を維持する。戻し要素の変形が一定の度合いに達すると、ブレードは当該傾斜に接触し、このため変形が制限される。これは、軸受の組立の際に、特に軸2が軸受に取付けられる際に、または共振器が運動中の時計の動作中に、とりわけ衝撃の際に、ブレードの破損の危険性を回避する。
【0043】
最初の2つの実施形態における代替形態がどれであれ、戻し要素は、柔軟ブレードの一部からなる。好みにより、各種柔軟ブレードは、単一の部品として形成され、このためシャーシを含む一体の軸受を形成する。
【0044】
最初の2つの実施形態における代替形態がどれであれ、共振器軸は、柔軟ブレード間で旋回可能である。共振器の位置がどこであれ、ブレードは、特に押圧要素は、それぞれの予圧の影響下で軸に対して堅固に押圧される。特にブレードは、特に戻し要素は、軸が軸受内に案内される際に、弾性変形される。弾性変形は、軸が案内されるにつれ、元の位置にブレードを戻す傾向がある戻し力につながる。
【0045】
図3に図示されるように、小型時計が水平位置(回転軸21が垂直な位置)にあるとき、各ブレードは同一の力を、理想的には可能な限り最小化された力を、軸上に発揮する。理想的には、当該力は、垂直位置で発揮される摩擦と実質的に同一の摩擦を誘導するのに適した力である。ブレードと軸との間の接触は、ムーブメントが所定の閾値を超える加速に曝されているときに、一時的に中断されてもよい。0.5gと1gとの間である閾値は、有利には、ブレードの軸に対する摩擦を可能な限り最小化することができることを意味する。
【0046】
小型時計が水平位置にあるとき、軸の重さは理論的には軸受により吸収されない。重さは、例えば、受け石ジュエルにより吸収される。図4に図示するように、小型時計が垂直位置(回転軸21が水平な位置)にあるとき、共振器の重さは軸受の単一または複数のブレードにより吸収される。これは、(回転軸21に垂直な)少量の移動を引き起こす。当該移動は、有利には、従来の軸受から既知の移動と同様またはそれ以下である。当該移動の結果、軸上に位置する単一または複数のブレードは、下に位置するブレードが発揮する力に比べて小さな力を軸に対して発揮する。全てのブレードが軸との接触を維持する限り、軸に対するブレードの負荷の強度の合計は、共振器の位置に係らず本質的に同一に維持される。共振器がムーブメント内で可動の場合、軸へのブレードの負荷がもたらす摩擦トルクの強度は、共振器の位置に係らず本質的に同一に維持される。これは、各種時計装置位置間の共振器の品質係数を調和させる効果がある。
【0047】
図10は、軸受に軸が搭載されていない、軸受を部分的に図示する。当該構成において、3つのブレードは、半径r0の内接円を定義する。
【0048】
軸が軸受に搭載されるにつれ、柔軟ブレードは、距離rp-r0にわたり弾性変形され、つまり予圧され、ここでrpはブレードが軸に対して押圧する点における軸の半径である。
【0049】
このため、各柔軟ブレードの予圧力F0は、
F0=k.(rp-r0)
で与えられ、ここでkはそれぞれの柔軟ブレードの剛性である。
【0050】
静的力均衡に基づく研究によって、共振器の軸に対して柔軟ブレードが誘導する静摩擦トルクCは、空間における共振器の位置がどうであれ一定または実質的に一定であり、当該トルクは、
- (予圧力が各ブレードにおいて厳密に正である限り)当該予圧力F0と、
- 軸と柔軟ブレードのそれぞれとの間の摩擦係数ηと、
- 軸の半径rpと、
に本質的に依存することが示された。
【0051】
このため、静摩擦トルクCは、共振器の位置がどうであれ、小型時計が(軸2と回転軸21が垂直に配置される)水平位置にあるときに共振器の軸に対して柔軟ブレードが誘導する静摩擦トルクCHと等しいまたは実質的に等しい。図9に図示する(そして重りPがもっぱら軸の回転軸線に沿って向けられたと仮定する)共振器の当該構成において、トルクCHは以下のように表現可能である。
CH=3.η.F0.rpまたはCH=3.η.k(rp-r0).rp
このため、
C=3.η.F0.rpまたはC=3.η.k(rp-r0).rpである。
【0052】
当該値Cは小型時計の位置がどこであれ一定または実質的に一定であることから、発振器の各種位置間の品質係数を相殺する効果を有する。
【0053】
例として、図18は発振器の発振の振幅に基づく、また図7に図示するような、2つの軸受により旋回される発振器が取付けられた小型時計の空間位置に基づく、各種品質係数FQを示すグラフである。品質係数FQが、共振器の位置に係らず標準化されていること、そして図17に図示する、同一の共振器が従来通り旋回される品質係数FQに比べて著しく標準化されていることが見て取れる。
【0054】
予圧力F0は、できる限り、また発振を維持するために必要なエネルギーを最適化するよう選択された共振器に従って、最小化できる。力Fmの最小強度は、柔軟ブレードの1つにより生成される力Fi(図8におけるF2)が共振器(最大加速度1g)の重さにより相殺される限界状態により定義される。計算により、当該シナリオは、一定摩擦ηにおいて、
F0>2.P/3
の場合のみ達成されることを示し、ここでPは軸受へ共振器が発揮する力である。
【0055】
当該基準を尊重することにより、最も小さい静摩擦トルクを生成する一方、全ての水平及び垂直位置での摩擦トルクを調和させるために、F0を可能な限り最小化できる。
【0056】
具体的には、柔軟ブレードのそれぞれの剛性kは、
k>2.P/(3.(rp-r0))
の基準を満たさねばならない。
【0057】
最初の2つの実施形態における代替形態がどれであれ、ブレードの断面は一定であっても一定でなくてもよい。共振器の各種動きや位置に従って、剛性を最適化し区別するために、ブレードのそれぞれは、接合されていてもされていなくてもよいいくつかのブレードにより作り上げられても良い。例えば、当該実施形態は、軸に対する摩擦力を最小化するのと同時に回転軸が軸受内の中心に位置することを保証する観点から、軸に対して押圧する径方向力を最小化することができる。
【0058】
最初の2つの実施形態における代替形態がどれであれ、
- 単一または複数のブレードは、押圧要素の近傍で押圧要素に平行または実質的に平行に、及びまたは押圧要素の近傍で回転軸に対して直交方向にまたは実質的に直交方向に、延長する、または
- 単一または複数のブレードは、押圧要素の近傍で押圧要素に対して直角にまたは実質的に直角に、及びまたは押圧要素の近傍で回転軸に対して直交方向にまたは実質的に直交方向に、延長する。
【0059】
第1及び第2実施形態のどれであれ、ブレードは、より一般的には軸受は、例えばニッケル、ニッケル-リン合金、または代替的にはシリコン及びまたは被膜シリコン(酸化シリコン、窒化シリコン、等)製であってもよい。当該部品は、好ましくは電鋳またはエッチングにより製造されてもよい。代替的に、当該部品は火花放電加工により加工されてもよい。
【0060】
図14から16を参照して以下に説明する第3実施形態において、軸受は、少なくとも1つの径方向または実質的に径方向の突起14a’、14b’を含み、各突起は、
- 軸を圧迫するための少なくとも1つの押圧要素、と
- 軸を圧迫するよう少なくとも1つの押圧要素を戻すための戻し要素と、
を含む。
【0061】
このため、好みにより、軸受はリングの回転軸に向けて、とりわけリングの回転軸に向けてリングの内側向けのリング表面から延長する、いくつかの突起または突出部を含む形状を示すリングを含んでもよい。好みにより、リングは少なくとも2つの突起を含む。リングは、とりわけ、2つまたは3つまたは4つまたは5つまたは6つの突起を含んでもよい。
【0062】
好みにより、軸受は、エラストマー素材製のリングを含む。軸受は、天然ゴム、またはネオプレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、といった合成ゴム、または代替的にシリコン製であってもよい。
【0063】
代替策として、リングは、一定の断面を示してもよい。その場合、リングは、円周すべてでまたはその大部分において、例えば240°以上または270°以上または300°以上において、軸に対して押圧するようになる連続表面を含む押圧要素を示してもよい。当該代替形態において、軸受は、軸を圧迫する単一の押圧要素を含む。当該押圧要素は、軸と接触する表面からなる。軸に接触する表面とリングの大直径表面との間に位置するリングの環状部分は、戻し要素を、この場合には単一の戻し要素を構成する。
【0064】
図14を参照して以下に説明する第3実施形態の第1代替形態において、軸受1a’は、3つの突起14a’を含む。各突起は、軸を圧迫する押圧要素13a’と、押圧要素を軸との接触へ戻す戻し要素12a’とを含む。押圧要素は、軸と接する突起の表面からなる。戻し要素は、押圧要素を、シャーシを構成し一定の断面を示すリング11a’の残りへ接続する突起素材からなる。突起は、突出部または素材が充填された浮き出しである。
【0065】
図15を参照して以下に説明する第3実施形態の第2代替形態において、軸受は、突起が切込み91が設けられた突出部または浮き出しである点で、軸受の第3実施形態の第1代替形態と異なる。このため軸受は、少なくとも1つの径方向または実質的に径方向突起を含んでもよく、各突起は軸を圧迫するための少なくとも1つの押圧要素と、軸を圧迫するよう少なくとも1つの押圧要素を戻すための1つの戻し要素とを含み、単一または複数の戻し要素は切込みを含む。「切込み」は、とりわけ切断以外のなんらかの技術により、特に鋳造により製造された、何らかの空洞を意味すると理解される。切込み91は、突起のそれぞれの剛性の調整を可能にする。
【0066】
図16を参照して以下に説明する第3実施形態の第3代替形態において、軸受は、リングがシャーシを構成するバンド11c’に機械的に接続され、とりわけ固定され、特にオーバーモールドされる点で、第3実施形態の第1代替形態または第3実施形態の第2代替形態と異なる。
【0067】
どの実施形態であれ、またどの代替形態であれ、少なくとも1つの戻し要素と少なくとも1つの押圧要素は、好ましくは一体として製造される。
【0068】
説明した代替形態と実施形態において、軸受は、3つの戻し要素と3つの押圧要素とを示す。しかしながら、どの実施形態であれ、またどの代替形態であれ、軸受は3つ以外の戻し要素の数と、3つ以外の押圧要素の数とを示してもよい。特に、どの実施形態であれ、またどの代替形態であれ、軸受は、1つまたは2つまたは3つまたは4つまたは5つまたは6つの戻し要素と、1つまたは2つまたは3つまたは4つまたは5つまたは6つの押圧要素を示してもよい。好みにより、軸受は押圧要素と同数の戻し要素を示す。
【0069】
実施形態がどれであれ、代替形態がどれであれ、各押圧要素の軸2に対して押圧する押圧表面は、平面または凹面または凸面であってもよい。特に、全ての押圧表面は、平面または凹面または凸面であってもよい。
【0070】
どの実施形態であれ、またどの代替形態であれ、シャーシは、とりわけ環状シャーシは、単一部品として、またはいくつかの独立した部品として、とりわけ戻し要素と同数の独立部品として、製造されてもよい。ブレードが互いに独立して製造される場合、ブレードはそれぞれ土台111aに固定される。土台は、有利には位置決め要素が設けられ、場合により調整要素、とりわけ穴といった心立て要素が設けられる。位置決め要素は、軸受の回転軸を定義することを可能にする。土台を含む当該実施形態は、図12に図示される。位置決め要素は、例えばピンと協働する。
【0071】
どの実施形態であれ、またどの代替形態であれ、軸受は、軸受の組付手段が設けられてもよい。例えば、シャーシは分裂リングを含んでよく、図13に示すように、リングを弾性変形可能とし、組付け中にブレードを適切に位置決め可能にするために分裂が存在する。シャーシはまた、図11に示すように、連続リングを含んでもよい。
【0072】
どの実施形態であれ、またどの代替形態であれ、軸受は、戻し要素の変形を制限するための傾斜を含んでもよい。
【0073】
どの実施形態であれ、またどの代替形態であれ、押圧要素及びまたは戻し要素は、好ましくは回転軸21周りに角度的に均一に配置される。
【0074】
説明した解決策は、共振器の位置にかかわらず、共振器の軸へ本質的に一定の力を発生するように構成される軸受を提案することで、位置間の進みの差の問題を克服することを目的とする。これを達成するために、軸受は、共振器の位置にかかわらず、共振器の軸に対して実質的に径方向力を適用するよう設計された、少なくとも1つの戻し要素が設けられるという特徴を有する。
【0075】
軸受は、小型時計の位置にかかわらず、軸と軸受間に本質的に一定の力を誘導するため、軸に対して実質的に径方向力を適用するよう設計された、少なくとも1つの戻し要素が設けられる。
【0076】
これにより、位置間の進みの差は、厳密に最小限に減少される。このため、共振器の品質係数は、共振器の位置に係らず一定または実質的に一定になり、ムーブメントの時間測定性能を最適化できる。
【0077】
戻し手段は、好ましくは、共振器の軸を支持する機能と、少なくとも軸受の横断面において軸の位置決めする機能とを有する。
【0078】
どの実施形態であれ、軸受は、緩衝器内に、とりわけ従来構造の緩衝器内に組み込まれてもよい。
【0079】
本発明にかかる緩衝器において、軸方向の緩衝機能は、径方向緩衝機能と分離されてもよいことを注記する。特に、軸方向の緩衝機能は、主として従来の受け石ジュエルと従来の耐衝撃ばねによって生じる。径方向緩衝機能は、軸によって生じる。
【符号の説明】
【0080】
1a 軸受
2 軸
11a シャーシ
12a 戻し要素
13a 押圧要素
14a ブレード
100 緩衝器
110 時計機構
120 時計ムーブメント
130 時計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18