(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】マルチフィルム
(51)【国際特許分類】
A01G 13/00 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
A01G13/00 302Z
(21)【出願番号】P 2019133680
(22)【出願日】2019-07-19
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮本 英紀
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/049725(WO,A1)
【文献】特開2003-285361(JP,A)
【文献】特開2014-87284(JP,A)
【文献】登録実用新案第3016093(JP,U)
【文献】実開平6-55334(JP,U)
【文献】実開平5-55859(JP,U)
【文献】特開平9-172879(JP,A)
【文献】特開昭56-117726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 13/00
A01G 13/02
A01M 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムに定植位置を示す目印を設けたマルチフィルムにおいて、
前記目印が熱可塑性樹脂フィルムのフィルム表面から突き出した
複数の突起から構成された突起
群であ
り、
前記突起の長さ及び幅は、1mmより大きく10mmより小さく、
前記突起の高さは、0.1mmより高く3mmより低く、
前記突起が先端に貫通孔を有することを特徴とするマルチフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物を植え付ける予定の位置(以下、定植位置という)を示す目印を、フィルムの一方の面から他方の面に突き出した突起で設けたマルチフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
農作物の育成を促進するため、土壌の表面にマルチングが施されることがある。マルチングにより、土壌が乾きにくくなり、地温が保たれ、土壌が固まりにくくなり、降雨の場合でも土壌の跳ね上がりを抑えて農作物の汚れや感染を防ぐことができ、雑草の発生を抑えることができる。マルチングには、マルチフィルムが好んで用いられている。一般的には、地温を低くする場合には銀色のマルチフィルムが用いられ、地温を高める場合には黒色のマルチフィルムが用いられる。
【0003】
マルチフィルムでマルチングが施される際には、まず土壌がマルチフィルムで覆われる。そして、マルチフィルムに開口部を形成し、その開口部に種がまかれたり苗が植えられたりする。開口部の形成には、以下のような方法が採られている。すなわち、特許文献1に開示されている、(1)当初からフィルムに円形やその他の形に刳り抜くことにより開口部を形成しておく方法、特許文献2に開示されている、(2)あらかじめミシン目や切り込みにより形成した開口予定部をマルチフィルムの土壌への施設後に開口予定部のフィルムをミシン目や切り込みに沿って除去することで開口部を形成する方法、及び(3)マルチフィルム表面にあらかじめ印刷図柄で示された植え付け箇所にカッターナイフや移植ゴテによって開口部を形成する方法、がある。これらの方法によれば、あらかじめ適切な間隔で開口部が形成できるので適切な株間隔で種まき、苗の植え付け等をすることができる。
【0004】
これらの方法のうち、(1)及び(2)の方法では、あらかじめマルチフィルムに、それぞれ、刳り抜かれた開口部及びミシン目または切り込みが施設されている。このため、土壌を覆うために展張する際に、開口部やミシン目などから破れるという問題があった。一方、(3)の方法では、このような問題は発生しない。しかし、(3)の方法においても、多品種ある作物の定植位置(条数、条間、株間)に対応するために、作物毎に異なる印刷版を要し、生産性が悪化するという問題があった。このため、マルチフィルムに簡単に生産性良く定植位置の目印を付けることができる方法が求められていた。このため、我々は鋭意検討の結果、本発明のマルチフィルムを開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭61-77754号公報
【文献】実開昭47-25340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マルチフィルムに簡単に生産性良く定植位置の目印を付けることができる方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明によると、熱可塑性樹脂フィルムに定植位置を示す目印を設けたマルチフィルムにおいて、目印が熱可塑性樹脂フィルムのフィルム表面から突き出した突起であることを特徴とするマルチフィルムが提供される。
【0008】
また、目印が複数の突起から構成された突起群であることを特徴とする前記マルチフィルムが提供される。
【0009】
さらに、突起が先端に貫通孔を有することを特徴とする前記マルチフィルムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマルチフィルムは、多品種ある作物の定植位置(条数、条間、株間)に対応でき、簡単に生産性良く定植位置の目印を付けることができるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、
図2の突起から構成される突起群が定植位置の目印として設けられた農業用フィルムの一例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、熱可塑性樹脂フィルムの一方の面から他方の面に突き出した円形の突起の一例を示す平面図及び断面図である。
【
図3】
図3は、熱可塑性樹脂フィルムの一方の面から他方の面に突き出した長円形の突起の一例を示す平面図及び断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の円形突起の先端部に貫通孔が設けられた突起の一例を示す平面図及び断面図である。
【
図5】
図5は、本発明で想定される突起群のバリエーションを示した図である。
【
図6】
図6は、熱可塑性樹脂フィルムに突起または突起群を形成するための機構の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係るマルチフィルムの一実施形態を示す平面図である。また、
図2は、
図1に示すマルチフィルムにおいて、定植位置を示す目印として設けた突起群を構成する突起の平面図及び断面図である。マルチフィルム10は、低密度ポリエチレンや生分解性を有するポリエステルなどの熱可塑性樹脂フィルムからなり、マルチフィルム10の長さ方向(
図1の横方向)に沿って、定植位置に、
図2にその平面図及び断面図を示した突起20を複数形成した突起群11を設けている。
【0013】
本発明のマルチフィルムに定植位置の目印として設ける突起群を構成する突起は、すべての突起がフィルムの同じ面側に突き出している必要はなく、一部が異なる面に突き出していても良い。また、比較的大きなサイズの突起の場合には、ひとつでも目印としての機能を果たすことができるため、必ずしも、一つの定植位置に突起群として複数の突起を設ける必要はない。
【0014】
本発明のマルチフィルムに定植位置の目印として設ける突起群を構成する突起の形状や大きさは、人間が目印として認識できれば特に限定されず、
図3及び
図4に、それぞれ平面図及び断面図を示した様な、角丸長方形の突起30または円形突起の先端部に貫通孔がある突起40でも良い。また、形状や大きさの異なる突起を組み合わせて突起群を構成しても良い。
図5に、想定される6種類の突起群51乃至56を示したが、本発明における突起群はこれらに限定されるものではない。
【0015】
本発明のマルチフィルムに形成される突起の大きさ(長さ、幅、高さ)は特に限定されないが、大きすぎる場合には、突起の形成が難しくなるため好ましくない。一方、突起が小さすぎると、目印として人間が認識し難くなるため好ましくない。長さ及び/または幅は、0.5mmより大きく100mmより小さいことが好ましく、更に、1mmより大きく10mmより小さいことが好ましい。また、突起の高さは、好ましくは0.1mmより高く3mmより低いことが好ましく、更に、0.2mmより高く0.5mmより低いことが好ましい。
【0016】
図4の突起40のように先端部に貫通孔がある突起にて突起群を構成する場合、それらの間隔を小さ過ぎると、前記したような刳り抜かれた開口部あるいはミシン目または切り込みが設けられたマルチフィルムと同様に展張時に突起群の部分から破けるという問題が発生するため、適度な間隔を取ることが必要である。
【0017】
本発明のマルチフィルムに設けられる突起及び突起群は、公知の方法で設けることができる。例えば、
図6に示した様に、フィルム61を、凸部63を固定したドラム64と各凸部63に対向する凹部65を設けたドラム66との間を通過させて、突起62を形成することができる。ドラム64及び/またはドラム66に加熱機能を付与し、凸部63及び/または凹部65の温度を、フィルム61を構成する熱可塑性樹脂の溶融温度に近い温度とすることが、突起62の形成性を向上させるうえで好ましい。なお、凸部63は、目的とする突起の形状、数、及び間隔に併せて、その形状、数、及び間隔が適宜設計され、ドラム64の外周上に設置することができる。凸部63はドラム64の外周上の任意の位置に固定できるため、一本のドラムにより様々な突起群を形成することができる。このため、この方法に依れば、すべての作物の植え付け間隔に対応した目印を設けることができ、作物の品種毎にその植え付け間隔に対応した印刷版を用意しなければならない印刷図柄による目印の設定方法に比べ、極めて経済的である。
【0018】
図1に示すマルチフィルム10は、長さ方向に沿う複数の突起群11を定植の目印として幅方向に1条となるように形成しているが、突起群の条数は特に問わず、畝に定植される苗の条数に応じて適宜設定される。
【0019】
定植の目印を複数条形成する場合、突起群は条間の苗同士の干渉を防ぐため、条間に亘って千鳥状に配置されていることが好ましい。1条を構成する隣り合う突起群の間隔は、畝に定植される苗の間隔に対応して決定される。具体的な間隔は必ずしも限定されないが、一例を挙げれば、10cm~40cmとすることである。
【0020】
なお、本発明に係るマルチフィルムは、黒色等の単色のフィルムであってもよいし、白黒フィルム、銀黒フィルム等のように表裏で異なる色の多層フィルムであってもよい。
【符号の説明】
【0021】
10 マルチフィルム
11 突起群
20 円形突起
30 長円形突起
40 先端に貫通孔を有する円形突起
51 円形突起から構成された突起群の一例
52 円形突起から構成された突起群の一例
53 円形突起から構成された突起群の一例
54 円形突起から構成された突起群の一例
55 長円形突起から構成された突起群の一例
56 長円形突起から構成された突起群の一例
60 熱可塑性樹脂フィルムに突起または突起群を形成するための機構の一例
61 熱可塑性樹脂フィルム
62 突起
63 凸部
64 ドラム
65 凹部
66 ドラム