(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】検体搬送装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
G01N35/04 E
(21)【出願番号】P 2019143703
(22)【出願日】2019-08-05
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591029518
【氏名又は名称】テラメックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000120456
【氏名又は名称】栄研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 達也
(72)【発明者】
【氏名】田中 貞治
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-098937(JP,A)
【文献】特開昭56-155854(JP,A)
【文献】特開2017-072569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を保持可能な複数の検体ホルダを相互に着脱可能に連結した環状の検体ホルダ帯と、
前記検体ホルダ帯を支持しながら正規の搬送経路に沿って所定方向に周回移動させる搬送部とを備え、
前記搬送部は、前記検体ホルダ帯の環状状態を解除する際に前記一部の検体ホルダを押し込むことが可能な切欠部を1箇所以上有するものであり、
前記検体ホルダ帯のうち所定位置にある検体ホルダを前記切欠部に向かって押し込むことによって、前記正規の搬送経路から外れた前記検体ホルダと当該検体ホルダに隣接する前記検体ホルダとの連結状態を解除可能に構成したことを特徴とする検体搬送装置。
【請求項2】
前記切欠部は、前記検体ホルダ帯のうち一つの前記検体ホルダの当該切欠部への侵入を許容するものである請求項1に記載の検体搬送装置。
【請求項3】
前記搬送部が、前記検体ホルダ帯を掛け回した状態で支持する回転伝動体を備えたものであり、前記回転伝動体の外周面の一部に前記切欠部を形成している請求項1または2に記載の検体搬送装置。
【請求項4】
周回方向に隣り合う前記検体ホルダ同士が凹凸係合によって連結されたものであり、
前記凹凸係合に寄与する凸部または凹部に、前記検体ホルダ帯のうち所定位置にある検体ホルダを前記切欠部に向かって押し込んだ際に、凹凸係合の相手方となる凹部または凸部を係合解除方向に摺動させる傾斜面を形成している請求項1乃至3の何れかに記載の検体搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体を搬送する検体搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば尿などの液体試料(検体)に浸漬させてから引き揚げた試験紙を保持する試験紙ホルダ(検体ホルダ)を用いて、試験紙の長手方向に複数配列された各試薬パッドの呈色の度合いを光学的に検知することにより、複数の項目に関する検査を行なうことが従来から行われている。
【0003】
このような検査を行なう際、試験紙を検体ホルダ上に載置して測定する自動分析装置が使用されている。自動分析装置には、例えば無端状の搬送ベルトに等間隔に配置された検体ホルダを所定方向に周回移動させる検体搬送装置が備えられているものがある(例えば特許文献1)。
【0004】
この検体搬送装置は、検体ホルダが所定の検知測定位置に到達すると搬送ベルトの移動を一旦停止し、検知測定処理後に周回移動を再開する動作を繰り返しながら検体ホルダを搬送するものである。なお、検査済みの試験紙を保持する検体ホルダが試験紙廃棄位置にまで移動すると、試験紙は自然落下して検体ホルダから試験紙廃棄箱に回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、液体試料の余剰分(余剰試料)が検体ホルダ上に残ると次の試験紙を載置する際にコンタミネーションを起こし不正確な測定結果となる可能性があるとともに、ユーザーに不衛生な印象を与える。また、液体試料が検体ホルダに累積し固化してしまうと洗浄の手間が増大する。そのため、ユーザーは、検体ホルダを日常的に洗浄しなければならず、搬送ベルトに検体ホルダを個別に着脱可能に装着した従来の搬送装置であれば、検体ホルダを洗浄する際に例えば専用の工具を用いて検体ホルダを搬送ベルトから取り外したり、洗浄後に検体ホルダを搬送ベルトに装着するという煩雑な処理を毎回強いられていた。
【0007】
近時では、検体搬送装置として、周回方向に隣り合う検体ホルダ同士を直接連結することでチェーン構造体とし、このチェーン構造体を掛け回したスプロケットを用いて、チェーン構造体を所定方向に周回移動させて検体ホルダを搬送する装置が案出されている。このような検体搬送装置であれば、チェーン構造体としての形態を維持するために検体ホルダ同士の連結状態は簡単に解除できないように設定されているため、チェーン構造体の分解作業を手作業でスムーズに行うことができず、工具等を用いて分解作業や再組立作業を行うことになる。特に、分解作業時や再組立作業時に検体ホルダ同士の連結部分に過度の負荷が掛かれば、連結部分が損壊し、検体ホルダ全体を交換する必要に迫られる。
【0008】
一方で、分解作業や再組立作業をスムーズに行えるように検体ホルダ同士の連結状態を容易に解除できる構造が採用されると、通常使用時に検体ホルダ同士の連結状態が不意に解除され、正規の搬送経路から外れて適切な搬送処理を実施できないおそれがあると考えられる。
【0009】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、主たる目的は、周回方向に隣り合う検体ホルダ同士を連結した環状の検体ホルダ帯が、通常使用時には検体ホルダ同士の良好な連結状態を維持しつつ、ユーザーによるメンテナンスの際には検体ホルダ帯の環状状態を簡単に解除することが可能な検体搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、検体を保持可能な複数の検体ホルダを相互に着脱可能に連結した環状の検体ホルダ帯と、検体ホルダ帯を支持しながら正規の搬送経路に沿って所定方向に周回移動させる搬送部とを備えた検体搬送装置に関するものである。本発明における検体としては、尿、尿以外の生体検体、あるいは汚水中の溶解物質等の液体試料を挙げることができる。なお、液体試料以外の検体であってもよい。また、本発明における検体ホルダには、検体を直接保持するホルダはもちろんのこと、液体試料を吸収可能な1又は複数の試薬パッドが長手方向に沿って配置された試験紙を保持する試験紙ホルダのように検体を間接的に保持するホルダも含まれる。
【0011】
そして、本発明に係る検体搬送装置は、搬送部として、検体ホルダ帯の環状状態を解除する際に一部の検体ホルダを押し込むことが可能な切欠部を1箇所以上有するものを適用し、検体ホルダ帯のうち所定位置にある検体ホルダを切欠部に向かって押し込むことによって、正規の搬送経路から外れた検体ホルダと、当該検体ホルダに隣接する検体ホルダとの連結状態を解除可能に構成したことを特徴としている。
【0012】
このような本発明に係る検体搬送装置であれば、検体の検査を行う通常使用時には、搬送部によって検体ホルダ帯を正規の搬送経路に沿って所定方向に周回移動させて、検体ホルダに保持されている検体を搬送することができる一方、検体ホルダを洗浄する際等、検体ホルダ帯の環状状態を解除する際には、搬送部が有する切欠部に向かって検体ホルダ帯のうち一部の検体ホルダを押し込む操作力をユーザーが付与することによって、正規の搬送経路から外れた検体ホルダと、当該検体ホルダに隣接する検体ホルダとの連結状態を解除することができる。したがって、ユーザーは専用の工具を用いることなく簡単に検体ホルダ同士の連結状態を解除して、各検体ホルダに対するメンテナンスを行うことができる。なお、本発明において、搬送部に設ける切欠部の位置や形状、数は特に限定されるものではない。また、ユーザーによるメンテナンスとしては、洗浄(水や洗剤などの液体で洗う)、清掃(ふき取る、ほこりを掃う)、部品交換(汚れのひどいものを取り除く、汚れたものを交換する、破損したものを交換する)等を挙げることができる。
【0013】
本発明における切欠部が、検体ホルダ帯のうち一つの検体ホルダの当該切欠部への侵入を許容するものであれば、切欠部に侵入する一つの検体ホルダの両隣の検体ホルダは切欠部に侵入せずに搬送部に支持されていることになり、切欠部に侵入する一つの検体ホルダが両隣の検体ホルダから外れ易い構成になる。
【0014】
搬送部によって検体ホルダ帯を支持しながら正規の搬送経路に沿って周回移動させる本発明に係る検体装置において、搬送部が、検体ホルダ帯を掛け回した状態で支持する回転伝動体を備えたものである場合、この回転伝動体の外周面の一部に切欠部を形成した構成であれば、切欠部に向かって検体ホルダを押し込む操作力をユーザーが付与しない限り、回転伝動体の外周面に支持される検体ホルダ帯を回転伝動体回りに搬送することができるとともに、回転伝動体の外周面に部分的に形成した切欠部に検体ホルダを押し込む操作力を付与することによって、当該検体ホルダが切欠部に侵入して正規の搬送経路から外れることで隣接する検体ホルダとの連結状態を解除することができる。回転伝動体としては、スプロケットやプーリーを挙げることができる。
【0015】
本発明において、周回方向に隣り合う検体ホルダ同士が凹凸係合によって連結されたものである場合、凹凸係合に寄与する凸部または凹部に、検体ホルダ帯のうち所定位置にある検体ホルダを切欠部に向かって押し込んだ際に、凹凸係合の相手方となる凹部または凸部を係合解除方向に摺動させる傾斜面を形成していれば、連結状態にある一方の検体ホルダの凸部または凹部を、他方の検体ホルダの凹部または凸部に対して傾斜面を利用して係合解除方向に摺動させることで、凹凸係合状態をスムーズに解除することができる。また、連結されていない検体ホルダ同士を連結する場合には、連結対象である一方の検体ホルダの凸部または凹部を、他方の検体ホルダの凹部または凸部に対して傾斜面を利用して係合解除方向の逆方向に摺動させることで、スムーズに凹凸係合させることができ、検体ホルダ同士を連結できる。
【0016】
特に、凹凸係合に寄与する凸部または凹部に形成される傾斜面が、検体ホルダ帯のうち所定位置にある検体ホルダを切欠部に向かって押し込んだ際に、凹凸係合の相手方となる凹部または凸部を係合解除方向にのみ摺動させる面であれば、検体ホルダ帯に不意な外力が作用した場合であっても、所定位置にある検体ホルダを切欠部に向かって押し込む外力が付与されない限り、凹凸係合状態を維持することができ、凹凸係合が不意に解除される事態を回避できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、環状状態にある検体ホルダ帯のうち搬送部の所定部分に設けた切欠部に重なる部分に配される検体ホルダを切欠部に向かって押し込むことによって、当該検体ホルダが正規の搬送経路から外れて、隣接する検体ホルダとの連結状態が解除されるように構成しているため、専用の工具を用いること無く検体ホルダ帯の環状状態を簡単に解除することが可能な検体搬送装置を提供することができる。そして、環状状態が解除された検体ホルダ帯を搬送部から取り外すことで、検体ホルダの洗浄を容易に行うことができ、検体ホルダを清潔に保つことで、検体ホルダに検体が残存することによる悪影響(不衛生、固化した場合の洗浄手間の増大、コンタミネーションに起因する測定誤差)の発生を防止・抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る検体搬送装置の全体外観図。
【
図3】同実施形態における試験紙ホルダを上方から見た全体外観図。
【
図4】同実施形態における試験紙ホルダを下方から見た全体外観図。
【
図7】
図3の矢印A方向から見た試験紙ホルダを示す図。
【
図9】同実施形態における回転伝動体の全体外観図。
【
図10】同実施形態における検体ホルダ帯の環状状態解除操作説明図。
【
図11】同実施形態における検体ホルダ帯の環状状態解除操作説明図。
【
図12】同実施形態における検体ホルダ帯の環状状態解除操作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態に係る検体搬送装置1は、例えば検体である尿等の液体試料を試薬パッドに含ませた試験紙を保持可能な検体ホルダを用いた分析装置に用いられるものであり、
図1に示すように、検体を保持可能な複数の検体ホルダ4を相互に着脱可能に連結した環状の検体ホルダ帯2と、検体ホルダ帯2を支持しながら正規の搬送経路に沿って所定方向に周回移動させる搬送部3とを備えたものである。
【0021】
本実施形態では、液体試料に浸漬することにより試薬パッド(試薬層P2)に試料を吸収させるタイプの試験紙P(
図8参照)を保持し、且つ試験紙Pに付着した余剰液を吸引する機能(余剰液吸引機能)を発揮する検体ホルダ4を適用している。ここで、本実施形態で用いる試験紙Pは、
図8に示すように、細長いスティックP1を主体とし、スティックP1の長手方向一端側に複数の試薬層P2を設け、長手方向他端側を把持部P3に設定したものであり、臨床検査における尿や血液等の液体試料、特に尿試料を分析する場合に用いられる周知のものである。スティックP1は、例えば合成樹脂製であり、試薬層P2を設けた面をオモテ面として扱われるものである。なお、スティックが合成樹脂以外の材料からなるもの、例えば紙製のものであってもよい。複数の試薬層P2は、スティックP1のオモテ面において試験紙Pの長手方向に沿って所定ピッチで配置されている。
【0022】
検体ホルダ帯2を構成する各検体ホルダ4は、
図3乃至
図7に示すように、試験紙Pを載置する長尺の載置部41と、載置部41上のスペース(試験紙Pが載置されるスペース)に連通し且つ試験紙Pに付着した余剰液を毛管現象で吸引する開口部42と、開口部42に吸引した余剰液を検体ホルダ4外へ吸引・排出するための吸引ポート43とを備えたものである。なお、開口部42と吸引ポート43との間には空洞状の連絡流路(図示省略)が形成され、吸引ポート43には図示しない吸引ポンプが接続される。検体ホルダ4は、試料に浸漬した試験紙Pが載置部41に載置されると、試験紙Pに付着している余剰液を微小空間である各開口部42による毛管現象及び吸引ポンプによる吸引作用によって吸引する。ここで、
図3は斜め上方から見た検体ホルダ4の全体外観図であり、
図4は検体ホルダ4を
図3とは異なる方向(斜め下方)から見た図であり、
図5は検体ホルダ4の平面図であり、
図6は検体ホルダ4の底面図であり、
図7は
図3の矢印A方向から見た図(正面図)である。
【0023】
本実施形態の検体ホルダ4は、上向き面が載置部41として機能するベース44と、ベース44を着脱可能に収容するフレーム45の2パーツから構成されている。ベース44は、長尺なスティック状をなし、載置部41として機能するフラットな上向き面を有し、開口部42の開口形状を規定する溝部を長手方向において対向する起立面に形成したものである。ベース44の起立面には、複数(図示例では3つ)の溝部を所定ピッチで並べて配置している。本実施形態のベース44は、載置部41として機能する上向き面よりも上方に突出する上方突出部46を有し、この上方突出部46に、高さ方向に貫通する吸引ポート43を設けている。
【0024】
フレーム45は、ベース44を収容可能な溝状の収容部47と、収容部47の上端部から外側方に向かって突出し、且つ突出端部がベース44の上方突出部と同じ高さ位置になる鍔部48と、収容部の長手方向両端部に設けられ且つ他のフレーム45と連結する際に用いられる連結部49とを備えている。
【0025】
本実施形態に係る検体搬送装置1で用いる環状の検体ホルダ帯2は、
図1に示すように、各検体ホルダ4に設けた連結部49を利用して隣り合う検体ホルダ4同士を連結したものである。
【0026】
連結部49は、
図3乃至
図7に示すように、検体ホルダ4のうちフレーム45の長手方向L両端部にそれぞれ設けられた段差付きのプレート4P(以下、連結プレート4P)と、連結プレート4Pに形成した凹部4X及び凸部4Yとを有する。連結プレート4Pは、当該連結プレート1枚分の厚みに相当する段差(段部)を中央部分に有し、フレーム45の長手方向両端部に相互に対向する姿勢で配置されている。そして、本実施形態の連結部49は、クランク状の各連結プレート4Pのうちフレーム45の長手方向L中心から相対的に遠い板状部分(以下、外側プレート部分4Pa)の端部に形成した凹部4Xと、連結プレート4Pのうちフレーム45の長手方向L中心に相対的に近い部分(以下、内側プレート部分4Pb)の端部に凸部4Yを有する。凹部4Xは、外側プレート部分4Paの端部において厚み方向に貫通する丸孔である。また、凸部4Yは、内側プレート部分4Pbの端部において連結プレート4Pの厚み方向に突出し、且つ凹部4Xに係合可能なサイズに設定されたピン状突起である。特に、本実施形態の凸部4Yは、凹部4Xの開口径よりも僅かに小さい外径に設定された円柱状のピン状突起であって、且つ外周面の所定部分に突出先端に向かって所定角度で傾斜する傾斜面4Kを有するものである。本実施形態では、検体ホルダ4の載置面41を上方に向けた正規姿勢にした状態において、凸部4Yの上半部領域に傾斜面4Kを設定している。検体ホルダ4の長手方向Lにおける凸部4Yの突出先端位置は、凹部4Xを形成した外側プレート部分4Paの外向き面と略同じ位置である(
図5及び
図6等参照)。
【0027】
このような連結部49を有する検体ホルダ4は、隣り合う検体ホルダ4同士を連結部49によって相互に連結することができる。すなわち、隣り合う検体ホルダ4のうち一方の検体ホルダ4の長手方向L両端部に設けた凸部4Yを、他方の検体ホルダ4の長手方向L両端部に設けた凹部4Xにそれぞれ係合させることで、隣り合う検体ホルダ4同士を連結することができる。そして、所定数の検体ホルダ4を相互に連結することによって本実施形態の検体搬送装置1に適用可能な環状の検体ホルダ帯2が形成される。
【0028】
本実施形態の検体搬送装置1では、複数の検体ホルダ4が無限軌道方式で連結された環状の検体ホルダ帯2を搬送部3によって支持しながら正規の搬送経路に沿って所定方向に周回移動可能に構成している。
【0029】
搬送部3は、
図1及び2に示すように、環状の検体ホルダ帯2を掛け回した状態で支持する下流側回転伝動体5及び上流側回転伝動体6と、環状の検体ホルダ帯2のうち上流側回転伝動体6を通過してから下流側回転伝動体5に到達するまでの部分を下方から支持するガイドレール7とを備えている。本実施形態の搬送部3は、モータ等の駆動源Mにより回転駆動される駆動軸S1に一体回転可能に固定される下流側回転伝動体5と、駆動軸S1から所定距離隔てて設けられた従動軸S2に一体回転可能に固定される上流側回転伝動体6とを備えている。
【0030】
下流側回転伝動体5及び上流側回転伝動体6は、それぞれ左右一対のスプロケット51,61を用いて構成されている。すなわち、本実施形態の検体搬送装置1は、チェーン構造体として捉えることが可能な環状の検体ホルダ帯2を下流側回転伝動体5及び上流側回転伝動体6のメインパーツであるスプロケット51,61に掛け回した状態で、モータMの駆動力によって下流側回転伝動体5を所定方向に回転させることで、環状の検体ホルダ帯2を下流側回転伝動体5と上流側回転伝動体6との間で周回移動させるものである。
【0031】
下流側回転伝動体5及び上流側回転伝動体6のメインパーツである各スプロケット51,61は、
図2に示すように、検体ホルダ帯2を構成する各検体ホルダ4の底面に設けた下向き突起4T(
図4、
図6及び
図7等参照)に対応する歯溝52,62と、隣り合う検体ホルダ4の下向き突起4T同士の間に形成される空隙に入り込む歯部53,63とを外周面に交互に有するものである。下流側回転伝動体5を構成する一対のスプロケット51は、駆動軸S1に一体回転可能に固定された下流側軸部54の両端部に同位相で対向配置され、下流側軸部54の外周面には、対向配置されたスプロケット51同士を連結するリブ55を周方向に所定ピッチで設けている。
【0032】
上流側回転伝動体6を構成する一対のスプロケット61は、従動軸S2に一体回転可能に固定された上流側軸部64の両端部に同位相で対向配置され、上流側軸部64の外周面には、対向されたスプロケット61同士を連結するリブ65を周方向に所定ピッチで設けている。下流側回転伝動体5及び上流側回転伝動体6は、ほぼ同じ構成であるが、検体ホルダ帯2の環状状態を解除する際に一部の検体ホルダ4を押し込むことが可能な切欠部Cを有するか否かで異なる。本実施形態では、上流側回転伝動体6を構成する一対のスプロケット61のうち何れか一方のスプロケット61にのみ切欠部Cを形成している(
図2参照)。
【0033】
ここで、上流側回転伝動体6から下流側回転伝動体5に向かう検体ホルダ帯2の移動方向と同一方向を前後方向と捉え、スプロケット51,61を車輪と捉えた場合、本実施形態の搬送部3は、前輪及び後輪をそれぞれ2つずつ備え、左右一対の前輪を駆動輪に設定し、従動輪である左右一対の後輪のうち一方の後輪にのみ切欠部Cを設定したものである。
【0034】
切欠部Cは、
図2及び
図9に示すように、上流側回転伝動体6を構成するスプロケット61(上流側スプロケット61)の外周面において周方向に隣り合う歯部63同士の間に形成している歯溝62のうち、1つの歯溝62を他の歯溝62よりも上流側スプロケット61の回転中心66に向かって深くなるように切り欠いた部分(上流側スプロケット61の外方に向かって解放された部分矩形状の溝部)である。なお、切欠部Cの切欠形状は部分矩形状に限定されない。特に、本実施形態では、切欠部Cを挟んで隣り合う歯部63のうち搬送方向T上流側の歯部63の高さ(径方向の寸法であり、全歯丈とも称される)を搬送方向T下流側の歯部63よりも低く設定している。
【0035】
本実施形態の搬送部3は、環状の検体ホルダ帯2のうち上流側回転伝動体6から下流側回転伝動体5に向かう領域、換言すれば検体ホルダ4が上向き姿勢(載置部41として機能する上向き面が上を向く姿勢)である領域をガイドレール7によって下方から支持することでほぼ撓みの無い状態で搬送する一方、環状の検体ホルダ帯2のうち下流側回転伝動体5から上流側回転伝動体6に向かう領域、換言すれば検体ホルダ4が下向き姿勢(載置部41として機能する検体ホルダ4の上向き面が下を向く姿勢)である領域を下方に若干撓ませた状態で搬送する。
【0036】
ガイドレール7は、
図2に示すように、下流側回転伝動体5及び上流側回転伝動体6を収容する内部空間を上方に解放した箱状のシャーシ8に設けられ、上流側回転伝動体6を通過し終えてから下流側回転伝動体5に到達する直前の検体ホルダ帯2を支持するものである。本実施形態のシャーシ8は、下流側回転伝動体5及び上流側回転伝動体6と一体回転する駆動軸S1及び従動軸S2を回転可能に直接または間接的に支持する一対の支持壁81と、支持壁81の下端同士を接続する底壁82とを有し、各支持壁81の上端部にそれぞれガイドレール7を設けたものである。ガイドレール7の上向き面はフラットな平滑面であり、このガイドレール7の上向き面を検体ホルダ帯2が摺動しながら搬送方向Tに移動する。
【0037】
なお、本実施形態の検体ホルダ4は、
図4、
図6及び
図7に示すように、底面から下方に突出し且つガイドレール7の内向き面に対して所定ギャップを隔てた位置に配されるスペーサ4Sを設けている。また、検体ホルダ4は、スペーサ4Sと上述の下向き突起4Tとの間に、下向き突起4Tよりも下方に突出し且つスプロケット51,61の外向き面に所定ギャップを隔てて対面するガード部4Gを設けている。このようなスペーサ4S及びガード部4Gを有する検体ホルダ4を複数連結した検体ホルダ帯2を搬送部3へ組み付ける際には、ガイドレール7にスペーサ4Sが干渉しない位置であって且つスプロケット51,61にガード部4G全体が干渉しない位置に検体ホルダ帯2をセットすることで、検体ホルダ帯2のうち下流側回転伝動体5及び上流側回転伝動体6を通過する領域が下流側回転伝動体5及び上流側回転伝動体6を構成する各スプロケット51,61に噛合し、且つ検体ホルダ帯2のうち上流側回転伝動体6を通過し終えてから下流側回転伝動体5に到達するまでの領域がガイドレール7に支持される適切な組付位置を確保することができる。また、搬送部3による検体ホルダ帯2の搬送処理中に意図しない外力等によって検体ホルダ帯2が幅方向(検体ホルダ4の長手方向Lと同一方向)にずれる事態をスペーサ4S及びガード部4Gによって防止・抑制することができる。
【0038】
そして、検体ホルダ帯2を搬送部3に組み付けた本実施形態に係る検体搬送装置1によれば、モータMの駆動時に環状の検体ホルダ帯2を下流側回転伝動体5と上流側回転伝動体6との間で周回させ、検体ホルダ帯2のうち上流側回転伝動体6から下流側回転伝動体5に到達するまでの領域をガイドレール7によって下方から支持し、各検体ホルダ4による試験紙Pの安定した保持状態を維持することができ、所定の試験測定位置に到達した検体ホルダ4を所定時間(例えば4秒)一時停止させて当該検体ホルダ4上の試験紙Pを用いた正確な測定処理を行うことができる。なお、検体ホルダ帯2のうち試験測定位置を通過して下流側回転伝動体5を通過中の検体ホルダ4は、載置部41として機能する上向き面が上を向く上向き姿勢から載置面41が下を向く下向き姿勢に漸次姿勢変更するため、当該検体ホルダ4から試験紙Pは自重で落下し、所定の回収スペース(図示省略)に回収される。
【0039】
そして、本実施形態に係る検体搬送装置1は、検体ホルダ4の洗浄を容易に行えるように、検体ホルダ帯2の環状状態を解除して搬送部3から取り出す(取り外す)ことが可能とされている。以下に、
図10乃至
図12を参照して、検体ホルダ帯2の環状状態を解除する操作について説明する。
【0040】
検体ホルダ帯2の環状状態を解除する操作は、モータMの駆動を停止した状態で、
図10に示すように、上流側回転伝動体6に形成した切欠部Cの開口方向が斜め上方向となる解除位置まで検体ホルダ帯2を手動で周回移動させる。なお、
図10乃至
図12では、検体ホルダ帯2のうち切欠部Cを上方から覆う検体ホルダ4と当該検体ホルダ4に隣り合う検体ホルダ4の計3つの検体ホルダ4のみを抽出して示し、他の検体ホルダ4は省略している。以下では、検体ホルダ帯2のうち切欠部Cを上方から覆う検体ホルダ4を解除操作対象検体ホルダ4Aとし、解除操作対象検体ホルダ4Aに隣り合う検体ホルダ4を隣接検体ホルダ4B(下流側),4C(上流側)とする。
【0041】
検体ホルダ帯2の解除位置をユーザーが容易に把握できるように、例えば、上流側回転伝動体6のうち切欠部Cに連続する部分であって検体ホルダ帯2の隙間(検体ホルダ4同士の隙間)からユーザーが視認可能な部分に図示しない目印(例えば他の部分と異なる色を付した目印)を付している。なお、解除位置を特定する目印は特に限定されず、他の適宜の手段によって具体化されたものであってもよい。
【0042】
検体ホルダ帯2を解除位置に位置付けた状態、換言すれば上流側回転伝動体6の所定位置に設定した目印が特定の方向から見える位置に上流側回転伝動体6をセットした状態で、ユーザーが検体ホルダ帯2のうち上流側回転伝動体6の切欠部Cを上方から覆う検体ホルダ4(解除操作対象検体ホルダ4A)を切欠部Cに向かって押し込む。本実施形態では、
図1に相対的に太い矢印で示す斜め下方に向かって解除操作対象検体ホルダ4Aを押し込む。すると、
図11に示すように、当該押し込む力によって解除操作対象検体ホルダ4Aが切欠部Cに向かって沈み込み、正規の搬送経路から外れ、ある程度沈み込むと、
図12に示すように、解除操作対象検体ホルダ4Aと、当該沈み込んだ検体ホルダ4に連結部49で連結されている検体ホルダ4(搬送方向T上流側の隣接検体ホルダ4C)との連結状態が解除される。ここで、解除操作対象検体ホルダ4Aのうちユーザーが押し込む箇所は、切欠部Cを覆う箇所であり、解除操作対象検体ホルダ4Aの長手方向L一端部である。解除操作対象検体ホルダ4Aの長手方向L他端部は、スプロケット61の歯溝62に噛合した状態で支持されている。したがって、解除操作対象検体ホルダ4Aに押し込む力が付与された場合であっても、解除操作対象検体ホルダ4Aの長手方向L他端部は沈み込まない。この様子を
図11及び
図12では正確に示さず、説明の便宜上、解除操作対象検体ホルダ4A全体が沈み込む図として示している。
【0043】
解除操作対象検体ホルダ4Aに押し込む力が付与された場合、解除操作対象検体ホルダ4Aに対して搬送方向T下流側の隣接検体ホルダ4B及び搬送方向T上流側の隣接検体ホルダ4Cは、それぞれ下方突起部4Tがスプロケット61の歯溝62に噛合した状態で支持されている(
図11参照)。したがって、本実施形態では、解除操作対象検体ホルダ4Aに押し込む力が付与された場合であっても、これら隣接検体ホルダ4B,4Cは正規の搬送経路から外れる方向(スプロケット61の回転中心66に向かう方向)への移動が規制される。その結果、隣接検体ホルダ4B,4Cの凹部4X及び凸部4Yもその位置に留まる。このようにユーザーによる解除操作時において移動しない隣接検体ホルダ4B,4Cの凹部4X及び凸部4Yを、以下では静的凸部4Y及び静的凹部4Xとする。また、
図10乃至
図12では、どの検体ホルダ4の凹部、凸部であるかを明確にすべく、符号4X,4Yの後尾に(4A),(4B),(4C)を付している。
【0044】
本実施形態に係る検体搬送装置1では、隣り合う検体ホルダ4同士を連結する連結部49のうち凸部4Yの下半部を部分円柱状に設定しているため、解除操作対象検体ホルダ4Aに対して正規の搬送経路から外れる方向(スプロケット61の回転中心66に向かう方向)への操作力が付与された場合、
図11に示すように、解除操作対象検体ホルダ4Aの凸部4Yと搬送方向T下流側の隣接検体ホルダ4Bの凹部4X(静的凹部4X)との係合状態は維持される一方、解除操作対象検体ホルダ4Aの凹部4Xは、搬送方向T上流側の隣接検体ホルダ4Cの凸部4Y(静的凸部4Y)の上半部に形成した傾斜面4Kを摺動しながら当該凸部4Y(静的凸部4Y)との係合状態を解除する方向に移動する。すなわち、隣接検体ホルダ4Bの凸部4Y(静的凸部4Y)の上半部に形成した傾斜面4Kが解除操作対象検体ホルダ4Aの凹部4Xを係合解除方向に摺動させる面として機能する。ここで、検体ホルダ帯2を解除位置に位置付けた状態における凹部4Xと凸部4Y(静的凸部4Y)の係合解除方向は、解除操作対象検体ホルダ4Aを押圧する方向と一致または略一致する。その結果、解除操作対象検体ホルダ4Aを隣接検体ホルダ4Bに対して凹凸係合が解除される方向へスムーズに移動させることができる。
図11及び
図12では、搬送方向T下流側の隣接検体ホルダ4Cの傾斜面4Kに所定のパターンを付している。
【0045】
解除操作対象検体ホルダ4Aを検体ホルダ帯2の正規の搬送経路から外れる方向(スプロケット61の回転中心66に向かう方向)へ押圧する操作力をユーザーが付与し続けると、
図12に示すように、やがて解除操作対象検体ホルダ4Aの凹部4Xは搬送方向T上流側隣接検体ホルダ4Cの凸部4Y(静的凸部4Y)に設けた傾斜面4Kを完全に乗り越え、当該凹部4Xと搬送方向T上流側隣接検体ホルダ4Cの凸部4Y(静的凸部4Y)との係合状態が解除される。解除操作対象検体ホルダ4Aの凹部4X(動的凹部4X)が搬送方向T上流側隣接検体ホルダ4Cの凸部4Y(静的凸部4Y)の傾斜面4Kを乗り越えた時点で、ユーザーはクリック感を得るため、係合状態が解除されたことを直感的に把握できる。
【0046】
クリック感を得たユーザーが解除操作対象検体ホルダ4Aを押圧する操作力の付与を停止すると、解除操作対象検体ホルダ4Aの連結部49は、凹部4Xが隣接検体ホルダ4Cの凸部4Y(静的凸部4Y)に係合しない位置、つまり凹部4Xと凸部4Yが検体ホルダ4の長手方向Lに重ならない位置(ずれた位置)に留まる。
【0047】
このようにして、解除操作対象検体ホルダ4Aと隣接検体ホルダ4Cとの連結状態が一部解除される。本実施形態では、上流側回転伝動体6を構成する左右一対のスプロケット61のうち一方のスプロケット61にのみ切欠部Cを形成し、他方のスプロケット61には切欠部Cを形成していないため、当該他方のスプロケット61を利用して上述の係合解除操作を行うことはできない。しかしながら、解除操作対象検体ホルダ4Aの長手方向L一端部側における隣接検体ホルダ4Cとの係合状態が解除されることで当該長手方向L一端部側がフリーな状態になり、検体ホルダ帯2に通常使用時よりも大きなあそびができ、解除操作対象検体ホルダ4Aの長手方向L他端部側における隣接検体ホルダ4Cとの係合状態(凹凸係合状態)を手動で解除することが可能である。
【0048】
以上の手順によって、解除操作対象検体ホルダ4Aの長手方向L両端部における隣接検体ホルダ4Bとの連結状態を解除することができ、検体ホルダ帯2の環状状態は完全に解除される。環状状態が完全に解除された状態で解除操作対象検体ホルダ4Aを
図2に示す搬送方向Tと平行な方向(例えば
図2に示す搬送方向Tの逆方向)に引っ張ると、帯状(無端状ではなく有端状)の検体ホルダ帯2全体を搬送部3から取り外すことができる。そして、必要に応じて、個々に検体ホルダ4同士の連結状態を解除して検体ホルダ4毎に洗浄したり、あるいは帯状の検体ホルダ帯2のまま洗浄することで、検体ホルダ4内の残液等を検体ホルダ4から除去し、各検体ホルダ4を清潔に保つことができる。
【0049】
また、上述した手順の逆の手順を経ることで、検体ホルダ帯2を搬送部3にセットすることができる。つまり、複数の検体ホルダ4を環状ではなく帯状に連結した状態で、シャーシ8に収容し、搬送部3に支持される所定の位置にセットし、最後に、連結されていない両エンドの検体ホルダ4同士を手動で係合(凹凸係合)することで、環状の検体ホルダ帯2を搬送部3によって正規の搬送経路に沿って所定方向に周回移動可能な検体搬送装置1になる。なお、連結されていない検体ホルダ4同士を連結する際には、一方の検体ホルダ4の凸部4Yに設けた傾斜面4Kに他方の検体ホルダ4の凹部4Xを摺動させることで、凹凸係合をスムーズ且つ適切に行うことができる。
【0050】
このように、本実施形態に係る検体搬送装置1によれば、搬送部3として、検体ホルダ帯2の環状状態を解除する際に一部の検体ホルダ4を押し込むことが可能な切欠部Cを有するものを適用し、検体ホルダ帯2のうち所定位置にある検体ホルダ4(解除操作対象検体ホルダ4A)を切欠部Cに向かって押し込むことによって正規の搬送経路から外れた解除操作対象検体ホルダ4Aの隣接検体ホルダ4(本実施形態では搬送方向T上流側の隣接検体ホルダ4C)に対する連結状態を解除可能に構成しているため、検体の検査を行う通常使用時には、搬送部3によって検体ホルダ帯2を正規の搬送経路に沿って所定方向に周回移動させて、検体ホルダ4に保持されている検体を搬送することができる一方、検体ホルダ4を洗浄するために検体ホルダ帯2の環状状態を解除する際には、搬送部3が有する切欠部Cに向かって検体ホルダ帯2のうち解除操作対象検体ホルダ4Aを押し込む操作力をユーザーが付与することによって、正規の搬送経路から外れた解除操作対象検体ホルダ4Aと隣接検体ホルダ4との連結状態を解除することができる。
【0051】
したがって、ユーザーは専用の工具を用いることなく簡単に検体ホルダ4同士の連結状態を解除することができ、搬送部3から取り外した検体ホルダ帯2を検体ホルダ4単位でメンテナンスを行うことができる。ユーザーによるメンテナンスの具体例としては、洗浄(水や洗剤などの液体で洗う)、清掃(ふき取る、ほこりを掃う)、部品交換(汚れのひどいものを取り除く、汚れたものを交換する、破損したものを交換する)を挙げることができる。
【0052】
特に、本実施形態における切欠部Cが、検体ホルダ帯2のうち一つの検体ホルダ4の当該切欠部Cへの侵入を許容するものであるため、解除操作時に切欠部Cに侵入する一つの検体ホルダ4(解除操作対象検体ホルダ4A)の両隣の検体ホルダ4(検体ホルダ4B,4C)は切欠部Cに侵入せずに搬送部3(回転伝動体6、具体的にはスプロケット61)に支持されていることになり、切欠部Cに侵入する一つの検体ホルダ4が、切欠部Cに侵入せずに正規の搬送経路に留まる隣接検体ホルダ4から外れ易い構成を実現できる。
【0053】
また、本実施形態では、環状状態の検体ホルダ帯2を掛け回した状態で支持する回転伝動体であるスプロケット61の外周面の一部に切欠部Cを形成しているため、切欠部Cに向かって検体ホルダ4を押し込む操作力を付与しない限り、スプロケット61の外周面に支持される検体ホルダ帯2を回転伝動体回りに搬送することができるとともに、スプロケット61の外周面の一部に形成した切欠部Cに解除操作対象検体ホルダ4Aを押し込む操作力を付与することによって、切欠部Cに侵入して正規の搬送経路から外れた解除操作対象検体ホルダ4Aの隣接検体ホルダ4Bに対する連結状態を解除することができる。
【0054】
さらに、本実施形態に係る検体搬送装置1では、周回方向に隣り合う検体ホルダ4同士が凹凸係合によって連結されたものであり、凹凸係合に寄与する凸部4Yに、環状状態の検体ホルダ帯2のうち所定位置にある解除操作対象の検体ホルダ4を切欠部Cに向かって押し込んだ際に、凹凸係合の相手方となる凹部4Xを係合解除方向に摺動させる傾斜面4Kを形成しているため、連結状態にある一方の検体ホルダ4の凹部4Xを、他方の検体ホルダ4の凸部4Yに対して傾斜面4Kを利用して係合解除方向に摺動させることで、凹凸係合状態をスムーズに解除することができる。また、連結されていない検体ホルダ4同士を連結する場合には、連結対象である一方の検体ホルダ4の凹部4Xを、他方の検体ホルダ4の凸部4Yに対して傾斜面4Kを利用して係合解除方向の逆方向に摺動させることで、スムーズに凹凸係合させることができ、検体ホルダ4同士を連結できる。
【0055】
特に、凹凸係合に寄与する凸部4Yに形成される傾斜面4Kが、検体ホルダ帯2のうち所定位置にある解除操作対象検体ホルダ4Aを切欠部Cに向かって押し込んだ際に、凹凸係合の相手方となる凹部4Xを係合解除方向にのみ摺動させる面であるため、検体ホルダ帯2に不意な外力が作用した場合であっても、所定位置にある検体ホルダ4を切欠部Cに向かって押し込む外力が付与されない限り、凹凸係合状態を維持することができ、凹凸係合が不意に解除される事態を回避できる。
【0056】
さらに、本実施形態に係る検体ホルダ4は、ベース44とフレーム45の2パーツからなり、上向き面を載置部41に設定したベース44をフレーム45に着脱可能に収容した構造であるため、ユーザーによるメンテナンス等を行う場合に検体ホルダ4をベース44とフレーム45に分解することができ、取り扱い性に優れる。
【0057】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、搬送部に設ける切欠部の位置や形状、数は特に限定されない。したがって、搬送部が切欠部を複数有する構成や、搬送部のうちガイドレールに切欠部を設定した構成、または複数の回転伝動体にそれぞれ切欠部を設定した構成、あるいは下流側回転伝動体にのみ切欠部を設定した構成、これら何れの構成も本発明に包含される。
【0058】
また、検体ホルダ帯の環状状態を解除する際に一部の検体ホルダを押し込む方向は、切欠部に向かう方向であればよく、環状の検体ホルダ帯が周回する正規の搬送経路に対して内周に向かう方向、または外周に向かう方向の何れであってもよい。
本発明では、回転伝動体として、スプロケットに代えてプーリーを適用することができる。この場合、環状の検体ホルダ帯は、チェーン構造体ではなく、複数のプーリーに掛け渡したベルト体として機能するものであることが好ましい。
【0059】
連結部の凸部に形成する傾斜面の数や傾斜角度、また傾斜面の形成領域も特に限定されない。例えば円柱状のピンの外周面において2つの傾斜面を相互に周方向に隣り合う位置に形成した態様を採用し、傾斜面同士の境界部分である峰部分を摺動部として機能させることもできる。
【0060】
また、連結部の凹部の内周面に、凹凸係合の相手方となる凸部を係合解除方向に摺動させる傾斜面を設定してもよい。凹部の形状や凸部の形状も相互に係合可能なものであれば特に限定されない。
【0061】
連結部は凹凸係合によって隣り合うホルダ同士を連結可能なものに限定されず、ボタンや面ファスナ、フック等、適宜の係合または嵌合によって隣り合うホルダ同士を連結可能なものであっても構わない。
【0062】
本発明の切欠部は、検体ホルダ帯のうち複数の検体ホルダが侵入可能なサイズに設定されたものであってもよい。
【0063】
上述の実施形態では、解除操作対象検体ホルダ4Aと、解除操作対象検体ホルダ4Aに対して搬送方向T上流側に隣り合う検体ホルダ4(上流側隣接検体ホルダ4C)との連結状態を解除することで、検体ホルダ帯2の環状状態を解除する態様を例示したが、本発明では、解除操作対象検体ホルダと、解除操作対象検体ホルダに対して搬送方向下流側に隣り合う検体ホルダ(下流側隣接検体ホルダ)との連結状態を解除することで検体ホルダ帯の環状状態を解除する態様や、解除操作対象検体ホルダと下流側隣接検体ホルダ及び上流側隣接検体ホルダとの連結状態をそれぞれ同時または略同時に解除することで検体ホルダ帯の環状状態を解除する態様を採用することも可能である。
【0064】
検体ホルダは、3パーツ以上から構成されるものであってもよいし、単一のパーツから構成されるものであってもよい。
【0065】
上述の実施形態では、横臥姿勢(水平姿勢)の検体ホルダを環状に複数連結した検体ホルダ帯を搬送部で搬送する態様を例示したが、起立姿勢の検体ホルダを環状に複数連結した検体ホルダ帯を搬送部で搬送する態様であってもよい。この場合、搬送部が備える回転伝動体は、鉛直軸回りに回転するものであることが好ましい。搬送部は、回転伝動体またはガイドレールを備えていないものであっても構わない。
【0066】
上述の実施形態では、検体が尿である場合について説明したが、本発明の検体搬送装置は、尿以外の液体、または液体以外の状態にある物質を検体とし、検体に応じて選択される検体ホルダを環状に連結した検体ホルダ帯を搬送部で搬送する装置全般を包含する。
【0067】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…検体搬送装置
2…検体ホルダ帯
3…搬送部
4…検体ホルダ
4K…傾斜面
4X…凹部
4Y…凸部
5,6…回転伝動体(下流側回転伝動体,上流側回転伝動体)
C…切欠部