(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】車載器管理システム
(51)【国際特許分類】
H04W 28/08 20230101AFI20230516BHJP
H04W 8/24 20090101ALI20230516BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20230516BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230516BHJP
G07C 5/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H04W28/08
H04W8/24
H04W4/44
G08G1/00
G07C5/00
(21)【出願番号】P 2019145892
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】島崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 善夫
【審査官】篠田 享佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-210433(JP,A)
【文献】特開2004-247951(JP,A)
【文献】米国特許第08363102(US,B1)
【文献】特開2018-005894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
G08G 1/00
G07C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両のそれぞれに搭載された車載器と、前記車載器に無線通信を介して接続されたサーバとを備える車載器管理システムであって、
前記車載器は、
前記車両の運行状況を示す運行情報を取得する取得部と、
前記取得された運行情報を前記サーバに送信する車載器側送信部と、
前記サーバからファイルを受信する車載器側受信部と、
を備え、
前記サーバは、
各前記車載器に対してファイルを送信するサーバ側送信部と、
前記ファイルの送信対象となる対象車載器の優先度が設定された優先度テーブルを対象車載器ごとに記憶する優先度テーブル記憶部と、
前記サーバ側送信部を制御し、前記優先度テーブルから得られる優先度のうち、前記優先度の高い対象車載器に対して前記ファイルを送信させるサーバ側制御部と、
前記対象車載器から前記運行情報を受信するサーバ側受信部と、
前記受信した前記運行情報に応じて前記優先度テーブルを更新するテーブル更新部と、
を備え、
前記サーバ側制御部は、
前記サーバの負荷を監視し、前記サーバ側送信部による送信時に前記サーバの負荷が予め設定された閾値以上となった場合、前記ファイルの送信を一時中断させ、
前記サーバの負荷が前記閾値より低くなった場合、前記ファイルの送信を再開させる
ことを特徴とする車載器管理システム。
【請求項2】
前記車載器は、さらに、
前記受信したファイルの種類を判定する車載器側制御部を備え、
前記車載器側制御部は、
前記受信したファイルが更新ファイルである場合、前記更新ファイルに基づいて前記車載器に記憶されたファイルの更新を行う
請求項1に記載の車載器管理システム。
【請求項3】
前記優先度テーブルは、
予め設定される基本優先度と、
前記基本優先度に対して優先条件に応じて加点される加点優先度と、
で構成され、
前記テーブル更新部は、
前記加点優先度を更新する
請求項1または2に記載の車載器管理システム。
【請求項4】
前記優先度テーブルは、前記ファイルに対応しており、
前記サーバ側送信部は、
全ての前記優先度テーブルの優先度の高い順に前記ファイルを送信する
請求項1~3のいずれか1項に記載の車載器管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載器運用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、デジタル式の運行記録計であり、いわゆるデジタルタコグラフと呼ばれる車載器が搭載されているものがある(特許文献1~3参照)。車載器は、例えば、運送会社やタクシー会社等の1つの企業や団体がそれぞれ保有するタクシーやトラック等の複数の車両にそれぞれ搭載されている。このような車載器を管理するシステムとして、車載器が記録した運行情報をデータセンタ内のサーバに送信し、当該サーバが運行情報を管理するものがある。車載器は、例えば、車両の出庫時にサーバにアクセスし、当該サーバから必要なファイルをダウンロードして、ファイルの更新を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-116576号公報
【文献】特開2006-5658号公報
【文献】特開2016-149009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タクシーやトラック等の車両は、朝方の出庫が多く、出庫時に車載器からサーバへのアクセスが集中すると、サーバの負荷が一時的に増加し、ダウンロードに要する時間が長くなったり、ファイルの更新がし難くなり、車両の出庫が遅れる等のおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、サーバに負荷をかけることなく、対象となる車載器のファイル更新を自動実行することができる車載器管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る車載器管理システムは、複数の車両のそれぞれに搭載された車載器と、前記車載器に無線通信を介して接続されたサーバとを備える車載器管理システムであって、前記車載器は、前記車両の運行状況を示す運行情報を取得する取得部と、前記取得された運行情報を前記サーバに送信する車載器側送信部と、前記サーバからファイルを受信する車載器側受信部と、を備え、前記サーバは、各前記車載器に対してファイルを送信するサーバ側送信部と、前記ファイルの送信対象となる対象車載器の優先度が設定された優先度テーブルを対象車載器ごとに記憶する優先度テーブル記憶部と、前記サーバ側送信部を制御し、前記優先度テーブルから得られる優先度のうち、前記優先度の高い対象車載器に対して前記ファイルを送信させるサーバ側制御部と、前記対象車載器から前記運行情報を受信するサーバ側受信部と、前記受信した前記運行情報に応じて前記優先度テーブルを更新するテーブル更新部と、を備え、前記サーバ側制御部は、前記サーバの負荷を監視し、前記サーバ側送信部による送信時に前記サーバの負荷が予め設定された閾値以上となった場合、前記ファイルの送信を一時中断させ、前記サーバの負荷が前記閾値より低くなった場合、前記ファイルの送信を再開させることを特徴とする。
【0007】
また、上記車載器管理システムにおいて、前記車載器は、さらに、前記受信したファイルの種類を判定する車載器側制御部を備え、前記車載器側制御部は、前記受信したファイルが更新ファイルである場合、前記更新ファイルに基づいて前記車載器に記憶されたファイルの更新を行うものである。
【0008】
また、上記車載器管理システムにおいて、前記優先度テーブルは、予め設定される基本優先度と、前記基本優先度に対して優先条件に応じて加点される加点優先度と、で構成され、前記テーブル更新部は、前記加点優先度を更新するものである。
【0009】
また、上記車載器管理システムにおいて、前記優先度テーブルは、前記ファイルに対応しており、前記サーバ側送信部は、全ての前記優先度テーブルの優先度の高い順に前記ファイルを送信するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車載器管理システムによれば、サーバに負荷をかけることなく、対象となる車載器のファイル更新を自動実行することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態における車載器管理システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、車載器管理システムを構成する車載器の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、車載器管理システムを構成するサーバの概略構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、サーバにて実行される制御処理の一例を示すフローチャート図である。
【
図5】
図5は、ファイル送信処理の一例を示すフローチャート図である。
【
図6】
図6は、車載器にて実行される制御処理の一例を示すフローチャート図である。
【
図7】
図7は、サーバにて管理される優先度テーブルの概略構成を示す模式図である。
【
図8】
図8は、車載器管理システム全体の動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る車載器管理システムの実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、下記実施形態における構成要素は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0013】
[実施形態]
実施形態における車載器管理システム1を
図1~
図8を参照して説明する。車載器管理システム1は、
図1に示すように、複数の車両100のそれぞれに搭載された車載器2と、車載器2に無線通信を介して接続されたサーバ3と、サーバ3にネットワーク4を介して接続された事務所PC7とを含んで構成される。ネットワーク4は、広域通信回線であり、典型的にはインターネットであるが、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、電話回線、専用デジタル回線であってもよい。
【0014】
車載器2は、例えば、デジタル式の運行記録計であり、いわゆるデジタルタコグラフである。車載器2は、
図1に示すように、車両100に搭載される。車両100は、例えば、タクシーやトラック等の業務用車両である。車載器2は、サーバ3との間で無線通信を介して接続されている。車載器2は、例えば、LTE(Long Term Evolution)等の通信規格に基づいて、中継アンテナ5を介してネットワーク4に接続され、ネットワーク4を介してサーバ3に接続される。車載器2は、
図2に示すように、運行情報取得部10と、RTC11と、メモリ12と、GPS受信部13と、通信部14と、操作部15と、表示部16と、音声I/F17と、アンテナ18と、スピーカ19と、CPU20とを含んで構成される。なお、車載器2は、これらの構成に限られるものではなく、他の構成を含むものであってもよい。
【0015】
運行情報取得部10は、取得部の一例であり、車両100の運行状況を示す運行情報を取得するものである。運行情報取得部10は、例えば、車両100のエンジン回転数を測定するセンサ、車両100の急発進や急加速、急減速等を測定するセンサ、車両100の車速を測定するセンサ等を含んで構成される。運行情報取得部10は、CPU20に接続され、取得した運行情報をCPU20に出力する。
【0016】
RTC11は、取得部の一例であり、現在の時刻を計時するものである。RTC11は、CPU20に接続され、計時した現在の時刻をCPU20に出力する。
【0017】
メモリ12は、車載器側記憶部の一例であり、RAM(Random Access Memory)、フラッシュROM(Read Only Memory)等で構成される。RAMは、半導体素子を利用した揮発性メモリであり、データの消去および書き換えが可能なものである。フラッシュROMは、半導体素子を利用した不揮発性メモリであり、データの消去および書き換えが可能であるが、通電をやめても記憶内容が維持される。フラッシュROMは、例えばファイルを記憶する。このファイルは、車載器2にて使用される設定ファイルであるが、例えば、車載器2にて実行されるプログラムファイルであってもよいし、データファイルであってもよい。メモリ12に記憶されるファイルは、1つであっても複数であってもよい。メモリ12は、CPU20に接続され、CPU20が利用するデータをも記憶する。
【0018】
GPS受信部13は、取得部の一例であり、車両100の走行位置を示す走行位置情報(緯度経度座標)を受信するものである。GPS受信部13は、GPS衛星6が配信する車両100の走行位置情報を表すGPS信号を受信する。GPS受信部13は、CPU20に接続されており、受信したGPS信号に応じた車両100の走行位置情報をCPU20に出力する。
【0019】
通信部14は、アンテナ18を介して、移動体通信事業者が提供する中継アンテナ5との間で無線通信を行って情報の送受信を行うものである。通信部14は、車載器側送信部の一例であり、CPU20に接続され、CPU20からの指示に応じて、運行情報取得部10で取得された運行情報をサーバ3に送信する。また、通信部14は、車載器側受信部の一例であり、上述したファイルをサーバ3から受信する。
【0020】
操作部15は、車載器2を操作するための操作機能を有し、例えば、ボタンやスイッチ等である。操作部15は、CPU20に接続されており、例えば、表示部16による表示の切り替え指示や選択等を行うものである。
【0021】
表示部16は、比較的情報量の少ない画像情報(可視情報)を表示する表示機能を有し、LCD(Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ等で構成される。表示部16は、CPU20に接続されて、CPU20からの指示に応じて各種情報を表示する。
【0022】
音声I/F17は、CPU20に接続され、CPU20から指示に応じて、例えば、テキスト形式のメッセージから疑似音声信号を合成し、スピーカ19を介して音声として出力する。また、音声I/F17は、スピーカ19を介して警告音を出力することも可能である。
【0023】
CPU20は、車載器2の各部を統括的に制御する中央演算装置(Central Processing Unit)である。CPU20は、周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路を含んで構成される。CPU20は、上述のように、運行情報取得部10、RTC11、メモリ12、GPS受信部13、通信部14、操作部15、表示部16、および音声I/F17等が接続されており、これらとの間で種々の電気信号の入出力を行う。CPU20は、メモリ12に記憶されているプログラムを実行し、車載器2の機能を実現するために必要な様々な処理を行う。CPU20は、例えば、車両100が備えるイグニッションスイッチから出力されるIGNオン信号を停止状態において受け付けると、起動して車載器2を起動状態にする一方、イグニッションスイッチから出力されるIGNオフ信号を起動状態において受け付けると、動作を停止して車載器2を停止状態にする。
【0024】
CPU20は、車載器側制御部の一例であり、通信部14で受信したファイルの種類を判定する。CPU20は、受信したファイルが更新ファイルである場合、更新ファイルに基づいて車載器2に記憶されたファイルの更新を行う。更新ファイルは、例えば、車載器2にインストールされた各種プログラムの機能追加、セキュリティの向上、バグの修正を行う差分修正ファイル(アップデートファイル)である。
【0025】
サーバ3は、情報処理装置の一例であり、車両100を管理する輸送業者等に対して各種サービスを提供する事業者が管理し、当該事業者の施設等に配置される。サーバ3は、
図1に示すように、ネットワーク4に有線で接続され、当該ネットワーク4に接続された中継アンテナ5を介して無線通信により各車載器2に接続される。サーバ3は、
図3に示すように、通信部31と、操作部32と、表示部33と、RTC34と、メモリ35と、CPU36とを含んで構成される。
【0026】
通信部31は、ネットワーク4に有線(または無線)で接続され、ネットワーク4との間で情報の送受信を行うものである。通信部31は、CPU36に接続され、受信した情報をCPU36に出力し、CPU36から出力された情報を送信する。通信部31は、サーバ側送信部の一例であり、各車載器2に対してファイルを送信する。また、通信部31は、サーバ側受信部の一例であり、対象となる車載器2(以下、「対象車載器」とも称する。」から運行情報を受信する(
図8のS5)。ここの対象車載器は、複数の車載器2のうち、ファイルの送信対象となるものであり、1つであっても複数であってもよい。
【0027】
操作部32は、サーバ3を操作するための操作機能を有し、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等である。操作部32は、CPU36に接続されており、例えば、表示部33による表示の切り替え指示等を行うものである。
【0028】
表示部33は、サーバ3を利用するユーザに向けて画像情報(可視情報)を表示する表示機能を有し、LCD、有機ELディスプレイ等で構成される。表示部33は、CPU36に接続されており、CPU36からの画像情報を表示する。
【0029】
RTC34は、取得部の一例であり、現在の時刻を計時するものである。RTC34は、CPU36に接続され、計時した現在の時刻をCPU36に出力する。
【0030】
メモリ35は、CPU36に接続され、当該CPU36が利用する各種ファイルやデータ等を記憶する。メモリ35は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ(HDD)等で構成される。RAMは、半導体素子を利用した揮発性メモリであり、例えばROM等から読み出されたオペレーションシステム(OS)のプログラムやアプリケーションプログラム等を記憶する。ROMは、半導体素子を利用した不揮発性メモリであり、OSと協働してHDD等へのデータの入出力を制御する、いわゆるBIOS(Binary Input/Output System)等が記憶される。HDDは、補助記憶装置であり、サーバ3の起動時、または、必要なときにRAMにロードされるOSやアプリケーションプログラム、各種データを記憶する。
【0031】
メモリ35は、ファイル記憶領域41と、優先度テーブル記憶領域42と、サーバ負荷情報記憶領域43とを有する。ファイル記憶領域41は、上述した更新ファイル等のファイルを記憶する部分である。ファイル記憶領域41には、例えば、各対象車載器に対応する1以上のファイルが記憶される。ファイルは、更新ファイルを含めて、例えば事務所PC7で作成され、サーバ3にアップロードされる。優先度テーブル記憶領域42は、優先度テーブル記憶部の一例であり、対象となる車載器2の優先度が設定された優先度テーブル50を記憶する部分である。優先度テーブル記憶領域42には、各対象機器に対応する1以上の優先度テーブル50が記憶される。サーバ負荷情報記憶領域43は、サーバ3の負荷情報を記憶する部分である。
【0032】
優先度テーブル50は、
図7に示すように、ファイル名51、送信先52、基本優先度53、および加点優先度54を含んで構成される。ファイル名51は、送信対象となるファイルの名称である。送信先52は、送信対象となる対象車載器の車載器名である。この車載器名は、対象となる車載器2を識別可能なものであれば、予め設定された固有の名称であってもよいし、IDであってもよい。優先度テーブル50の優先度は、基本優先度53と、加点優先度54とで構成される。優先度テーブル50の優先度は、基本優先度53に加点優先度54を加えたものである。基本優先度53は、優先度テーブル50の作成時に設定される優先度であり、例えば、0,1,2,…,10の数値範囲で設定される。例えば、ファイルを直ちに送信しない場合、基本優先度を0に設定し、ファイルを直ちに送信したい場合には、基本優先度を最大である10に設定する。加点優先度54は、基本優先度53に対して優先条件に応じて加点される優先度である。優先条件としては、例えば、予め設定された指定時間帯に加点を行う優先時間帯がある。加点優先度54は、現在の時刻が優先時間帯にかかった場合、基本優先度53に加点される。また、優先条件としては、例えば、運行状況に合致した場合に加点される優先作業状況がある。加点優先度54は、車両100の運行状況が入庫状態となった場合、基本優先度53に加点される。また、優先条件としては、例えば、指定緯度経度に最も近い場合に加点される優先緯度経度がある。加点優先度54は、車両100の走行位置情報(緯度経度座標)が指定緯度経度に最も近づいた場合、基本優先度53に加点される。
【0033】
CPU36は、サーバ3の各部を統括的に制御する中央演算装置(Central Processing Unit)である。CPU36は、周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路を含んで構成される。CPU36は、上述のように、通信部31、操作部32、表示部33、RTC34、およびメモリ35等が接続されており、これらとの間で種々の電気信号の入出力を行う。CPU36は、メモリ35に記憶されているプログラムを実行し、各種機能を実現するために必要な様々な処理を行う。
【0034】
CPU36は、サーバ側制御部の一例であり、通信部31を制御し、優先度テーブル50から得られる優先度のうち、優先度の高い対象車載器に対してファイルを送信させる。また、CPU36は、テーブル更新部の一例であり、通信部31が対象となる車載器2から受信した運行情報に応じて優先度テーブル50を更新する。優先度テーブル50は、運行情報に応じて加点優先度が更新され、優先度が更新される。例えば、CPU36は、運行情報に含まれる時刻情報に基づいて、現在時刻が優先時間帯にかかった場合、加点優先度54を上げて、優先度テーブル50の優先度を高くする。例えば、CPU36は、運行情報に含まれる入庫情報に基づいて、車両100が入庫状態となった場合、加点優先度54を上げて、優先度テーブル50の優先度を高くする。例えば、CPU36は、運行情報に含まれる走行位置情報に基づいて、車両100が指定緯度経度に近づいた場合、加点優先度54を上げて、優先度テーブル50の優先度を高くする。
【0035】
また、CPU36は、サーバ3の負荷を監視し、通信部31によるファイルの送信時にサーバ3の負荷が予め設定された閾値以上となった場合、ファイルの送信を一時中断させ、サーバ3の負荷が閾値より低くなった場合、ファイルの送信を再開させる。閾値は、例えば、サーバ3の処理能力に応じて当該サーバ3の管理者により設定される。
【0036】
事務所PC7は、情報処理装置の一例であり、例えば、パーソナルコンピュータ(Personal Computer:PC)である。事務所PC7は、車両100を管理する輸送業者の施設等に配置される。事務所PC7は、ネットワーク4に有線(または無線)で接続され、当該ネットワーク4を介してサーバ3に接続される。事務所PC7は、
図3に示すサーバ3と同様に、通信部、操作部、表示部、RTC、メモリ、およびCPUを含んで構成される。
【0037】
事務所PC7は、更新ファイル等のファイルを作成することが可能であり、作成したファイルをサーバ3にアップロードすることができる(
図8のS1)。サーバ3にアップロードされるファイルは、メモリ35のファイル記憶領域41に記憶される(
図8のS2)。サーバ3にファイルがアップロードされると、ファイル更新の対象となる車載器2に対応する優先度テーブル50がサーバ3に作成される(
図8のS3)。作成された優先度テーブル50は、メモリ35の優先度テーブル記憶領域42に記憶される。事務所PC7は、優先度テーブル記憶領域42に記憶された優先度テーブル50を更新することができる(
図8のS4)。この場合、事務所PC7は、例えば、優先度テーブル50における送信先52、基本優先度53、加点優先度54の優先条件等を更新することができる。事務所PC7は、ネットワーク4を介して無線通信により車載器2に接続し、例えば、当該車載器2から運行情報、車載器情報、車両情報、ドライバの氏名情報等を取得することができる。
【0038】
次に、サーバ3における処理について
図4、
図5、
図7、
図8を参照して説明する。
図4および
図5の処理は、例えば、CPU36がメモリ35からアプリケーションプログラムを読み出して実行することによりなされるものである。本処理は、サーバ3において、バックグラウンドで繰り返し実行される。
【0039】
図4において、ステップS10では、CPU36は、優先度テーブル50があるか否かを判定する。CPU36は、メモリ35の優先度テーブル記憶領域42に優先度テーブル50が記憶されているか否かを判定する。この判定の結果、優先度テーブル50が記憶されていない場合はステップS10を繰り返す。一方、優先度テーブル50が記憶されている場合は、ステップS11へ進む。
【0040】
ステップS11では、CPU36は、優先度テーブル50の読込を行う。CPU36は、優先度テーブル記憶領域42から優先度テーブル50を読み込む。CPU36は、優先度テーブル記憶領域42に複数の優先度テーブル50が記憶されている場合、全ての優先度テーブル50を読み込む。
【0041】
ステップS12では、CPU36は、優先度計算を行う。CPU36は、ステップS11で読み込んだ優先度テーブル50から優先度を算出する。CPU36は、算出した優先度をメモリ35等に一時的に記憶させる(
図8のS12)。
【0042】
ステップS13では、CPU36は、全ての優先度テーブル50の優先度を計算したか否かを判定する(
図8のS13)。この判定の結果、全ての優先度テーブル50の優先度を計算していない場合は、ステップS12を繰り返す。一方、全ての優先度テーブル50の優先度を計算した場合、ステップS14へ進む。
【0043】
ステップS14では、CPU36は、優先度のソートを行う。CPU36は、ステップS13で算出した優先度を高い順に並べ替える(
図8のS14)。
【0044】
ステップS15では、CPU36は、優先度>基準優先度であるか否かを判定する。CPU36は、ステップS14でソートされた優先度のうち、高い優先度から順に基準優先度と比較し、基準優先度より高いものを選択する。基準優先度は、例えば、サーバ3の管理者により設定される。基準優先度の一例としては、「2」である。
【0045】
ステップS16では、CPU36は、サーバ3の負荷情報を取得する。CPU36は、随時更新されるサーバ3の負荷情報をサーバ負荷情報記憶領域43から取得する。
【0046】
ステップS17では、CPU36は、サーバ3の負荷≧閾値であるか否かを判定する。CPU36は、ステップS16で取得したサーバ3の負荷情報、例えば数値化された負荷が閾値以上であるか否かを判定する(
図8のS17)。サーバ3の負荷が閾値以上である場合、負荷が増加したと判断して、ステップS18のファイル送信処理を実行することなく、ステップS12へ戻る。一方、サーバ3の負荷が閾値より低い場合、負荷が増加していないと判断して、ファイル送信処理を実行する。なお、ステップS17で負荷が増加したと判断した場合、ステップS12に移行しているが、ステップS19へ移行するように構成してもよい。
【0047】
ステップS18では、CPU36は、
図5に示すファイル送信処理を実行する。
【0048】
ステップS19では、CPU36は、全ての対象車載器へのファイル送信が完了したか否かを判定する。全ての対象車載器へのファイル送信が完了していない場合は本処理を終了する。一方、全ての対象車載器へのファイル送信が完了した場合はステップS20に進む。
【0049】
ステップS20では、CPU36は、優先度テーブル50の更新の有無を判定する。CPU36は、上述したように、対象車載器から受信した運行情報に応じて優先度テーブル50を更新することから、当該更新の有無を判別する(
図8のS20)。優先度テーブル50の更新があった場合、優先度を再度算出すべく、ステップS12に戻る。一方、優先度テーブル50の更新がなかった場合には、ステップS15へ戻る。
【0050】
図5において、ステップS30では、CPU36は、通信部31を制御し、対象車載器に対してファイルの送信要求を送信させる(
図8のS30)。
【0051】
ステップS31では、CPU36は、通信部31が、ステップS30でファイルの送信要求を送信した対象車載器からファイルのバージョン要求を受信したか否かを判定する。ファイルのバージョン要求を受信していない場合はステップS31を繰り返す。一方、ファイルのバージョン要求を受信した場合はステップS32に進む。
【0052】
ステップS32では、CPU36は、通信部31を制御し、ファイルのバージョン要求を送信した対象車載器に対してファイルのバージョン情報を送信させる(
図8のS32)。
【0053】
ステップS33では、CPU36は、通信部31が、ステップS51でファイルのバージョン情報を送信した対象車載器からファイルの更新要求を受信したか否かを判定する。ファイルの更新要求を受信していない場合はステップS33を繰り返す。一方、ファイルの更新要求を受信した場合はステップS34に進む。
【0054】
ステップS34では、CPU36は、ファイルの更新要求を送信した対象車載器に対してファイルを送信して(
図8のS34)、リターンする。
【0055】
次に、車載器2における処理について
図6、
図8を参照して説明する。
図6の処理は、例えば、CPU20がメモリ12からアプリケーションプログラムを読み出して実行することによりなされるものである。本処理は、車載器2が起動状態であれば実行される。
【0056】
ステップS40では、CPU20は、通信部14が、サーバ3からファイルの送信要求を受信したか否かを判定する。この判定の結果、ファイルの送信要求を受信していない場合はステップS40を繰り返す。一方、ファイルの送信要求を受信した場合には、ステップS41へ進む。
【0057】
ステップS41では、CPU20は、通信部14を制御し、サーバ3に対してファイルのバージョン要求を送信させる(
図8のS41)。
【0058】
ステップS42では、CPU20は、通信部14が、サーバ3からファイルのバージョン情報を受信したか否かを判定する。この判定の結果、ファイルのバージョン情報を受信していない場合はステップS42を繰り返す。一方、ファイルのバージョン情報を受信した場合はステップS43に進む。
【0059】
ステップS43では、CPU20は、受信したファイルのバージョン情報と、メモリ12に記憶された対象となるファイルのバージョン情報とを比較し、バージョン判定を行う。例えば、CPU20は、バージョン情報の比較結果に基づいて、受信したファイルが新しい日付のバージョンであるか否かを判定する。
【0060】
ステップS44では、CPU20は、サーバ3に対してファイルの更新要求を送信する(
図8のS44)。ステップS45では、CPU20は、サーバ3からファイルを受信して、本処理を終了する。CPU20は、受信したファイルに基づいて、メモリ12に記憶されたファイルを更新する。
【0061】
以上説明したように、本実施形態における車載器管理システム1は、サーバ3が、ファイルの送信対象となる対象車載器の優先度が設定された優先度テーブル50を対象車載器ごとに記憶し、優先度テーブル50から得られる優先度のうち、優先度の高い対象車載器に対してファイルを送信する。これにより、優先度テーブル50の優先度に基づいて優先度の高い車載器2から順にサーバにアクセスすることができ、車載器2からサーバ3にアクセスするタイミングを分散させ、サーバ3の負荷の集中を抑制することでサーバ3の負荷を軽減させることができる。この結果、サーバ3に負荷をかけることなく、対象となる車載器2のファイル更新を実行することができる。さらに、優先度が高い車載器2に対してファイルが直ちに送信することが可能となり、ファイル送信の即時性を担保することができる。また、サーバ3は、対象車載器から受信した運行情報に応じて優先度テーブル50を更新するので、例えば、車両100が入庫状態となった場合に優先度テーブル50の優先度を高くなるので、車両100の車載器2に対するファイル送信が早期に実行され、車載器2のファイル更新を容易に行うことができる。また、サーバ3は、当該サーバ3の負荷を監視し、ファイルの送信時に負荷が予め設定された閾値以上となった場合、ファイルの送信を一時中断させ、負荷が閾値より低くなった場合、ファイルの送信を再開させる。これにより、ファイル送信時のサーバ3の負荷を軽減させることができる。
【0062】
また、本実施形態における車載器管理システム1は、車載器2が、受信したファイルの種類を判定し、受信したファイルが更新ファイルである場合、更新ファイルに基づいて車載器2に記憶されたファイルの更新を行う。これにより、例えば、車載器2が種類の異なるファイルを受信しても、当該ファイルが更新ファイルであれば、車載器2側のファイルの更新を確実に行うことが可能となる。
【0063】
また、本実施形態における車載器管理システム1は、優先度テーブル50が、予め設定される基本優先度53と、基本優先度53に対して優先条件に応じて加点される加点優先度54とで構成され、加点優先度54が車載器2の運行状況に応じて更新される。これにより、例えば、車両100の運行状況の変化に応じてファイルを送信したり、送信しなかったりすることができ、車載器2におけるファイル更新の成功率を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態における車載器管理システム1は、優先度テーブル50が、ファイルに対応している。サーバ3は、全ての優先度テーブル50の優先度の高い順にファイルを送信する。これにより、ファイルごとに複数の優先度テーブル50の設定が可能となり、当該ファイルが優先度順に送信される。この結果、当該ファイルに対応する優先度テーブル50を更新することなく、新たに作成された優先度テーブル50の優先度に基づいてファイルの送信が可能となり、ファイル更新作業の手間を低減することができる。
【0065】
なお、上記実施形態では、事務所PC7は、情報処理装置としてパーソナルコンピュータを利用しているが、これに限定されるものではない。例えば、スマートフォン、携帯情報端末、タブレット型PC、ノート型PC等であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、サーバ3は、ファイルがアップロードされると優先度テーブル50を作成するとしているが、これに限定されるものではない。例えば、事務所PC7が優先度テーブル50を作成する構成であってもよい。この場合、事務所PC7では、作成した優先度テーブル50をサーバ3にアップロードする。サーバ3にアップロードされた優先度テーブル50は、上述したように、事務所PC7による更新が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 車載器管理システム
2 車載器
3 サーバ
4 ネットワーク
5 中継アンテナ
6 GPS衛星
7 事務所PC
10 運行情報取得部
11,34 RTC
12,35 メモリ
13 GPS受信部
14,31 通信部
15,32 操作部
16,33 表示部
17 音声I/F
18 アンテナ
19 スピーカ
20,36 CPU
41 ファイル記憶領域
42 優先度テーブル記憶領域
43 サーバ負荷情報記憶領域
50 優先度テーブル
100 車両