(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】深孔穿孔法、深孔穿孔機用工具、深孔穿孔機および遠心鋳造管
(51)【国際特許分類】
B23D 5/02 20060101AFI20230516BHJP
B23D 13/00 20060101ALI20230516BHJP
B23B 5/48 20060101ALI20230516BHJP
B23B 29/034 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
B23D5/02
B23D13/00
B23B5/48
B23B29/034 D
B23B29/034 B
(21)【出願番号】P 2019520358
(86)(22)【出願日】2017-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2017077476
(87)【国際公開番号】W WO2018078030
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】102016012907.7
(32)【優先日】2016-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511093199
【氏名又は名称】シュミット ウント クレメンス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Schmidt + Clemens GmbH + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Kaiserau 2, D-51779 Lindlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ ラットナー
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0288343(US,A1)
【文献】特表2004-536268(JP,A)
【文献】仏国特許発明第01396349(FR,A)
【文献】実開平01-110015(JP,U)
【文献】特開平09-070710(JP,A)
【文献】特開平06-050391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 1/00 - 13/06
B23D 37/00 - 43/08
B23D 67/00 - 81/00
B23B 1/00 - 25/06
B23B 27/00 - 29/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の内面に沿ってらせん形に延在する少なくとも1つの凹部を有する内部成形部を備えた管を製造する深孔穿孔法であって、
前記管は、遠心鋳造管(5)であり、
前記内部成形部は、前記管の内面に沿ってらせん形に延在するn個の複数の凹部を有しており、
前記管の内面に沿ってらせん形に延在する前記凹部は、複数回の切削によって形成され、その際に、
深孔穿孔機を用いて、長手方向軸線に沿って延在する基体(2)と、該基体(2)の外周面に配置されたn個の複数の刃(3)とを有する工具(1)を、
切削毎に、前記管の内部を通して牽引すると同時に、前記工具(1)の長手方向軸線(A)を中心として回転させかつ/または前記管を該管の長手方向軸線(A)を中心として回転させ、その結果、前記刃(3)は、前記管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を実行
し、
または
前記管を、
切削毎に、その長手方向軸線(A)に沿って、所定の装置を用いて、長手方向軸線に沿って延在する基体(2)と、該基体(2)の外周面に配置されたn個の複数の刃(3)とを有する工具(1)に覆い被せて
牽引すると同時に、前記管を
その長手方向軸線(A)を中心として回転させかつ/または前記工具(1)をその長手方向軸線(A)を中心として回転させ、その結果、前記刃(3)は、前記管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を実行
し、
第1の切削終了後に前記長手方向軸線(A)に対する前記刃(3)の半径方向距離が短縮され、前記工具(1)は第2の切削が実施されるべき出発位置に位置するまで再度前記管内へ導入され、次いで前記基体(2)の前記長手方向軸線に対する前記刃(3)の半径方向距離が再び拡大される、
ことを特徴とする、深孔穿孔法。
【請求項2】
前記基体(2)の前記長手方向軸線(A)に対する前記刃(3)の半径方向距離が、1回目の切削と2回目の切削との間で変更される、請求項1
記載の深孔穿孔法。
【請求項3】
穿孔油または切削液が前記管の内部にもたらされ、前記工具(1)の牽引方向または突出し方向とは反対の方向で前記管を通流する、請求項1
または2記載の深孔穿孔法。
【請求項4】
前記深孔穿孔法は、工具と、工具用のリニア駆動装置と、工具用の回転駆動装置とを有する深孔穿孔機を用いて行われ、
前記工具は、長手方向軸線(A)に沿って延在する管状の基体(2)と、該基体(2)の外周面に配置された複数の刃(3)とを有
しており、
各前記刃(3)は、スローアウェイチップ(10)に形成されており、各該スローアウェイチップ(10)は、カセット(11)の一部に取外し可能に結合されており、
前記カセット(11)は、前記基体(2)の前記長手方向軸線(A)に対して所定の角度で位置する傾斜平面に沿って移動し、ひいては前記基体(2)の前記長手方向軸線(A)に対する前記カセット(11)の距離を変化させることができる、
請求項1から3までのいずれか1項記載の深孔穿孔法。
【請求項5】
前記基体(2)の外周面に支持板(16)が設けられている、請求項
4記載の
深孔穿孔法。
【請求項6】
前記回転駆動装置は、前記刃(3)を、1回の切削につき少なくとも2つの異なる始点に送り込むことができ、これらの始点は、前記長手方向軸線(A)を中心としたその回転位置において相違している、請求項
4または5記載の
深孔穿孔法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管を製造するための深孔穿孔法、深孔穿孔機用工具および深孔穿孔機に関する。
【背景技術】
【0002】
深穿孔または深孔穿孔は、直径がd=0.2~2000mmであり、かつ孔深さが一般に直径の3倍よりも大きな孔を形成して加工するための切削加工法である。
【0003】
欧州特許第1525289号明細書から公知の、炭化水素を熱分解するためのリブ管は、管軸線に対して傾斜した、らせん形に延在する内部リブを有している。
【0004】
国際公開第2010043375号からは、0.4~0.6%の炭素、28~33%のクロム、15~25%の鉄、2~6%のアルミニウム、2%までのケイ素、2%までのマンガン、1.5%までのニオブ、1.5%までのタンタル、1.0%までのタングステン、1.0%までのチタン、1.0%までのジルコニウム、0.5%までのイットリウム、0.5%までのセリウム、0.5%までのモリブデン、0.1%までの窒素、および残りは溶融に起因する不純物を含むニッケルから成る、高い酸化・炭化耐性、破断強さおよびクリープ耐性を備えたニッケル‐クロム合金が公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような背景から、本発明の根底を成す課題は、管の内面に沿ってらせん形に延在する少なくとも1つの凹部を有する内部成形部を備えた管を製造するための製造法および装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1記載の深孔穿孔法、請求項6記載の深孔穿孔機用工具、および請求項11記載の深孔穿孔機によって解決される。有利な実施形態は、各下位請求項および以下の説明に記載されている。
【0007】
本発明は、工具の刃が管内の特定の箇所だけでなく周方向に移動されると共に、刃が半径方向に送り込まれることにより、その箇所に位置する内部成形部の部分が形成されると、複数の利点が得られる、という基本思想を起点とする。本発明に基づき、深孔穿孔法における刃の切削方向は、最早周方向だけでは行われないことが望ましい。むしろ、本発明は、工具の刃を管の内面に沿ってらせん形に案内し、このようにして管の内面に沿ってらせん形に延在する凹部を形成することを提案する。このために、本発明は、本発明による深孔穿孔法の枠内で、深孔穿孔機を用いて、長手方向軸線に沿って延在する基体と、基体の外周面に配置された少なくとも1つの刃とを有する工具を、管の内部を通して突き出すかまたは牽引すると同時に、工具の長手方向軸線を中心として工具を回転させかつ/または管の長手方向軸線を中心として管を回転させることを提案し、その結果、刃は、管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を実行することになる。代替的に、本発明は、管を、その長手方向軸線に沿って、所定の装置を用いて、長手方向軸線に沿って延在する基体と基体の外周面に配置された少なくとも1つの刃とを有する工具に被せて突き出すかまたは牽引すると同時に、管をその長手方向軸線を中心として回転させかつ/または工具をその長手方向軸線を中心として回転させることを想定しており、その結果、刃は、管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を実行することになる。
【0008】
このような方式は、刃を工具から抜くことが比較的多く、これにより、特に好適には複数の刃が形成されるスローアウェイチップを使用すると、刃が摩耗した場合にスローアウェイチップを交換することができるという可能性が得られるという利点をもたらす。周方向でのみ切削し、周方向での切削がそれぞれの場所で終わると工具を軸方向に徐々に移動させる場合には、管内での刃の極度に長い係合時間が生じると共に、場合により必要な刃の交換に際して、刃の交換前に切削プロセスを終了した箇所へ工具を正確に戻す必要がある、という問題が生じる。
【0009】
したがって、本発明による方法は、切削中の工具の、管に対する回転運動と軸方向運動との重畳を想定している。この場合、管の内面に刃のらせん形の切削線が生じるように、回転運動と軸方向運動とを互いに合わせることができ、らせん形の切削線は同一ピッチを有していて、管の内面に形成されるべき、管の内面にらせん形に延在する凹部を有している。
【0010】
本発明を、深孔穿孔法、深孔穿孔および深孔穿孔機という用語を用いて説明する。この場合、これらの用語は一般に、直径がd=0.2~2000mmでありかつ孔深さが一般に直径の3倍よりも大きな孔の製造および加工に使用される切削加工法、またはこのような切削加工法において使用されるべき穿孔機を説明するために用いられる、ということを起点とする。ただし、本発明の説明の文脈において、深孔穿孔法、深孔穿孔および深孔穿孔機という用語は、本発明に基づき想定される、工具の、管に対する回転運動と軸方向運動との重畳を切削中に実施することができる加工法、およびこのような加工法に使用可能な機械(装置)全般を表すものであると理解されたい。したがって、例えば、本発明による方法は、旋盤またはCNC機械によって実施されることが考えられる。旋盤とCNC機械とは両方共、工具の、管に対する、本発明により重畳される回転運動と軸方向運動とを切削中に実施する、という可能性をもたらす。特に好適な実施形態においてのみ、深孔穿孔法、深孔穿孔および深孔穿孔機という用語は、直径がd=0.2~2000mmでありかつ孔深さが一般に直径の3倍よりも大きな孔の製造および加工に使用される切削加工法、またはこのような切削加工法において使用されるべき穿孔機を表すものであると理解される。
【0011】
本発明に基づき想定される、切削中の工具の、管に対する回転運動と軸方向運動との重畳は、様々な形式で行うことができる。
【0012】
好適な一実施形態では、深孔穿孔機を用いて、工具が管の内部を通って牽引されると同時に、工具の長手方向軸線を中心として回転され、その結果、刃は、管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を行うことになる。この場合、特に好適には、管はその長手方向軸線を中心として回転されない。好適な一実施形態では、深孔穿孔機を用いて、工具は管の内部を通って突き出されると同時に管の長手方向軸線を中心として回転され、その結果、刃は、管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を行うことになる。この場合、特に好適には、管はその長手方向軸線を中心として回転されない。好適な一実施形態では、深孔穿孔機を用いて、工具が管の内部を通って牽引されると同時に、管がその長手方向軸線を中心として回転され、その結果、刃は、管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を行うことになる。この場合、特に好適には、工具はその長手方向軸線を中心として回転されない。好適な一実施形態では、深孔穿孔機を用いて、工具が管の内部を通って突き出されると同時に、管がその長手方向軸線を中心として回転され、その結果、刃は、管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を行うことになる。この場合、特に好適には、工具はその長手方向軸線を中心として回転されない。好適な一実施形態では、深孔穿孔機を用いて、工具が管の内部を通って牽引されると同時に、管がその長手方向軸線を中心として回転されかつ工具がその長手方向軸線を中心として回転され、その結果、刃は、管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を行うことになる。好適な一実施形態では、深孔穿孔機を用いて、工具が管の内部を通って突き出されると同時に、管がその長手方向軸線を中心として回転されかつ工具がその長手方向軸線を中心として回転され、その結果、刃は、管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を行うことになる。好適な一実施形態では、装置を用いて管が工具に覆い被せられて牽引されると同時に、工具がその長手方向軸線を中心として回転され、その結果、刃は、管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を行うことになる。この場合、特に好適には、管はその長手方向軸線を中心として回転されない。好適な一実施形態では、装置を用いて管が工具に覆い被せられて突き出されると同時に、工具がその長手方向軸線を中心として回転され、その結果、刃は、管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を行うことになる。この場合、特に好適には、管はその長手方向軸線を中心として回転されない。好適な一実施形態では、装置を用いて管が工具に覆い被せられて牽引されると同時に、管がその長手方向軸線を中心として回転され、その結果、刃は、管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を行うことになる。この場合、特に好適には、工具はその長手方向軸線を中心として回転されない。好適な一実施形態では、装置を用いて管が工具に覆い被せられて突き出されると同時に、管がその長手方向軸線を中心として回転され、その結果、刃は、管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を行うことになる。この場合、特に好適には、工具はその長手方向軸線を中心として回転されない。1つの特に好適な一実施形態では、装置を用いて管が工具に覆い被せられて牽引されると同時に、管がその長手方向軸線を中心として回転されかつ工具がその長手方向軸線を中心として回転され、その結果、刃は、管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を行うことになる。好適な一実施形態では、装置を用いて管が工具に覆い被せられて突き出されると同時に、管がその長手方向軸線を中心として回転されかつ工具がその長手方向軸線を中心として回転され、その結果、刃は、管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を行うことになる。
【0013】
好適な一実施形態では、本発明による方法は、管の内面に沿ってらせん形に延在する凹部が複数回の切削によって形成されることを想定しており、この場合、工具は切削毎に管の内部を通して牽引されるかまたは突き出されると同時に、その長手方向軸線を中心として回転されかつ/または管がその長手方向軸線を中心として回転され、その結果、刃は、管の内面においてらせん形の切削線に沿って各切削を行うことになる。代替的な、やはり好適な実施形態では、管が切削毎に工具に覆い被せられて牽引されるかまたは突き出されると同時に、管がその長手方向軸線を中心として回転されかつ/または工具がその長手方向軸線を中心として回転され、その結果、刃は、管の内面においてらせん形の切削線に沿って各切削を行うことになる。この方式も、切削毎の材料除去量を少なく保ち、凹部を複数回の切削で形成することにより、刃に加わる荷重をできるだけ小さくすることが可能になる。好適な一実施形態では、凹部は少なくとも3回、特に好適には少なくとも4回、特に好適には少なくとも5回、かつ極めて特に好適には少なくとも6回の切削によって形成される。
【0014】
凹部が複数回の切削によって形成される上述した実施形態の好適な一実施形態では、基体の長手方向軸線に対する刃の半径方向距離が、1回目の切削と2回目の切削との間で変更される。これにより、刃を、凹部の増大していく深さに適合させることができる。
【0015】
補足的にまたは代替的に、好適な一実施形態では、工具の刃をスローアウェイチップにより提供し、スローアウェイチップを第1の切削と第2の切削との間に変更することが想定されていてよい。したがって、本発明の説明中の「刃」という用語は全般的に、工具に設けられている具体的な刃に限定されるのではなく、各方法ステップにおいてちょうど工具に設けられている刃を説明するために用いられる。第1の方法ステップにおいて工具に形成されている刃が、第1のスローアウェイチップの刃によって形成され、第2の作業ステップにおいて工具に設けられている刃が、別のスローアウェイチップの刃によって形成される場合は、スローアウェイチップの交換に伴い刃の幾何学形状が変更される可能性があるとしても、以下、-明記しない限りは-依然として工具の「刃」と言う。
【0016】
好適な一実施形態では、第1の切削は第1の刃の幾何学形状でもって実施され、第2の切削は第2の刃の幾何学形状でもって実施される。特に好適には、スローアウェイチップはRNMG160500、RPMT160500、RCMT160500またはRDMT160500のタイプ記号を有するグループから使用される。
【0017】
好適な一実施形態では、実行されるべき各切削は、管の一方の端部から管の他方の端部に至る。管の内面に、管の長手方向延在部の一部にわたってのみ延在するらせん形の凹部を備え、例えば管の各端部には凹部無しの端部領域が設けられている管を製造しようとする複数の実施形態が考えられるが、特に好適には、管の内面において管全体にわたり延在するらせん形の凹部を備えた管を製造する。これにはさらに、切削開始時に刃が管の材料との係合状態にもたらされる場合には、各切削の開始に関する利点がある。
【0018】
好適な一実施形態では、各方法ステップにおいて管の複数の凹部が形成される。好適な一実施形態では、管は、管の内面に沿ってらせん形に延在する複数のn個の凹部を有している。これに関して、本発明による方法は、好適な一実施形態に基づき、長手方向軸線に沿って延在する基体と、基体の外周面に配置された複数のn個の刃とを有する工具を、深孔穿孔機を用いて管の内部を通して牽引するかまたは押しずらすと同時に、工具の長手方向軸線を中心として回転させかつ/または管をその長手方向軸線を中心として回転させることを想定しており、その結果、刃はその都度、管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を行うことになる。代替的な、やはり好適な一実施形態では、管は、その長手方向軸線に沿って、装置を用いて、長手方向軸線に沿って延在する基体と、基体の外周面に配置された複数のn個の刃とを有する工具に覆い被せられて突き出されるかまたは牽引されると同時に、管がその長手方向軸線を中心として回転されかつ/または工具がその長手方向軸線を中心として回転され、その結果、刃はその都度、管の内面においてらせん形の切削線に沿って切削を行うことになる。1つの凹部に関して上述したように、n個の凹部のうちの各凹部は、複数回の切削によって形成されてもよく、この場合、工具は各切削時に管の内部を通して牽引されるかまたは突き出されると同時に、その長手方向軸線を中心として回転され、その結果、刃は、管の内面においてらせん形の切削線に沿って各切削を行うことになる。代替的な実施形態では、管の内面に沿ってらせん形に延在するn個の凹部を備えた管において、これらの凹部を(場合により凹部毎に複数回の切削を実施して)順次形成することが考えられるが、作業ステップ毎に複数の切削を同時に実施すると、加工時間が短縮される。好適な一実施形態では、管の凹部の数nは4以上である。作業ステップ毎に、管の、形成されるべき複数の凹部において同時に作業することは必須ではない。したがって、例えば、管の内面に沿ってらせん形に延在する6つの凹部を備えた管を、長手方向軸線に沿って延在する基体と、基体の外周面に配置された3つの刃とを有する工具を用いて、第1の作業ステップにおいて6つの凹部のうちの3つだけを形成し、次いで第2の作業ステップにおいて、6つの凹部のうちの、残りの3つの凹部を形成するように加工することが考えられる。また、1回目の管通過時に、まず最初の3つの凹部のための1回目の切削をそれぞれ実施し、2回目の管通過時に、第2の3つの凹部のための1回目の切削をそれぞれ実施し、次いで、-場合により、刃を有するスローアウェイチップを交換した後で-3回目の通過時に、最初の3つの凹部のための2回目の切削をそれぞれ実施し、4回目の管通過時に、第2の3つの凹部のための2回目の切削をそれぞれ実施することも考えられる。
【0019】
好適な一実施形態では、穿孔油または切削液が管の内部にもたらされ、穿孔油または切削液は、工具の牽引方向または突出し方向とは反対の方向で管を通流する。穿孔油または切削液は特に、管の内部からチップを除去し、かつ/または、工具および/またはワークを冷却および/または潤滑するために用いられる。
【0020】
好適な一実施形態では、1回目の切削終了後に、本体の長手方向軸線に対する刃の半径方向距離が短縮され(刃は内側に向かって基体の長手方向軸線の方へ移動される)、基体は次の切削が実施されるべき出発位置に位置するまで、再度管内へ導入され、次いで基体の長手方向軸線に対する刃の半径方向距離が再び拡大され、かつ-好適な一実施形態では-前のステップに対してより大きく選択される。基体が再び次の切削の出発点へ移動される間に、刃を上記のように「引っ込める」ことにより、刃が、管の内面の突出している部分またはまだ管内に存在する可能性のあるチップにぶつかる危険が減少する。さらに、このようにして、基体を出発位置へ戻す際に、長手方向移動中に同時に回転させること、つまり、いわば凹部のらせん形の延在部を再び戻るように移動させることは除外することができる。つまり、好適な一実施形態では、「引っ込められる刃」を備えた基体は長手方向にのみ移動され、次の切削のための軸方向出発位置に到達して初めて回転されることにより、刃が次の切削のための正しい出発位置を占めている状態にもたらされる。
【0021】
好適な一実施形態では、基体の長手方向軸線に対する刃の半径方向区間は、切削中に変えられない。これにより、工具の構造を大幅に簡略化することができる。なぜなら、切削中に刃の送り運動を行わねばならない機構を省くことができるからである。
【0022】
好適な一実施形態では、工具は6m/minを上回る速度、特に好適には9m/minを上回る速度で管の内部を通って牽引されるかまたは突き出され、または、管は6m/minを上回る速度、特に好適には9m/minを上回る速度で、工具に覆い被せられて突き出されるかまたは牽引される。より高い速度にすると、より静かな切削過程、特に工具、管および/または刃のより少ない振動を達成できることが判った。これは特に、粘性材料を有するワーク(管)に当てはまる。上記の速度の記載は、特に直線的な運動成分、つまり管または工具の長手方向軸線の方向での運動の速度に関する。
【0023】
本発明による深孔穿孔機用工具は、長手方向軸線に沿って延在する基体と、基体の外周面に配置された少なくとも1つの刃とを有している。特に好適には、基体は管形に形成されている。
【0024】
好適な一実施形態では、工具は基体の外周面に配置された複数の、特に4つ以上の刃を有している。
【0025】
好適な一実施形態では、少なくとも2つの刃が、基体の長手方向延在部に沿って同じ高さで、ただし基体の周面に沿って異なる位置に配置されている。特に好適には、基体の長手方向延在部に沿って同じ高さに、ただし基体の周面に沿って異なる位置に配置された複数の刃は、基体の周面にわたり対称に配分されている。好適な一実施形態では、基体の長手方向延在部に沿って同じ高さに、ただし基体の周面に沿って異なる位置に配置された複数の刃の刃幾何学形状は同じである。
【0026】
好適な一実施形態では、少なくとも2つの刃が、基体の長手方向延在部に沿って異なる高さで、かつ基体の周面に沿って異なる位置に配置されている。特に好適には、2つの刃が、基体の長手方向延在部に沿って異なる高さで、かつ基体の周面に沿って異なる位置に、それぞれ1つのらせん形の線上に位置するように配置されている。特に好適には、第2の刃の位置は、第1の刃の位置に対して長手方向軸線を中心として90°未満だけ、特に好適には45°未満だけ回転している。好適な一実施形態では、基体の長手方向延在部に沿って異なる高さで、かつ基体の周面に沿って異なる位置に配置された複数の刃の刃幾何学形状は、同じである。代替的な一実施形態では、基体の長手方向延在部に沿って異なる高さで、かつ基体の周面に沿って異なる位置に配置された複数の刃の刃幾何学形状は、異なっている。また、様々な刃幾何学形状が考えられ、例えば一方の刃は、例えば中断された幾何学形状を有する先行刃であり、他方の刃は、例えば閉じられた完全な幾何学形状を有する後続刃である。
【0027】
好適な一実施形態では、刃は、スローアウェイチップに形成されており、この場合、スローアウェイチップはカセットの一部として取外し可能に設けられている。特に好適には、スローアウェイチップはカセットの一部にねじ締結されている。
【0028】
好適な一実施形態では、カセットは、基体に対して可動に形成されている。好適な一実施形態では、カセットは、周面を正確に研削されており、工具の基体に設けられたポケット内に挿入されている。好適な一実施形態では、複数のカセットが各ポケット内で調整方向に滑動することができるようになっている。
【0029】
好適な一実施形態では、カセットは、基体の長手方向軸線に対して所定の角度で位置する傾斜平面に沿って摺動することができる。これにより、刃の調整運動を行うことができ、基体の長手方向軸線に対する刃の半径方向距離を変えることができる。これは、好適な一実施形態では、工具の基体に設けられた、カセットが配置されるポケットの底部が、基体の長手方向軸線に対して所定の角度で延在していることよって、達成することができる。これは、代替的な一実施形態では、工具の基体に設けられたポケットが底部を有しておらず(下方に対して開いており)、ポケット内に配置されたカセットが、基体の内部に配置されたスラストロッドによって支持されることで達成できる。この場合、スラストロッドはその外周面に、基体の長手方向軸線に対して角度を付けて延在する表面部分を有しており、これらの表面部分にカセットが支持される。スラストロッドがポケットに対して移動されると、カセットは基体の長手方向軸線に対して角度を付けて延在する表面部分に沿って移動し、ひいては基体の長手方向軸線に対するカセットの距離を変化させる。
【0030】
好適な一実施形態では、カセットを基体の長手方向軸線の方向に押圧する棒ばねが設けられている。代替的にまたは補足的に、カセットは、スラストロッドの傾斜平面に設けられたT字形の溝を介して強制案内されてもよい。
【0031】
好適な一実施形態では、基体に対して可動のカセットの、基体に対する位置を調整する機構が設けられている。この調整機構は、特に好適には調整ロッド、例えばスラストロッドを有しており、スラストロッドの外側表面には、ポケット内に位置するカセットが支持されている。調整ロッドの位置を、基体のその他の部分に対して変えることのできる、別個の駆動装置が設けられていてよい。これにより、調整ロッドの、基体に対する自動位置調整が可能である。代替的に、手動調整手段が設けられていてもよい。
【0032】
好適な一実施形態では、基体の外周面に設けられる支持板が想定されている。この支持板により、切削動作中に管内部の基体の位置を固定することができる。好適な一実施形態では、全周にわたり配分された、複数の支持板が設けられている。好適な一実施形態では、工具の一方の端部に、全周にわたり配分された複数の支持板の第1群が設けられており、かつ工具の反対の側に位置する端部には、全周にわたり配分された複数の支持板の第2群が設けられている。
【0033】
好適な一実施形態では、支持板は基体に対して半径方向でばね弾性的に支承されている。ばね弾性的な支承は、支持板の下側に配置可能なばね、例えば板ばねまたは渦巻ばねによって達成することができる。同様に、ばね弾性的な支承を、支持板の下側に配置された流体クッション、例えばガスクッションまたはハイドロリッククッションによって達成することも考えられる。支持板のばね弾性的な支承は、半径方向で支持板に作用する力に応じて支持板の位置を変えることができるという利点をもたらす。これは一方では、切削時の支持板の変位を可能にするが、複数の支持板が全周にわたり配分されている場合には、センタリング機能をも可能にする。これにより、工具は管内でセルフセンタリングすることができる。工具は、その位置に関して、特に撓みまたは円形の横断面からのずれに関して、管の寸法ずれに比べ、より大きな許容差を有することになる。工具は支持板により、管内で浮動式に保持される。
【0034】
特に好適な一実施形態では、本発明による工具はコレットチャックユニットを有しており、特に好適には、工具の一方の端部に第1のコレットチャックユニットを有しておりかつ工具の第2の端部に第2のコレットチャックユニットを有している。コレットチャックユニットは、少なくとも3つ、特に好適には4つ以上の、それぞれ支持板の機能を引き受けるコレットチャックを有している。各コレットチャックは、基体の外周面に可動に取り付けられており、特に基体の周方向に延在する旋回軸線を中心として旋回可能に支承されている。さらにコレットチャックユニットは、各コレットチャックに対して1つの対応部材を有しており、対応部材もやはり、基体の外周面に結合されていて、外周面に沿って軸方向に可動である。対応部材には、ばね荷重が加えられており、対応部材を、基体の外周面に沿って第1の位置から第2の位置へ軸方向に移動させると、ばねが緊縮する。コレットチャックは、その自由端部でもって対応部材に接触した状態で旋回することができる。この場合、特に好適なのは、対応部材および/または旋回チャックの自由端部が、傾斜して延在する接触面を有している場合である。傾斜した接触面の使用により、コレットチャックが基体の外周面に向かって旋回すると、まずコレットチャックの自由端部と対応部材との間に第1の接触が生じ、コレットチャックが引き続き基体の外周面に向かって旋回すると、対応部材に沿ってコレットチャックの自由端部が滑動し、対応部材の軸方向移動が生じ、この軸方向移動がばねに予荷重を加えることになる(対応部材は、ばねに向かって押し戻される)。このようにして、コレットチャックユニットではコレットチャックが、半径方向においてばね弾性的に支承された支持板の機能を引き受けることができる。ばねにより、対応部材には戻し力が加えられ、この戻し力は、傾斜して延在する接触面により、コレットチャックに対して半径方向に作用する戻し力に変換される。
【0035】
コレットチャックユニットの好適な一実施形態では、コレットチャックの全ての対応部材が、1つの部材、好適には基体の外周面上を軸方向に摺動可能な1つのリング上にまとめられている。このリングは、好適には対応部材の、傾斜して延在する接触面を提供可能な円錐形の表面を備えて形成されている。特に好適には、リングは遊びを備えて基体の外周面に支承されており、これによりリングは、工具の長手方向軸線に対して垂直な軸線の周りに傾倒可能である。リングの傾倒により、リングの後方に位置する積層ばねを異なる強さで圧縮することができ、これにより、軸方向に作用する、異なる大きさの戻し力を、リングの全周にわたって分散させて生じさせることができ、これらの戻し力は、リングの傾斜した円錐面を介して、コレットチャックに対して異なる強さで作用する半径方向の戻し力に変換することができる。
【0036】
コレットチャックユニットの好適な一実施形態では、対応部材に、所定の好適な位置へ予荷重が加えられている。好適な一実施形態では、予荷重は変更可能である。
【0037】
コレットチャックユニットの好適な一実施形態では、対応部材のばねは、受けを有している。好適な一実施形態では、受けの位置は、基体において軸方向に調整可能である。基体における受けの軸方向摺動により、予荷重を調整することができる。
【0038】
コレットチャックユニットの好適な一実施形態では、対応部材のばねは、単一のスリーブ形の積層ばねによって提供される。スリーブ形の積層ばねを設けることにより、特に全ての対応部材をまとめるリングとの協働時に利点がもたらされる。
【0039】
支持板として旋回可能なコレットチャックを備えたコレットチャックユニットの使用により、斜めに位置するコレットチャックの傾斜した面、つまり半径方向外向きの表面は、管の内側表面に接触することになる、という利点がもたらされる。これは特に、擦れる傾向にある粘性材料において利点をもたらす。粘性材料の場合には、条片が固定されていると、固定されている条片の縁部が粘性材料に食い込むか、またはこの縁部の手前で材料が盛り上がるという危険が生じ、これは条片の裂断につながる恐れがある。
【0040】
好適な一実施形態では、基体の外周面に、穿孔油または切削液用のノズルが設けられている。特に好適には、基体の内部に、基体の穿孔油流入部または切削液流入部からノズルに通じる通路が設けられている。特に好適には、穿孔油または切削液用の複数のノズルが、基体の外周面に設けられている。補足的にまたは代替的に、本発明による方法の文脈または本発明による深孔穿孔機の文脈では、工具の外周面と管の内面との間の中間空間を、穿孔油または切削液で洗浄することが想定されていてもよい。これは特に、穿孔油または切削液を管の一方の端部において中間空間内へ注入し、管の他方の端部において中間空間から流出させることによって行うことができる。好適な一実施形態では、穿孔油または切削液の流れ方向は、切削中の刃の移動とは逆の方向である。したがって、刃が管の一方の端部から管の他方の端部に向かって移動すると、この好適な実施形態では、穿孔油または切削液が管の他方の端部から管の一方の端部に向かって流れる。代替的に、穿孔油または切削液の流れ方向を、切削中の刃の移動と同じ方向に選択することが想定されていてもよい。
【0041】
本発明による深孔穿孔機は、本発明による工具と、工具用リニア駆動装置と、工具用回転駆動装置とを有している。
【0042】
好適な一実施形態では、回転駆動装置は、刃を、1回の切削につき少なくとも2つの異なる始点に送り込むことができ、この場合、これらの始点は、長手方向軸線を中心としたその回転位置において相違している。上述した1つの実施形態では、「引っ込められた刃」を有する基体が長手方向にのみ移動され、次の切削のための軸方向出発位置に到達して初めて回転されることにより、刃が次の切削のための正しい出発位置を占める状態にもたらされる。軸方向出発位置に到達した後で、基体をどの程度回転させる必要があるかは、形成すべきらせんの形状、つまり、らせんの始点に対して刃が切削終了時にワークから離れる回転位置に左右される。複数の異なるらせん形の凹部を形成するために深孔穿孔機を使用することができるようにするためには、深孔穿孔機は、刃を、1回の切削につき少なくとも2つの異なる始点に送り込むための手段を有する必要があり、この場合、各始点は、長手方向軸線を中心としたその回転位置において相違している。特に好適には、深孔穿孔機は360°のピッチのあらゆる点、つまり合計360または3600または36000または360000の異なる始点に、刃を送り込むことができる。特に好適には、深孔穿孔機は刃を、1回の切削につき360を上回る、それぞれ異なる始点に送り込むことができ、この場合、各始点は、長手方向軸線を中心としたその回転位置において相違している。
【0043】
本発明によるシステムは、本発明による工具を備えた本発明による深孔穿孔機を有しており、この場合、工具用に複数の異なるカセットが設けられており、カセットには、刃を有するスローアウェイチップが取外し可能に取り付けられていてよい。カセットの形状に基づき、特にスローアウェイチップのカセットとの結合点(大抵はスローアウェイチップをカセットに保持するねじが螺入されるねじ山)の、カセットが基体に支持されている面からの距離の変化に基づき、スローアウェイチップのカセットとの結合点の、基体の長手方向軸線までの距離、ひいては刃の、基体の長手方向軸線までの距離に影響を及ぼすことができる。このようなシステムを用いて、基体は変えずに適当なカセットを選択することで、異なる内径を有する複数の管を加工することが可能になる。
【0044】
好適な一実施形態では、本発明による方法を、本発明による深孔穿孔機を用いて実施する。好適な一実施形態では、管は、遠心鋳造管である。
【0045】
好適な一実施形態では、本発明による遠心鋳造管は、0.4~0.6%の炭素、28~33%のクロム、15~25%の鉄、2~6%のアルミニウム、2%までのケイ素、2%までのマンガン、1.5%までのニオブ、1.5%までのタンタル、1.0%までのタングステン、1.0%までのチタン、1.0%までのジルコニウム、0.5%までのイットリウム、0.5%までのセリウム、0.5%までのモリブデン、0.1%までの窒素、残りは溶融に起因する不純物を含むニッケルを有する合金、特に好適には、個々で共存する0.4~0.6%の炭素、28~33%のクロム、17~22%の鉄、3~4.5%のアルミニウム、0.01~1%のケイ素、0.01~0.5%のマンガン、0.01~1.0%のニオブ、0.01~0.5%のタンタル、0.01~0.6%のタングステン、0.001~0.5%のチタン、0.001~0.3%のジルコニウム、0.001~0.3%のイットリウム、0.001~0.3%のセリウム、0.01~0.5%のモリブデン、0.001~0.1%の窒素を含む合金から製造されている。
【0046】
本発明による遠心鋳造管は、管の内面に沿ってらせん形に延在する少なくとも1つの凹部を有する内部成形部を有しており、遠心鋳造管は本発明による方法を用いて製造される。遠心鋳造管は特に、20°~40°の傾斜角でもって管軸線に対して傾斜した、らせん形に延在する内部リブと、それぞれ同じ曲率半径を備えた波線の形態で鏡像対称に隣接するリブ底部とリブ頂部とを特徴としており、これらのリブ底部およびリブ頂部において、両者の曲率半径(R)の接触点における各接線の、各リブ底部または各リブ頂部の頂点においてリブ頂部に接する円の半径(Ri)に向かう垂線に対するフランク角(β)は、16°~25°である。遠心鋳造管は、特に好適には欧州特許第1525289号明細書に記載された内部リブの幾何学形状のうちの少なくとも1つと、リブ底部と、リブ頂部とを有している。
【0047】
以下に、本発明の実施例を示すに過ぎない図面に基づき、本発明をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】工具の刃により実行されるべき切削線が一緒に図示されている、管内の本発明による工具を概略的に示す斜視図である。
【
図3】本発明による工具の基体を、取り外されたスラストロッド部分と共に示す斜視図である。
【
図4】
図3に示した基体のサブアセンブリに、スラストロッドのサブアセンブリが挿入されたところを示す図である。
【
図5】本発明による深孔穿孔機を概略的に示す側面図である。
【
図6】コレットチャックユニットを概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1には、長手方向軸線Aに沿って延在する基体2と、基体2の外周面に配置された刃3とを備えた本発明による工具1が示されている。基体2には、基体2に対して移動可能なスラストロッド4が設けられている。工具1の基体2は、ねじ山(
図1には図示せず)を介して、深孔穿孔機100の穿孔管101(
図1には図示せず)に結合されている。深孔穿孔機100は、基体2を穿孔管101にわたり、遠心鋳造管5(同様に
図1に図示)を通して牽引することもできるし、引抜き運動中に回転させることもできる。
図1には一点鎖線6によって切削線が示されており、基体2が遠心鋳造管5を通って引き抜かれかつ回転される間に、刃3が切削線に沿って遠心鋳造管5の材料を切削する。
【0050】
基体2が別の刃をその外周面に有している1つの実施形態では、別の刃が、図示の刃3と同じ高さに配置されているが、周方向においては別の位置に、例えば図示の刃3とは反対の側に位置していると同時に、第2のらせん形の切削箇所が遠心鋳造管5に形成されることが、
図1から判る。
【0051】
図2に示す実施形態では、本発明による工具1は、外周面に複数の刃3が形成された基体2を有している。刃3は、スローアウェイチップ10に形成されている。スローアウェイチップ10はそれぞれ、カセット11の一部に取外し可能に結合されている、つまりカセット11にねじ締結されている。カセット11は、基体2の凹部(ポケット)内に摺動可能に配置されていて、棒ばね14によって凹部(ポケット)内に保持される。
【0052】
図2の、断面で示した領域からは、スラストロッド4が、ポケットの領域と、ポケット内に配置されたカセット11の領域とに、基体2の長手方向軸線Aに対して所定の角度で延在する表面部分20を有していることが分かる。
図2に示した実施形態では、スラストロッド4は反対の側に位置する2つの表面部分20を有しており、2つの表面部分20はそれぞれ、基体2の長手方向軸線Aに対して所定の角度で延在していることが想定されている。なぜなら、
図2に示した実施形態では、それぞれ基体2の長手方向軸線Aに沿って同じ高さで互いに反対の側に位置する2つの刃3が、互いに反対の側に位置するスローアウェイチップ10に設けられており、スローアウェイチップ10はそれぞれ、スローアウェイチップ10にそれぞれ割り当てられたカセット11の一部にねじ締結されているからである。この場合、各カセット11は、各カセット11に対応して基体2にそれぞれ配置されたポケット内に位置しており、また、各カセット11に対応して配置されたスラストロッド4の表面部分20にそれぞれ支持されている。
【0053】
図2の、断面で示した領域からは、-スラストロッド4が基体2に対して移動されると-各カセット11は、スラストロッド4の、各カセット11に対応して配置された、傾斜して延在する表面部分20に沿って滑動し、ひいては、刃3の位置を、長手方向軸線Aに対して変更できることが分かる。
【0054】
基体2の長手方向延在部に沿ってそれぞれ異なる高さで、かつ基体2の周面に沿ってそれぞれ異なる位置に、5つの刃3がそれぞれ1つのらせん形の線上に位置するように配置されている。各2つの刃が、基体2の長手方向延在部に沿って同じ高さに、ただし基体2の周面に沿って異なる位置に配置されている。
【0055】
図2にはさらに、工具1の基体2が、それぞればねによって押圧されている2つのコレットチャックユニット21の間に保持されることが示されている。
【0056】
図3には、本発明による工具1の基体2が、取り外されたスラストロッド4の一部と共に斜視図で示されている。基体2は、複数のサブアセンブリ22から構成できることが認められる。これにより、基体2の長さおよび/または基体2の刃の数を所望の加工に適合させる可能性が生じる。
【0057】
図3に示す、取り外されたスラストロッド4の部分は、スラストロッド4も複数のサブアセンブリ23から構成できることを示しており、したがって、基体2の適合は、スラストロッド4の適合によっても行うことができる。さらに
図3からは、長手方向軸線Aに対して所定の角度で延在する複数の表面部分20の構成形式を、良好に看取することができる。
【0058】
図3にはさらに、基体2を、基体2の長手方向延在部に沿って同じ高さに5つの凹部(ポケット)を備えて形成できることが示されており、凹部内にはそれぞれスローアウェイチップ10を備えたカセット11を配置することができる。つまり、このような基体2を用いて、管の内面に沿ってらせん形に延在する5つの凹部を、1回の切削で形成することができる。カセット11およびスローアウェイチップ10は、より見やすくするために、スラストロッド4の最も左側のサブアセンブリ23において表面部分20に支持されているところを一つだけ図示してある。
【0059】
図4には、
図3に示した基体2のサブアセンブリ22に、スラストロッド4のサブアセンブリ23が挿入されたところが示されている。
図4は、基体2のサブアセンブリ22が複数の貫通孔24を有していることを明確に示しており、貫通孔24を介して、基体2の個々のサブアセンブリ22を互いに結合することのできる嵌合ねじが案内される。
【0060】
さらに
図4には、スラストロッド4のサブアセンブリ23がそれぞれ、角度を付けて延在する表面部分20の一部として、やはり角度を付けて延在するT字形の溝25を有していることが示されている。カセット11は、T字形の溝25内に係合し、また、このT字形の溝25内で摺動可能に案内された、T字形の脚部(
図4には図示せず)を有している。カセット11のT字形の脚部とその他の部分との間には、脚部に対して、カセット11のその他の部分に対し好適な位置に向けて作用するばねが設けられていてよい。スラストロッド4が長手方向Aに移動すると、T字形の溝25内で脚部が動き、この溝に沿って外側に向かって移動するため、カセット11の位置を、長手方向軸線Aに対して調整することができるようになっている。
【0061】
図5には、本発明による深孔穿孔機100の概略側面図が示されている。本発明による工具1は、ねじ山を介して穿孔管101に結合されていることが認められる。第1の駆動ユニット102が、穿孔管101(ひいては穿孔管101に結合された工具1)を回転させると共に、軸方向に摺動させる(突き出す)または牽引することもできる。駆動ユニット102は、角度割出し手段を有しているため、工具1を正確に所望の角度位置で被加工管104内へ移動させることができる。
【0062】
穿孔管101内にはスラストロッド4が延在している。駆動ユニット102には別の駆動ユニット103が設けられており、別の駆動ユニット103により、スラストロッド4の軸方向位置を、工具1の基体2に対して調整することができる。
【0063】
図5では、被加工管104の左側の端部と、被加工管の右側の端部との間の位置にある工具が示されている。管104の内面に沿ってらせん形に延在する凹部を形成するために、刃3が引っ込められた工具1を管104の左側の端部へ移動させ、そこで管104の内面の周方向において所望の角度位置にもたらす。その後、スラストロッド4を基体2に対して軸方向に移動させることによって刃3を繰り出してから、深孔穿孔機100を用いて、管104の内部を通して工具1を牽引すると同時に工具1の長手方向軸線を中心として回転させると、刃3が管104の内面において、らせん形の切削線に沿って切削を実行する。
【0064】
深孔穿孔機100は、被加工管を軸方向に移動させかつ回転させることのできる、さらに別の駆動ユニット105を有している。したがって、本発明に基づき想定された、切削中の管に対する、工具の回転運動と軸方向移動との重畳は、駆動ユニット102のみを介して、または駆動ユニット105のみを介して、または駆動ユニット102,105の組合せによって達成することができる。
【0065】
図6に示すコレットチャックユニット21は、3つのコレットチャック40を有しており、これらのコレットチャック40はそれぞれ、支持板の機能を引き受けている。各コレットチャック40は、基体2の周方向に延在する旋回軸線41を中心として旋回可能に支承されている(旋回矢印B参照)。さらにコレットチャックユニット21は、円錐形のリング42を有しており、この円錐形のリング42は、基体2の外周面において軸方向に摺動可能に支承されている。リング42は、各コレットチャック40に対して設けられた複数の対応部材を1つの部材にまとめる。リング42には、スリーブ形の積層ばね43によってばね荷重が加えられているため、基体2の外周面に沿って第1の位置(
図6参照)から第2の位置(
図6に示した位置のさらに右側)へとリング42を軸方向に移動させると、積層ばね43が緊縮することになる。リング42は遊びを備えて外周面に支承されており、したがって長手方向軸線Aに対して垂直な軸線の周りに傾倒可能であり、例えば
図6に示した位置を起点として、上部が下部よりも右になるように動くことができる。これにより、リング42の周面にわたり、異なる強さの戻し力を生じさせるようになっている。
【0066】
複数の対応部材を1つの部材にまとめるリング42は、円錐形に延びる接触面44を有している。コレットチャック40の自由端部は、傾斜して延びる接触面45を有している。傾斜した接触面を使用することで、コレットチャック40がリング42に向かって移動すると、まずコレットチャック40の自由端部とリング42との間に第1の接触が生じ、引き続きコレットチャック40を基体2の外周面に向かって旋回させると、リング42の接触面44に沿ってコレットチャック40の自由端部が滑動して対応部材の軸方向移動が生じ、この軸方向移動が積層ばね43に予荷重を加えることになる。
図6に示す配置では、コレットチャック40に予荷重は加えられておらず、コレットチャック40は基体2の外周面に当て付けられている。
図6では、リング42と積層ばね43の受けとが、右側に向かって移動していて、積層ばね43にばね荷重が加えられており、積層ばね43は、リング42をコレットチャック40の自由端部の方へ押圧してはいない。この調整は、コレットチャックユニット21の最小直径を成す調整である。
図2および
図3には例えば、コレットチャック40がリング42に当接している実施形態が示されている。これらのコレットチャック40は、半径方向において基体2のその他の部分を越えて突出していることが認められる。
【0067】
基体2の外周面に向かうコレットチャック40の旋回は、コレットチャック40の半径方向外向きの表面46と、管の内周面との接触(
図6には図示せず)によって行われる。大きな内周の管に比べ、より小さな内周の管では、必然的に、コレットチャック40をさらに内側へ向かわせる。複数のコレットチャック40を設けることにより、管の内周の、円からのずれも阻止できることが明らかである。
【0068】
積層ばね43の端部側には、ねじ山付きリング47の形態で受けが設けられている。ねじ山付きリング47は雌ねじ山を有しており、基体2の外周面に設けられた雄ねじ山48に沿って回転することにより、軸方向に可動である。ねじ山付きリング47の軸方向の摺動により、積層ばね43に加えられる予荷重を調整することができる。
【0069】
図6では、基体2は右側に向かって、ポケットおよびカセット11を有する基体2の部分に続く。
図6の左側に向かうと、基体2と穿孔管101とを結合可能な雄ねじ山49が設けられている。