(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】非アルコール性脂肪性肝炎の抗huTNFR1治療
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230516BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230516BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230516BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230516BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20230516BHJP
【FI】
A61K39/395 D ZNA
A61K39/395 N
A61P1/16
A61P29/00
C07K16/28
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2020528930
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2018082634
(87)【国際公開番号】W WO2019102023
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-17
(32)【優先日】2017-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513064184
【氏名又は名称】バリオファルム・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】バンテル,ハイケ
(72)【発明者】
【氏名】フィッツェンマイアー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン,アンドレアス
【審査官】馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/174586(WO,A1)
【文献】特表2013-541522(JP,A)
【文献】特表2010-521508(JP,A)
【文献】特表2009-515523(JP,A)
【文献】Hepatology,2013年,57(2),pp.566-576
【文献】Gut,2006年,55(3),pp.415-424
【文献】World J. Gastroenterol.,2016年,22(39),pp.8760-8769
【文献】Eur. J. Gastroenterol. Hepatol.,2015年,27(10),pp.1154-1160,Author manuscript
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 1/16
A61P 29/00
C07K 16/28
C12P 21/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)およびそれに関連する疾患状態の処置での使用のための、ヒト腫瘍ネクローシス因子1
受容体(huTNFR1)を特異的に認識する抗体
を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記抗体がhuTNFR1の膜遠位CRD1および/またはCRD2のサブドメインA1内のエピトープを特異的に認識
する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記抗体がhuTNFR1のN末端領域のアミノ酸1~115によって表されるエピトープを特異的に認識する、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1
~3のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項5】
前記抗体が単一特異性、二価全長抗体である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項6】
前記抗体が、エフェクター機能の媒介を欠損するIgG1 Fcドメインを含む、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗体が、E233P、L234V、L235A、ΔG236、A327G、A330SおよびP331Sからなる群から選択される少なくとも1つの変異を含み、ここで番号付けはKabatのEUインデックスによる、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記抗体が、A327G/A330S/P331S変異を含み、ここで番号付けはKabatのEUインデックスによる、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記抗体が一価的にhuTNFR1を認識する、請求項1~
8のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項10】
前記抗体が、
a)
VH-CDR1、VH-CDR2、およびVH-CDR3の相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変ドメイン(VH);ならびに
b)
VL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3のCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL):を含み、
ここで、
前記抗体は、
i)
VH-CDR1は配列番号1を含むまたはからなり;
VH-CDR2は配列番号2を含むまたはからなり
VH-CDR3は配列番号3を含むまたはからなり
VL-CDR1は配列番号4を含むまたはからなり
VL-CDR2は配列番号5を含むまたはからなり
VL-CDR3は配列番号6を含むまたはからなり;
または、
ii)
VH-CDR1は配列番号23を含むまたはからなり;
VH-CDR2は配列番号24を含むまたはからなり
VH-CDR3は配列番号25を含むまたはからなり
VL-CDR1は配列番号26を含むまたはからなり
VL-CDR2は配列番号27を含むまたはからなり
VL-CDR3は配列番号28を含むまたはからなり;
または、
iii)
VH-CDR1は配列番号1を含むまたはからなり;
VH-CDR2は配列番号10を含むまたはからなり、ここで5位のXはSであり;
VH-CDR3は配列番号3を含むまたはからなり;
VL-CDR1は配列番号4を含むまたはからなり;
VL-CDR2は配列番号5を含むまたはからなり;および
VL-CDR3は配列番号11を含むまたはからなり、ここで3位のXはGであり;
または
iv)
VH-CDR1は配列番号1を含むまたはからなり;
VH-CDR2は配列番号10を含むまたはからなり、ここで5位のXはSであり;
VH-CDR3は配列番号3を含むまたはからなり;
VL-CDR1は配列番号4を含むまたはからなり;
VL-CDR2は配列番号5を含むまたはからなり;および
VL-CDR3は配列番号11を含むまたはからなり、ここで3位のXはSである、
ここで、番号付けはKabatのEUインデックスによる、
請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記抗体が、配列番号7、9、19または29を含むまたはからなるVH配列;および配列番号8、10、14または20を含むまたはからなるVL配列を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記疾患状態が、肝脂肪変性、炎症した肝臓、肝線維症および肝細胞癌のいずれかである、請求項1~
11のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項13】
前記抗体の有効量が、NASHを罹患している患者に投与され、TNFa/huTNFR1シグナリングをアンタゴナイズする、請求項1~
12のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項14】
前記抗体の有効量が、NASHを罹患している患者に投与され、
a)脂肪変性、トリグリセリド含量、炎症、および/または肝臓組織におけるアポトーシス;
b)血清アミノトランスフェラーゼレベル;
c)インシュリン耐性および任意選択によりグルコース耐性の改善;および/または
d)NAFLD活動性スコア
の1つまたはそれ以上のいずれかを低減する、請求項1~
13のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項15】
前記抗体が、0.05mg/kg~20mg/kgの範囲の用量で、NASHを罹患している患者に投与される、請求項1~
14のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項16】
前記抗体が、抗炎症剤による処置、またはファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト、グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP1R)アゴニスト、またはペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)アゴニストを使用する治療と組み合わせてNASHを罹患している患者に投与される、請求項1~
15のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項17】
前記抗体が、II型糖尿病、I型糖尿病、糖尿病の予備軍、インシュリン耐性、または肥満も罹患している患者に投与され、ここで肥満は肥満度指数が少なくとも30の患者として定義される、請求項1~
16のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項18】
抗体の有効量が使用される、請求項1~
17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)およびそれに関連する疾患状態の新規の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、アルコール中毒がない場合に生じる疾患のスペクトルを表し、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む。NAFLDは、欧米諸国では発生率の増加が示されており、肝細胞癌の発生に決定的に寄与する。
【0003】
良性の脂肪肝から進行性の脂肪性肝炎への連鎖に沿った1つの基本的なステップは、アポトーシスと分類される肝細胞細胞死の発生である。ネクロトーシスは、代替のプログラム細胞死経路として明らかになり、NASH患者の肝臓で活性化されることが見出された(Gautheron et al. Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology 2015, 1:264-266)
Aparicio-Vergara et al. (Hepatology 2013, 57(2):566-576)は、肝脂肪変性またはインシュリン耐性の発生の防止におけるTNFR1エクトドメインシェディングの役割を記載する。TNFR1シェディングができないことは、マウスにおいて、肥満、インシュリン耐性または肝脂肪変性を生じなかった。しかしながら、非シェディング変異を含むマウスは、NASHへの急激な進行を示した。TNFR1エクトドメインシェディングの活性化は、NASHへの進行の減衰に重要であることが見出された。
【0004】
Cubero et al. (Cell Death and Differentiation 2013, 20:1580-1592)は、肝細胞および免疫細胞におけるTNFR1が、慢性肝疾患の作用機序において異なる役割を有することを記載する。
【0005】
Tomita et al. (Gut 2006, 55:415-424)は、TNFa/TNFR媒介シグナリング経路の増強が、NASH動物モデルにおける肝線維症の発病に決定的に関与し得ることを記載する。
【0006】
Yaron Ilan (AASLD Liver Learning. Ilan Y. Nov 8 2014; 60709)は、脂肪性肝疾患を処置するための抗TNFベースの経口免疫治療を開示する。TNFαを結合する抗TNF融合タンパク質(PRX-106)は、高脂肪食マウスモデルにおいて使用された。
【0007】
TNFR1に対する抗体は、リガンドを模倣する応答を誘導することによってアゴニスト性能を有することが見出された。この応答は、シグナル伝達が、多価のTNF三量体の結合による受容体の凝集によって開始されることを示す。
【0008】
今までのところ、TNFR1選択的阻害は、TNFR1特異的抗体によって達成され得る。例えば、モノクローナルマウス抗体H398およびヒトTNFR1に選択性を有するUS5736138に記載の抗体は、TNF媒介シグナル伝達および細胞傷害性の強力な阻害を示した(Moosmayer et al. 1995, Ther. Immunol. 2:31-40)。
【0009】
H398のヒト化バージョンは、WO2008/113515A2に記載される。
WO2012035141は、エフェクター機能の媒介を欠損する抗huTNFR1抗体を開示する。
【0010】
一価の抗huTNFR1抗体は、WO2017174586A1に記載される。
Zettlitz et al. (LandesBioscience 2010, November/Dezember:639-647)は、ヒト化TNFR1特異的アンタゴニストモノクローナル抗体の生成を記載する。
【0011】
Richter et al. (PLOS One 2013, 8(8):1 -13)は、TNFR2を未結合のままにしながら、TNFの抗炎症活性を低減するTNFR1シグナル伝達の選択的阻害のためのヒト化アンタゴニスト抗TNFR1抗体の使用を記載する。
【0012】
Berger et al. (Protein Engineering, Design & Selection 2013, 26(10):581-587)は、TNF作用の選択的アンタゴニストとして抗TNFR1 scFv-HAS融合タンパク質を記載する。Feagins et al. (Eur J Gastroenterol Hepatol. 2015, 27(10):1154-1160)は、腫瘍ネクローシス因子阻害剤(TNFi)によって処置された患者が、非アルコール性脂肪性肝疾患(NASFまたは脂肪変性)を発症することを記載する。
【0013】
NASHを処置する治療可能性は、これまでのところ特異的な薬物が利用できないため、限定てきであり、ライフスタイルの改善が制限される。したがって、NASHおよびそれと関連する疾患活動性の有効な処置を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、NASHおよびそれぞれの疾患状態の改善した処置を提供することである。
目的は、本発明の主題によって解決される。
【0015】
本発明は、NASHおよび/または特にNASHと関連するいずれかの疾患状態、中でも脂肪肝、NAFLD疾患活動性(NAS)、アポトーシス、線維症、および高アラニントランスアミラーゼ(ALT)およびインシュリンレベルを罹患している患者を処置するためのヒト腫瘍ネクローシス因子1(huTNFR1)を特異的に認識する抗体の新規の医学的使用を提供する。したがって、本発明は、NASHおよびそれに関連する疾患状態を罹患している患者の新規の医学的処置を提供する。
【0016】
特に、本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)およびそれに関連する疾患状態の処置での使用のための、huTNFR1を特異的に認識する抗体を提供する。
特定の態様により、抗体は、単離抗体である。
【0017】
特定の態様により、抗体は、モノクローナルおよび/または組換え抗体である。
特定の態様により、抗体は、huTNFR1の膜遠位CRD1および/またはCRD2のサブドメインA1内のエピトープを特異的に認識し、好ましくは、huTNFR1のN末端領域のアミノ酸1~115、または1~70によって表されるエピトープを特異的に認識する。特に、huTNFR1の配列は、配列番号32として同定される。
【0018】
特定の実施形態により、抗体は、単一特異性、二価全長抗体、または抗原結合抗体断片である。
別の特定の実施形態により、抗体は、huTNFR1を結合する特異性を有するただ1つの抗原結合部位を含む、huTNFR1の一価の結合剤である。特に、抗体は、一価的にhuTNFR1を認識する。
【0019】
特定の実施形態により、抗体は、Fab分子、scFv分子、単一可変ドメイン、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)、半IgG1抗体、およびFvドメイン、または先に記載のいずれかの機能的に活性な誘導体からなる「一価抗体」群から選択され、好ましくは抗体構築物が疎水性ポリマー、例えばPEGに結合され、および/またはポリペプチド、例えばヒト(またはマウス)血清アルブミン、トランスフェリン、アルブミン結合ドメインまたはペプチド、Ig結合ドメインまたはペプチド、PEG模倣ポリペプチド伸長、抗体Fc断片、好ましいヘテロ二量体化(ホモ二量体化よりも)を可能にする変異を持つ抗体Fc断片、または先に記載のポリペプチドのいずれかの機能性バリアントに融合される。
【0020】
特に、抗体は、抗体Fc断片に融合されるFab、scFv、dsFv、またはFvドメインのいずれかであり、ここでFcは、CH2およびCH3ドメインのヘテロ二量体からなり、ここでCH2および/またはCH3ドメインは、ホモ二量体化よりも好ましいヘテロ二量体化を可能にする1つもしくはそれ以上の点変異を持つ。特に、FcのCH3ドメインの1つまたは両方は、CH3/CH3ドメインのヘテロ二量体を含有するFcを得るためなど、アミノ酸構造を変更するために改変される。
【0021】
特に、抗体構築物は、さらなる抗体ドメインを含むまたは含まない、依然として、抗体の一価の結合構造を維持した、抗体Fc領域または断片に融合したFvドメインを含む。特定の例は、Fcまたは改変Fcに融合したFab部分またはFv部分を指す。
【0022】
好ましい抗体は、重鎖および軽鎖を含み、ここで重鎖は、VHドメイン、CH2およびCH3ドメインからなり、任意選択により1つまたはそれ以上のリンカーをさらに含み;軽鎖は、VLドメイン、CH2およびCH3ドメインからなり、任意選択により1つまたはそれ以上のリンカーをさらに含む。
【0023】
特定の実施形態は、ヒトIgG1 Fcを含み、ここでCH2-CH3ドメインは、1つまたはそれ以上の「knobs into holes」変異によってヘテロ二量体を形成し、例えば
「knobs」変異は、CH3ベータシートの表面を改変し、1つのCH3ドメイン単量体上に存在し、T366Wであり;および
「holes」変異は、CH3ベータシートの表面を改変し、他のCH3ドメイン単量体上に存在し、T366S、L368A、Y407Vからなる群から選択される。
【0024】
特に、抗体は、エフェクター機能を下方制御する1つまたはそれ以上の変異を含むFc領域を含む。特定の態様により、Fc領域は、エフェクター機能を下方制御(downmodulate)するように糖鎖工学的に操作される。
【0025】
特定の実施形態により、抗体構築物は、ヒトIgG1 Fc領域または少なくとも60%、70%、80%、85%、もしくは90%のいずれかの配列同一性を有するヒトIgG1 Fcの機能性バリアントである人工IgG1 Fc領域を含み、これが変異されてエフェクター機能を下方制御する。好ましくは、Fc領域は、E233P、L234V、L235A、ΔG236、A327G、A330SおよびP331Sからなる群から選択される少なくとも1つの変異を有する重鎖を含み、好ましくはA327G/A330S/P331S(KabatのEUインデックス番号)を含む。好ましくは、少なくとも2つの前記変異、より好ましくは6個の変異の少なくとも3つ、4つ、5つ、または全てがFc配列に工学的に操作される。配列番号31はヒトIgG1 Fcの配列を識別する。
【0026】
特に、抗体は、PEG化、HES化、またはPSA化される。
特に、抗体は、5,000から150,000g/molの間の範囲の分子量のPEGによってペグ化される。代表的な抗体構築物、例えばFabは、PEG40,000によってペグ化される。
【0027】
特に、抗体は、ハーフ抗体IgG1であり、1つだけのFab部分、ヒンジ領域および1つのFc部分によって特徴付けられ、ここでヒンジ領域および/またはFc部分(特にヒトIgG1 Fc)は、1つまたはそれ以上の変異を含み、重鎖二量体化を避け(Gu et al. (2015) PLoS One 10(1):e0116419)、例えば、
- ヒンジ領域における変異(配列番号33):C226S、C229S(EU番号付け)、および
- Fc部分における変異:P395A、F405R、Y407R、K409D(EU番号付け)
からなる群から選択される。
【0028】
特に、抗体は、Fv-Fc融合タンパク質であり、ここでFvはVH/VLドメイン対からなり、VHは、第1のヒンジ/リンカー領域を介して第1のCH2-CH3ドメイン鎖に融合され、VLは、第2のヒンジ/リンカー領域を介して第2のCH2-CH3ドメイン鎖に融合される。好ましくは、第1および第2のCH2-CH3ドメイン鎖は、1つまたはそれ以上の点変異で互いに異なり、例えば第1および第2のCH2-CH3ドメイン鎖の間の好ましいヘテロ二量体化を可能にし、それにより、例えば、上述したように「knobs into holes」変異によるFcヘテロ二量体によって特徴付けられるFv-Fc調製物を得る。
【0029】
特に、抗体は、1つまたはそれ以上のさらなる(人工的な)内部ドメインジスルフィド結合によって特徴付けられるジスルフィド安定化Fv(dsFv)を含む。そのようなジスルフィド結合は、VHおよびVLドメインを架橋するジスルフィド結合の橋脚として使用され得る好適な位置でVHおよびVLドメインのいずれかに、1つまたはそれ以上のさらなるシステイン残基を導入することによって得られ、そのジスルフィド結合はシステインの還元時に得られる。特定の実施例により、ジスルフィド結合は、VHの以下の位置およびVLの対応する位置のいずれかにおいてFvに導入され得る:VHの44CおよびVLの100C、VHの108CおよびVLの55C、VHの106CおよびVLの56C、またはVHの101CおよびVLの46C。
【0030】
特に、抗体は、
a)相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変ドメイン(VH):VH-CDR1、VH-CDR2、およびVH-CDR3;ならびに
b)CDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL):VL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3
ここで、
i)
VH-CDR1は配列番号1を含むまたはからなり;
VH-CDR2は配列番号2を含むまたはからなり
VH-CDR3は配列番号3を含むまたはからなり
VL-CDR1は配列番号4を含むまたはからなり
VL-CDR2は配列番号5を含むまたはからなり
VL-CDR3は配列番号6を含むまたはからなり;
または、
ii)
VH-CDR1は配列番号23を含むまたはからなり;
VH-CDR2は配列番号24を含むまたはからなり
VH-CDR3は配列番号25を含むまたはからなり
VL-CDR1は配列番号26を含むまたはからなり
VL-CDR2は配列番号27を含むまたはからなり
VL-CDR3は配列番号28を含むまたはからなり;
ここで、番号付けはKabatのEUインデックスにより;
または、CDR配列のそれぞれに0、1、または2個(または最高1個、すなわち0または1個)の点変異を含み、huTNFR1を特異的に認識する上記i)またはii)のいずれかの機能的に活性なバリアント、
を含む。
【0031】
特に、抗体は、VHおよびVL、
ここで、
VH-CDR1は配列番号1を含むまたはからなり;
VH-CDR2は配列番号2を含むまたはからなり;
VH-CDR3は配列番号3を含むまたはからなり;
VL-CDR1は配列番号4を含むまたはからなり;
VL-CDR2は配列番号5を含むまたはからなり;および
VL-CDR3は配列番号6を含むまたはからなり;
ここで、番号付けはKabatのEUインデックスにより;
または、CDR配列の1つまたはそれ以上のいずれか、またはそれぞれに最高1個(すなわち0または1個)の点変異を含み、huTNFR1を特異的に認識する機能的に活性なそのバリアント、
を含む。
【0032】
特に、VHおよびVL配列は、VH-およびVL-CDR配列によって特徴付けられ、ここで、
i)
VH-CDR1は配列番号1を含むまたはからなり;
VH-CDR2は配列番号10を含むまたはからなり、ここで5位のXはSであり;
VH-CDR3は配列番号3を含むまたはからなり;
VL-CDR1は配列番号4を含むまたはからなり;
VL-CDR2は配列番号5を含むまたはからなり;および
VL-CDR3は配列番号11を含むまたはからなり、ここで3位のXはGであり;
またはii)
VH-CDR1は配列番号1を含むまたはからなり;
VH-CDR2は配列番号10を含むまたはからなり、ここで5位のXはSであり;
VH-CDR3は配列番号3を含むまたはからなり;
VL-CDR1は配列番号4を含むまたはからなり;
VL-CDR2は配列番号5を含むまたはからなり;および
VL-CDR3は配列番号11を含むまたはからなり、ここで3位のXはSである。
【0033】
特に、抗体は、配列番号7または9を含むまたはからなるVH配列;および配列番号8または10を含むまたはからなるVL配列、またはCDR配列の1つまたはそれ以上のいずれか、またはそれぞれに最高1個の点変異、ならびにVHおよびVLのフレームワーク(FR)配列FR1~4の1つまたはそれ以上のいずれか、またはそれぞれに少なくとも60%の配列同一性を含む機能的に活性なそのバリアントを含む。
【0034】
huTNFR1を特異的に認識し、結合することができる抗原結合部位を含む特定のVH/VL組合せは:
a)配列番号7を含むまたはからなるVH配列;および配列番号8を含むまたはからなるVL配列;または
b)配列番号9を含むまたはからなるVL配列;および配列番号10を含むまたはからなるVL配列
のいずれかである。
【0035】
特に、抗体は全長またはFabを含むまたはからなる抗原結合抗体断片であり、
a)配列番号11を含むまたはからなる重鎖(HC)配列;および
b)配列番号12を含むまたはからなる軽鎖(LC)配列;
またはそれぞれHCおよびLCに含まれるVHおよびVLドメインのCDR配列の1つまたはそれ以上のいずれか、またはそれぞれに最高1個の点変異、ならびにVHおよびVLドメインのFR配列FR1~4の1つまたはそれ以上のいずれか、またはそれぞれに少なくとも60%の配列同一性を含む機能的に活性なそのバリアントを含む。
【0036】
特に、抗体は、
a)配列番号18を含むまたはからなるHC配列;および
b)配列番号13を含むまたはからなるLC配列;
またはそれぞれHCおよびLCに含まれるVHおよびVLドメインのCDR配列の1つまたはそれ以上のいずれか、またはそれぞれに最高1個の点変異、ならびにVHおよびVLドメインのFR配列FR1~4の1つまたはそれ以上のいずれか、またはそれぞれに少なくとも60%の配列同一性を含む機能的に活性なそのバリアントを含む。
【0037】
配列番号18によって同定されるHCおよび配列番号13によって同定されるLCを含む特定の機能的に活性な抗体のバリアントは、
a)配列番号19を含むまたはからなるVH、または少なくとも前記VH配列に含有されるCDR配列;
b)4~10アミノ酸、例えば4、5、6、7、8、9または10アミノ酸からなる、好ましくは任意の組合せで、例えば配列番号15からなるリンカーのような、多くのグリシン、セリンまたはスレオニンからなるリンカー配列;
c)配列番号16を含むまたはからなるCH2ドメイン;および
d)配列番号20を含むまたはからなるCH3ドメイン;
からなるHC、ならびに
a)配列番号14を含むまたはからなるVL、または少なくとも前記VL配列に含有されるCDR配列;
b)4~10アミノ酸、例えば4、5、6、7、8、9または10アミノ酸からなる、好ましくは任意の組合せで、例えば配列番号15からなるリンカーのような、多くのグリシン、セリンまたはスレオニンからなるリンカー配列;
c)配列番号16を含むまたはからなるCH2ドメイン;および
d)配列番号17を含むまたはからなるCH3ドメイン;
からなるLCを含む。
【0038】
特に、そのような抗原結合抗体は、
a)HCコード配列配列番号22;および
b)LCコード配列配列番号21;
またはそれぞれHCおよびLCに含まれるVHおよびVLドメインのCDR配列の1つまたはそれ以上のいずれか、またはそれぞれに最高1個の点変異、ならびにVHおよびVLドメインのFR配列FR1~4の1つまたはそれ以上のいずれか、またはそれぞれに少なくとも60%の配列同一性を含む機能的に活性なそのバリアントを含む、1つまたはそれ以上の核酸分子によってコードされる。
【0039】
特定の実施形態により、抗体は、6つのCDR配列の以下の組合せによって特徴付けられる抗原結合部位を含み、それは、
配列番号23:VH-CDR1;
配列番号24:VH-CDR2;
配列番号25:VH-CDR3;
配列番号26:VL-CDR1;
配列番号27:VL-CDR2;および
配列番号28:VL-CDR3;
または、CDR配列の1つまたはそれ以上のいずれか、またはそれぞれに最高1個の点変異を含み、huTNFR1を特異的に認識する機能的に活性なそのバリアント、
を含むまたはからなる。
【0040】
特に、抗体は、VHおよびVLドメインに組み込まれる抗原結合部位、ここで、
a)VHは配列番号29を含むまたはからなり;および
b)VLは配列番号30を含むまたはからなり;
またはVHおよびVLドメインのCDR配列の1つまたはそれ以上のいずれか、またはそれぞれに0、1、または2個(または最高1個)の点変異、ならびにVHおよびVLドメインのFR配列FR1~4の1つまたはそれ以上のいずれか、またはそれぞれに少なくとも60%の配列同一性を含む機能的に活性なそのバリアントを含む。
【0041】
特に、抗体は、VHおよびVLドメインを含み、ここでVHおよびVLドメインの少なくとも1つが、相補性決定領域(CDR)配列のいずれかに少なくとも1つの点変異を含む親ドメインの親和性成熟機能性バリアントであり、ここで
a)親VHドメインはCDR配列:配列番号23、配列番号24、および配列番号25によって特徴付けられ、
b)親VLドメインはCDR配列:配列番号26、配列番号27、および配列番号28によって特徴付けられる。
【0042】
特に、前記少なくとも1つの点変異は、配列番号24および/または配列番号28のいずれかにある。
特に、代表的な抗体(本明細書で提供した配列によって特徴付けられるそれらの抗体)のいずれかは、本発明に従って使用され得る。同様に、同じ抗原結合部位を含むおよび/または同じ標的結合特異性を有する任意の代替の抗体が使用され得る。特定の代替の抗体は、代表的な抗体の機能性バリアントであるものであり、ここで代表的な抗体のいずれかは、huTNFR1標的を特異的に認識する機能を有するバリアントを産生する「親」として使用され得る。
【0043】
特に、抗体は、本明細書に提供する配列によって特徴付けられる親抗体の親和性成熟抗体であり、特にここで、CDR配列の1、2、3、4、5、または6は、親抗体におけるそれぞれのCDRと比較して最高1個の点変異を含む機能的に活性なCDRバリアントである。
【0044】
特定の実施形態では、機能的に活性なバリアント抗体は、CDR配列のそれぞれに0、1、2、または3個の点変異のみ、好ましくはCDR配列のそれぞれに0、1、または2個の点変異のみを含み、ここで点変異は、1アミノ酸の置換、挿入または欠失のいずれかである。
【0045】
本明細書に記載の抗体(親抗体)の機能的に活性なバリアントのいずれかは、huTNFR1結合特異性によって特異的に特徴付けられる。機能的に活性なバリアントは、1つまたは複数の変異FR配列を含んでよく、1つまたはそれ以上の、例えばいくつかの点変異、例えば最高2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の点変異を含み、親抗体のそれぞれのFR配列と比較して少なくとも60%の配列同一性、または少なくとも70%の配列同一性、または少なくとも80%の配列同一性、または少なくとも90%の配列同一性を有するバリアント配列を得る。
【0046】
特に、抗体は、10-8Mまたは5×10-9Mより低いKD、および10-3S-1より低いKoffでhuTNFR1を結合している抗原結合部分を含む。結合の親和性および結合特性(会合および解離)は、一価の結合を決定するための標準的な試験で特異的に決定され、二価の結合の結合活性効果を実質的に除外する。標準的な試験は、生理的温度(約37℃、または37℃+/-1℃)での水晶振動子マイクロバランス(QCM)による測定に基づく。そのような親和性測定は、特にFabフォーマットで実施される。したがって、抗体がFab分子以外である場合、抗原結合部位は、特に37℃でのQCMによる親和性測定のためのそれぞれのFab分子に導入される。これは親和性測定と緩衝し得る結合活性効果にかかわらず一価の結合剤の親和性測定の結果の比較性を確実にする。特に好ましいQCMは、中程度の受容体密度で実施される。特に、huTNFR1に結合する抗体構築物の親和性は、37℃でのQCM、および50~100Hz、例えば約50Hz、または50Hz+/-10Hz、または50Hz+/-5Hzの範囲内の中程度の受容体密度によりFabフォーマットに関して決定される。
【0047】
特に、KDは、4×10-9Mより低い、または3×10-9Mより低い、または2×10-9Mより低い、または10-9Mより低い、または10-10Mより低い。
特に、Koffは、10-3より低い、5×10-4s-1より低い、10-4s-1より低い、または10-5s-1より低い。
【0048】
特に、抗原結合部分は、少なくとも105M-1s-1のKonでhuTNFR1を認識する。
特定の態様により、疾患状態は、肝脂肪変性、炎症した肝臓、肝線維症(またはアポトーシス)および肝細胞癌のいずれかである。特に、疾患状態のいずれかを発症するリスクがあるまたはすでに罹患しているNASH患者が処置される。NASHまたは関連疾患状態のいくつかの指標は、NAFLD疾患活動性(NAS)、ならびに高ALTおよびインシュリン血清レベルを含み、それらは本明細書に記載の処置によって効果的に低減され得る。
【0049】
特に、患者は、II型糖尿病、I型糖尿病、糖尿病の予備軍、インシュリン耐性、または肥満も罹患しており、ここで肥満は肥満度指数≧30の患者として定義される。
特に、抗体は、有効量で患者に投与される。特に、量は、TNFa/huTNFR1シグナリングをアンタゴナイズするのに有効である。抗体は、アンタゴニスト抗体であり、それにより、細胞ベースのアッセイにおいて測定されたように、実質的なTNFa/TNFR媒介シグナリングおよびシグナル伝達を回避することが特に好ましい。本明細書に記載のおよび本明細書で提供する抗体配列によって特徴付けられる抗体のいずれかは、アンタゴニスト抗体であるとして特に理解される。
【0050】
特定の態様により、抗体は、細胞ベースのアッセイにおいて、好ましくはKym-1細胞でのTNFR1媒介細胞死の阻害に関するアッセイにより、またはそれぞれHeLa細胞またはHT1080細胞からのIL-6またはIL-8放出の阻害に関するアッセイにより決定されたように、TNF-huTNFR1受容体相互作用を直接阻害する。特に、Kym-1細胞におけるTNFR1媒介細胞死の阻害に関するアッセイにおいて、IC50値は5.0×10-9Mより低い。特に、HeLa細胞からのIL-6放出の阻害に関するアッセイにおいて、IC50値は4.0×10-8Mより低く、HT1080細胞からのIL-8放出の阻害に関するアッセイにおいて、IC50値は2.0×10-8Mより低い。
【0051】
特定の実施形態により、一価の相互作用によりhuTNFR1に結合し、TNF模倣アゴニスト活性を示すリスクが減少された抗体が使用される。特に好ましいのは、TNFR1への結合の高い親和性、および低い解離率を有する抗体であり、TNFR1依存的TNF応答の優れた阻害を提供する。
【0052】
特に、本明細書に記載の抗体は、抗体および薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含む医薬品で提供される。抗体のアンタゴニスト特性のため、医薬品は、高い抗体濃度を含むが、アゴニスト活性から生じる副作用を避けることができる。
【0053】
特に、医薬品は、好ましくは静脈内または皮下投与による非経口使用のために製剤化される。
特に、本明細書に記載の抗体は、低い免疫原性を有し、阻害剤、例えば抗薬物抗体(ADA)を形成せずに繰り返し使用され得る。
【0054】
驚くべきことに、本明細書に記載の抗体、特に一価の抗体は、ADAを発生する、例えば、免疫グロブリンまたは抗体免疫治療に対して抗体を発生した患者の処置に使用され得ることが分かった。先行技術では、そのようなADAの存在は、ADAが細胞表面でTNFR1の結合時に抗体を架橋する能力を有し、それによりTNFR1シグナル伝達をアゴナイズすることができるため、TNFR1を指向する抗体によるさらなる免疫治療を特に遮断する。しかしながら、本明細書に記載の抗体は、ADAの存在下でさえもTNFR1シグナリングをアゴナイズしない(または実質的にしない)。
【0055】
特に、本明細書に記載の医薬品は、ADA、例えば抗huTNFR1抗体または任意のIgG構造に対するADAを発生した患者に投与され得る。
特に、有効量の抗体は、NASHを罹患している患者に投与され、
a)脂肪変性、トリグリセリド含量、炎症、および/または肝臓組織におけるアポトーシス;
b)血清アミノトランスフェラーゼレベル;
c)インシュリン耐性および任意選択によりグルコース耐性の改善;および/または
d)NAFLD活動性スコア
の1つまたはそれ以上のいずれかを低減する。
【0056】
特に、抗体は、0.05mg/kg~20mg/kg、好ましくは0.2mg/kg~6mg/kgの範囲の用量でNASHを罹患している患者に投与される。ヒトで有効な量は、記載したマウスモデルでの治療有効用量(20mg/kg)から推測され得る。HED(ヒト等価用量)は、およそ1~2mg/kgである。
【0057】
好ましい抗体用量は、例えば0.5~1000mg、好ましくは1~400mgの範囲である。皮下に投与される場合、好ましい投与量は、0.5~400mgの範囲である。
特定の態様により、抗体は、全身投与により、好ましくは静脈内注入またはボーラス注入により治療有効量で患者に投与される。
【0058】
特定の実施形態により、抗体は、通常例えば毎週、i.v.またはs.c.注射、例えば0.5~5mg/kg、特に約2mg/kgの用量で患者に繰り返し投与される。投与される薬物の頻度および用量は、疾患状態および治療に対する応答に適応され得る。
【0059】
特に、抗体は、NASHを罹患している患者に、糖尿病処置と組み合わせて投与される。抗体処置は、特に、NSAP/NSAIDなどの抗炎症剤、またはファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト、グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP1R)アゴニスト、またはペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)アゴニストを使用する治療と組み合わされ得る。
【0060】
他に示さない限り、位置は、本明細書ではKabatのEUインデックスにより番号付けされる。Kabatの番号付けスキームの説明は、Kabat, EA, et al., Sequences of proteins of immunological interest (NIH publication no. 91-3242, 5th edition (1991))に見出される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】B6-huTNFR1-k/iマウスは、最後8週間の抗TNFR1またはコントロール抗体(Ab)による処置を含む、32週間、高脂肪食(HFD)を受けた。
図1Aは、抗TNFR1-Abによって処置されたHFDマウスの肝臓組織が、コントロール抗体によって処置されたマウス由来の肝臓組織と比較して、肝臓組織における脂肪変性の著しい低減を示した図である。
図1Bは、抗TNFR1-Abによって処置されたHFDマウスの肝臓組織が、コントロール抗体によって処置されたマウス由来の肝臓組織と比較して、肝臓組織におけるトリグリセリド含量の著しい低減を示した図である。
図1Cは、抗TNFR1-Abによって処置されたHFDマウスの肝臓組織が、コントロール抗体によって処置されたマウス由来の肝臓組織と比較して、肝臓組織におけるNAFLD活動性スコアの著しい低減を示した図である。
*p<0.05;
**p<0.01。
【
図2】B6-huTNFR1-k/iマウスは、最後8週間の抗TNFR1またはコントロール抗体(Ab)による処置を含む、32週間、高脂肪食(HFD)を受けた。
図2Aは、抗TNFR1-Abによって処置されたHFDマウスの肝臓組織が、シリウスレッド染色によって評価された肝線維症の改善を示した図である。
図2Bは、それがコントロール抗体によって処置されたマウス由来の肝臓組織と比較して有意であったことを示した図である。
*p<0.05。
【
図3】B6-huTNFR1-k/iマウスは、最後4週間の抗TNFR1またはコントロール抗体(Ab)による処置を含む、20週間、高脂肪食(HFD)を受けた。
図3は、コントロール抗体と比較して、抗TNFR1抗体処置が、肝臓組織におけるカスパーゼ3活性化の著しい低減をもたらしたことを示す図である。
*p<0.05。
【
図4】B6-huTNFR1-k/iマウスは、最後8週間の抗TNFR1またはコントロール抗体(Ab)による処置を含む、32週間、高脂肪食(HFD)を受けた。
図4は、コントロール抗体と比較して、抗TNFR1 Abによる処置が、ALTおよびインシュリン血清レベルの著しい改善をもたらしたことを示す図である。
*p<0.05。
【
図5-1】配列 配列番号1:VH-CDR1 配列番号2:VH-CDR2 配列番号3:VH-CDR3 配列番号4:VL-CDR1 配列番号5:VL-CDR2 配列番号6:VL-CDR3 配列番号7:IgG13.7/Fab13.7のVH 配列番号8:IgG13.7/Fab13.7のVL 配列番号9:ATROSAB/IZI06.1のVH
【
図5-2】配列 配列番号10:ATROSAB/IZI06.1のVL 配列番号11:(Fab13.7重鎖[太字=VH]) 配列番号12:(Fab13.7軽鎖[太字=VL]) 配列番号13:VL1C(VL13.7-CH2-CH31;VLおよびCH1含有鎖): 配列番号14:VL13.7 配列番号15:リンカー 配列番号16:CH2 配列番号17:CH31:CH31は、主にCH3由来の残基だが、CH1からの残基も含有する、散在するIg定常ドメインである; 配列番号18:VHkC(VH13.7-CH2-CH3カッパ;VHおよびCLk含有鎖):
【
図5-3】配列 配列番号19:VH13.7 配列番号20:CH3k 配列番号21:VL1C(VL13.7-CH2-CH31;VLおよびCH1含有鎖): 配列番号22:VHkC(VH13.7-CH2-CH3カッパ;VHおよびCLk含有鎖):
【
図5-4】配列 配列番号23:ATROSABのVH-CDR1 配列番号24:ATROSABのVH-CDR2 配列番号25:ATROSABのVH-CDR3 配列番号26:ATROSABのVL-CDR1 配列番号27:ATROSABのVL-CDR2 配列番号28:ATROSABのVL-CDR3 配列番号29:ATROSAB VH 配列番号30:ATROSAB VL 配列番号31:ヒトIgG1 Fc 配列番号32:huTNFR1配列: 配列番号33:ヒンジ領域
【
図6】Atrosimab(HC:配列番号18、LC:配列番号13)の生化学的特徴。
図6aは、Atrosimabの分子組成の代表的な画像を示す図である(白:Fc由来の定常Igドメイン;明るい灰色:VHおよびCH1由来の配列;暗い灰色:VLおよびCLκ由来の配列)。
図6bは、Atrosimabが、SEC(TSKgel SuperSW mAb HR、流速0.5ml/分、移動相Na2HPO4/NaH2PO4)によって特徴付けられた図である。
図6cは、Atrosimabが、還元(R)または非還元(NR)条件下でSDS-PAGE(NuPAGETM 4~12% Bis-TRIS Midi Gel)によって特徴付けられた図である。M:マーカー。
図6dは、Atrosimabの熱安定性が、動的光散乱および得られたデータポイントの視覚的解釈によって分析された図である。
図6eは、ヒト血漿でのインキュベーション後のAtrosimabの安定性が、ELISAでのヒトTNFR1への残存する結合活性の検出によって分析された図である。棒は、3回の個々の実験のEC50値を表す(平均±SD)。4℃でのPBS中でインキュベートされた試料およびヒト血漿中に希釈後直接-20℃に凍結された試料はコントロールとして寄与した。
【
図7】Fc受容体およびC1q補体タンパク質との抗原結合および相互作用。
図7aは、ヒトTNFR1-FcへのAtrosimabの平衡結合が、ELISAによって分析された図である(n=3、平均±SD)。Fab13.7(同一のVHおよびVLを含有する)およびATROSAB(親和性の低い二価バージョン)は、コントロールとして寄与した。
図7bは、データ分析のため、1:1結合アルゴリズムを使用して128nMと4nMの間の5つの濃度(1:2希釈ステップ)で、QCMによってリアルタイム結合動態が記録された図である。
図7cは、固定化したAtrosimabならびに2つのコントロールタンパク質ATROSAB(サイレントFc)およびリツキシマブ(野生型Fc部分)のヒトFcγRI、IIbおよびIIIとの、また補体タンパク質C1qとの相互作用が、ELISAによって分析された図である(n=2、平均±SD)。
【
図8】Atrosimabのアンタゴニスト生物活性およびアゴニズムの欠如。Atrosimabは、3つの異なるin vitroアッセイでのアゴニスト活性の完全な欠如を実証した。
図8aは、HeLa細胞からのIL6放出を示す図である。
図8bは、HT1080細胞からのIL-8放出を示す図である。
図8cは、Kym1細胞を使用する細胞死誘導アッセイを示す図である。完全なアゴニスト特性を実証した親Fab13.7ならびに(
図8a)および(
図8b)においてほんのわずかにアゴニスト効果を示す二価のIgG ATROSABは、コントロールタンパク質として寄与した。
図8dは、同じセットのタンパク質が、IL-6放出によって検出されたように、HeLa細胞の細胞表面上でのTNFR1の活性化を阻害する能力を分析された図である。
図8eは、同じセットのタンパク質が、IL-8放出によって検出されたように、HT1080細胞の細胞表面上でのTNFR1の活性化を阻害する能力を分析された図である。
図8fは、同じセットのタンパク質が、細胞死誘導によって検出されたように、Kym-1細胞の細胞表面上でのTNFR1の活性化を阻害する能力を分析された図である。TNFR1は0.1nM TNF(
図8dおよび
図8e)または0.01nM TNF(
図8f)を使用して活性化された。全てのグラフは、3つの個々の実験の平均を表し、エラーバーはSDを示す。
【
図9】抗ヒトIgG抗体の存在下でのAstrosimabのアゴニズムの欠如。
図9aは、一定濃度の(およそ15.8nM)の薬物特異的抗体の存在下でのAtrosimabによるHT1080細胞の表面上のTNFR1の活性化が、マウス抗ヒトIgG血清(IgG_A)を使用するIL8放出アッセイにおいて分析された図である。
図9bは、一定濃度の(およそ15.8nM)の薬物特異的抗体の存在下でのAtrosimabによるHT1080細胞の表面上のTNFR1の活性化が、マウス抗ヒトIgG血清(IgG_B)を使用するIL8放出アッセイにおいて分析された図である。
図9cは、一定濃度の(およそ15.8nM)の薬物特異的抗体の存在下でのAtrosimabによるHT1080細胞の表面上のTNFR1の活性化が、マウス抗ヒトIgG血清(IgG_C)を使用するIL8放出アッセイにおいて分析された図である。マウス抗ヒトIgG血清単独、未刺激細胞およびTNF(33nM)はコントロールとして寄与した。3回の個々の実験の平均±SDが示される。
【
図10】
図10は、Atrosimabの薬物動態分析を示す図である。Atrosimabの循環濃度は、完全マウスタンパク質の代わりにマウス膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインに結合されたヒトTNFR1の細胞外ドメインを発現する、C57BL/6Jノックインマウスでの400μgのタンパク質のボーラス注射後にマウス血清中で決定された。インタクトなタンパク質は、ELISAでのヒトTNFR1-Fcへの結合時に決定された。グラフは、5匹のマウスの平均±SDを示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
用語「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」および同様の指示語の使用は、本発明を記載する文脈で(特に以下の請求項の文脈で)、本明細書に他に指定しないまたは文脈によって明確に否定しない限り、単数と複数の両方を含むと解釈される。
【0063】
用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」は、他に記載しない限り、制限のない用語(すなわち、「含むが、限定されない」を意味する)として解釈される。本発明のために、用語「からなる(consisting of)」は、用語「を含む(comprising of)」の好ましい実施形態であると考えられる。以下に群が、少なくとも特定の数の実施形態を含むと定義される場合、これは好ましくはこれらの実施形態のみからなる群も包含することを意味する。
【0064】
用語「抗体」は、本明細書では、リンカー配列を含むまたは含まない、免疫グロブリンの重鎖および/または軽鎖の定常ドメインおよび/または可変ドメインとして理解される抗体ドメインからなるまたは抗体ドメインを含むポリペプチドまたはタンパク質を包含すると理解される。ポリペプチドは、ループ配列によって結合された抗体ドメイン構造の少なくとも2つのベータ鎖からなるベータバレル構造を含む場合、抗体ドメインとして理解される。抗体ドメインは、天然構造であってよく、または例えば、抗原結合特性または任意の他の特性、例えば安定性または機能特性、例えばFc受容体FcRnおよび/またはFcガンマ受容体への結合を改変するために変異誘発もしくは誘導体化によって改変されてよい。
【0065】
本明細書で使用する抗体は、huTNFR1またはhuTNFR1のエピトープを特異的に認識する少なくとも1つの抗原結合部位を含む。したがって、huTNFR1受容体への抗体の結合は、抗体あたり1つだけのhuTNFR1特異的結合部位による一価、または2つのhuTNFR1特異的結合部位による二価であり得る。特に、抗原結合部位は、1つまたは2つの抗体ドメインのものである。可変抗体ドメイン単独または組合せのいずれか、例えばVHドメイン単独、またはVHおよびVLドメインの組合せが、抗原結合部位の構築に用いられてよい。特に、抗原結合部位は、CDR配列の組合せによって形成される。CDR配列のそのような組合せも、CDR結合部位、例えば1つの可変ドメインの3つのCDR配列、例えばCDRH1、CDRH2、およびCDRH3の組合せ、またはCDRL1、CDRL2、およびCDRL3、または2つの可変ドメインの他の6つのCDR配列の組合せ、例えばCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3の組合せによって形成された抗原結合ポケットとして理解される。あるいは、抗原結合部位は、受容体への自然のリガンド由来または人工的な構築物であるものを用いてよい。本明細書で参照したCDR配列は、以下として指定される:
VHドメインのCDR:
VH-CDR1=CDRH1
VH-CDR2=CDRH2
VH-CDR3=CDRH3
VLドメインのCDR:
VL-CDR1=CDRL1
VL-CDR2=CDRL2
VL-CDR3=CDRL3
特に、単一の可変抗体ドメインのCDR結合部位は、抗原結合部位、例えば可変領域(例えばdAb、Fd、VL、Vカッパ、Vラムダ、VH、VHH)の重鎖および軽鎖のドメインの結合部位、または一対の可変抗体ドメインの結合部位、例えばVH/VL対として使用され得る。
【0066】
したがって、CDR結合部位を含む抗体は、単一の可変抗体ドメインまたは一対の可変結合ドメインを含んでよく、任意選択により、同じまたは異なる抗原結合特異性を有する他の可変ドメイン、例えば1つの抗原結合部位のみがhuTNFR1に向かい、少なくとも1つの別の抗原結合部位がhuTNFR1とは異なる標的に向かう二重特異性または多特異性抗体をさらに含む。任意選択により、抗体構築物は、定常抗体ドメイン、または連結する配列またはヒンジ領域を含むまたは含まない可変および/または定常抗体ドメインの組合せをさらに含む。
【0067】
特定の抗体フォーマットは、本明細書に記載のように、例えば、単一可変抗体ドメイン、例えばVH、VLもしくはVHH、または連結配列もしくはヒンジ領域を含むまたは含まず、可変抗体ドメインの対、例えばVL/VH対を含む可変抗体ドメインおよび/または定常抗体ドメインの組合せを含むまたはからなる抗体、VL/VHドメイン対および定常抗体ドメイン、例えば重鎖抗体、Fab、F(ab’)、(Fab)2、scFv、Fd、Fv、または例えば、IgG型(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE、またはIgM抗体の全長抗体を含むまたはからなる抗体が使用され得る。用語「全長抗体」は、少なくとも自然発生の抗体単量体に一般に見出されるFcドメインおよび他のドメインの大部分を含む任意の抗体分子を指すために使用され得る。この句は、本明細書において特定の抗体分子が抗体断片ではないことを強調するために使用される。
【0068】
代表的な一価、単一特異性の結合剤は、Fab、scFv、Fv、ドメイン抗体、IgGハーフ抗体、または一価IgG、例えば完全軽鎖、1つの完全重鎖およびFd(Fd=VH-CH1)を欠損するさらなるFc鎖からなる1つのアームのIgGであり、それらはknobs into holes技術によって産生され(または他の非対称なFc部分)、Fcドメインのホモ二量体化を避ける。
【0069】
代表的な二価または多価結合剤は、免疫グロブリン型のいずれかの全長抗体、または例えばFab、F(ab’)、(Fab)2、scFv、またはFvのいずれか1つまたはそれ以上の少なくとも2つの抗原結合部位を含む全長抗体のいずれかの抗原結合抗体断片である。
【0070】
用語「Fv」は、本明細書では、例えばVH、VLまたはVH/VLのCDR結合部位を組み込む可変ドメインの領域として理解される。用語「Fv」は、したがって、特にVH、VL、またはリンカーを含むまたは含まず、両方の可変ドメインのベータシート構造間の相互作用によってVHドメインがVLドメインに結合するVH/VLのいずれかに適用する。
【0071】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、特に、異なる標的抗原を指向する、または異なる構造様式の抗体ドメインを含む他の抗体を実質的に含まない、抗体調製物中の単離された形態の抗体を含む。依然として、単離された抗体は、単離された抗体と、例えば少なくとも1つの他の抗体、例えば異なる特異性を有するモノクローナル抗体または抗体断片との組合せを含有する組合せ調製物に含まれ得る。
【0072】
用語「抗体」は、ヒト種、例えば哺乳動物、例えばヒトもしくはマウス、または鳥類、例えばニワトリを含む動物起源の抗体に適用し、その用語は、動物起源の配列、例えばヒト抗体のように、ヒト配列に基づく組換え抗体を特に含む。ヒト抗体は、典型的には、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を含む。ヒト抗体は、好ましくは、本明細書に記載のように使用され、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダムまたは部位特異的変異誘発またはin vivoでの体細胞変異によって導入された変異)を、例えばCDRに含み得る。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、または1つまたはそれ以上のヒト免疫グロブリンのトランスジェニック動物から単離された抗体を含む。
【0073】
しかし、用語「抗体」は、異なる種起源の配列、例えば、マウスおよびヒト起源の配列とのキメラ抗体、またはヒト起源のおよび非ヒト、例えばげっ歯類起源のアミノ酸配列を含有するヒト化抗体にさらに適用する。
【0074】
用語「抗体」は、任意のクラスまたはサブクラスの抗体に特に適用する。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体は、抗体IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの主要なクラスに割り当てられ、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けられ得る。
【0075】
用語は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体、特に組換え抗体にさらに適用し、この用語は、組換え手段によって調製、発現、作製または単離される全ての抗体および抗体構築物、例えば、異なる起源、例えば、マウスの遺伝子または配列を含む、動物、例えばヒトを含む哺乳動物起源の抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはハイブリドーマ由来抗体を含む。さらなる例は、抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離された抗体、または、抗体もしくは抗体ドメインの組換えコンビナトリアルライブラリーから単離された抗体、または抗体遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングが関与する任意の他の手段によって調製、発現、作製、または単離された抗体に関する。
【0076】
抗体ドメインは、天然構造であってよく、または例えば、抗原結合特性または任意の他の特性、例えば安定性もしくは機能特性、例えばFc受容体FcRnおよび/またはFcガンマ受容体(FCGR)への結合を改変するために変異誘発もしくは誘導体化によって改変されてよい。
【0077】
特定の例は、1つまたはそれ以上の人工的なCDR配列を含む少なくとも1つの抗原結合部位によって標的huTNFR1を特異的に認識するように工学的に操作された、または自然発生の免疫グロブリン構造のいずれかとは異なる構造を有する非自然発生の抗体構築物を産生するように工学的に操作された人工構築物である非自然発生の抗体に関する。
【0078】
本明細書にさらに記載する抗体の特定の例は、例えば、その組合せが自然に発生しない、別の抗体または活性剤との組合せ調製物で提供されるように、非自然発生である。さらなる特定の例は、自然発生の抗体の人工的な誘導体もしくはバリアント、または自然発生の抗体の最適化もしくは親和性成熟バリアント、または抗体の安定性を改善するように工学的に操作されるフレームワーク領域を有する抗体に関する。そのような最適化または工学的な操作により、抗体は自然の抗体に関しては見出されない、1つまたはそれ以上の合成構造もしくは配列もしくは特徴を含む。
【0079】
本明細書で使用する用語「抗体」は、抗体の誘導体、特に機能的に活性な誘導体も指し、本明細書では抗体の機能性バリアントとも呼ばれると理解される。
機能的に活性な誘導体は、特に、抗体自身の主要なアミノ酸配列を変更しない融合または共有化学修飾によって産生される。誘導体は、例えば、循環半減期の延長、安定性の増加、クリアランスの低減、または免疫原性の変更を含む所望の特性を有し得る。特定の抗体誘導体は、1つまたはそれ以上の抗体ドメインもしくは抗体の任意の組合せ、および/または抗体の任意のドメインが1つまたはそれ以上の他のタンパク質、例えば他の抗体の任意の位置に融合し得る融合タンパク質、例えば、CDRループ、受容体ポリペプチドを含むがリガンド、足場タンパク質、酵素、毒素等も含む結合構造体であると理解される。抗体の誘導体は、様々な化学技術、例えば共有結合、静電気的相互作用、ジスルフィド結合等によって他の物質に会合または結合させることによって得られ得る。抗体に結合する他の物質は、脂質、糖、核酸、有機および無機分子、またはこれらの任意の組合せ(例えば、PEG、プロドラッグまたは薬物)であってよい。特定の実施形態では、抗体は、例えば抗体-薬物コンジュゲートを得るための薬物を含む誘導体である。
【0080】
用語、誘導体は、例えば特定のグリコシル化パターンを有し、例えば糖鎖工学的な操作によって産生され、機能性であり、機能性バリアントとして寄与し得る、例えば特定の標的に結合する抗体の断片、バリアント、類似体または相同体も含む。
【0081】
抗体配列に関する用語「糖鎖工学的に操作された」は、糖鎖工学的な操作の結果として改変された免疫原性、ADCCおよび/またはCDCを有するグリコシル化バリアントに関する。全ての抗体は、重鎖定常領域の保存された位置に糖構造を含有し、各アイソタイプはN-結合糖構造の明確なアレイを持ち、タンパク質のアセンブリ、分泌、または機能活性に多様に影響する。IgG1型抗体は、各CH2ドメインのAsn297に保存されたN結合グリコシル化部位を有する糖タンパク質である。Asn297に接着した2つの複雑な二分岐オリゴ糖は、CH2ドメイン間に埋められ、ポリペプチド骨格との広範な接触を形成し、それらの存在は、抗体が抗体依存性細胞傷害(ADCC)などのエフェクター機能を媒介するのに必須である。例えば、N297の、例えばAへの変異によるN297のN-グリカンの除去またはT299のN-グリカンの除去は、典型的にはADCCが低減したアグリコシル化抗体をもたらす。
【0082】
抗体グリコシル化の大きな違いは、細胞系間で生じ、軽微な違いは異なる培養条件下で増殖した所与の細胞系にすら見られる。細菌細胞での発現は、典型的にはアグリコシル化抗体を提供する。
【0083】
抗体は、活性なFc部分が欠如していてよく、したがって、特にCH2およびCH3ドメインの鎖が欠如している任意の抗体を含む、FCGR結合部位を持たない抗体ドメインから構成され、または例えば、Fcエフェクター機能を低減する、特にADCCおよび/またはCDC活性を抑止または低減する改変による、Fcエフェクター機能を欠損する抗体ドメインを含む。そのような改変は、Fcエフェクター機能の低減またはFcエフェクター機能の欠如を達成するような変異誘発、例えばFCGR結合部位における変異によって、または抗体のADCCおよび/またはCDC活性と干渉する誘導体もしくは薬剤によってもたらされ、これは典型的には、ADCCおよび/またはCDC活性によって測定されたように、未改変(野生型)抗体の10%より少ない、好ましくは5%より少ないFcエフェクター機能に関すると理解される。
【0084】
代表的な抗体は、Fc断片または少なくともFc断片の一部を含んでよく、FcRnへの結合部位を維持し、それによりin vivoでの実質的な半減期を有する抗体を得る。
【0085】
しかし、Fcは、例えばIgG1のIgG2サブタイプへの変更により、または、例えば、ヒトIgG1 FcにおけるE233Pおよび/またはL234Vおよび/またはL235Aおよび/またはD265Gおよび/またはA327Qおよび/またはA330Aおよび/またはG236、欠失および/またはA327Gおよび/またはA330Sによる、Fc受容体への結合を低減する改変により、可能なADCCおよび/またはCDC活性を低減するために改変することができ、ここで番号付けは、Kabat[EUインデックス]による。
【0086】
さらなる例は、例えば、K.O.グリコシル化部位、例えば、レクチン受容体への結合を損なうN297Qによって、免疫原性を低減する改変に関する。
用語「抗体」は、親CDR配列の機能的に活性なCDRバリアントを有する抗体、および親抗体の機能的に活性なバリアント抗体を含む、抗体のバリアントも指すことが理解される。例えば、CDR結合配列によっておよび/または本明細書で提供する重鎖および軽鎖配列によって特徴付けられるこれらの抗体の機能性バリアントは、工学的に操作され、本明細書にさらに記載されるように使用される。
【0087】
特に、親抗体の抗体バリアントは、本明細書で提供する代表的な抗体のいずれかのような親抗体の少なくとも1つの抗体配列を工学的に操作することによって産生することができ、例えば、抗体バリアントは重鎖可変領域の少なくとも3つのCDR、さらに任意選択により軽鎖可変領域の少なくとも3つのCDRを含み、少なくとも1つのCDRもしくはFR領域、または重鎖(HC)または軽鎖(LC)の定常領域に少なくとも1つの点変異を有し、標的huTNFR1への特異的な結合によって測定された場合、依然として機能的に活性である。
【0088】
特に、抗体バリアントは変異抗体または抗体断片であり、例えば変異誘発方法によって得られ、特に、特定の抗体アミノ酸配列または領域に欠失、交換、インサートを導入し、または化学的にアミノ酸配列を誘導し、例えば定常ドメインにおいて抗体安定性、エフェクター機能または半減期を工学的に操作し、または可変ドメインにおいて例えば当技術分野で利用可能な親和性成熟技術によって抗原結合特性を改善する。例えばランダム化技術によって得られる、所望の位置に点変異を含む、任意の公知の変異誘発法が用いられ得る。いくつかの場合、例えば任意の可能なアミノ酸または好ましいアミノ酸の選択のいずれかにより、位置はランダムに選ばれ、抗体配列をランダム化する。用語「変異誘発」は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を変更する任意の当技術分野で認識された技術を指す。変異誘発の好ましい型は、エラープローンPCR変異誘発、飽和変異誘発、または他の部位定方向変異誘発を含む。
【0089】
点変異は、特に、異なるアミノ酸の1つまたはそれ以上の単一(非連続)または二重のアミノ酸の置換もしくは交換、欠失もしくは挿入により、工学的に操作していないアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列の発現をもたらすポリヌクレオチドの工学的な操作と理解される。
【0090】
特に、機能的に活性なバリアント抗体は、1つもしくはそれ以上のアミノ酸のいずれか1つまたはそれ以上の挿入、欠失または置換による親抗体または親抗体配列の改変によって産生され、またはアミノ酸配列における1つもしくはそれ以上のアミノ酸残基、またはヌクレオチド配列内のヌクレオチド、または配列の遠位端のいずれかもしくは両方、例えば、CDR配列N末端および/またはC末端1、2、3、または4アミノ酸、および/または中心の1、2、3、または4アミノ酸(すなわち、CDR配列の中央)の化学誘導体であり、その改変はこの配列の活性に影響、特に障害しない。選択された標的抗原に対する特異性を有する結合部位の場合、抗体の機能的に活性なバリアントは、事前に決定された結合特異性、または実質的に同じ生物活性をなお有するが、これは、例えば、特定のエピトープに対する良好な特異性、親和性、結合活性、KonまたはKoff速度等を変化させるために変化され得る。例えば、親和性成熟抗体は、機能的に活性なバリアント抗体として特に理解される。したがって、親和性成熟抗体において改変されたCDR配列は、機能的に活性なCDRバリアントとして理解される。
【0091】
親和性成熟は、それにより標的抗原への親和性が増加した抗体が産生されるプロセスである。当技術分野で利用可能な親和性成熟ライブラリーを調製および/または使用するいずれか1つまたはそれ以上の方法が、本明細書に開示の本発明の様々な実施形態に従って親和性成熟抗体を生成するために用いられ得る。代表的なそのような親和性成熟方法および使用、例えばランダム変異誘発、細菌変異誘発株継代、部位定方向変異誘発、変異ホットスポット標的化、簡潔な変異誘発、抗体シャッフリング、軽鎖シャッフリング、重鎖シャッフリング、CDR1および/またはCDR1変異誘発、ならびに本明細書に開示の本発明の様々な実施形態に従って実行する方法および使用に受け入れられる親和性成熟ライブラリーを産生および使用する方法は、例えば、Wark & Hudson, 2006, Advanced Drug Delivery Reviews 58: 657- 670に開示のものを含む。
【0092】
アミノ酸変異誘発を含む、または免疫グロブリン遺伝子セグメントにおける体細胞変異の結果としての抗体の構造変化を用いて、抗原への結合部位のバリアントが産生され、より強い親和性のものが選択される。親和性成熟抗体は、親抗体よりも数log倍大きな親和性を示し得る。単一の親抗体が、親和性成熟され得る。あるいは標的抗原に対する類似の結合親和性を有する抗体のプールは親構造とみなされ、それらを変化させて親和性成熟した単一抗体または親和性成熟したそのような抗体のプールを得ることができる。
【0093】
本明細書に記載の抗体の好ましい親和性成熟バリアントは、結合の親和性の少なくとも2倍の増加、好ましくは少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、好ましくは少なくとも50倍、または好ましくは100倍の増加を示す。親和性成熟は、親分子のそれぞれのライブラリーを用いる選択作戦の過程で、中程度の結合親和性を有する抗体について、本明細書に記載の抗体を得るために用いられ得る。あるいは、親和性は、本明細書に記載の抗体の親和性成熟によってさらにより増加され、10-10Mより低い、さらに10-11Mより低いKDに対応する高い値を得ることができる。
【0094】
特定の実施形態では、結合親和性は、親和性ELISAアッセイによって決定される。特定の実施形態では、結合親和性はBIAcore、ForteBioまたはMSDアッセイによって決定される。特定の実施形態では、結合親和性は、動力学的方法によって決定される。特定の実施形態では、結合親和性は、平衡/溶液法によって決定される。特定の実施形態では、結合親和性は、標準的な水晶振動子マイクロバランス(QCM)測定によって、特に生体条件(約37℃、密度約50Hz)に似ている、事前に決定された条件で決定される。
【0095】
本明細書に記載の抗体の特定の機能は、TNF-huTNFR1相互作用の阻害剤(アンタゴニストとも呼ばれる)としての機能である。本明細書で理解される用語「阻害剤」は、
a)in vitroおよび/またはin vivoでTNFR1シグナリングを調節する(例えば、低減または排除する)、および/または
b)in vitroおよび/またはin vivoでTNFR1媒介細胞死を阻害する、および/または
c)in vitroおよび/またはin vivoで炎症性サイトカインを放出するTNF媒介細胞刺激を阻害する、
d)異なるメカニズムによるTNFR1シグナリングを阻害する
能力を有する物質である。
【0096】
特に、本明細書で使用する場合、抗体は、細胞表面上のTNFR1の1つまたはそれ以上の分子に対する1つまたはそれ以上の分子TNFの結合と干渉する。治療適用のため、理論に縛られるものではないが、TNF-huTNFR1相互作用阻害剤は、TNFの存在下でのhuTNFR1シグナリング、またはTNFの存在下でのhuTNFR1媒介細胞死を阻害する、またはTNFの存在下での炎症性サイトカインを放出する細胞刺激を阻害する能力を有し得る。
【0097】
本明細書で使用する場合、用語「シグナリング(signaling)」および「シグナル伝達(signal transduction)」は、細胞表面受容体を介する特定のおよび連続的な一連の分子による、刺激に対する特定の細胞応答を生じる核における遺伝子への細胞外刺激の伝達が関与する生化学プロセスを表す。
【0098】
huTNFR1相互作用の阻害は、細胞ベースアッセイでex vivoまたはin vivoで測定されたように、用量依存的な方法で、TNFR1シグナリングまたはシグナル伝達の効果の下方制御をもたらし得る。本明細書に記載の抗体の機能活性は、ex vivo細胞ベースアッセイで決定されたように、in vivoでのTNF-huTNFR1相互作用またはLTα-huTNFR1相互作用を阻害する阻害機能によって特に特徴付けられる。さらなるアッセイは、TNF-TNFR1相互作用をアゴナイズするTNFR1受容体の架橋と関連する実質的な副作用を除外するために用いられ得る。好適なアッセイは、それぞれ炎症性サイトカインIL-6またはIL-8を産生する刺激活性の不在に関し、HeLaまたはHT1080細胞上の抗体またはバリアントの活性を決定する。代表的な試験は、以下の実施例の節で記載する。
【0099】
阻害は、典型的には、huTNFR1相互作用または活性の効果の、少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または最大レベルまでの低減をもたらす。本明細書に記載の抗体を産生および特徴付ける方法は、当技術分野で周知である。好ましい実施形態では、抗体バリアントが産生され、huTNFR1発現細胞を用いる1つまたはそれ以上の細胞ベースアッセイまたはin vivoアッセイを使用して前規定された特性に関してスクリーニングされる。そのようなアッセイのため、抗体は、典型的には、例えば、TNFの存在下および不在下で、細胞が結合され得るように外因的に添加され、アンタゴニストおよびアゴニスト活性が決定される。これらのアッセイは、典型的には、免疫グロブリンの機能;すなわち、huTNFR1に結合し、いくつかの生化学事象、例えば、競合結合アッセイにおける、例えば前記細胞へのTNF結合の遮断、TNF/受容体結合阻害、TNF、特に炎症性インターロイキン、例えばIL-6またはIL-8の存在または不在下でのサイトカイン発現の低減、アポトーシス等を媒介する抗体の能力に基づく。
【0100】
本明細書に記載の抗体は、好ましくはTNFアンタゴニスト活性のみ(特に、検出可能なアゴニスト活性無し)を有し、したがって、望まない炎症応答、アポトーシスおよびネクローシス、または臓器不全をもたらし得る循環中の増加したTNFレベルによって引き起こされる炎症反応を低減する。好ましい抗体は、最大半量の飽和濃度、好ましくはそれぞれ0.01~0.1nM TNFおよびLTアルファの範囲でTNFまたはLTアルファを用いる細胞ベースアッセイで測定された場合、100nMより低い、好ましくは20nMより低い、より好ましくは10nMより低い、最も好ましくは1桁のナノモル範囲またはそれ以下のIC50に対応するアンタゴニスト活性を有する。
【0101】
潜在的なTNF模倣アゴニスト活性は、同じ細胞ベースアッセイで測定され得るが、TNFを用いない。本明細書に記載の抗体は、好ましくは、TNFの不在下でのHeLaまたはHT1080細胞のインキュベーションが、サイトカインを誘導しないまたはわずかにしか誘導しない、例えば、少なくとも5nMまたはおよそ10nMの抗体濃度で0.5ng/mlより低い上昇したIL-6またはIL-8レベルの場合、著しいアゴニスト活性を持たない。好ましくは、サイトカイン産生無し、またはわずかのみ、または陰性であり、10pg/105個の細胞より少ない量で決定され得る。好ましい例では、サイトカイン発現および放出は、18時間で2.5pg/100,000個の細胞より少ない。好ましくは、アゴニスト活性は、したがって基底レベルより低い、または匹敵するTNF濃度の応答の2%より低い、好ましくは等価または最大TNF応答の1%より少ない。
【0102】
本明細書に記載の抗体配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列をアラインし、最大配列同一性パーセントを達成するために必要であればギャップを導入した後、保存的置換はいずれも配列同一性の一部とみなさず、特定のポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして規定される。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するのに適切なパラメーターを決定することができる。
【0103】
本明細書で使用する場合、用語「抗原」は、用語「標的」または「標的抗原」と交換可能であり、全標的分子または抗体結合部位によって認識されるそのような分子の断片を指す。特に、抗原のサブ構造、例えば一般に「エピトープ」と呼ばれるポリペプチドまたは糖構造、例えば免疫関連のB細胞エピトープまたはT細胞エピトープは、そのような結合部位によって認識され得る。huTNFR1抗原は、ほとんどのヒト細胞の表面上の単量体または多量体サイトカイン受容体として、三量体TNFまたはLTαに特異的に結合することができる、受容体構造を含む抗原である。
【0104】
本明細書で使用する場合、用語「huTNFR1」は、ほとんどのヒト細胞上で一様に発現されるCD120a TNFR1(p55/60、TNFRSF1A腫瘍ネクローシス因子受容体スーパーファミリー、メンバー1A[ホモサピエンス(ヒト)]、Gene ID:7132)受容体を指す。huTNFR1の特定の代表的な配列は、配列番号32として提供される。
【0105】
本明細書で使用する場合、用語「エピトープ」は、特に、抗体の結合部位に対して完全に特異的結合パートナーを構成するまたは特異的結合パートナーの一部であってよい分子構造を指す。エピトープは、糖、ペプチド構造、脂肪酸、有機物、生化学物質もしくは無機物、またはそれらの誘導体およびそれらの任意の組合せのいずれかから構成されてよい。エピトープがペプチド構造、例えば、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に含まれる場合、通常少なくとも3アミノ酸、好ましくは5~40アミノ酸、より好ましくは約10~20の間のアミノ酸を含む。エピトープは、線状または立体構造のいずれかのエピトープであり得る。線状エピトープは、ポリペプチドまたは糖の一次配列の単一セグメントから構成される。線状エピトープは、隣接またはオーバーラップし得る。
【0106】
立体構造エピトープは、ポリペプチドがフォールディングによって近づけられて三次構造を形成したアミノ酸または糖から構成され、アミノ酸は、線状配列において互いに必ずしも隣接しない。特に、ポリペプチド抗原に関して、立体構造または不連続エピトープは、一次配列中で離れるが、ポリペプチドがフォールドして天然のタンパク質/抗原になった場合、分子の表面上でアセンブルして統合された構造になった、2つまたはそれ以上の別々のアミノ酸残基の存在によって特徴付けられる。
【0107】
本明細書では、用語「エピトープ」は、特に、huTNFR1に含まれるエピトープを指し、それは、膜遠位CRD1およびhuTNFR1のCDR2のサブドメインA1に組み込まれるエピトープである。
【0108】
本明細書で使用する場合、核酸、抗体または他の化合物に関して用語「単離された」または「単離」は、自然に随伴していた環境から「実質的に純粋な」形態で存在するために、十分に分けられたそのような化合物を指す。「単離された」は、他の化合物もしくは材料との人工的もしくは合成混合物の除外、または基本の活性と干渉しない、例えば不完全な精製によって存在し得る不純物の存在の除外を必ずしも意味しない。
【0109】
ポリペプチドまたはタンパク質、例えば本明細書に記載の単離された抗体に関して、用語「単離された」は、特に、それらが自然状態で随伴する物質、例えばそれらの自然環境で、または調製がin vitroまたはin vivoで実施された組換えDNA技術による場合、それらがそのような調製がされる環境(例えば、細胞培養)で、それらと共に見出される他の化合物を含まないまたは実質的に含まない化合物を指す。単離された化合物は、希釈剤またはアジュバントと配合され、依然として実際的な目的のために単離されている、例えば、診断または治療で使用される場合ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、薬学的に許容される担体または賦形剤と混合され得る。
【0110】
本明細書で使用される場合、用語「組換え」は、「遺伝子工学な操作によって調製されたか、またはその結果」を意味する。組換え宿主は、特に、発現ベクターまたはクローニングベクターを含み、または特に宿主に外来のヌクレオチド配列を用いて組換え核酸配列を含有するように遺伝子工学的に操作されている。組換えタンパク質は、宿主においてそれぞれの組換え核酸を発現させることによって産生される。
【0111】
本明細書にさらに記載される抗体は、組換え抗体であってよい。このため、本明細書で使用する場合、用語「組換え抗体」は、例えば(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックまたはトランスクロモソーマル(transchromosomal)である動物(例えばマウス)またはそれから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーまたは抗体の抗原結合配列のライブラリーから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングが関与する任意の他の手段によって調製、発現、作製または単離された抗体などの組換え手段によって調製、発現、作製または単離された抗体を含む。そのような組換え抗体は、例えば抗体成熟中に生じる再編成および変異を含むように工学的に操作された抗体を含む。本発明により、従来の分子生物学、微生物学、および当業者の範囲内の組換えDNA技術が用いられてよい。そのような技術は、文献に完全に説明されている。例えば、Maniatis, Fritsch & Sambrook, "Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, (1982)参照。
【0112】
本明細書に記載の抗体は、好ましくは、例えば大腸菌(E.coli)の細胞膜周辺腔での発現により、または例えばCHO、HEK、もしくはヒト産生宿主細胞系による、イーストもしくは哺乳動物など、真核細胞発現システムでの分泌タンパク質としての発現により、宿主細胞を用いる組換え発現システムによって産生される組換えタンパク質として提供される。
【0113】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、抗体産生のために最も一般的に使用されている。好適なグリコシル化パターンの提供に加え、これらの細胞は遺伝的に安定な、高生産性のクローン細胞系の一貫した生成が可能である。これらは、無血清培地を使用する簡単なバイオリアクター中で高密度に培養され、安全および再生産可能なバイオプロセスの開発を可能にする。
【0114】
宿主細胞は、無血清条件下、および任意選択により動物起源の任意のタンパク質/ペプチドを含まない培地中で確立、適応、および完全に培養される場合、最も好ましい。
本明細書で使用する場合、「特異的」結合、認識または標的化は、結合剤、例えば抗体または抗体の抗原結合部位が、分子の異種集団における標的抗原またはそれぞれのエピトープに対する明らかな親和性を示すことを意味する。したがって、指定した条件(例えば、免疫アッセイ)下で、結合剤は標的抗原に特異的に結合し、試料中に存在する他の分子には有意な量で結合しない。特異的結合は、標的の同一性、または選択されるような高度、中度、もしくは低度の結合親和性または結合活性に関して結合が選択的であることを意味する。選択的結合は、通常、別の標的と比較して、結合定数または結合動態が少なくとも10倍異なり(少なくとも1 log差として理解される)、好ましくは差が少なくとも100倍であり(少なくとも2 log差として理解される)、より好ましくは少なくとも1000倍である(少なくとも3 log差として理解される)場合に達成される。差次的な結合は、免疫アッセイ、好ましくは免疫ブロッティング、ELISAまたは他の免疫学的方法によって決定されてよい。特定の標的に対する抗体分子の特異性は、競合アッセイによって、例えばHarlow, et al., ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988に記載のように決定され得る。選択的結合は、当技術分野で公知の組換え抗体最適化方法によって、工学的に操作されるか、または改善され得る。例えば、本明細書に記載の免疫グロブリン鎖の可変領域の特定の領域は、選択されたCDRまたはフレームワーク領域の軽鎖シャッフリング、部位指定変異誘発、CDR融合、定方向変異誘発を含む1つまたはそれ以上の最適化戦略に供されてよい。
【0115】
用語「同じ特異性を有する」、「同じ結合部位を有する」または「同じエピトープを結合する」の使用は、同等なモノクローナル抗体が、同じまたは本質的に同じ、すなわち類似の免疫反応(結合)特性を示し、前選択された標的結合配列に対する結合と競合することを示す。特定の標的に対する抗体分子の相対的特異性は、例えば、Harlow, et al., ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988に記載される競合アッセイによって相対的に決定され得る。
【0116】
本明細書では、競合は、競合ELISA分析によりまたはForteBio分析により決定された場合、約30%より大きな相対阻害を意味する。特定の状況において、例えば意図する抗原の結合機能を持つように設計された新規の抗体を選択またはスクリーニングするために競合分析が使用される場合、競合の好適なレベルの基準としてより高い相対阻害の閾値を設定することが望ましいことがある。したがって、抗体が十分に競合的であるとみなす前に、例えば少なくとも40%、または少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはさらに少なくとも100%の相対阻害が検出される場合に競合結合の基準を設定することが可能である。
【0117】
本明細書で使用する場合、用語「患者」は、ヒトおよび他の哺乳動物対象を指す。特に、本明細書に記載の医学的使用またはそれぞれの処置の方法は、NASHまたはNASHと関連する疾患状態の予防もしくは処置を必要とする対象に適用される。対象は、初期もしくは後期疾患を含む、NASHになるリスクのあるまたは罹患している患者であってよい。用語「患者」は、特に、予防処置および/または治療処置を受ける対象を含む。したがって、用語「処置」は、予防処置および治療処置の両方を含むことを意味する。
【0118】
特に、用語「治療」は、疾患を治癒するまたは疾患の症状を低減するための投与を包含することを意図する治療法を指す。
特に、用語「予防」は、防止法を指し、疾患発症、または疾患の再発のリスクを低減することを意図する。
【0119】
本明細書において、化合物、例えば本明細書に記載の抗体の用語「有効量」または「十分な量」のいずれかと交換可能に使用される用語「治療有効量」は、対象に投与した場合に有益または臨床結果を含む所望の結果を生じるのに十分な量または活性であり、したがって、有効量またはその同義語はそれが適用される状況に依存する。
【0120】
有効量は、そのような疾患または障害を処置、防止、または阻害するのに十分な化合物の量を意味するものとする。疾患に関して、治療有効量の本明細書に記載の抗体は、特に、TNF-TNFR1相互作用の阻害が有益となる疾患または状態を処置、調節、減弱、反転し、またはそれに影響を及ぼすために使用される。
【0121】
そのような有効量に対応する化合物の量は、例えば、所与の薬物または化合物、医薬製剤、投与経路、疾患または障害の型、処置される対象または宿主の素性など、様々な因子に応じて変わるであろうが、それにもかかわらず当業者によって常法通りに決定され得る。
【0122】
本明細書にさらに記載するように、患者を処置する方法は、治療有効量の上記のhuTNFR1抗体を、それを必要とする患者に投与するステップを含む。典型的には、治療有効量は、0.5~500mg、好ましくは1~400mgの範囲、さらにより好ましくは最高300mg、最高200mg、最高100mgまたは最高10mgであるが、例えば肥満患者または急性疾患状態を処置するためにはより高い用量が指定されてよい。
【0123】
本明細書に記載の好ましい医薬組成物は、治療有効量のhuTNFR1抗体および任意選択により薬学的に許容される担体、薬学的に許容される塩、助剤、安定剤、希釈剤および溶媒、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される1つまたはそれ以上のさらなる成分を含む。
【0124】
一実施形態では、本明細書に記載の抗体は、患者に投与される治療活性剤のみである。あるいは、本明細書に記載の抗体は、限定はされないがTNFアンタゴニスト、抗炎症剤、サイトカイン、増殖因子、または他の治療剤を含む、1つまたはそれ以上の他の治療剤と組み合わせて投与される。TNFR1アンタゴニスト抗体は、1つまたはそれ以上の他の治療レジメンと、好ましくは抗TNF治療、例えば抗TNF抗体と、同時にまたは連続して投与され得る。本明細書に記載の抗体は、抗TNF治療が有効ではなかった場合に、急性または慢性処置のいずれかとして、好ましくは、第一選択処置として、または第二選択治療として患者に投与される。特に好ましい医学的使用は、慢性疾患の処置である。
【0125】
さらに、治療有効量の本明細書に記載の抗体による対象の処置または防止レジメンは、単回投与からなってよく、または代わりに一連の適用を含んでよい。例えば、抗体を少なくとも年に1回、少なくとも半年に1回、または少なくとも1ヵ月に1回投与することができる。しかし、別の実施形態では、抗体は、所与の処置のために約週1回から約1日1回の投与まで対象に投与され得る。処置期間の長さは、疾患の重症度、急性または慢性のいずれかの疾患、患者の年齢、抗体フォーマットの濃度および活性など、多様な因子に依存する。特定の処置または予防レジメンの過程にわたって処置または予防に用いる有効投与量を増加または減少させることができることも認識されるであろう。投与量の変更は、当技術分野で公知の標準的な診断アッセイにより得ることができ、明らかになる。いくつかの場合では、慢性投与が必要になることがある。
【0126】
「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」は肝臓疾患であり、アルコール消費量と関係せず、肝細胞の脂肪化(fatty change)によって特徴付けられ、小葉内の炎症および線維症を伴う。NASHは一般に、「サイレント」肝臓疾患であることが多い。それはアルコール性肝臓疾患に似ているが、アルコールをほとんど飲まないまたは飲まない人々に生じる。3つの主な性質がNASHを特徴付け、代謝原因の他の肝臓疾患とそれを区別する:肝臓における異常な脂肪蓄積または堆積(脂肪肝)、肝臓炎症、および肝臓傷害または肝臓組織損傷(線維症)。
【0127】
NASHは、末期の肝臓疾患、肝硬変および肝細胞癌に進行する実質的なリスクを持つ深刻な状態である可能性がある。肝硬変を発症する患者の中には、肝臓損傷のリスクがあり、ついには肝臓移植を必要とすることがある。NAFLDは、NAFLD活動性スコア(NAS)、脂肪変性(0~3)、小葉の炎症(0~2)、および肝細胞風船様変性(0~2)の肝臓生検の病理組織学的スコアの合計によってNASHから区別される。<3のNASはNAFLDに対応し、3~4はボーダーラインのNASHに対応し、>5はNASHに対応する。生検は、線維症に関してもスコア化(0~4)される。
【0128】
本明細書で使用する場合、NASHを罹患している患者は、NASHを有する、またはNASHと診断された、またはNASHを遺伝的に発生しやすい、または彼または彼女がメタボリックシンドローム、肥満、糖尿病または糖尿病予備軍を罹患しているためNASHを発生しやすい可能性がある患者である。さらに他の実施形態では、NASHを罹患している患者は、試験され、彼または彼女がまだNASHのいずれの身体的な症状も示していないかもしれない場合でさえも、NASHの臨床所見特徴(肝臓における脂肪の異常な蓄積、肝臓炎症および肝線維症)を示すことが見出された患者である。いくつかの例では、NASHを罹患している患者は、診断がまだなされていない場合でさえもNASHの症状を示す。
【0129】
NASHの処置は、NASHの肝硬変への進行の減速または停止をもたらし得る。いくつかの処置レジメンは、NASHと関連する身体症状、または身体症状もしくは臨床症状もしくは臨床所見のセットの発症を遅延することを目的とする。いくつかの実施形態では、処置は、NASHの少なくとも1つの測定可能な身体症状、例えば体重減少、虚弱または疲労などの改善をもたらす。他の実施形態では、処置は、例えば異常な肝臓脂肪蓄積、生検によって決定された肝線維症、肝臓炎症、異常なレベルの肝臓酵素(例えばALT)、異常なレベルの炎症性サイトカインまたはNASスコアなど、NASHの少なくとも1つの臨床指標または所見の改善をもたらす。他の実施形態では、処置は、例えば測定可能な症状または症状のセット(疲労、体重減少または虚弱など)の安定化により身体的に、または例えば肝臓における異常な脂肪蓄積、異常なレベルの肝臓酵素、異常なレベルの肝臓炎症マーカー、肝臓生検における異常な所見、NASスコアなどの測定可能な指標の安定化により臨床的/生理学的にのいずれか、または両方でNASHの進行の低減、阻害または減速をもたらす。別の実施形態では、処置は、疾患または障害がそれ自体完全に明らかになる前に、NASHの原因および/または効果もしくは臨床症状、またはNASHの結果として発生した症状の1つの防止ももたらし得る。いくつかの実施形態では、処置は、NASHを有する患者の生存率または生存時間の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、処置は、NASHを有する患者の肝臓移植を必要とする可能性の低減をもたらす。他の実施形態では、処置は、NASH患者の、肝臓移植を受ける必要性の排除をもたらす。他の実施形態では、それは、NASHを有する患者の肝硬変を発症する機会の低減をもたらす。他の実施形態では、それは、組織学によって決定されたように肝硬変への進行の防止をもたらす。
【0130】
本明細書に記載の特定の実施形態は、「モノクローナル」抗体(mAb)を指す。モノクローナル抗体は、モノクローナル宿主細胞またはそれぞれの細胞系に抗体遺伝子をクローニングすることによって産生される。モノクローナル抗体は、例えば、組換え真核生物(哺乳動物または昆虫)または原核生物(細菌)宿主細胞を培養する、培養中の細胞系によって抗体分子を産生する任意の方法を使用して産生され得る。モノクローナル抗体を調製する好適な方法の例は、Kohler & Milstein (1975, Nature 256:495-497)のハイブリドーマ法およびヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor, 1984, J. Immunol. 133:3001;およびBrodeur et al ., 1987, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, (Marcel Dekker, Inc., New York), pp. 51 -63)を含む。
【0131】
本明細書に記載の抗体は、ハイブリドーマ法を用いて同定され、または得られてよい。そのような方法では、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えばハムスターは、免疫化に使用されるタンパク質に特異的に結合するであろう抗体を産生するまたは産生することができるリンパ球を誘発するように免疫される。あるいは、リンパ球はin vitroで免疫され得る。次いでリンパ球は、好適な融合剤、例えばポリエチレングリコールを使用してミエローマ細胞と融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する。
【0132】
ハイブリドーマ細胞が増殖する培養培地は、抗原を指向するモノクローナル抗体の産生をアッセイされる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性が、免疫沈降によって、または放射免疫アッセイ(RIA)または酵素免疫測定法(ELISA)など、in vitro結合アッセイによって決定される。
【0133】
次いで、モノクローナル抗体は、標的抗原のその特異的結合をさらに試験するため、および例えば異なる診断または治療目的のための抗体の工学的な操作のため、ハイブリドーマ上清から精製され得る。
【0134】
いくつかの例では、huTNFR1特異的抗体は、huTNFR1抗原に対するスクリーニングによって明らかになる。差次的に結合するクローンを単離する可能性を増加するため、異なる抗原またはエピトープに対して進化的にスクリーニングすることによって多重選択圧を適用する。
【0135】
所望の選択的結合特性を有する抗体を同定するためのスクリーニング方法は、ライブラリーディスプレイ抗体配列またはその抗原結合配列を使用するディスプレイ技術によって行われてよい(例えば、ファージ、細菌、酵母または哺乳動物細胞;または核酸情報をそれぞれの(ポリ)ペプチドに翻訳するin vitroディスプレイシステムを使用する)。反応性は、ELISA、ウェスタンブロッティングまたはフローサイトメトリーを伴う表面染色に基づいて、例えば標準的なアッセイを使用して評価され得る。
【0136】
単離された抗体は、抗体ライブラリー、例えばファージ、ファージミドまたは酵母ディスプレイ抗体ライブラリーから抗体を選択するために使用され得る。
本明細書に記載の特定の実施形態は、「医薬組成物」に関し、そのような組成物は、本明細書に記載の抗体および薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含んでよく、特に人工的な、非自然発生の組成物を得る。これらの医薬組成物は、本発明に従ってボーラス注射もしくはボーラス注入として、または連続注入により投与され得る。そのような投与手段を容易にするのに好適な医薬担体は、当技術分野で周知である。
【0137】
薬学的に許容される担体は、通常、任意のおよび全ての好適な溶媒、分散培地、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化剤ならびに吸収遅延剤など、本明細書に記載の抗体または関連する組成物もしくは組合せと生理的に適合するものが含まれる。薬学的に許容される担体のさらなる例には、無菌水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにそれらのいずれかの組合せが含まれる。
【0138】
そのような一態様では、抗体は、所望の投与経路に好適な1つまたはそれ以上の担体と組み合わせることができ、抗体は、例えば乳糖、ショ糖、デンプン、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、アラビアゴム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリジン、ポリビニルアルコールのいずれかと混合され、任意選択により、従来の投与のためにさらに打錠またはカプセル封入することができる。あるいは、抗体は、生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、エタノール、トウモロコシ油、落花生油、綿実油、ゴマ油、トラガカントゴム、および/または様々な緩衝液に溶解され得る。担体は、制御放出物質または時間遅延物質、例えばモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル単独もしくはワックスとの併用、または当技術分野で周知の他の物質を含み得る。
【0139】
さらなる薬学的に許容される担体が当技術分野で公知であり、例えばREMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCESに記載されている。液体製剤は、液剤、乳剤または懸濁液剤であってよく、懸濁化剤、可溶化剤、界面活性剤、保存剤およびキレート化剤などの賦形剤を含み得る。
【0140】
本明細書に記載の抗体および1つまたはそれ以上の治療活性剤が配合された医薬組成物が検討される。本明細書に記載の抗体の安定製剤は、所望の純度を有する前記抗体を、場合により薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することにより、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、保管のため調製される。in vivo投与のために使用される製剤は無菌である。これは、除菌濾過メンブレンによる濾過または他の方法によって容易に達成される。本明細書に開示する抗体および他の治療活性剤は、イムノリポソームとして製剤化し、および/またはマイクロカプセルに封入してもよい。
【0141】
本明細書に記載の抗体を含む医薬組成物の投与は、経口、皮下、静脈内、鼻腔内、耳腔内、経皮、粘膜、局所、例えばゲル剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤など、腹腔内、筋肉内、例えば吸入技術もしくは肺送達システムを用いて肺内、膣内、非経口、直腸内、または眼内を含む様々な方法で行うことができる。
【0142】
非経口投与に使用される代表的な製剤は、皮下、筋肉内または静脈内注射に好適なもの、例えば無菌の液剤、乳剤または懸濁液剤を含む。
一実施形態では、本明細書に記載の抗体は、例えば疾患修飾または防止のための単剤治療として対象に投与される唯一の治療活性剤である。
【0143】
別の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、例えば混合物またはキットの一部中でさらなる活性物質と組み合わされ、疾患修飾または防止併用治療などの治療または予防を必要とする対象を処置する。
【0144】
1つまたはそれ以上の他の治療剤または予防剤との組合せは、標準的な処置、例えば抗生物質、ステロイドおよび非ステロイドの炎症阻害剤、および/または他の抗体ベースの治療を含み得る。組合せは、炎症プロセスが二次炎症、変性または悪性疾患状態をもたらす、原疾患を処置するために使用される薬剤を特に含み得る。原疾患は、例えばNASHであり、組合せは例えばNSAIDまたは他の新規の薬剤、例えばFXRアゴニスト、GLP1Rアゴニスト、またはPPARアゴニストを含む。
【0145】
組合せ治療では、抗体は混合物として、または1つまたはそれ以上の他の治療レジメンを併用して、例えば組合せ治療の前、同時または後に投与され得る。
本明細書に記載の抗体またはそれぞれの医薬調製物の生物学的特性は、細胞、組織、および全臓器実験においてex vivoで特徴付けられ得る。当技術分野で公知のように、疾患または疾患モデルに対する処置の薬物の有効性を測定するため、または薬物の薬物動態、薬力学、毒性、および他の特性を測定するために、薬物は、限定はされないが、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、およびサルを含む動物においてin vivoで試験されることが多い。動物は疾患モデルと呼ばれる。治療は、限定はされないが、ヌードマウス、SCIDマウス、異種移植片マウス、およびトランスジェニックマウス(ノックインおよびノックアウトを含む)を含むマウスにおいて試験されることが多い。そのような実験は、受動免疫治療時に適切な半減期、エフェクター機能、阻害剤活性および/または免疫応答により治療用としてまたは予防用として使用される抗体の能力の決定のために有意義なデータを提供することができる。任意の生物、好ましくは哺乳動物は、試験のために使用され得る。例えば、そのヒトとの遺伝的類似性のため、霊長類、サルは好適な治療モデルであり、したがって、有効性、毒性、薬物動態、薬力学、半減期、または対象の薬剤もしくは組成物の他の特性を試験するために使用され得る。ヒトでの試験は、薬物としての認可のために最終的に必要であり、したがってもちろん、これらの実験は考慮される。したがって、本明細書に記載の抗体およびそれぞれの医薬組成物はヒトで試験され、それらの治療または予防有効性、毒性、免疫原性、薬物動態、および/または他の臨床特性を決定され得る。
【0146】
したがって、本発明は、NASH、特にNASHと関連するこれらの疾患状態の処置の新規の方法を提供する。マウスモデルにおいて示したように、抗TNFR1抗体が、脂肪肝およびNASHの組織学的疾患活動性を著しく改善していたことは驚きであった。TNFR1阻害は、脂肪肝およびトリグリセリド含量のパーセンテージの著しい低減をもたらした。さらに、脂肪変性、風船様変性、および小葉の炎症を検討するNAFLD活動性スコアは、抗TNFR1抗体処置によって著しく減少された。選択的TNFR1阻害が、NAFLDマウスモデルの肝線維症を改善しており、肝臓組織における線維症を低減することによって肝線維症を処置することさえもできたことは予想外であった。抗TNFR1抗体処置が、肝臓組織においてアポトーシスを低減できたことがさらに示された。さらに、ALTおよびインシュリン血清レベルの著しい低減が達成された。したがって、抗TNFR1抗体による処置は、NAFLDにおける炎症およびインシュリン耐性の著しい改善をもたらした。
【0147】
NASHまたは脂肪変性の発症はTNFi治療の副作用として報告されていたため、先行技術を考慮して、抗TNFR1抗体が、NASHでの脂肪肝および組織学的疾患活動性を著しく改善することは特に驚きであった。Feagins et al.は、インフリキシマブ、アダリムマブまたはエタネルセプトのいずれかによって処置されたクローン病、リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎、および強直性脊椎炎の患者が、TNFi処置中に異常なALTレベルを発生し、肝臓生検にNAFLD(NASHまたは脂肪症)を示したことを報告した(Eur J Gastroenterol Hepatol. 2015, 27(10):1154-1160)。したがって、TNFR1の選択的阻害がNASHに対して有効であることは非常に予想外であった。
【0148】
本明細書に記載の代表的な抗体は、例えばWO2012035141によって産生された全長抗体、および/またはWO2008113515A2に記載のその親マウス抗体H398、親和性成熟の機能的に活性なバリアントおよび/または前述のいずれかの抗体断片、または一価の抗huTNFR1結合剤であり、WO2017174586A1に記載の一価の抗体などの前述のいずれかの抗原結合部位を含むこれらの抗体である。
【0149】
本発明は、それに限定されないいが以下の実施例によってさらに示される。
【実施例】
【0150】
実施例1
実験的NAFLDを有するマウスにおける脂肪肝および組織学的疾患活動性の改善
方法:
B6-huTNFR1-k/iマウスは、飲用水中、60% kcal脂肪+フルクトース/サッカロースからなる高脂肪食(HFD)を24週間受け(Kohli R et al., Hepatology 2010)、さらに8週間、抗TNFR1(Atrosab)またはコントロール抗体(セツキシマブ、抗EGFR抗体、Erbitux(登録商標)、ImClone Systems、Bristol-Myers Squibbund Merck KGaA)処置(20mg/kg体重、2x/w)のいずれかによって補完された。
【0151】
本明細書で使用するAtrosab抗体は、WO2012035141に従って産生された全長抗体であり、VHおよびVLドメインの組合せに組み込まれた抗原結合部位を含み、6つのCDR配列を含み、それらは:
配列番号23:VH-CDR1
配列番号24:VH-CDR2
配列番号25:VH-CDR3
配列番号26:VL-CDR1
配列番号27:VL-CDR2
配列番号28:VL-CDR3
である。
【0152】
処置の最後に、差次的に処置されたマウスからの肝臓組織は、脂肪肝、NAFLD活動性スコア、アポトーシスおよび線維症を比較された。
Kleiner et al. (Hepatology 2005)により、脂肪変性のパーセンテージならびにNAFLD活動性スコア(NAS)が、病理医によって評価された。トリグリセリド含量は、酵素試験(Roche Diagnostics)を使用することによって、ホモジナイズした肝臓組織において決定された。アポトーシスは、活性化カスパーゼ3に対する抗体を使用する免疫組織化学によって調べられた(Cell Signaling)。線維症は、製造業者(Sigma Aldrich)のプロトコールに従ってSirus Red染色によって検出され、記載されたように定量された(Schindelin J et al., Nat Methods 2012)。
【0153】
血清は、動的UV試験(Beckman Coulter)によってALTレベル分析され、インシュリンレベルは製造業者の指示に従って、超高感度マウスインシュリンELISAキット(Crystal Chem.)を使用して測定された。
【0154】
結果:
Atrosab処置は、実験的NAFLDを有するマウスにおいて、脂肪肝および組織学的疾患活動性の著しい改善をもたらした。
【0155】
抗TNFR1抗体(Atrosab)またはコントロール(セツキシマブ)抗体によって処置されたHFDマウスの肝臓組織は、脂肪肝、トリグリセリド含量およびNAFLD活動性スコア(NAS)によって評価された疾患活動性のパーセンテージを組織学的に分析された。コントロール抗体によって処置されたマウスと比較して、TNFR1阻害は、脂肪肝(p<0.05;
図1A)ならびにトリグリセリド含量(p<0.01;
図1B)のパーセンテージの著しい低減をもたらした。さらに、脂肪変性、風船様変性、および小葉の炎症を検討するNAFLD活動性スコア(NAS)は、コントロールマウスと比較してAtrosab処置マウスで著しく(p<0.05)減少した(
図1C)。
【0156】
実施例2
選択的TNFR1阻害は、NAFLDマウスモデルの肝線維症の改善と関係する
選択的TNFR1阻害が脂肪肝およびNASを改善することが実証されると、線維症低減へのAtrosabの効果が分析された。コントロール抗体によって処置されたマウスと比較して抗TNFR1抗体によって処置されたマウスにおいて、肝線維症の改善が実証され、Sirius Red染色によって評価された(
図2A)。線維化領域の定量は、コントロールマウスと比較して抗TNFR1抗体によって処置されたマウスからの肝臓組織において著しい(p<0.05)線維症の低減を明らかにした(
図2B)。
【0157】
実施例3
抗TNFR1抗体によって処置されたNAFLDマウスの肝臓組織におけるアポトーシスの低減
最初の実験では、マウスは、抗TNFR1抗体またはコントロール抗体のいずれかによる4週間の処置を含む20週間HFDを受けた。抗TNFR1抗体処置は、4週間の処置期間内にすでに、活性カスパーゼ3の免疫組織学分析によって評価された、アポトーシスを低減できることが実証された。コントロール抗体と比較して、抗TNFR1抗体によって処置されたマウスの肝臓組織で、活性カスパーゼ3の著しい(p<0.05)低減が観察できた。(
図3)
実施例4
抗TNFR1抗体によって処置されたNAFLDマウスの血清におけるALTおよびインシュリンレベルの改善
抗TNFR1抗体によって処置されたマウスの組織学的な改善の観察に則して(
図1および
図2)、コントロール抗体によって処置されたマウスと比較して抗TNFR1抗体によって処置されたマウスのALT(
図4A)およびインシュリン血清レベル(
図4B)の著しい(p<0.05)低減が実証された。したがって、選択的抗TNFR1阻害は、炎症およびインシュリン耐性の著しい改善をもたらした。
【0158】
実施例5
Atrosimabの説明-産生および特徴付け
材料
Atrosab抗体は、実施例1に記載のように得られた。組換えヒトTNFR1-Fc融合タンパク質は、WO2012035141に記載のように産生された。Atrosimab(HC:配列番号18;LC:配列番号13)は、Catalent(Catalent Pharma Solutions、Somerset、Ewing、NJ、US)によるCHO細胞へのレンチウイルス形質導入後に産生および精製された。抗His-HRP(HIS-6 His-Probe-HRP、sc-8036)はSanta Cruz Biotechnology(Santa Cruz、CA、USA)から購入された。抗ヒトIgG A(ヤギ、ポリクローナル、2010-01)は、SouthernBiotechから得られ、抗ヒトIgG B(ヤギ、ポリクローナル、MBS571163)ならびに抗ヒトIgG B(ヤギ、ポリクローナル、MBS571678)はMyBioSource(San Diego、CA、USA)から得られた。さらに、抗ヒトIgG(Fab特異的、A 0293)および抗ヒトIgG(Fc特異的、A 0170)はSigma-Aldrich(Taufkirchen、Germany)から購入された。
【0159】
タンパク質産生
参照タンパク質Fab13.7は、ポリエチレンイミン(線状、25kDa、Sigma-Aldrich、Taufkirchen、Germany)を使用して一過的にトランスフェクトしたHEK293E細胞においてWO2017174586A1に記載のように産生され、製造業者に推奨されるように厳密にタンパク質親和性クロマトグラフィーによって精製された(CaptureSelect(商標)IgG-CH1 Affinity Matrix、194320005、Thermo Fisher Scientific、Dreieich、Germany)。
【0160】
タンパク質特徴付け
Atrosimabの純度および正確なアセンブリは、還元剤としてベータ-メルカプトエタノールの存在下および不在下で、4μgの精製タンパク質を使用してSDS-PAGEによって分析された。ゲル中のタンパク質は、Coomassie-Brilliant Blueを使用して染色され、ゲルは水で脱染色された。インタクトなタンパク質は、Waters 2695 HPLCおよびPhenomenex Yarra SEC-2000カラム(300×7.8mm)を使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって分析された。標準タンパク質:チログロブリン(669kDa)、アポフェリチン(443kDa)、アルコール脱水素酵素(150kDa)、BSA(66kDa)、炭酸脱水酵素(29kDa)、FLAGペプチド(1kDa)。
【0161】
熱安定性
Atrosimabの融解/凝集温度(Tm)は、PBS中100μgの精製タンパク質を使用して動的光散乱法(ZetaSizer Nano ZS、Malvern、Herrenberg、Germany)によって決定された。適用した温度は、各測定の前に2分間の平衡化時間により、35℃から80℃まで1℃間隔で上げられた。Tmは、増加するシグナルの視覚的解釈によって決定された(kcps)。
【0162】
血漿安定性
精製されたAtrosimabの試料は、100nMの濃度にヒト血漿中で希釈され、1、3および7日間37℃でインキュベートされた。ヒトTNFR1への残存する結合能力の次の分析は、1~3.16(10の平方根)の段階によりPBS中2%スキムミルク(2% MPBS)で段階希釈後にELISAによって実施された。コントロール試料は、7日間PBS中4℃でインキュベートされ、またはヒト血漿中での希釈後直接凍結された。
【0163】
酵素免疫測定法(ELISA)
マイクロタイタープレートは、100μlのTNFR1-Fc融合タンパク質(PBS中1μg/ml)でコートされ、4℃で終夜インキュベートされた。残りの結合部位は、室温で2時間、2%MPBS(PBS中スキムミルク、ウェルあたり200μl)でブロックされ、続いてPBSで2回洗浄された。2%MPBS中で希釈した100μlの試料は、100μlの2%MPBS中HRPコンジュゲート検出抗体との最終インキュベーション段階の前に室温で1時間インキュベートされた。結合したタンパク質は、100μl TMB基質溶液(1mg/ml 3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン[TMB]、100mM 酢酸Na緩衝液中0.006% H2O2、室温でpH6)で検出され、HRP反応は50μlの1M H2SO4の添加によって停止され、450nmの波長での吸光度がInfiniteマイクロタイタープレートリーダー(TECAN、Maennedorf、Switzerland)を使用して測定された。各インキュベーションステップの間および検出に先立ち、プレートはPBSTで2回、PBSで2回洗浄された。
【0164】
水晶振動子マイクロバランスを使用する親和性測定
タンパク質-タンパク質相互作用のリアルタイム結合動態は、水晶振動子マイクロバランス測定(Cell-200 C-Fast、Attana、Stockholm、Sweden)によって決定された。結合パートナー(TNFR1-Fc)の1つは、およそ94ΔHzの適度な密度で、製造業者のプロトコールに従ってLNB Carboxyl Sensor Chip(3623-3103、Attana、Stockholm、Sweden)上に化学的に固定化された。結合実験は、37℃で25μl/分の流速により、pH7.4の128nMと4nMの間(1:2希釈ステップ)にPBST(PBS、0.1% Tween20)で希釈された試料(分析物)によって実施された。チップは、25μlの20mMグリシン、pH2.0で再生された。3回の測定ごとに、ランニング緩衝液の注射が測定され、データ分析の前に結合曲線から引かれた。データは、Attanaによって提供されるソフトウェアを使用して回収され、Attache Office Evaluationソフトウェア(Attana、Stockholm、Sweden)およびTraceDrawe(ridgview instruments、Vange、Sweden)によって分析された。
【0165】
インターロイキン放出アッセイ
ウェルあたり2×104個のHeLa細胞またはHT1080細胞を96ウェルマイクロタイタープレートに播種し、100μlのRPMI1640+5% FCS中で終夜増殖させた。次の日、恒常的に産生されたサイトカインを除去するため、上清が交換された。細胞は、37℃、5%CO2で、RPMI1640+5%FCS中の希釈系列の試料とインキュベートされた。競合実験の場合、両方の分析したタンパク質試料は個々に調製され(単一濃度に滴定または希釈される)、続いてプレートに添加された。非刺激細胞はコントロールとして寄与した。16~20時間後、プレートは500gで5分間遠心分離され、細胞上清は、製造業者のプロトコールに従って実施されたELISAによって直接分析された。上清はRPMI1640(FCS無し)で希釈され、抗体はReagent Diluent(0.1%BSA、0.05% Tween20、20mM TRIS、150mM NaCl、pH7.5)で希釈された。コートしたマイクロタイタープレートは、PBS中1%BSA(ウシ血清アルブミン)を使用してブロックされ、洗浄ならびに検出および測定がELISAについて上記のように実施された。細胞培養上清中のIL-6およびIL-8の検出のためのサンドウィッチELISAキットは、ImmunoTools(Friesoythe、Germany)から購入された。
【0166】
細胞傷害性/細胞生存率アッセイ
細胞(ウェルあたり1×104個)は、96ウェルマイクロタイタープレートに播種され、37℃および5%CO2で終夜インキュベートされた。タンパク質は、RPMI1640+10%FCS中で希釈され、細胞に添加された。細胞傷害性アッセイは、上清が廃棄され、50μlのクリスタルバイオレット溶液がウェルに添加される前に24時間、37℃、5%CO2でインキュベートされた。続いて、プレートは20回ddH2Oで洗浄され、乾燥された。染色溶液中に含有されるメタノールによって固定化された生存および接着細胞から生じる残存するバイオレット色素は、10分間室温での振盪時に100μlのメタノールの添加によって溶解された。プレートはInfiniteマイクロタイタープレートリーダー(Tecan、Maennedorf、Switzerland)を使用して測定された。
【0167】
薬物動態
特定のマウス遺伝子の遺伝子座にヒトTNFR-1の細胞外ドメインの遺伝子を担持するトランスジェニックC57BL/6Jマウス(C57BL/6J-huTNFRSF1Aecdtm1UEG/izi, Dong et al., 2016)は、400μgのAtrosimabの静脈内注射を受けた。血液試料は、3分、30分、1時間、2時間および6時間ならびに3日および7日後に採取され、すぐに氷上でインキュベートされた。血清は、遠心分離(13.000g、4℃、10分)によって分離され、-20℃で保存された。血清中に残存するタンパク質は、上記のように結合ELISAによって検出された。ELISAシグナルは、分析したタンパク質の新しく作製した標準結合曲線から補間された。決定された濃度は、時間に対してプロットされ、薬物動態定数はMicrosoft ExcelのPKsolver add-inを使用する分析で得られた。
【0168】
実施例5.1:Atrosimabの生化学特徴付け
Atrosimabと名付けられた、一価の腫瘍ネクローシス因子(TNF)受容体1(TNFR1)-特異的アンタゴニストは、ヘテロ二量体化Fc分子Fc1k(ワン/カッパ)のN末端にFab13.7の可変ドメインを融合することによって生成された。このプロセスは、血清循環の延長を可能にするため、新生児期のFc受容体と相互作用する能力を備えた、サイズの増加したFab様一価の分子を生じた(
図6a)。生じる薬物候補Atrosimabは、数回のレンチウイルス形質導入後にCHO細胞で産生され、Catalent Pharma Solutions(Catalent Pharma Solutions、Somerset、Ewing、NJ、US)によるプロテインAアフィニティクロマトグラフィーおよび連続サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって精製された。
【0169】
Atrosimabは、81kDaの補間分子量および3.5nmのストークス半径r
sによって、保持時間17.9分でSECにおいて単一のピークを示した(
図6b)。還元条件下でのSDS-PAGEにおいて、38kDaと43kDaの2つのバンドが検出され、非還元条件下では70kDaの1つのバンドが検出された(
図6c)。これらのデータは、72kDaの算出された分子量によく対応し(35kDa鎖と36kDa鎖から構成される)、両ポリペプチド鎖の適切な発現および機能性ヘテロ二量体タンパク質の正確なアセンブリを示す。さらに、Atrosimabは、動的光散乱によって決定されたよう64℃の凝集点(T
m)を示し(DLS、
図6d)、それはDLSによって分析されたインタクトなIgG分子のものに匹敵する(Martin et al., 2014, Brader et al., 2015)。最終的に、ヒトTNFR1-FcへのAtrosimabの結合活性は、最高7日間のヒト血漿でのインキュベーション後変更されないままであり、良好な血漿安定性を示した(
図6e)。
【0170】
実施例5.2:AtrosimabのTNFR1、Fcγ受容体および補体タンパク質C1qへの結合
Atrosimabのその標的受容体TNFR1との相互作用は、平衡条件下でELISAによって分析され、0.4nMのEC
50値を生じ(
図7a)、親Fab13.7と比較した場合、結合活性の2分の1の低減を表し、二価のIgG ATROSABと比較して4分の1の低減を示した。さらに、Atrosimabは水晶振動子マイクロバランスを使用するリアルタイム結合試験においてヒトTNFR1に結合し、およそ94ΔHzの中程度の受容体密度で固定化され、1:1結合アルゴリズムによって分析されたように2.7nMの明らかなK
D値、および3.7×10
5M
-1s
-1のk
onおよび9.8×10
-4s
-1のk
offであった(
図7b)。注目すべきことに、Atrosimabは抗体媒介エフェクター機能を低減するように改変されるFc領域を含む(Armour et al., 1999)。したがって、Atrosimabは、ELISAによって実証されたように、ヒトFcγ受容体Ia、IIbおよびIIIaならびに補体タンパク質C1qへの結合のほぼ完全な欠如を示した(
図7c)。Fcγ受容体およびC1q結合に関して同一のFc改変を保有する、前述の抗ヒトTNFR1 IgG ATROSAB(Zettlitz et al., 2010)と比較した場合、結合は、同程度(FcγRIおよびFcγRIII)またはより明白(FcγRIIbおよびC1q)に低減した。
【0171】
実施例5.3:Atrosimabはin vitroでTNFR1活性化を阻害し、任意のアゴニスト活性を欠如する
Atrosimabは、IL-6を分析するためのHeLa細胞およびIL-8のためのHT1080細胞を使用する、インターロイキン(IL)放出実験、ならびにKym-1細胞を使用する細胞死誘導アッセイにおいて、50pMと500nMの間の分析した濃度範囲内での任意のアゴニスト生物活性の完全な不在を明らかにした(
図3a-c)。アゴニズムの同一の欠如は、親Fab13.7の場合に検出された。対照的に、二価のIgG ATROSABは、1nMと100nMの間の濃度でIL-6およびIL-8のわずかな放出を誘導し(
図8aおよびb)、以前に報告されたデータを確認した(Richter et al., 2013)。対照的に、ATROSABのわずかなアゴニスト活性は、Kym-1細胞死誘導アッセイで検出できなかった(
図8c)。
【0172】
さらに、Atrosimabは、HeLa IL-6放出アッセイおよびHT1080 IL-8放出アッセイにおいて0.1nM TNFによって誘導されたTNFR1の活性化を阻害し、それぞれ54.5nMおよび24.2nMのEC50値であった(
図8dおよびe)。さらに、Kym-1細胞において0.1nM TNFによって誘導される細胞死は、16.2nMのIC
50値でAtrosimabによって阻害された(
図8f)。親Fab13.7と比較した場合、これらのデータは生物活性の1.5倍から1.9倍の低減を示す(表1)。しかしながら、二価のIgG ATROSABの生物活性と比較して、Atrosimabは、それぞれIL-6放出アッセイ、IL-8放出アッセイおよび細胞死誘導アッセイにおいて決定されたように、TNF媒介TNFR1活性化の3.0倍、3.5倍および4.0倍より強力な阻害を実証した(表1)
【0173】
【0174】
例えば抗薬物抗体(ADA)によって媒介される、Atrosimabの二次的な架橋の潜在的リスクに対処するため、Atrosimabのアゴニスト性能は、HT1080細胞を使用するIL-8放出アッセイにおける3つの異なるマウス抗ヒトIgG血清の存在下で分析された(Richter et al. 2013)。マウス抗ヒトIgG血清のAtrosimab、Fab13.7およびATROSABへの結合はELISAによって実証された(データは示さない)。特に、Atrosimabは、分析した濃度範囲(50pMから500nM)内でのIL-8のいずれの放出も誘導せず、これは親Fab13.7でも観察された(
図9a-c)。対照的に、
図8で観察されたわずかな放出と比較した場合、二価のIgG ATROSABは明確に増加したIL-8の放出を誘導し(
図9a-c)、ATROSABと比較した場合、薬物特異的抗体の存在下でさえも、TNFR1の任意の活性化を媒介するAtrosimabの明らかに低減した傾向を示した。
【0175】
実施例5.4:Atrosimabの薬物動態
最終的に、Atrosimabの薬物動態特性は、ヒトTNFR1の細胞外ドメインの導入遺伝子を保有するC57BL/6J-huTNFRSF1A
ecd
tm1UEG/izi(Dong et al., 2016)マウスを使用する400μgのタンパク質のボーラス注射後に記録された(
図10、表2)。Atrosimabは、2.2±1.2時間の初期の半減期と41.8±18.1時間の末期の半減期でマウス循環から排除され、5856.0±1369.9μg/ml×hの曲線下面積をもたらす。
【0176】
【0177】
参照
Armour KL, Clark MR, Hadley AG, Williamson LM. Recombinant human IgG molecules lacking Fcgamma receptor I binding and monocyte triggering activities. Eur J Immunol. 1999 Aug;29(8):2613-24.
Brader ML, Estey T, Bai S, Alston RW, Lucas KK, Lantz S, Landsman P, Maloney KM. Examination of thermal unfolding and aggregation profiles of a series of developable therapeutic monoclonal antibodies. Mol Pharm. 2015 Apr 6;12(4):1005-17. doi: 10.1021/mp400666b.
Dong Y, Fischer R, Naude PJ, Maier O, Nyakas C, Duffey M, Van der Zee EA, Dekens D, Douwenga W, Herrmann A, Guenzi E, Kontermann RE, Pfizenmaier K, Eisel UL. Essential protective role of tumor necrosis factor receptor 2 in neurodegeneration. Proc Natl Acad Sci U S A 2016; 113:12304-9; PMID:27791020; https://doi.org:10.1073/pnas.1605195113
Martin N, Ma D, Herbet A, Boquet D, Winnik FM, Tribet C. Prevention of thermally induced aggregation of IgG antibodies by noncovalent interaction with poly(acrylate) derivatives. Biomacromolecules. 2014 Aug 11;15(8):2952-62. doi: 10.1021/bm5005756.
Zettlitz KA, Lorenz V, Landauer K, Munkel S, Herrmann A, Scheurich P, Pfizenmaier K, Kontermann R. ATROSAB, a humanized antagonistic anti-tumor necrosis factor receptor one-specific antibody. MAbs. 2010 Nov-Dec;2(6):639-47. Epub 2010 Nov 1.
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