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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】隔壁装着機器
(51)【国際特許分類】
   B60C 29/02 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
B60C29/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020135521
(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公開番号】P2022032065
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】砂山 裕貴
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-073843(JP,A)
【文献】特表2010-516555(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第758318(GB,A)
【文献】仏国特許発明第1117877(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が収容されるか又は流れる内部領域を外部から区画する隔壁(90A)の貫通孔(91)に装着される隔壁装着機器(10A,10B)であって、
前記貫通孔(91)の中心軸に沿って延びる機器本体(11,11V)と、
前記機器本体(11,11V)の軸方向の途中位置より側方に張り出し、前記隔壁装着機器(10A,10B)が前記軸方向の一端側から前記貫通孔(91)に挿入されたときには、前記貫通孔(91)の開口縁との当接により前記軸方向の他端側に倒れて窄まる第1状態になって前記貫通孔(91)を通過する一方、前記隔壁装着機器(10A,10B)が前記挿入とは逆方向に引き戻されたときには、前記貫通孔(91)の開口縁との当接により前記軸方向の一端側に倒れて窄まり前記第1状態より外径が大きな第2状態になって前記貫通孔(91)に圧入されるエラストマー製の可撓フランジ(22,22X)と、を備える隔壁装着機器(10A,10B)。
【請求項2】
前記機器本体(11,11V)は、その軸方向の途中位置より前記一端側の外径を拡径してなる一端側大径部(11A)と、前記一端側大径部(11A)より前記他端側に設けられ、前記一端側大径部(11A)より外径が小さい小径部(11B)とを有し、
前記可撓フランジ(22,22X)は、前記一端側大径部(11A)と前記小径部(11B)との間の段差部又はその近傍から側方に張り出している請求項1に記載の隔壁装着機器(10A,10B)。
【請求項3】
前記可撓フランジ(22)が前記貫通孔(91)に圧入された状態で、前記機器本体(11)のうち前記可撓フランジ(22)より前記他端側に係止又は係合されて、前記隔壁装着機器(10A)の前記挿入方向の移動を規制するストッパ(50)を備える請求項1又は2に記載の隔壁装着機器(10A)。
【請求項4】
前記機器本体(11)は、その軸方向の途中位置より前記一端側の外径を拡径してなる一端側大径部(11A)と、前記一端側大径部(11A)より前記他端側に設けられ、前記一端側大径部(11A)より外径が小さい小径部(11B)と、前記小径部(11B)より前記他端側の外径を前記小径部(11B)より拡径してなる他端側大径部(11C)を有し、
前記ストッパ(50)は、筒体に縦割りスリット(50K)を形成してなり、前記可撓フランジ(22)が前記貫通孔(91)に圧入された状態で前記他端側大径部(11C)と前記隔壁(90A)との間に側方から装着される請求項3に記載の隔壁装着機器(10A)。
【請求項5】
前記ストッパ(50)には、前記貫通孔(91)に圧入された前記可撓フランジ(22)のうち前記隔壁(90A)から突出した部分を覆うキャップ部(52)が備えられている請求項3又は4に記載の隔壁装着機器(10A)。
【請求項6】
前記機器本体(11)には、
金属製又は樹脂製の支持スリーブ(12)と、
前記支持スリーブ(12)の前記一端側を被覆し、前記一端側大径部(11A)側を形成するエラストマー製の弾性被覆部材(24)と、
前記支持スリーブ(12)に一体形成されて前記弾性被覆部材(24)に埋設される埋設フランジ(12F)と、が備えられ、
前記可撓フランジ(22)は、前記弾性被覆部材(24)に一体形成されている請求項1からの何れか1の請求項に記載の隔壁装着機器(10A)。
【請求項7】
前記可撓フランジ(22)の先端から前記軸方向の前記他端側に突出する円筒部(23)が備えられている請求項1から6の何れか1の請求項に記載の隔壁装着機器(10A)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部領域を外部から区画する隔壁の貫通孔に装着される隔壁装着機器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の隔壁装着機器として、例えば、スナップイン方式のタイヤバルブのように、隔壁に相当するタイヤホイールのリムの貫通孔に圧入されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-91568号(図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の隔壁装着機器は、隔壁に対して高圧側となる内部側から貫通孔に圧入する必要があり、取り付けに手間がかかることがあった。具体的には、例えば、上述したタイヤバルブは、隔壁としての上記リムに対して高圧側となるタイヤの内部領域側から貫通孔に圧入する必要があるので、タイヤバルブを交換する際には、逐一、タイヤホイールからタイヤを外す手間がかかるという問題があった。これに対し、隔壁に対して外部側から取り付けることが可能な隔壁装着機器の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、流体が収容されるか又は流れる内部領域を外部から区画する隔壁(90A)の貫通孔(91)に装着される隔壁装着機器(10A,10B)であって、前記貫通孔(91)の中心軸に沿って延びる機器本体(11,11V)と、前記機器本体(11,11V)の軸方向の途中位置より側方に張り出し、前記隔壁装着機器(10A,10B)が前記軸方向の一端側から前記貫通孔(91)に挿入されたときには、前記貫通孔(91)の開口縁との当接により前記軸方向の他端側に倒れて窄まる第1状態になって前記貫通孔(91)を通過する一方、前記隔壁装着機器(10A,10B)が前記挿入とは逆方向に引き戻されたときには、前記貫通孔(91)の開口縁との当接により前記軸方向の一端側に倒れて窄まり前記第1状態より外径が大きな第2状態になって前記貫通孔(91)に圧入されるエラストマー製の可撓フランジ(22,22X)と、を備える隔壁装着機器(10A,10B)である。
【0006】
請求項2の発明は、前記機器本体(11,11V)は、その軸方向の途中位置より前記一端側の外径を拡径してなる一端側大径部(11A)と、前記一端側大径部(11A)より前記他端側に設けられ、前記一端側大径部(11A)より外径が小さい小径部(11B)とを有し、前記可撓フランジ(22,22X)は、前記一端側大径部(11A)と前記小径部(11B)との間の段差部又はその近傍から側方に張り出している請求項1に記載の隔壁装着機器(10A,10B)である。
【0007】
請求項3の発明は、前記可撓フランジ(22)が前記貫通孔(91)に圧入された状態で、前記機器本体(11)のうち前記可撓フランジ(22)より前記他端側に係止又は係合されて、前記隔壁装着機器(10A)の前記挿入方向の移動を規制するストッパ(50)を備える請求項1又は2に記載の隔壁装着機器(10A)である。
【0008】
請求項4の発明は、その軸方向の途中位置より前記一端側の外径を拡径してなる一端側大径部(11A)と、前記一端側大径部(11A)より前記他端側に設けられ、前記一端側大径部(11A)より外径が小さい小径部(11B)と、前記小径部(11B)より前記他端側の外径を前記小径部(11B)より拡径してなる他端側大径部(11C)を有し、前記ストッパ(50)は、筒体に縦割りスリット(50K)を形成してなり、前記可撓フランジ(22)が前記貫通孔(91)に圧入された状態で前記他端側大径部(11C)と前記隔壁(90A)との間に側方から装着される請求項3に記載の隔壁装着機器(10A)である。
【0009】
請求項5の発明は、前記ストッパ(50)には、前記貫通孔(91)に圧入された前記可撓フランジ(22)のうち前記隔壁(90A)から突出した部分を覆うキャップ部(52)が備えられている請求項3又は4に記載の隔壁装着機器(10A)である。
【0010】
請求項6の発明は、前記機器本体(11)には、金属製又は樹脂製の支持スリーブ(12)と、前記支持スリーブ(12)の前記一端側を被覆し、前記一端側大径部(11A)側を形成するエラストマー製の弾性被覆部材(24)と、前記支持スリーブ(12)に一体形成されて前記弾性被覆部材(24)に埋設される埋設フランジ(12F)と、が備えられ、前記可撓フランジ(22)は、前記弾性被覆部材(24)に一体形成されている請求項1からの何れか1の請求項に記載の隔壁装着機器(10A)である。
【0011】
請求項7の発明は、前記可撓フランジ(22)の先端から前記軸方向の前記他端側に突出する円筒部(23)が備えられている請求項1から6の何れか1の請求項に記載の隔壁装着機器(10A)である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の隔壁装着機器(10A,10B)は、機器本体(11,11V)の軸方向の途中位置より側方に張り出すエラストマー製の可撓フランジ(22,22X)を備えている。そして、隔壁(90A)の外部側に配置された隔壁装着機器(10A,10B)が軸方向の一端側から隔壁(90A)の貫通孔(91)に挿入されると、可撓フランジ(22,22X)が貫通孔(91)の開口縁との当接により軸方向の他端側に倒れて窄まる第1状態になって貫通孔(91)を通過する。そこから、隔壁装着機器(10A,10B)が挿入方向とは逆方向に引き戻されると、可撓フランジ(22,22X)が貫通孔(91)の開口縁との当接により軸方向の一端側に倒れて窄まり第1状態より外径が大きな第2状態になって貫通孔(91)に圧入され、抜け止めされる。このようにして本開示の隔壁装着機器(10A,10B)は、隔壁(90A)の外部側から貫通孔(91)に取り付けることができ、従来のものより利便性が高い。
【0013】
請求項2の構成では、可撓フランジ(22,22X)は、機器本体(11,11V)における一端側大径部(11A)と小径部(11B)との間の段差部又はその近傍から側方に張り出しているので、小径部(11B)側に倒れた第1状態の可撓フランジ(22,22X)の外径と、一端側大径部(11A)側に倒れた第2状態の可撓フランジ(22,22X)の外径との差を大きくすることができ、可撓フランジ(22,22X)を第1状態にしたときには容易に貫通孔(91)に通すことができ、可撓フランジ(22,22X)を第2状態にしたときには貫通孔(91)への圧入強度を高くすることができる。
【0014】
請求項3の隔壁装着機器(10A)では、可撓フランジ(22)が貫通孔(91)に圧入された状態で、機器本体(11)のうち可撓フランジ(22)より他端側にストッパ(50)が係止又は係合され、隔壁装着機器(10A)の隔壁(90A)に対する固定が強固になる。
【0015】
請求項4の隔壁装着機器(10A)では、ストッパ(50)を機器本体(11)に対して側方から着脱することができ、利便性が向上する。
【0016】
請求項5の隔壁装着機器(10A)では、貫通孔(91)に圧入された可撓フランジ(22)のうち隔壁(90A)から突出した部分がストッパ(50)のキャップ部(52)に覆われて保護され、信頼性が向上する。
【0017】
請求項6の構成によれば、エラストマー製の可撓フランジ(22)とエラストマー製の一端側大径部(11A)とが重なって貫通孔(91)に圧入されるので、圧入変形代の確保が容易になる。また、弾性被覆部材(24)には支持スリーブ(12)の埋設フランジ(12F)が埋設されているので、その埋設フランジ(12F)の大きさや形状を変更することで、圧入の強度及び抵抗を所望の大きさに容易に変えることができる。
【0018】
請求項7の隔壁装着機器(10A)には、可撓フランジ(22)の先端から軸方向の他端側に突出する円筒部(23)が備えられている。そして、隔壁装着機器(10A)が軸方向の一端側から隔壁(90A)の貫通孔(91)に挿入されるときには、第1状態に窄んだ可撓フランジ(22)に続いて円筒部(23)が窄んだ状態になって貫通孔(91)を通過する。そこから、隔壁装着機器(10A)が挿入方向とは逆方向に引き戻されると、円筒部(23)が貫通孔(91)の開口縁に当接することで可撓フランジ(22)が軸方向の一端側に倒れて窄まり第2状態になり、その第2状態の可撓フランジ(22)から円筒部(23)が側方に張り出した形状に変形して貫通孔(91)の開口縁に当接する。これにより、第2状態の可撓フランジ(22)が貫通孔(91)を通過することが確実に防がれ、貫通孔(91)の密閉度も高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の隔壁装着機器の側断面図
図2】隔壁装着機器の斜視図
図3】貫通孔に押し込まれるときに隔壁装着機器の側断面図
図4】貫通孔をシール突部が通過した状態の隔壁装着機器の側断面図
図5】貫通孔に可撓フランジが圧入された状態の隔壁装着機器の側断面図
図6】ストッパが装着された状態の隔壁装着機器の側断面図
図7】第2実施形態の隔壁装着機器の側断面図
図8】貫通孔に可撓フランジが圧入された状態の隔壁装着機器の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、図1から図6を参照して本開示の第1実施形態の隔壁装着機器10Aについて説明する。図1に示された本実施形態の隔壁装着機器10Aは、タイヤバルブであって、同図の上下方向に延びる機器本体11の内部にバルブコア13を備える。
【0021】
以下の説明において、機器本体11の軸方向でもある図1の上下方向を単に上下方向といい、隔壁装着機器10Aの各部位の図1における「下側」、「下端側」等を、単に「下側」、「下端側」等といい、その反対側を単に「上側」、「上端側」等ということとする。なお、機器本体11の下端側は、特許請求の範囲に記載の「軸方向の一端側」に相当し、機器本体11の上端側は、特許請求の範囲に記載の「軸方向の他端側」に相当する。
【0022】
上述のバルブコア13は、上下方向に延びるシャフト15をコアスリーブ14で支持した構造をなしている。コアスリーブ14は、ロングスリーブ14Aの上端部にショートスリーブ14Bを回転可能に結合してなる。また、ショートスリーブ14Bには、内側空間の上面開口を跨ぐようにブリッジ部14Dが形成され、そのブリッジ部14Dに形成された貫通孔をシャフト15の上端寄り位置が貫通している。そして、シャフト15の上端をカシメて形成された上端突部15Aとブリッジ部14Dとの間に圧縮コイルバネ17が組み付けられている。また、シャフト15の下端寄り位置からは弁体16が張り出していて、圧縮コイルバネ17の弾発力により弁体16がコアスリーブ14の下端の弁口14Kに押し付けられている。さらには、ショートスリーブ14Bの側面にはネジ部14Nが形成されている。
【0023】
機器本体11には、バルブコア13を収容する金属製の支持スリーブ12が備えられている。支持スリーブ12は、全体が円筒状をなし、バルブコア13は、支持スリーブ12内に挿入されて、支持スリーブ12の内面の上端寄り位置に形成されたネジ部12Nに、コアスリーブ14のネジ部14Nが締め付けられている。また、支持スリーブ12内の中間位置には、下方に向かって内径が縮径するテーパー部12Tが備えられ、そこにロングスリーブ14Aの外面に装着されたシールリング14Sが押し付けられている。そして、通常はバルブコア13によって支持スリーブ12内を流体が通過することが規制され、圧縮コイルバネ17の弾発力に抗してシャフト15が下方に押し下げられると、弁口14Kが開き、支持スリーブ12内を流体が通過する。
【0024】
支持スリーブ12の外面側の上端部は、段付き状に拡径されて上端側大径部11C(特許請求の範囲の「他端側大径部」に相当する)になっている。また、上端側大径部11Cの外側面にはネジ部11Nが形成され、そのネジ部11Nに蓋体19のネジ部19Nを螺合して支持スリーブ12の上端開口が蓋体19にて閉塞される。なお、蓋体19の内部上面には、パッキン19Gが重ねて配置され、上端側大径部11Cの上端がパッキン19Gに突き当てられる。
【0025】
支持スリーブ12の下端部は、弾性被覆部材24によって被覆され、支持スリーブ12のうち弾性被覆部材24に被覆される部分には埋設フランジ12Fが形成されている。埋設フランジ12Fは、支持スリーブ12の外面の下端寄り位置から側方に張り出し、支持スリーブ12の軸方向と直交する上面12F1と、均一外径の側面12F2と、下方に向かって縮径するテーパー面12F3とを有する。
【0026】
弾性被覆部材24は、後述するシール突部21と共に例えば加硫ゴムで構成され、支持スリーブ12の下端部の回りにモールド成形されることで支持スリーブ12に固着している。弾性被覆部材24は、均一な外径をなして上下方向に延び、下端外縁部を面取りされている。また、弾性被覆部材24の上面は埋設フランジ12Fの上面12F1と面一に配置される一方、下面は支持スリーブ12の下端面より下方に位置して支持スリーブ12の下面を覆っている。さらに、弾性被覆部材24の下面中央には、支持スリーブ12の下端開口に対応した開口が形成されている。
【0027】
シール突部21の全体は、例えば、お椀状をなし、弾性被覆部材24の外面の上端部から側方に張り出す可撓フランジ22と、可撓フランジ22の先端部から上方に起立する円筒部23とからなり、可撓フランジ22と円筒部23との間は湾曲している。また、シール突部21の肉厚は、可撓フランジ22の基端から可撓フランジ22と円筒部23との間の湾曲部分の手前位置まで均一な厚さをなし、その湾曲部分の開始位置から円筒部23の先端にかけて徐々に厚くなっている。また、可撓フランジ22の上面と埋設フランジ12Fの上面12F1とは面一になっている。
【0028】
隔壁装着機器10Aのうちシール突部21を除く全体は、上述してきた機器本体11になっている。また、機器本体11のうち外面を弾性被覆部材24にて覆われた部分は、下端側大径部11A(特許請求の範囲の「一端側大径部」相当する)をなし、下端側大径部11Aと前述した上端側大径部11Cとの間は、それらより外径が小さい小径部11Bになっている。よって、本実施形態の隔壁装着機器10Aは、機器本体11のうち下端側大径部11Aと小径部11Bとの間の段差部近傍からシール突部21が側方に張り出した形状になっている。
【0029】
隔壁装着機器10Aには、図6に示すように、機器本体11の小径部11Bに装着可能なストッパ50が備えられている。図2に示すように、ストッパ50は、下端部が段付き状に拡径した円筒体の周方向の一箇所を、上下方向の全体に亘って一定幅で切り欠いた構造をなしている。また、ストッパ50の拡径された下端部は、特許請求の範囲のキャップ部52をなし、その内径は隔壁装着機器10Aが装着される貫通孔91の内径より僅かに大きくなっている。さらには、ストッパ50のうちキャップ部52より上側の小径筒部51の内径は、機器本体11の小径部11Bの外径よりは大きく、上端側大径部11Cの外径よりは小さい。さらには、ストッパ50の全高は、機器本体11の小径部11Bの全長より僅かに長くなっている。ストッパ50の使用方法については、後に説明する。
【0030】
本実施形態の隔壁装着機器10Aの構成に関する説明は以上である。次に、この隔壁装着機器10Aの作用効果について説明する。
【0031】
隔壁装着機器10Aは、タイヤホイール90のリム90Aの貫通孔91に取り付けられる。なお、タイヤホイール90は、タイヤと共に、流体(具体的には、圧縮エアー)を収容する容器をなし、タイヤホイール90のリム90Aは、タイヤ内の内部領域を外部から区画する特許請求の範囲の「隔壁」を構成している。
【0032】
隔壁装着機器10Aは、タイヤホイール90に装着される場合、図1に示すように、ストッパ50が外された状態でタイヤの外側に配置され、リム90Aの貫通孔91に対して、下端側大径部11A側から挿入される。すると、図3に示すように、可撓フランジ22は、貫通孔91の開口縁との当接により機器本体11の小径部11B側に倒れて窄まった第1状態になると共に、円筒部23は、可撓フランジ22の上端部から上方に延びて窄まった状態になり、それらが貫通孔91を通過する。
【0033】
図4に示すように、可撓フランジ22及び円筒部23は、貫通孔91を通過するとタイヤの内側で元の状態に復元する。そこから、隔壁装着機器10Aは、挿入方向とは逆方向に引き戻される。すると、図5に示すように、可撓フランジ22は、貫通孔91の開口縁との当接により機器本体11の下端側大径部11A側に倒れて窄まった第2状態になり、円筒部23は、可撓フランジ22の下端から側方に張り出した状態になる。
【0034】
ここで、第1状態で可撓フランジ22の内側に位置する機器本体11の小径部11Bより、第2状態で可撓フランジ22の内側に位置する機器本体11の下端側大径部11Aの方が大きいので、第1状態より第2状態の方が可撓フランジ22の外径は大きくなる。そして、この第2状態になった可撓フランジ22が貫通孔91に圧入される。
【0035】
詳細には、最初に、可撓フランジ22及び弾性被覆部材24のうち埋設フランジ12Fの側面12F2の外側に重なった部分から貫通孔91に突入していくが、その部分は可撓フランジ22と弾性被覆部材24とを合わせた圧縮変形代が最も少ない部分でもあるので、高い圧入抵抗を伴って圧入される。そして、図5に示すように、埋設フランジ12Fの側面12F2の大部分が貫通孔91を通過して圧入抵抗が僅かに下がったところで、円筒部23が貫通孔91の開口縁に当接し、それ以上は貫通孔91内に圧入されなくなる。
【0036】
これにより、隔壁装着機器10Aは、貫通孔91からリム90Aの外側にも内側にも移動し難い状態になって貫通孔91に固定される。その固定を強固にするために、ストッパ50が隔壁装着機器10Aに側方から装着される。そのために、隔壁装着機器10Aの小径部11Bに側方からストッパ50の側面開口50K(図2参照)の開口縁が押し付けられる。すると、側面開口50Kが横に開くようにストッパ50が弾性変形し、小径部11Bがストッパ50の内側にして取り込まれたところでストッパ50が弾性復帰する。そして、ストッパ50の上面が機器本体11の上端側大径部11Cと小径部11Bとの間の段差面に隣接又は当接し、ストッパ50の下面が、リム90Aの外面における貫通孔91の開口縁に隣接又は当接して、隔壁装着機器10Aが貫通孔91よりリム90Aの内側に押し込まれることが防がれる。
【0037】
以上のようにして本実施形態の隔壁装着機器10Aは、リム90Aの外部から貫通孔91に取り付けることができ、従来のものより利便性が高い。また、貫通孔91に圧入される可撓フランジ22は、機器本体11における下端側大径部11Aと小径部11Bとの間の段差部近傍から側方に張り出しているので、小径部11B側に倒れた第1状態の可撓フランジ22の外径と、下端側大径部11A側に倒れた第2状態の可撓フランジ22の外径との差を大きくすることができ、可撓フランジ22を第1状態にしたときには容易に貫通孔91に通すことができ、可撓フランジ22を第2状態にしたときには貫通孔91への圧入強度を高くすることができる。
【0038】
また、エラストマー製の可撓フランジ22と、下端側大径部11Aを構成するエラストマー製の弾性被覆部材24とが重なって貫通孔91に圧入されるので、圧入時に可撓フランジ22と弾性被覆部材24との両方を圧縮変形させることができ、圧入変形代の確保が容易になる。
【0039】
さらには、弾性被覆部材24には、支持スリーブ12の埋設フランジ12Fが埋設されているので、その埋設フランジ12Fの大きさや形状を変更することで、圧入の強度及び抵抗を所望の大きさに容易に変えることができる。また、隔壁装着機器10Aは、ストッパ50を装着しない状態でもリム90Aに固定されるが、ストッパ50が装着されることで固定が強固になる。しかも、そのストッパ50は、機器本体11に対して側方から着脱することができるので、着脱作業を容易に行うことができる。また、貫通孔91に圧入された可撓フランジ22のうちリム90Aから突出した部分がストッパ50のキャップ部52に覆われて保護されることで、信頼性も高い。
【0040】
なお、リム90Aに装着された隔壁装着機器10Aを取り外すには、隔壁装着機器10Aからストッパ50を外し、貫通孔91から外側に突出している可撓フランジ22及び弾性被覆部材24を例えばニッパ等によりカットして隔壁装着機器10Aを貫通孔91から引き抜けばよい。また、上記説明では隔壁装着機器10Aは、リム90Aの外側から装着されていたが、ストッパ50を使用しなければ、リム90Aの内側から装着することもでき、必要に応じてそのように使用してもよい。
【0041】
[第2実施形態]
本実施形態の隔壁装着機器10Bは、図7及び図8に示されている。この隔壁装着機器10Bは、機器本体11Vの下端部に基板収容部屋11Dを有し、そこに回路基板42を収容している。具体的には、基板収容部屋11Dは、支持スリーブ12Vのうち弾性被覆部材24より下方に延長された部分を拡径してなり、下面を蓋板11Eで閉塞されている。なお、基板収容部屋11Dには、通気孔11Fが形成されている。
【0042】
回路基板42には、電源回路43、制御回路44、無線回路45、圧力センサ46、加速度センサ47等が実装されている。そして、回路基板42と共に基板収容部屋11Dに収容された二次電池48から制御回路44、無線回路45等が電源回路43を通して受電し、圧力センサ46及び加速度センサ47の検出結果を無線送信する。
【0043】
また、電源回路43には、二次電池48を充電するための1対のバスバー40が接続されている。それら1対のバスバー40は、基板収容部屋11Dから支持スリーブ12Vの上端部まで延びている。そして、支持スリーブ12Vの内部のうち上端部と基板収容部屋11Dとを除く範囲に充填されたシール部材41を1対のバスバー40が貫通して、それらの上端部が、1対の充電電極40Kとしてシール部材41の上面から突出している。
【0044】
本実施形態の可撓フランジ22Xは、前記第1実施形態の円筒部23を有さない円板状をなし、その肉厚は先端に向かうに従って徐々に大きくなっている。また、可撓フランジ22Xの上面の基端部からは、例えば、断面三角形の環状突条22Yが突出している。なお、弾性被覆部材24の下面は基板収容部屋11Dの上面に重なり、弾性被覆部材24内には前記第1実施形態の埋設フランジ12Fは埋設されていない。
【0045】
本実施形態の隔壁装着機器10Bの構成に関する説明は以上である。この隔壁装着機器10Bは、前記第1実施形態の隔壁装着機器10Aと同様に、タイヤホイール90のリム90Aの貫通孔91に外側から挿入されて引き戻されることで、図8に示すように可撓フランジ22Xが弾性被覆部材24の外側に重なった状態で貫通孔91に圧入される。そして、環状突条22Yがリム90Aの外面における貫通孔91の開口縁に係止することで隔壁装着機器10Bがリム90Aの内部側に押し戻されることが防がれる。そして、隔壁装着機器10Bがタイヤホイール90に取り付けられて上述した検出結果が無線送信されることで、タイヤ内の圧力や車輪の挙動を監視することができる。
【0046】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、上記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)前記第1実施形態のストッパ50は、機器本体11に側方から取り付けられる構造になっていたが、例えば、機器本体11の上端側大径部11Cを小径部11Bと同一外径にしてネジ部11Nを小径部11Bの下端部まで形成し、そこにストッパ50に代わるナット構造のストッパが螺合装着されるようにしてもよい。
【0047】
(2)前記埋設フランジ12Fに替えて、複数の突部を機器本体11の下端部の周面方向に分散配置してもよい。
【0048】
(3)また、円筒部23や環状突条22Yのように貫通孔91内に圧入されない部分は、周方向で連続せずに、周方向に点在するように設けてもよい。
【0049】
(4)可撓フランジ22は、加硫ゴムの成形時に機器本体11に固着した弾性被覆部材24に一体形成されていたが、可撓フランジ22又は弾性被覆部材24が、機器本体11に接着材で固定されていてもよいし、それら以外の構造で可撓フランジ22又は弾性被覆部材24が機器本体11に固定されていてもよい。
【0050】
(5)前記支持スリーブ12は、金属製であったが樹脂製でもよく、可撓フランジ22、弾性被覆部材24等は、加硫ゴム製であったが、エラストマーであれば、加硫ゴムでなくてもよい。
【0051】
(6)前記実施形態では、タイヤホイール90に装着される隔壁装着機器10A,10Bの例を示したが、流体が流れるパイプや、流体を貯留するタンク等に装着される隔壁装着機器に本開示の構造を適用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10A,10B 隔壁装着機器
11,11V 機器本体
11A 下端側大径部(一端側大径部)
11B 小径部
11C 上端側大径部(他端側大径部)
12,12V 支持スリーブ
12F 埋設フランジ
22,22X 可撓フランジ
22X 可撓フランジ
23 円筒部
24 弾性被覆部材
50 ストッパ
52 キャップ部
90A リム(隔壁)
91 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8