(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】装飾フィルム及び放射線硬化型インクジェットインク
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230516BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230516BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20230516BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/40
C09D11/30
B41M5/00 100
B41M5/00 134
(21)【出願番号】P 2019057174
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】小野 雄也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 直大
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-030527(JP,A)
【文献】特開2015-067656(JP,A)
【文献】国際公開第2014/155976(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0086678(US,A1)
【文献】特開2012-153107(JP,A)
【文献】特開2014-055210(JP,A)
【文献】特開2003-027016(JP,A)
【文献】特開2006-264321(JP,A)
【文献】特表2012-527366(JP,A)
【文献】特開2019-059087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B32B 27/40
C09D 11/30
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルム層と、
前記ベースフィルム層の上に配置された印刷層と、
前記印刷層の上に配置されたテクスチャを有する保護層と
を含む装飾フィルムであって、
前記保護層がインクジェット印刷された放射線硬化型インクジェットインクの硬化物を含み、
前記装飾フィルムの10℃における耐衝撃性が40in・lbs以上であり、
前記装飾フィルムはJIS K 5600-5-1:1999に準拠した耐屈曲性試験で割れを生じない、装飾フィルム
であって、
前記放射線硬化型インクジェットインクが、重合性成分100質量部を基準として、20質量部以上の2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、10~80質量部のジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーとを含む、装飾フィルム。
【請求項2】
前記2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが2官能性脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーである、請求項
1に記載の装飾フィルム。
【請求項3】
前記ジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーが(メタ)アクリロイル基を有する、請求項
1又は
2に記載の装飾フィルム。
【請求項4】
前記印刷層が二次元意匠パターンを有し、前記保護層が三次元形状パターンを有し、前記二次元意匠パターンと前記三次元形状パターンとが同調している、請求項1~
3のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項5】
前記保護層が少なくとも部分的に7μm以上の厚みを有する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項6】
前記装飾フィルムは20℃で80%以上の破断時伸びを有する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項7】
重合性成分100質量部を基準として、20質量部以上の2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、10~80質量部のジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーとを含む、放射線硬化型インクジェットインクであって、前記放射線硬化型インクジェットインクの硬化物のガラス転移温度が0~30℃である、放射線硬化型インクジェットインク。
【請求項8】
60℃における粘度が14mPa・s以下である、請求項
7に記載の放射線硬化型インクジェットインク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、装飾フィルム、より詳細にはテクスチャを有する装飾フィルム、及びそのような装飾フィルムの製造に用いることができる放射線硬化型インクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の内壁及び外壁に装飾を施す目的で装飾フィルムが使用されている。近年の建設及び建築業界では、本物の質感を呈する内装材に対する要望が増している。例えば木目又は石目のようなデザインをより本物に近づける一つの方法として、それらの素材が有するように内装材の表面をエンボスなどの表面加工を用いて凹凸にする、すなわち内装材表面の面内に大きな高低差(アスペリティ)を設けることが挙げられる。また、装飾フィルムに求められるデザインは多様化しており、装飾デザインに合わせて表面に立体的な凹凸デザインを備える装飾フィルムが求められている。
【0003】
特許文献1(特開2014-100811号公報)は、「基材と、前記基材の上に透明インクを用いて図柄を印刷することで形成された表面図柄層と、を備えることを特徴とする積層体」を記載している。
【0004】
特許文献2(特開2008-080650号公報)は、「基材シート上に、光輝性着色層、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び透明性透明保護層を順に有し、少なくとも前記光輝性着色層はエンボス加工により賦型された凹凸模様を有することを特徴とする化粧シート」を記載している。
【0005】
特許文献3(特開2007-253506号公報)は、「樹脂シートの表側及び裏側の両面に絵柄印刷層を有する化粧シートであって、シートの幅方向及び長手方向における表裏絵柄の見当精度が0.08mm以内の誤差である化粧シート」を記載している。
【0006】
特許文献4(特開2005-067175号公報)は、「(A)平面に於ける外観模様を表現した平面模様と、切削調の凹凸面が成す凹凸形状の外観をその階調陰影によって擬似的に表現した凹凸陰影模様とを、それぞれ別々に用意し、(B)平面模様と凹凸陰影模様の各々の画像を重ね合わせて合成することによって、平面模様が前記凹凸面に於ける外観模様であるかの様に擬似的な立体感を表現した合成凹凸面模様を作製し、(C)該合成凹凸面模様を、基材上の前記凹凸面が成す凹凸形状は持たない面上に形成することで、切削調の凹凸面の擬似的な立体感を付与した、立体感のある化粧材の製造方法」を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-100811号公報
【文献】特開2008-080650号公報
【文献】特開2007-253506号公報
【文献】特開2005-067175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
エンボスなどの表面加工技術を用いて内装材の表面に凹凸を設ける場合、内装材を構成する材料、例えばポリマーフィルムは、凹凸の高低差より十分大きな厚みを有する必要がある。しかし、ポリマーフィルムをある程度まで厚くすると剛直になり、内装材の製造時、輸送時及び施工時の取り扱いが困難になる、内装材が被着体の曲面又は角部に対して十分に追従しない、などの問題が生じる場合がある。そのため、エンボス加工により形成可能な凹凸の高低差は、装飾フィルムに質感を付与するため、あるいは装飾フィルムに付される模様に合わせた立体的なデザイン外観を付与するためには十分ではない。
【0009】
内装材は構造物の曲面及び角部を覆うように設置されることが多いことから、可撓性、例えば伸び特性及び曲げ特性を備えていることが要求される。また、冬季では屋内であっても例えば10℃といった低温になる場合があり、施工時及び使用時の破損を防ぐために、内装材は低温耐衝撃性を有することが望ましい。さらに、内装材は日常の清掃に使用される洗剤、アルコールなどの薬品に対して良好な耐薬品性を有することが望ましい。
【0010】
本開示は、質感を備えたテクスチャ又は多様な装飾フィルムのデザインに合わせた立体的な凹凸を表面に有し、かつ可撓性、低温耐衝撃性及び耐薬品性に優れた装飾フィルムを提供する。また、本開示は、そのような装飾フィルムの製造に用いることができる放射線硬化型インクジェットインクを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一実施態様によれば、ベースフィルム層と、前記ベースフィルム層の上に配置された印刷層と、前記印刷層の上に配置されたテクスチャを有する保護層とを含む装飾フィルムであって、前記保護層がインクジェット印刷された放射線硬化型インクジェットインクの硬化物を含み、前記装飾フィルムの10℃における耐衝撃性が40in・lbs以上であり、前記装飾フィルムはJIS K 5600-5-1:1999に準拠した耐屈曲性試験で割れを生じない、装飾フィルムが提供される。
【0012】
本開示の別の実施態様によれば、重合性成分100質量部を基準として、20質量部以上の2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、10~80質量部のジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーとを含む、放射線硬化型インクジェットインクであって、前記放射線硬化型インクジェットインクの硬化物のガラス転移温度が0~30℃である、放射線硬化型インクジェットインクが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本開示の装飾フィルムは、放射線硬化型インクジェットインクをインクジェット印刷して形成された保護層により付与された、質感を備えたテクスチャ又は装飾フィルムのデザインに合わせた立体的な凹凸をその表面に有しており、可撓性、低温耐衝撃性及び耐薬品性に優れている。そのため、装飾フィルムを建築物の内装材などの用途に好適に使用することができる。
【0014】
なお、上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施態様の装飾フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0017】
本開示において、「単官能モノマー」とは、反応性の官能基を1つのみ有する化合物を意味し、一般にその分子量は1000未満である。
【0018】
本開示において、「オリゴマー」とは、モノマーに由来する単位を複数有する化合物を意味し、一般にその分子量は約500以上、又は約1000以上である。例えばウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとは、ウレタン結合を有する単位を複数含み、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
【0019】
本開示において、「テクスチャ」とは、観察者が視覚又は触覚により感知することができる、ある表面上の三次元形状を意味する。
【0020】
本開示において、「透明」とは、ある材料又は物品の波長範囲400~700nmにおける全光線透過率が約70%以上、又は約90%以上であることを意味する。全光線透過率はJIS K 7361-1:1997(ISO 13468-1:1996)に準拠して決定される。
【0021】
本開示において、「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイル又はメタクリロイルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0022】
本開示の装飾フィルムは、ベースフィルム層と、ベースフィルム層の上に配置された印刷層と、印刷層の上に配置されたテクスチャを有する保護層とを含む。本開示において「上に配置」とは、直接的に上に配置される場合のみならず、間接的に上に配置される場合を含む。例えば、印刷層と保護層との間には、一又は複数の別の層が含まれてもよい。上に配置される層は部分的に配置されてもよい。
【0023】
保護層は、インクジェット印刷された放射線硬化型インクジェットインクの硬化物を含む。
【0024】
一実施態様では、放射線硬化型インクジェットインクは、2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、ジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーとを含む。この実施態様では、特に装飾フィルムの可撓性、低温耐衝撃性及び耐薬品性を改善することができる。
【0025】
一実施態様において、装飾フィルムの10℃における耐衝撃性(低温耐衝撃性)は40in・lbs(約4.52Nm)以上であり、装飾フィルムはJIS K 5600-5-1:1999に準拠した耐屈曲性試験で割れを生じない。この実施態様では、装飾フィルムがこのような耐衝撃性及び耐屈曲性を備えるように、保護層の形成に使用される放射線硬化型インクジェットインクの成分及び組成が決定される。保護層の厚み、ベースフィルム層の材料及び厚みなども、装飾フィルムの耐衝撃性及び耐屈曲性に関与する場合があり、これらを考慮して放射線硬化型インクジェットインクの成分及び組成を決定してもよい。
【0026】
装飾フィルムの10℃における耐衝撃性は、好ましくは約50in・lbs(約5.65Nm)以上、より好ましくは約60in・lbs(約6.78Nm)以上である。装飾フィルムの5℃における耐衝撃性は、好ましくは約30in・lbs(約3.39Nm)以上、より好ましくは約40in・lbs(約4.52Nm)以上である。いくつかの実施態様では、装飾フィルムの5℃又は10℃における耐衝撃性は、約200in・lbs(約22.6Nm)以下、約150in・lbs(約17.0Nm)以下、又は約100in・lbs(約11.3Nm)以下である。耐衝撃性は、装飾フィルムを長さ150mm、幅70mmに切断し、25℃で長さ150mm、幅70mm、厚み1mmのアルミ板に貼り付け、装飾フィルムを5℃又は10℃の条件で24時間放置した後、耐衝撃性試験装置にセットし、2ポンドの重りを5インチから40インチまで高さを変更しながら温度5℃又は10℃で装飾フィルム表面に落とし、装飾フィルムの外観を観察して割れが生じたときのモーメント(in・lbs)として決定される。
【0027】
装飾フィルムの耐屈曲性試験は、具体的には、装飾フィルムを長さ50mm、幅25mmに切断し、25℃で長さ150mm、幅30mm、厚み1mmのアルミニウム板に貼り付け、25℃で24時間放置した後、装飾フィルムが貼り付けられたアルミニウム板を、JIS K 5600-5-1:1999に準拠して、塗膜屈曲試験機を用いて直径5mmのマンドレルの周囲に180°に屈曲させ、装飾フィルムの屈曲部の割れの有無を目視で観察することにより行う。
【0028】
本開示の一実施態様の装飾フィルムを
図1に概略断面図で示す。装飾フィルム10は、ベースフィルム層12と、ベースフィルム層12の上に配置された印刷層14と、印刷層14の上に配置された保護層16とを含む。保護層16はインクジェット印刷された放射線硬化型インクジェットインクの硬化物を含み、保護層16の三次元形状により装飾フィルムにテクスチャが付与されている。
図1では印刷層14が保護層16に完全に被覆されて示されているが、印刷層14の一部が外部に露出していてもよい。印刷層14及び保護層16はそれぞれ連続であってもよく、不連続であってもよい。
【0029】
ベースフィルム層として、様々な樹脂、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むアクリル樹脂、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、フッ素樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)などの共重合体又はこれらの混合物を含むフィルムを使用することができる。
【0030】
強度、耐衝撃性などの観点から、ベースフィルム層としてポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体又はポリカーボネートを含むフィルムが有利に使用できる。ベースフィルム層は、印刷インクのレセプタ層として、及び/又は外部からの穿刺、衝撃などから被着体表面を保護する保護層として機能することもできる。ベースフィルム層を印刷インクのレセプタ層として機能させる場合、ベースフィルム層がポリ塩化ビニルフィルム又はポリウレタンフィルムであることが、印刷適性、耐溶剤性(例えば耐アルコール性)などの点で有利である。難燃性、柔軟性などの点で、ベースフィルム層としてポリ塩化ビニルフィルムを有利に使用することができる。
【0031】
ベースフィルム層の厚みは様々であってよいが、装飾フィルムの強度及び取扱い性の観点から、一般に約10μm以上、約20μm以上、又は約50μm以上、約500μm以下、約200μm以下、又は約100μm以下とすることができる。ベースフィルム層が平坦でない場合のベースフィルム層の厚みとは、ベースフィルム層のうち最も薄い部分の厚みを意味する。例えば、ベースフィルム層はエンボス加工されていてもよい。エンボス加工の深さは、一般にベースフィルム層の厚み未満の範囲で、約1μm以上、約2μm以上、又は約5μm以上、約50μm以下、約20μm以下、又は約10μm以下とすることができる。
【0032】
ベースフィルム層は透明、半透明又は不透明であってよく、無色又は有色であってもよい。一実施態様ではベースフィルム層は白色に着色されている。この実施態様は、ベースフィルム層の上に直接又は間接的に配置される印刷層によって作られる画像の鮮明さ、発色などの点で有利である。
【0033】
印刷層は、装飾フィルムに絵柄、パターンなどで装飾性又は意匠性を付与するために使用される。ベースフィルム層の上に直接又は他の層を介して、トナー、インクなどの着色剤を用いて印刷することにより印刷層を形成することができる。ベースフィルム層が透明又は半透明である場合、印刷層をベースフィルム層と接着層の間に形成することもできる。印刷層は、グラビア印刷、静電印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷などの印刷技術を用いることにより形成することができる。印刷インクとして、溶剤系インク又はUV硬化型インクを用いることができる。
【0034】
一実施態様では印刷層はインクジェット印刷層である。別の実施態様では印刷層はUV硬化型インクを用いたインクジェット印刷により形成される。インクジェット印刷、特にUV硬化型インクを用いたインクジェット印刷は、短納期のオンデマンド製造を可能にする。
【0035】
印刷層の厚みは様々であってよく、一般に溶剤系インクを用いた場合は、約1μm以上、又は約2μm以上、約10μm以下、又は約5μm以下とすることができる。UV硬化型インクを用いた場合は、約1μm以上、又は約5μm以上、約50μm以下、又は約30μm以下とすることができる。
【0036】
印刷層は連続であってもよく、不連続であってもよい。印刷層は、装飾フィルムの全面に対応するように配置されていてもよく、一部又は複数の部分に対応するように配置されていてもよい。
【0037】
放射線硬化型インクジェットインクの硬化物を含む保護層は、印刷層の上に配置され、放射線硬化型インクジェットインクをインクジェット印刷することにより形成されたテクスチャを有する。保護層のテクスチャは、一般に保護層が三次元形状を有することにより観察者により視覚的又は触覚的に感知される。
【0038】
放射線硬化型インクジェットインクは無溶剤インクであることが環境負荷、作業性及び硬化性の観点から有利である。放射線硬化型インクジェットインクとして水系インク又は溶剤系インクを使用することもできる。
【0039】
放射線硬化型インクジェットインクは透明、半透明又は不透明であってよく、無色又は有色であってもよい。保護層の全てを透明又は半透明の放射線硬化型インクジェットインクで形成してもよく、保護層の一部を透明又は半透明の放射線硬化型インクジェットインクを用いて形成し、保護層の残りを不透明の放射線硬化型インクジェットインクで形成してもよい。一実施態様では、放射線硬化型インクジェットインクは透明であり、厚み50μmの硬化物を形成したときに、その硬化物の波長範囲400~700nmにおける全光線透過率が約70%以上、又は約90%以上である。
【0040】
一実施態様では放射線硬化型インクジェットインクはラジカル重合型のアクリル系インクである。アクリル系インクを用いて形成された保護層は、透明性、強度、耐候性などに優れており、例えば装飾フィルムを内装材として用いる場合に有利である。
【0041】
一実施態様では、放射線硬化型インクジェットインクは、2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、ジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーとを含む。放射線硬化型インクジェットインクは、必要に応じて、その他の重合性モノマー又は重合性オリゴマー、光重合開始剤、添加剤、例えば光安定剤、重合禁止剤、UV吸収剤、消泡剤、防汚剤、表面調整剤、フィラーなどを含んでもよい。
【0042】
2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ジオールとジイソシアネートの反応生成物であるウレタンオリゴマーの両末端に(メタ)アクリロイル基が導入されたものであり、(メタ)アクリロイル基が他の2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの(メタ)アクリロイル基又は単官能モノマーと反応して硬化物が形成される。2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、放射線硬化型インクジェットインクの硬化物に可撓性、低温耐衝撃性及び耐薬品性を付与することができる。2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。ウレタンオリゴマーを構成するジオール及びジイソシアネートはいずれも、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0043】
ジオールとして、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。
【0044】
ジオールは低分子量ジオールを含んでもよい。低分子量ジオールとして、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、1,2-シクロペンタンジオール、及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールが挙げられる。
【0045】
ジイソシアネートとして、脂肪族イソシアネート及び芳香族イソシアネートが挙げられる。脂肪族イソシアネートとして、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及び4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。芳香族イソシアネートとして、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、メチレンジフェニル4,4’-ジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、1,5-ナフタレンジイソシアネート、及び2-メチル-1,5-ナフタレンジイソシアネートが挙げられる。
【0046】
ジオール及びジイソシアネートの両方を脂肪族化合物とすることで、放射線硬化型インクジェットインクの硬化物、及びその硬化物を含む保護層の耐候性を高めることができる。
【0047】
(メタ)アクリロイル基の導入は、ウレタンオリゴマーのイソシアナト末端に水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることにより行うことができる。水酸基含有(メタ)アクリレートとして、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、及びジプロピレングリコールモノメタクリレートが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレートは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。この実施態様では、ウレタンオリゴマーの合成の際に、ジイソシアネートをジオールに対して過剰に使用する、すなわちNCO基/OH基のモル比を1より大きくすることが望ましい。
【0048】
(メタ)アクリロイル基の導入は、ウレタンオリゴマーの水酸基末端にイソシアナト基含有(メタ)アクリレートを反応させることにより行うこともできる。イソシアナト基含有(メタ)アクリレートとして、2-イソシアナトエチルアクリレート、及び2-イソシアナトエチルメタクリレートが挙げられる。この実施態様では、ウレタンオリゴマーの合成の際に、ジオールをジイソシアネートに対して過剰に使用する、すなわちNCO基/OH基のモル比を1未満とすることが望ましい。
【0049】
2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとして、例えば、ポリエステルウレタンジ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネートウレタンジ(メタ)アクリレートオリゴマー、及びポリエーテルウレタンジ(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0050】
2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、2官能性脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーであることが有利である。2官能性脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーは、耐候性に優れた硬化物及びそのような硬化物を含む保護層を提供することができる。
【0051】
2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの数平均分子量Mnは、一般に、約500以上、約1000以上、又は約1200以上、約5000以下、約4000以下、又は約3000以下である。2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量Mwは、一般に、約500以上、約1000以上、又は約1200以上、約5000以下、約4000以下、又は約3000以下である。数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算値である。
【0052】
放射線硬化型インクジェットインクは、2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを、重合性成分100質量部を基準として、約20質量部以上、約25質量部以上、又は約30質量部以上含むことが望ましい。2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量を、重合性成分100質量部を基準として、約20質量部以上とすることにより、放射線硬化型インクジェットインクの硬化物の可撓性、低温耐衝撃性及び耐薬品性をより高めることができる。放射線硬化型インクジェットインクは、2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを、重合性成分100質量部を基準として、約50質量部以下、約45質量部以下、又は約40質量部以下含むことが望ましい。2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量を、重合性成分100質量部を基準として、約50質量部以下とすることにより、良好なインクジェット吐出性を得ることができる。本開示において「重合性成分」とは、2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマー、並びにその他の重合性モノマー及び重合性オリゴマーを包含する。
【0053】
ジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーは、分子内にジオキサン部位及びジオキソラン部位の少なくとも1つを有し、かつ反応性の官能基を1つのみ有する化合物である。ジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーは、2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと組み合わせることにより、硬化物及びその硬化物を含む保護層の低温耐衝撃性を高めることができる。反応性の官能基として、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、及びビニル基が挙げられる。2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとの反応性が高いことから、ジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーは(メタ)アクリロイル基、特にアクリロイル基を有することが有利である。ジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーは、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0054】
ジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーとして、例えば、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル(メタ)アクリレート(環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートともいう。)、(2-メチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2,2-ジメチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2,5-ジエチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2,2,5-トリエチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2,5-ジエチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル(メタ)アクリレート、1,3-ジオキサン環を有するポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのジオキサン部位を有する単官能モノマー、及び(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-シクロヘキシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-アセトニル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、2-(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)エチル(メタ)アクリレート、3-(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)プロピル(メタ)アクリレートなどのジオキソラン部位を有する単官能モノマーが挙げられる。
【0055】
ジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーは、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル(メタ)アクリレート、又は(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレートであることが望ましく、2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとの反応性が高いことから、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルアクリレート、又は(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートであることがより望ましく、低温耐衝撃性に優れた硬化物を与えることから(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートであることが特に望ましい。
【0056】
放射線硬化型インクジェットインクは、ジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーを、重合性成分100質量部を基準として、約10質量部以上、約20質量部以上、又は約30質量部以上、約80質量部以下、約70質量部以下、又は約50質量部以下含むことが望ましい。ジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーの含有量を、重合性成分100質量部を基準として、約10質量部以上とすることにより、良好な低温衝撃性を得ることができる。ジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーの含有量を、重合性成分100質量部を基準として、約80質量部以下とすることにより、良好な耐候性を得ることができる。
【0057】
放射線硬化型インクジェットインクは、その他の重合性モノマーを含んでもよい。その他の重合性モノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-メチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどの鎖状アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル含有(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミドなどの窒素含有(メタ)アクリロイル化合物;(メタ)アクリル酸などの単官能モノマーが挙げられる。その他の重合性モノマーとして、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、ビニルトルエンなどのビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル;クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸などの単官能モノマーも挙げられる。
【0058】
その他の重合性モノマーは多官能モノマーであってもよい。多官能モノマーは架橋剤として機能して、硬化物の強度及び耐久性を高めることができる。多官能モノマーを用いて架橋することにより、硬化物のベースフィルム層又は装飾フィルムのその他の層への密着性を高めることができる場合もある。
【0059】
多官能モノマーとして、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの2官能(メタ)アクリレート;グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートを使用することができる。
【0060】
2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、及びジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーとの反応性が高く、ベースフィルム層、印刷層などの他の材料との密着性に優れた硬化物を形成することから、その他の重合性モノマーは(メタ)アクリロイル基、特にアクリロイル基を有することが有利である。
【0061】
いくつかの実施態様では、放射線硬化型インクジェットインクは、上記単官能モノマー及び多官能モノマーを含むその他の重合性モノマーを含まないか、あるいは重合性成分100質量部を基準として、約0質量部超、約10質量部以上、又は約20質量部以上、約70質量部以下、約60質量部以下、又は約50質量部以下含む。
【0062】
2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー以外のその他の重合性オリゴマーとして、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどを使用することができる。これらの重合性オリゴマーは単官能であってもよく、多官能であってもよい。
【0063】
いくつかの実施態様では、放射線硬化型インクジェットインクは、その他の重合性オリゴマーを含まないか、あるいは重合性成分100質量部を基準として、約0質量部超、約5質量部以上、又は約10質量部以上、約50質量部以下、約40質量部以下、又は約30質量部以下含む。
【0064】
いくつかの実施態様では、放射線硬化型インクジェットインク中のその他の多官能重合性モノマー及び多官能重合性オリゴマーの合計含有量は、重合性成分100質量部を基準として、約10質量部以下、約5質量部以下、又は約3質量部以下である。上記合計含有量を約10質量部以下とすることにより、硬化物の可撓性を高めることができる。
【0065】
光重合開始剤として、例えば、ラジカル重合反応を誘起する公知の化合物を使用することができる。光重合開始剤として、分子内開裂型及び水素引き抜き型のいずれも使用することができ、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジエトキシホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ベンゾインアルキルエーテル(例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、n-ブチルベンゾインエーテルなど)、メチルベンゾイルホルメート、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、ベンジル、アセトフェノン、チオキサントン化合物(2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン)、カンファーキノン、3-ケトクマリン、アントラキノン化合物(例えば、アントラキノン、2-エチルアントラキノン、α-クロロアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノンなど)、アセナフセン、4,4’-ジメトキシベンジル、及び4,4’-ジクロロベンジルが挙げられる。光重合開始剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0066】
いくつかの実施態様では、放射線硬化型インクジェットインクは、光重合開始剤を、重合性成分100質量部を基準として、約1質量部以上、又は約2質量部以上、約20質量部以下、又は約15質量部以下含む。
【0067】
放射線硬化型インクジェットインクは、任意成分として光安定剤、重合禁止剤、UV吸収剤、消泡剤、防汚剤、表面調整剤、フィラーなどの添加剤を含んでもよい。
【0068】
放射線硬化型インクジェットインクの粘度は、25℃において約5mPa・s以上、又は約15mPa・s以上、約60mPa・s以下、又は約50mPa・s以下とすることができる。放射線硬化型インクジェットインクの25℃における粘度を上記範囲とすることにより、インク液滴着弾時にインク液滴の形状を維持することができ、効率的に三次元形状を有する保護層を形成することができる。
【0069】
放射線硬化型インクジェットインクの粘度は、60℃において約1mPa・s以上、又は約3mPa・s以上、約14mPa・s以下、又は約12mPa・s以下とすることができる。放射線硬化型インクジェットインクの60℃における粘度を上記範囲とすることにより、インク液滴射出時のインク流動性を確保して、放射線硬化型インクジェットインクの印刷適性を高めることができる。
【0070】
いくつかの実施態様では、放射線硬化型インクジェットインクの硬化物のガラス転移温度(Tg)は、約0℃以上、又は約5℃以上、約30℃以下、又は約25℃以下である。硬化物のガラス転移温度を約0℃以上とすることにより、硬化物のベタつき(タック感)を低減することができる。このようなベタつきの少ない硬化物は、例えば、装飾フィルムの保護層として適している。硬化物のガラス転移温度を約30℃以下とすることにより、そのような硬化物を含む装飾フィルムに優れた可撓性及び低温耐衝撃性を付与することができる。硬化物のガラス転移温度(Tg)は、硬化物がn種類のモノマーの共重合物から形成されているとして、下記のFOXの式(Fox, T. G., Bull. Am. Phys. Soc., 1 (1956), p. 123)
【数1】
を用いて計算ガラス転移温度として求めることができる。式中、Tg
iは成分iのホモポリマーのガラス転移温度(℃)、X
iは重合の際に添加した成分iのモノマーの質量分率をそれぞれ示し、iは1~nの自然数であり、
【数2】
である。
【0071】
ベースフィルム層の上に直接又は他の層を介して、放射線硬化型インクジェットインクをインクジェット印刷し、紫外線、電子線などの放射線を照射して硬化することにより、テクスチャを有する保護層を形成することができる。放射線硬化型インクジェットインクは、印刷層の少なくとも一部の上に印刷されてもよく、印刷層の全体の上に印刷されてもよい。放射線硬化型インクジェットインクを局所的に又は全面に複数回繰り返し印刷して、保護層の厚みを大きくしてもよい。
【0072】
保護層の厚みは様々であってよいが、いくつかの実施態様では、少なくとも部分的に約7μm以上、約20μm以上、又は約30μm以上である。保護層が約7μm以上の厚みを有する部分を備えることで、本物の質感を備えたテクスチャ又は装飾フィルムのデザインに合わせた立体的な凹凸を装飾フィルムの表面に付与することができる。
【0073】
いくつかの実施態様では、保護層の最大厚みは、約500μm以下、約300μm以下、又は約100μm以下である。保護層の最大厚みを約500μm以下とすることで、保護層の可撓性、例えば伸び特性及び曲げ特性を好適なものとすることができる。
【0074】
いくつかの実施態様では、保護層の最大高さ粗さRzは、約0.5μm以上、約1μm以上、又は約1.5μm以上、約20μm以下、約15μm以下、又は約10μm以下である。保護層の最大高さ粗さRzを上記範囲とすることで、本物の質感を備えたテクスチャ又は装飾フィルムのデザインに合わせた立体的な凹凸を装飾フィルムの表面に付与することができる。
【0075】
保護層は透明であってもよく、半透明であってもよい。保護層は透明であることが望ましい。いくつかの実施態様では、保護層の全光線透過率は約90%以上、約92%以上、又は約95%以上であり、ヘーズは約2%以下、約1.5%以下、又は約1.0%以下である。全光線透過率及びヘーズが上記範囲であることで、装飾フィルムの印刷層により提供される画像をより鮮明なものとすることができる。ヘーズは、JIS K 7136:2000(ISO 14782:1999)に準拠して決定される。
【0076】
装飾フィルムは印刷層の反対側のベースフィルム層の上に配置された接着層をさらに含んでもよい。
図1には、印刷層14の反対側のベースフィルム層12の上に配置された接着層18が示されている。接着層は、一般に、アクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系などの、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤を使用して形成することができる。
【0077】
接着層の厚みは、一般に、約3μm以上、約5μm以上、又は約10μm以上、約100μm以下、約80μm以下、又は約50μm以下とすることができる。
【0078】
一実施態様では接着層は感圧接着層である。感圧接着層の接着力を調節する目的で、感圧接着層が、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリウレタンなどを含む弾性微小球を含んでもよい。
【0079】
接着層の表面にライナーが配置されていてもよい。ライナーとして、例えばクラフト紙などの紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸セルロースなどのポリマー、これらのポリマーで被覆された紙などを挙げることができる。これらのライナーは、シリコーン、フルオロカーボンなどで剥離処理された表面を有してもよい。ライナーの厚みは、一般に約5μm以上、約15μm以上、又は約25μm以上、約300μm以下、約200μm以下、又は約150μm以下とすることができる。
【0080】
接着層は、接着層の外縁に延在する連通路を有する微細構造化表面を有してもよい。装飾フィルムを被着体に適用するときに、微細構造化表面の連通路を介して装飾フィルムと被着体の間に挟まれた気泡を外部に排出することができる。この実施態様では、ライナーはその剥離面に接着層の微細構造化表面に対応する凹凸構造を有してもよい。ライナーは、接着層の微細構造化表面を形成する際に使用されたものと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0081】
ベースフィルム層の上に他の層、例えば金属層などの装飾層、印刷インクのレセプタ層などが積層されていてもよい。これらの層は接合層によって接合されていてもよい。装飾層は、装飾フィルムの全面に対応するように配置されていてもよく、一部又は複数の部分に対応するように配置されていてもよい。
【0082】
金属層は、インジウム、スズ、クロムなどの金属を蒸着、スパッタなどによってベースフィルム層又は装飾フィルムのその他の層の上に堆積することによって形成することができる。蒸着又はスパッタの際に金属マスクなどを使用してパターン又は絵柄を形成することもできる。金属層の厚みは、様々であってよく、一般に約5nm以上、約10nm以上、又は約20nm以上、約10μm以下、約5μm以下、又は約2μm以下とすることができる。
【0083】
印刷インクのレセプタ層として様々な樹脂フィルムを使用することができる。レセプタ層を構成する樹脂として、特に限定されないが、アクリル系ポリマー、ポリオレフィン、ポリビニルアセタール、フェノキシ樹脂などが使用できる。レセプタ層を形成する樹脂のガラス転移温度は、一般に約0℃以上、約100℃以下とすることができる。ガラス転移温度を上記範囲とすることにより、装飾フィルム全体の柔軟性を損なわずに、トナーの転写又はインクの印刷により鮮明な画像を得ることができる。レセプタ層の厚みは、一般に約2μm以上、約5μm以上、又は約10μm以上、約50μm以下、約40μm以下、又は約30μm以下とすることができる。
【0084】
装飾フィルムを構成する層を結合する接合層は、一般に、アクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系などの、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤を含む。接合層の厚みは、一般に約1μm以上、約2μm以上、又は約5μm以上、約50μm以下、約40μm以下、又は約30μm以下とすることができる。
【0085】
一実施態様では、印刷層が二次元意匠パターンを有し、保護層が三次元形状パターンを有し、二次元意匠パターンと三次元形状パターンとが同調している。印刷層の二次元意匠パターンと保護層の三次元形状パターンが同調していることにより、視覚及び触覚の両方の側面からテクスチャをより強調することができる。
【0086】
印刷層の二次元意匠パターンと保護層の三次元形状パターンが同調した装飾フィルムは、例えば、印刷層の画像データを提供する工程と、印刷層の画像データをグレースケールに変換してグレースケール画像データを生成する工程と、グレースケール画像データのトーンを反転して保護層の画像データを生成する工程と、必要に応じて保護層の画像データのトーンカーブを調整する工程と、印刷層の画像データに基づいて、UV硬化型CMYKインクを用いたインクジェット印刷によりベースフィルム層の上に二次元意匠パターンを有する印刷層を形成する工程と、保護層の画像データに基づいて、放射線硬化型インクジェットインクを用いたインクジェット印刷により印刷層の上に保護層を形成する工程と、を含む方法により製造することができる。
【0087】
印刷層を形成する工程と保護層を形成する工程とを連続して行ってもよい。印刷層を形成する工程と保護層を形成する工程とを、複数のインクジェット印刷ヘッドを備えた一つの装置内で行ってもよい。保護層を形成する工程を複数繰り返して表面の凹凸の高低差が大きい保護層を形成することができるように、インクジェット印刷装置は印刷物(例えばベースフィルム層のフィルム)を往復させることが可能な搬送装置を備えていてもよく、保護層のインクジェット印刷ヘッドを複数備えていてもよい。
【0088】
印刷層の二次元意匠パターンと保護層の三次元形状パターンは、インクジェット印刷装置において印刷層のインクジェット印刷ヘッドと保護層のインクジェット印刷ヘッドを直列に配置し、上記方法により得られる印刷層の画像データ及び保護層の画像データにそれぞれ基づいて印刷層と保護層を連続して印刷することにより、より正確に同調させることができる。
【0089】
印刷層の二次元意匠パターン及び保護層の三次元形状パターンは、一つの装飾フィルムにおいて繰り返されてもよく、繰り返しのないパターンであってもよい。インクジェット印刷を用いることで、繰り返しパターンだけではなく、繰り返しのないパターンも容易に形成することができる。エンボスロールを用いるエンボス加工では、エンボスロールの外周よりも長い繰り返しのない三次元形状パターンを形成することはできない。繰り返しのないパターンとすることで、デザインの設計上の自由度を高めて、一品物のデザインを有する装飾フィルムを製造することができる。
【0090】
一実施態様では、装飾フィルムは20℃で約80%以上、約100%以上、又は約120%以上の破断時伸びを有する。破断時伸びは、装飾フィルムを長さ150mm、幅25mmに切断し、引張試験機を用い、挟み感覚50mm、引張速度300mm/分、20℃で引張試験を行い、(装飾フィルムの破断時の長さ-装飾フィルムの伸長前の長さ)/(装飾フィルムの伸長前の長さ)×100(%)の式から決定することができる。
【0091】
装飾フィルムの合計厚みは、一般に約50μm以上、約60μm以上、又は約70μm以上、約700μm以下、約600μm以下、又は約500μm以下とすることができる。装飾フィルムの合計厚みにはライナーの厚みは含まれない。
【0092】
装飾フィルムは一枚ごとのシート、ロール、複数の装飾フィルムの積層体など、様々な形態で提供することができる。一実施態様では装飾フィルムはロールの形態である。
【0093】
装飾フィルムは、様々な被着体の表面に接着することができ、例えば、コンクリート、ガラス、塗装板、フローリング材、壁紙、石膏ボードなどに適用することができる。被着体が建築構造物の一部、例えば壁、窓、床、天井、柱などであってもよい。
【実施例】
【0094】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。
【0095】
本実施例において使用した材料及び試薬を表1に示す。
【表1】
【0096】
放射線硬化型インクジェットインク及び組成物の調製
下記の手順にて例1~11の放射線硬化型インクジェットインク及び比較例1~5の放射線硬化型組成物を調製した。表2に示すモノマー、オリゴマー及び光重合開始剤をミキサーで60分撹拌してプレミックス溶液を得た。その後、表面調整剤をプレミックス溶液に加え、5分撹拌して放射線硬化型インクジェットインク又は組成物を得た。表2中の数値は各成分の配合量(質量部)である。計算ガラス転移温度は、放射線硬化型インクジェットインク又は組成物の成分及び組成に基づきFOXの式を用いて求めた。粘度は、レオメーターを用いて温度60℃、60mmコーンプレート、回転数150rpmの条件で測定した。例1~11の放射線硬化型インクジェットインクの粘度はいずれも60℃で14mPa・s以下であり、インクジェット印刷適性を有していた。
【0097】
フィルムサンプルの作製-インクジェット印刷
保護層として、例1の放射線硬化型インクジェットインクを、インクジェットプリンタ(インクジェットヘッドKM1024iLMHB、720×720dpi、コニカミノルタ株式会社、日本国東京都千代田区)を用いて、3M(登録商標)スコッチカル(登録商標)グラフィックフィルムIJ180Cv3-10XR(ポリ塩化ビニルフィルム、スリーエムジャパン株式会社、日本国東京都品川区)上に印刷した。メタルハライドランプ(UVA:1956mW/cm2、照射量1095mJ/cm2)で紫外線を照射することにより保護層を硬化させてフィルムサンプルを得た。硬化した保護層の厚みは約50μmであった。
【0098】
フィルムサンプルの作製-コーティング
保護層として、例1~11の放射線硬化型インクジェットインク及び比較例1~5の放射線硬化型組成物を、#20のワイヤーバーを用いて3M(登録商標)スコッチカル(登録商標)グラフィックフィルムIJ180Cv3-10XR(ポリ塩化ビニルフィルム、スリーエムジャパン株式会社、日本国東京都品川区)上にコーティングした。フュージョンランプ(Hbulb)(UVA:1000mW/cm2、照射量600mJ/cm2)で紫外線を照射することにより保護層を硬化させてフィルムサンプルを得た。
【0099】
フィルムサンプルの耐薬品性(耐アルコール性)、破断時伸び、低温耐衝撃性及び屈曲追従性を以下の手順で評価した。評価結果を表2に示す。
【0100】
<評価方法>
1.耐アルコール性
フィルムサンプルの表面を、イソプロパノール(IPA)を含有させたキムタオル(登録商標)で10回擦った。その後、フィルムサンプルの表面の光沢変化の有無を目視で観察した。光沢変化がないものを「良好」、あったものを「不良」とした。
【0101】
2.破断時伸び
フィルムサンプルを長さ150mm、幅25mmに切断し、引張試験機(テンシロン万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ、日本国東京都豊島区)を用い、挟み間隔50mm、引張速度300mm/分、20℃でフィルムが破断する時点での伸びを測定した。(フィルムサンプルの破断時の長さ-フィルムサンプルの伸長前の長さ)/(フィルムサンプルの伸長前の長さ)×100(%)の式から破断時伸びを決定した。
【0102】
3.低温耐衝撃性
フィルムサンプルを長さ150mm、幅70mmに切断し、25℃で長さ150mm、幅70mm、厚み1mmのアルミ板に貼り付けた。フィルムサンプルを5℃の条件で24時間放置した後、耐衝撃性試験装置(IM-IG-1120、The Paul N. Gardner Company, Inc.、米国フロリダ州ポンパノビーチ)にセットし、2ポンドの重りを5インチから40インチまで高さを変更しながら温度5℃又は10℃の条件下でフィルム表面に落とし、フィルムサンプルの外観を観察して割れが生じたときのモーメント(in・lbs)を記録した。
【0103】
4.屈曲追従性
フィルムサンプルを長さ50mm、幅25mmに切断し、25℃で長さ150mm、幅30mm、厚み1mm厚のアルミニウム板(A5052)に貼り付け、25℃で24時間放置した。その後、フィルムサンプルが貼り付けられたアルミニウム板を、JIS K 5600-5-1:1999に準拠して、塗膜屈曲試験機(PI-801、テスター産業株式会社、日本国埼玉県入間郡三芳町)を用いて直径5mmのマンドレルの周囲に180度に屈曲させ、フィルムサンプルの屈曲部の割れの有無を目視で観察した。割れがないものを「良好」、割れがあったものを「不良」とした。
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【表2-4】
本発明の実施態様の一部を以下記載する。
[態様1]
ベースフィルム層と、
前記ベースフィルム層の上に配置された印刷層と、
前記印刷層の上に配置されたテクスチャを有する保護層と
を含む装飾フィルムであって、
前記保護層がインクジェット印刷された放射線硬化型インクジェットインクの硬化物を含み、
前記装飾フィルムの10℃における耐衝撃性が40in・lbs以上であり、
前記装飾フィルムはJIS K 5600-5-1:1999に準拠した耐屈曲性試験で割れを生じない、装飾フィルム。
[態様2]
前記放射線硬化型インクジェットインクが、2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、ジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーとを含む、態様1に記載の装飾フィルム。
[態様3]
前記2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが2官能性脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーである、態様2に記載の装飾フィルム。
[態様4]
前記ジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーが(メタ)アクリロイル基を有する、態様2又は3のいずれかに記載の装飾フィルム。
[態様5]
前記放射線硬化型インクジェットインクが、重合性成分100質量部を基準として、20質量部以上の前記2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、10~80質量部の前記ジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーとを含む、態様2~4のいずれかに記載の装飾フィルム。
[態様6]
前記印刷層が二次元意匠パターンを有し、前記保護層が三次元形状パターンを有し、前記二次元意匠パターンと前記三次元形状パターンとが同調している、態様1~5のいずれかに記載の装飾フィルム。
[態様7]
前記保護層が少なくとも部分的に7μm以上の厚みを有する、態様1~6のいずれかに記載の装飾フィルム。
[態様8]
前記装飾フィルムは20℃で80%以上の破断時伸びを有する、態様1~7のいずれかに記載の装飾フィルム。
[態様9]
重合性成分100質量部を基準として、20質量部以上の2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、10~80質量部のジオキサン部位又はジオキソラン部位を有する単官能モノマーとを含む、放射線硬化型インクジェットインクであって、前記放射線硬化型インクジェットインクの硬化物のガラス転移温度が0~30℃である、放射線硬化型インクジェットインク。
[態様10]
60℃における粘度が14mPa・s以下である、態様9に記載の放射線硬化型インクジェットインク。
[態様11]
前記2官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが2官能性脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーである、態様9又は10のいずれかに記載の放射線硬化型インクジェットインク。
[態様12]
前記単官能モノマーが(メタ)アクリロイル基を有する、態様9~11のいずれかに記載の放射線硬化型インクジェットインク。
【符号の説明】
【0108】
10 装飾フィルム
12 ベースフィルム層
14 印刷層
16 保護層
18 接着層