(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】機能性消化管障害予防又は改善用組成物、並びに、該機能性消化管障害予防又は改善用組成物を用いた医薬品組成物及び飲食品組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/745 20150101AFI20230516BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230516BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20230516BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20230516BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20230516BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20230516BHJP
A23C 9/123 20060101ALI20230516BHJP
A61P 25/22 20060101ALN20230516BHJP
A61P 25/20 20060101ALN20230516BHJP
【FI】
A61K35/745
A61P1/00
A61P1/10
A61P1/12
A61P1/14
A23L33/135
A23C9/123
A61P25/22
A61P25/20
(21)【出願番号】P 2019045011
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2018062467
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)「日本農芸化学会2018年度大会(名古屋)」の「Bifidobacterium breve A1による軽度認知障害の方の認知機能に対する改善作用の可能性~単群前後比較試験~」についての一般講演の大会プログラム集 2018年2月25日公開 (2)Beneficial Microbes,2018;9(6)の第843頁~第853頁 2018年9月10日公開 (3) The Journal of Prevention of Alzheimer’s Disease JPAD Short Communication, Vol.3の第1頁~第6頁 2018年8月27日公開 (4)The Journal of Affective Disorder, Vol.245の第377頁~第385頁 2018年11月5日公開
【微生物の受託番号】IPOD FERM BP-11175
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】村田 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】南 淳一
(72)【発明者】
【氏名】前畑 葉月
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/209156(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/039328(WO,A1)
【文献】Nutrition Journal,2011年,Vol.10:19,pp.1-5,DOI:10.1186/1475-2891-10-19
【文献】The Microbiota in Gastrointestinal Pathophysiology,2017年,pp.135-137,DOI:10.1016/B978-0-12-804024-9.00015-X
【文献】Neurogastroenterology & Motility,2014年,Vol.26, No.11,pp.1615-1627
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L 33/135
A23C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を有効成分と
し、ストレス及び/又は不安症状を緩和する、機能性消化管障害予防又は改善用の組成物。
【請求項2】
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を有効成分と
し、怒り、混乱、緊張、又は疲労を改善又は予防、或いは、活気の改善を伴う、機能性消化管障害予防又は改善用の組成物。
【請求項3】
便秘又は頻便の予防又は改善、排便回数の調節、便性の改善、腹痛の予防又は改善、膨満感の予防又は改善、或いは、腹部不快感の予防又は改善する、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項4】
医薬品組成物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
1包装単位あたり、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を10
6~10
12cfu含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
飲食品組成物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
1食あたり、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を10
6~10
12cfu含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
発酵乳である、請求項6又は7に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、機能性消化管障害予防又は改善用組成物、並びに、該機能性消化管障害予防又は改善用組成物を用いた医薬品組成物及び飲食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性消化管障害(FGIDs:Functional Gastrointestinal Disorders)とは、胸部から腹部において不快な自覚症状が高頻度に生じるものの、症状の原因となる異常を発見できない疾患を指し、近年、その患者は増加傾向にある。その原因は、消化管に対する酸や食物の刺激、内臓知覚過敏、消化管運動異常、心理的・社会的ストレス、炎症と免疫など複数の要因が関わっていると考えられており、十分に解明されていない。
【0003】
不安・ストレスの関連する機能性消化管障害(FGIDs)として、過敏性腸症候群(IrritableBowel Syndrome;IBS)や機能性ディスペプシア(Functional Dispepcia;FD)、機能性消化不良などが知られる。IBSは、腹部の不快感や腹痛、腹部膨満をともなう排便習慣の変化に始まり、下痢及び/又は便秘が慢性的にくり返される症状を特徴とする。機能性ディスペプシアは胃と十二指腸の機能障害であるのに対し、過敏性腸症候群は主に大腸の機能障害が原因で起こる。
【0004】
一般のFGIDsの有病率は高く、IBSで10~15%、FDでは10~44%となっている。ストレスが誘因とされるFGIDsの発生は労働生産性を著しく低下させ、経済的負担となることから大きな社会問題である。
【0005】
機能性消化管障害の病態については未だ不明な点も多いが、機能性ディスペプシアに関しては、遺伝的素因、H. pylori 感染、心理社会的因子、感染、食事、胃酸などの要因があり、その症状発現メカニズムとして胃底部の適応性弛緩不全、胃排出能障害、胃・十二指腸知覚過敏が挙げられる。また過敏性腸症候群についても、多くの研究から、ストレス、腸内細菌、粘膜炎症、神経伝達物質、内分泌物質、心理的異常、遺伝の関与が指摘されている(大島忠之、三輪 洋人、日職災医誌,63:270─275,2015)。我が国の検診受診者の解析では、IBSでQOLが低下していることが示されている。また、IBSに関連した痛みが治療により改善されるとQOLが向上することも明らかとなっている。
【0006】
これまで、薬物治療として、FDでは、制酸薬、プロスタグランジン誘導体、消化管粘膜保護薬などが試みられているが、明確な有効性が示された治療薬は存在しない。IBSについても、精神的ストレスを緩和させる精神安定剤や抗不安剤、睡眠薬、体内神経伝達物質調節剤(5-HT4刺激薬、5-HT3拮抗薬、ドパミンD2遮断薬、抗コリン薬)などの化学合成薬剤の使用も提示されているが効果は限定的であり、いずれも重篤な副作用や習慣性の面から日常的あるいは長期的な使用に適さないという問題があった。精神的ストレスへの対処方法として、メンタルトレーニングやマインドコントロール、認知行動療法などの対処法も試みられているが、その有効性は限定されている。
【0007】
また、症状も常に現れているわけではなく、これらのストレスが負荷されたときに機能障害が出現し、個々のストレス応答性によって症状の強さや頻度が変化する。更に、異なる消化管部位の症状を合わせ持ったり、時間の経過とともに症状が移り変わったりすることを繰り返し、QOL(生活の質)の低下、仕事や日常生活における生産性の低下、医療費の増大等が問題になっている。
【0008】
このように多種多様で複雑な症状・病態を示す機能性消化管障害は、治療も一筋縄ではいかず、生活習慣の改善を行いつつ、その時の症状に応じた薬剤を投薬する等、所謂、対症療法が行われていた。
【0009】
また、近年では、機能性消化管障害の予防や治療方法が提案されている。例えば、特許文献1では、リファキシミンを有効成分として含有する機能性消化管障害の予防及び/又は治療剤が開示されている。
【0010】
また、特許文献2では、ラクトバチルス属乳酸菌、好ましくは、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)を用いることにより、ピロリ菌の陽性者及び陰性者用の両方に対して、機能性消化管障害を予防及び/又は改善し得る技術が開示されている。
特許文献3では、ラクトバチラス・ガセリCP2305株の殺菌体を有効成分とするストレス性腸障害の抑制効果が開示されている。
特許文献4では、ビフィドバクテリウム・ロンガムNCC3001株を含む機能性胃腸(GI)障害の治療及び/又は予防用組成物が開示されている。
非特許文献1では、Bifidobacterium bifidum YIT 10347株を含む発酵乳によるFGID患者の胃腸症状(腹痛、下痢、便秘、消化不良)と心理的ストレスを改善する効果が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2018-184481号公報
【文献】WO2010/035751
【文献】特開2014-101288号公報
【文献】特開2016-74682号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】Y Urita et al. Biosci Microbiota Food Health. 2015; 34(2): 37-44.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述の通り、機能性消化管障害の予防や治療方法について、様々な提案がなされているが、特許文献1のように、合成化合物等を用いる方法では、副作用の問題が懸念される。また、特許文献2のように、プロバイオティクスの菌体あるいは発酵産物を摂取することによる機能性消化管障害の予防や治療方法は既にいくつか報告されているが、プロバイティクスは菌株ごとに異なった生理作用を示すことが知られており、上記の報告においても一致した結果は得られていない。また、不安や精神的症状と消化器症状の両方を改善できるプロバイオティクスは限定されていた。
【0014】
そこで、本技術では、新たな機能性消化管障害予防又は改善用組成物を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本技術では、まず、ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)を有効成分とする機能性消化管障害予防又は改善用の組成物を提供する。
本技術に係る組成物は、便秘又は頻便の予防又は改善、排便回数の調節、便性の改善、腹痛の予防又は改善、膨満感の予防又は改善、或いは、腹部不快感の予防又は改善することができる。
また、これに加えて、本技術に係る組成物は、ストレス及び/又は不安症状を緩和することができる。具体的には、怒り、混乱、緊張、又は疲労を改善又は予防、或いは、活気の改善にも効果を発揮することができる。
【0016】
本技術に係る組成物は、医薬品組成物や飲食品組成物に用いることができる。
本技術に係る組成物を、医薬品組成物や飲食品組成物に用いる場合、1包装又は1食あたり、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を106~1012cfu含むようにすることができる。
また、食品組成物としては、発酵乳や乳児用調製粉乳の形態とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本技術によれば、新たな機能性消化管障害予防又は改善用組成物を提供できる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実験例1おける、摂取前の排便回数が週4回以下の被験者についての排便回数の結果を示す図面代用グラフである。
【
図2】実験例1おける、摂取前の排便回数が週4回以下の被験者についての排便回数の変化の結果を示す図面代用グラフである。
【
図3】実験例1おける、摂取前の排便回数が週4回以下の被験者についての便性状の結果を示す図面代用グラフである。
【
図4】実験例1おける、摂取前の排便回数が週10回以上の被験者についての排便回数の結果を示す図面代用グラフである。
【
図5】実験例1おける、摂取前の排便回数が週10回以上の被験者についての排便回数の変化の結果を示す図面代用グラフである。
【
図6】実験例1おける、摂取前の排便回数が週10回以上の被験者についての便性状の結果を示す図面代用グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本技術を実施するための好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0020】
1.機能性消化管障害予防又は改善用組成物
本技術の機能性消化管障害予防又は改善用組成物は、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を有効成分とすることを特徴とする。
【0021】
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274は、独立行政法人産業技術総合研究所
特許生物寄託センター(日本国 〒305-8566 茨城県つくば市東1-1-1 中央第6(現IPOD 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(NITE-IPOD):日本国 〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)))に、2009年8月25日より、IPOD FERM BP-11175の受託番号で寄託されており、上記保存機関より一般に入手可能である。
【0022】
なお、上記例示した細菌名には、当該細菌名で所定の機関に寄託や登録がなされている寄託株に限られず、それと実質的に同等な株(「派生株」または「誘導株」ともいう)も包含される。すなわち、「ビフィドバクテリウム・ブレーベ MCC1274(FERM BP-11175)」には、MCC1274(FERM BP-11175)の寄託番号で上記寄託機関に寄託されている株そのものに限られず、それと実質的に同等な株も包含される。
菌株について、「上記寄託株と実質的に同等の株」とは、上記寄託株と同一の種に属し、本発明の効果である睡眠促進効果は得られる株を意味する。上記寄託株と実質的に同等の株は、例えば、当該寄託株を親株とする派生株であってよい。派生株としては、寄託株から育種された株や寄託株から自然に生じた株が挙げられる。
【0023】
実質的に同一の菌株、派生株は下記のような株が挙げられる。
(1)RAPD法(Randomly Amplified Polymorphic DNA)、PFGE法(Pulsed-field gel electrophoresis)法によりビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274と同一の菌株と判定される菌株(Probiotics in food/Health and nutritional properties and guidelines for evaluation 85 Page43に記載)
(2)ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274由来の遺伝子のみ保有し、外来由来の遺伝子を持たず、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274とのDNAの同一性が95%以上である菌株
(3)ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274から育種された株(遺伝子工学的改変、突然変異、自然突然変異で育種された株を含む)で、MCC1274と形質を有する株
【0024】
ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)とは、ビフィドバクテリウム属に属する菌種の一つである。ビフィドバクテリウム・ブレーベは、主に乳幼児の大腸内に多く住みついており、ビフィドバクテリウム属に属する菌種の中でもビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(Bifidobacterium longum subsp. infantis)等とともに、乳幼児型のビフィドバクテリウム属細菌として知られている。
【0025】
本技術の機能性消化管障害予防又は改善用組成物は、その有効成分が、主に乳幼児の大腸内に多く住みついている、ビフィドバクテリウム・ブレーベであることから、安全性に優れ、長期間、連続的に投与しても副作用を心配する必要性も少ないため、非常に有用である。さらに、他の薬剤との併用においても安全性が高い。
【0026】
ここで、本明細書における「緩和」とは、症状又は疾患の好転、症状又は疾患の悪化の防止若しくは遅延、症状又は疾患の進行の逆転、防止若しくは遅延、又は症状又は疾患の治療等を意味する。さらに、本明細書における「緩和」とは、予防の意味をも包含する。「予防」とは、適用対象における症状又は疾患の発症の防止若しくは発症の遅延、又は適用対象における症状又は疾患の発症の危険性を低下させる等を意味する。
【0027】
本技術の機能性消化管障害予防又は改善用組成物は、非びらん性胃食道逆流症(NERD:Non-Erosive Reflux Disease)、機能性ディスペプシア(機能性胃腸症(FD:Functional Dyspepsia))、過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)、機能性便秘、機能性便秘、機能性下痢、機能性腹痛、機能性腹部膨満、心窩部痛症候群(EPS:Epigastric Pain Syndrome)、食後愁訴症候群(PDS:Postprandial Distress Syndrome)、又はそれらの組み合わせからなる群より選択される機能性消化管障害に効果を有する。具体的な症状としては、特に、便秘又は頻便の予防又は改善、排便回数の調節、便性の改善、腹痛の予防又は改善、膨満感の予防又は改善、或いは、腹部不快感の予防又は改善等に効果を有する。
【0028】
<疾患の定義>
本技術において、機能性消化管障害は、排便回数や便性状、上腹部症状や腹痛、腹部不快感などをある一定期間において、あるいは経時的に検査することにより評価できる。
例えば、機能性消化管障害は、IBS、FD、EPS、PDSの国際的な診断基準として、下記のRomeIV基準を用いることができる。
【0029】
[過敏性腸症候群(IBS)の診断基準]
最近3ヶ月間、月に4日以上腹痛が繰り返し起こり、次の項目の2つ以上があること。
1.排便と症状が関連する。
2.排便頻度の変化を伴う。
3.便性状の変化を伴う。
期間としては6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月間は上記基準をみたすこと。
【0030】
[過敏性腸症候群(IBS)の分類]
1.便秘型IBS(IBS-C):硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便(泥状便)または水様便が25%未満のもの
2.下痢型IBS(IBS-D):軟便(泥状便)または水様便が25%以上あり、硬便または兎糞状便が25%未満のもの
3.混合型IBS(IBS-M):硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便(泥状便)または水様便も25%以上のもの
4.分類不能型IBS:便性状異常の基準がIBS-C,D,Mのいずれも満たさないもの
【0031】
[機能性便秘の分類]
以下の6項目のうち2項目以上を満たす。上述のIBSの診断基準を満たさない3ヵ月以上の持続的または反復性の機能性腸疾患である。腹痛のない便秘を機能性便秘という。
1.排便の4分の1超の頻度で、強くいきむ必要がある。
2.排便の4分の1超の頻度で、兎糞状便または硬便である。
3.排便の4分の1超の頻度で、残便感を感じる。
4.排便の4分の1超の頻度で、直腸肛門の閉塞感や排便困難感がある。
5.排便の4分の1超の頻度で、用手的な排便介助が必要である
6.自発的な排便回数が、週に3回未満である。
【0032】
[機能性下痢の分類]
機能性下痢は、排便の4分の1超の頻度で軟便(泥状便)や水様便を特徴とする3ヵ月以上の持続的または反復性の症候群であり、腹痛、腹部不快感がないことを特徴とし、上述のIBSの診断基準を満たさない機能性腸疾患である。
【0033】
[機能性ディスペプシア(FD)の診断基準]
下記の症状のいずれかが診断の少なくとも6か月以上前に始まり、かつ直近の3か月間に上記症状がある。
1.つらいと感じる心窩部痛
2.つらいと感じる心窩部灼熱感
3.つらいと感じる食後のもたれ感
4.つらいと感じる早期飽満感
及び症状を説明しうる器質的疾患はない。
【0034】
[食後愁訴症候群(PDS)の診断基準]
少なくとも週に3日、次の1-2のいずれか1つか2つを満たす。
1.つらいと感じる食後のもたれ感
2.つらいと感じる早期飽満感
【0035】
[心窩部痛症候群(EPS)の診断基準]
少なくとも週に1日、次の1-2のいずれか1つか2つを満たす。
1.つらいと感じる心窩部痛
2.つらいと感じる心窩部灼熱感
【0036】
また、機能性消化管障害は、生活上のストレスなどの心理的・社会的要因と関係があり、本技術の機能性消化管障害予防又は改善用組成物は、前記の各種効果に伴って、ストレス及び又は不安障害を緩和させる効果を発揮することもできる。機能性消化管障害はストレス等心理的異常に誘発されることが多く、不安障害、うつ病を併発していることも多い。本技術の機能性消化管障害予防又は改善用組成物の投与により、ストレス及び/又は不安障害も緩和される。具体的には、怒り、混乱、緊張、又は疲労を改善又は予防、或いは、活気の改善に効果を発揮することもできる。
【0037】
なお、本技術において、ストレスは、POMS(Profile of Mood States)又はPOMS2(Profile of Mood States 2nd Edition)により評価することができる。POMS及びPOMS2は、マルチ-ヘルス システムズ インコーポレイテッド(Multi-Health Systems Inc.)の登録商標である。なお、これらの心理検査には、成人用や青少年用のように対象となる母集団により検査方法が異なるものや、全項目版や短縮版のように検査時の質問項目数が異なるものがあるが、対象の状況に応じて検査方法や質問項目数を適宜選択すればよい。
【0038】
具体的には、例えば、POMSでは、「怒り-敵意(Anger-Hostility; AH)」、「混乱(Confusion; C)」、「抑うつ-落ち込み(Depression-Dejection; DD)」、「疲労(Fatigue; F)」、「緊張-不安(Tension-Anxiety; TA)」、「活気(Vigor; V)」、及び「総合的気分状態(Total Mood Disturbance; TMD)」の因子が測定される。
【0039】
POMS2では、「怒り-敵意(Anger-Hostility; AH)」、「混乱-当惑(Confusion-Bewilderment; CB)」、「抑うつ-落ち込み(Depression-Dejection; DD)」、「疲労-無気力(Fatigue-Inertia; FI)」、「緊張-不安(Tension-Anxiety; TA)」、「活気-活力(Vigor-Activity; VA)」、「友好(Friendliness; F)」、及び「総合的気分状態(Total Mood Disturbance; TMD)」の因子が測定される。
【0040】
本技術に係る機能性消化管障害予防又は改善用組成物の対象は、特に限定されず、ヒトを含む動物に適用することができる。また、その対象性別、対象年齢等も特に限定されないが、例えば、ヒトであれば、35才以上、好ましくは40才以上、より好ましくは45才以上の中高年以上に特に効果的に用いることができる。なお、機能性消化管障害は、小学生、中学生、高校生等の学童でも有しており、子供の腹痛を起こす主要な原因であり、学童期児童にも投与出来る。また、妊娠期、周産期、授乳期や生理前後における女性の下痢や便秘、腹痛といったお腹の症状の改善にも用いることができる。
投与対象としては、
(1)几帳面、真面目、責任感が強い、仕事熱心、正義感が強い、頼まれると断れない、人との争いを嫌う、人の思惑を常に気にする、などうつになりやすいとされる性格の人
(2)環境の変化に弱い人
(3)ストレスに関して感受性の高い人
(4)友人関係等、対人関係に悩んでいる人
に投与することが好ましい。
【0041】
本技術に係る機能性消化管障害予防又は改善用組成物は、年間を通していつでも用いることが可能であるが、特に、ストレスがかかりやすい秋から冬にかけての時期や、季節の変わり目等に、効果的に用いることができる。
【0042】
本技術に係る機能性消化管障害予防又は改善用組成物は、その有効成分であるビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)として、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を含む培養物を含有しても良い。
【0043】
本技術に用いられるビフィドバクテリウム・ブレーベを培養する培地としては、特に限定されず、ビフィドバクテリウム属に属する細菌の培養に、通常用いられる培地を用いることができる。
【0044】
すなわち、炭素源としては、例えば、グルコース、ガラクトース、ラクトース、アラビノース、マンノース、スクロース、デンプン、デンプン加水分解物、廃糖蜜等の糖類を資化性に応じて使用できる。窒素源としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩類や硝酸塩類を使用できる。また、無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄等を用いることができる。また、ペプトン、大豆粉、脱脂大豆粕、肉エキス、酵母エキス等の有機成分を用いてもよい。
【0045】
培養条件は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、培養温度は、通常25~50℃であり、35~42℃であることが好ましい。また、培養は嫌気条件下で行うことが好ましく、例えば、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら培養することができる。また、液体静置培養等の微好気条件下で培養してもよい。
【0046】
本技術に用いられるビフィドバクテリウム・ブレーベは、培養後、得られた培養物をそのまま用いてもよく、希釈又は濃縮して用いてもよく、培養物から回収した菌体を用いてもよい。
【0047】
本菌体は、培養後、得られた培養物をそのまま用いてもよく、希釈又は濃縮して用いてもよく、培養物から回収した菌体を用いてもよい。また、本発明の効果を損なわない限り、培養後に加熱、及び凍結乾燥等の種々の追加操作を行うことができる。また、本菌体は、生菌であっても死菌であってもよい。生菌の場合は、菌液凍結法、スプレードライ法、凍結乾燥法、オイルドロップ法で処理することが好ましい。死菌としては、加熱や凍結乾燥等により殺菌された死菌が挙げられる。その他の死菌体の調製法として、噴霧乾燥法(スプレードライ法)、レトルト殺菌法、凍結乾燥法、UHT殺菌法、加圧殺菌法、高圧蒸気滅菌法、乾熱滅菌法、流通蒸気消毒法、電磁波殺菌法、電子線滅菌法、高周波滅菌法、放射線滅菌法、紫外線殺菌法、酸化エチレンガス滅菌法、過酸化水素ガスプラズマ滅菌法、化学的殺菌法(アルコール殺菌法、ホルマリン固定法、電解水処理法)等が挙げられる。また、本菌体は、破砕物であってもよい。破砕物は、生菌を破砕したものでも死菌を破砕したものでもよく、破砕後に加熱や凍結乾燥等を施したものでもよい。また、破砕は、当技術分野で公知の方法及び機器を使用した、例えば、物理的破砕、酵素溶解処理、薬品処理、自己溶解処理などによる破砕を選択することができる。
物理的破砕は、菌体懸濁液の状態での処理、菌体粉末の状態での処理のいずれによってもよい。物理的破砕の例として、超音波ホモジナイザー、ホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル、ダイノミル、遊星ミル等を使用した撹拌による破砕、ジェットミル、フレンチプレス、細胞破砕機等を使用した圧力による破砕、フィルター濾過処理により菌体を損傷させることによる破砕を選択することができる。
酵素溶解処理としては、例えばリゾチームなどの酵素を用いて、乳酸菌菌体の細胞構造を破壊することができる。
薬品処理としては、ダイズリン脂質、グリセリン脂肪酸エステルなどの界面活性剤を使用して、乳酸菌菌体の細胞構造を破壊することができる。
自己溶解処理としては、一部の乳酸菌自身の酵素により乳酸菌菌体を溶解することができる。
なお、本発明においては、他の薬品や化合物を添加する必要がないため物理的破砕が好ましい。
【0048】
なお、本明細書における「培養物」は、培養上清をも含む概念である。
【0049】
本技術に係る機能性消化管障害予防又は改善用組成物は、前記有効成分のみからなるものであってもよく、前記有効成分と有効成分以外の任意成分とを配合した組成物であってもよい。
前記任意成分としては、特に限定されず、従来、医薬品に配合されている添加剤(例えば、後述する製剤担体など)を配合できる。
【0050】
2.本技術に係る機能性消化管障害予防又は改善用組成物の具体的形態
本技術に係る機能性消化管障害予防又は改善用組成物は、飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の形態で用いることができる。
【0051】
なお、本実施形態の用途は、治療目的使用であっても、非治療目的使用であってもよい。
「非治療目的」とは、医療行為、すなわち、治療による人体への処置行為を含まない概念である。例えば、健康増進、美容行為等が挙げられる。
「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転;疾患、症状又は状態の悪化防止、遅延;疾患又は症状の進行の逆転、防止又は遅延をいう。
「予防」とは、適用対象における疾患若しくは症状の発症の防止や遅延、又は適用対象の疾患若しくは症状の危険性の低下をいう。
【0052】
<飲食品>
本技術に係る機能性消化管障害予防又は改善用組成物は、公知の飲食品に添加して調製することもできるし、飲食品の原料中に混合して新たな飲食品を製造することもできる。
【0053】
本技術に係る機能性消化管障害予防又は改善用組成物を用いる飲食品は、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食等のほか、例えば、小麦粉製品、即席食品、農産加工品、水産加工品、畜産加工品、乳・乳製品、油脂類、基礎調味料、複合調味料・食品類、冷凍食品、菓子類、飲料、これら以外の市販品等が挙げられる。
【0054】
前記小麦粉製品としては、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等が挙げられる。
前記即席食品類としては、例えば、即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等が挙げられる。
前記農産加工品としては、例えば、農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等が挙げられる。
前記水産加工品としては、例えば、水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等が挙げられる。
前記畜産加工品としては、例えば、畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等が挙げられる。
前記乳・乳製品としては、例えば、ヨーグルト類等の発酵乳、加工乳、乳飲料、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、育児用調整粉乳、乳児用栄養補助食品、妊婦・授乳婦のママ用ミルク、その他の乳製品等が挙げられる。
前記油脂類としては、例えば、バター、マーガリン類、植物油等が挙げられる。
前記基礎調味料としては、例えば、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等が挙げられ、前記複合調味料・食品類として、調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等が挙げられる。
前記冷凍食品としては、例えば、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等が挙げられる。
前記菓子類としては、例えば、キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、その他の菓子等が挙げられる。
前記飲料としては、例えば、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等が挙げられる。
上記以外の市販食品としては、例えば、ベビーフード、ふりかけ、お茶潰けのり等が挙げられる。本発明の飲食品組成物は、通常の飲食品の原料に本菌体を添加することにより製造することができ、本菌体を添加すること以外は、通常の飲食品と同様にして製造することができる。本菌体の添加は、飲食品組成物の製造工程のいずれの段階で行ってもよい。また、添加した本菌体による発酵工程を経て、飲食品組成物が製造されてもよい。そのような飲食品組成物としては、乳酸菌飲料、及び発酵乳等が挙げられる。
【0055】
飲食品組成物の原料としては、通常の飲食品に用いられる原料を使用することができる。製造された飲食品組成物は、経口的に摂取することが可能である
【0056】
また、例えば、新生児や乳児に対し、搾乳された母乳に本菌体を添加して、経口摂取させたり、経鼻胃栄養チューブ等によって摂取させる方法を採用することも可能である。
【0057】
また、本発明の飲食品組成物には、本発明の効果を損なわない限り、公知の又は将来的に見出されるプロバイオティクス効果を有する成分又はプロバイオティクス効果を補助する成分を使用することができる。例えば、本発明の飲食品組成物は、ホエイタンパク質、カゼインタンパク質、大豆タンパク質、若しくはエンドウ豆タンパク質(ピープロテイン)等の各種タンパク質若しくはその混合物、分解物;ロイシン、バリン、イソロイシン若しくはグルタミン等のアミノ酸;ビタミンB6若しくはビタミンC等のビタミン類;クレアチン;クエン酸;フィッシュオイル;又は、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラクチュロース、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)等のオリゴ糖等の成分と、本菌体とを配合して製造することができる。本発明で使用出来るヒトミルクオリゴ糖としては、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、2’,3-ジフコシルラクトース、ラクト-N-トリオースII、ラクト-N-テトラオース、ラクト-N-ネオテトラオース、ラクト-N-フコペンタオースI、ラクト-N-ネオフコペンタオース、ラクト-N-フコペンタオースII、ラクト-N-フコペンタオースIII、ラクト-N-フコペンタオースV、ラクト-N-ネオフコペンタオースV、ラクト-N-ジフコヘキサオースI、ラクト-N-ジフコヘキサオースII、6’-ガラクトシルラクトース、3’-ガラクトシルラクトース、ラクト-N-ヘキサオースおよびラクト-N-ネオヘキサオース等の中性ヒトミルクオリゴ糖、3’-シアリルラクトース、6’-シアリルラクトース、3-フコシル-3’-シアリルラクトース、ジシアリル-ラクト-N-テトラオースなどの酸性ヒトミルクオリゴ糖が使用出来る。
【0058】
本技術に係る飲食品として、乳幼児用調製粉乳を挙げることが出来る。乳幼児用調製粉乳とは、0~12か月の乳児を対象とする乳児用調製粉乳、6~9か月以降の乳児および年少幼児(3歳まで)を対象とするフォローアップミルク、出生時の体重が2500g未満の新生児(低出生体重児)を対象とする低出生体重児用調製粉乳、牛乳アレルギーや乳糖不耐症等の病的状態を有する児の治療に用いられる各種治療用ミルクなどを指す。さらに、該組成物を保健機能食品や病者用食品に適用することができる。保健機能食品制度は、内外の動向、従来からの特定保健用食品制度との整合性を踏まえて、通常の食品のみならず錠剤、カプセル等の形状をした食品を対象として設けられたもので、特定保健用食品(個別許可型)と栄養機能食品(規格基準型)の2種類の類型からなる。
【0059】
本技術に係る飲食品として、妊娠期・授乳期の母親向けのママ用ミルク(調製粉乳)や栄養補助食品を挙げることができる。ママ用ミルクとは、妊娠・授乳期に必要な栄養をバランスよく配合したミルクなどを指す。
【0060】
本発明の調製粉乳は、具体的には、例えば、以下の方法により製造できる。
【0061】
すなわち、本発明は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌を含む菌体粉末と、プレバイオティクス及び/又は粉乳を混合し、機能性胃腸障害の予防または治療用の粉乳を得る、乳幼児用粉乳あるいはママ用ミルクの製造方法を提供する。
具体的には、例えば、下記工程(A)~(C)を含む、母乳成分増強用粉乳の製造方法を提供する:
(A)乳成分を含有する培地でビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌を培養し、培養物を得る工程;
(B)前記培養物を噴霧乾燥および/または凍結乾燥に供し、菌体粉末を得る工程;
(C)前記菌体粉末とプレバイオティクス及び/又は粉乳を混合し、機能性胃腸障害の予防または治療用の粉乳を得る工程。
【0062】
また、本発明の食品組成物は、具体的には、例えば、機能性胃腸障害の予防または治療用のサプリメントであってよい。機能性胃腸障害の予防または治療用のサプリメントは、例えば、以下の方法により製造できる。
【0063】
すなわち、本発明は、下記工程(A)および(B)を含む、機能性胃腸障害の予防または治療用のサプリメントの製造方法を提供する。
(A)プレバイオティクス、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌、および賦形剤を混合し、混合物を得る工程;
(B)前記混合物を打錠する工程。
【0064】
本技術に係る飲食品中のビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)の含有量は、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、特に、飲食品中のビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)の含有量を、飲食品の最終組成物に対し、1×103~1×1012cfu/g含有することがより好ましい。また、1日当たりの投与量は、少なくとも1×103cfu/日以上、より好ましくは1×106cfu/日以上、より好ましくは1×108cfu/日以上、より好ましくは2×1010cfu/日以上、又はそれ以上添加することが好ましい。本技術では、特に、1食あたり、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を106~1012cfu含むようにすることが好ましい。「cfu」は、colony forming unit(コロニー形成単位)を表す。本菌体が死菌の場合、cfu/gまたはcfu/mlは、個細胞/gまたは個細胞/mlと置き換えることができる。本菌体が破砕物の場合、破砕する前の菌数(個細胞/g)から重量換算で表示することが可能である。
【0065】
〔機能性表示飲食品〕
また、本技術で定義される飲食品等は、特定の用途(特に保健の用途)や機能が表示された飲食品として提供・販売されることも可能である。
「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本技術の「表示」行為に該当する。
【0066】
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0067】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0068】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、病者用食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品制度、機能性表示食品制度、これらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。より具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、機能性表示食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク低減表示等を挙げることができる。この中でも典型的な例としては、健康増進法施行規則(平成15年4月30日日本国厚生労働省令第86号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)、食品表示法(平成25年法律第70号)に定められた機能性表示食品としての表示及びこれらに類する表示である。
【0069】
なお、上述したような表示を行うために使用する文言は、機能性消化管障害予防又は改善等の文言のみに限られるわけではなく、それ以外の文言であっても、機能性消化管障害予防又は改善に関連する各種疾患や症状の予防、治療及び/又は改善の効果を表す文言であれば、本技術の範囲に包含されることは言うまでもない。そのような文言としては、例えば、「下痢や便秘を繰り返す方へ」「お腹に違和感がある方へ」「ストレスによりお腹が痛くなる方へ」等需要者に対して機能性消化管障害予防又は改善の効果を認識させるような種々の用途に基づく表示も可能である。
【0070】
<医薬品、医薬部外品>
本技術に係る機能性消化管障害予防又は改善用組成物は、公知の医薬品又は医薬部外品(以下、「医薬品等」ともいう)に添加して調製することもできるし、医薬品等の原料中に混合して新たな医薬品等を製造することもできる。
【0071】
本技術に係る機能性消化管障害予防又は改善用組成物を医薬品等に配合する場合、該医薬品等は、経口投与や非経口投与などの投与方法に応じて、適宜所望の剤形に製剤化することができる。その剤形は特に限定されないが、経口投与の場合、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、トローチ剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。非経口投与の場合、例えば、座剤、噴霧剤、吸入剤、軟膏剤、貼付剤、注射剤等に製剤化することができる。本技術では、経口投与の剤形に製剤化することが好ましい。
なお、製剤化は剤形に応じて、適宜、公知の方法により実施できる。
【0072】
製剤化に際しては、適宜製剤担体を配合する等して製剤化してもよい。また、本技術の機能性消化管障害予防又は改善用組成物のほか、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。更に、公知の又は将来的に見出される疾患や症状の予防、改善及び/又は治療の効果を有する成分を、適宜目的に応じて併用することも可能である。
【0073】
前記製剤担体としては、剤形に応じて、各種有機又は無機の担体を用いることができる。固形製剤の場合の担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0074】
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α-デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
【0075】
前記結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
【0076】
前記崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
【0077】
前記滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
【0078】
前記安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
【0079】
前記矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
なお、経口投与用の液剤の場合に使用する担体としては、水等の溶剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0080】
本技術に係る医薬品等中のビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)の含有量は、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、特に、医薬品等中のビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)の含有量を、医薬品等の最終組成物に対し、1×103~1×1012cfu/g含有することがより好ましい。また、1日当たりの投与量は、少なくとも1×103cfu/日以上、より好ましくは1×106cfu/日以上、より好ましくは1×108cfu/日以上、より好ましくは2×1010cfu/日以上、又はそれ以上であることが好ましい。本技術では、特に、1包装あたり、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を106~1012cfu含むようにすることが好ましい。
【0081】
<飼料>
本技術に係る機能性消化管障害予防又は改善用組成物は、公知の飼料に添加して調製することもできるし、飼料の原料中に混合して新たな飼料を製造することもできる。
【0082】
本技術に係る機能性消化管障害予防又は改善用組成物を飼料に配合する場合、飼料の原料としては、例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦等の穀類;ふすま、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;脱脂粉乳、ホエー、魚粉、骨粉等の動物性飼料類;ビール酵母等の酵母類;リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;アミノ酸類;糖類等が挙げられる。また、前記飼料の形態としては、例えば、愛玩動物用飼料(ペットフード等)、家畜飼料、養魚飼料等が挙げられる。
【0083】
本技術に係る飼料中のビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)の含有量は、本技術の効果を損なわない限り、体重等に応じて自由に設定することができる。本技術では、特に、飼料中のビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)の含有量を、飼料の最終組成物に対し、1×103~1×1012cfu/g含有することがより好ましい。また、1日当たりの投与量は、少なくとも1×103cfu/日以上、より好ましくは1×106cfu/日以上、より好ましくは1×108cfu/日以上、より好ましくは2×1010cfu/日以上、又はそれ以上であることが好ましい。
【0084】
本技術は、以下の構成を採用することも可能である。
[1]
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を有効成分とする、機能性消化管障害予防又は改善用の組成物。
[2]
便秘又は頻便の予防又は改善、排便回数の調節、便性の改善、腹痛の予防又は改善、膨満感の予防又は改善、或いは、腹部不快感の予防又は改善する、[1]の組成物。
[3]
ストレス及び/又は不安症状を緩和する、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]
怒り、混乱、緊張、又は疲労を改善又は予防、或いは、活気の改善を伴う、[1]から[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]
医薬品組成物である、[1]から[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]
1包装単位あたり、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を106~1012cfu含む、[5]に記載の組成物。
[7]
飲食品組成物である、[1]から[4]のいずれかに記載の組成物。
[8]
1食あたり、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を106~1012cfu含む、[7]の組成物。
[9]
発酵乳である、[7]又は[8]の組成物。
[10]
機能性消化管障害予防又は改善剤、機能性消化管障害予防又は改善用医薬、又は機能性消化管障害予防又は改善用飲食品へのビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)の使用。
[11]
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を対象に投与することを含む、機能性消化管障害予防又は改善方法。
[12]
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を脳機能が正常な対象に投与することを含む、機能性消化管障害予防又は改善方法。
[13]
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を35才以上のヒトに投与することを含む、機能性消化管障害予防又は改善方法。
[14]
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を秋から冬の時期に対象に投与することを含む、機能性消化管障害予防又は改善方法。
【実施例】
【0085】
以下、実施例に基づいて本技術をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0086】
[実験例1]
<試験試料の製造>
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274株(FERM BP-11175)を含む、または含まない発酵乳を下記の手順にて製造した。まず、乳原料、および必要に応じた水、その他の成分等を混合し、常法により均質化処理および加熱殺菌処理を行った。加熱殺菌された殺菌調乳液に、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274株(FERM BP-11175)の凍結乾燥菌末および乳酸菌スターターを添加(接種)し、所定の発酵温度に保持して発酵させ、pHが目標の値に達したら、形成されたカードを撹拌により破砕し、10℃以下に冷却して発酵乳を製造し、これを試験試料とした。
一方、同様の工程にて、殺菌調乳液に乳酸菌スターターのみを添加(接種)した発酵乳を製造し、これを対照試料とした。
試験試料と対照試料は、外観、色、味から見分けがつかない事を確認した。
【0087】
<被験者>
同意取得時の年齢が20歳以上65歳未満の健常者(BMI25以上30未満)を被験者として臨床試験に登録した。さらに、体組成測定、血液検査、医師による問診により、以下の(1)~(6)の除外基準に抵触しない者を140名選択し、被験者とした。
(1)重篤な疾患等の既往歴のある者
(2)生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症)の薬物治療を受けている者
(3)薬物アレルギーあるいは重篤な食物アレルギーがある者
(4)妊娠している者、試験期間中妊娠の意思がある者、授乳中の者
(5)ヘビースモーカー、多量飲酒者
(6)被験者背景、身体所見、問診などの結果から、試験責任医師または試験分担医師により被験者として不適当と判断された者
【0088】
具体的な被験者の背景因子を下記表1に示す。対象群と試験群の年齢に、有意差は認められなかった。
【0089】
【0090】
<試験方法>
ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を行った。2週間の前観察期間の後、被験者140名を70名ずつ、対照試料を摂取する群(以下「対照群」と称することがある。)と試験試料を摂取する群(以下、「試験群」と称することがある。)に割付けた。両群の被験者らは、試験試料又は対照試料を朝、昼、夜を問わず食後に1日1個、連続12週間にわたって摂取した。試験試料に含まれるビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274株(FERM BP-11175)の生菌数は、1日(1個)あたり1億個以上であった。すなわち、試験群の1日あたりの摂取量は、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)の生菌として1億個以上とした。
【0091】
試験試料の摂取による整腸効果の評価項目として、摂取前から摂取12週目まで、1日あたりの排便回数を計測した。また、表2に示す指標(ブリストルスケール)に基づいて、被験者の各週における便性状についても観察を行った。排便回数は、1週間あたりの合計回数、便性状は1週間毎の平均値で集計した。
【0092】
【0093】
更に、摂取前、摂取後12週目において、一時的な気分状態を評価するため、気分プロフィール検査である「POMS2成人用短縮版」による検査を実施し、これらの合計得点をその日本語マニュアルに従ってT得点スコアに換算した。
【0094】
<統計解析>
盲検結果のレビューはキーオープン前に実施し、事前に定められた解析対象基準を満たさなかった者(すなわち、試験試料の摂取率が80%未満の者、医薬品の服用や摂取禁止食品に違反のある者、その他、重大な試験実施計画書違反・逸脱が認められた者)を除いて解析することとしたが、本試験においては上記該当者はいなかったため、全被験者140名について有効性の解析対象とした。摂取間との前後比較については対応のあるt検定、対照群と試験群の値の比較については対応のないt検定にて統計的有意差検定を実施した。また排便状況について、前観察期間(摂取前)においてもともと排便回数が少ない者(週4回以下)および排便回数が多い者(週10回以上)について層別解析を行った。
【0095】
<結果>
摂取前の排便回数が週4回以下の被験者についての排便回数、排便回数の変化、便性状の結果を、
図1~3に示す。また、摂取前の排便回数が週10回以上の被験者についての排便回数、排便回数の変化、便性状の結果を、
図4~6に示す。
【0096】
図1及び
図2に示す通り、摂取前の排便回数が週4回以下の便秘気味の被験者(試験群:n=5、対照群:n=4)において、対照群では摂取前と比べて排便回数にほとんど変化がなかったが、試験群では摂取前と比べて排便回数が有意に増加していた。また、
図3に示す通り、試験群では便性状も普通便に近づく改善傾向がみられた。
【0097】
図4及び
図5に示す通り、摂取前の排便回数が週10回以上の被験者(試験群:n=24、対照群:n=21)において、対照群では摂取前と比べて排便回数の頻度が更に増えたのに対し、試験群では摂取前と比べて排便回数が維持されていた。また、
図6に示す通り、試験群では便性状も普通便に近づく改善傾向がみられた。
【0098】
「POMS2成人用短縮版」による検査の結果を下記表2に示す。
【0099】
【0100】
表3に示す「怒り-敵意(AH)」、「混乱-当惑(CB)」、「抑うつ-落込み(DD)」、「疲労-無気力(FI)」、「緊張‐不安(TA)」、「総合的気分状態(TMD)」について、対照群に比べて、試験群ではこれらの数値が低値を示していた。特に、「混乱-当惑(CB)」、「緊張‐不安(TA)」、「総合的気分状態(TMD)」については、有意差をもって低値を示していた。
また、「活気-活力(VA)」、「友好(F)」については、対照群に比べて、試験群ではこれらの数値が高値を示していた。
これらの結果から、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)が、「怒り-敵意(AH)」、「混乱-当惑(CB)」、「抑うつ-落込み(DD)」、「疲労-無気力(FI)」、「緊張‐不安(TA)」、「総合的気分状態(TMD)」、「活気-活力(VA)」、「友好(F)」の全ての気分プロフィールを改善するのに有効であることが示された。
【0101】
また、摂取前の排便回数が週4回以下の被験者についての「POMS2成人用短縮版」による検査の結果を下記表4に示す。
【0102】
【0103】
表4に示す「怒り-敵意(AH)」、「混乱-当惑(CB)」、「疲労-無気力(FI)」、「緊張‐不安(TA)」、「総合的気分状態(TMD)」について、対照群に比べて、試験群ではこれらの数値が低値を示していた。
また、「活気-活力(VA)」、「友好(F)」については、対照群に比べて、試験群ではこれらの数値が高値を示していた。
これらの結果から、摂取前の排便回数が週4回以下の被験者については、便秘の解消と共に、気分プロフィールを改善することが示された。
【0104】
更に、摂取前の排便回数が週10回以上の被験者についての「POMS2成人用短縮版」による検査の結果を下記表5に示す。
【0105】
【0106】
表5に示す「怒り-敵意(AH)」、「混乱-当惑(CB)」、「抑うつ-落込み(DD)」、「疲労-無気力(FI)」、「緊張‐不安(TA)」、「総合的気分状態(TMD)」について、対照群に比べて、試験群ではこれらの数値が低値を示していた。特に、「怒り-敵意(AH)」、「抑うつ-落込み(DD)」については、有意差をもって低値を示していた。
また、「活気-活力(VA)」、「友好(F)」については、対照群に比べて、試験群ではこれらの数値が高値を示していた。
これらの結果から、摂取前の排便回数が週10回以上の被験者については、便性状の改善と共に、気分プロフィールを改善することが示された。
【0107】
[実験例2]
<試験方法>
実施例1と同じビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274株(FERM BP-11175)を含む発酵乳を試験試料として、20歳以上の健常男女11名(BMI:17.1~30.1 kg/m2、BMI平均値:22.8 ± 3.6 kg/m2)を対象に、発酵乳の摂取前後における体調全般とお腹の調子(痛み、膨満感、不快感)についてのアンケート調査を実施した。
被験者らは、試験試料を朝、昼、夜を問わず食後に1日1個、連続4週間にわたって摂取した。試験試料に含まれるビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274株(FERM BP-11175)の生菌数は、1日(1個)あたり1億個以上であった。すなわち、試験群の1日あたりの摂取量は、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)の生菌として1億個以上とした。
【0108】
試験試料の摂取4週間後では、体調全般について、「良くなった」が9%、「やや良くなった」が64%、「変化なし」が27%であり、「やや悪くなった」及び「悪くなった」がいずれも0%であった。お腹の調子(痛み、膨満感、不快感)については、「良くなった」が9%、「やや良くなった」が46%、「変化なし」が45%であり、「やや悪くなった」及び「悪くなった」がいずれも0%であった。また、生理前の不調(腹痛、下痢)が改善されたとの回答もあった。即ち、試験試料の摂取後においては、体調全般について、被験者の73%が摂取前より「良くなった」あるいは「やや良くなった」と回答し、体調が摂取前より悪くなった被験者は存在しなかった。また、お腹の調子については、被験者の55%が摂取前より「良くなった」あるいは「やや良くなった」と回答し、お腹の調子(痛み、膨満感、不快感)が摂取前より悪くなった被験者は存在しなかった。
【0109】
[実験例3]
<試験試料の製造>
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)の培養液を濃縮、乾燥させ、生菌乾燥物を得た。この生菌乾燥物をデンプンと混合し、1カプセルに345mgに充填し、試験試料とした。
一方、カプセルにデンプンのみ345mgを充填したプラセボカプセルを製造し、これを対照試料とした。
試験試料と対照試料は、外観、色、味から見分けがつかない事を確認した。
【0110】
<被験者>
20歳以上の健常者(BMI25以上30未満)を被験者として臨床試験に登録した。さらに、体組成測定、血液検査、意思による問診により、以下の(1)~(7)の除外基準に抵触しない者を解析対象とした。
(1)重篤な疾患等の治療を受けている者またはこれらの重篤な既往歴のある者
(2)胃腸疾患に罹患し、投薬を受けている者
(3)生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症)の薬物治療を受けている者
(4)薬物アレルギーあるいは重篤な食物アレルギーの既往歴がある者
(5)妊娠している者、試験期間中妊娠の意思がある者、授乳中の者
(6)ヘビースモーカー、多量飲酒者、生活習慣が不規則な者
(7)被験者背景、身体所見、問診などの結果から、試験責任医師または試験分担医師により被験者として不適当と判断された者
(2)の胃腸疾患に罹患している患者は、潰瘍性大腸炎等器質性疾患感染者、大腸がんに罹患して現在治療を受けているものが含まれ、機能性疾患患者は含まれない。
【0111】
具体的な被験者の背景因子を下記表6に示す。対象群と試験群の年齢に、有意差は認められなかった。
【0112】
【0113】
<試験方法>
ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を行った。2週間の前観察期間の後、対照試料を摂取する群(以下「対照群」と称することがある。)と、試験試料を摂取する群(以下、「試験群」と称することがある。)に割付けた。両群の被験者らは、12週間にわたって試験試料又は対照試料を1日1回、食後30分以内に水などと一緒に摂取した。すなわち、試験群の1日あたりの摂取量は、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)の生菌として200億個とした。
【0114】
摂取前、摂取後12週目において、一時的な気分状態を評価するため、気分プロフィール検査である「POMS2成人用短縮版」による検査を実施し、これらの合計得点をその日本語マニュアルに従ってT得点スコアに換算した。併せて、試験群について、摂取前、摂取後12週目において、ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index;PSQI)を用いて、睡眠の質,入眠時間,睡眠時間,睡眠効率,睡眠困難,睡眠薬の使用,日中覚醒困難の7要素の合計得点として算出した。
【0115】
<統計解析>
盲検結果のレビューはキーオープン前に実施し、事前に定められた解析対象基準を満たさなかった者(すなわち、試験試料の摂取率が80%未満の者、医薬品の服用や摂取禁止食品に違反のある者、その他、重大な試験実施計画書違反・逸脱が認められた者)を除いて解析することとしたが、本試験においては上記該当者はいなかったため、全被験者80名について有効性の解析対象とした。
【0116】
<結果>
「POMS2成人用短縮版」による検査の結果を下記表7に、試験群におけるピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index;PSQI)の総合得点の平均値及び変化量を下記表8に、それぞれ示す。
【0117】
【0118】
【0119】
表7に示す「怒り-敵意(AH)」、「混乱-当惑(CB)」、「抑うつ-落込み(DD)」、「緊張‐不安(TA)」、「総合的気分状態(TMD)」について、対照群では摂取前に比べて12週目で数値が大きく増加したのに対し、試験群ではこれらの数値が低値に維持された。
これらの結果から、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)が、「怒り-敵意(AH)」、「混乱-当惑(CB)」、「抑うつ-落込み(DD)」、「緊張‐不安(TA)」、「総合的気分状態(TMD)」の気分プロフィールを改善するのに有効であることが示された。
【0120】
また、表8に示す通り、被験物質の摂取前と比べて、12週間の摂取後ではPSQI総合得点が-0.20低下しており、睡眠の質、入眠時間、睡眠時間、睡眠効率、睡眠困難、眠薬の使用,日中覚醒困難が総合的にみて改善されていた。
【0121】
[製造例]
下記機能性消化管障害予防又は改善用の医薬品組成物、及び食品組成物の製造例を示す。
【0122】
〔製造例1〕
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を、MRS液体培地3mLに添加し、37℃で16時間嫌気培養後、培養液を濃縮し、凍結乾燥を行い、細菌の凍結乾燥粉末(菌末)を得る。菌末と、ホエイタンパク質濃縮物(Whey protein concentrate;WPC)と、プレバイオティクス(ラクチュロース、ラフィノース及びガラクトオリゴ糖)を均一に混合して組成物を得る。当該組成物20gを200gの水に溶かし、機能性消化管障害予防又は改善用組成物を得る。当該組成物の投与により、機能性消化管障害予防又は改善することができる。
【0123】
〔製造例2〕
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を、MRS液体培地3mLに添加し、37℃で16時間嫌気培養後、培養液を濃縮し、凍結乾燥を行い、細菌の凍結乾燥粉末(菌末)を得る。菌末と、乳タンパク質濃縮物の乾燥粉末(MPC480、フォンテラ社製、タンパク質含量80質量%、カゼインタンパク質:ホエイタンパク質=約8:2)と、プレバイオティクス(ラクチュロース、ラフィノース及びガラクトオリゴ糖)を均一に混合して、組成物を得る。当該組成物20gを200gの水に溶かし、機能性消化管障害予防又は改善用組成物を得る。当該組成物の投与により、機能性消化管障害予防又は改善することができる。
【0124】
〔製造例3〕
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を、MRS液体培地3mLに添加し、37℃で16時間嫌気培養後、培養液を濃縮し、凍結乾燥を行い、細菌の凍結乾燥粉末(菌末)を得る。次に、プレバイオティクス(ラクチュロース、ラフィノース及びガラクトオリゴ糖)、結晶セルロースを撹拌造粒機に投入し混合する。その後、精製水を加え造粒、造粒物を乾燥し、細菌の抽出成分及びプレバイオティクスを含有し、賦形剤を含有してなる造粒物(医薬品組成物)を得る。当該造粒物を投与することにより機能性消化管障害予防又は改善することができる。
【0125】
〔製造例4〕
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を添加した発酵乳の製造法を下記に示す。
まず、乳原料、および必要に応じた水、その他の成分等を混合し、好ましくは均質化処理を行い、加熱殺菌処理する。均質化処理および加熱殺菌処理は常法により行うことができる。加熱殺菌された殺菌調乳液に乳酸菌スターターを添加(接種)し、所定の発酵温度に保持して発酵させ、発酵物を得る。発酵によりカードが形成される。
乳酸菌スターターとしては、例えば、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)等のヨーグルト製造に通常用いられている乳酸菌を用いることができる。pHが目標の値に達したら、形成されたカードを撹拌により破砕し、10℃以下に冷却して発酵物を得る。10℃以下に冷却することにより、乳酸菌の活性を低下させて酸の生成を抑制することができる。
次いで、発酵工程で得られた発酵物を加熱処理して加熱後発酵物(加熱処理後の発酵物)を得る。発酵物を適度に加熱することにより、加熱後発酵物中の乳酸菌による酸の生成を抑えることができる。これによって、その後の製造工程中および/またはビフィズス菌入り濃縮発酵乳の保存中のpHの低下を抑えることができ、その結果、ビフィズス菌の生残性を向上させることができる。
次いで、加熱処理工程で得られた加熱後発酵物に、ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)及びプレバイオティクス(ラクチュロース、ラフィノース及びガラクトオリゴ糖)を添加する。ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)の添加量は、加熱後発酵物に対して1×107~1×1011cfu/mlが好ましく、1×108~1×1010cfu/mlがより好ましい。ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)が死菌の場合、cfu/mLは、個細胞/mLと置き換えることができる。
加熱後発酵物にビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)及びレバイオティクスを添加した後、濃縮を行う。濃縮工程は公知の濃縮方法を適宜用いて行うことができる。例えば遠心分離法または膜分離法を用いることができる。
遠心分離法では、被濃縮物(ビフィズス菌及びプレバイオティクスが添加された加熱後発酵物)中のホエーが除去されて、固形分濃度が高められたビフィズス菌及びレバイオティクス入り濃縮発酵乳が得られる。
上述のようにして得られた発酵乳を投与することにより、機能性消化管障害予防又は改善できる。
【0126】
〔製造例5〕
ビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)を添加した調製粉乳の製造法を下記に示す。
脱塩牛乳乳清蛋白質粉末(ミライ社製)10kg、牛乳カゼイン粉末(フォンテラ社製)6kg、乳糖(ミライ社製)48kg、ミネラル混合物(富田製薬社製)920g、及びビタミン混合物(田辺製薬社製)32g、ラクチュロース(森永乳業社製)500g、ラフィノース(日本甜菜製糖社製)500g、ガラクトオリゴ糖液糖(ヤクルト薬品工業社製)900gを温水300kgに溶解し、さらに90℃で10分間加熱溶解し、調製脂肪(太陽油脂社製)28kgを添加して均質化した。その後、殺菌、濃縮の工程を行って噴霧乾燥し、調製粉乳約95kgを調製した。これに、澱粉に倍散したビフィドバクテリウム・ブレーベMCC1274(FERM BP-11175)の菌体粉末(1.8×1011cfu/g、森永乳業社製)100gを加えてビフィズス菌・オリゴ糖配合調製粉乳約95kgを調製する。得られた調製粉乳を水に溶解して、標準調乳濃度である総固形分濃度14%(w/V)の調乳液としたとき、調乳液中のビフィズス菌数は2.7×109cfu/100mLを得ることができる。上述のようにして得られた調整粉乳を投与することにより、機能性消化管障害予防又は改善が可能になる。