(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】サンプル傾斜自動補正装置およびサンプル傾斜自動補正方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20230516BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H01J37/20 A
H01J37/28 B
(21)【出願番号】P 2020218903
(22)【出願日】2020-12-28
(62)【分割の表示】P 2017033157の分割
【原出願日】2017-02-24
【審査請求日】2020-12-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591012668
【氏名又は名称】株式会社ホロン
(74)【代理人】
【識別番号】100089141
【氏名又は名称】岡田 守弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 恵三
(72)【発明者】
【氏名】神力 建則
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】野村 伸雄
【審判官】金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-5243(JP,A)
【文献】特開2007-214089(JP,A)
【文献】特開昭61-214518(JP,A)
【文献】特開2000-251823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの傾斜を補正する
と共に、サンプルと対物レンズとの間の距離を一定になるように調整する装置において、
サンプル
をXY方向に移動させるXYステージと、
サンプルをそれぞれ高さ方向に移動させるステージZ1、ステージZ2およびステージZ3からなるステージZと、
前記ステージZ上に固定された前記サンプルの任意の3点以上の場所の高さを測定する高さ測定装置と、
前記高さ測定装置によって前記ステージZ上に固定された前記サンプルの高さ方向の傾斜を測定した結果に基づいて、前記サンプルを前記XYステージによって移動させたときに生じる前記サンプルの高さ方向の傾斜がゼロとなるように補正し、その後、前記距離が一定となるように、前記ステージZ1、ステージZ2およびステージZ3の高さを独立にそれぞれ補正する高さ補正手段と、を備え、
前記ステージZは、受け部を備えたサンプルホルダーを保持する支持部を備えると共に、電圧印加により収縮して高さを補正する圧電素子を有する機構を備えたものであり、
前記支持部は、前記サンプルホルダーの重力により前記受け部の穴に嵌り込むことによって、前記XYステージが移動しても位置決めを維持するように、前記サンプルホルダーを保持する、ことを特徴とするサンプル傾斜補正装置。
【請求項2】
前記高さ測定装置は、電子線ビームを細く絞って前記サンプルに照射しつつ平面走査する対物レンズの下面にレーザービームを反射する反射鏡を設けて横方向からのレーザービームを該対物レンズの軸方向の下方向に反射させて前記サンプルの任意の3点に照射し、該3点からのそれぞれの反射光をもとに高さを測定することを特徴とする請求項1記載のサンプル傾斜補正装置。
【請求項3】
サンプルの傾斜を補正する
と共に、サンプルと対物レンズとの間の距離を一定になるように調整する調整方法において、
サンプル
をXY方向に移動させるXYステージと、
サンプルをそれぞれ高さ方向に移動させるステージZ1、ステージZ2およびステージZ3からなるステージZと、
前記ステージZ上に固定された前記サンプルの任意の3点以上の場所の高さを測定する高さ測定装置と、を設け、
前記高さ測定装置によって前記ステージZ上に固定された前記サンプルの高さ方向の傾斜を測定した結果に基づいて、前記サンプルを前記XYステージによって移動させたときに生じる前記サンプルの高さ方向の傾斜がゼロとなるように補正し、その後、前記距離が一定となるように、前記ステージZ1、ステージZ2およびステージZ3の高さを独立にそれぞれ補正する高さ補正ステップを設け、
前記ステージZは、受け部を備えたサンプルホルダーを保持する支持部を設けると共に、電圧印加により収縮して高さを補正する圧電素子を有する機構を設けたものであり、
前記支持部は、前記サンプルホルダーの重力により前記受け部の穴に嵌り込むことによって、前記XYステージが移動しても位置決めを維持するように、前記サンプルホルダーを保持する、ことを特徴とするサンプル傾斜補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルの傾斜を自動的に補正するサンプル傾斜自動補正装置およびサンプル傾斜自動補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウエハーに微細パターンを露光して形成するマスクなどが正しい寸法に出来ているかどうかを調べるためには、電子顕微鏡技術が必須である。さらに、高精細画像を取得するためにはオートフォーカス技術が非常に重要である。しかしながら最先端の電子顕微鏡では収差補正装置などを搭載しているため、焦点深度が非常に浅く、ほんの0.数ミクロン高さが異なるだけで取得しようとする像がぼけてしまう。
【0003】
このような状況下、対物レンズの焦点を変化させるオートフォーカスを用いて焦点合わせを行うと、マスクによってはオートフォーカスに失敗する場合があった。オートフォーカスが失敗すると、測定が出来ないばかりか、誤った測定値がプロセス制御に提供されることになり、余計に歩留りが下がる原因などになっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子ビーム観察装置に導入されたサンプルは、マスクホルダーやXYステージの上に載せられるため、どんなに精密に製造してもミクロンオーダーで傾いている。マスクが傾いた状態のまま、XYステージにて移動して画像取得すると、移動する度にサンプルと対物レンズとの間の距離すなわちWDが異なるために、毎回時間のかかるフォーカス調整を必要とする。
【0005】
サンプルが大きく傾斜していると、測定位置によってWDの変動が大きいため、オートフォーカスを成功させるために、傾斜量の最大値に対応する広い高さ範囲をフォーカスサーチしてジャストフォーカス状態を探し出す必要が生じ、フォーカスを行うために時間が多くかかるようになる。時間を短縮するために荒くフォーカスの値を変えてフォーカスサーチすると、最近の低コントラストのフォトマスクではジャストフォーカスを見逃してしまう危険性もあるという問題があった。
【0006】
また、サンプルが大きく傾いていると、電子ビームの照射角度が変化し、測定の再現性劣化が生じるなどの問題もあった。
【0007】
また、XYステージ移動による傾き変化に比べ、マスクホルダーに設置(固定)される際の傾斜によるWD変化が大きいため、それを小さくすることが出来れば、WDの変動幅を小さくすることが出来る。一般にマスクはパレットと呼ばれる搬送装置を用いて測定装置内に搬送される。測定すべきマスクは沢山あるので、この搬送装置は脱着可能で色々なマスクを搭載できる必要がある。容易に脱着可能でかつ位置ずれが起こりにくいことが必要であるが、従来はそのような装置は無かった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、荷電粒子線装置においてサンプルの高さを精密に測定して傾きを補正すると共に、高速、精密かつ確実なオートフォーカスを実現することを目的とする。
【0009】
そのため、本発明は、サンプルの傾斜を自動的に補正するサンプル傾斜自動補正装置において、サンプルあるいはサンプルを収納したサンプルホルダーを保持すると共に、サンプルあるいはサンプルを収納したサンプルホルダーの高さ方向の傾斜を補正するステージZと、ステージZ上に固定された前記サンプルの任意の3点以上の高さを測定する高さ測定装置と、高さ測定装置によってステージZ上に固定されたサンプルの高さ方向の傾斜を測定し、高さ方向の傾斜がゼロとなるようにステージZの高さ方向の調整を行う高さ補正手段とを備える。
【0010】
この際、高さ測定装置は、電子線ビームを細く絞ってサンプルに照射しつつ平面走査する対物レンズの下面にレーザービームを反射する反射鏡を設けて横方向からのレーザビームを対物レンズの軸方向の下方向に反射させてサンプルの任意の3点に照射し、3点からのそれぞれの反射光をもとに高さを精密測定するようにしている。
【0011】
また、高さ測定装置は、電子線ビームを細く絞って前記サンプルに照射しつつ平面走査する対物レンズを用い、対物レンズを制御してサンプル上の任意の3点における自動フォーカス値をもとに高さを精密測定するようにしている。
【0012】
また、ステージZは、高さ方向の任意の3点でそれぞれ自動調整可能な機構とするようにしている。
【0013】
また、機構として、圧電素子とするようにしている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、荷電粒子線装置においてサンプルの高さを精密に測定して傾きを0.1μm以下に補正すると共に、高速、精密かつ確実なオートフォーカスを実現することが可能となる。
【0015】
また、サンプルあるいはサンプルを固定したホルダーを交換する毎に、サンプルの高さ調整が自動的に行われるため、自動フォーカスを高速かつ確実に行うことが可能となる。
【0016】
また、サンプルを自動的に水平に設置(補正)するため、オートフォーカスのサーチ範囲を減らすことが可能であり、スループットの上昇に寄与する。
【0017】
また、WDを一定に保てるので、画像回転を防止できる。
【0018】
また、サンプルが水平に設置されているので、サンプルに照射される電子ビーム角度がサンプル上のいずれの場所であっても、一定となるため、測定の再現性が向上する。
【0019】
また、半導体ウエハーの場合には、深いコンタクトホールなどが形成されているが、入射角度を一定に保てるため、ホール底に一定角度の電子ビームを照射することが出来、測定の再現性が向上する。
【0020】
また、パレット上のフォトマスクは簡単に着脱可能であり、多種サイズのマスクなどをパレットを交換するだけで装置に搬入して測定することが出来る。
【0021】
本発明のパレットを利用すると以下の利点がさらに生じる。
【0022】
搬送異常が発生してフォトマスクが搬送ロボットから脱落しても裸搬送に比べるとマスクの損傷が少ない。チャージアップ防止のため等のマスクのアースを取りやすい。パレットが板状電極として機能しマスク裏面の電場が安定する。パレットに対するマスクの位置決めは装着装置があり容易なので、パレットの位置決め精度で装置内位置決めを行うことが出来る。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の1実施例構成図を示す。これは、荷電粒子線の例として電子ビームを例に以下詳細に説明する。
【0024】
図1において、電子銃1は、電子線を発生させる公知のものであって、数百Vないし数十KVに加速された電子ビーム2を発生させるものである。
【0025】
電子ビーム2は、電子銃1で発生・加速された電子ビームである。電子ビーム2は、図示外の集束レンズで集束される。
【0026】
偏向装置3は、集束された電子ビーム2について、X、Y方向にそれぞれ偏向(通常は2段偏向)し、対物レンズ5で細く絞られた電子ビーム2がサンプル7上を平面走査(XおよびY方向に走査)する公知のものである。
【0027】
電子検出器4は、サンプル7上を細く絞った電子ビーム2で平面走査したときに放出される2次電子、反射電子などを検出・増幅し、画像(2次電子画像、反射電子画像など)を生成するためのものである。
【0028】
対物レンズ5は、電子ビーム2を細く絞ってサンプル7の表面に照射するものである。
【0029】
サンプルホルダー6は、サンプル7を固定するものである。
【0030】
ピエゾ圧電素子Z1,Z2,Z3(ステージZ)8は、XYステージ9とサンプルホルダー6との間に設置されたものであって、電圧を印加することにより収縮してサンプル7の軸方向(高さ方向)の傾きを自動調整するためのものである。
【0031】
XYステージ9は、サンプル7をXY方向に精密に移動させるものであって、図示外のレーザー干渉計でリアルタイムに精密に測定しつつ移動させるものである。
【0032】
全体制御11は、装置全体を制御するソフトウェアである。
【0033】
ジャストフォーカス判定手段12は、対物レンズ5で電子ビーム2をサンプル7の表面にフォーカスする位置をずらしてジャストフォーカス時の該対物レンズ5に流れる電流(実際は対物レンズに同軸に配置した空芯のダイナミックコイルに流れる電流)を検出する公知のものである。サンプル7上の任意の3点におけるジャストフォーカス値をそれぞれ検出し、これら3つのジャストフォーカス値からサンプル7の軸方向からの傾きをゼロとなるようにピエゾ圧電素子Z1,Z2,Z38に電圧を印加し、サンプル7の傾きを自動補正する。
【0034】
画像処理手段13は、電子検出器4で検出した信号(2次電子、反射電子を検出・増幅した信号)をもとに、画像(2次電子画像、反射電子画像など)を生成するものである。
【0035】
オートフォーカス制御手段14は、サンプル7の表面で電子ビームが自動フォーカスされるように対物レンズ(実際はダイナミックコイル)5に電流を供給し、オートフォーカスするものである。
【0036】
サンプル高さ情報処理手段15は、高さセンサー151,152によってレーザービームをサンプル7の方向に放射し、戻ってきたレーザービームをもとにサンプル7の任意の3点の高さ情報を測定するものである。
【0037】
ステージZ制御手段16は、ピエゾ圧電素子Z1、Z2、Z3(ステージZ)8に所定直流電圧を印加し、XYステージ9に搭載されているサンプルホルダー6に固定したサンプル7のX軸方向の傾きをゼロに自動補正するものである。
【0038】
XYステージ制御手段17は、XYステージ9を、図示外のレーザー干渉計をもとに精密に測長しつつ所定場所にサンプル7を移動させるものである。
【0039】
図2は、本発明の光学式高さ測定装置(下面図)を示す。
【0040】
図2において、反射鏡153,154は、導光器の1つである反射鏡であって、高さセンサーZ1、Z2からのレーザービームを反射してサンプル7に向けて反射、およびサンプル7で反射したレーザービームを高さセンサーZ1、Z2の方向に反射するものである。レーザーヘッドから放射されるレーザービームのサイズは、0.1から1mm程度の直径であり、実験では約0.6mm直径のものを用いた。このため、レーザービームをサンプル7に垂直に当てるための反射鏡153,154は、0.1ないし2mm程度の反射部分を有するものであればよく、非常に小さいものを用いることができる。これにより、XYステージ9が移動した際に機械干渉が起こることを防止できる。
【0041】
高さセンサー(Z1、Z2)151,152は、分光器からのレーザービームを反射鏡153,154に出力してサンプル7を照射し、サンプル7で反射したレーザービームを反射鏡153,154を経由して取り込んで分光器に送出するものである。高さセンサーZ1、Z2から放射されるレーザービームのサイズは、0.1から1.数mm程度の直径であり、実験では約0.6mm直径のものを用いた。尚、高さセンサーZ1、Z2から放射されるレーザービームは反射鏡153,154によって反射されてサンプル7を照射し、サンプル7で反射したレーザービームは反射鏡153,154で反射して高さセンサーZ1、Z2に入射するときの光路長が変化しないように、高さセンサーZ1、Z2、反射鏡153,154を取り付ける部分(通常は対物レンズ5あるいはその周辺の部材)は熱変化による膨張により誤差を発生するので、出来るだけ光路を短くする、あるいは熱変化による影響を受けない、あるいは熱膨張係数の小さい材料、あるいは熱膨張係数が同じ材料を採用するなどし、光路長が変化しないように工夫する。
【0042】
図示外の分光器は、高さセンサーZ1、Z2および反射鏡153,154と一体となって分光干渉型レーザー変位測定装置を構成するものである。分光干渉型レーザー変位測定装置を構成する分光器、高さセンサーZ1、Z2および反射鏡153,154のうち、高さセンサーZ1、Z2の大きさは長さ数センチメートル、幅数mmと通常非常に小型である。高さセンサーZ1、Z2の内部には光学素子が内蔵され、高さセンサーZ1、Z2の端部には外部(分光器)からレーザービームを入れるための光ファイバーが付いている。電気回路は高さセンサーZ1、Z2の内部には存在しないため、電気ノイズの発生源にはならない。利用しているレーザービームの出力もmW以下と小さいため、熱源にもならず、測定対象(例えばサンプル7)やその近傍の部材が温度の影響を受けることもない。高さセンサーZ1、Z2は非磁性金属のハウジングで覆われている。レーザービーム出射用のレンズはガラスで出来ており、通常、
図2の構造の場合には試料室の内部に配置し、プラズマ洗浄等にも耐えることが出来る。サンプル7の高さの測定速度は最高200μsにもなるため、ほぼ実時間で高さ測定を実行できる。
【0043】
また、図示外の分光器、高さセンサーZ1、Z2および反射鏡153,154による高さの測定精度は1nmの測定分解能を有し、測定再現性も10nm以上が得られる。本実施例では2つの高さセンサーを利用している。2つの高さセンサーは対物レンズ5の中心に対して本実施例では対称配置される。計算によって補正できるので必ずしも対称に配置する必要はない。1つでもよい。
【0044】
また、
図2において、
・対物レンズ5の中心におけるサンプル7の高さ=Ze
・高さセンサーZ1の反射鏡153におけるサンプル7の高さ=Z1
・高さセンサーZ2の反射鏡154におけるサンプル7の高さ=Z2
と定義すると、
・対物レンズの中心におけるサンプル7の高さZe=(Z1+Z2)/2と計算できる(高さセンサーZ1、Z2を光軸に軸対称に配置した場合)。
【0045】
また、
図2において、本発明に係る分光器、高さセンサーZ1、Z2および反射鏡153,154によるサンプル7の高さ測定の動作および特徴について説明する。
【0046】
(1)高さセンサーZ1から出射したレーザー光線は、サンプル7に対して真横に出射する。このレーザービームは90度の反射鏡153により、進行方向を90度曲げられ、サンプル7の面にほぼ垂直に照射する。
【0047】
(2)サンプル7の面で反射したレーザー光線は再び同じ経路を戻り、高さセンサーZ1を経由し、更に光ファイバーで分光器に到達する。
【0048】
(3)分光器で、放出したレーザービーム(広波長帯域のレーザー光線)とサンプル7で反射したレーザービームとを干渉させ、距離情報(変位データ)を作り出す。この方式では絶対値が測定できる。これをもとにフォーカス制御を行う。
【0049】
(4)本発明のサンプル7の高さの測定方法は、サンプル7に対して入射角度がほぼ垂直であるので、サンプル7の傾斜に対して測定値の変動(誤差)がきわめて少ないので、従来サンプル7の傾斜補正も必要なく、使い方が容易である。また、サンプル7の表面の模様に対しても影響を受けにくい。
【0050】
(5)更に、高さセンサーから外部に光ファイバーで導かれたレーザー光線は外部にある分光器に取り込まれ、距離(サンプル7の高さ)に変換する。この分光器は発熱するが、通常、真空の試料室の内部に無いので、測定の誤差原因に成らない。分光器で測定されたデータは、TCP/IPあるいはUSB等の通信手段によってパソコンに導かれ、測定点座標との対応関係の保存などの所望の処理を行う。
【0051】
(6)
図2に示す2つの高さセンサーZ1、Z2、反射鏡153,154は、電子ビーム2のサンプル7上の照射位置とは異なった場所の高さを測定するが、サンプル7は極めて平坦なので、例えば、2つの高さセンサーZ1、Z2が対物レンズ5の中心に対して同じ距離に配置した場合、両者の出力値の平均値が電子ビーム2のサンプル7上の照射点の当該サンプルの高さを表す(推定する)。このような計算をパソコンで行うことにより、電子ビーム2のサンプル7上の照射点位置の試料の高さを直接測らなくても精密かつリアルタイムに求めることができる。
【0052】
(7)また、イマージョンタイプの対物レンズ5のポールピース先端とサンプル7との間隔は通常、数mmと狭いため、その位置に試料の高さセンサーを配置することは事実上不可能であるが、本発明では、対物レンズ5のポールピース先端から離れた位置に反射鏡153,154を配置でき、0.1ないし2mm程度のサイズの導光器(反射鏡、プリズム、光ファイバーなど)を任意の場所に容易に配置し、試料の高さを高精度かつリアルタイムに測定できる。
【0053】
【0054】
(1)本発明を利用すると、電子ビームオートフォーカスを行う前に、ステージZ1、Z2、Z3によって傾斜補正して十分に電子ビーム合焦点状態に近い状態を作り上げることが出来るため、電子ビームオートフォーカスがジャストフォーカス値を探す範囲を従来の約10分の1程度以下にすることが可能で、その分だけ高速かつ高精度にオートフォーカスが出来る。
【0055】
(2)サンプル7の傾斜補正を行った場合、ステージ移動に伴うWD変化の主要因が無くなるため、XYステージ9であらゆる方向に移動してもWDの変化は非常に小さく出来る。この場合、電子ビームフォーカスを行う際に大きく対物レンズ5の強さを変える必要が無いため、画像回転が無く、高精度、高再現性の測定が実現できる。
【0056】
特に、
図2に示すように、サンプル7であるフォトマスクの水平設置が確保できると、1つの高さセンサーで測定しても、2つの高さセンサーで距離測定して平均値を取っても、差が非常に小さくなる。従って、2つ使用していた高さセンサーを1つにすることが可能となり、シンプルかつ、コストダウンが出来る。
【0057】
(3)光学式高さセンサーが従来の梃子式とは異なり非常にコンパクトなので光軸調整が不要で実装、メインテナンスが容易である。特に、メインテナンスの際にチャンバーの蓋を開けても、光学系に全く影響が無い。サンプル7のシム等をもちいた機械的な傾斜補正が不要で、電子ビーム照射点での測定を必要としないので、対物レンズ5のポールピース先端とサンプル79の表面の狭い空間に高さセンサーを押し込める必要が無い。従来のレーザー光線梃子方式では、電子ビーム照射箇所に光が当たり、導電率や電子の蓄積が変化して測定再現性に影響を与えるため、レーザーを測定中は切るなどの措置が取られていたが、本方式では、電子ビーム照射点に光を当てないので、そのような措置は不要である。
【0058】
(4)センサーヘッドはパッシブなので、センサー動作時に電磁波や熱等を発生しないため、測定点の温度変化を与えず、測定が非常に安定化出来る。材料がカラスと非磁性金属なため、真空の汚染を避けることが出来る。可動部が無く、長寿命。センサーと測定点の距離が短いため外乱の影響が小さい。
【0059】
(5)実時間で対物レンズ5のポールピースと試料9の表面の距離が測定できるので、外部環境変化で試料9の高さが変化した場合にも、その変化をリアルタイム測定することが可能で、電子ビームオートフォーカスが成功しやすく出来る。
【0060】
(6)2つの光学式高さセンサーを同時に実時間測定できない場合でも、予め作成したフォーカスマップを活用することで、ほぼ実時間で測定しているのと同じような高さ測定を行うことが出来る。
【0061】
(7)電子ビーム画像だけではオートフォーカス困難な試料9でも、最初に光学式高さセンサーで高さを測定し、合焦点状態に近い状態にまで持っていくことが出来るので、非常に細かく電子ビームフォーカスパラメータを振ることが出来る。これにより、ジャストフォーカスがより正確になり、立体物やエッジコントラストが低い測定対象における電子ビーム合焦点状態を得やすくなる。
【0062】
(8)3点支持のZステージ22を利用した場合には、試料9が水平になり、かつ試料9の高さを一定にすることが可能となり、電子ビーム照射を垂直にすることが出来るようになる。これにより、より正確な電子ビーム画像を取得することが可能となる。
【0063】
(9)電子ビーム照射角度が斜めになった場合、3軸ステージを制御することで、垂直照射にすることが出来る。
【0064】
(10) Z軸ステージの可動範囲で、サンプルを積極的に傾けて任意の角度に電子ビーム照射角度を制御することが出来る。
【0065】
【0066】
図3において、ステージZ1、Z2、Z3は、フォトマスクを支える独立の3点の支点の例を示す。これら3点のステージZ1、Z2,Z3の各支点はフォトマスクを支持しやすいように、正三角形や二等辺三角形など三脚(三点支持)をなすように配置されている。各テージはピエゾ圧電素子およびリニア位置制御を行うための内蔵容量センサーなどから成っており、コンピュータからの電気信号によりnmのオーダーの正確さで高さ方向に移動するようにフィードバック制御が行われている。ピエゾ圧電素子は発生力が大きくかつ、非常に大きな剛性をもつため、横方向変位が小さく、振動に強い。これらの性質により、真っ直ぐに(Z軸方向に真っ直ぐに)フォトマスクを移動することが出来る。
【0067】
ここで、ステージZ1は、支持部が円錐からなり、これの受け部に円錐穴となり、自由度が0である(回転は可能である、
図7を用いて後述する)。
【0068】
ステージZ2は、支持部が円錐からなり、これの受け部は長円錐穴となり、自由度が1である(長円錐の方向にわずか移動可能である、
図7を用いて後述する)。
【0069】
ステージZ3は、支持部が平坦からなり、これの受け部は平坦であり、自由が2である(平面上にX、Y方向に自動に移動可能、
図7を用いて後述する)。
【0070】
図4は、本発明のステージ詳細外観図を示す。これは、既述した
図3のステージZ1、Z2、Z3の支持部を取り出して分かり易く
図4の(a),(b),(c)にそれぞれ示したものである。
【0071】
図4の(a)支持部Z1(円錐)は、
図3のステージZ1の支持部を分かり易く抽出したものである。
【0072】
図4の(b)支持部Z2(長円錐)は、
図3のステージZ2の支持部を分かり易く抽出したものである。
【0073】
図4の(c)支持部Z3(平坦)は、
図3のステージZ3の支持部を分かり易く抽出したものである。
【0074】
図4の(d)各支持部内の構造例を示す。各支持部内にピエゾ圧電素子8を内臓および容量センサを内蔵し、ピエゾ圧電素子に電圧を印加などし、Z方向の距離を自動調整するものである。
【0075】
図5は、本発明のフォトマスク固定機構例(表面)を示す。これは、フォトマスクを搬送するために利用されるパレットである。パレットは一般に金属で出来ており、導電性を持っている。アルミやチタン等が使用できる。特殊な場合は、セラミックスや石英を用いることも出来る。その場合は表面にめっきなどを行い導電性を持たせる。パレットには図示のように、3方向にフォトマスクを機械的に押さえつけて装着するための回転固定機構が付いており、フォトマスクとパレットの位置関係を固定している。
【0076】
図6は、本発明のフォトマスク固定機構例(裏面)を示す。これは、パレットの裏面を示しており、
図5の突起が挿入される穴とその位置を示している。後述する
図7に示すように、円錐形状の突起の1つは正確に雄雌の関係にある円錐状の穴(ステージZ1)に合致する。パレットには重力が作用しているため、円錐状のピン(ステージZ1の支持部)と穴(円錐状の受け部)の接触による摩擦は非常に大きくなり、一旦穴に嵌ったピンは容易に外れない(重力落とし込み方法)。従って、通常XYステージ9の加減速により発生するサブG以下の加速度が生じても外れないように設計されている。これにより、XYステージ移動を伴って、急な加減速動作が発生してもずれることなく正確な位置決めが維持される。
【0077】
1Gよりも大きな横加速度に耐えるためには、より大きな摩擦係数をもつ材料を突起およびその接触面に用いることが望ましい。あるいは深い穴と高い突起にするなどの方法がある。パレットの重量を増すことも1つの方法である。
【0078】
一方、もう1つの円錐状の突起(ステージZ2の円錐状の突起)は、1方向は雄雌関係でぴったり隙間なく接するが、もう1方向にすきまが有る長穴(ステージZ2の受け部の長円錐穴)に挿入される。この穴には先の円錐穴方向にすきまがあるため、ピンの位置と穴の位置関係の僅かな寸法誤差を許して自由に移動できる(自由度=1)。しかしながら、それとは垂直方向に対しては、すきまが無いので、円錐状のピンはきっちりと合わさり、正確に位置決めが行われる。この2つの穴(円錐穴、長円錐穴の2つの穴)によってサブミクロンオーダーの位置決めがされる。3つ目の突起はパレットを単にパレットの荷重を受けて水平に維持(ステージZ3の平坦部で維持)するために使用される。
【0079】
以上のようにパレットの位置は機械部品によって行われるため、ピンやパレットを構成する材料には熱膨張係数の小さな材料を用いた方が、装置の設置環境に依存なく正確なXXYZ方向の位置決めが成される。
【0080】
図7は、本発明のフォトマスク固定機構説明図を示す。
【0081】
図7の(a)は、円錐ー円錐穴(ステージZ1)を設けた例を示す。これは、図示の下側にステージZ1として円錐状の突起(ピン)を設け、上側に円錐穴を受け部として設けた例を示す。この例では、下側の突起(ピン)が受け側の円錐穴に重力ではまり込み、自由度0となり、固定される。
【0082】
図7の(b)は、円錐ー長円錐穴(ステージZ2)を設けた例を示す。これは、図示の下側にステージZ2として円錐状の突起(ピン)を設け、上側に長円錐穴を受け部として設けた例を示す。この例では、下側の突起(ピン)が受け側の長円錐穴に重力ではまり込むが、円錐の縁の方向は自由度0で、長円錐の方向はわずかの距離だけ自由度1であり、1方向にわずかに移動可能となる(
図6の説明参照)。
【0083】
図7の(c)は、平坦(ステージZ3)を設けた例を示す。これは、図示の下側にステージZ3として平坦状の突起(ピン)を設け、上側に平坦な受け部として設けた例を示す。この例では、下側の平坦部が受け側の平坦部に重力で押されているのみで、いわば静摩擦で固定されている状態である。自由度2であるが、静摩擦力で移動はしなく固定される(できるだけ静摩擦力の大きい材料で作成し固定することが望ましい)。
【0084】
図8は、本発明のフォトマスク傾斜測定フローチャートを示す。
【0085】
図8において、S1は、ステージZ(Z1,Z2,Z3)をニュートラルの高さに初期化する。
【0086】
S2は、マスク上の定められた座標にステージを移動する。これは、フォトマスクの出来るだけ中心部になるように左右上下対称に3点以上のマスク上の定められた座標にステージを順次移動し、該S2を繰り返す。例えば後述する
図9のフォトマスク71に示すように、(x0、y0)、(x1.y0)、(x2、y0)・・・(xn,yn)というように9点以上にフォトマスク71を図示外のXYステージ9を移動して位置づける(位置は図示外のレーザー干渉計で精密測定しつつ位置づける)。
【0087】
S3は、マスク高さセンサーで高さを測定し記録する。これは、S2でXYステージ9を用いてフォトマスク71上の所定位置に位置づけた状態で、高さセンサーで各位置のサンプル7の高さをそれぞれ測定して記録、例えば後述する
図10に示すように、座標(X、Y)に対応づけて高さ(Z)を記録する。
【0088】
S4は、終わりか判別する。これは、S3で、各位置のサンプル7の高さの測定が終わりか判別する。YESの場合には、S5に進む。NOの場合には、S2以降を繰り返す。
【0089】
S5は、フォトマスク傾斜近似関数を算出する。これは、S3で記録したフォトマスク71(サンプル7)の各高さ位置Zを通る近似関数のパラメータを算出する。フォトマスク71の場合には良い平面なので、低い次数の近似式で精度良く近似できる。
【0090】
具体的にいえば、S3で記録した3点以上の位置(x,y)とそのときの試料の高さZのデータをもとに、近似関数(例えばZ=aX+bY+c)のパラメータを算出、例えば後述する
図11に示すようにフォトマスク傾斜の近似曲線のパラメータのフィッティングを行う。
【0091】
S6は、ステージZ1、Z2、Z3に与える補正量を計算して記録する。
【0092】
以上によって、フォトマスク71上の複数位置の高さを高さセンサーでその高さZをそれぞれ実測し(
図10)、これらをもとにフォトマスク傾斜近似曲線のパラメータのフィッティングを行い、フォトマスク傾斜マップ(
図11)を作成することが可能となる。フォトマスク傾斜近似曲線にステージZ1、Z2、Z3における位置座標を入力することで、
図12に示すような各ステージZ1、Z2、Z3の位置におけるフォトマスクの傾斜量を算出することが出来る。
【0093】
尚、ステージZ1,Z2,Z3の位置がフォトマスク71の外周よりも十分内側にある場合は、ステージZ1、Z2、Z3の各位置の高さを直接測定することが出来る。このようにすれば、近似計算しないで、直接補正量を決めてもよい。
【0094】
図9は、本発明のマスク傾斜量測定点の例を示す。これは、15cmx15cmの矩形のフォトマスク71について、ステージZ1,Z2.Z3が図示のように外周近辺にあり、黒丸の9点について高さをそれぞれ測定する場合の例を模式的に示す。これは9点の高さをそれぞれ測定して記録したものを
図10に示す。
【0095】
図10は、本発明の各測定点の基準点に対する高さZ(
図9)を示す。これは、既述した
図9の黒丸の9点について、高さをそれぞれ測定して記録したものである。
【0096】
図11は、本発明の各ステージ位置の傾斜量を示す。これは、既述した
図10で測定した9点の位置における各高さより、ステージZ1、Z2、Z3における傾斜量(高さの差ΔZ)をそれぞれ算出して記録したものである。このステージZ1、Z2、Z3における傾斜量(高さの差ΔZ)を補正(0となるように補正)するように
図1のピエゾ圧電素子Z1、Z2、Z3にそれぞれ対応する所定の電圧を印加することにより、サンプル7(パレット)を交換する毎に自動的に高さ測定して自動補正し、傾斜量を0にすることが可能となる。
【0097】
図12は、本発明の測定点を通過する近似曲線(直線近似)例を示す。近似は、フォトマスクが通常平坦であるので1次直線Z=aX+bYを用い、これのパラメータa,bを、既述した
図11の傾斜量(高さの差)を代入して算出する。
【0098】
図12の(a)は補正前のフォトマスクの傾斜を模式的に示し、
図12の(b)は補正後のフォトマスクの傾斜を模式的に示す。補正後は、図示のように、傾斜量が補正され、ほぼ水平に自動補正されている様子が見える。
【0099】
次に、
図13から
図17を用いて、ステージZ1、Z2、Z3における高さをそれぞれ実測して自動補正する例を詳細に説明する。
【0100】
図13は、本発明のフォトマスク傾斜測定フローチャートを示す。
【0101】
図13において、S11は、ステージZ(Z1,Z2,Z3)をニュートラルの高さに初期化する。
【0102】
S12は、各ステージZ1,Z2,Z3の座標にステージを移動する。これは、各ステージZ1、Z2、Z3の真上にフォトマスクが来るようにステージを順次移動する。例えば後述する
図14のフォトマスク71に示すように、ステージZ1、Z2、Z3の3点に該フォトマスク71を図示外のXYステージ9を移動して位置づける(位置は図示外のレーザー干渉計で精密測定しつつ位置づける)。
【0103】
S13は、マスク高さセンサーで高さを測定し記録する。これは、S12でXYステージ9を用いてフォトマスク71上のステージZ1、Z2、Z3に位置づけた状態で、高さセンサーで各位置のサンプル7の高さをそれぞれ測定して記録、例えば後述する
図15に示すように、ステージZ1、Z2、Z3に対応づけて高さ(Z)を記録する。
【0104】
S14は、終わりか判別する。これは、S13で、各位置のサンプル7の高さの測定が終わりか判別する。YESの場合には、S15に進む。NOの場合には、S12以降を繰り返す。
【0105】
S15は、ステージZ1、Z2、Z3に与える補正量を計算して記録する。
【0106】
以上によって、フォトマスク71上のステージZ1、Z2、Z3における高さZをそれぞれ実測し(
図15)、これらをもとにステージZ1、Z2、Z3における補正量を算出できる(
図16)。
【0107】
図14は、本発明のマスク傾斜量測定点の例を示す。これは、15cmx15cmの矩形のフォトマスク71について、ステージZ1,Z2.Z3が図示のように外周近辺にあり、この3点について高さをそれぞれ測定する場合の例を模式的に示す。
【0108】
図15は、本発明のステージZ1、Z2、Z3における高さZ(
図14)を示す。これは、既述した
図14の3について、高さをそれぞれ測定して記録したものである。
【0109】
図16は、本発明の各ステージ位置の補正量を示す。これは、既述した
図15で測定した3点のステージZ1、Z2、Z3における補正量(高さの差ΔZ)をそれぞれ算出して記録したものである。
【0110】
図17は、本発明のオフセット(35ミクロン)を加えた補正量例を示す。ここで、
図16のステージZ1、Z2、Z3における補正量を満たして水平(傾斜がゼロ)にする解の組み合わせは無限にあるので、
図1のピエゾ圧電素子の中点の値である35ミクロンをオフセットとし、該17図に示すようにステージZ1、Z2、Z3の補正量を図示のように決定する。これにより、初期状態でほぼ中点に位置で水平にステージZ1、Z2.Z3が自動補正されることとなる。
【0111】
図18は、本発明のマスク傾斜補正つきWD制御CD測定フローチャートを示す。これは、
図1から
図17で既述したステージZ1、Z2.Z3の高さを自動補正してサンプル7を水平に自動調整し、サンプル7であるマスクのパターンの側長を行う場合の全体のフローチャートを示す。
【0112】
ここで、
(1)
図1から
図7を用いて既述したように、本発明の装置(光学式高さセンサー)は電子ビーム照射とは無関係にほぼ連続的にサンプル7の高さ測定を光学的に実行できる。そのため、測定対象のサンプル7を真空チャンバーに搬入した瞬間から、高さ測定を実行できる。フォーカスマップは、対物レンズポールピース先端から測定対象までの距離(いわゆる試料の高さ)を測定対象観察位置(X、Y)の関数として表現したものである。対物レンズ5は天板に固定されているため、天板が大きく気圧変動して動かない限り、ほぼ同じ高さに位置する。あるいは装置の温度が一定に保たれていれば、長さが変化しないので同じ高さに保持される。
(2) 一方、測定対象のサンプル7は、サンプルホルダーに設置される際に、必ずしも水平に置かれるとは限らないため、サンプル7が傾斜している可能性があるが、一旦固定されるとほぼ一定の値に保持される性質を持っている。また、サンプル7を移動するためのXYステージ9には、ヨーイング、ピッチング、ローリング等の特性があり、ステージ移動に伴って、サンプル7の高さがミクロン単位で変化する可能性があるが、精度のよいXYステージ9は非常に高い繰り返し再現性を持つため、一種の固有値として扱うことが出来る。つまり、ステージ位置変化に対するサンプル7の高さの変化は、上記2つの値の合成で精度良く計算することが出来る。本発明では、一番大きな成分であるパレットの初期傾斜を出来るだけ0になるようにステージZ1、Z2、Z3を用いて調節した後、ステージ固有の高さ変位を補正してWDを一定にする技術を開示している。以下説明する。
【0113】
図18において、S21は、前述したような方法を用いて、フォトマスクの傾斜を補正し、水平にし、ステージZ1、Z2、Z3が適切な可動範囲を得られるように、ステージZ1、Z2、Z3それぞれに傾斜補正値とオフセットを設定する。
【0114】
S22は、ステージを移動する。これは、ステージZ1、Z2、Z3にそれぞれ加えてステージZ1、Z2、Z3を所望の高さに移動する。
【0115】
S23は、XYステージでサンプル7のCD測定点に移動する。
【0116】
S24は、CD測定点におけるWD値が一定に成るように、ステージZ1、Z2、Z3に制御電圧を印加する(傾斜補正値+オフセット値+WD制御用電圧)。隣接する測定点の場合には、高さは殆ど変わらないので、前の値を保持しておき、次に加える電圧との差を小さくしておくと、静定速度が速くなり高さ制御の高安定性が得られる。
【0117】
S25は、オートフォーカスする。これは、S24の状態で、対物レンズ5(空芯のダイナミックコイル)に電流を流してフォーカスを変化してジャストフォーカスの点の焦点電流を供給する。
【0118】
S26は、CD測定する。ジャストフォーカスされた画像を取得し、所定のパターンの幅などを測長する。
【0119】
S27は、終わりか判別する。YESの場合には終了する。NOの場合には、S24に戻り繰り返す。
【0120】
図18は、本発明のマスク傾斜補正つきWD制御CD測定フローチャートを示す。これは、
図1から
図17で既述したステージZ1、Z2.Z3の高さを自動補正してサンプル7を水平に自動調整し、サンプル7であるマスクのパターンの測長を行う場合の全体のフローチャートを示す。
【0121】
ここで、
(1)
図1から
図7を用いて既述したように、本発明の装置(光学式高さセンサー)は電子ビーム照射とは無関係にほぼ連続的にサンプル7の高さ測定を光学的に実行できる。そのため、測定対象のサンプル7を真空チャンバーに搬入した瞬間から、高さ測定を実行できる。フォーカスマップは、対物レンズポールピース先端から測定対象までの距離(いわゆる試料の高さ)を測定対象観察位置(X、Y)の関数として表現したものである。対物レンズ5は天板に固定されているため、天板が大きく気圧変動して動かない限り、ほぼ同じ高さに位置する。あるいは装置の温度が一定に保たれていれば、長さが変化しないので同じ高さに保持される。
(2) 一方、測定対象のサンプル7は、サンプルホルダーに設置される際に、必ずしも水平に置かれるとは限らないため、サンプル7が傾斜している可能性があるが、一旦固定されるとほぼ一定の値に保持される性質を持っている。また、サンプル7を移動するためのXYステージ9には、ヨーイング、ピッチング、ローリング等の特性があり、ステージ移動に伴って、サンプル7の高さがミクロン単位で変化する可能性があるが、精度のよいXYステージ9は非常に高い繰り返し再現性を持つため、一種の固有値として扱うことが出来る。つまり、ステージ位置変化に対するサンプル7の高さの変化は、上記2つの値の合成で精度良く計算することが出来る。本発明では、一番大きな成分であるパレットの初期傾斜を出来るだけ0になるようにステージZ1、Z2、Z3を用いて調節した後、ステージ固有の高さ変位を補正してWDを一定にする技術を開示している。以下説明する。
【0122】
図18において、S21は、前述したような方法を用いて、フォトマスクの傾斜を補正し、水平にし、ステージZ1、Z2、Z3が適切な可動範囲を得られるように、ステージZ1、Z2、Z3それぞれに傾斜補正値とオフセットを設定する。
【0123】
S22は、ステージを移動する。これは、ステージZ1、Z2、Z3にそれぞれ加えてステージZ1、Z2、Z3を所望の高さに移動する。
【0124】
S23は、XYステージでサンプル7のCD測定点に移動する。
【0125】
S24は、CD測定点におけるWD値が一定に成るように、ステージZ1、Z2、Z3に制御電圧を印加する(傾斜補正値+オフセット値+WD制御用電圧)。隣接する測定点の場合には、高さは殆ど変わらないので、前の値を保持しておき、次に加える電圧との差を小さくしておくと、静定速度が速くなり高さ制御の高安定性が得られる。
【0126】
S25は、オートフォーカスする。これは、S24の状態で、対物レンズ5(空芯のダイナミックコイル)に電流を流してフォーカスを変化してジャストフォーカスの点の焦点電流を供給する。
【0127】
S26は、CD測定する。ジャストフォーカスされた画像を取得し、所定のパターンの幅などを測長する。
【0128】
S27は、終わりか判別する。YESの場合には終了する。NOの場合には、S24に戻り繰り返す。
【0129】
以上のようにステージZ1、Z2、Z3の高さ補正を自動的に行った後、XYステージで測定点に移動してWD補正、オートフォーカスしてパターンを自動測長などすることが可能となる。この際、パレットを交換しても自動的にステージZ1、Z2、Z3の高さ補正を行い水平に自動補正できるため、常に水平な状態のパレット(フォトマスク)上の測定点に迅速かつ正確に移動して高速測長が可能となった。
【0130】
図19は、本発明のマスク傾斜測定フローチャートを示す。これは、サンプル7の高さを実際に測定する場合のサンプル7の高さ測定フローチャートである。ここで、高さセンサーは1つでもフォトマスクの高さを測定することが出来るが、2つ用いると、電子ビーム照射している箇所の高さを求めることが出来る。以下詳細に説明する。
【0131】
図19において、S31は、測定座標(Xn,Yn)にサンプルを移動する。これは、サンプル7(フォトマスク)を、指示された測定点(Xn,Yn)にXYステージ9で移動する(レーザー干渉計で精密測定しつつ移動する)。
【0132】
S32は、測定点が2つのセンサーで測定できる領域内か判別する。これは、
図1に示す2つの高さセンサー(Z1、Z2)を用いた場合に、これら2つの高さセンサー151,152の両者が測定領域内のときはS32のYESとなり、S33に進む。NOの場合には、2つの高さセンサーの1つ、あるいは2つともに測定領域内でない(測定領域外)と判明したので、S32のNOとなり、S34に進む。
【0133】
S33は、S32のYESで、2つの高さセンサー151,152が測定領域内と判明したので、2つのセンサーの平均値を高さと決定する。
【0134】
S34は、S32のNOで、2つの高さセンサーの1つ、あるいは2つが測定領域内でないと判明したので、更に、Z1の高さOKか判別する。これは、2つの高さセンサー)の1つあるいは2つが測定領域内でないと判明したので、更に、Z1の高さがOK(測定領域内)かを判定する。YESの場合には、OKの高さセンサーの高さZ1と、フォーカスマップ上でのNGの高さセンサの位置(X+L,Y)の高さZ(X+L,Y)との平均値の高さ(Z1+Z(X+L、Y))/2を算出する。一方、S34のNOの場合には、S36に進む。
【0135】
S36は、S34のNOで、Z1の高さNGと判明したので、更に、Z2の高さOKか判別する。これは、2つの高さセンサー(Z1,Z2)のうちZ1のセンサーが測定領域内でないと判明したので、更に、Z2の高さがOK(測定領域内)かを判定する。YESの場合には、OKの高さセンサ(Z2)の高さZ2と、フォーカスマップ上でのNGの高さセンサ(Z1)の位置(X-L,Y)の高さZ(X-L,Y)との平均値の高さ(Z2+Z(X-L、Y))/2を算出する。一方、S36のNOの場合には、Z1,Z2の両高さセンサーがNGと判明したので、マップ値(X,Y)の高さZと同一と算出する。
【0136】
以上によって、指示された測定点にサンプル7(フォトマスク)を移動して位置決めした状態で高さセンサ(Z1,Z2)を用いて高さを測定し、両者で検出できたときは平均値、1つのみでできたとき1つは測定した試料の高さとできない方はマップ上の高さとの平均値、2つともに測定できないときはマップ上の高さから算出することにより、リアルタイムかつ高精度に指示されたフォトマスク上の位置の高さを測定することが可能となる。
【0137】
図20は、本発明のステージZを用いたオートフォーカスフローチャートを示す。これは、ステージZ(Z1,Z2,Z3)を用いてサンプル7の高さZ0をオートフォーカスするフローチャートである。
【0138】
図20において、S41は、ステージZをフォーカス近傍に移動する。
【0139】
S42は、ステージZを所定量移動させる。
【0140】
S43は、フォーカス評価用画像を取得する。これらS41からS43は、例えば
図1のXYステージ9に搭載したピエゾ圧電素子Z1、Z2、Z3の上にサンプルホルダー6に固定したサンプル7の表面の高さがフォーカス(合焦点)する近傍のZ方向に位置に、当該ピエゾ圧電素子Z1,Z2,Z3(ステージZ)に所定電圧を印加して移動させ(S1)、この状態で更に所定量だけ移動させたときの画像(2次電子画像であって、フォーカス評価用の画像)を順次取得する(S42、S43)。Z方向の移動は,高さセンサーを用いてリアルタイムに測定しつつピエゾ圧電素子Z1、Z2、Z3に所定電圧を印加して精密に移動させる。以下同様。
【0141】
S44は、終わりか判別する。フォーカス評価用画像の取得が終了か判別する。YESの場合には、S45に進む。NOの場合にはS42以降を繰り返す。
【0142】
S45は、合焦点距離を推定する。これは、S43で取得したステージを合号焦点位置(Z方向の位置)の前後の画像からZ方向の距離を横軸、縦軸をそのときの合焦点の度合いを表す関数を作成し、最も焦点のあっているZ方向の距離を関数から算出し、これを合焦点距離と推定する。
【0143】
S46は、ステージを合焦点位置に移動する。これは、S45で推定した合焦点位置(Z方向の距離)にステージZ1、Z2、Z3で移動させる。
【0144】
以上によって、ステージZを用いてサンプル7の測定点(パターン)におけるZ方向の距離を自動調整(オートフォーカス)することにより、WDを常に一定に保持し、倍率を常に一定に保持したり、電子ビームの照射方向を常にサンプル7の表面に垂直に照射したりなどすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【
図2】本発明の光学式高さ測定装置(下面図)である。
【
図5】本発明のフォトマスク固定機構図(表面)である。
【
図6】本発明のフォトマスク固定機構図(裏面)である。
【
図7】本発明のフォトマスク固定機構説明図である。
【
図8】本発明のフォトマスク傾斜測定フローチャートである。
【
図10】本発明の測定点の高さZ例(
図9)である。
【
図12】本発明の測定点を通過する近似局面(直線近似)例である。
【
図13】本発明のフォトマスク傾斜測定フローチャートである。
【
図17】本発明のオフセットを加えた補正量例である。
【
図18】本発明のフォトマスク傾斜補正つきWD制御CD測定フローチャートである。
【
図19】本発明のマスク傾斜測定フローチャートである。
【
図20】本発明のステージを用いたオートフォーカスフローチャートである。
【符号の説明】
【0146】
1:電子銃
2:電子ビーム
3:偏向装置
4:電子検出器
5:対物レンズ
6:サンプルホルダー
7:サンプル(試料)
8:ピエゾ圧電素子
9:XYステージ
11:全体制御
12:ジャストフォーカス判定手段
13:画像処理手段
14:オートフォーカス制御手段
15:サンプル高さ情報処理手段
16:ステージZ制御手段
17:XYステージ制御手段
151,152:センサー(高さセンサー)
153,154:反射鏡
155,156:光ファイバ
Z1、Z2、Z3:ステージZ(高さステージ)