IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京東方科技集團股▲ふん▼有限公司の特許一覧 ▶ 北京京東方光電科技有限公司の特許一覧

特許7280199デジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法及び駆動システム
<>
  • 特許-デジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法及び駆動システム 図1
  • 特許-デジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法及び駆動システム 図2
  • 特許-デジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法及び駆動システム 図3
  • 特許-デジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法及び駆動システム 図4
  • 特許-デジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法及び駆動システム 図5
  • 特許-デジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法及び駆動システム 図6
  • 特許-デジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法及び駆動システム 図7
  • 特許-デジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法及び駆動システム 図8
  • 特許-デジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法及び駆動システム 図9
  • 特許-デジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法及び駆動システム 図10
  • 特許-デジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法及び駆動システム 図11A
  • 特許-デジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法及び駆動システム 図11B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】デジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法及び駆動システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20230516BHJP
   G01N 13/00 20060101ALI20230516BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20230516BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20230516BHJP
   B81B 7/02 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
B01J19/00 321
G01N13/00
G01N37/00 101
B81C1/00
B81B7/02
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019569427
(86)(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 CN2018094943
(87)【国際公開番号】W WO2019062267
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】201710910461.6
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】507134301
【氏名又は名称】北京京東方光電科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING BOE OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 8 Xihuanzhonglu, BDA, Beijing, 100176, P.R.CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】▲龍▼ ▲鳳▼
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-176397(JP,A)
【文献】特開2012-163956(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0296929(US,A1)
【文献】国際公開第2017/007757(WO,A1)
【文献】特開平10-267801(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0166484(US,A1)
【文献】Lab.Chip.,2007年,Vol.7,P.1330-1335
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
B81B 1/00 - 7/04
B81C 1/00 - 99/00
G01N 37/00
B01L 3/00
B01F 33/30 - 33/3039
G01N 11/00 - 13/04
G01N 27/00 - 27/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する第1の電極と第2の電極とを含むデジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法であって、
前記第1の電極に第1の駆動信号を印加し、前記第2の電極に第2の駆動信号を印加するステップと、
前記第1の駆動信号の印加期間と前記第2の駆動信号の印加期間とが互いにずれるように制御するステップと、
前記第1の駆動信号の印加期間の総時間長は、前記第2の駆動信号の印加期間の総時間より短く、
液滴の接触角を測定するステップと、
前記第1の駆動信号の印加期間の開始時に、前記液滴の接触角に基づいて前記第1の駆動信号の特性を決定するステップであって、前記第1の駆動信号の特性は、前記印加期間における時間長、デューティ比、及び周波数の少なくとも1つを含む、ステップとを含む、駆動方法。
【請求項2】
前記第1の駆動信号の周波数は、前記第2の駆動信号の周波数以下である、請求項1に記載の駆動方法。
【請求項3】
前記第1の駆動信号の印加期間は、1つの連続的な第1の期間を含むか、又は、間隔期間によって互いに隔離される複数の第2の期間を含む、請求項1または2に記載の駆動方法。
【請求項4】
前記第2の期間の時間長は、前記間隔期間の時間長と正比例する、請求項3に記載の駆動方法。
【請求項5】
隣接する前記第2の期間の間には、同じ時間長の前記間隔期間がある、請求項4に記載の駆動方法。
【請求項6】
当該印加期間内の第1の駆動信号の周波数を設定するステップをさらに含み、
前記周波数は、前記測定された接触角が小さいほど低くなるように設定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の駆動方法。
【請求項7】
前記印加期間内の第1の駆動信号のデューティ比を設定するステップをさらに含み、
前記デューティ比は、前記測定された接触角が小さいほど小さくなるように設定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の駆動方法。
【請求項8】
前記第1の駆動信号の印加期間の時間長を設定するステップをさらに含み、
前記第1の駆動信号の印加期間の時間長は、前記測定された接触角が小さいほど長くなるように設定される、請求項1~7のいずれか一項に記載の駆動方法。
【請求項9】
前記第1の駆動信号の印加期間の終了時に、液滴の接触角をリアルタイムで測定し、前記第1の駆動信号の当該印加期間と前記第1の駆動信号の次の印加期間との間の間隔期間の時間長を設定するステップをさらに含み、
前記第1の駆動信号の当該印加期間と前記第1の駆動信号の次の印加期間との間の間隔期間の時間長は、前記測定された接触角が小さいほど短くなるように設定される、請求項1~8のいずれか一項に記載の駆動方法。
【請求項10】
前記第1の駆動信号及び/又は前記第2の駆動信号は、前記デジタルマイクロ流体チップの誘電体層の厚さに基づいて設定され、
前記周波数は、前記厚さが小さいほど低くなるように設定され、
前記印加期間の時間長は、前記厚さが小さいほど長くなるように設定される、請求項1~9のいずれか一項に記載の駆動方法。
【請求項11】
請求項1に記載の駆動方法によって、隣接する第1の電極と第2の電極とを含むデジタルマイクロ流体チップを駆動するための駆動システムであって、
前記第1の電極用の第1の駆動信号と前記第2の電極用の第2の駆動信号とを生成するように構成される駆動信号生成装置と、
前記第1の電極に前記第1の駆動信号が印加され、前記第2の電極に前記第2の駆動信号が印加されるように制御し、前記第1の駆動信号の印加期間と前記第2の駆動信号の印加期間とが互いにずれるようにし、前記第1の駆動信号の印加期間の総時間長を前記第2の駆動信号の印加期間の総時間長より短くするように構成されるコントローラと、を含む、駆動システム。
【請求項12】
第1の電極と駆動信号生成装置との間の回路に接続される第1のスイッチ装置と、
第2の電極と駆動信号生成装置との間の回路に接続される第2のスイッチ装置と、をさらに含み、
コントローラは、前記第1の駆動信号の印加期間において第1のスイッチ装置をオンにし第2のスイッチ装置をオフにし、前記第2の駆動信号の印加期間において第1のスイッチ装置をオフにし第2のスイッチ装置をオンにするように構成される、請求項11に記載の駆動システム。
【請求項13】
液滴の接触角を測定するように構成される接触角測定装置をさらに含み、
コントローラは、前記第1の駆動信号の印加期間の開始時に、前記接触角測定装置によってリアルタイムで測定される接触角に基づいて、前記第1の駆動信号の当該印加期間の時間長、デューティ比及び/又は周波数を決定するように構成される、請求項11又は12に記載の駆動システム。
【請求項14】
コントローラは、前記第1の駆動信号の印加期間の終了時に、接触角測定装置によってリアルタイムで測定される接触角に基づいて、前記第1の駆動信号の当該印加期間と前記第1の駆動信号の次の印加期間との間隔期間の時間長を決定するように構成される、請求項11~13のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項15】
前記第2の駆動信号の印加期間を計時するための第1のタイマと、
前記第1の駆動信号の印加期間を計時するための第2のタイマと、をさらに含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項16】
液滴運動を制御するための第1の電極と第2の電極とを含むデジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法であって、
第1の駆動信号の駆動周期内において、前記第1の電極に第1の駆動信号を印加するステップと、
第2の駆動信号の駆動周期内において、前記第2の電極に第2の駆動信号を印加するステップと、
前記第1の駆動信号の特性及び第2の駆動信号を、前記液滴の接触角に基づいて決定するステップであって、前記第1の駆動信号の特性は、前記第1の駆動信号の印加期間における時間長、デューティ比及び周波数の少なくとも1つを含む、ステップとを含む、
駆動方法。
【請求項17】
液滴運動を制御するための第1の電極と第2の電極とを含むデジタルマイクロ流体チップ用の駆動システムであって、
第1の駆動信号の駆動周期内において、前記第1の電極に第1の駆動信号を印加し、第2の駆動信号の駆動周期内において、前記第2の電極に第2の駆動信号を印加するように構成されるコントローラを含み、
前記第1の駆動信号の特性及び前記第2の駆動信号は、前記液滴の接触角に基づいて決定され、前記第1の駆動信号の特性は、前記第1の駆動信号の印加期間における時間長、デューティ比及び周波数の少なくとも1つを含む、駆動システム。
【請求項18】
液滴の接触角を測定するように構成される接触角測定装置をさらに含み、
前記コントローラは、前記接触角測定装置によってリアルタイムで測定される接触角に基づいて、前記第1の駆動信号及び第2の駆動信号の時間長、デューティ比及び/又は周波数を決定するように構成される、請求項17に記載の駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、デジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法及び駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
「ラボオンチップ」(Lab‐on‐chip)は、生化学サンプルの分析プロセスを小面積チップに集積するものであり、生化学分析のコストを大幅に低減させ、それにインテリジェント化の程度が高く、携帯に便利である。ラボオンチップの概念に基づいて、微量流体の制御をよりよく実現し、微量流体に対して調製、反応、分離及び測定などの実験を実行することが期待されるため、マイクロ流体チップ技術は、ますます認められるようになってきており、その上、流体力学、生化学など多学科の急速な発展を推進している。
【0003】
マイクロ流体チップは、連続マイクロ流体システムとデジタルマイクロ流体システムとの二種類に分けられる。デジタルマイクロ流体チップは、サンプルを含むマイクロ・ナノリットルレベルの液滴に対して、それぞれ独立した搬送、混合、分割、測定など一連の操作を行って、連続流システムに現れる閉塞、正確な制御の困難さ、製造プロセスの複雑さなどの問題を効果的に回避することができる。マイクロ電極アレイに基づくデジタルマイクロ流体チップは、コントローラによって上位機と合わせて、液滴の移動を正確に制御することができ、それに繰り返し設定することができ、マイクロ流体チップに対して、革命的な意義を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示では、隣接する第1の電極と第2の電極とを含むデジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法であって、第1の電極に第1の駆動信号を印加し、第2の電極に第2の駆動信号を印加するステップと、第1の駆動信号の印加期間と第2の駆動信号の印加期間とが互いにずれるように制御するステップとを含み、第1の駆動信号の印加期間の総時間長は、第2の駆動信号の印加期間の総時間長より短い、駆動方法が提供される。
【0005】
本開示の実施例によれば、第1の駆動信号の周波数は、第2の駆動信号の周波数以下である。
【0006】
(削除)
【0007】
本開示の実施例によれば、第1の駆動信号の印加期間は、1つの連続的な第1の期間を含むか、又は、間隔期間によって互いに隔離される複数の第2の期間を含む。
【0008】
(削除)
【0009】
本開示の実施例によれば、第2の期間の時間長は、間隔期間の時間長と正比例する。
【0010】
本開示の実施例によれば、隣接する第2の期間の間には、同じ時間長の間隔期間がある。
【0011】
本開示の実施例によれば、当該方法は、第1の駆動信号の1つの印加期間の開始時に、液滴の接触角をリアルタイムで測定し、当該印加期間内の第1の駆動信号の周波数を、測定された接触角が小さいほど低くなるように設定するステップをさらに含む。
【0012】
本開示の実施例によれば、当該方法は、第1の駆動信号の1つの印加期間の開始時に、液滴の接触角をリアルタイムで測定し、当該印加期間内の第1の駆動信号のデューティ比を、測定された接触角が小さいほど小さくなるように設定するステップをさらに含む。
【0013】
本開示の実施例によれば、当該方法は、第1の駆動信号の1つの印加期間の開始時に、液滴の接触角をリアルタイムで測定し、第1の駆動信号の当該印加期間の時間長を、測定された接触角が小さいほど長くなるように設定するステップをさらに含む。
【0014】
本開示の実施例によれば、当該方法は、第1の駆動信号の1つの印加期間の終了時に、液滴の接触角をリアルタイムで測定し、第1の駆動信号の当該印加期間と第1の駆動信号の次の印加期間との間の間隔期間の時間長を、測定された接触角が小さいほど短くなるように設定するステップをさらに含む。
【0015】
本開示の実施例によれば、デジタルマイクロ流体チップの誘電体層の厚さに基づいて、誘電体層が厚いほど周波数が低くなるか、又は印加期間が長くなるように、第1の駆動信号及び/又は第2の駆動信号を設定する。
【0016】
本開示では、隣接する第1の電極と第2の電極とを含むデジタルマイクロ流体チップ用の駆動システムであって、第1の電極用の第1の駆動信号と第2の電極用の第2の駆動信号とを生成するように構成される駆動信号生成装置と、第1の電極に第1の駆動信号が印加され、第2の電極に第2の駆動信号が印加されるように制御し、第1の駆動信号の印加期間と第2の駆動信号の印加期間とが互いにずれるようにし、第1の駆動信号の印加期間の総時間長を第2の駆動信号の印加期間の総時間長より短くするように構成されるコントローラと、を含むデジタルマイクロ流体チップ用の駆動システムが提供される。
【0017】
本開示の実施例によれば、システムは、第1の電極と駆動信号生成装置との間の回路に接続される第1のスイッチ装置と、第2の電極と駆動信号生成装置との間の回路に接続される第2のスイッチ装置と、をさらに含み、コントローラは、第1の駆動信号の印加期間において第1のスイッチ装置をオンにし第2のスイッチ装置をオフにし、第2の駆動信号の印加期間において第1のスイッチ装置をオフにし第2のスイッチ装置をオンにするように構成される。
【0018】
本開示の実施例によれば、システムは、液滴の接触角を測定するように構成される接触角測定装置をさらに含み、コントローラは、第1の駆動信号の1つの印加期間の開始時に、接触角測定装置によってリアルタイムで測定される接触角に基づいて、第1の駆動信号の当該印加期間の時間長、デューティ比及び/又は周波数を決定するように構成される。
【0019】
本開示の実施例によれば、システムは、液滴の接触角を測定するように構成される接触角測定装置をさらに含み、コントローラは、第1の駆動信号の1つの印加期間の終了時に、接触角測定装置によってリアルタイムで測定される接触角に基づいて、第1の駆動信号の当該印加期間と第1の駆動信号の次の印加期間との間隔期間の時間長を決定するように構成される。
【0020】
本開示の実施例によれば、システムは、第2の駆動信号の印加期間を計時するための第2のタイマと、第1の駆動信号の印加期間を計時するための第3のタイマと、をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1Aは、本開示の実施例に係るデジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法を示すフローチャートである。図1Bは、本開示の駆動方法の一実施例の模式的なタイミングチャートである。
図2図2は、本開示の駆動方法の他の実施例の模式的なタイミングチャートである。
図3図3は、本開示の駆動方法のさらに他の実施例の模式的なタイミングチャートである。
図4図4は、本開示の駆動方法のまた他の実施例の模式的なタイミングチャートである。
図5図5は、本開示の駆動方法の一実施例の模式的なタイミングチャートである。
図6図6は、本開示の駆動方法の他の実施例の模式的なタイミングチャートである。
図7図7は、本開示の一実施例の駆動システムの模式的なブロック図である。
図8図8は、本開示の他の実施例の駆動システムの模式的なブロック図である。
図9図9は、本開示の一実施例の駆動システムの模式的な回路図である。
図10図10は、本開示の一実施例の駆動システムの動作プロセスの模式的なフローチャートである。
図11A図11Aは、本開示の一実施例の駆動システムの動作プロセスの模式的なフローチャートである。
図11B図11Bは、本開示の一実施例の駆動システムの動作プロセスの模式的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
流体の特徴スケールの減少に起因して、マイクロ流体の流動特性とマクロ流体の流動特性とが完全一致ではないため、マイクロ流体の駆動制御方法は、マクロ流体とは異なる。多くのマイクロ流体駆動及び制御技術において、表面張力駆動の効果的な進展が成し遂げられ、誘電体エレクトロウェッティング(EWOD;Electrowetting-On-Dielectric)技術は、まさしく表面張力を高度に制御することにより、マイクロ液滴駆動技術の研究のホットテーマの1つとなっている。
【0023】
しかし、接触角ヒステリシス現象は、センチメートルからミクロンメートルオーダの液滴湿潤システムに一般的に存在しており、微小液滴駆動チップにとって、接触角ヒステリシスが微小液滴の移動速度を阻害する要因の1つであり、微小液滴駆動に余計な誤差を与えてしまう。
【0024】
かかる点に鑑みて、本開示の実施例は、デジタルマイクロ流体チップにおける接触角ヒステリシスという問題を効果的に改善し、液滴の移動速度を向上させることができる駆動方法及び駆動システムを提供する。
【0025】
以下、図面を参照して本開示の各実施例について詳細に説明する。
【0026】
本開示の実施例の駆動方法は、デジタルマイクロ流体チップに適用される。
【0027】
デジタルマイクロ流体チップは、通常、基板と、基板に設けられた、多段多列の電極からなる電極アレイと、電極アレイを覆うように基板に設けられた誘電体層と、誘電体層を覆う疎水性層とを含む。液滴は、最初に、疎水性層上の、電極アレイにおける1つの電極に対応する位置に投与され、疎水性層上の、次の電極に対応する位置に液滴を移動させる必要がある場合には、一定の駆動周期内で当該次の電極に一定周波数の駆動信号を継続的に印加することにより、当該位置に移動するように液滴を引き動かす。
【0028】
デジタルマイクロ流体チップの従来の駆動方法では、液滴の移動中に接触角ヒステリシスの現象が発生しやすく、本開示の実施例の駆動方法を採用することでこの現象を良好に改善することができる。
【0029】
なお、各図面におけるタイミング波形は模式的なものであり、本開示の実際的に実施される際に用いられる各駆動信号の波形を限定するものではない。
図1Aは、本開示の実施例に係るデジタルマイクロ流体チップ用の駆動方法を示すフローチャートである。図1Aに示すように、ステップS101において、前記第1の電極に第1の駆動信号を印加し、前記第2の電極に第2の駆動信号を印加する。ステップS102において、前記第1の駆動信号の印加期間と前記第2の駆動信号の印加期間とが互いにずれるように制御し、前記第1の駆動信号の印加期間の総時間が前記第2の駆動信号の印加期間の総時間よりも短い。
【0030】
図1は、本開示の駆動方法の一実施例の模式的なタイミングチャートである。
【0031】
図1に示すように、デジタルマイクロ流体チップの順次に隣接する電極N-1、N、N+1、N+2に駆動信号を印加するタイミングチャートを示している。電極Nを駆動する駆動周期T1の期間に、すなわち、チップ上の液滴を電極N-1の位置から電極Nの位置へ移動させる期間に、電極Nに駆動信号を印加するだけではなく、電極N-1にも一定期間の駆動信号を印加する。T1の期間に、電極N-1は、本開示の第1の電極に対応し、電極Nは、本開示の第2の電極に対応する。同様に、電極N+1を駆動する駆動周期T2の期間に、すなわち、チップ上の液滴を電極Nの位置から電極N+1の位置へ移動させる期間に、電極N+1に駆動信号を印加するだけではなく、電極Nにも一定期間の駆動信号を印加する。T2の期間に、電極Nは、本開示の第1の電極に対応し、電極N+1は、本開示の第2の電極に対応する。同様に、電極N+2を駆動する駆動周期T3の期間に、すなわち、チップ上の液滴を電極N+1の位置から電極N+2の位置へ移動させる期間に、電極N+2に駆動信号を印加するだけではなく、電極N+1にも一定期間の駆動信号を印加する。T3の期間に、電極N+1は、本開示の第1の電極に対応し、電極N+2は、本開示の第2の電極に対応する。電極N+2の後続の電極に駆動信号を印加する期間の駆動方法は、同様である。
【0032】
本開示の各実施例では、液滴を第1の電極から第2の電極へ駆動させることを例としたが、本開示は、これに限定されず、実際の適用において第1の電極と第2の電極とを互いに入れ替えてもよく、例えば、電極Nから電極N+1へ液滴を移動させる場合、電極Nは、第1の電極に対応し、電極N+1は、第2の電極に対応するが、後続のステップにおいて、電極N+1から電極Nへ液滴を移動させる必要がある場合、電極N+1は、第1の電極に対応し、電極Nは、第2の電極に対応する。
【0033】
図1を参照すると、本開示の実施例では、各駆動周期T1やT2、T3などにおいて、いずれも第1の電極に駆動信号を印加する期間が、第2の電極に駆動信号を印加する期間と互いにずれて、すなわち、1つの駆動周期内のあるタイミングで、第1の電極と第2の電極のいずれか一方のみに駆動信号を印加する。第1の電極に印加される駆動信号は、本開示の第1の駆動信号に対応し、第2の電極に印加される駆動信号は、本開示の第2駆動信号に対応する。それとともに、本開示の実施例では、各駆動周期T1やT2、T3などにおいて、第1の駆動信号の印加期間の総時間が、第2の駆動信号の印加期間の総時間よりも短い。
【0034】
本開示の実施例の駆動方法により、第2の電極の駆動周期内において、すなわち、液滴を第1の電極から第2の電極へ駆動するプロセスにおいて、第2の電極は、液滴に一定時間引張力を加えた後、第1の電極に替えてしばらくの間液滴に引張力を印加し、再び第2の電極に替えて引き続き引張力を印加することにより、液滴が同一方向へ継続的に運動することに起因して接触角が小さくなる場合、液滴が適時に逆方向へ適当な距離運動するようにし、接触角の調整を行った後、再び液滴が引き続き元の方向へ運動するようにする。そのため、本開示の実施例の駆動方式により、デジタルマイクロ流体チップにおける液滴の進行中の接触角を正確に制御して、存在する接触角ヒステリシス現象を効果的に改善し、液滴の移動速度を向上させることができる。
【0035】
図1に示す実施例では、第1の駆動信号の周波数は、第2の駆動信号の周波数と略同一であるが、本開示はこれに限定されるものではない。本開示の実施例では、第1の駆動信号の周波数は、第2の駆動信号の周波数より小さくてもよく、液滴形態の安定性に寄与する。
【0036】
本開示の実施例では、第2の電極の駆動周期内において、第2の駆動信号の各印加期間の周波数、振幅、デューティ比及び当該印加期間の時間長は、同一であってもよいし、互いに異なってもよく、具体的には、液滴の所望の移動速度などに応じて適宜調整してもよく、本開示はこれに限定されない。
【0037】
また、図1に示す実施例では、第1の駆動信号(例えば、T1期間においてN-1に印加される駆動信号)の印加期間は、1つの間隔期間で互いに隔離される2つの期間を含んでもよいが、本開示はこれに限定されるものではなく、以下、第1の駆動信号の印加期間に関する異なる実施例について具体的に説明する。
【0038】
図2は、本開示の駆動方法の他の実施例の模式的なタイミングチャートである。
【0039】
図2に示すように、本実施例における第1の駆動信号の印加期間は、本開示の第1の期間に対応する1つの連続的な期間のみを含む。
【0040】
図2では、当該第1の期間は、駆動周期T1、T2、T3の後半部に設けられているが、本開示はこれに限定されるものではない。当該第1の期間は、駆動周期T1、T2、T3の先頭部、前半部、中間部又は末尾部に設けられてもよく、具体的には、リアルタイムで測定される液滴の接触角に基づいて第1の期間の位置を決定してもよい。例えば、電極N-1から電極Nへの液滴の運動期間において、リアルタイムで測定される液滴の接触角が好ましくない場合、電極Nへの駆動電圧の印加を停止し、そして電極N-1に駆動電圧を一定時間印加することにより、液滴の接触角を随時調整してもよく、液滴の運動中に液滴の接触角を正確に制御する。
【0041】
本開示は、図2に示される、T1、T2、T3期間の同じ位置に第1の期間を設定する実施例のほかにも、例えば、T1期間の中間部で電極N-1に第1の駆動信号を印加し、T2期間の後半部で電極Nに第1の駆動信号を印加し、T3期間の後半部で電極N+1に第1の駆動信号を印加する一実施例や、T1期間の先頭部で電極N-1に第1の駆動信号を印加し、T2期間の中間部で電極Nに第1の駆動信号を印加し、T3期間の中間部で電極N+1に第1の駆動信号を印加する他の実施例など、種々の実施例(図示せず)を含む。
【0042】
図3は、本開示の駆動方法のさらに他の実施例の模式的なタイミングチャートである。
【0043】
図3に示すように、本実施例では、各駆動周期T1、T2、T3における第1の駆動信号の印加期間は、間隔期間によって互いに隔離される3つの期間を含み、当該3つの期間は、本開示の第2の期間に対応する。本実施例において、隣接する第2の期間の間には、同じ時間長の間隔期間があってもよい。また、本実施例において、各第2の期間の時間長は同一であってもよく、第2の期間の時間長は、上述した間隔期間の時間長に正比例してもよい。本開示の実施例は、電極によって液滴に比較的安定した力を加えることができ、液滴の状態を維持することに寄与する。
【0044】
図4は、本開示の駆動方法のまた他の実施例の模式的なタイミングチャートである。
【0045】
図4に示すように、本実施例では、各駆動周期T1、T2、T3における第1の駆動信号の印加期間は、異なる時間長の間隔期間によって互いに隔離される3つの期間を含み、当該3つの期間は、本開示の第2の期間に対応する。本実施例において、同一駆動周期内の各第2の期間の時間長は互いに異なってもよい。また、同一駆動周期内の第2の期間の間の間隔期間が第2の期間の時間長に正比例してもよい。例えば、図4の駆動周期T1の期間のように、電極N-1に駆動信号を印加する3つの第2の期間のうち、時間長の比較的短い第2の期間の間の間隔期間が、時間長の比較的長い第2の期間の間の間隔期間よりも短い。
【0046】
図3及び図4に示す実施例に加えて、本開示の一部の実施例では、各駆動周期T1、T2、T3における第1の駆動信号の印加期間は、異なる間隔期間によって互いに隔離される同じ時間長を有する第2の期間を3つ以上含んでもよい。
【0047】
図5は、本開示の駆動方法の一実施例の模式的なタイミングチャートである。
【0048】
図5に示すように、本実施例では、駆動周期T1、T2、T3内において第1の駆動信号を印加する第2の期間の設定方法は、異なってもよい。例えば、駆動周期T1内において、図2に示す実施例の設定方法を採用してもよく、駆動周期T2内において、図3に示す実施例の設定方法を採用してもよく、駆動周期T3内において、図4に示す実施例の設定方法を採用してもよい。
【0049】
本開示では、各駆動周期内において、第1の駆動信号を印加する第2の期間の設定方法は、図5に示す設定方法に限定されるものではなく、例えば、全ての駆動周期のうち一部の駆動周期は、同じ設定方法になってもよい。
【0050】
図6は、本開示の駆動方法の他の実施例の模式的なタイミングチャートである。
【0051】
図6に示すように、本開示の実施例では、各駆動周期T1、T2、T3において、第1の電極に第1の駆動信号を印加する期間が、例えば、時間長がTである駆動周期T1において、2T/5~3T/5の期間のような駆動周期の中間部に設定される。本開示の実施例は、液滴接触角に対する制御性に優れた効果がある。
【0052】
本開示では、第1の電極に第1の駆動信号を印加する期間は、図6に示す値に限定されない。例えば、第1の電極に第1の駆動信号を印加する期間は、駆動周期T1における9T/20~11T/20の期間であってもよい。
【0053】
また、図1B図6に示すように、第1の駆動信号の駆動周期と第2の駆動信号の駆動周期とは重複しない。つまり、ある時点では駆動信号が1つしか存在せず、当該駆動信号が第1の電極又は第2の電極に印加されている。
なお、駆動周期T1において第1の電極に第1の駆動信号を印加する印加期間は、複数の期間、例えば、2つの期間を含む場合、当該2つの期間は、それぞれ、例えば、駆動周期T1における1T/5~2T/5の期間、及び3T/5~4T/5の期間であってもよい。
【0054】
本開示の実施例では、1つの駆動周期T1、T2又はT3において、第1の駆動信号の印加期間の総時間長と当該駆動周期の時間長との比は、0.1~0.4の範囲内であってもよい。
【0055】
本開示の一部の実施例では、第1の駆動信号の各パラメータをリアルタイムで調整してもよい。
【0056】
例えば、第1の駆動信号のある印加期間の開始時に、液滴の接触角をリアルタイムで測定し、測定された接触角に基づいて、当該印加期間における第1の駆動信号の周波数をリアルタイムで調整してもよく、当該周波数は、例えば、測定された接触角が小さいほど低くなるように設定されてもよい。本実施例は、リアルタイムで測定される接触角の大きさに応じて、第1の駆動信号の周波数を調整し、液滴に対する制御精度を向上させることができる。
【0057】
例えば、第1の駆動信号の印加期間の開始時に測定された液滴の接触角に基づいて、当該印加期間における第1の駆動信号のデューティ比を、測定された接触角が小さいほど小さくなるように設定してもよい。本実施例も、液滴に対する制御精度を向上させることができる。
【0058】
例えば、第1の駆動信号の印加期間の開始時に測定された液滴の接触角に基づいて、第1の駆動信号の当該印加期間の時間長を、測定された接触角が小さいほど長くなるように設定してもよい。本実施例も、液滴に対する制御精度を向上させることができる。
【0059】
また、第1の駆動信号のある印加期間の終了時にも、液滴の接触角をリアルタイムで測定し、測定された接触角の大きさに応じて、第1の駆動信号の当該印加期間と次の印加期間との間の間隔期間の時間長を設定してもよく、例えば、当該印加期間と次の印加期間との間の間隔期間の時間長を、測定された接触角が小さいほど短くなるように設定してもよい。本実施例も、液滴に対する制御精度を向上させることができる。
【0060】
本開示の各実施例では、第1の駆動信号及び/又は第2の駆動信号の基本周波数及び印加期間の時間長は、デジタルマイクロ流体チップの誘電体層の厚さに基づいて決定されてもよい。例えば、第1の駆動信号及び/又は第2の駆動信号を、誘電体層が厚いほど設定される周波数が低くなるか、又は印加期間の時間長が長くなるように設定してもよい。ここでは、駆動信号の印加期間が長くなると、駆動周期を適切に長くする必要も生じうる。本開示の実施例は、異なるデジタルマイクロ流体チップの特性に適応し、液滴の接触角を効果的に制御することができる。
【0061】
図7は、本開示の一実施例の駆動システムの模式的なブロック図である。
【0062】
本開示の実施例の駆動システムは、上記デジタルマイクロ流体チップに適用され、デジタルマイクロ流体チップは、多段多列の電極からなる電極アレイを含み、本開示の実施例の駆動システムは、各隣接する一対の電極の間に液滴を駆動するためのものであり、当該一対の隣接する電極は、本開示における第1の電極及び第2の電極に対応する。
【0063】
図7に示すように、本開示の実施例の駆動システムは、駆動信号生成装置1と、コントローラ2と、を含み、デジタルマイクロ流体チップ3を駆動制御するためのものである。
【0064】
駆動信号生成装置1は、第1の電極用の第1の駆動信号と第2の電極用の第2駆動信号とを生成するように構成されてもよい。駆動信号生成装置1は、例えば、方形波生成器、のこぎり波生成器などであってもよい。
【0065】
コントローラ2は、第2の電極の駆動周期内において、第1の電極に前記第1の駆動信号を印加し、前記第2の電極に前記第2の駆動信号を印加する制御を行うように構成されてもよい。
【0066】
図1に示す実施例のタイミングチャートを参照すると、コントローラ2は、第1の駆動信号の印加期間と第2の駆動信号の印加期間とを互いにずらすように構成されてもよく、また、コントローラ2は、第2の電極の駆動周期内において、第1の駆動信号の印加期間の総時間長を第2の駆動信号の印加期間の総時間長よりも短くするように構成されてもよい。
【0067】
コントローラ2は、第1の駆動信号の印加期間を制御する際に、予め設定された期間に従って制御を行ってもよい。
【0068】
図8は、本開示の他の実施例の駆動システムの模式的なブロック図である。
【0069】
図8に示すように、本開示の実施例の駆動システムは、液滴の接触角を測定するように構成されてもよい接触角測定装置4をさらに含んでもよく、コントローラ2は、リアルタイムで測定される液滴の接触角に基づいて、第1の駆動信号の各パラメータを制御又は調整するように構成されてもよい。
【0070】
例えば、コントローラ2は、第1の駆動信号の1つの印加期間の開始時に、接触角測定装置4によってリアルタイムで測定される接触角に基づいて、第1の駆動信号の当該印加期間の時間長、当該印加期間における第1の駆動信号のデューティ比及び/又は当該印加期間における第1の駆動信号の周波数を決定するように構成されてもよい。
【0071】
なお、コントローラ2は、第1の駆動信号の1つの印加期間の終了時に、接触角測定装置4によってリアルタイムで測定される接触角に基づいて、第1の駆動信号の当該印加期間と第1の駆動信号の次の印加期間との間の間隔期間の時間長を決定するように構成されてもよい。
【0072】
コントローラ2による第1の駆動信号の具体的な制御方法については、図1図6を参照して説明したとおりであるので、ここではその具体的な説明を省略する。
【0073】
図9は、本開示の一実施例の駆動システムの模式的な回路図である。
【0074】
図9に示すように、本開示の実施例の駆動システムは、駆動信号生成装置10と、コントローラ20と、デコーダ40と、第1の光結合スイッチ51と、第2の光結合スイッチ52とを含む。第1の光結合スイッチ51及び第2の光結合スイッチ52は、本開示の第1のスイッチ装置及び第2のスイッチ装置に対応する。さらに、図9には、デジタルマイクロ流体チップ30と、その内部に設けられた複数の電極のうち2つの電極61、62とが示されている。
【0075】
第1の光結合スイッチ51は、第1の電極61と駆動信号生成装置10との間の回路に接続され、第2の光結合スイッチ52は、第2の電極62と駆動信号生成装置10との間の回路に接続されている。コントローラ20は、第1の駆動信号の印加期間に第1の光結合スイッチ51をオンにし、第2の光結合スイッチ52をオフにし、前記第2の駆動信号の印加期間に第1の光結合スイッチ51をオフにし、第2の光結合スイッチ52をオンにするように構成されてもよい。
【0076】
各光結合スイッチのオン・オフを制御するために、コントローラ20と光結合スイッチとの間にデコーダ40を設けてもよく、コントローラ20は、駆動信号を印加する必要がある電極に対応する制御信号をデコーダ40に送信し、デコーダ40が、当該電極に対応する光結合スイッチに制御信号を正確に送信する。
【0077】
本開示の実施例では、第1のスイッチ装置及び第2のスイッチ装置は、光結合スイッチを用いて実装されるが、本開示はこれに限られず、例えば、第1のスイッチ装置及び第2のスイッチ装置は、他の形態の半導体スイッチを用いて実装されてもよく、例えば、電界効果トランジスタを直接用いてスイッチ装置として実装してもよい。
【0078】
本開示では、タイマを設けることにより、各駆動信号の印加期間を制御してもよい。図6に示す実施例を例として、駆動周期T1、T2又はT3を計時するための第1のタイマを設定し、第2の駆動信号の印加時間を計時するための第2のタイマを設定し、第1の駆動信号の印加時間を計時するための第3のタイマを設定してもよい。
【0079】
図10図11A及び図11Bは、本開示の一実施例の駆動システムの動作プロセスを示す模式的なフローチャートである。
【0080】
まず、図10に示すように、例えば、コンピュータ(PC)を介してコントローラ20と通信して、コントローラ20を初期化し、PC側から液滴の移動速度及び移動経路データを読み取り、液滴の移動速度及び移動経路を設定する。設定された液滴移動速度に基づいて、1つの電極に駆動電圧を印加する駆動周期(例えばT1、T2、T3)を設定するための第1のタイマを設定するとともに、第2のタイマ及び第3のタイマを設定する。
【0081】
液滴位置を読み取り、設定された移動経路を満たすか否かを判断し、満たさない場合、PC側にフィードバックし、液滴を再投与することを要求する。設定された移動経路を満たす場合、コントローラ20は、液滴が位置する電極の次の電極に対応する光結合スイッチをオンにするように、デコーダ40に命令を送信するとともに、第1のタイマ及び第2のタイマを起動し、駆動信号生成装置10に特定周波数の駆動信号、例えば、駆動方形波を発生させるようにPWM制御信号を送信する。
【0082】
第2のタイマがオーバーフローする(すなわち、第2の電極に第2の駆動信号を印加する1つの印加期間が終了する)場合、第2のタイマの割り込みを有効にし、図11Aに示すように、当該タイマの割り込みのポイントで液滴位置を読み取り、液滴の接触角ヒステリシスの状況を測定して判断し、尾引き状況に応じて駆動信号の周波数(例えば、駆動方形波周波数)を設定し、さらに駆動信号のデューティ比を設定してもよく、割り込みを終了する。その後、第3のタイマを起動し、第2のタイマの割り込みの期間に設定された駆動信号の周波数に基づいて第1の電極に第1の駆動信号を出力し、第3のタイマのオーバーフローを待つ。第3のタイマがオーバーフローする(すなわち、第1の電極に第1の駆動信号を印加する印加期間が終了する)場合、第3のタイマの割り込みを有効にし、図11Bに示すように、第2の電極用の第2の駆動信号(例えば、駆動方形波)の周波数及びデューティ比を再設定してもよい。割り込みが終了した後、第3のタイマの割り込みの期間に再設定された駆動周波数の駆動方形波を第2の電極に出力し、そして第1のタイマのオーバーフローを待つ。第1のタイマがオーバーフローする(すなわち、1つの駆動周期が終了する)場合、第1のタイマの割り込みを有効にし、液滴位置を読み取り、液滴が設定された移動経路を移動しているか否かを判断し、設定された移動経路を移動する場合、次の電極に対して上記ステップを繰り返し、液滴位置がずれる場合、上記駆動方法に基づいて液滴を設定された移動経路に引き戻す。
【0083】
本開示の実施例の駆動方式は、デジタルマイクロ流体チップにおける液滴の進行中の接触角を正確に制御し、存在する接触角ヒステリシスの現象を効果的に改善し、液滴の移動速度を向上させることができる。
【0084】
以上、本開示の複数の実施例について説明したが、以上は本開示の全ての実施例ではなく、当業者であれば本開示に基づいて、本開示の思想から逸脱することなく、様々な修正又は変形した他の実施例をさらに取得することができ、これらの修正及び変形は、いずれも本開示の特許請求の範囲内に含まれるべきである。
【0085】
本出願は、2017年09月29日に提出された中国特許出願の第201710910461.6の優先権を主張し、当該中国特許出願の全文は、引用によって本出願の一部として本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0086】
N-1、N、N+1、N+2 電極
T1、T2、T3 駆動周期
1 駆動信号生成装置
2 コントローラ
3 デジタルマイクロ流体チップ
4 接触角測定装置
10 駆動信号生成装置
20 コントローラ
30 デジタルマイクロ流体チップ
40 デコーダ
51 第1の光結合スイッチ
52 第2の光結合スイッチ
61、62 電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B