(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】薬剤送達装置用の動力ユニット
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20230516BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
A61M5/20 510
A61M5/315 550R
(21)【出願番号】P 2020527891
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2018081887
(87)【国際公開番号】W WO2019097076
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-10-22
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シグルザルソン, ヌコヴィ ステイン
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン, ニコライ ミカエル
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/055492(WO,A1)
【文献】特表2017-520371(JP,A)
【文献】特表2016-517731(JP,A)
【文献】特表2013-519471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置用の動力ユニット(1)であって、
‐基準軸に沿って延び、かつ中空体(31)および第一の係合構造(35)を備える第一のインターフェース部材(30)と、
‐少なくとも部分的に前記中空体(31)を通って延び、かつスカート(12)を有する管状構造(11)と、前記第一の係合構造(35)と解放可能に係合するよう構成された第二の係合構造(14)と、を備える第二のインターフェース部材(10)と、
‐前記第一のインターフェース部材(30)に取り付けられる第一の端部分(23)と、前記第二のインターフェース部材(10)に取り付けられる第二の端部分(22)と、を備えるねじりばね(20)であって、前記第一のインターフェース部材(30)と前記第二のインターフェース部材(10)との間の相対回転運動を誘発するように予め変形されているねじりばね(20)と、を備え、
前記第一のインターフェース部材(30)および前記第二のインターフェース部材(10)が、前記第一の係合構造(35)および前記第二の係合構造(14)が係合して、前記第一のインターフェース部材(30)と前記第二のインターフェース部材(10)との間の前記相対回転運動を防止する第一の相対軸方向位置から、前記第一の係合構造(35)および前記第二の係合構造(14)が係脱された第二の相対軸方向位置への前記基準軸に沿った相対運動を行うよう構成され、
前記第一のインターフェース部材(30)および前記第二のインターフェース部材(10)の前記第一の相対軸方向位置において、前記ねじりばね(20)が、前記中空体(31)および前記スカート(12)によって画定されるユーザーがアクセスできない空間(39)内に収容される、動力ユニット。
【請求項2】
前記第一のインターフェース部材(30)および前記第二のインターフェース部材(10)の前記第一の相対軸方向位置において、前記第一の係合構造(35)および前記第二の係合構造(14)がさらに係合して、前記第一のインターフェース部材(30)と前記第二のインターフェース部材(10)との間
の相対軸方向運動を妨げる、請求項1に記載の動力ユニット。
【請求項3】
前記第一のインターフェース部材(30)および前記第二のインターフェース部材(10)の前記第一の相対軸方向位置において、前記第一の係合構造(35)および前記第二の係合構造(14)が解放可能なスナップ嵌め接続を介して係合される、請求項2に記載の動力ユニット。
【請求項4】
前記第二の端部分(22)が、前記スカート(12)と前記スカート(12)によって覆われる前記管状構造(11)の一部分との間に位置付けられ、かつ前記第二の係合構造(14)が前記スカート(12)の一部を形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の動力ユニット。
【請求項5】
前記第一の係合構造(
35)が、前記中空体(31)の外部表面部分上に配設され、かつ前記薬剤送達装置の受容部上の嵌合構造と回転的に相互係止係合するよう構成される軸方向に延びるスプライン(32)を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の動力ユニット。
【請求項6】
前記中空体(31)が、前記受容部の横断方向内部表面に当接するように適合された横断方向端面(37)を備え、それによって前記横断方向内部表面が、前記受容部に対する前記第一のインターフェース部材(30)の軸方向移動を停止させる部分を画定する、請求項
5に記載の動力ユニット。
【請求項7】
ハウジング(50)と、前記ハウジング(50)内に配設された請求項1~6のいずれか一項に記載の動力ユニット(1)とを備える薬剤送達装置。
【請求項8】
前記ハウジング(50)と螺合されたピストンロッド(60)をさらに備え、前記中空体(31)が前記ハウジング(50)に対して回転的に係止され、前記管状構造(11)が前記ピストンロッド(60)の少なくとも一部分を囲み、かつ少なくとも用量排出中は前記ピストンロッド(60)に対して回転的に係止または制約され、かつ前記ハウジング(50)に対して回転的に解放可能に係止される、請求項7に記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
前記管状構造(11)が、前記中空体(31)の遠位で前記ピストンロッド(60)に対して回転的に係止され、かつ前記中空体(31)の近位で前記ハウジング(50)に対して回転的に解放可能に係止される、請求項8に記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
前記ハウジング(50)が、半径方向内向きに方向付けられた軸方向に延びる表面上にハウジング係合構造(53)を備え、前記第一の係合構造(
35)が、前記中空体(31)の外部表面部分上に配設された軸方向に延びるスプライン(32)を備え、かつ前記軸方向に延びるスプライン(32)が前記ハウジング係合構造(53)と係合する、請求項8または9に記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
前記ハウジング(50)が、前記ハウジング(50)内の前記第一のインターフェース部材(30)に対して軸方向に停止させる部分およびその取付け位置を画定する横断方向内部表面(57)をさらに備え、前記第一のインターフェース部材(30)が前記取付け位置にある時、前記第一のインターフェース部材(30)および前記第二のインターフェース部材(10)が、前記ハウジング(50)に対する前記第二のインターフェース部材(10)の軸方向移動によって、前記第一の相対軸方向位置から前記第二の相対軸方向位置への前記相対運動を受けるように適合される、請求項10に記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
前記ハウジング(50)と螺合し、かつ前記ピストンロッド(60)と平行に配設された第二のピストンロッド(160)をさらに備え、前記第二のインターフェース部材(10)が中間構造(80)と回転可能に結合され、前記中間構造(80)が前記ハウジング(50)に対して回転的に解放可能に係止され、さらに前記第二のピストンロッド(160)と回転可能に結合されている、請求項
8~11のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項13】
薬剤送達装置用のねじりばね(20)を予め変形する方法であって、
(i)前記薬剤送達装置のハウジング(50)に挿入する前に、基準軸に沿って延びる第一のインターフェース部材(30)の中空体(31)の内部表面に前記ねじりばね(20)の第一の端部分(23)を取り付ける工程であって、前記第一のインターフェース部材(30)が第一の係合構造(35)を備える、工程と、
(ii)少なくとも部分的に前記中空体(31)を通って延びるように適合された管状構造(11)と、前記管状構造
(11)上のスカート(12)と、第二の係合構造(14)と、を備える第二のインターフェース部材(10)に、前記ねじりばね(20)の第二の端部分(22)を取り付ける工程と、
(iii)前記第一のインターフェース部材(30)と前記第二のインターフェース部材(10)との間の前記基準軸を中心とした相対回転運動を誘発し、それによって前記ねじりばね(20)をねじれた状態にする工程と、
(iv)前記第一のインターフェース部材(30)と前記第二のインターフェース部材(10)とを、前記第一の係合構造(35)と前記第二の係合構造(14)とが係合する相対軸方向位置に配し、それによって前記ねじりばね(20)を前記ねじれた状態に固定する工程とを含み、
前記第一のインターフェース部材(30)および前記第二のインターフェース部材(10)の前記相対軸方向位置において、前記ねじりばね(20)が、前記中空体(31)および前記スカート(12)によって画定されるユーザーがアクセスできない空間内に収容される、方法。
【請求項14】
工程(iii)が、前記第一の係合構造(35)と前記第二の係合構造(14)とが前記基準軸に沿って相互に向き合うように、前記第一のインターフェース部材(30)と前記第二のインターフェース部材(10)の角度を整合させることを含み、かつ工程(iv)が、相対軸方向運動の収束によってのみ、前記第一のインターフェース部材(30)および第二のインターフェース部材(10)を前記相対軸方向位置に配することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
薬剤送達装置ハウジング(50)内に動力ユニット(1)を取り付ける方法であって、前記動力ユニット(1)が、第一の係合構造(35)を備える第一のインターフェース部材(30)と、第二の係合構造(14)を備える第二のインターフェース部材(10)と、前記第一のインターフェース部材(30)に取り付けられる第一の端部分(23)および前記第二のインターフェース部材(10)に取り付けられる第二の端部分(22)を備えるねじりばね(20)であって、前記第一のインターフェース部材(30)と前記第二のインターフェース部材(10)との間の相対回転運動を誘発するトルクを加えるために予め変形される、ねじりばね(20)とを備え、前記方法が、
(i)前記第一の係合構造(35)と前記第二の係合構造(14)とが係合して、前記第一のインターフェース部材(30)と前記第二のインターフェース部材(10)との間の前記相対回転運動を防止する第一の状態にある間に、前記第一のインターフェース部材(30)が軸方向停止部に接するまで、前記動力ユニット(1)を基準軸に沿って前記薬剤送達装置ハウジング(50)の中へと挿入する工程と、
(ii)前記第二のインターフェース部材(10)を前記基準軸に沿って前記薬剤送達装置ハウジング(50)のさらに中へと押し込むことによって、前記第一のインターフェース部材(30)と前記第二のインターフェース部材(10)との間の前記基準軸に沿った相対運動を導入し、それによって前記動力ユニット(1)を、前記第一の係合構造(35)および前記第二の係合構造(14)とが係脱している第二の状態にする工程と、
(iii)前記動力ユニット(1)が前記第二の状態に達する前に、前記薬剤送達装置ハウジング(50)に対して前記第二のインターフェース
部材(10)を回転的に解放可能に係止する、または制限する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、薬剤送達装置に関し、より具体的には、ばね動力を利用して用量排出機構を作動させる自動的なこうした装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動薬剤送達装置は、薬剤の排出の時に放出可能な統合型のエネルギー源を有することによって特徴付けられる。ばねは比較的安価であるため、多くの自動注射装置はエネルギー源としてばねを採用する。しかしながら、用量排出機構の摩擦によって、ばねはそのサイズに関わらず、予想用量全体を送達するのに十分なエネルギーが確実に利用可能になるように、ばねは注射装置の製造中に予め変形されなければならない。これは、用量設定機構の「ゼロ」位置であっても、すなわち、用量がまだ選択されていない、または用意できていない場合でも、ばねが一定の力またはトルクを加えるように、ばねが変形されていることを意味する。
【0003】
ばねを予め変形させるプロセスは極めて敏感であり、しばしば部品の廃棄をもたらす。一つの主な問題は、装置内のありとあらゆるその他の関連する構成要素、すなわちばねによって駆動される構成要素、またはばねの解放によって影響を受ける構成要素のそれぞれの位置を維持しながら、ばねを変形することである。予め変形させることは、典型的には、装置ハウジングにばねの一方の端を固定し、そしてその後ハウジングに対してばねのもう一方の端を移動させ、変位した端を所定の位置に係止することによって実行される。これには、視覚的アクセスが制限されているハウジングの小さい内部空間で実行される工程を含む、いくつかのやや複雑な組み立て工程が必要である。
【0004】
用量排出のために、一部の装置は、ねじりばねを利用して駆動トルクを提供し、装置ハウジングと螺合したピストンロッドの回転を生じさせる。ばね端には、通常、隣接する部品に取り付けるためのフック、脚部、または類似の手段が提供される。こうした取り付け機能は費用を上昇させ、実際、ねじりばねの総費用の最大40%を占める。さらに、取り付け機能は、組立装置とだけでなくその他の部品とも絡まる傾向があり、組立ラインで望ましくないダウンタイムをしばしば生じる。
【0005】
国際公開第2014/170177号(Novo Nordisk A/S)は、フック付き端部なしで製造されたねじりばね、および医療用注射装置にねじりばねを固定する方法を開示している。こうした解決策を実施することにより、自動注射装置の総費用を減少させることができる。しかしながら、この解決策は、ばねを予め変形させるプロセスにおける視覚的アクセスの欠如に関する問題を顕著には改善しない。加えて、注射装置がプライミングの空打ちの必要性を回避するよう設計されている場合、用量排出機構のゼロ点調整を実行して、ピストンとピストンロッドとの間の適正な初期の整列を確立する必要がある。これは、ばねがすでに所定の位置にある場合に取得することが困難なピストンロッドへの物理的アクセスを必要とする。一方、ピストンロッドの位置に影響を与えずにばねを取り付けることは困難であり、先行するゼロ点調整を実質的に無効にする。
【発明の概要】
【0006】
先行技術の少なくとも一つの欠点を除去する、もしくは減少すること、または先行技術の解決に対する有用な代替案を提供することが、本発明の目的である。
【0007】
特に、薬剤送達装置にねじりばねを取り付けるための、費用効果が高く、かつ実施が簡単な解決策を提供することが、本発明の目的である。
【0008】
また、装置組立プロセスの複雑さを減少させる、薬剤送達装置にねじりばねを取り付けるための解決策を提供することも、本発明の目的である。
【0009】
装置組立プロセスにおいて、ねじりばねの安全かつ信頼できる取り扱いを可能にする、こうした解決策を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0010】
ねじりばねに基づく駆動配設を利用した、費用効果の高い薬剤送達装置を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0011】
二重貯蔵部タイプの薬物送達装置のために、費用効果の高いねじりばねに基づく駆動配設を提供することが、本発明のなおさらなる目的である。
【0012】
本発明の開示では、上記の目的のうちの一つ以上に対処し、かつ/または、以下の文章から明らかである目的に対処する、態様および実施形態が記載される。
【0013】
本発明の原理を具体化する解決策は、第一の係合構造を有する第一のインターフェース部材と、第二の係合構造を持つ第二のインターフェース部材と、第一のインターフェース部材および第二のインターフェース部材に取り付けられ、かつ予め変形されて、二つの間に回転付勢を提供するねじりばねとを備える部分組立品を提供する。第一のインターフェース部材および第二のインターフェース部材は、第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材との間の相対回転運動を防止するように、第一の係合構造および第二の係合構造が係合されている第一の相対軸方向位置から、第一の係合構造および第二の係合構造が係脱しており、それによって第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材との間の相対回転運動を許容する第二の相対軸方向位置への、一般軸または基準軸に沿った相対運動を可能にするように配設される。従って、本質的に、薬剤送達装置のハウジング内に取り付け可能であり、かつ例えば、用量排出機構に動力を与えるために解放可能である、動力ユニットが提供される。実際、動力ユニットは、用量排出機構の一部となってもよい。
【0014】
部分組立品は、ねじりばねが装置ハウジングの外部で予め変形され、その後、予め変形された状態にある間に、ハウジング内に取り付けられることを可能にするという点で、著しく改善された装置組立プロセスを提供する。従って予め変形させることは、ハウジング外のプロセスへと移行され、例えば、国際公開第2014/170177号に記載の方法を使用して、ねじりばねの第一の端部分を第一のインターフェース部材に回転的に固定し、例えば、国際公開第2014/170177号に記載の方法を使用して、ねじりばねの第二の端部分を第二のインターフェース部材に回転的に固定し、第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材との間に相対回転運動を誘発し、第一のインターフェース部材および第二のインターフェース部材を第一の相対角度位置から第二の相対角度位置に持ってきて、それによってねじりばねを回転的に変形させ、最後に、第一のインターフェース部材および第二のインターフェース部材を第一の相対角度位置に持ってくることにより、第一のインターフェース部材および第二のインターフェース部材を第二の相対角度位置に固定することによって、すべての工程に適切な視覚的アクセスを伴って実行されうる。
【0015】
予め変形されたばねを含む部分組立品全体は、ピストンロッドに接触することなく取り付けられうるので、部分組立品は、注射装置内にねじりばねを設置する前にゼロ点調整を終了することをさらに可能にする。例えば、第一のインターフェース部材および第二のインターフェース部材が両方とも中空であり、ねじりばねがそれらの間に配設されている場合、部分組立品をピストンロッドの上に単に摺動させてもよい。ゼロ点調整は、用量排出機構の各起動がピストンロッドの同一の軸方向前進をもたらし、従って空打ちが有意な薬剤容積の損失をもたらしうる固定用量注射装置に特に関連する。
【0016】
本発明の第一の態様では、請求項1に記載の解決策が提供される。
【0017】
ゆえに、薬剤送達装置ハウジングの中へと挿入するための動力ユニットの形態での部分組立品が提供される。動力ユニットは、a)基準軸に沿って延び、かつ中空体および第一の係合構造を備える第一のインターフェース部材、b)例えば、ピストンロッドを収容するように適合された内腔を有し、少なくとも部分的に中空体を通って延びる管状構造と、管状構造上に形成された、または管状構造に取り付けられたスカートと、第一の係合構造との解放可能な係合のために構成された第二の係合構造とを備える第二のインターフェース部材、およびc)例えば、中空体内に保持された第一のインターフェース部材に取り付けられる第一の端部分と、例えば、スカートの下に保持された第二のインターフェース部材に取り付けられる第二の端部分とを備えるねじりばねを備える。ねじりばねは予め変形されており、従って第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材との間に、基準軸を中心とした相対回転運動を誘発するためのエネルギーを含有している。
【0018】
第一のインターフェース部材および第二のインターフェース部材は、第一の相対軸位置から第二の相対軸方向位置への基準軸に沿った相対運動のために、すなわち相対運動が可能なように構成されている。先述の第一の相対軸方向位置では、第一の係合構造および第二の係合構造は係合しており、それによって第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材との間の相対回転運動を防止し、従ってねじりばねは変形されたままである。先述の第二の相対軸方向位置では、第一の係合構造および第二の係合構造は係脱されており、従ってねじりばねがその保存されたエネルギーを解放するのをもはや防止しない。
【0019】
さらに、第一のインターフェース部材および第二のインターフェース部材の第一の相対軸方向位置では、ねじりばねは、中空体およびスカートによって画定されたユーザーがアクセスできない空間内に収容されている。それによってねじりばねが外部接触から保護され、これは組立中の不具合のリスクを大幅に低下させる。特に、ねじりばねは、中空体およびスカートによって覆われてもよく、それによって第一の係合構造および第二の係合構造が係合されている時、第一のインターフェース部材および第二のインターフェース部材の外部から完全に遮蔽されてもよい。
【0020】
第二の係合構造はスカートの一部を形成してもよく、それによって、ねじりばねの固定具として、および第一のインターフェース部材との相互作用のための結合部品としての両方の役割を果たす。
【0021】
本発明の例示的な実施形態では、ねじりばねは、第二のインターフェース部材のセクションの周りに基準軸に沿って延びる。これは、特にコンパクトな動力ユニットの構造を提供する。
【0022】
第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材との間の相対回転運動の防止に加えて、第一の係合構造および第二の係合構造は、第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材との間の相対軸方向運動を妨げるようにさらに構成されうる。これは、第一の係合構造および第二の係合構造が係合している時、第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材との間の相対軸方向運動は、加えられた力が閾値を超えた場合にのみ生じることができることを意味する。
【0023】
閾値は、原則として所定の値または任意の値であってもよいが、製造業者は、例えば、第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材との間に相対軸方向運動を誘発するために、注射装置の組立中に加えることができる特定の力が必要であるように、第一の係合構造および第二の係合構造を構成するように選んでもよい。閾値は、保管および取り扱い中に安定した動力ユニットを確保する、すなわち、動力ユニットが振動、揺さぶり、またはその他の限定的な衝撃を受けた場合に、予め変形されたねじりばねが早期に解放されないことを確実にする大きさのものであってもよい。
【0024】
第一の係合構造および第二の係合構造は、解放可能なスナップ嵌め接続を介して係合するように構成されてもよい。例えば、第一の係合構造は、第一の横断方向寸法を有するヘッド部分を備えるオスコネクタを備えてもよく、また第二の係合構造は、撓んでいない時の横断方向寸法が第一の横断寸法より小さい、横断方向に撓むことができる入口セクションを備えるメスコネクタと、第一の横断方向寸法と少なくとも同じほど大きい第二の横断方向寸法を有し、その中へのヘッド部分の受容および解放可能な保持を可能にする収容セクションとを備えてもよい。
【0025】
従って、動力ユニットは、第一のインターフェース部材および第二のインターフェース部材のうちの一つへと単純に軸方向力を加えることによって、ハウジング内で解放されてもよく、ハウジング内部への視覚的アクセスを必要としない。
【0026】
第一の係合構造は、中空体の外部表面部分上に配設された軸方向に延びるスプラインを備えてもよく、軸方向に消費するスプラインは、例えば、ハウジングの内部表面などの薬剤送達装置の受容部上の相手側の係合構造と係合するように構成されてもよい。特に、軸方向に延びるスプラインは、受容部分の回転的な相互係止係合のために構成されてもよい。軸方向に延びるスプラインとしての単一の幾何学的形状は、それによって第一のインターフェース部材を第二のインターフェース部材に結合すること、および第一のインターフェース部材を例えばハウジングに連結することの両方の働きを果たし、動力ユニットの設計を単純化する場合がある。
【0027】
中空体は、受容部の横断方向内部表面に当接するように適合された横断方向端面を備えてもよく、それによって横断方向内部表面は、受容部(例えば、ハウジング)に対して第一のインターフェース部材用の軸方向停止部を画定する。
【0028】
本発明の第二の態様では、ハウジングと、ハウジング内に配設された上述のような動力ユニットとを備える薬剤注射装置などの薬剤送達装置が提供されている。
【0029】
薬剤送達装置は、ハウジングと螺合されたピストンロッドをさらに備えてもよく、また第一のインターフェース部材はハウジングに対して回転的に係止されてもよく、一方で第二のインターフェース部材はピストンロッドの少なくとも一部分を囲み、そして第一のインターフェース部材を通って延びてもよい。さらに、第二のインターフェース部材は、少なくとも用量排出中は、ピストンロッドに対して回転的に係止されるかまたは回転的に制約されてもよく、またハウジングに対して回転的に解放可能に係止されてもよい。
【0030】
本発明の一実施形態では、第二のインターフェース部材は、中空体の遠位にあるピストンロッドに対して回転的に係止または回転的に制約され、かつ中空体の近位にあるハウジングに対して回転的に解放可能に係止される管状構造を備える。
【0031】
本発明の一実施形態では、第二のインターフェース部材は、回転可能なピストンロッドガイド部材を介してピストンロッドに対して回転的に係止もしくは回転的に制約されている、またはそのように適合されている駆動チューブである。
【0032】
本発明の一実施形態では、第二のインターフェース部材は、解放可能に保持されたギアホイールを介してハウジングに対して回転的に解放可能に係止された歯付き外部表面部分を有する駆動チューブである。
【0033】
ハウジングは、半径方向内向きの表面および半径方向内向きの表面上のハウジング係合構造を有する軸方向に延びる本体を備えてもよい。第一の係合構造は、中空体の外部表面部分上に軸方向に延びるスプラインを備えてもよく、軸方向に延びるスプラインはハウジング係合構造と係合されてもよく、それによってハウジングに対して第一のインターフェース部材を回転的に係止する。
【0034】
ハウジングは、ハウジング内の第一のインターフェース部材の軸方向停止部および取り付け位置を画定する横断方向内部表面をさらに備えてもよく、第一のインターフェース部材および第二のインターフェース部材は、第一のインターフェース部材が取り付けられた位置にある時、ハウジングに対する第二のインターフェース部材の軸方向移動による、第一の相対軸方向位置から第二の相対軸方向位置への相対運動を受けるように適合されてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態では、ねじりばねの第二の端部分は、スカートとスカートによって覆われた管状構造の一部分との間に配設される。さらに、第二の係合構造は、スカートの一部を形成し、かつスカートおよび中空体が一緒にねじりばねを覆うように、第一のインターフェース部材および第二のインターフェース部材の第一の相対軸方向位置において第一の係合構造と係合する。
【0036】
薬剤送達装置は、ハウジングと螺合し、かつピストンロッドと平行に配設された第二のピストンロッドをさらに備えてもよく、第二のインターフェース部材は、中間構造と回転的に結合されてもよく、その中間構造は、ハウジングに対して回転的に解放可能に係止され、かつさらに第二のピストンロッドと回転的に結合される。
【0037】
本発明の一実施形態では、中間構造は、第二のインターフェース部材と平行に配設された第二の駆動チューブを介して第二のピストンロッドと回転的に結合されたギアホイールを備える。第二の駆動チューブは、第二の回転可能なピストンロッドガイド部材を介して第二のピストンロッドに対して回転的に係止または回転的に制約されてもよい。
【0038】
第三の態様では、本発明は、薬剤送達装置用のねじりばねを予め変形する方法を提供する。方法は、(i)薬剤送達装置のハウジング内への挿入前に、ねじりばねの第一の端を、基準軸に沿って延びる第一のインターフェース部材の中空体の内部表面に取り付ける工程であって、第一のインターフェース部材が第一の係合構造を備える、工程と、(ii)工程(i)の前に、工程(i)と同時に、または工程(i)の後に、少なくとも部分的に中空体を通って延びるように適合された管状構造と、管状構造上のスカートと、第二の係合構造とを備える第二のインターフェース部材に、ねじりばねの第二の端を取り付ける工程と、(iii)第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材との間に基準軸を中心とした相対回転運動を誘発し、それによってねじりばねをねじれた状態にする工程と、(iv)第一のインターフェース部材および第二のインターフェース部材を、第一の係合構造と第二の係合構造とが係合されている相対軸方向位置に持ってきて、それによってねじりばねをねじれた状態に固定する工程とを含み、第一のインターフェース部材および第二のインターフェース部材の相対軸方向位置において、ねじりばねは中空体およびスカートによって画定されるユーザーがアクセスできない空間内に収容される。
【0039】
従ってこの方法は、部分組立品ユニットとして、保護された様式で、薬剤送達装置の組み立て前に組み立てられ、かつ別個に保存することができる動力ユニットを提供する。
【0040】
工程(iii)は、第一の係合構造および第二の係合構造が基準軸に沿って互いに面するように、第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材とを角度的に整列させることを含んでもよく、工程(iv)は従って、相対軸方向運動を収束させることのみによって、第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材を相対軸方向位置に持ってくることを含んでもよい。これは、組立プロセスにおいて特に単純な移動パターンを提供する。
【0041】
第二の係合構造がスカートの一部を形成し、かつスナップ嵌め結合のオス部品またはメス部品を備え、また第一の係合構造が嵌合するメス部品またはオス部品を備える場合、工程(iv)は、第一のインターフェース部材および第二のインターフェース部材が解放可能なスナップ嵌め接続によって回転的に相互係止されているという結果をもたらす。
【0042】
第四の態様では、本発明は、薬剤送達装置のハウジング内に動力ユニットを取り付ける方法を提供し、動力ユニットは第一の係合構造を有する第一のインターフェース部材と、第二の係合構造を有する第二のインターフェース部材と、第一のインターフェース部材に取り付けられる第一の端部分および第二のインターフェース部材に取り付けられる第二の端部分を備える予め変形されたねじりばねであって、第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材との間に相対回転運動を誘発するために、予め変形されてトルクを加えるねじりばねと、を備え、方法は、(i)第一の係合構造と第二の係合構造とを係合して、第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材との相対回転運動を防止する第一の状態にある間に、動力ユニットを、第一のインターフェース部材が軸方向停止部と接するまで基準軸に沿ってハウジングの中へと挿入する、工程と、(ii)第二のインターフェース部材を基準軸に沿ってさらにハウジングの中に押し込むことにより、第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材との間に基準軸に沿った相対運動を導入し、それによって、動力ユニットを、第一の係合構造と第二の係合構造とが係脱した第二の状態にする工程と、(iii)動力ユニットが第二の状態に達する前に、ハウジングに対して第二のインターフェース部材を回転的に解放可能に係止または制約する工程とを含む。
【0043】
薬剤送達装置は、ハウジングと螺合したピストンロッドを備えてもよく、工程(i)は、動力ユニットの一部分をピストンロッドの一部分に沿って、または一部分の外側に取り付ける(例えば、摺動する)ことによって実行されてもよい。
【0044】
工程(ii)は、第二のインターフェース部材を、例えば、第二のインターフェース部材が第二の軸方向停止部に接するまで、ハウジングに対して平行移動で、および/またはらせん状に、所定の軸方向距離または所定の間隔内に位置する軸方向距離だけ移動することによって実行されてもよい。
【0045】
工程(iii)は、動力ユニットがハウジング内に完全に取り付けられ、かつ第一の係合構造と第二の係合構造とが係脱している時、ねじりばねをその予め変形された状態のままにすること、すなわち、動力ユニットが第二の状態になった結果として、ねじりばねが自動的に巻き戻らないことを確実にする。
【0046】
本発明の第五の態様では、ハウジングと、ハウジングと螺合した第一のピストンロッドと、ハウジングと螺合した第二のピストンロッドと、第一のピストンロッドの少なくとも一部分の周りに配設された本発明の第一の態様に関連して上述した動力ユニットであって、第一のインターフェース部材がハウジングに対して回転的に係止され、かつ第二のインターフェース部材が第一のピストンロッドに対して回転的に係止もしくは制約される、または回転的に係止もしくは制約されるように構成されている動力ユニットと、第二のインターフェース部材および第二のピストンロッドを回転的に結合する結合機構と、を備える薬剤送達装置が提供される。
【0047】
薬剤送達装置は、第一の医療物質を持つ第一の貯蔵部および第二の医療物質を持つ第二の貯蔵部を、保持する、または受容および保持するように適合される薬剤貯蔵部保持部分をさらに備えてもよい。第一の貯蔵部は、第一のピストン、それぞれ第一の貫通可能な隔壁によって密封された第一のカートリッジを備えてもよく、第二の貯蔵部は、第二の貫通可能な隔壁、それぞれ第二のピストンによって密封された第二のカートリッジを備えてもよい。
【0048】
第一のピストンロッドおよび第二のピストンロッドは、基準軸に平行なハウジング軸に沿って互いに平行に配設されてもよい。その場合、薬剤貯蔵部保持部分は、第一のピストンが第一のピストンロッドと軸方向に整列し、第二のピストンが第二のピストンロッドと軸方向に整列するように、第一のピストンロッドおよび第二のピストンロッドの遠位で相応して平行な向きで、第一の貯蔵部および第二の貯蔵部を保持するように適合されてもよい。
【0049】
第一のピストンロッドは、第一のピッチを有する第一のねじを備えてもよく、第二のピストンロッドは、第二のピッチを有する第二のねじを備えてもよく、第二のピッチは第一のピッチとは異なる。その場合、第一のピストンロッドおよび第二のピストンロッドが、動力ユニットおよび結合機構によって提供される二つの間の回転的な結合の結果として一緒に回転する場合、第二のピストンロッドの軸方向移動は、第一のピストンロッドの軸方向移動とは異なる。それゆえに、各用量排出システムのゼロ点調整は、個別に、もう一方とは独立して行われなければならず、各ピストンロッドの個別の操作を必要とする。一つの動力ユニットが、両方のピストンロッドを駆動するために動力を提供すること、および動力ユニットを、そのゼロ点調整の完了後に第一のピストンロッドの外側に取り付けることができるという事実は、いずれのねじりばねも組立中に任意のピストンロッドへのアクセスを妨げない、すなわち、各ピストンロッドが、軸方向に整列されたピストンとの初期の当接へと自由に前進することができることを暗示する。
【0050】
本発明の第六の態様では、薬剤送達装置のハウジング内に動力ユニットを取り付ける方法が提供され、薬剤送達装置ハウジングは、第一のピストンロッドと螺合した第一のナット部材と、第二のピストンロッドと螺合した、または螺合するように構成された第二のナット部材とを備え、動力ユニットは第一の係合構造を有する第一のインターフェース部材と、第二の係合構造を有する第二のインターフェース部材と、第一のインターフェース部材に取り付けられる第一の端部分および第二のインターフェース部材に取り付けられる第二の端部分を備える予め変形されたねじりばねであって、基準軸を中心として、第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材との間の相対回転運動を誘発するために、予め変形されてトルクを加える、ねじりばね、とを備え、方法は、(i)第一の係合構造と第二の係合構造とを係合して、第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材との相対回転運動を防止する動力ユニットの第一の状態で、動力ユニットの一部分を、第一のインターフェース部材が軸方向停止部と接するまで、第一ピストンロッドの一部分に沿ってまたはその上を摺動させる工程と、(ii)第二のインターフェース部材を薬剤送達装置ハウジングへと遠位に押し込むことにより、第一のインターフェース部材と第二のインターフェース部材との間に基準軸に沿った相対運動を導入し、それによって、動力ユニットを、第一の係合構造と第二の係合構造とが係脱している第二の状態にする工程と、(iii)動力ユニットが第二の状態に達する前に、薬剤送達装置ハウジングに対して第二のインターフェース部材を回転的に解放可能に係止または制約する工程とを含む。
【0051】
第二のピストンロッドは、薬剤送達装置ハウジングへの動力ユニットの挿入の前に、挿入と同時に、または挿入の後に、薬剤送達装置ハウジングの中へと挿入され、かつ第二のナット部材と螺合されてもよい。
【0052】
この状況では、ねじりばねが「ユーザーがアクセスできない空間に収容される」という時、これはねじりばねが少なくとも実質的に完全に覆われ、それによってユーザーによって操作不能であることを意味する。しかしながら、ねじりばねが置かれた空間が気密密封されていることを暗示するものではない。
【0053】
さらに、この状況では、第一の実体が第二の実体に対して回転的に「係止される」時、これは、第一の実体と第二の実体との間の相対回転運動が起こりえない二方向性の回転的な相互係止を暗示するのに対し、第一の実体が第二の実体に対して回転的に「制約される」時、これは、例えば、ラチェット機構のように、第一の実体と第二の実体との間の相対回転運動が一方向でのみ許容される一方向性の回転的な相互係止を暗示する。例えば、第二のインターフェース部材がハウジングに対して回転的に制約される場合、ハウジングに対して一方向での第二のインターフェース部材の回転が防止される。具体的な事例では、この一方向は、予め変形されたねじりばねの巻き戻り中の第二のばね端の回転方向に対応する。最後に、二つの実体が回転的に「結合」されている時、これは単に一方の回転がもう一方の何らかの回転を起こすことを暗示する。
【0054】
いかなる疑念も回避するために、この状況では、用語「医療物質」は、状態の治療、予防、または診断に使用される媒体、すなわち、身体内で治療または代謝効果を有する媒体を指す。更に、本明細書で使用される場合、用語「遠位」および「近位」は、薬剤送達デバイスまたは針ユニットにおける位置または薬剤送達装置または針ユニットに沿ったところもしくは方向を示し、「遠位」は薬剤出口端を指し、また「近位」は薬剤出口端の反対側の端を指す。
【0055】
本明細書において、特定の態様または特定の実施形態(例えば、「一態様」、「第一の態様」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」など)への言及は、それぞれの態様または実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または、特性が、少なくとも本発明のその一態様または実施形態に含まれるか、または固有のものであるが、必ずしも本発明のすべての態様または実施形態の中に含まれるわけではなく、それらすべての固有のものでもないことを表す。しかしながら、本発明に関連して説明した様々な特徴、構造および/もしくは特性の任意の組み合わせが、本明細書に明示的に記載されていない限り、または明確に文脈上矛盾しない限り、本発明に包含されることが強調される。
【0056】
本文中のありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、など)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにすることを意図したものであり、別段の主張がされていない限り、本発明の範囲を制限をもたらすものではない。さらに、本明細書中のいかなる言語または言い回しも、特許請求されていないいずれかの要素が本発明の実施に必須であると示しているとは解釈されない。
【0057】
以下において、本発明を、図面を参照しながらさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態による動力ユニットの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、係合状態の動力ユニットの側面図である。
【
図3】
図3は、係脱状態の動力ユニットの側面図である。
【
図4】
図4は、薬剤送達装置ハウジングに取り付け中の動力ユニットの長手方向断面図である。
【
図5】
図5は、薬剤送達装置ハウジングへの挿入後の係合状態にある動力ユニットの近位部分の長手方向断面図である。
【
図6】
図6は、薬剤送達装置ハウジング中の係脱状態にある動力ユニットの近位部分の長手方向断面図である。
【
図7】
図7は、用量排出中の中間状態にある動力ユニットを含む薬剤送達装置の近位部分の長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図面において、同様の構造体は、主として同様の参照番号で識別される。
【0060】
「上」および「下」、「左」および「右」、「水平」および「垂直」、「時計回り」および「反時計回り」などの相対的な表現が以下で使用される時/場合、これらは添付の図を参照しており、必ずしも実際の使用状況を参照するものではない。図示された図は、概略表現であり、そのため、異なる構造の構成および相対的寸法は例示的な目的のみを果たすことを意図している。
【0061】
図1は、動力ユニット1の形態の本発明の実施形態による部分組立品の分解斜視図である。動力ユニット1は、エネルギーを供給して用量排出行為を実行するために、例えば、注射装置などの薬剤送達装置で使用するために構成される。本例示的実施形態では、動力ユニット1は、駆動チューブ10、ばね基部30、および駆動チューブ10とばね基部30との間に作用して回転付勢を提供するように配設されたねじりばね20を備える。
【0062】
駆動チューブ10は、近位端部分に円周方向に波型セクション16が提供された管状本体11と、遠位端部分の外部歯13とを有する。スカート12は、外部歯13の近くの管状本体11上に形成され、それぞれが受容空間15を画定する一対の捕捉構造14(一つのみが見える)を持つ。
【0063】
ばね基部30は、その外部表面上に形成された一対の軸方向に延びるスプライン32を有する管状ばね基部本体31を有する。結合ヘッド35が、各スプライン32の遠位端に提供される。結合ヘッド35は、受容空間15と対応する形状を有する。その遠位端に、ばね基部本体31はさらに、横断方向端面37を備える軸方向突出部36を有する。
【0064】
ねじりばね20は、遠位ばね端22と近位ばね端23との間に延びるばね本体21を有するコイルばねである。遠位ばね端22は、スカート12によって受容され、かつ回転可能に固定されるように構成されており、一方で近位ばね端23は、ばね基部本体31によって受容され、かつ回転可能に固定されるように構成される。
【0065】
図2は、係合状態にある動力ユニット1の側面図であり、結合ヘッド35は受容空間15を占める。ねじりばね20は、ばね基部30に対して駆動チューブ10の回転付勢を提供するために、予めねじられ、かつスプライン32と捕捉構造14との間の係合によって確立された回転的な相互係止接続によって保持される。ねじりばね20を予めねじる過程において導入される遠位ばね端22と近位ばね端23との特定の相対角変位は、二つの平行投与エンジンにエネルギーを提供するために必要な場合、二重カートリッジ注射装置における動力ユニット1の意図された例示的使用に従って予め決められる。
【0066】
図3に示されるように、捕捉構造14は、受容空間15の画定に寄与する内向きに傾斜した一対のフィンガー18を有し、かつこれは弾性的に支持されており、それによって結合ヘッド35とのスナップ嵌め係合を提供する。フィンガー18は、ばね基部30と駆動チューブ10とを分離するために、所定の軸方向解放力が必要とされるように寸法設定される。
【0067】
図3では、動力ユニット1は、結合ヘッド35が受容空間15から引き出されて、遠位ばね端22を周囲に露出させている係脱状態にある。以下でより詳細に説明するように、係脱状態では、ねじりばね20は解放され、ばね基部30および駆動チューブ10がその他の相互作用によって相対回転するのを妨げられない限り、駆動チューブ10とばね基部30との間に相対回転運動を導入する。
【0068】
図4は、二重カートリッジ注射装置のハウジング50内に取り付ける直前の動力ユニット1を示す長手方向断面図である。この特定の断面図では、投与エンジンの一つは隠されている。ハウジング50は、ユーザー操作可能な端部分である近位端部分51と、薬剤カートリッジ(図示せず)を受容して保持するように構成された遠位端部分52との間に延びる。一体型ナット部材54は、遠位端部分52の近くに形成され、ねじ付ピストンロッド60と係合するように構成されてる。ピストンロッド60は、非円形の断面を有し、ピストンロッドドライバ70のピストンロッドインターフェース部分72と幾何学的形状によって回転的に相互係止される。従って、ピストンロッドドライバ70の純粋な回転はピストンロッド60の回転を引き起こし、これはナット部材54とのねじ接続のために、ハウジング50に対してピストンロッド60のらせん状変位に変換される。ピストンロッド60のらせん状変位は、薬剤カートリッジ内のピストン(図示せず)の前進を引き起こし、それによってそこからの薬剤の排出をもたらす。ピストンロッドドライバ70は、外部歯13の軸方向摺動受容のための内部歯73を持つ駆動チューブインターフェース部分71をさらに備える。
【0069】
ハウジング50は、内部表面部分に沿って軸方向隆起部56を有し、軸方向隆起部56の端は半径方向の棚部57を形成する。
【0070】
動力ユニット1の係合状態において、ねじりばね20は外側から完全に遮蔽されており、従って管状本体11とばね基部本体31との間のユーザーがアクセスできない空間39内に保護されていることが注目される。従って、ねじりばね20が早期に解放される、および/またばねコイルのリスクが最小で、動力ユニット1を、ユーザーまたは機械によって取り扱うことができる。
【0071】
ハウジング50内への動力ユニット1の取り付けは、二つの工程で実行される。最初に、動力ユニット1全体を、ピストンロッド60の外側に、端面37が、ばね基部30のさらなる遠位への移動を防止する棚部57に当接するまで、ハウジング50の内部へと軸方向に摺動する。動力ユニット1の挿入中に、スプライン32はハウジング50内の内部軸方向トラック(不可視)にそれぞれ係合し、ハウジング50に対してばね基部30を回転可能に固定し、また波型セクション16は、二重カートリッジ注射装置のアイドル状態ではハウジング50に対して回転的に係止されているクラッチ80(
図7を参照)と摺動可能に係合する。
図5は、初期取付け工程の終了時のハウジング50内の動力ユニット1の位置を示す。この位置では、動力ユニット1はまだ係合状態にある。
【0072】
第二の取付け工程は、駆動チューブ10に対して遠位に向けられた力を加えることを含む。結果として、
図6に図示するように、ばね基部30は棚部57に位置する一方、駆動チューブ10はハウジング50内のさらに遠位に押し込まれる。この力を駆動チューブ10へと加えることによって、結合ヘッド35は受容空間15から引き出され、従って動力ユニット1は係脱状態へと移行するが、同時に波型セクション16は単にクラッチ80に沿って摺動するだけで、クラッチ80との係合を維持する。それゆえに、ハウジング50に対してクラッチ80が回転的に係止されると、駆動チューブ10は回転が妨げられ、そしてねじりばね20はまだ予めねじられた状態に保持される。
【0073】
第二の取り付け工程中に、駆動チューブ10は、ハウジング50内のアイドル状態位置に持ってこられ、ここで外部歯13は内部歯73を超えて摺動し、ナット部材54の近くにある。これで動力ユニット1は、とりわけ以前に取り付けられたピストンロッド60に影響を与えることなく、ハウジング50に完全に取り付けられている。
【0074】
図7は、
図4~
図6の断面平面と直交する平面内の二重カートリッジ注射装置の近位部分の長手方向断面図である。示されるように、装置は、左に動力ユニット1を含む一つの、そして右に一つの、二つの平行投与エンジンを備える。右側の投与エンジンは、左側の投与エンジンと類似して、ハウジング50内に形成されたナット部材154と螺合して配設されたピストンロッド160と、回転可能なピストンロッドドライバ170と、円周方向に波型セクション116を有する駆動チューブ110とを有する。波型セクション116は、駆動チューブ10の波型セクション16と類似した様式でクラッチ80と係合している。
【0075】
クラッチ80は、ネック81と、ハウジング50に対して回転可能に固定された上部基部90の内部空間91内に摺動可能に配設された歯付き歯ヘッド82とを備える。上部基部90は、二重カートリッジ注射装置のアイドル状態において(
図7に示すものではない)歯付きヘッド82と係合して、上部基部90に対するクラッチ80の回転運動を防止する内部軸方向隆起部92を有する。
【0076】
二重カートリッジ注射装置は、ユーザーの皮膚に対する装置の針挿入動作が、ロッドばね(不可視)の力に対してハウジング50内の軸方向ロッド(不可視)の近位変位を引き起こすという意味で、遠位トリガ式装置である。軸方向ロッドは、ハウジング50に対する軸方向ロッドの近位変位が後方アクチベータ40の近位変位を引き起こし、またハウジング50に対する軸方向ロッドの遠位変位が後方アクチベータ40の遠位変位を引き起こすように、後方アクチベータ40に接続されている。
【0077】
後方アクチベータ40は、クラッチ80の内部に突出する幾何学的形状と係合して後方アクチベータ40およびクラッチ80を軸方向に相互係止する中央ヘッド41を備える。後方アクチベータ40は、駆動チューブ10の内部に突出する幾何学的形状と係合して後方アクチベータ40および駆動チューブ10を軸方向に相互係止する左側ヘッド42と、駆動チューブ110の内部に突出する幾何学的形状と係合して後方アクチベータ40および駆動チューブ110を軸方向に相互係止する右側ヘッド43とをさらに備える。
【0078】
図7では、二重カートリッジ注射装置は、薬剤排出状態、すなわち、取り付けられた注射針(図示せず)を挿入するためにユーザーの皮膚に対して装置を押した後の状態で示されている。針の挿入動作が、軸方向ロッドの近位変位、それによって後方アクチベータ40の近位変位を引き起こす。上述のそれぞれの軸方向接続のために、後方アクチベータ40の近位変位が、クラッチ80および二つの駆動チューブ10、110の対応する近位変位を生じさせる。これはまず、駆動チューブ10の外部歯13が摺動して、ピストンロッドドライバ70の内部歯73と係合し、駆動チューブ110とピストンロッドドライバ170との間に類似の回転接続が確立され、次に、歯付きヘッド82が摺動して内部軸方向隆起部92との係合が外れるという結果をもたらす。内部軸方向隆起部92からの歯付きヘッド82の実際の係脱は、外部歯13と内部歯73との係合と同時に、またはその後に起こる。
【0079】
歯付きヘッド82が内部軸方向隆起部92から係脱されると、クラッチ80はもはや回転可能に固定されておらず、従ってねじりばね20は自由に巻き戻ってその保存されたエネルギーを放出し、動力ユニット1は係脱状態になる。ばね基部30はハウジング50に対して回転可能に固定されているため、ねじりばね20の巻き戻りは、駆動チューブ10の回転運動を引き起こし、それによって、外部歯13と内部歯73との間の回転係合に起因するピストンロッドドライバ70の回転運動を引き起こす。ピストンロッドインターフェース部分72は、ピストンロッド60と回転的に相互係止されているので、ピストンロッド60の対応する角変位を引き起こし、従ってナット部材54を通ってらせん状に移動し、そして第一の薬剤収容カートリッジ(図示せず)内のピストンを前進させる。
【0080】
一方、駆動チューブ10の回転、および波型セクション16とクラッチ80との間の係合は、クラッチ80の回転運動をもたらす。クラッチ80の回転は、クラッチ80と波型セクション116との間の係合のために、駆動チューブ110の回転を誘発し、最終的にナット部材154を通したピストンロッド160のらせん状変位をもたらし、それによって第二の薬剤収容カートリッジ(図示せず)のピストンの前進をもたらす。従って、単一の動力ユニット1は、両方のピストンロッド60、160を駆動するためのエネルギーを提供するために使用され、組立プロセスをより簡単にし、そして全体として装置の製造をより安価にする。
【0081】
注射プロセスが完了し、注射針が皮膚から後退すると、軸方向ロッドおよび後方アクチベータ40はそれぞれのアイドル状態軸方向位置に戻り、クラッチ80および二つの駆動チューブ10、110は従属してハウジング50に対して遠位に移動し、それによって歯付きヘッド82は摺動して内部軸方向隆起部92と係合し、ハウジング50に対してクラッチ80を回転的に係止し、駆動チューブ10はピストンロッドドライバ70から係脱され、そして駆動チューブ110はピストンロッドドライバ170から係脱される。動力ユニット1はまだ係脱状態にある。
【0082】
二重カートリッジ注射装置は、注射プロセスの完了後に破棄することが意図されている単回使用タイプの装置であってもよく、または二つの薬剤の複数のそれぞれの用量を送達できる複数回使用タイプの装置であってもよい。いずれの場合でも、ねじりばね20は、両方のピストンをそれぞれのカートリッジの端まで、またはカートリッジ内の所望の位置まで前進させるのに十分なエネルギーを保存する寸法にされ、また十分なエネルギーを保存するように予めねじられてもよい。複数回使用タイプの装置の場合、用量定義機構を組み込んで、小分けしたねじりばねエネルギーの放出を提供してもよい。