IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 前澤化成工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-厨房排水処理装置 図1
  • 特許-厨房排水処理装置 図2
  • 特許-厨房排水処理装置 図3
  • 特許-厨房排水処理装置 図4
  • 特許-厨房排水処理装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】厨房排水処理装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/266 20060101AFI20230516BHJP
   B09B 3/60 20220101ALI20230516BHJP
   C02F 11/02 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
E03C1/266 Z
B09B3/60
C02F11/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019055388
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020151688
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000201582
【氏名又は名称】前澤化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(72)【発明者】
【氏名】矢野 禎典
(72)【発明者】
【氏名】田草川 英昇
(72)【発明者】
【氏名】奥富 隆行
(72)【発明者】
【氏名】鷲津 康文
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3162445(JP,U)
【文献】特開2001-252680(JP,A)
【文献】特開2001-317117(JP,A)
【文献】特開2005-273270(JP,A)
【文献】特開2000-317427(JP,A)
【文献】特開2010-000498(JP,A)
【文献】米国特許第07029585(US,B1)
【文献】特開2002-331276(JP,A)
【文献】特開2002-282824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-20
E03C 1/12-33
B09B 3/00-80
B01D 17/02-032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厨芥と油脂分と水分とを含む厨房排水を処理するための厨房排水処理装置であって、
シンク部と、前記シンク部の下方に配置されているグリーストラップ部と、前記厨芥を減容化する厨芥減容処理部と、前記厨芥減容処理部内の気体を外部に排気するための排気部とを有し、
前記シンク部は、底部に前記厨房排水を排出する排水口を備え、
前記厨芥減容処理部は、減容処理された処理残渣を排出する処理残渣排出口を備え、
前記グリーストラップ部と前記処理残渣排出口は連結管を介して接続され、
前記グリーストラップ部は、前記排水口から排出された前記厨房排水を受けて、前記厨房排水に含まれる前記厨芥を回収し、前記処理残渣排出口から排出された前記処理残渣を、前記連結管を介して回収する厨芥回収領域と、
前記厨芥回収領域にて前記厨芥が回収された前記厨房排水に含まれる前記油脂分と前記水分とを分離する油水分離領域と、
前記油水分離領域で分離された前記水分を外部に取り出す排水管とを備え、
前記シンク部と前記グリーストラップ部とは分離可能とされ
前記排気部は、前記グリーストラップ部内の気体を、前記連結管を介して前記厨芥減容処理部内から排気する厨房排水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厨房排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店の厨房から排出される厨房排水は、一般に、厨芥(生ごみ)と、油脂分と、水分を含む。この厨房排水に含まれている厨芥や油脂分が直接下水道に排出されないように、厨房にグリーストラップを設けて、厨房排水から厨芥や油脂分を分離して回収することが行われている。グリーストラップで回収した厨芥や油脂分は、一般に腐敗しやすく、異臭の発生原因となりやすい。このため、回収した厨芥や油脂分は、異臭が拡散しないように速やかに処理することが好ましい。
【0003】
特許文献1には、厨房排水から回収した厨芥や油脂分を嫌気性細菌で処理して、メタンガスを生成させ、生成したメタンをボイラーや発電に利用する廃棄物処理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5201689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているような廃棄物処理システムを用いて、ボイラーや発電で利用可能な量のメタンガスを得るためには、大量の厨芥や油脂分が必要となる。従って、このような廃棄物処理システムは、食品加工工場やホテルのような大規模な施設においては有用であると考えられる。一方、相対的に厨芥や油脂分の発生量が少ない小規模な飲食店の厨房では、特許文献1に開示されているような廃棄物処理システムを使用するのは現実的ではない。そこで、小規模な飲食店の厨房では、小型でかつ、厨房排水から回収された厨芥や油脂分から発生した異臭が拡散しないように処理できる処理装置が望まれている。
【0006】
本発明は上記の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、厨房排水に含まれている厨芥や油脂分を、異臭を拡散させずに処理することができ、かつ小型化が容易な構成の厨房排水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
【0008】
(1)本発明の一態様に係る厨房排水処理装置は、厨芥と油脂分と水分とを含む厨房排水を処理するための厨房排水処理装置であって、シンク部と、前記シンク部の下方に配置されているグリーストラップ部と、前記厨芥を減容化する厨芥減容処理部と、前記厨芥減容処理部内の気体を外部に排気するための排気部とを有し、前記シンク部は、底部に前記厨房排水を排出する排水口を備え、前記厨芥減容処理部は、減容処理された処理残渣を排出する処理残渣排出口を備え、前記グリーストラップ部と前記処理残渣排出口は連結管を介して接続され、前記グリーストラップ部は、前記排水口から排出された前記厨房排水を受けて、前記厨房排水に含まれる前記厨芥を回収し、前記処理残渣排出口から排出された前記処理残渣を、前記連結管を介して回収する厨芥回収領域と、前記厨芥回収領域にて前記厨芥が回収された前記厨房排水に含まれる前記油脂分と前記水分とを分離する油水分離領域と、前記油水分離領域で分離された前記水分を外部に取り出す排水管とを備え、前記シンク部と前記グリーストラップ部とは分離可能とされ、前記排気部は、前記グリーストラップ部内の気体を、前記連結管を介して前記厨芥減容処理部内から排気する。
【0009】

上記態様の厨房排水処理装置によれば、シンク部の下方にグリーストラップ部が配置されているので、装置サイズを小さくすることができる。また、排気部にてグリーストラップ部内の気体を外部に強制排気することによって、グリーストラップ部で回収された厨芥や油脂分による異臭の拡散を防止することができる。さらに、シンク部とグリーストラップ部とは分離可能とされていて、シンク部を分離することによって、グリーストラップ部で回収された厨芥と油脂分を比較的に簡単に外部に取り出すことができる。よって、グリーストラップ部で、厨芥や油脂分が腐敗して異臭が発生した場合は、異臭が拡散しないように異臭源の厨芥や油脂分を速やかに排除することができる。
【0010】
(2)前記(1)の厨房排水処理装置において、前記グリーストラップ部は、さらに、固形物を外部に取り出す固形物取出口を備える構成としてもよい。
【0011】
上記のような構成とされている厨房排水処理装置では、固形物取出口を介して、厨房排水に含まれる微細な厨芥や厨芥減容処理部にて生成した処理残渣を比較的容易に外部に取り出すことができる。
【0012】
(3)前記(1)または(2)の厨房排水処理装置において、さらに、前記厨芥を減容化する厨芥減容処理部を有し、前記厨芥減容処理部と前記グリーストラップ部とが連結管を介して接続し、前記排気部は、前記厨芥減容処理部に接続し、前記グリーストラップ部内の気体を、前記連結管を介して前記厨芥減容処理部に排気する構成としてもよい。
【0013】
上記のような構成とされている厨房排水処理装置では、厨芥減容処理部を備えているので、グリーストラップ部の厨芥回収領域で回収された厨芥を厨芥減容処理部で速やかに減容化することができ、これによって、厨芥の腐敗による異臭の発生を抑制することができる。また、排気部は、厨芥減容処理部に接続しているので、厨芥減容処理部内の気体を強制排気することによって、厨芥の減容化による異臭の拡散を防止することができる。さらに、厨芥減容処理部とグリーストラップ部とが連結管を介して接続しているので、厨芥減容処理部内の気体と共にグリーストラップ部内の気体を強制排気することができ、これにより装置サイズを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、厨房排水に含まれている厨芥や油脂分を、異臭を拡散させずに処理することができ、かつ小型化が容易な構成の厨房排水処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る一実施形態の厨房排水処理装置の平面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3図1に示す厨房排水処理装置の正面図である。
図4図1に示す厨房排水処理装置のシンク部を分離した状態であり、グリーストラップ内の厨房排水の流れを説明する平面図である。
図5図1に示す厨房排水処理装置のバスケットに用いることができる折り畳み式ネットの一例を示す斜視図であり、(a)は使用前の折り畳み状態、(b)は展開途中の状態、(c)は、展開完了の状態である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る一実施形態の厨房排水処理装置について図面を参照して説明する。
本実施形態の厨房排水処理装置は、例えば、飲食店にて発生した厨房排水の処理に利用される。厨房排水は、一般に厨芥(生ごみ)と油脂分と水分を含む。本実施形態の厨房排水処理装置は、厨房排水に含まれている厨芥を回収し、回収した厨芥を減容化する機能を有する。
【0017】
図1は、本発明に係る一実施形態の厨房排水処理装置の平面図である。図2は、図1のII-II線断面図である。図3は、図1に示す厨房排水処理装置の正面図である。図4は、図1に示す厨房排水処理装置のシンク部を分離した状態であり、グリーストラップ内の厨房排水の流れを説明する平面図である。
【0018】
図1図4に示すように、本実施形態の厨房排水処理装置10は、シンク部20、シンク部20の下方に配置されているグリーストラップ部30、シンク部20の側方に備えられた厨芥減容処理部50、グリーストラップ部30と厨芥減容処理部50とを連結する連結管70、そして厨芥減容処理部に接続している排気部80を有する。本実施形態の厨房排水処理装置10では、シンク部20とグリーストラップ部30とが、平面視で重なり合っている。従って、本実施形態の厨房排水処理装置10は、シンク部20とグリーストラップ部30とが平面視で重なり合っていない場合と比較して、少ない平面スペースに設置できる。
【0019】
厨房排水処理装置10は、上部に天板11とバックガード12とを有し、側部に化粧板13を有する。また、厨房排水処理装置10の下部には、厨房排水処理装置10を支持する脚台15が設けられ、脚台15の一部には、補強材14が設置されている。本実施形態の厨房排水処理装置10は、下部に脚台15を有するため、後述するU字管39および固形物取出口40から排水および固形物を容易に排出および/または回収できる。
【0020】
シンク部20は、厨房排水1を受ける水槽であり、略矩形状に開口している。シンク部20は、底部に厨房排水1を排出する排水口21を備え、シンク部20の底面は排水口21に向かって徐々に低くなる勾配を有している。シンク部20の対向する内壁面の上端部には、それぞれ取手22、22が埋め込まれるように取り付けられている。この取手22を引き出して持ち上げることによって、シンク部20とグリーストラップ部30とを分離できるようになっている。また、シンク部20は排水口21を閉じるための排水口栓23を備える。さらにシンク部20の側面上部には図示しないオーバーフロー孔が設けられている。排水口栓23によって排水口21を閉じた状態でシンク部20内の厨房排水1が増え続けた場合は、このオーバーフロー孔を通じて、厨房排水1をグリーストラップ部30に流入させる。このため、厨房排水1が厨房排水処理装置10から溢れ出ることはない。
なお、オーバーフロー孔には、簡易の防臭機構を設けることが好ましい。防臭機構としては、例えば、自重閉鎖式のもの等が挙げられる。自重閉鎖式防臭機構とは、通常時には、自重でオーバーフロー孔を閉鎖し、厨房排水1の増水時には、オーバーフロー孔から脱離して、オーバーフロー孔を開放する封止部材を用いる機構である。これにより、通常時、後述するグリーストラップ部30や油水分離トラップ36から上がってくる臭いがオーバーフロー孔から漏れるのを防止できる。
【0021】
グリーストラップ部30は、厨房排水1を厨芥2(固体)と液体3とに分離して、厨芥2を回収する厨芥回収領域31と、厨房排水1から分離された液体3をさらに、油脂分4と水分5とに分離する油水分離領域34とを有する。グリーストラップ部30は、さらに、油水分離領域34で分離された水分5を外部に取り出す排水管38と、バスケット32を通過した微細な固形物を取り出すための固形物取出口40を備える。
図2において、グリーストラップ部30は平坦な底面を有する。なお、グリーストラップ部30の底面は平坦でなくてもよく、例えば、後述する油水分離トラップ36に向かって徐々に低くなる勾配を有するものであってもよい。
【0022】
厨芥回収領域31は、バスケット32とバスケット32を着脱可能に支持するバスケット支持部33とを備える。
バスケット32は、排水孔を有する多孔体であり、厨房排水1中の液体3を通過させることによって厨芥2を厨房排水1から分離して回収する。バスケット32の材料としては、金網、パンチングメタル板、エキスパンドメタル板などを用いることができる。バスケット32には、バスケット32の排水口よりも孔径が小さいネット(図示せず)を被せて、厨芥2をネットと共に回収できるようにすることが好ましい。
【0023】
バスケット32に被せるネットは、生分解性樹脂材料で構成されていることが好ましい。生分解性樹脂材料で形成されたネットは厨芥2と共に微生物によって分解できるため、このネットと共にバスケット32内の厨芥2を厨芥減容処理部50に投入できる。生分解性樹脂材料としては、例えば、澱粉、セルロース、リグセルロース、ナノセルロースファイバー、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリアスパラギン酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリビニルアルコールを用いることができる。
【0024】
ネットとしては、図5に示すように、折り畳み式ネットを用いることができる。図5において、(a)は使用前の折り畳み状態、(b)は展開途中の状態、(c)は、展開完了の状態である。折り畳み式ネット90は、矩形状の開口92を有する網袋91と、開口92の一対の縁部に備えられた把手部94とを有する。(a)の使用前では、把手部94が備えられていない一対の縁部93が内側に折り畳まれた状態となっている。折り畳み式ネット90を展開するときは、(b)に示すように、把手部94を外側に引っ張ることによって、縁部93を開かせる。開口92が矩形状に開いたネットを、バスケット32に被せるときは、(c)に示すように、縁部93と把手部94を外側に折り曲げてバスケット32に密着させる。このような折り畳み式ネット90は、使用前はかさばらないので、収容スペースを小さくできる。また、折り畳み式ネット90を用いることによって、残渣の搬送性に優れ、メンテナンス性が向上する。さらにバスケット32に被せた後は、縁部93がバスケット32に支持されることによって、過度に変形しにくくなるため、形態安定性に優れる。
【0025】
油水分離領域34は、仕切板35と、油水分離トラップ36とを有する。
仕切板35は、バスケット32を通過した液体3が、仕切板35とバスケット支持部33との間を上方に向かって流れるように、液体3の流出方向を調整する機能を有する。液体3を上方に向かって流れるようにすることによって、相対的に比重が小さい液体3中の油脂分4は速やかに上方に、相対的に比重が大きい液体3中の水分5は下方に移動する。
【0026】
油水分離トラップ36は、筒状部材37(バッフル)と、筒状部材37の内側に配置された排水管38とを備える。
筒状部材37は、下方に開口部37aを有し、上部に図示しない通気孔を備えた円筒形状を有する部材である。比重が小さい油脂分4は筒状部材37の開口部37aまで下方に移動することは困難であるので、筒状部材37の開口部37aには、比重が大きい水分5が優位に取り込まれる。
【0027】
排水管38は、上方に開口部38aを有し、下方にU字管39が備えられている。筒状部材37に取り込まれた水分5は、開口部38aを通って、排水管38に送られ、U字管39を介して外部(下水管)に取り出される。U字管39を介することによって、外部からグリーストラップ部30への異臭の侵入を防止できる。
【0028】
油水分離トラップ36は、油水分離領域34の中央に配置されていることが好ましい。この場合、液体3の流れが、油水分離領域34の全方向に進むため、油水分離領域34全体を有効に利用することができ、小型であっても油脂分4と水分5とを効率的に分離することできる(図4参照)。
【0029】
固形物取出口40は、グリーストラップ部30の底部に配置されている。固形物取出口40は、コック40aが備えられており、コック40aを開くことによって、底部に堆積した固形物6を、適宜外部に取り出せるようにされている。
【0030】
厨芥減容処理部50は、頂部に備えられた厨芥投入口51と、内部に備えられた厨芥処理槽53と、厨芥処理槽53にて減容処理された厨芥2の処理残渣7を外部に排出する処理残渣排出口59と、制御板60とを有する。厨芥投入口51は、蓋52が備えられている。
なお、厨芥投入口51は、厨芥減容処理部50の頂部及び/又は側部に設けることができる。本実施形態においては、頂部に設けた場合を説明するが、厨芥投入口51を側部に設けた場合は、蓋が45度程度に角度で開口するよう調整することが好ましい。この場合、バスケット32で回収した厨芥の投入作業が比較的容易になる。
【0031】
厨芥処理槽53は、下部に備えられた多孔板54と、多孔板の54の上に配置された厨芥処理材55と、厨芥処理材55を撹拌するための撹拌具56と、撹拌具56を支持する回転軸57とを備える。厨芥処理材55は、厨芥2を分解可能な微生物が担持された担体とされている。微生物としては、例えば、好気性細菌を用いることができる。厨芥処理材55は、多孔板54の孔部54aを通過しないサイズとされている。撹拌具56は、先端にへら部56aを有する。回転軸57はモータ58によって回転可能に支持されている。
【0032】
好気性細菌を用いる場合は、好気性細菌の活性を促進するために、給水装置を付設して厨芥処理槽53内に水を供給してもよい。また、好気性細菌の活性を促進するために、厨芥処理槽53内に空気を取り込む吸気口を設けてもよい。吸気口は、例えば、厨芥投入口51近傍に設けることができる。
厨芥処理槽53は、取り外しが可能とされていることが好ましい。これにより、厨芥処理槽53が故障した際には、厨芥処理槽53のみを交換することが可能になる。
【0033】
処理残渣排出口59は、厨芥処理槽53の多孔板54の孔部54aを通過した微細な処理残渣7を外部に排出する。処理残渣排出口59は下面59aが外部に向けて下方に傾斜した形状とされていて、処理残渣7が自重によって下面59a上を移動することにより、外部に排出される。
また、処理残渣排出口59内の処理残渣7を外部に押し流すために、給水装置を下面59aが傾斜した部分の上方に付設して厨芥処理槽53内に水を供給してもよい。さらに、下面59aの形状を、上方から連結管70に向けて幅が徐々に先細りになっている形状(テーパ状)としてもよい。これらにより、処理残渣排出口59内の処理残渣7をより効率的に外部に排出される。
【0034】
制御板60は、厨芥減容処理部50の動作を管理する。制御板60は、例えば、モータ58を制御して、撹拌具56による厨芥処理材55の撹拌速度を調整する。また、必要に応じて付設される給水装置を制御して、厨芥処理槽53内あるいは処理残渣排出口59内に供給される水の供給量を調整する。厨芥減容処理部50はヒータ(不図示)を用いて内部温度を調整してもよい。微生物を用いて厨芥2を減容処理する場合には、厨芥減容処理部50の内部温度は、各微生物の活性にあわせて調整することが好ましく、例えば、20℃~40℃が好ましい。ヒータの温度制御は、上記の制御板60により行うようにしてもよい。
【0035】
連結管70は、グリーストラップ部30と厨芥減容処理部50の処理残渣排出口59とを連結する。連結管70は、グリーストラップ部30側の端部が、処理残渣7を厨芥回収領域31のバスケット32を受ける位置に配置されていて、減容化が不十分で、粗大な処理残渣7をバスケット32により、回収できるようにされている。
【0036】
排気部80は、厨芥減容処理部50に接続し、厨芥減容処理部50内の気体を外部に強制排気する。グリーストラップ部30内の気体は、連結管70を介して厨芥減容処理部50内の気体と共に強制排気される(図2参照)。シンク部20とグリーストラップ部30とは分離可能とされていて、シンク部20とグリーストラップ部30の間には隙間が形成されているので、グリーストラップ部30や厨芥減容処理部50の内部の気体を強制排気しても、その内部が過度に減圧されることはない。
【0037】
排気部80は、ファンを有し、これにより負圧を形成して、気体を外部に排気する排気装置を用いてもよい。この場合、ファンの先に臭気用の吸着剤を設けてもよい。また、排気部80として、厨房に備えられている換気扇などの既存の排気ダクトを利用してもよい。さらに、シンクの下あるいは生ごみ処理装置の下に脱臭システム(空気清浄機)を配置し、これに排気部80を接続してもよい。またさらに、排気部80の制御は、上記の制御板60により行うようにしてもよい。
【0038】
次に、本実施形態の厨房排水処理装置10を用いた厨房排水の処理方法について説明する。
【0039】
まず、排気部80を作動させて、グリーストラップ部30と厨芥減容処理部50の内部の気体を強制排気する。厨房排水1の処理中は、排気部80を連続的に作動させることが好ましい。
【0040】
次に、シンク部20の排水口栓23を外す。これによって、シンク部20に貯留された厨房排水1は、排水口21を介して、グリーストラップ部30に送られる。
【0041】
グリーストラップ部30に送られた厨房排水1は、厨芥回収領域31のバスケット32で受けられる。バスケット32により、厨房排水1に含まれる厨芥2が分離回収される。バスケット32を通過した液体3(油脂分4と水分5)は、油水分離領域34に送られる。油水分離領域34において、液体3中の油脂分4と水分5は、仕切板35とバスケット支持部33との間を上方に向かって流れ、相対的に比重の軽い油脂分4が上方に、相対的に比重の重い水分5が下方に貯留される。
【0042】
油水分離領域34の下方に貯留された水分5は、油水分離トラップ36の筒状部材37の開口部37aを通って油水分離トラップ36の内部に送られる。油水分離トラップ36の内部の水分5は、排水管38の開口部38aを通って、外部に取り出される。また、バスケット32を通過した微細な固形物6は、コック40aを開くことによって、固形物取出口40より外部に取り出される。
【0043】
バスケット32にて回収した厨芥は、次のようにして減容処理される。
まず、シンク部20の取手22を持ち上げて、シンク部20とグリーストラップ部30とを分離して、グリーストラップ部30を露出させる。そして、バスケット32をバスケット支持部33から取り出す。
【0044】
次に、取り出したバスケット32内の厨芥2を、厨芥減容処理部50の厨芥投入口51に投入する。厨芥投入口51に投入された厨芥2は、厨芥処理槽53に送られる。厨芥処理槽53において、厨芥2と厨芥処理材55とは撹拌具56により撹拌され、厨芥2は厨芥処理材55に担持されている微生物によって分解処理されて、減容化される。
【0045】
減容化された厨芥2の処理残渣7は、多孔板54の孔部54aを通過して、処理残渣排出口59に落下する。処理残渣排出口59に落下した処理残渣7は、自重によって処理残渣排出口59の下面59a上を移動して、外部に排出される。
【0046】
外部に排出された処理残渣7は、連結管70を介して、グリーストラップ部30に送られる。グリーストラップ部30に送られた処理残渣7は、厨芥回収領域31のバスケット32で受けられる。バスケット32により、粗大な処理残渣7のみが回収される。バスケット32により回収された処理残渣7は、厨芥2と共に、厨芥減容処理部50で再度減容処理される。一方、バスケット32を通過した微細な処理残渣7は、グリーストラップ部30の底部で貯留された後、固形物6と共に固形物取出口40より外部に取り出される。
【0047】
また、シンク部20とグリーストラップ部30とを分離して、グリーストラップ部30を露出させた際には、油水分離領域34の上部に貯留されている油脂分4を回収する。回収した油脂分4は、例えば、異臭が拡散しないように、高密閉性の容器に入れて保管する。なお、シンク部20とグリーストラップ部30とを分離することで、グリーストラップ部30側から連結管70が視認可能となり、連結管70の清掃が容易となる。
【0048】
また、シンク部20とグリーストラップ部30とを分離して、グリーストラップ部30を露出させた際には、油水分離領域34の上部に貯留されている油脂分4を回収する。回収した油脂分4は、例えば、異臭が拡散しないように、高密閉性の容器に入れて保管する。なお、シンク部20とグリーストラップ部30とを分離することで、グリーストラップ部30側から連結管70が視認可能となり、連結管70の清掃が容易となる。
【0049】
以上のような構成とされた本実施形態の厨房排水処理装置10によれば、シンク部20の下方にグリーストラップ部30が配置されているので、装置サイズを小さくすることができる。また、排気部80にてグリーストラップ部30内の気体を外部に強制排気することによって、グリーストラップ部30で回収された厨芥2や油脂分4による異臭の拡散を防止することができる。さらに、シンク部20とグリーストラップ部30とは分離可能とされていて、シンク部20を分離することによって、グリーストラップ部30で回収された厨芥2と油脂分4を比較的に簡単に外部に取り出すことができる。よって、グリーストラップ部30で、厨芥2や油脂分4が腐敗して異臭が発生した場合は、異臭が拡散しないように異臭源の厨芥2や油脂分4を速やかに排除することができる。
【0050】
また、本実施形態の厨房排水処理装置10は、厨芥減容処理部50を備えているので、グリーストラップ部30の厨芥回収領域31で回収された厨芥2を厨芥減容処理部50で速やかに減容化することができ、これによって、厨芥2の腐敗による異臭の発生を抑制することができる。排気部80は、厨芥減容処理部50に接続しているので、厨芥減容処理部50内の気体を強制排気することによって、厨芥2の減容化による異臭の拡散を防止することができる。さらに、厨芥減容処理部50の処理残渣排出口59とグリーストラップ部30とが連結管70を介して接続しているので、厨芥減容処理部50内の気体と共にグリーストラップ部30内の気体を強制排気することができ、これにより装置サイズを小さくすることができる。また、連結管70によって、作業者が処理残渣7に直接触れずに、処理残渣7をグリーストラップ部30に送ることができる。またさらに、グリーストラップ部30に送られた処理残渣7は、水分5の下方に堆積しているので、処理残渣7の異臭が外部に流出しにくい。このため、処理残渣7を比較的長期間保存することができる。そして、処理残渣7がある程度堆積されたときは、グリーストラップ部の固形物取出口40を介して、厨房排水1に含まれる微細な固形物6と共にまとめて外部に取り出すことができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが可能である。また、実施形態には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0052】
本実施形態の厨房排水処理装置10では、厨芥減容処理部50は、厨芥処理材55に担持されている微生物を利用して厨芥2を分解する生分解型の処理装置であるが、これに限定されるものではない。例えば、厨芥減容処理部50として、乾燥型の処理装置、焼却型の処理装置、乾燥と生分解と併用したハイブリッド型の処理装置などの厨芥の処理装置として利用されている各種の処理装置を用いてもよい。
【0053】
また、本実施形態の厨房排水処理装置10では、グリーストラップ部30と厨芥減容処理部50とを連結管70を介して接続しているが、これに限定されるものではない。例えば、連結管70を介して接続する代わりに、グリーストラップ部30と厨芥減容処理部50とをそれぞれ排気部80に接続してもよい。また、処理対象である厨房排水1の厨芥2の混入量が少ない場合は、厨芥減容処理部50を設けなくともよい。
【0054】
さらに、本実施形態の厨房排水処理装置10では、グリーストラップ部30の底部に固形物取出口40が備えられていて、グリーストラップ部30の底部に堆積された固形物6を、固形物取出口40を外部に取り出すことができるようにされているが、これに限定されるものではない。例えば、固形物取出口40を設ける代わりに、ポンプを設置して、固形物6を汲み取るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 厨房排水
2 厨芥
3 液体
4 油脂分
5 水分
6 固形物
7 処理残渣
10 厨房排水処理装置
11 天板
12 バックガード
13 化粧板
14 補強材
15 脚台
10 厨房排水処理装置
20 シンク部
21 排水口
22 取手
23 排水口栓
30 グリーストラップ部
31 厨芥回収領域
32 バスケット
33 バスケット支持部
34 油水分離領域
35 仕切板
36 油水分離トラップ
37 筒状部材
37a 開口部
38 排水管
38a 開口部
39 U字管
40 固形物取出口
40a コック
50 厨芥減容処理部
51 厨芥投入口
52 蓋
53 厨芥処理槽
54 多孔板
54a 孔部
55 厨芥処理材
56 撹拌具
56a へら部
57 回転軸
58 モータ
59 処理残渣排出口
59a 下面
60 制御板
70 連結管
80 排気部
90 折り畳み式ネット
91 網袋
92 開口
93 縁部
94 把手部
図1
図2
図3
図4
図5