(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】ガットクランプ機構
(51)【国際特許分類】
A63B 51/14 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
A63B51/14
(21)【出願番号】P 2019128236
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390010917
【氏名又は名称】ヨネックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【氏名又は名称】北川 雅章
(74)【代理人】
【識別番号】100073324
【氏名又は名称】杉山 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134898
【氏名又は名称】岩田 克子
(72)【発明者】
【氏名】土田 明
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-244780(JP,A)
【文献】特開2010-263988(JP,A)
【文献】特開2006-055973(JP,A)
【文献】特開昭58-198808(JP,A)
【文献】特開2003-334264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0277039(US,A1)
【文献】米国特許第5090697(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 49/00-51/16
A63B 55/00-60/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに沿って移動自在のクランプ台と、
前記クランプ台上に立設した支持ポストと、
前記支持ポストの上端部に設けたガットを挟持する一対の挟持体と、
前記一対の挟持体を開閉するクランプハンドルとを備え、テニスラケット等のガット張り装置を構成するガットクランプ機構において、
前記支持ポストは、円柱体と、これを摺動自在に嵌挿する円筒体とからなり、
前記クランプ台は、
前記支持ポストの前記円柱体が前端側に立設される本体部と、
前記本体部を前記レールに対して固定するためのクランプ台固定レバーと、
落下した前記円筒体の下端が接触する位置に出没自在に設けられるロックピンと、
前記ロックピンの上端が常時突出するように附勢するコイルバネと、
前記クランプ台固定レバーの下面に設けられて前記ロックピンの上端が嵌まることで前記クランプ台固定レバーをロックする切欠きと、
前記クランプ台固定レバーにおける前記切欠きの位置に上下方向移動自在に貫設され、前記ロックピンの上端に下端が接触するロック解除操作ピンと、
前記ロック解除操作ピンを加圧押下する加圧機構とを備え、
前記ロックピンに対する落下した前記円筒体の接触及び前記ロック解除操作ピンの加圧押下によって、前記ロックピンが押し下げられて前記切欠きから外れることで、前記クランプ台固定レバーがロック解除され、
前記加圧機構は、
前記本体部の前端側に立設した一対の支持杆と、
前記一対の支持杆に前方側の端部を回動支点として上下方向に回動するよう枢着され、前記ロック解除操作ピンに適宜の加圧力を得られる長さにすべく前記ロック解除操作ピンが下面にて接触する位置よりも後方側に延出させた加圧板と、
前記加圧板と前記クランプ台固定レバーとの間に縮設した拡圧コイルバネとからな
り、
前記加圧板は、平面形状が扇形をなし、前部と側部に壁体を一体成形してなることを特徴とするガットクランプ機構。
【請求項2】
前記加圧板は、平面形状が長方形をなす請求項1記載のガットクランプ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テニスラケット等のガット張り装置におけるガットクランプ機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テニスやバドミントン等のラケットのガット張り装置は、
図26、
図27に示す如く、ラケットの固定台100、100と、ガットクランプ機構101、101と、ガットを所定の圧力で引っ張るテンションユニット102とからなるものである。
【0003】
そして、該装置におけるガットクランプ機構101は、ガイドレール103に沿って左右方向に移動調節自在のクランプ台101Aと、該クランプ台101A上に立設した支持ポスト101Bと、一方側101C′を前記支持ポスト101Bの上端に固着すると共に他方側101C″を該一方側101C′に接離自在に設け、相互間に拡圧コイルバネ(図示せず。)を介在させた一対の挟持体101Cと、該一対の挟持体101Cを合わせた状態で貫挿する軸杆101Dを有すると共に該軸杆101Dの先端部に刻設したネジ部に締め付け調整ナット101Eを螺装した押圧板101Fと、該押圧板101Fの一端部に枢着したクランプハンドル101Gとからなるものである。尚、前記支持ポスト101Bは、クランプ台101Aに固着した円筒体101B′と、一対の挟持体101Cの一方側101C′を固着し、該円筒体101B′に摺動自在に嵌挿する円柱体101B″とからなっている。また、101Hは、クランプ台101Aに設けた、これとレール103との締め付け調整ネジ、101Iはクランプ台101Aをレールに固定するレバーである。
【0004】
そして、ガットをクランプするときには、クランプハンドル101Gを押し下げることによって行う。これにより押圧板101Fが下端が外側に上端が内側に傾いて一方側の挟持体101C″を押圧し、一対の挟持体101C間にガットを挟持するものである。
【0005】
而して、斯かる従来のガットクランプ機構にあっては、次の如き問題点がある。その第1の問題点は、クランプ台固定レバー101Iが何らかのはずみで勝手に戻ってしまうことである。即ち、クランプ台固定レバー101Iを締め付け方向に回してクランプ台101Aをレール103上における所定の位置及び角度に固定した状態においてガット張りの作業をする際に、手が当たったり、ガットがからまったりする等何らかのはずみでショックが加わると、該クランプ台固定レバー101Iが締め付け解除方向に勝手に戻ってしまうことである。この場合には、それまで張っていたものが全てゆるんでしまい、無駄な手間と時間を要することになる。
【0006】
また、ガットクランプ作業は、先ずクランプハンドル101Gを押し下げて一対の挟持体101C間にガットを挟持させ、次にクランプ台固定レバー101Iを締め付け方向に回してこれをレール103上の所定の位置に固定し、その後再びクランプハンドル101Gを上げて一対の挟持体101Cによる挟持を解除し、最後にクランプ台固定レバー101Iを締め付け解除方向へ押し戻す、という一連の作業によって成り立っている。しかし、このように少なくとも4つの作業工程を要する分、作業能率が悪かった。これが第2の問題点である。
【0007】
そこで、本発明者は斯かる問題点を解消すべく、先に
図1乃至
図25に示すガットクランプ機構(特開2003-334264)を案出した。
【0008】
以下、本発明者が先に案出したガットクランプ機構について説明する。
【0009】
尚、
図1は第1実施形態の斜視図、
図2は同正面図、
図3は支持ポストにおける円筒体を円柱体から外した状態の右側面図、
図4は支持ポストを途中で切断し、上蓋を外した状態の平面図、
図5は
図4中A-A線断面図、
図6はクランプ台固定レバーの正面図、
図7は同左側面図、
図8は同底面図、
図9はカム軸の正面図、
図10は同右側面図、
図11は同平面図、
図12は枠状押圧作動体の正面図、
図13は同平面図、
図14は制動体の正面図、
図15は同底面図、
図16は押圧作動子の斜視図、
図17は挟持体の正面図、
図18は同平面図、
図19はフリー状態の平面図、
図20はフリー状態の斜視図、
図21は固定状態の平面図、
図22は固定状態の斜視図であり、また、
図23は第2実施形態の要部を断面で示した側面図、
図24は同ロック状態における斜視図、
図25は同ロック解除状態における斜視図である。
【0010】
先ず、
図1乃至
図22に示す第1実施形態について説明する。
図中、1は中央に溝1aを有するレールである。2はクランプ台である。尚、該クランプ台2の詳細は後述する。3は前記クランプ台2上に立設した支持ポストである。また、該支持ポスト3は、従来品における支持ポストと異なり、円柱体3aをクランプ台2に固着し、これを摺動自在に嵌挿する円筒体3bを後記一対の挟持体の一方側に固着している。
【0011】
4は一対の挟持体であり、一方側4aを前記支持ポスト3の円筒体3bの上端に固着すると共に他方側4bを該一方側4aに接離自在に設け、相互間に拡圧コイルバネ(図示せず。)を介在させてなるものである。
【0012】
5は前記一対の挟持体4を合わせた状態で貫挿する軸杆5aを有すると共に該軸杆5aの先端部に刻設したネジ部に締め付けナット6を螺装した押圧板である。7は前記押圧板5の一端部に枢着したクランプハンドルである。
【0013】
本発明者が先に案出したガットクランプ機構は従来と同様に上記の部材をもって構成されるものである。そしてまた、前記クランプ台2は次の如き部材をもって構成されている。
【0014】
8はクランプ台2の本体部であり、平面船形をなし、先細となった一端側に前記支持ポスト3における円柱体3aを立設している。また、該支持ポスト3より後方側であって該支持ポスト3における円筒体3bが落下したときその下端が接触する位置に、ロックピン9を出没自在に設けると共に、該ロックピン9を拡圧コイルバネ10をもって常時上端が突出するように附勢している。
【0015】
更にまた、該本体部8には、後記枠状押圧作動体を前後方向移動自在に収容する凹部11と、略中央部に設けた後記制動体を上下方向摺動自在に嵌合する嵌合孔12と、該制動体の嵌合孔12と前記ロックピン9との間に設けたカム軸支承孔13とを夫々設けている。そしてまた、前記ロックピン9と反対側の位置における前記制動体の嵌合孔12のテーパー状の斜面には、前記枠状押圧作動体を収容する凹部11に連通し、後記押圧作動子を前後方向移動自在に嵌合する嵌合孔14を設けている。また、8′は本体部8の後端部に設けた後記締め付け調整ネジの挿通孔、8aは本体部8の上蓋である。
【0016】
15は前記本体部8の凹部11に前後方向移動自在に収容する枠状押圧作動体である。また、該枠状押圧作動体15は、その平面形状を本体部8と同様の船形とし、後部中央には前後方向に進退するように締め付け調整ネジ16を螺装している。
【0017】
17は前記本体部8の制動体の嵌合孔12に上下方向摺動自在に嵌合する制動体である。また、該制動体17は、逆円錐台形部分17aと、これの下部に一体的に連成した、レール1の溝1aと略同じ幅の板状部分17bとからなるものであり、該板状部分17bには、その下面に連結ネジ19、19を螺合するネジ孔18、18を設けている。
【0018】
20は挟持体であり、前記連結ネジ19、19をもって前記制動体17と連結一体化するものである。また、該挟持体20は、前記制動体17における板状部分17bと同じ幅の板状部分20aと、該板状部分20aの下部に一体的に連成した、該板状部分2aより幅の広い板状部分20bとからなるものであり、該板状部分20bには前記連結ネジ19、19を螺合するネジ孔21、21を設けている。
【0019】
22は前記本体部8の嵌合孔14に前後方向移動自在に嵌合する押圧作動子であり、前端面を前記制動体17における逆円錐台形部分17aのテーパーに合わせた形状としている。
【0020】
23は前記本体部8のカム軸支承孔13に回動自在に嵌合するカム軸であり、軸方向中央部に偏心カム24を一体的に形成している。
【0021】
25は前記カム軸23の本体部8からの突出部分に固着するクランプ台固定レバーである。また、該クランプ台固定レバー25は、円盤状の基部25aの下面における前部に、前記ロックピン9の上端部が半分程度嵌まる半円状の切欠き26を設けると共に、中心部におけるカム軸挿通孔27の外側に、前記本体部8の上面に設けたストッパーピン28が摺動自在に嵌合する所定の長さの弧状溝29を設けている。尚、30は連結ピンの挿通孔である。
【0022】
31、31は前記本体部8と前記枠状押圧作動体15の後部側内面との間に設けた拡圧コイルバネであり、該枠状押圧作動体15を常時後退するよう附勢するものである。また、32は前記枠状押圧作動体15の外面と前記締め付け調整ネジ16のつまみ部16aとの間に設けたゆるみ止め用の拡圧コイルバネである。
【0023】
次に、上記第1実施形態の作用について説明する。
図19に示す如くクランプ台固定レバー25を矢標方向に回すと、カム軸23が回って、その偏心カム24も前方側にずれる。これに伴い枠状押圧作動体15はその前端側内面が前方側に押し出され、拡圧コイルバネ31、31の作用に抗して前方側に移動する。
【0024】
そしてまた、これに伴い該枠状押圧作動体15に螺装した締め付け調整ネジ16の前端が押圧作動子22を前方に押し出し、その前端面を制動体17における逆円錐台形部分17aに強く押し付ける。これにより制動体17に対して本体部8は水平方向への回動が阻止されることになる。またこれと同時に制動体17は押圧作動子22によって斜め下方から上方に押し上げられるよう作用し、これにより連結ネジ19、19をもって一体化された挟持体20が引き上げられ、これら本体部8の下面と、挟持体20の板状部分20bとの間にレール1を強く挟み付け、もって本体部8をレール1における所定の位置に固定するものである。
【0025】
そしてまた、この状態となったときには、
図21及び
図22に示す如く、クランプ台固定レバー25における基部25aに設けた半円状の切欠き26に、本体部8に設けたロックピン9が上昇して嵌まり込む。したがって、この状態は強固に維持され、何らかのショックが加わったとしてもクランプ台固定レバー25は元の締め付け解除方向に勝手に戻らないものである。
【0026】
そして更に、クランプハンドル7を上げて一対の挟持体4による挟持を解除したときは、そのまま手の力をゆるめれば支持ポスト3の円筒体3bが落下し、その下端部が衝撃によってロックピン9を瞬間的に押し込む。これによりロックピン9はクランプ台固定レバー25における基部25aに設けた半円状の切欠き26から外れ、もってロックが解除されてクランプ台固定レバー25は自動的に元の締め付け解除方向に戻るものである。
【0027】
次に、
図23乃至
図25に示す第2実施形態について説明する。
本実施形態は、前記第1実施形態に次の構成を付加してなるものである。而して、その付加した構成は、クランプ台固定レバー25の円盤状の基部25aの前部における半円状の切欠き26の位置に、下端がロックピン9の上端に接触するロック解除操作ピン33を上下方向移動自在に貫設した点にある。また、34は抜け止め用のCリングである。尚、図において第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0028】
而して、本実施形態の場合には、前記第1実施形態の作用に加えて、ロック解除操作ピン33を押し下げてロックピン9を押し込み、もってロックを解除することも可能となるものである。
【0029】
本発明者が先に案出したガットクランプ機構は上記の如き構成、作用であるから、クランプ台固定レバーを一旦締め付け方向に回した後は、何らかのショックが加わったとしても簡単には元の締め付け解除方向に戻らないものである。また、第1実施形態の構成の場合には、クランプハンドルを上げて一対の挟持体による挟持を解除したときにおいて、自動的にクランプ台固定レバーが締め付け解除方向に戻るものであり、もって作業能率を向上させることができるものである。
【0030】
また、第2実施形態の構成の場合には、第1実施形態の構成の場合の作用、効果に加えて、ロック解除操作ピンを押し下げてロックピンを押し込むことによるロック解除も可能となるものであり、より使い勝手が良くなるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
而して、本発明は、上記本発明者が先に案出したガットクランプ機構における第2実施形態の改良に係るものである。
【0032】
即ち、該第2実施形態は、ロック解除操作ピンを押し下げてロックピンを押し込むことによってもロック解除が可能となるものであって、第1実施形態よりも使い勝手がよくなるものであるが、このロック解除操作ピンの押し下げによるロックピンの押し込み操作は、作業者にとって労力的に実に多大な負担となるものである。
【0033】
それは、ロック解除操作ピンが、クランプ台固定レバーにおける円盤状の基部の支持ポストに近い位置にあることから、指先で押し下げにくく、且つまた、ロック状態にあっては、ロックピンはクランプ台固定レバーにおける円盤状の基部に設けた半円状の切欠きに嵌まり込んでおり、そして、この半円状の切欠きは、クランプ台固定レバーを元の方向に戻そうとするコイルバネの作用力によって、そのロックピンとの接触面が強くロックピンに接触しており、もってロックピンを押し下げるときに強い摩擦抵抗が起こることになる。このため、押し下げには相当な力を要し、作業者の指には相当な負担がかかることになる。しかも、この操作は一日中何回も繰り返して行わなければならないから、作業者にとって労力的に多大な負担となるものである。
【0034】
そこで、本発明は斯かる点を改善すべくなされたものであって、梃子の原理を利用した加圧機構を備え、該加圧機構をもってロック解除操作ピンを加圧押下することにより、あまり力を要さず、而も加圧操作面積を大きくして、加圧操作を行いやすくしたガットクランプ機構を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
而して本発明の要旨とするところは、
レールと、クランプ台と、該クランプ台上に立設した支持ポストと、該支持ポストの上端部に設けたガットを挟持する一対の挟持体及びこれを開閉するクランプハンドルからなり、更に前記クランプ台を、平面船形をなした本体部と、該本体部内において前後方向移動自在に収容すると共に本体部との間に設けた拡圧コイルバネをもって常時後退するよう附勢し、更に後端部に前端が後記押圧作動子の後端部に接触する締め付け調整ネジを螺装した枠状押圧作動体と、本体部の中央部に設けた嵌合孔に上下方向摺動自在に嵌合した、逆円錐台形部分と、これの下部に一体的に連成したレールの溝と略同じ幅の板状部分とからなる制動体と、該制動体の下部に連結する、前記制動体における板状部分と同じ幅の板状部分と、これの下部に一体的に連成した、該板状部分より幅の広い板状部分とからなる挟持体と、本体部に設けた前記制動体の嵌合孔におけるテーパー状の斜面に設けた嵌合孔に前後方向移動自在に嵌合し、制動体における逆円錐台形部分に接触する、前端面を該逆円錐台形部分のテーパーに合わせた形状とした押圧作動子と、本体部の前記制動体の嵌合孔より前方に設けたカム軸支承筒に回動自在に支承した、軸方向中央部に偏心カムを一体的に形成したカム軸と、該カム軸の前記本体部から突出する上端部に円盤状の基部を固着したクランプ台固定レバーとをもって構成してなるテニスラケット等のガット張り装置におけるガットクランプ機構において、円柱体と、これを摺動自在に嵌挿する円筒体とからなる支持ポストを、その円柱体をクランプ台に、円筒体を一対の挟持体の一方側に固着し、またクランプ台の上面における支持ポストの近傍であって、該支持ポストにおける円筒体が落下したときにその下端が接触する位置に、ロックピンを出没自在に設けると共に、拡圧コイルバネを介して常時上端が突出するように附勢し、更にクランプ台固定レバーの円盤状の基部の下面における前部に、前記ロックピンの上端部が半分程度嵌まる半円状の切欠きを設けると共に、中心部におけるカム軸挿通孔の外側に、前記本体部の上面に設けたストッパーピンが摺動自在に嵌合する所定の長さの弧状溝を設け、更にクランプ台固定レバーの円盤状の基部の前部における半円状の切欠きの位置に、下端が前記ロックピンの上端に接触するロック解除操作ピンを上下方向移動自在に貫設してなるテニスラケット等のガット張り装置におけるガットクランプ機構において、クランプ台における支持ポスト側の端部であって、ロックピンよりも前方側の位置に、支持ポストを挟むようにして立設した一対の支持杆と、該一対の支持杆に前方側の端部を枢着する一方、後方側の端部を、その下面が接触するロック解除操作ピンの位置よりも適宜の加圧力を得ることができる程度の長さまで延出させた、前記枢着部を回動支点として上下方向に回動する加圧板と、該加圧板とクランプ台固定レバーの円盤状の基部との間に縮設した、加圧板の原位置復帰用の拡圧コイルバネとからなる加圧機構を備えたことを特徴とするテニスラケット等のガット張り装置におけるガットクランプ機構
にある。
【0036】
また、上記構成において、加圧板を、平面形状が長方形をなす加圧板とし、或いは平面形状が扇形をなし、前部と側部に壁体を一体成形してなる加圧板とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、上記の如き構成であり、梃子の原理を利用した加圧機構を備え、該加圧機構における加圧板は、クランプ台に立設した一対の支持杆に前方側の端部を枢着して該枢着部を回動支点として上下方向に回動するものであり、そして該加圧板は、その下面のロック解除操作ピンとの接触位置、即ち作用点から支点となる一対の支持杆への枢着部までの距離と、該作用点から後方側に延びた端部、即ち力点までの距離とを、後者を前者に比して相当に大きくしているから、該加圧板によってロック解除操作ピンを加圧押下するときに、あまり力を要さずに行うことができると共に、加圧操作面積も大きくしたことにより、本発明者が先に案出した機構の如く、ロック解除操作ピンの頭部の一点のみではなく、加圧板の作用点より後方側のどこの部分を押してもロックを解除することができ、もって作業者にとって労力が大幅に軽減されることになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明者が先に案出したクランプ機構の第1実施形態の斜視図である。
【
図3】同支持ポストにおける円筒体を円柱体から外した状態の右側面図である。
【
図4】同支持ポストを途中で切断し、上蓋を外した状態の平面図である。
【
図19】本発明者が先に案出したガットクランプ機構の第1実施形態のフリー状態の平面図である。
【
図20】本発明者が先に案出したガットクランプ機構の第1実施形態のフリー状態の斜視図である。
【
図21】本発明者が先に案出したガットクランプ機構の第1実施形態の固定状態の平面図である。
【
図22】本発明者が先に案出したガットクランプ機構の第1実施形態の固定状態の斜視図である。
【
図23】本発明者が先に案出したガットクランプ機構の第2実施形態の要部を断面で示した側面図である。
【
図26】従来のテニスラケット等のガット張り装置の説明図である。
【
図27】従来のガットクランプ機構の説明図である。
【
図28】本発明の第1実施形態に係るガットクランプ機構の支持ポストを途中で切断し、上蓋を外した状態の平面図である。
【
図30】同支持ポストを省略して示した斜視図であり、ロック前の状態を示すものである。
【
図31】同支持ポストを省略して示した正面図であり、加圧板による加圧前の状態を示すものである。
【
図32】同支持ポストを省略して示した正面図であり、加圧板による加圧した状態を示すものである。
【
図35】本発明の第2実施形態に係るガットクランプ機構の支持ポストを省略して示した斜視図であり、ロック前の状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
先ず、
図28乃至
図34に示す本発明の第1実施形態について説明する。
【0041】
本実施形態は、
図1乃至
図25に示した本発明者が先に案出したガットクランプ機構における、
図23乃至
図25に示した第2実施形態の改良に係るものであり、よって基本的な構成においては該第2実施形態と同様であるから、同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
而して、本実施形態は、クランプ台2における支持ポスト3側の端部であって、ロックピン9よりも前方側の位置に、支持ポスト3を挟むようにして立設した一対の支持杆35、35と、該一対の支持杆35、35に前方側の端部36aを枢着35aする一方、後方側の端部36bを、その下面が接触するロック解除操作ピンの位置36Aよりも適宜の加圧力を得ることができる程度の長さまで延出させた、前記枢着部35aを回動支点として上下方向に回動する加圧板36と、該加圧板36とクランプ台固定レバー25の円盤状の基部25aとの間に縮設した、加圧板36の原位置復帰用の拡圧コイルバネ37とからなる加圧機構38を備えたことを特徴とするものである。
【0043】
尚、本実施形態においては、加圧板36は平面形状が長方形をなしており、そして該加圧板36の原位置復帰用の拡圧コイルバネ37は、該加圧板36の長さ方向の中央部の下面に設けた凹部36′と、クランプ台固定レバー25における円盤状の基部25aの上面中央部に設けた凹部25′との間に縮設している。
【0044】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態は、上記梃子の原理を利用した加圧機構38を備えており、そして、該加圧機構38における加圧板36は、クランプ台2に立設した一対の支持杆35、35に前方側の端部36aを枢着35a、35aして該枢着部35a、35aを回動支点として上下方向に回動するものであり、そして該加圧板36は、その下面のロック解除操作ピン33との接触位置36A、即ち作用点から支点となる一対の支持杆35、35への枢着部35a、35aまでの距離と、該作用点から後方側に延びた端部36b、即ち力点までの距離とを、後者を前者に比して相当に大きくしているから、該加圧板36によってロック解除操作ピン33を加圧押下するときに、あまり力を要さずに行うことができると共に、加圧操作面積も大きくしたことにより、本発明者が先に案出した機構の如く、ロック解除操作ピン33の頭部の一点のみではなく、加圧板36の作用点より後方側のどこの部分を押してもロックを解除することができ、もって作業者にとって労力が大幅に軽減されることになるものである。
【0045】
次に、
図35乃至
図40に示した本発明の第2実施形態について説明する。
【0046】
本実施形態と前記第1実施形態とは、加圧板36の形態において相違するものである。即ち、前記第1実施形態における加圧板36は、平面形状が長方形をなすものであるのに対して、本実施形態における加圧板36は、平面形状が扇形をなし、前部と側部に壁体36″を一体成形してなるものである。尚、その他の構成並びに作用は前記第1実施形態と同様であるから、同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0047】
1 レール
2 クランプ台
3 支持ポスト
3a 支持ポストにおける円柱体
3b 支持ポストにおける円筒体
4 一対の挟持体
7 クランプハンドル
8 クランプ台の本体部
9 ロックピン
15 枠状押圧作動体
16 締め付け調整ネジ
17 制動体
17a 制動体における逆円錐台形部分
17b 制動体における板状部分
20 挟持体
20a 挟持体における板状部分
20b 挟持体における板状部分
22 押圧作動子
23 カム軸
24 偏心カム
25 クランプ台固定レバー
26 半円状の切欠き
27 カム軸挿通孔
28 ストッパーピン
29 弧状溝
31、31 拡圧コイルバネ
33 ロック解除操作ピン
34 抜け止め用のCリング
35、35 一対の支持杆
35a、35a 枢着部
36 加圧板
37 拡圧コイルバネ
38 加圧機構