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特許7280148風力発電用の羽根車、及び、風力発電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】風力発電用の羽根車、及び、風力発電システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 1/06 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
F03D1/06 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019149476
(22)【出願日】2019-08-16
(65)【公開番号】P2021032083
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】520320022
【氏名又は名称】津田 訓範
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 訓範
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0309095(US,A1)
【文献】特開2009-197752(JP,A)
【文献】特開2017-115624(JP,A)
【文献】特開2018-184933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の羽根と、
中心に回転軸が設けられており、前記複数枚の羽根を周方向に略等間隔に配置するハブと
を備える風力発電用の羽根車であって、
前記羽根は、
羽根車の外周に向かって幅を広げながら延びるように形成されており、
羽根の前縁及び後縁をそれぞれ延長した直線の交点と、羽根の前縁及び外周縁の交点とを結ぶ線分の長さが、羽根の前縁及び後縁をそれぞれ延長した直線の交点と、羽根の後縁及び外周縁の交点とを結ぶ線分の長さと異なり、
羽根の前縁と後縁を結ぶ線分が、羽根車の回転軸の垂直な面に対して、略10度以上、略20度以下となるように傾斜しており、
前記複数枚の羽根は、羽根車の回転方向前方の羽根の後縁と、回転方向後方の羽根の前縁との一部において、羽根車の正面視で重なる、
風力発電用の羽根車。
【請求項2】
前記複数の羽根は5枚であり、
羽根車の回転方向前方の羽根と回転方向後方の羽根とが、羽根車の外周部分において、羽根車の正面視で重ならない、
請求項1に記載の風力発電用の羽根車。
【請求項3】
前記羽根は、略均等の厚さに形成された板状素材で形成され、かつ、風を受ける側の面が平面である、
請求項1または2に記載の風力発電用の羽根車。
【請求項4】
中心軸に沿って切断した縦断面が略流線形をなすように形成された風洞、風洞内に配置された請求項1~3のいずれかに記載の羽根車、及び羽根車の回転によって発電する発電機を少なくとも有する風力発電装置を備える風力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電効率を上げることができ、かつ、静粛性に優れた、風力発電用の羽根車、及び、風力発電用の羽根車を備えた風力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への配慮から、クリーンエネルギーを利用した発電装置への関心が高まってきている。このような発電装置の一つとして、風力発電装置が挙げられる。風力発電装置は、風力により羽根車を回転させ、羽根車の回転によって得られる回転エネルギーを電気エネルギーに変換する装置である。
【0003】
ところで、電力需要が増大していることなどから、風力発電装置の発電量を増加することが望まれている。例えば、特許文献1では、発電量を増加するために、羽根車に風を集めるための風洞を設けた風力発電装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-182405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、風を受ける羽根車の羽根の面積が大きいほど、また、羽根車の回転速度が速いほど、風力発電装置の発電量は増加する傾向にある。また、同じ径を持ち、羽根の枚数が異なる羽根車同士を比べた場合、羽根の枚数が少ないほうが羽根車の回転速度が速くなることが知られている。そこで、現在主流である3枚羽根の羽根車を備えた風力発電装置は、羽根の面積を大きく取るために羽根の径が長くなるように設計されていることが多い。しかし、限られた領域に複数の風力発電装置を設置しようとすると、羽根の径が長くなるほど、風力発電装置の設置台数は少なくなり、結果として、領域の全体から得られる発電量は少なくなる。さらに、羽根と空気の摩擦によって生じる騒音の問題も、風力発電装置を設置できる場所が限られてしまう理由の一つになっている。このような理由から、限られた領域に複数の風力発電装置を設置して、領域の全体から効率よく発電することが可能であり、かつ、静粛性に優れた羽根車及び風力発電システムが求められている。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、限られた狭い領域に設置されていても、領域の全体から効率よく発電することが可能な羽根車及び風力発電システムを提供することである。また、本発明の目的は、風力発電時に羽根車の回転で生じる騒音を小さく抑制できる羽根車、及び、風力発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]~[4]のいずれかにより、上記課題を解決するものである。[1]複数枚の羽根と、中心に回転軸が設けられており、前記複数枚の羽根を周方向に略等間隔に配置するハブとを備える風力発電用の羽根車であって、前記羽根は、羽根車の外周に向かって幅を広げながら延びるように形成されており、羽根の前縁と後縁を結ぶ線分が羽根車の回転軸に垂直な面に対して、略10度以上、略20度以下となるように傾斜しており、前記複数枚の羽根は、羽根車の回転方向前方の羽根の後縁と、回転方向後方の羽根の前縁との一部において、羽根車の正面視で重なる、風力発電用の羽根車;
[2]前記複数の羽根は5枚であり、羽根車の回転方向前方の羽根と回転方向後方の羽根とが、羽根車の外周部分において、羽根車の正面視で重ならない、[1]に記載の風力発電用の羽根車;
[3]前記羽根は、略均等の厚さに形成された板状素材で形成され、かつ、風を受ける側の面が平面である、[1]または[2]に記載の風力発電用の羽根車;
[4]中心軸に沿って切断した縦断面が略流線形をなすように形成された風洞、風洞内に配置された[1]~[3]のいずれかに記載の羽根車、及び羽根車の回転によって発電する発電機を少なくとも有する風力発電装置を備える風力発電システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、限られた狭い領域に設置されていても、領域の全体から効率よく発電することが可能な羽根車、及び、風力発電システムを提供することが可能である。また、本発明によれば、風力発電時に羽根車の回転で生じる騒音を小さく抑制できる羽根車、及び、風力発電システムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態にかかる、羽根車の正面図の一例である。
図2】本発明の実施の形態にかかる、羽根車の側面図の一例である。
図3】本発明の実施の形態にかかる、羽根の正面図、及び、外周側側面図の一例である。
図4】本発明の実施の形態にかかる、風力発電装置の上面部分断面図の一例である。
図5】本発明の実施の形態にかかる、風力発電システムの構成の一例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明するが、本発明は図面及び実施の形態に限定されるものではない。また、本発明は、以下に記載する好ましい数値や構成に限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態にかかる、羽根車の正面図の一例である。また、図2は、本発明の実施の形態にかかる、羽根車の側面図の一例である。図1及び図2に示す羽根車11は、ハブ12と複数枚の羽根13とを少なくとも備えている。
【0012】
羽根車11は、図1に示すように、各羽根13a~13eが、ハブ12の側面から、羽根車11の外周方向に向かって、羽根の幅を拡げながら延びるように形成されている。また、各羽根13a~13eは、ハブ12の周方向に略等間隔に並べることで、ハブ12を取り囲むように配置されている。また、ハブ12は、中心が羽根車11の回転中心Pであり、回転中心Pには、発電機に羽根車11の回転力を伝達するための回転軸が接続できるように構成されている。
【0013】
図2は、本発明の実施の形態にかかる、羽根車の側面図の一例である。図1及び図2に示すように、羽根13は、羽根13の回転方向から見て、後方の端縁(後縁)が前方の端縁(前縁)よりも風下側に位置するように傾斜して、ハブ12に取り付けられている。また、羽根13の幅は、羽根13とハブ12とが接続された部位の近傍の幅よりも、羽根車11の外周方向の端縁の幅の方が大きく広がった、略扇形形状をしている。
【0014】
羽根車11の羽根13の枚数は、特に制限されないが、例えば、3~5枚であることが好ましい。羽根13の枚数が3枚未満であると、羽根13が全体として受ける風の量が小さくなり、発電効率が低下する。また、風のエネルギーをハブに伝達するための羽根の枚数が少な過ぎるため、発電機の駆動に必要なトルクが十分に得られず、発電効率が低下する。一方、羽根13の枚数が6枚以上であると、羽根13と空気の摩擦によって発生する風の渦が多くなり、騒音が増大する。また、3~5枚である場合と比べて、より大きなトルクが得られるものの、羽根車の回転速度については、急速に低下する傾向にある。よって、風力を羽根車11の回転力に変換する効率も悪くなるため、発電効率が低下する。さらに、羽根車全体の質量も重くなるため、ハブ12及び回転軸2への構造負荷も大きくなり、羽根車11の耐久性に悪影響を与える。
【0015】
羽根13の枚数としては、5枚であることが特に好ましい。羽根13の枚数が5枚である場合、4枚の場合と比較して、発電機の駆動に十分な、より大きなトルクを得ることができる。また、各羽根の風を受ける面積は小さくなるが、羽根車全体としては、受風面積を大きく取ることができる。よって、風力を高い効率で回転力に変換することが可能である。羽根の枚数が4枚以下の構成で、羽根の枚数が5枚の場合と同様の受風面積を確保しようとした場合、羽根幅を広げて羽根の質量を重くするか、もしくは、羽根の径が長くなるように設計する必要がある。羽根幅を広げて羽根の質量を重くすると、ハブ12への構造負荷も大きくなり、羽根車11の耐久性に悪影響を与える。羽根の径が長くなるように設計すると、風力発電装置の設置台数は少なくなり、結果として、領域の全体から得られる発電量は小さくなってしまう。
【0016】
羽根13の枚数が5枚である場合、羽根が6枚以上のときと比較しても、高い発電効率を得ることができる。羽根が5枚である場合、羽根が6枚以上の場合と比べて、各羽根の風を受ける面積を大きくすることができる。また、逆に、風を羽根車の正面から後方へと通過させるために、羽根と羽根の間に空間を確保する際にも、6枚以上の場合と比べて十分な空間を確保することができる。隣接する2枚の羽根の間の空間が狭い場合、羽根車そのものが空気の流れを遮ったり、羽根車と空気の摩擦で生じた風の渦を長くその場に滞留させたりする原因となるため、羽根車前方から流入する風の流れを失速させ、羽根車の回転効率が低下してしまう可能性がある。その結果、発電効率の低下に繋がる。
【0017】
羽根車11の羽根13の枚数は5枚であるという構成を採用することによって、発電に必要な十分なトルクを得ると同時に、羽根を通過する風の流れを失速させず、回転効率を高く維持したままで発電を行うことが可能である。また、空気の流れを妨げず、風の渦の発生も抑制できるため、騒音を小さく抑えることができる。また、羽根の枚数が5枚に限定されるため、羽根車11全体の質量が回転軸2に掛ける負荷を軽減することができ、羽根車11が破損しにくいという利点がある。さらに、羽根13が6枚の以上の場合よりも製造コストを抑えることができる。
【0018】
次に、図1及び図2を用いて、各羽根13の傾斜角度について説明する。本実施の形態における羽根13aを含む各羽根13は、図2に示すように、羽根13aの回転方向から見て、後方の端縁(後縁15b)が前方の端縁(前縁15a)よりも風下側に位置するように傾斜して、ハブ12に取り付けられている。ここで、回転軸2aに垂直な面において、羽根車11の回転中心Pから、羽根車11の最も外周に位置する外周端縁までの半径をRと定義し、半径1/4Rの円の円周と、羽根13aの前縁15a及び後縁15bとの交点をそれぞれP、Pとする。そして、PとPを結ぶ線分Pの、回転軸2aに垂直な面に対する傾斜角度をθと定義すると、傾斜角度θは、10度以上であることが好ましく、12度以上であることがより好ましい。また、傾斜角度θは、20度以下であることが好ましく、18度以下であることがより好ましい。傾斜角度θが14.5度以上で、15.5度以下の範囲にある場合には、羽根が風を受けたときに、風力を最も効率よく回転力に変換することができる。一方、傾斜角度θが20度よりも大きいと、風を受ける際の羽根の振動が大きくなり、騒音が増大すると同時に、乱気流が発生する原因にもなる。また、傾斜角度θが10度より小さいと、羽根そのものが風の流れを妨げる抵抗となり、風速が大きく低下するため、羽根の回転速度が急激に遅くなるとともに発電効率も低下する。
【0019】
本実施の形態における羽根13aを含む各羽根13は、後方の端縁(後縁15b)が前方の端縁(前縁15a)よりも風下側に位置するように線分Pの傾斜角度θを定義しているが、傾斜角度θが180度反転するように線分Pを位置付けるように構成してもよい。その場合、羽根車の回転方向は、本実施の形態における羽根車11の回転方向とは逆になる。また、本実施の形態における点P、Pの位置は、回転中心Pを中心とする半径1/4Rの円の円周と、羽根13aの前縁15a及び後縁15bとの交点と定義しているが、点P、Pはそれぞれ、羽根13aの前縁15a上、後縁15b上の点であれば、任意の点を選択できる。
【0020】
次に、図1及び図3を用いて、羽根車11の各羽根13の形状について説明する。本実施の形態における羽根車11の各羽根13は、所定の電力を発生させるために必要な羽根の面積を、羽根車11の外周に向かうにつれて、羽根幅が徐々に拡大するような構成を採用することで確保している。図1において、各羽根13の幅は、羽根13とハブ12とが接続された部位の近傍の幅よりも、羽根車11の外周方向の端縁の幅の方が広くなるように形成されており、略扇形のような形状をしている。また、羽根13の形状は特に制限はされないが、図1に示すように、羽根13aを正面から見たとき、羽根13aの前縁15a及び後縁15bをそれぞれ延長した直線の交点Pが、回転中心Pを挟んで羽根の外周縁15dとは反対側の領域に属するように形成されていることが好ましい。このような構成にすることで、羽根13aとハブ12とが接続された部位の近傍においても、羽根13が風を受ける面積を広く確保することができる。そして、羽根車11全体として風を受ける面積を大きくすることができ、発電効率をより高めることが可能である。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態にかかる、羽根の正面図の及び、外周側側面図の一例である。図3に示すように、羽根13aは、薄板状部材を平面状に、かつ、略均等な厚さになるように加工した一枚のプレート形状であることが好ましい。すなわち、羽根13aを羽根13aの外周縁15dの側から見たときに、外周縁15dの外周側側面図15eで示すように、全体に均等な厚みとなるように形成されていることが好ましい。また、羽根13aの風を受ける部分(前縁15a、後縁15b、及び外周縁15dで囲まれた領域)の形状は、平面であることが好ましい。羽根13aの素材は、薄板状部材であれば特に限定されないが、加工が容易であること、軽量であること、強度があること等から、FRPであることが好ましい。
【0022】
本実施の形態における羽根13aの素材は薄板状部材であることから、回転時の空気抵抗が少なく、風が羽根13aを通過する際に風の乱れも生じ難いため、羽根車11の回転効率を上げることができる。また、羽根13a~13eの形状は羽根全体で略均等な厚さのプレート形状であるため、従来のような流線形や外周方向に向かって湾曲した形状の羽根に比べ、製造時における加工が容易であるとともに、各羽根の製造コストを抑えることができる。
【0023】
次に、図1を用いて、羽根車11の各羽根13a~13eのうち、隣接する2枚の羽根13a及び羽根13bについて説明する。羽根車11は、羽根車11の回転方向前方の羽根13aと回転方向後方の羽根13bとが、羽根車11の外周部分において、羽根車11の正面視で重ならないような構成であることが好ましい。すなわち、隣り合う2枚の羽根の関係において、羽根13aの後縁15bと羽根13bの前縁15cの間には、所定の空間が確保されているほうが好ましい。羽根車11が風を受け回転するとき、各羽根13の間には、羽根と空気の摩擦により風の渦が生じ、回転方向前方の羽根13aで生じた風の渦が、後からやってくる羽根13bの回転運動に干渉し、羽根車11自体の回転効率が低下する原因となることがある。そこで、隣接する各羽根の相互に所定の空間を設けることによって、羽根と羽根の間に生じる風の渦や乱気流を風下方向へ逃がすことが容易になり、羽根車の回転方向における、隣り合う羽根同士の相互の干渉を抑えることができるからである。また、羽根車11の各羽根13同士において相互に所定の空間を確保することで、羽根車11を通過した風の流れが乱れて空気が後方に滞留し、羽根車11に流入する風量の減少により風が失速することを防ぐこともできるため、羽根車11全体としての回転効率を上げることができる。
【0024】
しかし一方で、隣り合う羽根13aと羽根13bの間の空間を広げるばかりでは、羽根車11全体として風を受ける面積は狭くなり、風力を羽根車の回転エネルギーに変換する効率が低下してしまう。そこで、隣り合う羽根13a及び13bは、羽根車11の回転方向前方に位置する羽根13aの後縁15bと、回転方向後方に位置する羽根13bの前縁15cとの一部において、羽根車の正面視で重なるように構成することが好ましい。このような構成を採用することで、羽根車11全体として、羽根が風を受ける面積を大きくできるため、羽根13の径を長くせずとも、風力を羽根車の回転エネルギーに効率よく変換することができる。
【0025】
羽根車11の羽根13aの後縁15bと、羽根13bの前縁15cとが重なる領域14は、ハブ12に近接する部分であることが好ましい。2枚の羽根が重なる領域14は、回転軸に垂直な面において、羽根車11の回転中心Pから、羽根車11の最も外周に位置する外周端縁までの半径をRと定義した場合に、半径1/2Rの円で囲まれる領域に含まれていることが好ましく、半径1/3Rの円で囲まれる領域に含まれていることがより好ましい。このような構成にすることで、隣り合う羽根同士の相互の干渉を抑え、羽根車11に流入する風が失速すること防止しながら、同時に、羽根車11全体として、受風面積を大きく取ることができるため、風力を羽根車の回転エネルギーに効率よく変換することができる。また、このような構成により、風の渦の発生を抑え騒音を抑制しながら、同時に、効率的な発電が可能である。
【0026】
図4は、本発明の実施の形態にかかる、羽根車11を用いた風力発電装置の上面部分断面図の一例である。羽根車11を用いた風力発電装置5は、図4に示すように、羽根車11、回転軸2、直行ギヤ3、遊星ギヤ4及び発電機8を備える。本発明の羽根車11は、その回転中心が、回転軸2の回転中心と重なるように、回転軸2の一端に接続されている。ここで、回転軸2は、その他端側において、回転力を発電機8に伝達するための直行ギヤ3に接続されている。そして、羽根車11が風を受けると、羽根車11と共に回転軸2が回転し、回転エネルギーが発電機8に伝達される。そして、発電機8において回転エネルギーが電気エネルギーに変換され、発電機8に接続された集電ケーブル等により集電装置に集電される。
【0027】
遊星ギヤ4は、回転軸2上に設けられており、小さな直径の羽根車による高速回転であっても、発電に必要十分なだけの大きなトルクを生み出すための役割を担っている。このような構成により、風力を羽根車の回転エネルギーに効率よく変換し、より効率的な発電が可能になる。
【0028】
発電機8にはトルクリミッタが接続されており、風力発電装置5に係る荷重が所定の値以上になると、回転速度を減速させる機能を有する。つまり、回転軸2及びこれに接続された羽根車11の過回転を防止するための機能を有する。風力が強く、回転軸2が所定の回転速度を超えると、直行ギヤ3と接続された発電機8にも過剰な負荷がかかり、発電機8の内部に設けられたダイナモが破損する可能性が高くなる傾向にあるが、トルクリミッタを備えることで、発電機8が破損する可能性を少なくすることができる。また、過回転を防止することで、空気と羽根13との摩擦を減らし、騒音を抑制することができる。なお、本実施の形態においては、本発明の羽根車11を、トルクリミッタを備えた風力発電装置5に用いたが、トルクリミッタを備えない発電装置に用いても良い。
【0029】
本発明の実施の形態にかかる、羽根車11を用いた風力発電装置5は、所定の風洞の中に設置されることが好ましい。
【0030】
図5は、本発明の実施の形態にかかる、羽根車11を用いた風力発電装置5の部分断面図の一例である。本明細書において、「略流線形」とは、風洞の壁体の縦断面における内周側縁部の形状を、風洞の吸気口側から内部に流れ込んだ風を風洞の内部で乱れを生じさせずに増速する、という目的の範囲内で変形した形状のことをいう。また、「略流線形」には、風洞の壁体の縦断面における外周側縁部の形状を、外周面における渦の発生を防止するという目的の範囲内で変形した形状も含まれる。このような変形の例として、風洞の壁体の縦断面における外周側縁部の形状が、風洞の前端部から後端部に達するまでの一部において流線形をなしている場合が挙げられる。また、「略流線形」には、風洞の壁体の縦断面における外周側縁部の形状を直線状にした形状も含まれる。
【0031】
風洞6は、吸気口を形成する前端部61、風洞6の内径が最小となる最小内径部62、及び排気口を形成する後端部63を少なくとも備えている。風洞6の内径は、前端部61から最小内径部62にかけて徐々に小さくなり、最小内径部62から後端部63にかけて徐々に大きくなるように構成されている。すなわち、風洞6の内壁の一部が、風洞の中心軸64に向かって膨出し、吸気口と排気口との間に、風洞の内径が最小となる最小内径部62が形成されている。このように、風洞6が、中心軸64に沿った縦断面が略流線形をなすように構成されていることにより、風洞6の吸気口から風洞内部に流れ込んだ風を増速することができ、発電量及び発電効率を向上させることが可能になる。また、風洞内部の風が増速していることにより、羽根車の羽根自体で揚力を得る必要がなくなるため、従来のような流線形形状や外周方向に向かって湾曲した形状の羽根でなくても、十分な発電性能を得られる。
【0032】
風力発電装置5は、支柱7の上部に固定されており、支柱7は、支持板(図示せず)に固定されている。支持板は、風洞6、及び支柱7を支持するための板であり、風洞6と一体となるように、風洞6の底部近傍に埋め込まれている。また、支持板は、支持板から風洞の底部を突き抜け下方に向かうように設けられた脚部(図示せず)を備え、脚部を所定の設置面に固定することで、風洞6及び風力発電装置5を固定する。
【0033】
羽根車11は、支柱7よりも吸気口側に位置するよう設けられている。このような構成により、支柱7により生じる風の流れの乱れを、羽根車11よりも十分に離れた位置において発生させることができるため、羽根車11の近傍における増速効果の低下を抑制することが可能になる。
【0034】
羽根13、もしくは支柱7の後方で生ずる後流、又は、支柱表面から風が剥離することにより生じるカルマン渦などによって、羽根車を通過後の風の流れが乱れると、風に進行方向以外の速度成分が生じてしまい、風洞内部の羽根車の後方において、風の流れが遅くなることがある。このような風の乱れが生じた場合、風洞の断面形状が略流線形であっても、吸気口から風洞6の内部に流れ込んだ風を十分に増速することができず、期待されるほどの高い発電効率を得られない恐れがある。従って、このような風の乱れによる発電効率への影響は、できる限り少なくすることが好ましい。
【0035】
また、羽根車11は、羽根13の風を受ける面が、吸気口側である前端部61の方向を向くように設けられていることが好ましい。このような構成により、吸気口から風洞内部に流れ込んで増速した風を羽根車11で効率よく受けることができ、発電量及び発電効率を向上させることが可能になる。
【0036】
また、羽根車11は、羽根車11の回転軸2が風洞6の中心軸64に沿うように、風洞6の内部に設けられていることが好ましい。このような構成により、吸気口から風洞内部に流れ込んで増速した風を羽根車11で効率よく受けることができ、発電量及び発電効率を向上させることが可能になる。
【0037】
さらに、風洞6の最小内径部62の内径は、羽根車11の羽根13の回転半径をRとするとき、2R以下にならない範囲において、3R以下が好ましく、2.6R以下であることがより好ましく、2.2R以下であることがさらに好ましい。このような構成にすることで、吸気口から風洞内部に流れ込んできた風を、羽根車11付近において最も効率よく逓倍化・増速することができ、発電量及び発電効率を向上させることが可能になる。
【符号の説明】
【0038】
11 羽根車
12 ハブ
13 羽根
2 回転軸
3 直行ギヤ
31 シャフト
4 遊星ギヤ
5 風力発電装置
6 風洞
61 前端縁
62 最小内径部
63 後端部
64 風洞中心軸
65 集電ケーブル
7 支柱
8 発電機
9 トルクリミッタ
図1
図2
図3
図4
図5