(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】チューブカッタ
(51)【国際特許分類】
B26B 13/00 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
B26B13/00 D
(21)【出願番号】P 2020203278
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000108708
【氏名又は名称】タキゲン製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】後藤 和之
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-241391(JP,A)
【文献】実開平04-047911(JP,U)
【文献】韓国公開実用新案第20-2016-0003531(KR,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0118015(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に側面視V形のチューブ受部を有し基部にハンドル部を有する金属製の本体と、
先端部に前記チューブ受部と協働してチューブを切断する側面視山形の切刃を備えた切断刃を着脱自在に保持する刃保持部を有し、中間部において前記本体の中間部と交差して金属製の枢ピンによって枢着され、基部にハンドル部を有する金属製の切断刃保持体と、
前記本体と前記切断刃保持体のハンドル部間を開く方向に付勢するばねとを具備し、
前記2つのハンドル部を握ることにより前記チューブ受部と前記刃保持部との間を閉じるチューブカッタにおいて、
前記本体のチューブ受部は、相互間に合成樹脂製のスペーサを介して前記刃保持部を受け入れる間隔を置いて結合された平行一対の受板部材からなり、
前記本体のハンドル部は、相互間に前記受板部材を受け入れる平行一対の軸受板部を先端側に有し、当該軸受板部において前記受板部材と金属製の連結ピンで連結されると共に、当該軸受板部の先端側において前記受板部材と共に前記枢ピンによって前記切断刃保持体に枢支され、
前記切断刃保持体の刃保持部は、基端側が前記本体の受板部材間に回動自在に保持され相互間に前記切断刃を挟持する2枚の刃保持板部材からなり、
前記切断刃保持体のハンドル部は、相互間に前記刃保持板部材を受け入れる平行一対の軸受板部を先端側に有し、当該軸受板部において前記刃保持板部材と金属製の連結ピンで連結されると共に、当該軸受板部の先端側において前記刃保持板部材と共に前記枢ピンによって前記本体の軸受板部に枢支され、
前記本体及び前記切断刃保持体における前記枢ピン及び前記連結ピンの挿通部は、それぞれ合成樹脂製のワッシャ及び合成樹脂製の鍔付き軸受ブッシュにより、
前記刃保持板部材と前記受板部材間及びこれらと前記枢ピン又は連結ピン間の金属接触が回避されるように構成されることを特徴とするチューブカッタ。
【請求項2】
前記切断刃保持体の刃保持部における前記本体のチューブ受け部との対面側の縁部には、一端が当該縁部に開放し内方に進入し鈎状に屈曲して内方で他端が終結する切欠溝が形成され、
前記本体のチューブ受部には、前記切断刃保持体の刃保持部との間が閉じた状態において前記切欠溝に対向する位置に、当該切欠溝の形状に沿う形状のガイド孔が形成され、当該ガイド孔に、一端側の解放位置と他端側のロック位置との間を移動自在にストッパ部材が挿通され、
前記ストッパ部材は、合成樹脂製の鍔付き軸受ブッシュを介して前記ガイド孔を貫通するストッパピンからなり、前記チューブ受部と前記刃保持部との間を閉じて前記切欠溝と前記ガイド孔とが対面した状態において前記軸受ブッシュと共に前記ストッパピンを前記ロック位置へ移動操作して、前記切欠溝の終端位置に配置することによりロック可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載のチューブカッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学、医療、食品、半導体関連分野において用いられる、優れた耐薬品性、耐熱性、耐候性を持つフッ素樹脂チューブのような樹脂チューブを切断するためのカッタであって、特に金属粉の混入を嫌う環境下での使用に適したチューブカッタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製のチューブあるいはパイプを切断するための手動工具として、例えば特許文献1に記載されたカッタが知られている。このパイプカッタは、先端部に側面視V形のパイプ受部を有し基部にハンドルを有する本体と、パイプ受部と協働してパイプを切断する側面視山形の切刃を備えた切断刃とを、短軸により軸着してなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のパイプカッタは、多くの金属同士の摺動部があり、切断作業中に摺動部から金属粉が飛散することがある。化学、医療、食品、半導体関連分野において用いられるフッ素樹脂チューブ等においては、切断工程における金属粉の発生は厳に回避されるべきものである。
したがって、本発明は、切断工程における金属粉の発生有効に防止することができるチューブカッタを提供することを課題する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、の説明において添付図面の符号を参照するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明のチューブカッタ100は、先端側にチューブ受部210、基部にハンドル部220を有する金属製の本体200と、先端側に切断刃600の保持部310、基部にハンドル部320を有する金属製の切断刃保持体300を具備する。本体200と切断刃保持体300は、中間の交差部で金属製の枢ピン400で枢着される。ハンドル部220,320間は、ばね500で開く方向に付勢される。チューブ受部210は、相互間に合成樹脂製のスペーサ212を介して間隔を置いて結合された平行一対の受板部材211からなる。刃保持部310は、相互間に切断刃600を挟持する2枚の刃保持板部材311からなり、基端側が受板部材211間に回動自在に保持される。ハンドル部220,320は、それぞれ先端側の平行一対の軸受板部221,321において互いに枢ピン400で枢支されると共に、金属製の連結ピン214,312でチューブ受け部210又は刃保持部310に連結される。本体200及び切断刃保持体300における枢ピン400又は連結ピン214,312の挿通部は、それぞれ合成樹脂製のワッシャ216,314及び合成樹脂製の鍔付き軸受ブッシュ215,313により、密着する金属部材間及びこれらと枢ピン400又は連結ピン214,312間の金属接触が回避される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、本体200及び切断刃保持体300における枢ピン400又は連結ピン214,312の挿通部に、それぞれ合成樹脂製のワッシャ216,314及び合成樹脂製の鍔付き軸受ブッシュ215,313が装着され、それにより、金属部材間及びこれらと枢ピン400又は連結ピン215,313間の金属接触が回避されるから、切断作業時の金属粉の発生が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1(A)】本発明のチューブカッタを示すもので、チューブ受部と刃保持部との間を閉じた状態の側面図である。
【
図1(B)】本発明のチューブカッタを示すもので、チューブ受部と刃保持部との間を開いた状態の側面図である。
【
図2】
図1(A)の状態のチューブカッタの一部を切欠した平面図である。
【
図3】
図1(A)におけるIII-III切断端面図である。
【
図4】
図1(A)におけるIV-IV切断端面図である。
【
図6】
図1のチューブカッタにおけるチューブ受け部と刃保持部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1において、チューブカッタ100は、いずれもステンレス鋼材等の金属製の本体200と切断刃保持体300とを具備する。本体200は、先端側のチューブ受部210と、基端側のハンドル部220とを有する。切断刃保持体300は、先端側の刃保持部310と、基端側のハンドル部320を有する。本体200と切断刃保持体300は、中間の交差部で金属製の枢ピン400で互いに枢着される。ハンドル部220,320間は、ばね500で開く方向に付勢される。従って、チューブ受部210と刃保持部310との間は、開く方向(
図1(B)の状態)に付勢される。ハンドル部220,320を握って、刃保持部310、チューブ受部210間を閉じることで、チューブ受部210に保持されたチューブTを切断刃600で切断する。
【0009】
図6によく示すように、本体200のチューブ受部210は、平行一対の受板部材211からなる。一対の受板部材211の相互間は、合成樹脂製のスペーサ212を介して間隔を置いてピン213で結合される。
図2,5によく示すように、受板部材211は、基端側においてハンドル部220に、いずれも金属製の枢ピン400と連結ピン214で連結される。
【0010】
図3~5によく示すように、本体200のハンドル部220は、先端側に平行一対の軸受板部221を有し、この軸受板部221において受け板部材211に、枢ピン400と連結ピン214で連結される。
【0011】
切断刃保持体300の刃保持部310は、
図5,6によく示すように、相互間に切断刃600を挟持する2枚の刃保持板部材311からなる。刃保持部310は、基端側において受け板部材211間に回動自在に受け入れられ、枢ピン400と金属製の連結ピン312で連結される。切断刃600は、2枚の刃保持板部材311間に交換可能に装着される。
【0012】
図3~5によく示すように、切断刃保持体300のハンドル部320は、先端側に平行一対の軸受板部321を有し、当該軸受板部321において金属製の連結ピン312によって刃保持板部材311に連結されると共に、枢ピン400によってこれに枢支される。
【0013】
図3,4によく示すように、枢ピン400、連結ピン214,312の挿通部は、それぞれ合成樹脂製のワッシャ411、314,216及び合成樹脂製の鍔付き軸受ブッシュ410,313,215により、密着する金属部材間及びこれらと枢ピン400又は連結ピン214,312間の金属接触が回避される。
【0014】
図1,5,6によく示すように、切断刃保持体300の刃保持部310は、本体200のチューブ受け部210との対面側の縁部に切欠溝315を具備する。切欠溝315は、一端が刃保持板部材311の縁部に開放し、内方に進入し、鈎状に屈曲して内方で他端が終結する形状である。
【0015】
一方、本体200のチューブ受部210を構成する受け板部材211には、切欠溝315の形状に沿う形状のガイド孔217が形成される。ガイド孔217は、刃保持部310とチューブ受部210の間が閉じた状態において切欠溝315に対向する位置に設けられる。ストッパ部材700がガイド孔217に挿通される。
【0016】
ストッパ部材700は、合成樹脂製の鍔付き軸受ブッシュ711、ワッシャ712を介してガイド孔217を貫通するストッパピン710からなる。ストッパピン710は、ガイド孔217を、一端側の解放位置と他端側のロック位置との間で移動自在である。
図1(A)に示すように、チューブ受部210と刃保持部310との間を閉じて、切欠溝315とガイド孔217とが対面した状態において、ストッパピン710を、ガイド孔217の一端側の解放位置(
図1(B))から他端側のロック位置(
図1(A))へ軸受ブッシュ711と共に移動させると、ストッパピン710は、切欠溝315の一端側の開放部から他端側のロック位置へ移動し、刃保持部310とチューブ受部210とが閉鎖状態でロックされ、切断刃600の刃が露出しない状態となる。ストッパ部材700は、チューブカッタ100外周縁に面していないので、不用意にロック解除状態となることがなく、安全が確保される。
【0017】
ばね500は、それぞれ鍔付きの合成樹脂製軸受ブッシュ511を介してハンドル部220,320に挿通された金属製のばね受けピン510に両端が係止される。軸受ブッシュ511により、ばね500とばね受けピン510の金属同士の接触、金属粉の発生が回避される。
【符号の説明】
【0018】
100 チューブカッタ
200 本体
210 チューブ受け部
211 受け板部材
212 スペーサ
213 ピン
214 連結ピン
215 軸受ブッシュ
216 ワッシャ
217 ガイド孔
220 ハンドル部
221 軸受板部
300 切断刃保持体
310 刃保持部
311 刃保持板部
312 連結ピン
313 軸受ブッシュ
314 ワッシャ
315 切欠溝
320 ハンドル部
321 軸受板部
400 枢ピン
410 軸受ブッシュ
411 ワッシャ
500 ばね
510 ばね受けピン
511 軸受ブッシュ
600 切断刃
700 ストッパ部材
710 ストッパピン
711 軸受ブッシュ
712 ワッシャ
T チューブ