(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】電波測定装置
(51)【国際特許分類】
G01R 29/08 20060101AFI20230516BHJP
G01R 29/10 20060101ALI20230516BHJP
H04B 1/48 20060101ALI20230516BHJP
H04B 1/525 20150101ALI20230516BHJP
H04B 1/10 20060101ALI20230516BHJP
H04B 17/309 20150101ALI20230516BHJP
【FI】
G01R29/08 A
G01R29/08 Z
G01R29/10 E
G01R29/08 D
H04B1/48
H04B1/525
H04B1/10 N
H04B17/309
(21)【出願番号】P 2019224794
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2021-12-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、総務省、平成31年度における電波資源拡大のための研究開発のうち「IoT/5G時代の様々な電波環境に対応した最適通信方式選択技術の研究開発」の委託業務、産業技術力強化法第17条の規定の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱邉 太一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 正実
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-239229(JP,A)
【文献】特表平09-506216(JP,A)
【文献】特開2015-046831(JP,A)
【文献】特開平05-153068(JP,A)
【文献】特開2005-253044(JP,A)
【文献】特開2005-274331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/08
G01R 29/10
H04B 1/48
H04B 1/525
H04B 1/10
H04B 17/309
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信アンテナと、
受信アンテナと、
送信信号を前記送信アンテナに出力するとともに、前記受信アンテナで受信された受信信号の強度を測定するメイン回路と、
前記メイン回路と前記受信アンテナとの間に配置され、前記送信信号の前記受信アンテナへの流入を抑制する接続回路と、
前記接続回路と前記受信アンテナとの間に配置され、前記送信信号の前記受信アンテナへの流入を抑制する少なくとも1つのアイソレータと、
前記受信アンテナと前記アイソレータとの間に配置され、前記受信信号を分岐して前記メイン回路と外部の信号波形測定機とにそれぞれ出力するカプラと、を備える、
電波測定装置。
【請求項2】
前記メイン回路は、前記受信信号の強度と前記信号波形測定機により測定された前記受信信号の信号波形を示す波形データとを対応付けて記憶する、
請求項1に記載の電波測定装置。
【請求項3】
前記送信アンテナは、前記送信信号に基づいて水平偏波の信号を送信し、
前記受信アンテナは、垂直偏波の前記受信信号を受信する、
請求項1に記載の電波測定装置。
【請求項4】
前記送信アンテナは、前記送信信号に基づいて垂直偏波の信号を送信し、
前記受信アンテナは、水平偏波の前記受信信号を受信する、
請求項1に記載の電波測定装置。
【請求項5】
前記送信アンテナは、第1の通信周波数帯の送信信号を放射する第1の送信アンテナ部と、第2の通信周波数帯の送信信号を放射する第2の送信アンテナ部とを有し、
前記受信アンテナは、前記第1の通信周波数帯の受信信号を受信する第1の受信アンテナ部と、前記第2の通信周波数帯の受信信号を
受信する第2の受信アンテナ部とを有する、
請求項1に記載の電波測定装置。
【請求項6】
前記送信アンテナは、水平偏波の送信信号を放射可能な第3の送信アンテナ部と、垂直偏波の送信信号を放射可能な第4の送信アンテナ部とを有し、
前記受信アンテナは、前記水平偏波の受信信号を受信可能な第3の受信アンテナ部と、前記垂直偏波の受信信号を受信可能な第4の受信アンテナ部とを有し、
前記メイン回路は、
前記第3の送信アンテナ部と前記第4の受信アンテナ部とのペア、あるいは前記第4の送信アンテナ部と前記第3の受信アンテナ部とのペアを時分割に交互に切り替えて選択する、
請求項1に記載の電波測定装置。
【請求項7】
前記電波測定装置は、6つの矩形状アンテナ配置面のそれぞれが対向して構成された六面体状の筐体を有し、
少なくとも前記送信アンテナおよび前記受信アンテナのペアは、前記6つの矩形状アンテナ配置面のそれぞれに配置される、
請求項1に記載の電波測定装置。
【請求項8】
前記送信アンテナから送信信号を送信すると同時に、前記受信アンテナで受信信号を受信する、
請求項1に記載の電波測定装置。
【請求項9】
前記送信アンテナおよび前記受信アンテナは、長方形のパッチアンテナである、
請求項1に記載の電波測定装置。
【請求項10】
前記電波測定装置は、6つの矩形状アンテナ配置面のそれぞれが対向して構成された六面体状の筐体を有し、
少なくとも前記送信アンテナおよび前記受信アンテナのペアは、前記6つの矩形状アンテナ配置面のそれぞれに配置され、
前記送信アンテナおよび前記受信アンテナは、パッチアンテナであり、
前記第1の通信周波数は、前記第2の通信周波数より低い周波数である場合、前記矩形状アンテナ配置面において、前記第1の送信アンテナ部は、前記第2の送信アンテナ部の外側に配置され、前記第1の受信アンテナ部は、前記第2の受信アンテナ部の外側に配置される、
請求項5に記載の電波測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電波測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送受信を同時に行う無線通信装置では、送信信号が受信回路に回り込むことによって干渉が生じる問題がある。送信信号から干渉信号のレプリカを生成し、受信信号からこの干渉信号のレプリカを減算することによって、回り込み干渉を除去する技術があった。しかし、この技術では、送信信号の自己相関が悪い場合に、伝搬路推定の際の相関検出に誤検出することがあるため、干渉除去の精度が低いという問題があった。そこで、特許文献1では、送信信号の自己相関を算出し、自己相関が悪くない期間に限って伝搬路推定の相関検出を行う無線通信装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上述した従来の状況に鑑みて案出され、送信信号の受信回路への回り込みを抑制し、受信信号の電波強度および信号波形の同時測定を可能として電波環境の効率的な測定を支援する電波測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、送信アンテナと、受信アンテナと、送信信号を前記送信アンテナに出力するとともに、前記受信アンテナで受信された受信信号の強度を測定するメイン回路と、前記メイン回路と前記受信アンテナとの間に配置され、前記送信信号の前記受信アンテナへの流入を抑制する接続回路と、前記接続回路と前記受信アンテナとの間に配置され、前記送信信号の前記受信アンテナへの流入を抑制する少なくとも1つのアイソレータと、前記受信アンテナと前記アイソレータとの間に配置され、前記受信信号を分岐して前記メイン回路と外部の信号波形測定機とにそれぞれ出力するカプラと、を備える、電波測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、送信信号の受信回路への回り込みを抑制でき、受信信号の電波強度および信号波形の同時測定を可能として電波環境の効率的な測定を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1に係る電波測定装置の外観例を示す斜視図
【
図2】六面体アンテナの一面に配置された4つの送信アンテナおよび4つの受信アンテナを示す図
【
図3】実施の形態1に係る電波測定装置のハードウェア構成例を示すブロック図
【
図5】フロアノイズが多い環境で受信した電波の波形を示すグラフ
【
図6】フロアノイズが少ない環境で受信した電波の波形を示すグラフ
【
図7】妨害波による電波強度の影響の一例を示すグラフ
【
図8】比較例に係る電波測定装置の構成例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示に至る経緯)
アンテナが配置された位置で電波環境を評価する際、例えばアンテナの受信信号(つまり受信電波)の強度を示すRSSI(Received Signal Strength Indicator)値を測定することがある。ただ、RSSI値はあくまで瞬時的な測定値であって、その測定値だけで電波環境を評価することは不十分であった。例えば、周辺に大きなノイズ等の妨害波が存在していたり、あるいは通信周波数と干渉する程度に近似の周波数帯を用いた信号源からの無線信号が存在していたりすると、無線通信に適する環境ではないにも拘わらず、妨害波あるいは無線信号の影響を受けてRSSIの測定値が大きな値となって現れる。
【0009】
図7は、妨害波による電波強度の影響の一例を示すグラフである。
図7の縦軸は電波強度(例えば、RSSI)を示し、
図7の横軸は周波数を示す。例えば、妨害波が無い環境において、特定のアクセスポイントが放射する電波を受信する場合、グラフg7に示すように、アクセスポイントが放射する電波sgの周波数に対応するピーク位置において、RSSI値は最も高くなる。RSSI値が閾値以上であると、その受信位置周辺の電波の環境が良いと判断される。しかし、アクセスポイントが放射する電波sgに被さるような妨害波obが存在する場合、アクセスポイントが放射する電波sgの周波数に対応するピーク位置において、グラフg8に示すように、RSSI値は、妨害波obの受信電界強度の分だけ嵩上げされ、見かけの電波hsによって本来のRSSI値よりも高くなってしまう。このため、実際には、電波の環境が良くないにもかかわらず、電波の環境が良いと誤判断される可能性があった。
【0010】
さらに、電波の伝搬特性は常に変動し得る。したがって、RSSIの測定値だけでは不十分であり、アンテナが受信する信号の特性(例えば信号波形)も同時に測定することが求められると考えられる。RSSIだけでなくアンテナが受信する信号の特性を同時に測定することは特許文献1にも開示されていない。したがって、受信した電波のRSSI値と併せて、電波の受信時の信号波形を観測することで妨害波の有無を確認することが求められる。
【0011】
ここで、RSSIの測定値だけでなくアンテナが受信する信号の信号波形を同時に観測するための、比較例に係る電波測定装置の構成例について、
図8を参照して説明する。
図8は、比較例に係る電波測定装置100の構成例を模式的に示す図である。
【0012】
電波測定装置100は、測定対象のエリアにおいて電波(例えばビーコン信号)を放射するとともに、アクセスポイント等の他の電波送信機により放射された電波を受信する。電波測定装置100は、MPU(Micro Processing Unit)101、カプラ102、送信/受信共用アンテナ105、スペクトラムアナライザ110、および終端抵抗112(例えば50Ω)を有する。MPU101がカプラ102を介して送信/受信共用アンテナ105にビーコン信号を送る(給電する)場合、送信/受信共用アンテナ105から放射される電波の強度は、一例として、+10dBmである。また、送信/受信共用アンテナ105が他の電波送信機により放射された電波を受信する場合、受信した電波の強度は、一例として、-50dBmである。さらに、受信した電波の強度は、方向性結合器としてのカプラ102で分離されると、例えば-10dB下がる。スペクトラムアナライザ110には、受信強度が-60dBm(=-50dBm+(-10dB))である受信信号が入力する。一方、MPU101から送られた(給電された)ビーコン信号は、カプラ102で-20dB下がってスペクトラムアナライザ110に回り込むと考えられる。このようなビーコン信号の回り込みが発生すると、スペクトラムアナライザ110には、-10dBm(=+10dBm-20dB)のビーコン信号が入力してしまう。
【0013】
ところが、スペクトラムアナライザ110で受信した電波の波形を観測する場合、-60dBmと電波強度の小さい受信信号の波形が、-10dBmと電波強度の大きなビーコン信号の波形に埋もれて(隠れて)しまい、受信した電波の波形を観測することができなかった。これに対し、スペクトラムアナライザ110の入力側にアンプ(増幅器)を挿入し、受信した電波の受信信号を大きくすることも検討されるが、ビーコン信号も同時に大きくなるので、スペクトラムアナライザの最大入力範囲を超えてしまうことが考えられた。一方、スペクトラムアナライザの入力側にアッテネータ(減衰器)を挿入し、ビーコン信号を小さくすることも検討されるが、受信した電波の受信信号も同時に小さくなるので、受信電波信号がフロアノイズに埋もれてしまうことが考えられた。
【0014】
そこで、以下の実施の形態1では、スペクトラムアナライザの入力側に回り込むビーコン信号およびフロアノイズの影響を受けることなく、受信電波の波形をRSSI値の測定と同時に観測できる電波測定装置の例を説明する。
【0015】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る電波測定装置を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明および実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る電波測定装置10の外観例を示す斜視図である。
図1において、+X方向および-X方向は、電波測定装置10の筐体10zの上下方向を示す。-Y方向および+Y方向は、電波測定装置10の筐体の左右方向を示す。-Z方向および+Z方向は、電波測定装置10の筐体の前後方向を示す。電波測定装置10は、四角柱形状(例えば直方体あるいは立方体)の筐体10zを有する。筐体10zを構成する6つの面(具体的には、前面1PL,左面2PL,後面,右面,上面5PLおよび下面)には、それぞれアンテナ部1~6が設けられる。6つの面は、矩形状アンテナ配置面であり、アンテナ部1~6は、六面体アンテナを形成する。
【0017】
電波測定装置10は、それぞれの面を構成する面材としての積層基板と、電波測定装置10の筐体内部に内方されるフレーム体とを有する。積層基板とフレーム体とは、多面体(例えば六面体)として、電波測定装置10の筐体10zを構成する。電波測定装置10の筐体10zは、六面体であり、一例として立方体である。積層基板は、立方体のそれぞれの面に、例えば固定ねじ35により取り付けられる。なお、電波測定装置10の筐体10zを構成する面材は、積層基板に限定されない。また、多面体は、六面体に限定されず、例えば四面体あるいは12面体等であってもよい。
【0018】
上面5PLに配置された積層基板、4つの側面(例えば、前面1PL、左面2PL、右面、後面)のそれぞれに配置された積層基板、および下面に配置された積層基板には、それぞれ同数の送信アンテナおよび受信アンテナのペアが実装される。電波測定装置10は、これらの受信アンテナによって到来する電波を計6つの方向から受信可能であり、また、これらの送信アンテナによって6つの方向にビーコン信号を送信可能である。なお、電波測定装置10を所定の被載置面に固定して電波を測定する際、筐体10zの下面には、積層基板が省かれてもよい。また、積層基板は、例えば四角形状に形成される。積層基板の辺部には、その辺部の中央に設けられた1つの段部71を境に、その辺部に沿う方向で凹部と凸部とが形成される。即ち、電波測定装置10の筐体10zは、隣接する積層基板同士の凹部と凸部とを嵌め合わせることで組み合わされる。
【0019】
また、電波測定装置10の筐体10zは、いずれかの面(例えば下面)で台座(図示略)に直接に固定される、または、いずれかの面から一定距離離間して台座に固定される。台座の下面には、車輪が設けられる。車輪を駆動させて台座を移動させることで、電波測定装置10は、測定対象であるエリアにおいて、任意の場所に移動自在である。
【0020】
図2は、六面体アンテナの一つの前面1PLに配置された4つの送信アンテナ11t,12t,13t,14tおよび4つの受信アンテナ11r,12r,13r,14rを示す図である。送信アンテナ11tは、前面1PLの左上に配置された、2.4GHz用の水平偏波の電波を送信するアンテナである。送信アンテナ12tは、前面1PLの左上に配置された、5GHz用の垂直偏波の電波を送信するアンテナである。送信アンテナ13tは、前面1PLの左下に配置された、2.4GHz用の垂直偏波の電波を送信するアンテナである。送信アンテナ14tは、前面1PLの左下に配置された、5GHz用の水平偏波の電波を送信するアンテナである。
【0021】
受信アンテナ11rは、前面1PLの右上に配置された、5GHz用の水平偏波の電波を受信するアンテナである。受信アンテナ12rは、前面1PLの右上に配置された、2.4GHz用の垂直偏波の電波を受信するアンテナである。受信アンテナ13rは、前面1PLの右下に配置された、5GHz用の垂直偏波の電波を受信するアンテナである。送信アンテナ14tは、前面1PLの右下に配置された、2.4GHz用の水平偏波の電波を受信するアンテナである。
【0022】
4つの送信アンテナ11t~14tおよび4つの受信アンテナ11r~14rは、いずれも小型化が容易なパッチアンテナで構成される。ここでは、各パッチアンテナは、一例として、2.4GHz帯の電波または5GHz帯の電波を送信または受信可能である。また、パッチアンテナは、例えば長方形に成形され、その長手方向を偏波方向と一致するように電波を効率良く放射することができる。パッチアンテナは、下位層にグランド面、中間層に給電面、上位層にアンテナ面が積層された3層構造の基板を有する。複数の層のそれぞれは、例えば銅箔やガラスエポキシ等で構成される。アンテナ面には、2.4GHz帯または5GHz帯の電波を放射するためのパッチが設けられる。パッチは、並列共振回路の特性を有し、給電点21に給電されるビーコン信号に励起されて2.4GHz帯または5GHz帯のビーコン信号(つまり電波)を放射し、また、2.4GHz帯または5GHz帯の電波を受信する。給電面には、給電点21およびスタブ25が配置される。スタブ25は、インピーダンス整合をとるために、パッチと直列に接続される直列共振回路の特性を有し、パッチと電磁結合あるいは電気的に導通する。つまり、スタブ25は、パッチと直列に接続され、パッチアンテナのリアクタンス成分を値0に近づける。グランド面には、パッチアンテナに給電するための給電導体の接点が設けられる。
【0023】
また、送信アンテナ11t~14tおよび受信アンテナ11r~14rが配置される筐体10zの矩形状アンテナ配置面では、2.4GHz帯の電波を送信する送信アンテナ11t,13tは、5GHz帯の電波を送信する送信アンテナ12t,14tの外側に配置される。2.4GHz帯の電波を受信する受信アンテナ12r,14rは、5GHz帯の電波を受信する受信アンテナ11r,13rの外側に配置される。これにより、電波測定装置10は、矩形状アンテナ配置面において、送信アンテナ11t~14tおよび受信アンテナ11r~14rを密に配置できる。したがって、電波測定装置10は、六面体である筐体10zのサイズを大きくすることなく、多くの送信アンテナおよび受信アンテナを配置できる。
【0024】
なお、送信アンテナおよび受信アンテナは、パッチアンテナに限定されず、ダイポールアンテナ等、他のアンテナ素子で構成されてもよい。ダイポールアンテナの場合、例えば積層基板上に形成され、表面の金属箔をエッチング等することによってダイポールアンテナのパターンが形成される。また、積層基板には、人工磁気導体(AMC:Artificial Magnetic Conductor)が形成されてもよい。AMCは、PMC(Perfect Magneti cConductor)特性を有し、所定の金属パターンにより形成される。
【0025】
図3は、実施の形態1に係る電波測定装置10のハードウェア構成例を示すブロック図である。電波測定装置10は、アンテナ部1~6と、MPU部7とを含む構成である。アンテナ部1~6の構成は同一であるので、説明を簡略化するために、アンテナ部1について説明し、他のアンテナ部の説明については特に必要である場合を除き省略する。アンテナ部1は、4つの送信アンテナ11t~14tと、4つの受信アンテナ11r~14rと、スイッチ部1sと、信号分離部1dと、アンテナ制御部1mとを含む。
【0026】
電波測定装置10は、アンテナ部1~6のうちアンテナ部1を使用し、アンテナ部1に設けられた4つの送信アンテナ11t~14tから電波を時分割に送信可能である。4つの送信アンテナ11t~14tは、測定対象となるエリアにおいて、他の電波測定装置に対し、ビーコン信号(例えば、2.4GHz帯または5GHz帯の電波)を送信する。4つの送信アンテナ11t~14tのうち、送信アンテナ11t,14tは、水平偏波の電波を送信し、送信アンテナ12t,13tは、垂直偏波の電波を送信する。また、送信アンテナ11t,13tは、2.4GHz帯の電波を送信する。送信アンテナ12t,14tは、5GHz帯の電波を送信する。
【0027】
電波測定装置10は、アンテナ部1~6のアンテナ部1を使用し、アンテナ部1に設けられた4つの受信アンテナ11r~14rで電波を時分割に受信可能である。4つの受信アンテナ11r~14rのうち、受信アンテナ11r,14rは、水平偏波の電波を受信し、受信アンテナ12r,13rは、垂直偏波の電波を受信する。また、受信アンテナ11r,13rは、5GHz帯の電波を受信する。受信アンテナ12r,14trは、2.4GHz帯の電波を受信する。
【0028】
受信アンテナ11r,14rは、無線アクセスポイントからの電波を受信してもよいし、他の電波測定装置が送信したビーコン信号(つまり電波)、あるいは自装置が送信しエリア内で反射されたビーコン信号を受信してもよい。
【0029】
4つの送信アンテナ11t~14tは、それぞれスイッチ部1sに接続され、いずれか1つ送信用のアンテナとして選択される。同様に、4つの受信アンテナ11r~14rは、それぞれスイッチ部1sに接続され、いずれか1つ受信用のアンテナとして選択される。
【0030】
スイッチ部1sは、MPU7aのスイッチ切換制御部7a2から筐体10zの矩形状アンテナ配置面毎に時分割で出力されるスイッチ切換信号に従い、4つの送信アンテナ11t~14tおよび4つの受信アンテナ11r~14rをアンテナ制御部1mに選択的に接続する。スイッチ部1sは、スイッチ切換信号に従って選択した4つの送信アンテナ11t~14tのいずれかに、信号分離部1dを介してMPU7aからのビーコン信号を出力する。スイッチ部1sは、スイッチ切換信号にしたがって選択した4つの受信アンテナ11r~14rのいずれかの受信信号を、信号分離部1dを介してMPU7aおよびスペクトラムアナライザ80(
図4参照)に出力する。
【0031】
アンテナ制御部1mは、例えばWi-Sun(登録商標)の無線信号を扱う標準規格に準拠した無線信号用の回路(モジュール)を用いて構成される。アンテナ制御部1mは、スイッチ部1sに接続された4つの受信アンテナ11r~14rからの受信信号をパラレル形式のデータ(例えば、無線送信機から送信された電波の受信電界強度)として取り出し、そのパラレル形式のデータをMPU7aのデータ変換部7a1に出力する。
【0032】
MPU部7は、MPU(Micro Processing Unit)7aと、USB(Universal Serial Bus)ポート7bとを含む。MPU7aは、電波測定装置10の制御部として機能し、電波測定装置10の各部の動作を全体的に統括するための制御処理、電波測定装置10の各部との間のデータの入出力処理、データの演算処理、およびデータの記憶処理を行う。MPU7aは、データ変換部7a1と、スイッチ切換制御部7a2と、メモリ7a3sとを含む。
【0033】
MPU7aは、エリア内において、他の電波測定装置にビーコン(電波)を送信するためのビーコン信号を生成し、スイッチ部1aに送出する。MPU7aは、アンテナ制御部1mから受け取ったデータを用いて、受信した電波のRSSI値を測定する。また、MPU7aは、測定したRSSI値を基に、エリア内の地点における電波の受信電力を算出可能である。
【0034】
データ変換部7a1は、例えばUART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)回路を用いて構成され、それぞれのアンテナ制御部(例えばアンテナ制御部1m~6m)により出力されたパラレル形式のデータをシリアル形式のデータに変換する。このデータ(例えば、無線送信機から送信された電波の受信電界強度)は、USBポート7bを介して、電波測定装置10に接続される測定機器に入力される。測定機器として、ネットワークアナライザ、PC(Personal Computer)等が挙げられる。
【0035】
スイッチ切換制御部7a2は、電波測定装置10の筐体10zを構成する6つの面のうちいずれかの面に配置された4つの受信アンテナ11r~14rの出力をMPU部7に入力するためのスイッチ切換信号を時分割に生成する。また、スイッチ切換制御部7a2は、電波測定装置10の筐体10zを構成する6つの面のうちいずれかの面に配置された4つの送信アンテナ11t~14tにビーコン信号を送出するためのスイッチ切換信号を時分割に生成する。スイッチ切換制御部7a2は、4つの受信アンテナ11r~14rのいずれかの出力と4つの送信アンテナ11t~14tのいずれかへの送出とを同時に選択するスイッチ切換信号を生成可能である。
【0036】
スイッチ切換制御部7a2は、GPIO(General-Purpose Input/Output)端子を有し、このGPIO端子を介して時分割に生成したスイッチ切換信号を、それぞれの面のスイッチ部(例えばスイッチ部1s~6s)に出力する。スイッチ部1s、…、6sは、それぞれスイッチ切換信号にしたがい、所定時間毎にアンテナ部1の4つの送信アンテナ11t~14t、…、アンテナ部6の4つの送信アンテナ61t~64tの出力を順に切り換える。また、スイッチ部1s、…、6sは、それぞれスイッチ切換信号にしたがい、所定時間毎にアンテナ部1の4つの受信アンテナ11r~14r、…、アンテナ部6の4つの受信アンテナ61r~64rの出力を順に切り換える。各4つの受信アンテナの出力は、周期的かつ排他的にMPU7aに入力される。
【0037】
メモリ7a3は、受信した電波のRSSI値および波形データを一時的に記憶する。
【0038】
信号分離部1dは、スイッチ部1aとアンテナ制御部1mの間に設けられ、MPU7aで生成されたビーコン信号を送信アンテナ11t~14tに送出し、かつ、受信アンテナ11r~14rで受信した電波の受信信号をMPU7aとスペクトラムアナライザ80に分配する。
【0039】
図4は、信号分離部1dの構成例を示す図である。信号分離部1dは、スイッチ部1sとアンテナ制御部1mの間に設けられ、サーキュレータ11d、2つのアイソレータ12d,13d、およびカプラ14dを有する。
【0040】
接続回路の一例としてのサーキュレータ11dは、3端子を有し、一端子から入力した信号を、決まった方向側の他端子に出力し易く、その決まった方向と逆方向側の別の他端子にはほとんど出力しないという特性を有する電子部品である。具体的に、接続回路の一例としてのサーキュレータ11dは、MPU7aと送信アンテナ11t~14tの間に配置され、MPU7aから送信アンテナ11t~14tに向けて送出される図中左回り(反時計回り)のビーコン信号をレベルの減衰がほぼ無いように通過させ、一方で、受信アンテナ11r~14r側に回り込む図中右回り(時計回り)のビーコン信号のレベルを大きく下げる。
【0041】
アイソレータ12d,13dのそれぞれは、2端子を有し、一端子から入力した信号を他端子に出力し易く、逆に他端子から入力した信号を吸収して一端子からほとんど出力しないという特性を有する電子部品である。具体的に、2つのアイソレータ12d,13dのそれぞれは、サーキュレータ11dと受信アンテナ11r~14rのそれぞれとの間に配置され、直列に接続される。アイソレータ12d,13dは、それぞれ受信アンテナ11r~14rのそれぞれからサーキュレータ11dに向かう受信信号をほぼ同じレベルで通過させ、一方で、サーキュレータ11dから受信アンテナ11r~14rのそれぞれ側に回り込んだビーコン信号のレベルを大きく下げる。なお、アイソレータ12d,13dの数は、2つに限らず、1つもしくは3つ以上であってもよい。
【0042】
カプラ14dは、受信アンテナ11r~14rのそれぞれとアイソレータ13dの間に配置された分配器(方向性結合器の一例)である。カプラ14dは、受信アンテナ11r~14rのそれぞれから入力した受信信号を、2つのアイソレータ12d,13dおよびサーキュレータ11dを介してMPU7aに向かうRSSI値の計測用信号と、スペクトラムアナライザ80に向かう波形観測用の信号とに分配する。スペクトラムアナライザ80の入力には、信号の反射を抑えるインピーダンス整合用の終端抵抗90(例えば50Ω)が接続される。
【0043】
MPU7aは、カプラ14dで分配され、2つのアイソレータ12d,13dおよびサーキュレータ11dを介して受信アンテナ11r~14rのそれぞれからの受信信号を入力し、受信した電波のRSSI値を測定する。スペクトラムアナライザ80は、カプラ14dで分配された、受信アンテナ11r~14rのそれぞれからの受信信号を基に、電波の波形データを生成し、電波のスペクトル波形を観測するための外部の信号波形測定機である。スペクトラムアナライザ80は、生成した電波の波形データをMPU7aに送出する。また、スペクトラムアナライザ80は、横軸を周波数とし、縦軸を電波強度とする2次元グラフを画面に表示する。これにより、ユーザは、受信した電波のRSSI値の測定と同時に電波の波形を観測できる。
【0044】
ここで、スペクトラムアナライザ80に入力される、MPU7aから送出され回り込んだビーコン信号のレベルと、受信アンテナによる受信信号のレベルとについて考察する。例えば、MPU7aから+10dBmのビーコン信号が送出される場合、ビーコン信号は、サーキュレータ11dでレベルが下がることなく、送信アンテナ11t~14tのそれぞれで電波(ビーコン信号)として放射される。また、ビーコン信号は、サーキュレータ11dで20dBのレベルダウンを受けて2つのアイソレータ12d,13d側に回り込む。この回り込んだビーコン信号は、2つのアイソレータ12d,13dでそれぞれ20dBのレベルダウンを受けて(つまり、計40dBのレベルダウンを受けて)カプラ14dに向かう。さらに、2つのアイソレータ12d,13dを経由した後、回り込んだビーコン信号は、カプラ14dで20dBのレベルダウンを受けて、スペクトラムアナライザ80に入り込む。したがって、回り込んだビーコン信号は、送信アンテナ11t~14tのそれぞれに向かうビーコン信号に対し、80dB下がり、-70dBm(= 10dBm -20dB -20dB -20dB -20dB)の信号としてスペクトラムアナライザ80に入力する。
【0045】
一方、受信アンテナ11r~14rのそれぞれは、他の無線送信機あるいは電波測定装置が送信した電波を受信し、例えばビーコン信号と比べて30dB下がった、つまり-20dBmの受信信号を出力する。この受信信号は、カプラ14dで分配されて10dB下がり、-30dBmの信号としてスペクトラムアナライザ80に入力する。
【0046】
このように、スペクトラムアナライザ80には、-30dBmの受信信号と、-70dBmのビーコン信号が入力される。受信信号のレベルは、ビーコン信号のレベルと比べて40dB分大きいので、スペクトラムアナライザ80では、ビーコン信号に影響されることなく、受信信号の波形を観測可能である。
【0047】
次に、実施の形態1に係る電波測定装置10の動作を説明する。
【0048】
電波測定装置10は、六面体の各面において、送信アンテナ11t~14tのそれぞれによる送信動作と受信アンテナ11r~14rのそれぞれによる受信動作を同時に行うことが可能である。また、電波測定装置10は、送信アンテナ11t~14tのそれぞれから2.4GHzの電波または5GHzの電波を送信し、同時に受信アンテナ11r~14rのそれぞれで2.4GHzの電波または5GHzの電波を受信可能である。なお、電波測定装置10は、送信アンテナ11t~14tのそれぞれから2.4GHzの電波と5GHzの電波の両方を送信し、同時に受信アンテナ11r~14rのそれぞれで2.4GHzの電波と5GHzの電波の両方を受信可能としてもよい。
【0049】
電波測定装置10は、測定対象となるエリア内の任意の箇所に配置される。エリアには、他の電波送信機、例えば無線アクセスポイントが設置される。また、エリアには、他の電波送信機として、電波測定装置10と同様の構成を有する、他の電波測定装置が置かれてもよい。電波測定装置10は、無線アクセスポイントが放射する電波、あるいは他の電波測定装置が放射するビーコンを受信する。なお、電波測定装置10は、自装置が放射するビーコンの反射波を受信してもよい。
【0050】
一例として、電波測定装置10は、送信アンテナから水平偏波のビーコンを送信し、受信アンテナで垂直偏波の電波を受信する場合を示す。逆に、電波測定装置10は、送信アンテナから垂直偏波のビーコンを送信し、受信アンテナで水平偏波の電波を受信してもよい。ここで、電波測定装置10が送信するビーコンの偏波方向と受信する電波の偏波方向とが異なる場合、送信アンテナから送信されるビーコンが自装置の受信アンテナで受信され難くなる。したがって、受信アンテナからビーコン信号が入り込まなくなるので、信号の分離が良くなり、受信アンテナによる受信対象の電波のRSSI値の測定および波形観測の精度が向上する。なお、電波測定装置10は、送信アンテナから水平偏波のビーコンを送信し、受信アンテナで水平偏波の電波を受信してもよい。また、電波測定装置10は、送信アンテナから垂直偏波のビーコンを送信し、受信アンテナで垂直偏波の電波を受信してもよい。
【0051】
電波測定装置10が受信アンテナで電波を受信した場合、MPU7aは、受信した電波のRSSI値を測定する。また、MPU7aは、スペクトラムアナライザ80から電波の波形データを入力する。MPU7aは、RSSI値および波形データをメモリ7a3に対応付けて記憶する。RSSI値と波形データの対応付けは、同一のファイルに記憶することで行われてもよいし、メタ情報に互いの情報を付加して別々のファイルで記憶することで行われてもよい。
【0052】
また、電波測定装置10は、六面体の各面において、送信アンテナから送信するビーコンの偏波方向と、受信アンテナで受信する電波の偏波方向とを互いに異なる方向にする場合、偏波方向の異なる送信アンテナと受信アンテナのペアを時分割で切り替えてもよい。例えば、MPU7aは、1つの面において、水平偏波のビーコン信号を送信する送信アンテナと垂直偏波の電波を受信する受信アンテナのペアと、垂直偏波のビーコン信号を送信する送信アンテナと水平偏波の電波を受信する受信アンテナのペアとを時分割で交互に切り替える。したがって、エリア内において測定対象となる電波および測定箇所が多く、同時に多くの電波環境の測定が行われる場合でも、電波測定装置は、自装置が測定対象とする電波の信号分離(アイソレーション)を精度良く行える。
【0053】
次に、電波測定装置10による電波の測定結果を示す。フロアノイズ(妨害波を含む)が多い環境、およびフロアノイズが少ない環境のいずれにおいて、測定が行われた。この測定では、受信した電波のRSSI値がMPU7aで測定されると同時に、受信した電波の波形がスペクトラムアナライザ80で観測される。
【0054】
図5は、フロアノイズが多い環境で受信した電波の波形を示すグラフである。グラフの縦軸は電波強度(RSSI値)であり、横軸は周波数である。測定対象の電波は、例えばWi-Fi(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)、Bluetooh(登録商標)等で用いられる2.4GHz帯の電波である。通信チャネルの2.462GHzの電波強度に対し、それより低い帯域(2.437GHz,2.412GHzの通信チャネルを含む)では、波形が大きく乱れ、フロアノイズ(妨害波を含む)によって電波強度が上がっている。このため、通信チャネルの2.462GHzを除き、この低域側にある通信チャネル2.437GHz,2.412GHzでMPU7aが測定するRSSI値は、正しい値でないことが判明する。
【0055】
図6は、フロアノイズが少ない環境で受信した電波の波形を示すグラフである。グラフの縦軸は電波強度であり、横軸は周波数である。
図5と同様、測定対象の電波は、2.4GHz帯の電波である。通信チャネルの2.462GHzの電波強度に対し、それより低い帯域(2.437GHz,2.412GHzの通信チャネルを含む)では、フロアノイズが少なく電波強度が下がっている。したがって、通信チャネルの2.462GHz、およびこの低域側にある通信チャネル2.437GHz,2.412GHzでMPU7aが測定するRSSI値は、正しい値であることが判明する。
【0056】
実施の形態1に係る電波測定装置10では、受信アンテナ11r~14rで受信した電波の受信信号を、カプラ14dで分配してMPU7aでRSSI値を測定すると同時にスペクトラムアナライザ80で波形を観測する際、送信アンテナ11t~14tに向けてMPU7aから送出されたビーコン信号がスペクトラムアナライザ80に回り込む。しかし、MPU7aから送出されるビーコン信号は、サーキュレータ11dを通過する際に大きくレベルダウンし、また、2つのアイソレータ12d,13dを通過する際に大きくレベルダウンし、さらに、カプラ14dでレベルダウンしてスペクトラムアナライザ80に入力する。一方、受信アンテナ11r~14rで受信した電波の受信信号は、カプラ14dでレベルダウンしただけでスペクトラムアナライザ80に入力する。スペクトラムアナライザ80は、信号レベルの大きな差異から、回り込んだビーコン信号の影響をほとんど受けることなく、受信アンテナで受信した電波の波形を表示できる。ユーザは、スペクトラムアナライザ80に表示された電波の波形を観測し、受信した電波のRSSI値の正確度を判定できる。
【0057】
このように、電波測定装置10は、4つの送信アンテナ11t~14tと、4つの受信アンテナ11r~14rと、ビーコン信号(送信信号の一例)を4つの送信アンテナ11t~14tのいずれかに出力するとともに、4つの受信アンテナ11r~14rのいずれかで受信された受信信号の強度を測定するMPU7a(メイン回路の一例)を有する。また、電波測定装置10は、MPU7aと4つの受信アンテナ11r~14rのそれぞれとの間に配置され、送信信号の4つの受信アンテナ11r~14rのそれぞれへの流入を抑制するサーキュレータ11dと、サーキュレータ11dと4つの受信アンテナ11r~14rとの間に配置され、送信信号の4つの受信アンテナ11r~14rへの流入を抑制する2つ(少なくとも1つ)のアイソレータ12d,13dとを有する。また、電波測定装置10は、4つの受信アンテナ11r~14rのそれぞれと2つのアイソレータ12d,13dとの間に配置され、受信信号を分岐してMPU7aと外部のスペクトラムアナライザ80(信号波形測定機の一例)とにそれぞれ出力するカプラ14dを有する。
【0058】
これにより、電波測定装置10は、送信信号の受信回路への回り込みを抑制でき、受信信号の電波強度および信号波形の同時測定を可能として電波環境の効率的な測定を支援することができる。
【0059】
また、MPU7aは、受信信号の強度とスペクトラムアナライザ80により測定された受信信号の信号波形を示す波形データとを対応付けてメモリ7a3に記憶する。これにより、ユーザは、受信信号の強度とその信号波形を同時に確認でき、電波の伝搬特性が変動しても、妨害波の存在を確認できる。電波環境の測定が正確に行える。
【0060】
また、送信アンテナ11t,14tは、ビーコン信号に基づいて水平偏波の信号を送信する。受信アンテナ12r,13rは、垂直偏波の受信信号を受信する。これにより、電波測定装置10は、送信した水平偏波の電波を受信アンテナが受信することを抑制でき、受信アンテナによる電波の測定精度を向上できる。
【0061】
また、送信アンテナ12t,13tは、ビーコン信号に基づいて垂直偏波の信号を送信する。受信アンテナ11r,14rは、水平偏波の受信信号を受信する。これにより、電波測定装置10は、送信した垂直偏波の電波を受信アンテナが受信することを抑制でき、受信アンテナによる電波の測定精度を向上できる。
【0062】
また、4つの送信アンテナ11t~14tは、2.4GHz帯(第1の通信周波数帯の一例)のビーコンを放射する送信アンテナ11t,13t(第1の送信アンテナ部の一例)と、5GHz帯(第2の通信周波数帯の一例)のビーコンを放射する送信アンテナ12t,14t(第2の送信アンテナ部の一例)とを有する。4つの受信アンテナ11r~14rは、2.4GHz帯の受信信号を受信する受信アンテナ12r,14r(第1の受信アンテナ部の一例)と、5GHz帯の受信信号を受信する受信アンテナ11r,13r(第2の受信アンテナ部の一例)とを有する。これにより、電波測定装置10は、例えば、無線LAN、Bluetooh(登録商標)等で用いられる2.4GHz帯の電波、および無線LANで用いられる5GHz帯の電波を送信および受信可能である。
【0063】
また、4つの送信アンテナ11t~14tは、水平偏波のビーコンを放射可能な送信アンテナ11t,14t(第3の送信アンテナ部の一例)と、垂直偏波のビーコンを放射可能な送信アンテナ12t,13t(第4の送信アンテナ部の一例)とを有する。4つの受信アンテナ11r~14rは、水平偏波の受信信号を受信可能な受信アンテナ11r,14r(第3の受信アンテナ部の一例)と、垂直偏波の受信信号を受信可能な受信アンテナ12r,13r(第4の受信アンテナ部の一例)とを有する。MPU7aは、送信アンテナ11t,14tと受信アンテナ12r,13rとのペア、あるいは送信アンテナ12t,13tと受信アンテナ11r,14rとのペアを時分割に交互に切り替えて選択する。これにより、電波測定装置10は、多くの測定対象となる電波の信号分離(アイソレーション)を精度良く行える。
【0064】
また、電波測定装置10は、6つの矩形状アンテナ配置面のそれぞれが対向して構成された六面体状の筐体10zを有する。送信アンテナおよび受信アンテナのペアは、6つの矩形状アンテナ配置面のそれぞれに配置される。これにより、電波測定装置10は、六面体の各面に到来する電波を測定でき、エリア内の全空間における電波環境を測定できる。
【0065】
また、電波測定装置10は、送信アンテナ11t~14tのいずれかからビーコンを送信すると同時に、受信アンテナ11r~14rのいずれかで受信信号を受信する。これにより、電波測定装置10は、所定のエリアで電波を測定する際、他の電波測定装置等に対し、電波を送信すると同時に、エリア内の電波を受信してRSSI値等を測定することができる。したがって、電波測定を効率良く行うことができる。
【0066】
また、送信アンテナ11t~14tおよび受信アンテナ11r~14rは、長方形のパッチアンテナである。これにより、送信アンテナおよび受信アンテナは、小型化可能である。また、送信アンテナおよび受信アンテナは、パッチアンテナの長手方向を偏波方向とする、垂直偏波または水平偏波の電波を効率良く、それぞれ送信および受信できる。
【0067】
また、送信アンテナ11t~14tおよび受信アンテナ11r~14rのペアが配置される、筐体10zの矩形状アンテナ配置面において、2.4GHz帯の電波を送信する送信アンテナ11t,13tは、5GHz帯の電波を送信する送信アンテナ12t,14tの外側に配置される。2.4GHz帯の電波を受信する受信アンテナ12r,14rは、5GHz帯の電波を受信する受信アンテナ11r,13rの外側に配置される。これにより、矩形状アンテナ配置面において、送信アンテナおよび受信アンテナを密に配置できる。したがって、六面体である筐体のサイズを大きくすることなく、多くの送信アンテナおよび受信アンテナを配置できる。
【0068】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0069】
例えば、上述した実施の形態1では、電波測定装置は、一例として、2.4GHz帯および5GHz帯の電波を送受信する場合を示したが、この電波周波数に限定されず、例えば特定小電力無線に用いられる920MHz帯、1200MHz帯等の電波を送受信してもよい。
【0070】
なお、上述した実施の形態1では接続回路の一例として、サーキュレータ11dを例示して説明したが、接続回路はサーキュレータ11dに限定されず、例えば入力された信号を複数の信号に分配するための分配器でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示は、電波環境を測定する際、送信信号の受信回路への回り込みを抑制し、受信信号の電波強度および信号波形の同時測定を可能な電波測定装置として有用である。
【符号の説明】
【0072】
1d、6d 信号分離部
1m、6m アンテナ制御部
1s、6s スイッチ部
7a MPU
7b USBポート
10 電波測定装置
11d サーキュレータ
11t、12t、13t、14t 送信アンテナ
11r、12r、13r、14r 受信アンテナ
12d、13d アイソレータ
14d カプラ