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特許7280029ポリオレフィン系樹脂用帯電防止剤及びそれを含有するポリオレフィン系樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂用帯電防止剤及びそれを含有するポリオレフィン系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/16 20060101AFI20230516BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20230516BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20230516BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C09K3/16 103A
C09K3/16 103C
C09K3/16 110
C08L23/02
C08K5/17
C08K5/20
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018190517
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020059781
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000221797
【氏名又は名称】東邦化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 徹平
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 由記
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-203854(JP,A)
【文献】特開2000-143900(JP,A)
【文献】特開2003-082176(JP,A)
【文献】特開2006-206705(JP,A)
【文献】特開2008-106159(JP,A)
【文献】特開2002-146113(JP,A)
【文献】特開2016-215439(JP,A)
【文献】特開2017-160369(JP,A)
【文献】特開2014-201615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/16
C08L 23/02
C08K 5/17
C08K 5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)及び成分(B)を含有し、グリセリン脂肪酸エステルを実質的に含まない、ポリオレフィン系樹脂用帯電防止剤混合物。
(A):下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミンまたはポリオキシエチレンアルケニルアミンの脂肪酸モノエステル
【化1】
(式中、Rは炭素数8~22のアルキル基又はアルケニル基、Rは炭素数7~21のアルキル基又はアルケニル基を示し、m、nは、m+n=2~5となる整数を示す。)
及び、
(B):脂肪酸アミド
【請求項2】
成分(A)と成分(B)の質量比が、(A)/(B)=10/90~99/1である、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂用帯電防止剤混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂用帯電防止剤に関し、さらに詳しくは、初期の帯電防止性を損なうことなく、成形時において帯電防止剤およびその分解物による発煙が少なく、揮発物の堆積によるロール汚れを防止し、帯電防止性と防曇性に優れたポリオレフィン系樹脂組成物を得るのに好適な帯電防止剤、及び該帯電防止剤を含有するポリオレフィン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンフィルムは、透明性や防湿性、機械的強度等に優れ、また安価であることから、包装材料を始めとして多くの分野で広く使用されている。しかし、電気抵抗率が高く帯電し易いため、フィルムの表面に静電気に起因する埃や塵が付着して、包装材料などの価値を低下させるといった問題が起こりやすい。
【0003】
上記の問題を解決するための方法の一つとして、ポリオレフィンフィルムに帯電防止剤を添加し、これらの帯電防止剤をポリオレフィンフィルム表面にブリードさせることにより、フィルム表面に帯電防止性を付与する方法が用いられてきた。例えば二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム用の帯電防止剤としては、従来グリセリン脂肪酸エステルと脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルが併用されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、グリセリン脂肪酸エステルと脂肪族ジエタノールアミン脂肪酸エステルは配合の加熱溶融時、或いはマスターバッチやフィルム等の成型加工時の熱により容易にエステル交換反応が進行し、グリセリン脂肪酸エステルからグリセリンが遊離する。遊離物は成型加工時の熱により発煙し、更に押出機のダイスやロール、或いはテンター内等に堆積してフィルムに付着し、品質不良の原因となる。
【0005】
これらの問題点を改善するため、ジグリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルを主成分とする帯電防止剤が提案されている(特許文献2、3参照)。しかし、それらはグリセリン脂肪酸エステルと比べてフィルムの表面に移行しにくく、帯電防止効果の即効性が劣るため、グリセリン脂肪酸エステルを一定量併用する必要がある。
また、経時的に帯電防止剤の組成変化が起こり、帯電防止効果の持続性や防曇性が損なわれるという問題もあった。
【0006】
したがって、成形加工時までの遊離物がほとんどない帯電防止剤を開発し、初期の帯電防止性を損なうことなく、堆積物による成形不良を低減したポリオレフィン系樹脂組成物が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特公昭60-57461号公報
【文献】特開平9-3273号公報
【文献】特開2002-47485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術における問題を解決することを目的とするものであって、成形後初期の帯電防止性を損なうことなく、成形加工時において発煙がほとんど生じない帯電防止剤を開発し、その帯電防止剤を用いて、防曇性にも優れたポリオレフィン系樹脂組成物を提供することを目的としている。
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ポリオレフィン系樹脂にポリオキシエチレンアルキルアミンまたはポリオキシエチレンアルケニルアミンの脂肪酸モノエステルと脂肪酸アミドを配合することにより、成形時の発煙がなく、成形直後から帯電防止性に優れるポリオレフィン系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に示すものである。
[1]以下の成分(A)及び成分(B)からなるポリオレフィン系樹脂用帯電防止剤。
(A):下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミンまたはポリオキシエチレンアルケニルアミンの脂肪酸モノエステル
【化1】
(式中、Rは炭素数8~22のアルキル基又はアルケニル基、Rは炭素数7~21のアルキル基又はアルケニル基を示し、m、nは、m+n=2~5となる整数を示す。)
及び、
(B):脂肪酸アミド
[2]成分(A)と成分(B)の質量比が、(A)/(B)=10/90~99/1である、[1]に記載のポリオレフィン系樹脂用帯電防止剤。
[3]グリセリン脂肪酸エステルを含まない、[1]又は[2]に記載のポリオレフィン系樹脂用帯電防止剤。
[4]ポリオレフィン系樹脂と、[1]又は[2]に記載の帯電防止剤を含有する、ポリオレフィン系樹脂組成物。
[5]ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、請求項1又は2に記載の帯電防止剤を0.1~1.5質量部含有する、ポリオレフィン系樹脂組成物。
[6][4]又は[5]に記載のポリオレフィン系樹脂組成物からなるフィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の帯電防止剤は、これを含有するポリオレフィン系樹脂組成物の成形加工時において発煙がほとんど生じず、かつ、グリセリン脂肪酸エステルを用いなくても成形直後から優れた帯電防止効果を発揮し、また優れた防曇性を付与することもできるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリオレフィン系樹脂用帯電防止剤は、以下の成分(A)及び成分(B)を含有する。
(A):下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミンまたはポリオキシエチレンアルケニルアミンの脂肪酸モノエステル(以下、「アミンエステル化合物(A)」とも言う。)、
【化2】
(式中、Rは炭素数8~22のアルキル基又はアルケニル基、Rは炭素数7~21のアルキル基又はアルケニル基を示し、m、nは、m+n=2~5となる整数を示す。)
及び、
(B):脂肪酸アミド
ポリオレフィン系樹脂に本発明の帯電防止剤を配合することにより、成形時の発煙がなく、成形直後から帯電防止性に優れるポリオレフィン系樹脂組成物が得られる。このような効果が得られる理由の詳細は不明であるが、帯電防止効果の高いアミンエステル化合物(A)のフィルム表面への移行を脂肪酸エステル(B)が促進する効果があるためと推定される。
【0013】
<アミンエステル化合物(A)>
本発明に用いられるアミンエステル化合物(A)は、ポリオキシエチレンアルキルアミンまたはポリオキシエチレンアルケニルアミンの脂肪酸モノエステルである。
ポリオキシエチレンアルキルアミンまたはポリオキシエチレンアルケニルアミンとしては、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンミリスチルアミン、ポリオキシエチレンパルミチルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミンが挙げられる。
中でも、良好な帯電防止効果を得る観点から、一般式(1)中のm、nが、m+n=2~3のアミンエステル化合物が好ましく、m+n=2のアミンエステル化合物、具体的にはラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミンがより好ましく、特にステアリルジエタノールアミンが好ましい。
脂肪酸としては、炭素数8~22の脂肪酸、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸が挙げられる。
【0014】
アミンエステル化合物(A)の具体例としては、例えば、ラウリルジエタノールアミンモノステアレート、ミリスチルジエタノールアミンモノオレエート、パルミチルジエタノールアミンモノステアレート、ステアリルジエタノールアミンモノラウレート、ステアリルジエタノールアミンモノステアレート、ステアリルジエタノールアミンモノオレート、ステアリルジエタノールアミンモノベヘネート、オレイルジエタノールアミンモノステアレート等が挙げられる。これらのアミンエステル化合物(A)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
アミンエステル化合物(A)の製造方法は特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンアルキルアミンまたはポリオキシエチレンアルケニルアミン1モルに対し通常0.8モル~1.5モルにて仕込んだ脂肪酸とを、190~230℃の温度で脱水反応することによりエステル化する方法、又は、脂肪酸メチルエステルとエステル交換反応による方法などで製造することができる。なお、アミンエステル化合物(A)には、本発明の目的を損なわない範囲で、未反応のポリオキシエチレンアルキルアミンまたはポリオキシエチレンアルケニルアミンや、ジエステル化物が含まれていてもよい。
【0016】
<脂肪酸アミド(B)>
脂肪酸アミド(B)としては、例えば、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オキシステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リノール酸アミド、リシノール酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアロベヘンアミド、エチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられる。これらの脂肪酸アミド(B)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
本発明の帯電防止剤において、アミンエステル化合物(A)と脂肪酸アミド(B)の質量比は、成形直後からポリオレフィン系樹脂組成物に優れた帯電防止性を付与できる観点から、(A)/(B)=10/90~99/1が好ましく、30/70~90/10がより好ましく、50/50~80/20が特に好ましい。
【0018】
<その他の成分>
本発明の帯電防止剤は、本発明の目的を損なわない範囲で、アミンエステル化合物(A)、脂肪酸アミド(B)以外の成分を含有していてもよい。例えば、アミンエステル化合物(A)の未反応原料として残存するポリオキシエチレンアルキルアミンやポリオキシエチレンアルケニルアミン、アミンエステル化合物(A)の合成時に副生する脂肪酸ジエステル、多価アルコール脂肪酸エステルやアルキルジエタノールアミン、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、その他公知の帯電防止剤が挙げられる。なお、ジグリセリン脂肪酸エステルを併用する場合、その不純物としてグリセリン脂肪酸エステルが含まれることがあるが、本発明の目的に鑑み、その含有量は本発明の帯電防止剤の全量中1質量%以下であることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0019】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物に使用するポリオレフィン系樹脂は、特に限定されず、公知のものが用いられる。例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィンの単独重合体、前記α-オレフィン同士の共重合体、前記α-オレフィンと共重合可能なα-オレフィン以外の単量体とα-オレフィンとの共重合体、及びこれらの混合物等である。
具体的には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体、エチレン・ブテン-1共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン-1共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体を金属イオンにより架橋したアイオノマー、ポリブテン-1、ブテン・エチレン共重合体が挙げられる。これら単独または2種類以上を混合して用いてもよい。
前記α-オレフィンと共重合可能なα-オレフィン以外の単量体としては、酢酸ビニル、マレイン酸、ビニルアルコール、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等を挙げることが出来る。
【0020】
ポリオレフィン系樹脂組成物に含有される本発明の帯電防止剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂組成物に対し優れた帯電防止効果を付与する観点から、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、0.1~1.5質量部の範囲であることが好ましい。界面活性剤組成物の含有量の好ましい範囲は、0.5~1.5質量部である。この範囲内とすると、特に優れた帯電防止性を提供することができる。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂組成物は、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、一軸押出機及び多軸押出機などの公知の混合機又は押出機を用いてポリオレフィン樹脂とアミンエステル化合物(A)と脂肪酸アミド(B)とを加熱混練する等により得ることができる。(A)と(B)は、それぞれ別々にポリオレフィン樹脂に添加してもよいが、予め混合してからポリオレフィン樹脂に添加した方が早期に帯電防止効果が得られやすくなるため好ましい。ポリオレフィン樹脂の量に対し添加する(A)と(B)の量が少ないと、これらが樹脂中で均一に分散され難くなる。このため、予め高濃度の(A)及び/又は(B)を含むマスターバッチを作製し、これを帯電防止剤を含まないポリオレフィン樹脂と混練して所定含有量とするマスターバッチ法を採用することが好ましい。
【0022】
前記ポリオレフィン系樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で通常ポリオレフィン系樹脂組成物に用いられる各種添加剤を添加することができる。各種添加剤としては、例えば、防曇剤、酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、安定剤、スリップ剤、粘着性付与剤、アンチブロッキング剤などが挙げられる。
【0023】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を成形してなるフィルムも本発明の形態の一つである。ポリオレフィン系フィルムの製造方法としては、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法等が例示できるが、中でも、Tダイを用いて溶融混練して押し出すTダイ法が好ましい。Tダイ法の製法例としては、上記ポリオレフィン系樹脂組成物を押出機ホッパーに供給し、押出機を例えばシリンダー温度180~240℃、Tダイ温度200~230℃に加熱し、溶融混練して押し出し、20~40℃に制御された冷却ロールで冷却し、厚さ100~500μmの未延伸シートを得る。フィルムに強度やその他の機能を付与する目的に共押出し法や、他のフィルムなどのラミネーションによる多層化もできる。
【0024】
未延伸シートの二軸延伸方法としては、テンター方式による同時二軸延伸法、ロールとテンターによる逐次二軸延伸法のいずれでもよい。同時二軸延伸の代表例としては、上述の如く得られた未延伸シートを予熱・延伸温度70~90℃、熱固定温度100~150℃のテンターにて面倍率9~16倍に延伸しフィルムを得る。また、逐次二軸延伸の代表例としては、未延伸シートを駆動ロールの回転速度比によって縦方向にロール表面温度50~80℃、延伸倍率1.5~5倍で延伸し、引き続き連続して横方向に延伸温度50~90℃、延伸倍率1.5~8倍、熱固定温度100~150℃の条件下で延伸しフィルムを得る。
【0025】
本発明に係るポリオレフィン系フィルムの厚みは特に制限なく、用途、要求性能、価格等によって適宜設定すればよい。一般的には、10~100μm程度の厚さを例示できる。さらに、フィルムの印刷性、ラミネート性、コーティング適性等を向上させる目的で、表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、酸処理等が挙げられ、いずれの方法も用いることができる。これらの中では、簡便さの点からコロナ放電処理が最も好ましいものとして例示できる。
【0026】
また、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、シート、ボトル、フィラメント、射出成形品など、あらゆる成形体に成形することもできる。
【実施例
【0027】
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に指定のない限り、配合量は質量部で示す。
【0028】
各評価項目の測定及び評価は、下記の方法により行った。
(1)フィルム成形時の発煙
フィルム成形時の製膜機の押し出し機部分、テンター出口部分及び排気口からの発煙状態を目視により観察した。
〇・・・発煙をほぼ確認できない
×・・・発煙を確認

(2)帯電防止性
製膜直後、及び45℃で24時間エージングしたフィルムを25℃、50%RH雰囲気下にて、高抵抗絶縁試験機(株式会社三菱ケミカルアナリテック社製、ハイレスタUP MCP-HT450)を用い、フィルムを主電極と対向電極との間に挟み、JIS-K-6911に従って印加電圧500Vにて表面固有抵抗値を測定した。

(3)防曇性
200mlビーカーに水を100ml入れ、前記(2)においてエージングした後のフィルムをビーカーの上において輪ゴムで固定し、恒温機(5℃、20℃)にて30分保管する。
その後、ビーカーの下に文字を書いた紙を置き、フィルム表面と下に置いた文字がどの程度見えるかを観察した。
〇・・・フィルム表面は均一に濡れており、下の文字が明確に見える。
△・・・フィルム表面は不均一に濡れており、下の文字が滲んで見える。
×・・・フィルム表面は全体的に細かい水滴がついており、文字が見えない。

(4)帯電防止剤混合物の相分離
200ml瓶に、表1-1、表1-2に記載の帯電防止剤の混合物を入れ、80℃で24時間保管した後、外観確認を行った。
無・・・相分離していない。
有・・・相分離している。
【0029】
実施例1
メルトフローレートが3.0g/10分のホモポリプロピレン樹脂100部に対し、予め混合したステアリルジエタノールアミンモノラウレート0.95部及びステアリン酸アミド0.05部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合した後、ペレタイザーを備えた二軸押出機を用いて溶融混練し、ペレット状のポリプロピレン樹脂組成物を得た。
【0030】
得られたポリプロピレン樹脂組成物からT-ダイ成形後、逐次二軸延伸によりフィルム成形し、厚み30μmのフィルムを得た。得られたフィルムについて、表面固有抵抗値および防曇性を上記方法に従って測定、評価した。これらの結果を表1-1に示す。
【0031】
実施例2~11
上記実施例1において、帯電防止剤の種類および配合量を、それぞれ表1-1に記載のとおりとしたほかは、実施例1と同様にしてフィルム製造し、それぞれ評価した。その結果を表1-1に示す。
【0032】
比較例1
メルトフローレートが3.0g/10分のホモポリプロピレン樹脂100部に対し、予め混合したステアリルジエタノールアミンモノステアレート0.7部及びグリセリンモノステアレート0.3部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合した後、ペレタイザーを備えた二軸押出機を用いて溶融混練し、ペレット状のポリプロピレン樹脂組成物を得た。
【0033】
得られたポリプロピレン樹脂組成物からT-ダイ成形後、逐次二軸延伸によりフィルム成形し、厚み30μmのフィルムを得た。得られたフィルムについて、表面固有抵抗値および防曇性を上記方法に従って測定、評価した。これらの結果を表1-2に示す。
【0034】
比較例2、3
上記比較例1において、帯電防止剤の種類および配合量を、それぞれ表1-2に記載のとおりとしたほかは、比較例1と同様にしてフィルム製造し、それぞれ評価した。その結果を表1-2に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1-1に示すように、本発明の帯電防止剤を配合した実施例1~11のポリプロピレン樹脂組成物は、いずれもフィルム成形時の発煙がほとんどなく、製膜直後の帯電防止性に優れるものであった。また、防曇性も良好であった。
これに対し、表1-2に示すように、グリセリン脂肪酸エステルを併用した比較例1と2のポリプロピレン樹脂組成物は、フィルム成形時に発煙した。また、帯電防止剤混合物の相分離が認められ、分離物がグリセリンであることを確認した。一方、アミンエステル化合物(A)のみを添加した比較例3のポリプロピレン樹脂組成物は、フィルム成形時の発煙はないものの、製膜直後の帯電防止性に劣るものであった。