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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】地図画像投影装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20230516BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20230516BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20230516BHJP
   G06T 3/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
G09B29/00 A
G09G5/00 510B
G09G5/00 550C
G03B21/00 D
G06T3/00 720
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018190421
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020060632
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 徹
(72)【発明者】
【氏名】橘 菊生
(72)【発明者】
【氏名】福島 悟
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-008019(JP,A)
【文献】特開2004-093358(JP,A)
【文献】特開2016-184362(JP,A)
【文献】特開2008-009941(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105474271(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0236483(US,A1)
【文献】特開2011-128057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00-29/14
G09G 5/00- 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面に地図画像の投影が可能なプロジェクタの位置情報、前記プロジェクタの向き、及び、地図データ、に基づいて、前記プロジェクタが投影する投影範囲の位置情報である複数の現地座標のそれぞれに対応する画素を有するとともに、前記各現地座標の前記地図データの内容が当該現地座標に対応する画素に関連付けられた前記地図画像を生成する地図画像生成手段と、
前記地図画像を前記プロジェクタに出力する地図画像出力手段と、を含み、
前記プロジェクタは、前記各現地座標に該当する前記地表面の箇所に対して当該現地座標に対応する画素が投影されるようにして、前記地図画像出力手段により出力される前記地図画像を前記地表面に投影する、
ことを特徴とする地図画像投影装置。
【請求項2】
前記地図画像生成手段は、前記地図画像が投影される前記投影範囲の地表面の高さと前記プロジェクタの高さとの差にさらに基づいて、前記地図画像を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の地図画像投影装置。
【請求項3】
地表面に地図画像の投影が可能なプロジェクタの位置情報、前記プロジェクタの向き、及び、地図データ、に基づいて、前記プロジェクタが投影する投影範囲の位置情報に該当する前記地図画像を生成する地図画像生成手段と、
前記地図画像を前記プロジェクタに出力する地図画像出力手段と、を含み、
前記プロジェクタは、前記地図画像出力手段により出力される前記地図画像を前記地表面に投影し、
前記地図画像生成手段は、前記地図画像が投影される前記投影範囲の地表面の勾配に基づいて特定される前記地図画像が投影される前記投影範囲の地表面の高さと、前記プロジェクタの高さとの差にさらに基づいて、前記地図画像を生成する、
ことを特徴とする地図画像投影装置。
【請求項4】
地表面に地図画像の投影が可能なプロジェクタの位置情報、前記プロジェクタの向き、及び、地図データ、に基づいて、前記プロジェクタが投影する投影範囲の位置情報に該当する前記地図画像を生成する地図画像生成手段と、
前記地図画像を前記プロジェクタに出力する地図画像出力手段と、を含み、
前記プロジェクタは、前記地図画像出力手段により出力される前記地図画像を前記地表面に投影し、
前記地図画像生成手段は、前記地図データを構成する各座標に対する、少なくとも前記投影範囲の地表面の起伏を三次元座標で表現した地形モデルに基づいて特定される地表面の高さと、前記プロジェクタの高さとの差にさらに基づいて、前記地図画像を生成する、
ことを特徴とする地図画像投影装置。
【請求項5】
前記地図画像生成手段は、前記プロジェクタが備える光学系について設定可能なパラメータの値にさらに基づいて、前記地図画像を生成する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の地図画像投影装置。
【請求項6】
地表面に地図画像の投影が可能なプロジェクタの位置情報、前記プロジェクタの向き、及び、地図データ、に基づいて、前記プロジェクタが投影する投影範囲の位置情報である複数の現地座標のそれぞれに対応する画素を有するとともに、前記各現地座標の前記地図データの内容が当該現地座標に対応する画素に関連付けられた前記地図画像を生成する手順、
前記地図画像を前記プロジェクタに出力し、前記各現地座標に該当する前記地表面の箇所に対して当該現地座標に対応する画素が投影されるようにして、前記地図画像を前記プロジェクタにより前記地表面に投影させる手順、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図画像投影装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路台帳図や下水道台帳図などといった道路構造物の現況を確認するため、あるいは、工事設計図などといった道路構造物の将来の方向性を知るために、現地において紙の地図を参照して、地図で表された現地の情報を把握しながら工事などの作業が行われることがある。また、このような作業において紙面の代わりにタブレット端末に表示される地図の画像が参照されることもある。
【0003】
また特許文献1には、施工面の形成工程における施工面に対して、設計形状データと現形状データとの一致度からなる施工状態管理情報を直接投影する施工管理装置が記載されている。特許文献1に記載の技術によれば、作業者は、施工過程における実際の施工面と、設計された施工面との差異を瞬時に認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-117146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業の際に地図を参照する場合は、地図に示されている位置と当該地図で表された現地との対応がわかりにくいため当該現地の正確な把握を短時間で行うことが難しい。ここで地図の内容を現地に転記するとしても、当該現地にて精細な測量を行う必要があり手間がかかる。また紙の地図や地図の画像が表示されたタブレット端末では地図を同時に閲覧可能な人の数が限られてしまう。
【0006】
なお特許文献1に記載の技術は、手間をかけることなく多くの人が同時に地図で表された現地を正確に把握できる技術ではない。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的の1つは、手間をかけることなく多くの人が同時に地図で表された現地を正確に把握できる地図画像投影装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る地図画像投影装置は、地表面に地図画像の投影が可能なプロジェクタの位置情報、前記プロジェクタの向き、及び、地図データ、に基づいて、前記プロジェクタが投影する投影範囲の位置情報に該当する前記地図画像を生成する地図画像生成手段と、前記地図画像を前記プロジェクタに出力する地図画像出力手段と、を含み、前記プロジェクタは、前記地図画像出力手段により出力される前記地図画像を投影する。
【0009】
(2)上記(1)に記載の地図画像投影装置において、前記地図画像生成手段は、前記プロジェクタが備える光学系について設定可能なパラメータの値にさらに基づいて、前記地図画像を生成する構成とすることができる。
【0010】
(3)上記(1)、(2)に記載の地図画像投影装置において、前記地図画像生成手段は、前記地図画像が投影される前記投影範囲の地表面の高さと前記プロジェクタの高さとの差にさらに基づいて、前記地図画像を生成する構成とすることができる。
【0011】
(4)上記(3)に記載の地図画像投影装置において、前記地図画像生成手段は、前記地図画像が投影される前記投影範囲の地表面の勾配に基づいて特定される前記地図画像が投影される前記投影範囲の地表面の高さと、前記プロジェクタの高さとの差にさらに基づいて、前記地図画像を生成する構成とすることができる。
【0012】
(5)上記(3)に記載の地図画像投影装置において、さらに、少なくとも前記投影範囲の地表面の起伏を三次元座標で表現した地形モデルを有し、前記地図画像生成手段は、前記地図データを構成する各座標に対する、前記地形モデルに基づいて特定される前記地図画像が投影される地表面の高さと、前記プロジェクタの高さとの差にさらに基づいて、前記地図画像を生成する構成とすることができる。
【0013】
(6)本発明に係るプログラムは、地表面に地図画像の投影が可能なプロジェクタの位置情報、前記プロジェクタの向き、及び、地図データ、に基づいて、前記プロジェクタが投影する投影範囲の位置情報に該当する前記地図画像を生成する手順、前記地図画像を前記プロジェクタに出力する手順、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、手間をかけることなく多くの人が同時に地図で表された現地を正確に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る地図画像投影装置の構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る地図画像生成装置の構成図である。
図3】プロジェクタの画面に表示される地図画像が投影面に投影される様子の一例を模式的に示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る地図画像投影装置の機能の一例を示す機能ブロック図である。
図5】本発明の一実施形態に係る地図画像投影装置で行われる処理の流れの一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る地図画像投影装置10の構成図である。本実施形態に係る地図画像投影装置10には、例えば、地図画像生成装置12、全球測位衛星システム(GNSS)モジュール14、プロジェクタ16、慣性計測装置(IMU)18が含まれている。本実施形態に係る地図画像投影装置10はモービルマッピングシステム(MMS)のように自由に走行可能な自動車等の車両20に搭載できるようになっている。
【0018】
地図画像生成装置12は、パーソナルコンピュータなどのコンピュータである。図2に示すように地図画像生成装置12は、例えば、プロセッサ30、記憶部32、通信部34、表示部36、操作部38を含んでいる。
【0019】
プロセッサ30は、例えば地図画像生成装置12にインストールされるプログラムに従って動作するCPU等のプログラム制御デバイスである。
【0020】
記憶部32は、ROMやRAM等の記憶素子やハードディスクドライブなどである。記憶部32には、プロセッサ30によって実行されるプログラムなどが記憶される。
【0021】
通信部34は、例えばGNSSモジュール14、プロジェクタ16、IMU18との間でデータを授受するためのネットワークボードや無線LANモジュールなどの通信インタフェースである。
【0022】
表示部36は、液晶ディスプレイ等の表示デバイスであって、プロセッサ30の指示に従って各種の画像を表示する。
【0023】
操作部38は、キーボードやマウスなどといったユーザインタフェースであって、ユーザの操作入力を受け付けて、その内容を示す信号をプロセッサ30に出力する。
【0024】
なお、地図画像生成装置12は、DVD-ROMやBlu-ray(登録商標)ディスクなどの光ディスクを読み取る光ディスクドライブ、USB(Universal Serial Bus)ポートなどを含んでいてもよい。
【0025】
GNSSモジュール14は、本実施形態では、例えばGPSモジュールなどを含んで構成されており、プロジェクタ16の位置情報を取得する。ここでGNSSモジュール14は、プロジェクタ16の最新の位置情報を、例えば所定の時間間隔で、繰り返し取得してもよい。
【0026】
プロジェクタ16は、本実施形態では例えば、地図画像22を、地図画像22で表された現地の道路等の地表面(投影面24)に投影する。また本実施形態では、例えばプロジェクタ16を操作することによって、プロジェクタ16が備える光学系のパラメータを制御できるようになっている。また車両20を移動させることによって、プロジェクタ16の位置や向きは変化する。さらに、車両20を固定した状態でプロジェクタ16の向きを変化させてもよい。図1には、投影面24上の、点P1、点P2、点P3、及び、点P4を頂点とする四角形(台形)に地図画像22が投影されている様子が示されている。
【0027】
IMU18は、本実施形態では例えば、プロジェクタ16に取り付けられており、プロジェクタ16の角度を計測する。ここで例えばプロジェクタ16の向きの変化に応じてIMU18による計測値は変化する。ここでIMU18は、プロジェクタ16の最新の角度を、例えば所定の時間間隔で、繰り返し計測してもよい。
【0028】
図3は、本実施形態に係るプロジェクタ16の画面40に表示される地図画像22aが投影面24に地図画像22bとして投影される様子の一例を模式的に示す図である。図1及び図3におけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向は現地における座標系(現地座標系)を表したもので、ここで例えば、X軸方向、Y軸方向は平面直角座標系のそれぞれ東西方向、南北方向を、Z軸方向は高さ(標高)方向を表していることとする。また、図3には、プロジェクタ16の位置の現地座標系における座標値が(X,Y,Z)と示されている。ここで例えばX、Yは平面直角座標系の東西方向、南北方向のそれぞれ座標値を表し、Zは標高を表していることとし、投影面24と同一の座標系により表していることとする。
【0029】
ここで投影面24の表面形状に起伏がない場合で、地図画像22aが矩形の画面40全体に表示される場合では、地図画像22bは台形又は矩形となる。なお画面40の一部に台形の地図画像22aが表示されるようにすることで、矩形の地図画像22bが投影されるようにしてもよい。この場合、地図画像22aが表示されない画面40に黒画素が表示されるようにしてもよい。あるいは、プロジェクタ16が有する画像の幾何学変換により台形補正がかけられる場合は、矩形の地図画像22aを、そのままの矩形の状態で地図画像22bとして投影されるようにしてもよい。
【0030】
また、図3ではプロジェクタ16の向きを示す値が(ω,φ,κ)と示されている。ここで例えば現地座標系のX軸、Y軸、Z軸をそれぞれ基準方向とし、レンズを通して対面する画面40のX軸周りの回転角をω、Y軸周りの回転角をφ、Z軸周りの回転角をκとして、反時計回りを正で表現されていることとする。
【0031】
また、図3ではプロジェクタ16が備える光学系について設定可能なパラメータの一例である、プロジェクタ16の画面40とプロジェクタ16が備えるレンズ42との間の長さがcと示されている。
【0032】
ここで地図画像22a内の画面座標系における座標値(画面座標)が(x,y)である画素が、投影面24上の、現地座標系における座標値(現地座標)が(X,Y,Z)である現地に地図画像22bの画素として投影されることとする。
【0033】
この場合、座標値(X,Y,Z)に基づいて座標値(x,y)は、以下の式(1)及び式(2)により算出される。
【数1】
【0034】
なお式(1)及び式(2)におけるm11~m33の値は、以下の式(3)~式(11)により算出される値である。
【数2】
【0035】
プロジェクタ16の位置、プロジェクタ16の向きが既知であれば、プロジェクタ16の光学設計(例えば光学系のパラメータの値)によって、図面画像22a内の各画素の投影方向が一意に定まる。そのため、上述のようにしてプロジェクタ16の位置情報と投影範囲の位置情報との関係が特定され、投影範囲内の位置情報を示す各座標値に対して、地図画像22a内の画素の位置との対応が一意に特定できる。
【0036】
そして、例えば座標管理されている道路台帳図や下水道台帳図などの地図データの内容を現地の投影面24に投影する場合、地図データを構成する各座標データに対してプロジェクタ16で投影する地図画像22a内の画素の位置を特定し、投影範囲内にある全ての地図データを反映させることで地図画像22aを生成する。そして、生成された地図画像22aが投影されるようにすることで、道路台帳図や下水道台帳図などの地図データの内容が表された地図画像22bが現地の投影面24上に直接等倍で投影される。
【0037】
道路台帳図や下水道台帳図などといった道路構造物が記載された紙の地図や道路構造物の地図の画像が表示されたタブレット端末を参照することにより地図で表された場所の状況を把握しながら工事などの作業が行われることがある。
【0038】
作業の際に紙の地図や地図の画像が表示されたタブレット端末を参照する場合は、地図に示されている位置と当該地図で表された実際の場所との対応がわかりにくいため当該場所の状況の正確な把握を短時間で行うことが難しい。ここで地図の内容を実際の場所に転記するとしても、当該場所にて精細な測量を行う必要があり手間がかかる。また紙の地図や地図の画像が表示されたタブレット端末では同時に閲覧可能な人の数が限られてしまう。
【0039】
本実施形態によれば以上のようにして、現地の投影面24上に直接、地図画像22が等倍で投影される。そのため、手間をかけることなく多くの人が同時に地図で表された現地を正確に把握できることとなる。
【0040】
以下、本実施形態に係る地図画像生成装置12で実装される機能、及び、本実施形態に係る地図画像投影装置10において行われる処理についてさらに説明する。
【0041】
図4は、本実施形態に係る地図画像生成装置12で実装される機能の一例を示す機能ブロック図である。なお、本実施形態に係る地図画像生成装置12で、図4に示す機能のすべてが実装される必要はなく、また、図4に示す機能以外の機能が実装されていても構わない。
【0042】
図4に示すように、本実施形態に係る地図画像生成装置12には、機能的には例えば、地図データ記憶部50、プロジェクタ位置情報取得部52、プロジェクタ向き情報取得部54、光学系パラメータ情報取得部56、地図データ取得部58、画面座標特定部60、地図画像生成部62、地図画像出力部64、が含まれる。地図データ記憶部50は、記憶部32を主として実装される。プロジェクタ位置情報取得部52、プロジェクタ向き情報取得部54、光学系パラメータ情報取得部56、地図画像出力部64は、プロセッサ30、及び、通信部34を主として実装される。地図データ取得部58、画面座標特定部60、地図画像生成部62は、プロセッサ30を主として実装される。
【0043】
以上の機能は、コンピュータである地図画像生成装置12にインストールされた、以上の機能に対応する指令を含むプログラムをプロセッサ30で実行することにより実装されてもよい。このプログラムは、例えば、光ディスク、磁気ディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等のコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体を介して、あるいは、インターネットなどを介して地図画像生成装置12に供給されてもよい。
【0044】
地図データ記憶部50は、本実施形態では例えば、座標で管理されている道路台帳図や下水道台帳図、あるいは工事設計図などの地図データを記憶する。地図データとは、地表面にある構造物等の地物の位置情報や形状を、図形データとして一つまたは複数の座標情報で表現したもので、地点を表現する「点」データ、線状の地物を表現する「線」データ、矩形ないしは多角形からなる面的な領域を表現する「面」データに分類される。形状を表す座標情報の他に、例えば地物の種類等を識別するための分類コードや、地物の高さ(標高)を表す標高情報などを属性情報として付与してもよい。また、地表面の地物だけでなく、例えば、埋設物や地盤高などの地下や空中にある構造物の情報や地形の情報等が示されていてもよい。ここで当該地図データは、座標管理されていればラスタデータでもベクタデータでも、あるいは空中写真を正射変換したデジタルオルソでも構わない。ここでいう座標とは、例えば緯度及び経度、あるいは、平面直角座標系の座標データであってもよく、後述するプロジェクタの位置情報等を含む相対座標であってもよい。
【0045】
ここでは例えば、地図データ記憶部50に、地図画像22が投影される可能性のある現地の範囲についての地図データが少なくとも記憶されていることとする。
【0046】
また当該地図データには、例えば地図の投影面24における勾配を示す属性値が含まれていてもよい。
【0047】
また当該地図データは、平面における二次元座標に高さ情報を付与した三次元データであってもよく、また現地に投影する地図データとは別に、当該地形を表現する例えば三次元地形モデルあるいは三次元点群モデルを含んでもよく、これらのデータから、投影範囲の地表面の起伏を三次元座標で表現した地形モデルを作成してもよい。
【0048】
プロジェクタ位置情報取得部52は、本実施形態ではプロジェクタ16の位置情報を取得する。ここでいう位置情報とは、例えば緯度及び経度、あるいは、平面直角座標系の座標データであってもよく、地図データを含む相対座標であってもよい。ここで当該位置情報に、プロジェクタ16の標高などの高さが示されていてもよい。この高さは、標高等の絶対高さ情報の他に、地表面または所定の位置の高さを基準とした相対的な高さであってもよい。またプロジェクタ位置情報は、レンズ42の中心の位置を示していてもよい。
【0049】
本実施形態において例えば、GNSSモジュール14が、上述のプロジェクタ位置情報を生成してもよい。またGNSSモジュール14が、GNSSモジュール14による測位結果に対して、レンズ42の中心の位置とGNSSモジュール14の位置との違いに応じた補正処理を実行することによって、上述のプロジェクタ位置情報を生成してもよい。そしてプロジェクタ位置情報取得部52が、GNSSモジュール14からプロジェクタ位置情報を取得してもよい。
【0050】
あるいは例えば、プロジェクタ位置情報取得部52が、GNSSモジュール14の測位結果を受信して、当該測位結果に基づいてプロジェクタ位置情報を生成して、当該プロジェクタ位置情報を取得してもよい。
【0051】
なおプロジェクタ位置情報は、GNSSモジュール14による測位結果に基づくものである必要はない。例えば、地図画像投影装置10がカメラを備えており、当該カメラが、位置情報が既知である地点に置かれた複数のマーカを撮影した画像を生成し、そしてプロジェクタ位置情報取得部52が、撮影された画像内におけるそれぞれのマーカの位置、撮影したカメラの方向に基づいて特定されるプロジェクタ16の位置を示すプロジェクタ位置情報を生成してもよい。そしてプロジェクタ位置情報取得部52が、当該プロジェクタ位置情報を取得してもよい。
【0052】
プロジェクタ向き情報取得部54は、本実施形態では例えば、プロジェクタ16の向きを示すプロジェクタ向き情報を取得する。
【0053】
ここで例えば、IMU18が、上述のプロジェクタ向き情報を生成してもよい。そしてプロジェクタ向き情報取得部54が、IMU18からプロジェクタ向き情報を取得してもよい。
【0054】
あるいは例えば、プロジェクタ向き情報取得部54が、IMU18から計測結果を受信して、当該計測結果に基づいてプロジェクタ向き情報を生成して、当該プロジェクタ向き情報を取得してもよい。
【0055】
光学系パラメータ情報取得部56は、本実施形態では例えば、プロジェクタ16が備える光学系について設定可能なパラメータの値を示す光学系パラメータ情報を取得する。ここで例えば、光学系パラメータ情報に、プロジェクタ16の画面40とプロジェクタ16が備えるレンズ42との間の長さを示す値である、上述の式(1)及び式(2)における値cが示されていてもよい。
【0056】
ここで例えば、プロジェクタ16が、上述の光学系パラメータ情報を生成して、地図画像生成装置12に送信してもよい。そして光学系パラメータ情報取得部56が、プロジェクタ16から送信される当該光学系パラメータ情報を受信してもよい。
【0057】
地図データ取得部58は、本実施形態では例えば、地図データ記憶部50に記憶されている上述の地図データを取得する。ここで例えば、地図データ記憶部50に記憶されている地図データのうち、投影範囲に相当する領域についての地図データが切り出されて取得されてもよい。
【0058】
画面座標特定部60は、本実施形態では例えば、プロジェクタ位置情報、及び、プロジェクタ向き情報、及び、上述の地図データ、に基づいて、プロジェクタ16が投影する投影範囲内の位置情報である座標値を特定し、投影範囲内にある地図データを構成する各座標値に対して、該当する地図画像22a内の画面座標を特定する。ここで例えば、上述の式(1)及び式(2)に基づいて地図データの画面座標が特定されてもよい。
【0059】
ここで画面座標特定部60は、プロジェクタ16が備える光学系について設定可能なパラメータの値(例えば光学系パラメータ情報が示す値c)にさらに基づいて、地図データの画面座標を特定してもよい。
【0060】
またプロジェクタ16が備える光学系について設定可能なパラメータの値に基づかずに地図データの画面座標が特定されてもよい。またプロジェクタ16が備える光学系について設定可能なパラメータがなくてもよい。この場合に例えば、上述の式(1)及び式(2)における値cとして所定値が用いられてもよい。
【0061】
また画面座標特定部60は、現地の高さとプロジェクタ16の高さとの差にさらに基づいて、画面座標を特定してもよい。当該差は、式(1)及び式(2)における値Z-Zに相当する。また当該差は、地図画像22bが投影される投影面24の傾きに基づいて特定されてもよい。
【0062】
なお、画素が投影される現地の高さとプロジェクタ16の高さとの差に基づかずに画面座標が特定されてもよい。この場合に例えば、上述の式(1)及び式(2)における値Z-Zとして所定値が用いられてもよい。
【0063】
ここで投影面24の傾きは、例えば地図データに示されている、上述の勾配を示す属性値に基づいて特定されてもよく、また例えば、車両20に取り付けられたIMUに基づいて、投影面24の勾配角度が特定されてもよい。そして当該勾配角度に基づいて、上述の式(1)及び式(2)における値Zが特定されるようにしてもよい。
【0064】
また投影面24の形状に一定の勾配等では無いような起伏がある場合は、上述の地形モデルに基づいて、地図データの各座標に対応する高さの値Zを特定してもよい。また、予め作成した地形モデルが無い場合は、車両20に取り付けられたレーザプロファイラ等を使用して投影面24の三次元点群データを取得し、上述のような地形モデルを作成することで地図データの各座標に対応する高さの値Zを特定してもよい。ここで特定された地図データの各座標に対応する高さの値Zとプロジェクタ16の高さとの差により、上述の式(1)及び式(2)に基づいて画面座標が特定されてもよい。さらに、地図データのうち、線データおよび面データの境界線を構成する頂点間の投影面24に高低差がある場合は、線データの直線上、面データの境界線上に適宜頂点を追加し、上述の地形モデル等から高さの値Zを特定し、プロジェクタ16の高さとの差により追加した各頂点に対応する画面座標が特定されてもよい。地図データがラスタデータの場合は、投影面24に投影される地図画像22bの各画素の座標に相当する高さの値Zを上述の地形モデル等から特定し、プロジェクタ16の高さとの差により各画素に対応する画面座標が特定されてもよい。
【0065】
地図画像生成部62は、本実施形態では例えば、現地座標である地図データを構成する各座標値に対する地図画像22a内の画面座標に基づいて、投影範囲内の全ての地図データを所定の方法に従って投影面24に表示できる地図画像22を生成する。所定の方法とは、例えば、地図データのうち「点」を示すデータは、各地点の現地座標に該当する画像22a内の画面座標の画素を中心として、地物の種類等を識別するための属性情報により記号またはアイコン等を表示できる地図画像22aを生成してもよい。また、地図データのうち「線」を示すデータは、線を構成する各頂点の現地座標、および、上述の投影面24の高低差により追加した頂点の現地座標に該当する画面座標を結ぶ直線上の画素を、地図データの属性情報の値により色、線種等で表示できる地図画像22aを生成してもよい。さらに、領域(「面」)を示すデータは、領域の境界線を構成する各頂点の現地座標、および、上述の投影面24の高低差により追加した頂点の現地座標に該当する画面座標に囲まれた領域内の画素を、地図データの属性情報の値により着色または塗りつぶしパターンで表示できる地図画像22aを生成してもよい。投影範囲内に含まれる全ての地図データを反映させることで地図画像22aが完成する。さらに、ラスタデータの場合は、地図画像22bが投影される各画素の高さ情報を含む現地座標に基づいて、地図画像22aの画面座標を特定して地図画像22aを生成してもよい。
【0066】
地図画像出力部64は、本実施形態では例えば、地図画像生成部62により生成される地図画像22をプロジェクタ16に出力する。ここで例えば、地図画像出力部64は、通信部34を介してプロジェクタ16に地図画像22を送信してもよい。
【0067】
そしてプロジェクタ16は、地図画像出力部64により出力される地図画像22を投影する。ここで例えばプロジェクタ16は、画面40に地図画像22aを表示させることによって、レンズ42などの光学系を介して、投影面24に地図画像22bを投影してもよい。
【0068】
以下、本実施形態に係る地図画像投影装置10において行われる処理の流れの一例を、図5に例示するフロー図を参照しながら説明する。
【0069】
まず、プロジェクタ位置情報取得部52が、GNSSモジュール14から送信される、現在のプロジェクタ16の位置を示すプロジェクタ位置情報を取得する(S101)。
【0070】
そして、プロジェクタ向き情報取得部54が、IMU18から送信される、現在のプロジェクタ16の向きを示すプロジェクタ向き情報を取得する(S102)。
【0071】
そして、光学系パラメータ情報取得部56が、プロジェクタ16から送信される、プロジェクタ16が備える光学系の現在におけるパラメータの値を示す光学系パラメータ情報を取得する(S103)。
【0072】
そして、地図データ取得部58が、S101に示す処理で取得されたプロジェクタ位置情報、S102に示す処理で取得されたプロジェクタ向き情報、及び、S103に示す処理で取得された光学系パラメータ情報に基づいて、投影範囲を特定する(S104)。S104に示す処理では例えば、プロジェクタ16の画面内に収まる範囲に相当する投影範囲が特定される。
【0073】
地図画像22内の座標値が(x,y)である画素は、以下の式(12)及び式(13)により算出される、投影面24上の座標値が(X,Y)である地点に投影される。なお、式(12)及び式(13)においては、投影面24上の座標値が(X,Y)である点の標高はZであることとする。また式(12)及び式(13)におけるm11~m33の値は、上述の式(3)~式(11)により算出される値である。
【数3】
【0074】
S104に示す処理では例えば、式(12)及び式(13)に示す数式に基づいて、図1に示されている点P1、点P2、点P3、及び、点P4の位置や、点P1~点P4を順次結ぶことによって形成される四角形の辺の位置が、投影範囲として特定されてもよい。
【0075】
なお式(12)及び式(13)においては、例えば、Z-Zの値を所定値に仮定することでX及びYの値は一意に算出される。S104に示す処理では投影範囲が大まかに特定できれば充分である。そのため例えば、S104に示す処理では、Z-Zの値に所定値を設定した上で、投影範囲が特定されるようにしてもよい。また例えば、式(12)及び式(13)に示す数式に基づいて算出される領域を所定の倍率で拡大した領域が投影範囲として特定されるようにしてもよい。
【0076】
そして、地図データ取得部58が、地図データ記憶部50に記憶されている地図データのうち、S104に示す処理で特定された投影範囲に相当する領域についての地図データを切り出して取得する(S105)。
【0077】
そして、画面座標特定部60が、取得されたプロジェクタ位置情報、プロジェクタ向き情報、光学系パラメータ情報、地図データ、及び、投影面24の高さ情報に基づいて、地図データの各座標値に該当する地図画像22内における画面座標を特定する(S106)。
【0078】
そして地図画像生成部62が、S106に示す処理で特定された画面座標に応じて、投影する地図データが反映された地図画像22を生成する(S107)。
【0079】
そして、地図画像出力部64が、S107に示す処理で生成された地図画像22をプロジェクタ16に送信する(S108)。すると、プロジェクタ16は、当該地図画像22を受信する。
【0080】
そして、プロジェクタ16が、S108に示す処理で送信された地図画像22を投影面24に投影して(S109)、本処理例に示す処理は終了される。
【0081】
GNSSモジュール14やIMU18によってプロジェクタ16の正確な位置や地図画像22の投影方向を迅速に計測できることから、本実施形態によれば、高精度な地図画像22の迅速な生成が可能となる。
【0082】
また例えば地図データの階層の表示方法を工夫したり、危険な場所が目立つ色で色分け表示されるようにしたりすることで、状況の正確な理解や正確な作業指示が可能となる。
【0083】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0084】
例えば上述の処理例において、投影される地図画像22が車両20の移動や投影方向の変化に応じてリアルタイムに変化するようにしてもよい。例えば車両20が走行している状態で地図画像22の投影が連続的に行われるようにしてもよい。この場合、S101~S109に示す処理が繰り返し実行されることとなる。
【0085】
この態様は、例えば車両20を移動させながら広い範囲の作業を行う場合に好適である。例えば車両20が低速度で走行しながら地下埋設物の状況を示す地図画像22が投影されるようにすることで、長い道路などに対して連続的なマーキング作業を行うことができる。このようにすれば、マーキング作業の効率化が期待できる。
【0086】
また例えば、S104に示す処理の代わりに、プロジェクタ16の位置を中心とした所定の大きさの領域を特定する処理が実行されてもよい。そしてS105に示す処理で当該領域についての地図データが切り出されて取得されてもよい。
【0087】
また、上述の具体的な文字列や数値、並びに、図面中の具体的な文字列は例示であり、これらの文字列や数値には限定されない。
【符号の説明】
【0088】
10 地図画像投影装置、12 地図画像生成装置、14 全球測位衛星システム(GNSS)モジュール、16 プロジェクタ、18 慣性計測装置(IMU)、20 車両、22,22a,22b 地図画像、24 投影面、30 プロセッサ、32 記憶部、34 通信部、36 表示部、38 操作部、40 画面、42 レンズ、50 地図データ記憶部、52 プロジェクタ位置情報取得部、54 プロジェクタ向き情報取得部、56 光学系パラメータ情報取得部、58 地図データ取得部、60 画面座標特定部、62 地図画像生成部、64 地図画像出力部。

図1
図2
図3
図4
図5