(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】切換弁およびバッファチャンバを備える嗅気型漏洩検出器
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
G01M3/20 E
(21)【出願番号】P 2020562737
(86)(22)【出願日】2019-05-06
(86)【国際出願番号】 EP2019061540
(87)【国際公開番号】W WO2019215080
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-08
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500469855
【氏名又は名称】インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Inficon GmbH
【住所又は居所原語表記】Bonner Strasse 498, D-50968 Koeln, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヴェツィヒ・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ルース・マルセル
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-513415(JP,A)
【文献】特表2009-544956(JP,A)
【文献】特表2009-508127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガス入口(12)を有するスニッファチッププローブを備える手持ち式装置(44)と、
基準ガス入口(14)と、
ガス分析器(16)と、
前記試料ガス入口(12)を介して吸引されたガスおよび前記基準ガス入口(14)を介して吸引されたガスの一方が前記ガス分析器(16)で分析されるように、前記試料ガス入口(12)を前記ガス分析器(16)に、および前記基準ガス入口(14)を前記ガス分析器(16)にガス導通可能に交互に接続するように構成された切換弁(20)とを備える嗅気型漏洩検出器(10)において、
前記基準ガス入口(14)が前記スニッファチッププローブから離れた距離に設けられており、
前記基準ガス入口(14)と前記切換弁(20)とを接続する基準ガス導通路(26)は、バッファチャンバ(40)を備え、前記バッファチャンバ(40)は、前記基準ガス入口(14)を介して前記バッファチャンバ(40)に吸引されたガスと、前記バッファチャンバ(40)内に残存するガスとを均一に混合するように構成されていることを特徴とする嗅気型漏洩検出器(10)。
【請求項2】
請求項1に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記試料ガス入口(12)および前記基準ガス入口(14)の一方、ならびに前記ガス分析器(16)を介してガスを吸引するように設けられた真空ポンプをさらに備える嗅気型漏洩検出器(10)。
【請求項3】
請求項1に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記試料ガス入口(12)および前記基準ガス入口(14)の一方を介して吸引されたガスを、前記ガス分析器(16)を通して押し出すように設けられた圧縮ポンプをさらに備える嗅気型漏洩検出器(10)。
【請求項4】
請求項1または2に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記バッファチャンバ(40)の体積の、前記基準ガス入口(14)を介して吸引された前記ガスの1秒当たりの流入体積に対する比が少なくとも1であり、最大で10,000である、嗅気型漏洩検出器(10)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記バッファチャンバ(40)は、前記基準ガス入口(14)に接続されたバッファチャンバ入口と、前記切換弁(20)に接続されたバッファチャンバ出口とを有し、前記バッファチャンバ出口は、前記バッファチャンバ入口を通る主ガス流方向に対して前記バッファチャンバ入口からずれた位置にある、嗅気型漏洩検出器(10)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記バッファチャンバ(40)は、前記基準ガス入口(14)を介して前記バッファチャンバ(40)に進入するガス流に乱流を生じさせるように設けられた渦流機構を備える嗅気型漏洩検出器(10)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記バッファチャンバ(40)は、前記試料ガス入口(12)が配置されている第2の部屋に隣接する第1の部屋により形成されており、前記第1の部屋を前記第2の部屋から分離する壁が前記基準ガス入口(14)を備える、嗅気型漏洩検出器(10)。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記バッファチャンバ(40)は、前記嗅気型漏洩検出器のユーザにより持ち運び得るように構成されており、前記バッファチャンバ(40)は、前記手持ち式装置(44)とは別体の部品である、嗅気型漏洩検出器(10)。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記バッファチャンバ(40)は前記手持ち式装置(44)の一部である、嗅気型漏洩検出器(10)。
【請求項10】
請求項9に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記手持ち式装置(44)は、前記バッファチャンバ(40)を内蔵するハウジングにより形成されている、嗅気型漏洩検出器(10)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記嗅気型漏洩検出器(10)を囲む大気雰囲気に前記ガス分析器(16)を接続する出口をさらに備え、前記出口は、前記出口から外気に吹き出されたガスが前記試料ガス入口(12)または前記基準ガス入口(14)を介して吸引されないように配置されている嗅気型漏洩検出器(10)。
【請求項12】
請求項11に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記手持ち式装置(44)の前記基準ガス入口(14)および前記出口は、前記試料ガス入口を介して吸引されたガス、前記基準ガス入口(14)を介して吸引されたガス、および前記出口から吹き出されたガスの主流れ方向が異なるように設けられている嗅気型漏洩検出器(10)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記基準ガス入口(14)を介して進入する前記ガスが通過する吸収材をさらに備える嗅気型漏洩検出器(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスリークの検出に用いられる嗅気型漏洩検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
嗅気型(スニッファ式)漏洩検出とは、特許文献1に記載されているように、1つのガス検知方法である。典型的には、ガス変調技術を用いる嗅気型漏洩検出器は、分析対象のガス(試料ガス)が吸引される試料ガス入口と、比較用の基準として周囲雰囲気からのガス(基準ガス)が吸引される基準ガス入口とを備える。通常、このガス流は、嗅気型漏洩検出器内の真空ポンプにより引き起こされる圧力差により生じる。
【0003】
特許文献1および特許文献2には、試料ガス入口および基準ガス入口がいずれもスニッファチッププローブの先端に設けられると開示されており、スニッファチッププローブ自体は、嗅気型漏洩検出器を操作するための手持ち式装置(ハンドピース)の一部である。
【0004】
ガス変調弁は、試料ガス入口と基準ガス入口とをガス分析器に接続する。試料ガス入口は、試料ガス導通路を介してガス変調弁に接続されている。基準ガス入口は、基準ガス導通路を介してガス変調弁に接続されている。切換弁は、試料ガス導通路と基準ガス導通路との間を切り換えることで、試料ガス入口および基準ガス入口の一方をガス分析器に接続する。これにより、ガス変調弁の切換え状態に応じて、試料ガス入口から吸引されたガスおよび基準ガス入口から吸引されたガスの一方が、ガス分析器に供給される。
【0005】
特許文献1に記載されているように、ガス分析器は、分析対象のガスが吸引される入口と、キュベットからガスを排出する出口とを有する試料キュベットを備える赤外線ガス分析器であってもよい。赤外線光源および赤外線検出器は、赤外線がキュベット内に含まれるガスを通過して放射されるように、キュベットの対向する側に配置されている。
【0006】
上記の種類の嗅気型漏洩検出器は、特に、高感度を実現するように構成されている。試料ガス入口と基準ガス入口との間の切換えは、試料ガスから得られる測定信号から、周囲雰囲気における基準ガス中に存在する対象ガスの量を減算するために行われる。対象ガスとは、ガス試料中で特定されるガス(つまり、検出対象にリークがある場合に漏洩するガス)である。
【0007】
嗅気型漏洩検出においては、ガス試料中に含まれる少量の対象ガスを特定できるように高感度とすることが望ましい。さらに、リークが想定される大きな領域内において速やかに向きを変えられることも望ましい。換言すれば、想定されるリークの、スニッファチッププローブまたは嗅気型漏洩検出器のオペレータに対する方向や距離について、速やかに大まかな評価または推定を可能とする信号を得ることが望ましい。これは通常、嗅気型漏洩検出器の感度の向上によっては十分に行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第02/48686号
【文献】国際公開第2009/098302号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、リークがある場合に、嗅気型漏洩検出器またはそのオペレータに対する相対方向および/または距離を速やかに評価できる嗅気型漏洩検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の主題は、独立請求項1により定義される。
したがって、この嗅気型漏洩検出器は、試料ガス入口を有するスニッファチッププローブを備える手持ち式装置を備える。前記嗅気型漏洩検出器は、さらに、基準ガス入口と、ガス分析器と、前記試料ガス入口を介して吸引されたガスおよび前記基準ガス入口を介して吸引されたガスの一方が前記ガス分析器に導通されて分析されるように、前記試料ガス入口を前記ガス分析器に、および前記基準ガス入口を前記ガス分析器にガス導通可能に交互に接続するように構成された切換弁とを備える。
【0011】
本発明の嗅気型漏洩検出器は、基準ガス入口がスニッファチッププローブから離れた距離に設けられていることを特徴とする。つまり、基準ガス入口は、スニッファチッププローブに設けられていない。これにより、上記の先行技術の嗅気型漏洩検出器と比較すると、試料ガス入口と基準ガス入口との間の距離が大きくなる。また、基準ガス入口と切換弁とを接続する基準ガス導通路は、バッファ容積部を囲むバッファチャンバを備える。バッファチャンバは、基準ガス入口を介してバッファチャンバに吸引されたガスと、バッファチャンバ内に残存するガスとを均一に混合するように構成されている。「残存するガス」とは、ガスが基準ガス入口を介してバッファチャンバへと吸引されたとき、このバッファチャンバ内に既に存在しているガスを指す。
【0012】
上記の特徴的構成の効果は、試料ガス入口が基準ガス入口よりも検出対象のリークに近いかぎり、基準ガス中に存在する対象ガスの量が、試料ガス中に存在する対象ガスの量よりも顕著に少ないことである。この効果は、試料ガス入口と基準ガス入口とが互いに近接し共にスニッファチップに設けられている上記の先行技術の嗅気型漏洩検出器と比較すると、基準ガス入口と試料ガス入口との間の距離が大きいことによるものである。また、前記バッファチャンバは、当該バッファチャンバ内で混合が行われることにより基準ガス中の対象ガスの量が時間平均されることから、基準ガス中に存在する対象ガスの量から生じる信号成分に対するローパスフィルタとなる。前記バッファチャンバ内で混合を行うことにより、均一に混合されたガスをガス分析器で分析することができる。基準ガス入口から短パルスまたは少量の対象ガスが吸引された場合、これら少量のガスはバッファチャンバ内で希釈されてしまい、短い時間における、より多量の対象ガスではなく、希釈された混合ガスのみが分析される。
【0013】
結果として、試料ガス信号が得られた位置に対して離れた位置から得られた均一な基準ガス信号によって、対象ガスの漏洩元となるリークに対する方向を評価することが可能となる。これは、試料ガス中に存在する対象ガスの量と、均一化された基準ガス中に存在する対象ガスの量とを比較することにより行うことができる。例えば、試料ガス中の対象ガスの量と基準ガス中の対象ガスの量とが等しい場合、試料ガス入口からリークまでの距離と基準ガス入口からリークまでの距離とが同一である場合の指標として用いることができる。基準ガス中の対象ガスの量が試料ガス中の対象ガスの量よりも多い場合、基準ガス入口が試料ガス入口よりもリークに近い場合の指標として用いることができ、逆の場合も同様である。嗅気型漏洩検出器のオペレータは、基準ガス入口と試料ガス入口との間を切り換える際に、嗅気型漏洩検出器またはスニッファチッププローブに対するリークの相対方向についての情報を速やかに得ることができる。
【0014】
換言すれば、2つの測定点間(つまり、試料ガス入口と基準ガス入口との間)の距離が大きいことにより、3次元空間におけるリークの位置特定の分解能を高めることができる。先行技術の嗅気型漏洩検出器のように、2つの測定点が互いに隣合って位置している場合、リークの相対方向を評価することはできない。さらに、前記バッファチャンバは、基準ガスを均一に混合することにより、基準ガス中の対象ガス濃度を安定させる。機能的には、このチャンバは対象ガス検知の時間領域におけるローパスフィルタとなり、局所的な変動を除去する。
【0015】
真空ポンプを用いて試料ガス入口および前記基準ガス入口の一方、ならびにガス分析器を介してガスを連続的に吸引することにより、連続的なガス流入を実現し、リークが想定される領域(大きな部屋や空間など)をオペレータが歩きまわる間に、検出されるリークの相対方向をリアルタイムで評価できるようにしてもよい。
【0016】
ガスは、特定の流量で基準ガス入口から吸引される。好ましくは、基準ガス入口を介して吸引されるガスの1秒当たりの流入体積に対するバッファチャンバ内のバッファ容積の比は、少なくとも1であり、最大で10000である。例えば、典型的には、前記流量をlsccs(標準立方センチメートル毎秒)とし、バッファ容積を1ccm(立方センチメートル)~10Lの範囲とすることができる。
【0017】
これにより、前記バッファチャンバ内で基準ガスを混合することにより、基準ガス中に存在する対象ガスが好適に希釈される。
【0018】
バッファチャンバは、基準ガス入口に接続されたバッファチャンバ入口と、切換弁に接続されたバッファチャンバ出口とを備えていてもよい。バッファチャンバ出口は、バッファチャンバ入口を通る主ガス流方向に対し、バッファチャンバ入口からずれた(オフセットした)位置にあることが好ましい。これにより、前記バッファチャンバ入口を介して当該バッファチャンバに進入するガスが、バッファチャンバ内で十分に混合されることなくバッファチャンバ出口から直ちに流出することを防止できる。バッファチャンバ入口を通る主ガス流方向に対してバッファチャンバ入口と前記バッファチャンバ出口とがずれていることにより、バッファチャンバ入口を介してバッファチャンバに進入する基準ガスと、バッファチャンバ内に既に存在するガスとを、ガスがバッファチャンバ出口から流出する前に混合することができる。
【0019】
基準ガス入口およびバッファチャンバ入口からバッファチャンバに進入するガス流に乱流を生じさせるように、渦流機構が設けられていることが好ましい。これにより、ガスの混合および均一化を高めることで、基準ガス中に存在し得る対象ガスまたは妨害ガスの希釈を向上させる。
【0020】
前記渦流機構は、フィンやブレードなどの受動型の機構とすることができる。代替的または付加的に、前記渦流機構は、能動的に電力供給されるファンまたはロータなどの能動型の機構とすることができる。
【0021】
基準ガス中の試料ガス濃度を更に安定化および均一化するために、基準ガス入口を介して嗅気型漏洩検出器に侵入するガスが通過する吸収材を設けてもよい。この吸収材は、基準ガス導通路またはバッファチャンバ内に設けることができる。
【0022】
前記バッファチャンバについて幾つかの代替的な実施形態が考えられる。リークが想定される部屋に前記スニッファチッププローブを配置し動作させる一実施形態において、前記バッファチャンバは、同一の建物内において前記スニッファチッププローブが配置される部屋と隣接する他の部屋により形成されていてもよい。この実施形態では、2つの隣接する部屋を分離する壁は、基準ガス入り口を、この2つの部屋を接続するドアの下の開口またはスリットなどの形態で備える。
【0023】
代替的な実施形態において、前記バッファチャンバは、前記嗅気型漏洩検出器のユーザにより持ち運び得る形で設けられていてもよい。このバッファチャンバは手持ち式装置とは別体の部品であり、例えば、基準ガス入口を有するガスボトルなどの形で、オペレータにより持ち運びされるハウジングを備える。この実施形態では、前記バッファチャンバまたはそのハウジングは、当該バッファチャンバの周囲の雰囲気に対する開口の形態の基準ガス入口を備える。このとき、バッファチャンバ入口と基準ガス入口とは同一であってもよい。
【0024】
さらなる代替的な実施形態において、バッファチャンバは手持ち式装置の一部であってもよい。前記手持ち式装置は、例えば、前記バッファチャンバを内蔵するハウジングを備えていてもよい。この場合、当該ハウジングは、バッファ容積部と手持ち式装置の周囲の雰囲気とを連通する開口を有し、これにより前記基準ガス入口および前記バッファチャンバ入口を形成している必要がある。
【0025】
ガス出口は、試料ガス入口、基準ガス入口、およびガス分析器を通過してガス出口から大気雰囲気へと排出される一定のガス流を可能とするために、ガス分析器を嗅気型漏洩検出器の周囲の大気雰囲気に接続してもよい。このガス出口は、当該出口から周囲雰囲気へと吹き出されるガスが、試料ガス入口または基準ガス入口から吸引されないように配置する必要がある。これは、例えば、前記試料ガス入口を介して吸引されたガス、基準ガス入口を介して吸引されたガス、および/またはガス出口から吹き出されるガスの主流れ方向が異なるように基準ガス入口、ガス出口、および試料ガス入口を配置することによって達成してもよい。いずれの場合でも、ガス出口から吹き出されるガスは、試料ガス入口および基準ガス入口とは離れる方向に吹き出される必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下において、図面に言及しつつ、本発明の実施例について説明する。
図1に示されているように、一般に、嗅気型漏洩検出器10は試料ガス入口12と基準ガス入口14とを有する。ガス分析器16は、吸光キュベット18を備える赤外線吸収式の分析器である。
【0028】
嗅気型漏洩検出器10は、さらに、第1の導通路22を介してガス分析器16およびキュベット18に接続された切換弁20を備える。試料ガス入口12は試料ガス導通路24を介して切換弁20に接続されており、基準ガス入口14は基準ガス導通路26を介して切換弁20に接続されている。切換弁20は、試料ガス導通路24および基準ガス導通路26の一方を第1の導通路22、従ってガス分析器16へと接続することにより、基準ガス入口14と試料ガス入口12を交互に切り換えるように適合されている。これにより、試料ガス導通路12を介して吸引されたガスおよび基準ガス導通路14を介して吸引されたガスの一方のみが、切換弁20を介して分析のためにガス分析器16へと導通される。ガス分析器16の吸光キュベット18は、連続的なガス流を生成するガスポンプ32を備える第2の導通路30を介して、嗅気型漏洩検出器10のガス出口28に接続されている。
【0029】
ガスポンプ32は、試料ガス入口12および基準ガス入口14の一方を介して、およびガス分析器16を介してガスを吸引するように設けられた真空ポンプであってもよい。ガスポンプは、図面に示されたガスポンプ32に代えて、切換弁20とガス分析器16をつなぐガス導通路に配置された圧縮ポンプであってもよい。この代替的な圧縮ポンプは、試料ガス入口12および基準ガス入口14の一方を介して吸引したガスが、ガス分析器16を通過しガス出口28から排出されるように押し出してもよい。
【0030】
試料ガス導通路24は試料ガスフィルタ34を備える。基準ガス導通路26は基準ガスフィルタ36を備える。
基準ガス導通路26は、バッファ容積部42を形成するバッファチャンバ40を備える。
【0031】
図面に示されていない付加的な吸収材を設けて、基準ガス入口14を介して嗅気型漏洩検出器10に進入するガスがこの吸収材を通って案内されるようにしてもよい。前記吸収材は、活性炭素フィルタ等の冷媒吸収材であってもよい。この吸収材は、基準ガス導通路26またはバッファチャンバ40内に設けてもよい。吸収材は、基準ガス内の対象ガス濃度をさらに安定化および均一化する。
【0032】
図2に示された実施形態において、嗅気型漏洩検出器10は、当該嗅気型漏洩検出器10のオペレータによって持ち運び得る寸法のハウジング46を有する手持ち式装置44を備える。ハウジング46は、バッファチャンバ40およびバッファ容積部42、切換弁20、ガス分析器16、吸光キュベット18、ガスポンプ32、ならびに試料ガス導通路24、基準ガス導通路26、第1の導通路22および第2の導通路30を収容する。基準ガス入口14およびガス出口28は、ハウジング46における開口により形成されている。
【0033】
手持ち式装置44は、先端に試料ガス入口12を有する折り曲げ可能な細長いスニッファチッププローブ48を備える。試料ガス導通路24は、試料ガス入口12からスニッファチッププローブ48内を通ってハウジング46へと延びている。スニッファチッププローブ48の基端は、ハウジング46に固定的に取り付けられている。
【0034】
試料ガス入口12と基準ガス入口14との間の距離を最大にするために、試料ガス入口12はスニッファチッププローブ48の最も前側の先端に配置されており、基準ガス入口14は手持ち式装置44のハウジング46の最も後側の基端に配置されている。ガス出口28は、ガス出口28から基準ガス入口14までの距離と、ガス出口28から試料ガス入口12までの距離とがほぼ等しくかつ最大となるように、ハウジング46の側部における先端部に設けられている。
【0035】
図面に示されていないさらなる実施形態において、バッファ容積部40は、手持ち式装置44のハウジング46とは別体のさらなるハウジング内に設けられていてもよい。バッファチャンバのハウジングと、手持ち式装置44のハウジング46とが可撓性のガス導通路により接続されていてもよい。別体のバッファチャンバ40は、例えば、オペレータが持ち運びするためにハンドルまたはベルトが設けられていてもよい。本実施形態により、大きなバッファ容積を確保しつつ、小型で軽量の手持ち式装置44とすることができる。
【0036】
図面に示されていないさらに別の実施形態では、試料ガス入口12、ガス分析器16および切換弁20が配置されている部屋とは別の部屋として構成されたバッファチャンバ40を備える。これら2つの部屋を分離する壁は、壁にもうけた開口の形、または、例えば、2つの部屋を分離する壁にもうけた接続ドアの下もしくは周囲の、スリットの形で、基準ガス入口14を有する。
なお本発明は、実施の態様として以下の内容を含む。
〔態様1〕
試料ガス入口(12)を有するスニッファチッププローブを備える手持ち式装置(44)と、
基準ガス入口(14)と、
ガス分析器(16)と、
前記試料ガス入口(12)を介して吸引されたガスおよび前記基準ガス入口(14)を介して吸引されたガスの一方が前記ガス分析器(16)で分析されるように、前記試料ガス入口(12)を前記ガス分析器(16)に、および前記基準ガス入口(14)を前記ガス分析器(16)にガス導通可能に交互に接続するように構成された切換弁(20)とを備える嗅気型漏洩検出器(10)において、
前記基準ガス入口(14)が前記スニッファチッププローブから離れた距離に設けられており、
前記基準ガス入口(14)と前記切換弁(20)とを接続する基準ガス導通路(26)は、バッファチャンバ(40)を備え、前記バッファチャンバ(40)は、前記基準ガス入口(14)を介して前記バッファチャンバ(40)に吸引されたガスと、前記バッファチャンバ(40)内に残存するガスとを均一に混合するように構成されていることを特徴とする嗅気型漏洩検出器(10)。
〔態様2〕
態様1に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記試料ガス入口(12)および前記基準ガス入口(14)の一方、ならびに前記ガス分析器(16)を介してガスを吸引するように設けられた真空ポンプをさらに備える嗅気型漏洩検出器(10)。
〔態様3〕
態様1に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記試料ガス入口(12)および前記基準ガス入口(14)の一方を介して吸引されたガスを、前記ガス分析器(16)を通して押し出すように設けられた圧縮ポンプをさらに備える嗅気型漏洩検出器(10)。
〔態様4〕
態様1または2に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記バッファチャンバ(40)の体積の、前記基準ガス入口(14)を介して吸引された前記ガスの1秒当たりの流入体積に対する比が少なくとも1であり、最大で10,000である、嗅気型漏洩検出器(10)。
〔態様5〕
態様1から4のいずれか一態様に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記バッファチャンバ(40)は、前記基準ガス入口(14)に接続されたバッファチャンバ入口と、前記切換弁(20)に接続されたバッファチャンバ出口とを有し、前記バッファチャンバ出口は、前記バッファチャンバ入口を通る主ガス流方向に対して前記バッファチャンバ入口からずれた位置にある、嗅気型漏洩検出器(10)。
〔態様6〕
態様1から5のいずれか一態様に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記バッファチャンバ(40)は、前記基準ガス入口(14)を介して前記バッファチャンバ(40)に進入するガス流に乱流を生じさせるように設けられた渦流機構を備える嗅気型漏洩検出器(10)。
〔態様7〕
態様1から6のいずれか一態様に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記バッファチャンバ(40)は、前記試料ガス入口(12)が配置されている第2の部屋に隣接する第1の部屋により形成されており、前記第1の部屋を前記第2の部屋から分離する壁が前記基準ガス入口(14)を備える、嗅気型漏洩検出器(10)。
〔態様8〕
態様1から6のいずれか一態様に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記バッファチャンバ(40)は、前記嗅気型漏洩検出器のユーザにより持ち運び得るように構成されており、前記バッファチャンバ(40)は、前記手持ち式装置(44)とは別体の部品である、嗅気型漏洩検出器(10)。
〔態様9〕
態様1から6のいずれか一態様に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記バッファチャンバ(40)は前記手持ち式装置(44)の一部である、嗅気型漏洩検出器(10)。
〔態様10〕
態様9に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記手持ち式装置(44)は、前記バッファチャンバ(40)を内蔵するハウジングにより形成されている、嗅気型漏洩検出器(10)。
〔態様11〕
態様1から10のいずれか一態様に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記嗅気型漏洩検出器(10)を囲む大気雰囲気に前記ガス分析器(16)を接続する出口をさらに備え、前記出口は、前記出口から外気に吹き出されたガスが前記試料ガス入口(12)または前記基準ガス入口(14)を介して吸引されないように配置されている嗅気型漏洩検出器(10)。
〔態様12〕
態様11に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記手持ち式装置(44)の前記基準ガス入口(14)および前記出口は、前記試料ガス入口を介して吸引されたガス、前記基準ガス入口(14)を介して吸引されたガス、および前記出口から吹き出されたガスの主流れ方向が異なるように設けられている嗅気型漏洩検出器(10)。
〔態様13〕
態様1から12のいずれか一態様に記載の嗅気型漏洩検出器(10)において、前記基準ガス入口(14)を介して進入する前記ガスが通過する吸収材をさらに備える嗅気型漏洩検出器(10)。
【符号の説明】
【0037】
10 嗅気型漏洩検出器
12 試料ガス入口
14 基準ガス入口
16 ガス分析器
18 吸光キュベット
20 切換弁
22 第1の導通路
24 試料ガス導通路
26 基準ガス導通路
28 ガス出口
30 第2の導通路
32 ガスポンプ
34 試料ガスフィルタ
40 バッファチャンバ
44 手持ち式装置
46 ハウジング