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特許7280288温度に影響されない膜材料とそれを含む分析物センサー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】温度に影響されない膜材料とそれを含む分析物センサー
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/02 20060101AFI20230516BHJP
   C08F 26/06 20060101ALI20230516BHJP
   A61B 5/1468 20060101ALI20230516BHJP
   A61B 5/1486 20060101ALI20230516BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C08G81/02
C08F26/06
A61B5/1468
A61B5/1486
G01N27/327 353P
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020566888
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 US2019036469
(87)【国際公開番号】W WO2019241192
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】62/684,438
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500211047
【氏名又は名称】アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ボマカンティ、バラスブラマンヤ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ラトゥール、ジョン ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】ホス、ウード
(72)【発明者】
【氏名】オーヤン、ティエンメイ
(72)【発明者】
【氏名】ル、フー
(72)【発明者】
【氏名】サンドゥ、ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】ウォリス、ケビン
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0296186(US,A1)
【文献】特表2000-514791(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0045147(US,A1)
【文献】特表2005-520172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 81/00-81/02
C08G 65/00-65/48
C08F 226/00-226/12
C08L
C08J 5/18
A61B 5/06-5/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー膜材料であって、
ポリビニルピリジンを含むポリマー骨格を含み前記ポリビニルピリジン中の複数のピリジン環のうちの一部のピリジン環は、アルキルスペーサー又はヒドロキシ官能化アルキルスペーサーを介して当該一部のピリジン環に付加された、以下の構造を有するアミンを含まないポリエーテルアームによって官能化されており
【化1】
ここで、wは0又は1であり、xは4~24の範囲にあり、yは8~60の範囲にあり、zは6から36の範囲にあり、
前記ポリマー膜材料が、15℃~45℃の温度範囲にわたって少なくともグルコース透過性に対して温度非感受性である、ポリマー膜材料。
【請求項2】
前記ポリマー骨格が、ポリビニルピリジンホモポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー膜材料。
【請求項3】
前記ポリマー骨格がビニルピリジンとスチレンのコポリマーを含む、請求項に記載のポリマー膜材料。
【請求項4】
前記アミンを含まないポリエーテルアームが、前記アルキルスペーサー又はヒドロキシ官能化アルキルスペーサーを介して、官能化された前記一部のピリジン環の窒素原子に結合している、請求項1に記載のポリマー膜材料。
【請求項5】
xが8~16の範囲にあり、yが10~32の範囲にあり、zが10~20の範囲にある、請求項1に記載のポリマー膜材料。
【請求項6】
x≦zである、請求項1に記載のポリマー膜材料。
【請求項7】
(x+z):yの比が少なくとも1.7:1である、請求項1に記載のポリマー膜材料。
【請求項8】
(x+z):yの比が1.7:1~5:1の範囲にある、請求項1に記載のポリマー膜材料。
【請求項9】
前記ポリビニルピリジンが有する複数のピリジン環のうちの一部のピリジン環または前記ビニルピリジンとスチレンのコポリマーが有する複数のフェニル環のうちの一部のフェニル環に付加されたスルホネート含有アームをさらに含む、請求項に記載のポリマー膜材料。
【請求項10】
前記ポリビニルピリジンが有する複数のピリジン環のうちの一部のピリジン環または前記ビニルピリジンとスチレンのコポリマーが有する複数のフェニル環のうちの一部のフェニル環に付加され、第1のポリマー骨格を第2のポリマー骨格に結合させる架橋剤をさらに含む、請求項に記載のポリマー膜材料。
【請求項11】
前記ポリマー膜材料が米国国民医薬品集の要件USP87の下で2以下の細胞毒性スコアを示す、請求項1に記載のポリマー膜材料。
【請求項12】
感知領域と、
前記感知領域を覆う、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー膜材料とを含む分析物センサー。
【請求項13】
前記感知領域が酵素を含む、請求項12に記載の分析物センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温度に影響されない膜材料とそれを含む分析物センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
個人体内のさまざまな分析物の検出は、健康状態を監視するために不可欠な場合がある。通常の分析物レベルからの逸脱は、多くの場合、多くの生理学的状態を示している可能性がある。例えば、グルコースレベルは、糖尿病の個人を検出及び監視するために特に重要となり得る。十分な規則性を持って血糖値を監視することにより、糖尿病患者は、有意な生理学的危害が発生する前に、是正措置を講じる(例えば、インスリンを注入して血糖値を下げるか、食事をして血糖値を上げる)ことができる場合がある。同様に監視することが望ましい可能性がある生理学的調節不全に一般的にさらされる他の分析物には、乳酸、酸素、pH、A1c、ケトン、薬物レベルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0003】
個人の分析物の監視は、定期的、又は一定期間にわたって継続的に行われる場合がある。定期的な分析物のモニタリングは、設定された時間間隔で血液などの体液のサンプルを採取し、エクスビボ(体外)で分析することによって行うことができる。連続的な分析物モニタリングは、分析がインビボで実施され得るように、皮膚、皮下又は静脈内など、個体の組織内に少なくとも部分的に埋め込まれたままである1つ以上のセンサーを使用して実施され得る。埋め込まれたセンサーは、個人の特定の健康ニーズ及び/又は以前に測定された分析物レベルに応じて、分析物データを継続的又は散発的に収集する場合がある。
【0004】
多くの個人の生理学的状態を判断するには、定期的なエクスビボ分析物モニタリングで十分である。ただし、エクスビボでの分析物のモニタリングは、一部の人にとっては不便又は苦痛を伴う場合がある。さらに、分析物の測定値が適切な時に取得されない場合、失われたデータを回復する方法はない。
【0005】
インビボで埋め込まれたセンサーを用いた継続的な分析物モニタリングは、重度の分析物調節不全及び/又は急速に変動する分析物レベルを有する個人にとってより望ましいアプローチであるかもしれないが、他の個人にとっても有益である可能性がある。埋め込まれたセンサーによる継続的な分析物のモニタリングは有利な場合があるが、これらのタイプの測定に関連する課題がある。静脈内分析物センサーには、血液から直接分析物濃度を提供するという利点があるが、侵襲的であり、個人が長期間着用すると痛みを伴う場合がある。皮下及び皮膚の分析物センサーは、多くの場合、個人が着用する痛みが少なく、多くの場合、十分な測定精度を提供できる。
【0006】
センサー全体を個人体内に(例えば、外科的に)移植することができるが、主にセンサーの動作部分を、1つ以上の追加のセンサーとともに(例えば、皮膚貫通を通して)内部に移植し、さらなるセンサーの部品は個人の体の外部に残っていることがより望ましいことが多い。特定の例において、インビボで分析物レベルを測定するために適したセンサーは、皮膚上など、長期間にわたり「身体上」に着用されるように設計されたセンサーハウジングから延伸していることができる。このような身体上の分析物センサーは、侵襲的なセンサー移植手順を実行するために医療専門家に頼るのではなく、着用者によって直接適用されることが多いため、特に望ましい場合がある。
【0007】
センサーは、センサーが少なくとも埋設された部分に配置された膜を含み得る。一態様では、膜は、インビボでのセンサーの生体適合性を改善し得る。別の態様では、膜は、対象の分析物に対して透過性又は半透過性であり得るが、センサーの動作中の感知部分への分析物の全体的な流れを制限する。センサーの動作している感知部分への分析物のアクセスを制限することは、動作している感知部品の過負荷(飽和)を回避するために役立ち、それによってセンサーの性能と精度を向上させることができる。例えば、酵素ベースの検出を採用するセンサーの場合、センサーへの分析物のアクセスを制限することにより、感知プロセスの化学反応速度を酵素によって制限するではなく分析物によって制限することができる。分析物が制限されている酵素反応により、センサー出力の関数としての分析物センサーの容易な較正を実現することができる。すなわち、酵素反応が分析物によって制限されている場合、センサー出力は、何らかの方法で分析物の量と相関し得る。多くの場合、センサー応答は、酵素反応が分析物による制限を受ける場合、対象の生体液中の分析物濃度の関数として直線的に変化し得る。
【0008】
図面は、本開示の特定の態様を例示するために含まれており、排他的な実施形態として見なされるべきではない。
開示された主題は、本開示の範囲から逸脱することなく、形態及び機能においてかなりの修正、変更、組み合わせ、及び同等物が可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
分析物センサーに膜を組み込むことに関連する1つの問題は、膜を通過する分析物の流束が温度の関数として大幅に変化する可能性がある点である。温度の関数としての分析物の流れの変動性を補うために較正の係数又は方程式を使用することができるが、そうすることは、特に分析物の流れが温度に対して非線形に変化する場合、センサーの使用に有意の複雑さを加える可能性がある。さらに、較正式の適用に使用されるサーミスタは、操作が複雑になる可能性があり、そのサイズがセンサーの小型化の取り組みを妨げる可能性がある。さらなる困難な点として、較正温度測定場所は、必ずしもセンサーの動作部分を覆う膜と同じ温度であるとは限らないことがある。センサーの他の部品も同様に、温度によって性能が変動する可能性があり(例えば、酵素ベースのセンサーの場合は酵素反応速度)、それにより、膜のキャリブレーション係数又は方程式の分離と適用がかなり困難となり得る部品の複雑さと動作特性の変動性が増すと、コストが高くなり、測定エラーが増える可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、一般に、インビボでの使用に適した分析物センサー、より詳細には、温度の関数として限定された分析物透過性変動を示す膜材料、及びそのような膜材料を組み込んだ分析物センサーについて記載する。
【0011】
上記のように、インビボ分析物センサーは、生体適合性を改善し、かつ、センサーの動作している感知領域への分析物のアクセスを制限するために、膜材料を組み込むことができる。分析対象物の検知領域へのアクセスを制限すると、センサーの飽和を回避し、センサーの特性と精度を向上させることができる。例えば、酵素センサーの場合、膜材料は、酵素に制約される検出プロセスではなく、分析物に制約される検出プロセスを促進することができる。検出プロセスが分析物による制限を受けるため、容易なセンサーの較正を実現できる。場合によっては、センサー応答は、分析物によって制限された検出プロセスにおける分析物濃度の関数として線形に変化する可能性がある。
【0012】
多くの膜材料に関連する1つの問題は、それらの分析物の透過性が温度の関数として臨床的に有意な程度にバラつきを生じる可能性があることである。温度の関数としての分析対象物の透過性のバラつきは、特に透過性のバラつきが温度に対して非線形である場合、センサーのキャリブレーションに問題を生じる可能性がある。特定の膜材料は、温度の関数としての分析物透過性のバラつきが限定的であることが知られているが、それらの生体適合性は改善の余地を残し得る。さらに、一部の膜材料は、合成後に精製するのが難しい場合がある。
【0013】
本開示は、特定の実施形態において、温度の関数としての分析物透過性バラつきが限定的であり、かつ好適な生体適合性特性を有するといった、望ましい組み合わせを提供し得るポリマー膜組成物を提供する。より詳細には、本明細書に開示されるポリマー膜組成物は、複素環を含む1つ以上の側鎖を有するポリマー骨格(本明細書では複素環式ポリマーともいう)と、上記の1つ以上の側鎖の少なくとも一部、特に複素環の少なくとも一部に付加された、アミンを含まないポリエーテルアームとを含んでなる。アミンを含まないポリエーテルアームは、1つ以上のポリエチレングリコール部分(ブロック)と、1つ以上のポリプロピレングリコール部分(ブロック)とを組み込むことができ、これらは、アルキルスペーサー又はヒドロキシ官能化アルキルスペーサーを介して複素環に付加することができる。例えば、カルボニル、カルボン酸エステル、又はカルボキサミドなどの他のスペーサーもまた、いくつかの実施形態において適切であり得る。いくつかの実施形態において、アミンを含まないポリエーテルアーム中に、単一のポリエチレングリコール部分が単一のポリプロピレングリコール部分と、ジブロック配置で(例えば、Aがポリエチレングリコールブロックであり、Bがポリプロピレングリコールブロックである、A-Bブロックパターン又はB-Aブロックパターンにおいて)結合され得る。 他のより特定の実施形態では、1つ以上のポリエチレングリコール部分と1つ以上のポリプロピレングリコール部分とは、介在する官能基が存在することなく(例えば、Aはポリエチレングリコールブロックであり、Bはポリプロピレングリコールブロックである時、いくつかの実施形態では、A-B-Aのパターンで、あるいは他の実施形態によればB-A-Bにおいて)交互のブロックとして存在し得る。本開示のさらなる実施形態によれば、アミンを含まないポリエーテルアームは、同様に、3つを超える交互のブロックを含み得る。ブロックパターン及び各ブロック中のエーテルユニットの数の両方は、本明細書に開示されるポリマー膜組成物において変化し得る。いくつかの実施形態において、アミンを含まないポリエーテルアーム内の末端ポリエチレングリコールユニットは、アルキルスペーサー又はヒドロキシ官能化アルキルスペーサー、又はカルボニル、カルボキシルエステル、又はカルボキサミドなどの代替のスペーサーを介して、複素環又は複素環式ポリマーの他の側鎖に付加され得る。他の実施形態では、アミンを含まないポリエーテルアーム内の末端ポリプロピレングリコール単位は、アルキルスペーサー又はヒドロキシル官能化アルキルスペーサー、又はカルボニル、カルボン酸エステル、又はカルボキサミドなどの代替のスペーサーを介して、複素環又は複素環式ポリマーの他の側鎖に付加され得る。
【0014】
本開示のポリマー膜組成物は、複素環式ポリマーを、末端脱離基、特にハロゲン化アルキル又は末端エポキシドなどの反応性官能基を有するポリエーテルアーム前駆体と反応させることによって合成することができる。より詳細には、第一級臭化アルキルなどの第一級ハロゲン化アルキルは、アミンを含まないポリエーテルアーム前駆体を終端させ、アミンを含まないポリエーテルアームを複素環に付加するアルキルスペーサーをもたらす可能性がある。対照的に、アミンを含まないポリエーテルアーム前駆体のエポキシド終端は、アミンを含まないポリエーテルアームが、ヒドロキシ官能化アルキル基、具体的には第二級ヒドロキシル官能基を有するアルキル基を介して複素環に付加されるようになる。反応性官能基の選択を含む、特定のアミンを含まないポリエーテルアーム前駆体の選択は、合成の容易さ、得られるポリマーのインビボ特性などの要因に基づき得る。より詳細な構成では、第一級ハロゲン化アルキル又はエポキシドは、アミンを含まないポリエーテルアーム前駆体のポリエチレングリコール部分に(すなわち、末端エーテル結合及び介在するスペーサー基を介して)結合され得る。他の特定の構成では、第一級ハロゲン化アルキル又はエポキシドは、アミンを含まないポリエーテルアーム前駆体のポリプロピレングリコール部分に(すなわち、末端エーテル結合及び介在するスペーサー基を介して)結合され得る。
【0015】
有利には、本明細書に記載のアミンを含まないポリエーテルアーム前駆体は、複素環式ポリマーと反応する前に独立して合成することができる。アミンを含まないポリエーテルアーム前駆体の独立した合成は、異なるアーム長が生成され得る、ポリマー骨格からのアームの段階的成長によって得られるものと比較して、得られるポリマー膜組成物における側鎖のより大きな組成均一性を提供し得る。さらに、アミンを含まないポリエーテルアーム前駆体をポリマー骨格と一段階で反応させることにより、収率の向上、合成一貫性の向上、及びスループットの向上を実現でき、膜特性の変化を構造変化とより容易に相関させることができる。本明細書に開示されるポリマー膜組成物のさらなる利点は、多くの場合、ポリエーテルアーム内にアミン官能基を有する同等のポリマー組成物よりも高い純度及び組成の均一性をもって合成できることである。
【0016】
本開示のさらなる利点は、本発明のポリマー膜組成物内のポリプロピレンオキシドに対するポリエチレンオキシドの比は、ポリエーテルアーム内にアミン官能基を有する同様のポリマー組成物よりもはるかに容易に多様にし得ることである。より詳細には、ポリプロピレンオキシドに対するポリエチレンオキシドの分布及び比率は、複素環式ポリマーへの結合が起こる前には、アミンを含まないポリエーテルアーム前駆体内で固定され得る。有利かつ驚くべきことに、この特徴は、本明細書でさらに論じられるように、ポリエチレングリコール対ポリプロピレングリコールの比率を調整して、インビボで所望の生物学的応答を促進することを可能にし得る。
【0017】
本明細書に開示されるポリマー膜組成物の少なくともいくつかは、インビボで低い又は存在しない細胞毒性、ならびに他の好適な生体適合性特性を示し得る。特定の実施形態では、ポリプロピレンオキシドに対するポリエチレンオキシドの比は、得られた生体適合性特性を調整することができ、その結果、ポリマー膜組成物は、最小必須溶出媒体試験によって測定される場合に、2以下の細胞毒性スコアを有するものとして特徴付けられ得る。いくつか又は他の特定の実施形態では、本明細書に記載のポリマー膜組成物は、規定に指定された試験プロトコルに従って評価された場合、国際標準化機構(ISO)10993-1で指定された生体適合性要件を満たす。
【0018】
したがって、本明細書に開示されるポリマー膜組成物は、特に分析物センサーが長時間の装着を目的とする場合、様々なインビボ分析物センサーでの使用に特に有利であり得る。しかしながら、本明細書に開示されるポリマー膜組成物はまた、本開示の範囲から逸脱することなく、エクスビボ分析物センサーにおいて利用され得ることが理解されるべきである。特定の実施形態では、本明細書に記載のポリマー膜組成物は、グルコースの透過性に対して温度非感受性であり得る。例えば、乳酸塩などの他の分析物もまた、グルコースの速度とは異なる可能性がある温度非感受性の速度でポリマー膜組成物を透過することができる。
【0019】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示のポリマー膜組成物は、複素環を含む1つ以上の側鎖を含むポリマー骨格と、アルキルスペーサー又はヒドロキシ官能化アルキルスペーサーを介して1つ以上の側鎖の少なくとも一部の複素環に付加された、アミンを含まないポリエーテルアームとを含み得る。そのようなアミンを含まないポリエーテルアームは、アミンを含まないポリエーテルアームが単一のポリマー骨格に結合しているという特徴により、架橋剤(すなわち、2つ以上のポリマー骨格を共有結合する基)とは区別される。
【0020】
本開示の様々な実施形態での使用に適したポリマーは、分岐又は非分岐であり、ホモポリマー又はヘテロポリマーであるポリマー骨格を含み得る。ホモポリマーは、単一のタイプのモノマーの重合によって形成することができる。ヘテロポリマー(コポリマーとも呼ばれる)には、単一のポリマー鎖に結合した2つ以上の異なるタイプのモノマーが含まれます。コポリマーは、様々な実施形態によれば、異なるモノマー単位の、ランダム、交互、又はブロックの分布を有することができる。
【0021】
本開示のポリマー膜組成物内に組み込むのに適した複素環は、N、P、O、S又はSi原子の任意の組み合わせと併せて1つ以上の炭素原子を含む任意の環状部分を含み得、環状部分は芳香族又は脂肪族であり得る。脂肪族又はヘテロ芳香族環状部分内にヘテロ原子を組み込む適切な官能基には、例えば、-O-、-S-、-S-S-、-O-S-、-NR、=N-、=N-N=、-N=N-NR、-PR-、-P(O)-、-P(O)R-、-O-P(O)-、-SO-、-S(O)-、-S(O)-等が含まれ、ここで、R~Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又は置換ヘテロアリールアルキルとなり得る。可能であれば、R1~R3のいずれかが線状又は分岐である可能性がある。R1~R3の置換した変形例には、炭素原子又は水素原子がF、Cl、Br、I、N、P、O、S又はSiなどのヘテロ原子で置き換えられている上記の基のいずれかを含み得る。例示的であるが非限定的な実施形態において、適切な置換は、例えば、ハロゲン化物基、アルコール基、ケトン基、エーテル基、チオエーテル基、ジスルフィド基などを含み得る。
【0022】
より詳細な実施形態では、ポリマー骨格は、1つ以上の側鎖内に複素環式又はヘテロ芳香族窒素部分を含み得る。さらにより詳細な実施形態では、ポリマー骨格は、1つ以上の側鎖内にヘテロ芳香族窒素部分を含み得る。適切なヘテロ芳香族窒素部分には、例えば、アクリジン、カルバゾール、カルボリン、シンノリン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、トリアゾール、それらの誘導体などが含まれ得る。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、1つ以上のコモノマーは、ヘテロ芳香族窒素部分を有するモノマーユニットと組み合わせて存在し得る。本開示のポリマー膜組成物に組み込むための適切なコモノマーには、例えば、芳香環に置換を有する場合があるスチレン化合物が含まれる。適切であり得る置換スチレン化合物には、例えば、アルキル置換スチレン、ハロゲン置換スチレン、ヒドロキシル置換スチレン、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0024】
より詳細な実施形態では、本開示のポリマー膜組成物は、ポリビニルピリジン又はポリビニルイミダゾール、及びその任意のコポリマーを含み得る。特定の実施形態では、本開示のポリマー膜組成物は、ポリビニルピリジン、特にビニルピリジン(特に4-ビニルピリジン)とスチレンのコポリマー、又はポリビニルイミダゾール、特にビニルイミダゾール(特に2-ビニルイミダゾール)とスチレンのコポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、置換スチレンを利用することができる。
【0025】
特定の実施形態によれば、4-ビニルピリジンとスチレンの適切なコポリマーは、変数a及びbが両方とも正の整数であり、Qが任意の官能基である式1の繰り返し単位を含み得る。
【0026】
【化1】
【0027】
いくつかの実施形態では、変数a及びbは、独立して、約2~約950、又は約5~約900、又は約10~約850、又は約15~約800、又は約20~約750、又は約25~約700、又は約30~約650、又は約35~約600、又は約40~約550、又は約50~約500、又は1~約10の範囲を含む、約1~約1000の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、aはbよりも大きくてもよい。他の実施形態では、aはbよりも小さくてもよい。所望の膜特性に応じて、a対bの比は、約1:1~約1:100、又は約1:1~約1:95、又は1:1~約1:80、又は1:1~約1:75、又は約1:1~約1:50、又は約1:1~約1:25、又は約1:1~約1:10、又は約1:1~約1:5、又は約1:1~約1:3、又は約1:1~約1:2、又は約1:1~約100:1、又は約1:1~約95:1、又は約1:1~約80:1、又は約1:1~約75:1、又は約1:1~約50:1、又は約1:1~約25:1、又は約1:1~約10:1、又は約1:1~約5:1、又は約1:1~約3:1、又は約1:1~約2:1の間で変化し得る。
【0028】
いくつか又は他の実施形態において、4-ビニルピリジンとスチレンの適切なコポリマーは、約0.01%~約50%モルパーセント、又は約0.05%~約45%モルパーセント、又は約0.1%~約40%モルパーセント、又は約0.5%~約35%モルパーセント、又は約1%~約30%モルパーセント、又は約2%~約25%モルパーセント、又は約5%~約20 %モルパーセントの範囲のスチレン含有量を有し得る。置換スチレンは、同様に、同様の量で使用することができる。
【0029】
いくつか又は他の様々な実施形態によれば、4-ビニルピリジンとスチレンの適切なコポリマーは、5kDa以上、又は約10kDa以上、又は約15kDa以上、又は約20kDa以上、又は約25kDa以上、又は約30kDa以上、又は約40kDa以上、又は約50kDa以上、又は約75kDa以上、又は約90kDa以上、又は約100kDa以上の分子量を有し得る。より詳細な実施形態では、4-ビニルピリジンとスチレンの適切なコポリマーは、約5kDa~約150kDa、又は約10kDa~約125kDa、又は約15kDa~約100kDa、又は約20kDa~約80kDa、又は約25kDa~約75kDa、又は約30kDa~約60kDaの範囲の分子量を有し得る。本開示のポリマー膜組成物での使用に適した他のポリマーは、同様の範囲内にある分子量値を有し得る。
【0030】
本開示のポリマー膜組成物において、アミンを含まないポリエーテルアームは、複素環式ポリマーの側鎖の少なくとも一部の複素環に付加され得る。例えば、ポリビニルピリジンの場合、アミンを含まないポリエーテルアームは、特にピリジン窒素原子を介して、ピリジン環に共有結合し得る。アミンを含まないポリエーテルアームが付加されたポリマー膜組成物中の側鎖の割合は、複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の約0.1%以上、又は複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の約0.2%以上、又は複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の約0.3%以上、又は複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の約0.4%以上、又は複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の約0.5%以上、又は複素環式ポリマーの利用可能な複素環の約0.6%以上、又は複素環式ポリマーの利用可能な複素環の約0.7%以上、又は複素環式ポリマーの利用可能な複素環の約0.8%以上、又は複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の約0.9%以上、又は複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の約1.0%以上、又は複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の1.2%以上、又は複素環式ポリマーの利用可能な複素環の約1.4%以上、又は複素環式ポリマーの利用可能な複素環の約1.6%以上、又は複素環式ポリマーの利用可能な複素環の約1.8%以上、又は約複素環式ポリマーの利用可能な複素環の2.0%以上、又は複素環式ポリマーの利用可能な複素環の約2.2%以上、又は複素環式ポリマーの利用可能な複素環の約2.4%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約2.6%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約2.8%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約3.0%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約3.5%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約4.0%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約4.5%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約5.0%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約5.5%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約6.0%以上、又は複素環式ポリマーの利用可能な複素環の約6.5%以上、又は複素環式ポリマーの利用可能な複素環の約7.0%以上、又は複素環式ポリマーの利用可能な複素環の約7.5%以上、又は複素環式ポリマーの約8.0%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約8.5%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約9.0%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約9.5%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約10%以上であり得る。より詳細な実施形態では、アミンを含まないポリエーテルアームを、複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約0.1%~約5%、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約0.5%~約4.5%、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約1.0%~約4.0%、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約1.5%~約3.0%、又はで利用可能な複素環の約1.5%~約2.5%複素環式ポリマーに付加することができる。
【0031】
代替の実施形態において、アミンを含まないポリエーテルアームは、任意選択で置換されたフェニル基への共有結合を介するなどして、複素環式ポリマーの非複素環側鎖に付加され得る。
【0032】
いくつかの実施形態において、複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の少なくとも一部はまた、それに付加された架橋剤を有し得る。すなわち、いくつかの実施形態では、本開示のポリマー膜組成物は、1つ以上の側鎖の少なくとも一部に付加され、第1のポリマー骨格を第2のポリマー骨格に隣接させる架橋剤をさらに含み得る。架橋剤は、アミンを含まないポリエーテルアームに加えて、複素環式ポリマーに付加することができる。いくつかの実施形態において、架橋剤は、それ自体が、ポリエチレングリコール又はエチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマーなどのポリエーテルであり得る。そのような架橋剤は、存在し得るポリエチレングリコール単位の数に関して制限されない。いくつかのより詳細な実施形態では、架橋剤で官能化された複素環の量は、アミンを含まないポリエーテルアームで官能化された複素環の量よりも多くてもよい。他の実施形態では、架橋剤で官能化された複素環の量は、アミンを含まないポリエーテルアームで官能化された複素環の量よりも少なくてもよい。例示的な実施形態では、ビスエポキシドポリエチレングリコール化合物を使用して、架橋剤を有するポリマー膜組成物を形成することができる。
【0033】
より詳細な実施形態では、架橋剤が付加され得る側鎖の割合は、複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の約0.1%以上、又は複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の約0.2%以上、複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の0.3%以上、又は複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の約0.4%以上、又は複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の約0.5%以上、又は複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の約0.6%以上、又は複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の約0.7%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約0.8%以上、又は複素環式ポリマー、で利用可能な複素環の約0.9%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約1.0%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約1.2%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約1.4%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約1.6%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約1.8%以上、又は複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の約2.0%以上、又は複素環式ポリマーの利用可能な複素環の約2.2%以上、又は複素環式ポリマーの利用可能な複素環の約2.4%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約2.6%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約2.8%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約3.0%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約3.5%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約4.0%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約4.5%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の5.0%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約5.5%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約6.0%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約6.5%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約7.0%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約7.5%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約8.0%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約8.5%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約9.0%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約9.5%以上、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約10%以上であり得る。より詳細な実施形態では、架橋剤は、複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の約1%~約20%、又は複素環式ポリマー中の利用可能な複素環の約2%~約10%、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約3%~約8%、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約4%~約9%、又は複素環式ポリマーで利用可能な複素環の約5%~約12%の間で付加され得る。
【0034】
あるいは、いくつかの実施形態では、任意選択で置換されたフェニル基などの複素環式ポリマーの非複素環側鎖の少なくとも一部は、それに付加された架橋剤を有し得る。
様々な実施形態によれば、アミンを含まないポリエーテルアームは、複素環式ポリマーの1つ以上の側鎖の複素環の少なくとも一部内のヘテロ原子を介して、本明細書に開示されるポリマー膜組成物のポリマー骨格に結合し得る。代替の実施形態は、アミンを含まないポリエーテルアームが、1つ以上の側鎖の複素環の少なくとも一部の炭素原子を介して、及び/又はポリマー骨格の任意選択で置換されたフェニル基の炭素原子を介してポリマー骨格に結合するものを含み得る。より詳細な実施形態では、アミンを含まないポリエーテルアームは、1つ以上の側鎖内の複素環芳香族窒素原子又はヘテロ芳香族窒素原子を介してポリマー骨格に結合することができる。例えば、ポリマー骨格がポリビニルピリジン又はそのコポリマーである場合、アミンを含まないポリエーテルアームは、ピリジン窒素原子を介して側鎖に付加され得る。アミンを含まないポリエーテルアーム又は架橋剤で官能化すると、ピリジン窒素原子は四級化された形になる。
【0035】
したがって、より詳細な実施形態では、アミンを含まないポリエーテルアームがピリジン窒素原子に結合している本開示のポリマー膜組成物は、以下の化学式2及び3によって定義される繰り返し単位を有し得、ここで、変数a、b及びQは上記のように定義され、cはa以下の正の整数である。
【0036】
【化2】
【0037】
Zはアミンを含まないポリエーテルアーム、架橋剤、又はそれらの任意の組み合わせである。アミンを含まないポリエーテルアーム及び架橋剤の両方が存在する場合、ポリマー膜組成物は、化学式4~7のうちの1つ以上によって定義される構造を有し得、ここで、変数a、b及びQは上記に定義した通りである。
【0038】
【化3】
【0039】
c1とc2は、合計がa以下となる正の整数であり、dは化学式1で定義した通りであり、Zはアミンを含まないポリエーテルアームであり、Zは、
d=a-c1-c2(数式1)
となる架橋剤である。したがって、複素環式ポリマーのヘテロ芳香族(ピリジン)環は、本開示の様々なポリマー膜組成物の実施形態において、任意の組み合わせ又はパターンでZ及びZで官能化され得る。すなわち、化学式2~7によって定義される繰り返し単位は、本開示のポリマー膜組成物に組み込むのに適した複素環式ポリマーを定義する際に、互いに任意の組み合わせで存在し得る。
【0040】
他の特定の実施形態では、ピリジン窒素原子を介さずにピリジン部分に結合している、アミンを含まないポリエーテルアームを有するポリマー膜組成物は、以下の化学式8及び9によって定義することができ、a,b,c,Q,Zは上記のように定義されている。
【0041】
【化4】
【0042】
場合により、化学式8及び9のピリジン窒素原子のいずれかは、アミンを含まないポリエーテルアームがピリジンの炭素原子に結合している場合、アルキル基で四級化することができる(例えば、ハロゲン化アルキルとの反応を介して)。ピリジン基中の任意の非置換炭素原子は、本明細書に記載の実施形態に従って、アミンを含まないポリエーテルアーム及び/又は架橋剤に結合することができる。アミンを含まないポリエーテルアームと架橋剤の両方が存在する場合、アミンを含まないポリエーテルアームと架橋剤とは、同一のピリジン基に存在しても、又は異なるピリジン基上に存在してもよい。
【0043】
様々な実施形態において、アミンを含まないポリエーテルアームは、少なくとも1つのポリエチレンオキシドブロック及び少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含み得る。いくつかの実施形態によれば、アミンを含まないポリエーテルアームは、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドのジブロック配列を含み得る。すなわち、いくつかの実施形態では、アミンを含まないポリエーテルアームは、アルキルスペーサー又はヒドロキシ官能化アルキルスペーサー、ポリエチレンオキシドブロック及びポリプロピレンオキシドブロックの順にこれらを含み得、他の実施形態では、アミンを含まないポリエーテルアームは、順番に、アルキルスペーサー又はヒドロキシ官能化アルキルスペーサー、ポリプロピレンオキシドブロック及びポリエチレンオキシドブロックを含み得る。他のより詳細な実施形態では、アミンを含まないポリエーテルアームは、順番に、アルキルスペーサー又はヒドロキシ官能化アルキルスペーサー、第1のポリエチレンオキシドブロック、ポリプロピレンオキシドブロック、及び第2のポリエチレンオキシドブロック(すなわち、A-B-Aの繰り返しパターン)からなるものであってもよい。さらなに異なるより詳細な実施形態では、アミンを含まないポリエーテルアームは、順番に、アルキルスペーサー又はヒドロキシ官能化アルキルスペーサー、第1のポリプロピレンオキシドブロック、ポリエチレンオキシドブロック、及び第2のポリプロピレンオキシドブロック(すなわち、B-A-B繰り返しパターン)からなるものであってもよい。アルキルスペーサー又はヒドロキシ官能化アルキルスペーサーは、様々な実施形態によれば、ポリマー骨格の側鎖中の複素環式又はヘテロ芳香族窒素原子に結合することができる。場合によっては、複素環式側鎖のいずれかの炭素原子又は側鎖フェニル基のいずれかの炭素原子への代替の結合も可能である。アルキルスペーサー又はヒドロキシ官能化アルキルスペーサーはまた、末端エーテル結合を介するなどの様々な実施形態によれば、アミンを含まないポリエーテルアームの第1のポリエチレンオキシドブロックに結合され得る。いくつかの実施形態によれば、第2のポリエチレンオキシドブロックは、メトキシ基によって終端され得る。あるいは、いくつかの実施形態によれば、ヒドロキシ官能化アルキルスペーサーのアルキルスペーサーはまた、アミンを含まないポリエーテルアームの第1のポリプロピレンオキシドブロックに結合され得、第2のポリプロピレンオキシドブロックは、メトキシ基によって終結され得る。
【0044】
したがって、本開示の様々な実施形態において、アミンを含まないポリエーテルアームは、以下の化学式10又は11によって定義される構造を有し得る。
【0045】
【化5】
【0046】
ここで、PEはポリエチレンオキシドブロックを表し、PPはポリプロピレンオキシドブロックを表し、Lはスペーサー基である。適切なスペーサー基には、アルキル、ヒドロキシ官能化アルキル、カルボニル、カルボン酸エステル、カルボキサミドなどが含まれ得るが、これらに限定されない。変数q、r、s、及びtは、各ブロックのモノマー単位の数とブロックが繰り返される回数を定義する正の整数である。ただし、化学式10,11に適用できるポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのジブロック配置では 、変数tは0の場合がある。式10において、t≠0である場合、末端ポリエチレンオキシドモノマー単位は、メトキシ基などのアルコキシ基で置換され得る。同様に、t≠0である化学式11において、末端ポリプロピレンオキシドモノマー単位は、メトキシ基などのアルコキシ基で置換され得る。化学式10及び11に関連するジブロック配置(t=0)は、同様に、アルコキシ基末端を有し得る。いくつかの実施形態によれば、変数qは、約2~約50又は約6~約20の範囲の整数であり、変数rは、約2~約60又は約10~約40の範囲の整数であり、変数tは、約2~約50又は約10~約30の範囲の整数である。いくつか又は他の様々な実施形態によれば、変数sは、1~約20の間、又は1~約10の間の範囲の整数である。いくつかの実施形態では、変数sは1に等しい。ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドのジブロック配置は、上記と同じ範囲内の変数q及びrを含み得るが、変数sは1に等しく、変数tは0に等しい。
【0047】
本開示のより詳細な実施形態において、アミンを含まないポリエーテルアームは、化学式12によって定義される構造を有し得、ここで、変数wは0又は1であり、
【0048】
【化6】
【0049】
変数xは約4~約24、又は約6~約20の範囲の整数であり、変数yは約8~約60、又は約10~約40の範囲の整数であり、変数zは約6~約36、又は約10~約30の範囲の整数である。あるいは、変数zは、他の変数が同じ範囲にある状態で、ジブロック配置で0にすることができる。より詳細な実施形態では、変数xは、約8~約16又は約9~約12の範囲であり得、変数yは、約10~約32、又は約16~約30、又は約12~約20の範囲であり得る。変数zは、約10~約20の間、又は約14~約18の間の範囲であり得る。さらに他のより詳細な実施形態では、xは10であり得、yは20であり得、そしてzは14であり得る。又は、xが12、yが16、zが16の場合がある。又は、xが14、yが12、zが18の場合がある。いくつかの実施形態では、第2のポリエチレンオキシドブロックが第1のポリエチレンオキシドブロックよりも長い(大きい)ように、xはzよりも小さくてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態において、化学式12における(x+z):yの比は、少なくとも約1.4:1、又は少なくとも約1.7:1、又は少なくとも約2:1、又は少なくとも約2.5:1、又は少なくとも約3:1、又は少なくとも約3.5:1であり得る。より詳細な実施形態では、化学式12における(x+z):yの比は、約1.4:1~約5:1の間、又は約1.7:1~約3.2:1の間、又は約2.2:1~約3.0:1、又は約2.6:1~約2.9:1、又は約3:1~約5:1の間の範囲であり得る。
【0051】
本開示のいくつかの実施形態において、アミンを含まないポリエーテルアームは、化学式13によって定義される構造を有し得、ここで変数wは0又は1であり、
【0052】
【化7】
【0053】
変数xは約4~約24、又は約6~約20の範囲の整数であり、変数yは約8~約60、又は約10~約40の範囲の整数であり、変数zは約6~約36、又は約10~約30の範囲の整数である。あるいは、変数zは、他の変数が同じ範囲にある状態で、ジブロック配置で0にすることができる。より詳細な実施形態では、変数xは、約6~約16の間又は約9~約12の間の範囲であり得、変数yは、約10~約40の間、又は約16~約30の間、又は約14~約32の間の範囲であり得る。変数zは、約8~約20の間、又は約12~約16の間の範囲であり得る。
【0054】
本明細書に記載のアミンを含まないポリエーテルアームは、アミンを含まないポリエーテルアーム前駆体の反応性官能基を介して、複素環式ポリマーの側鎖の複素環に結合することができる。適切な反応性官能基は、例えば、ハロゲン又はエポキシドを含み得、これらのいずれかは、複素環式ポリマーの側鎖からの求核攻撃を介して反応され得る。ハロゲン官能化したアミンを含まないポリエーテルアーム前駆体は、nが0であるアミンを含まないポリエーテルアームになる(つまり、スペーサーはアルキル基である)が、エポキシド官能化したアミンを含まないポリエーテルアーム前駆体は、アミンを含まないポリエーテルアームになり、ここで、nは1である(つまり、スペーサーは第2級アルコールを含むプロピル基である)。より詳細な実施形態では、ハロゲン官能化したアミンを含まないポリエーテルアーム前駆体から生じるアルキルスペーサーは、直鎖又は分枝鎖であり、2~20個の炭素原子を含むアルキル基を含み得る。より詳細な実施形態では、ハロゲン官能化したアミンを含まないポリエーテルアーム前駆体に適切に含まれ得るハロゲン化物には、塩化物又は臭化物が含まれ、より詳細な実施形態では臭化物が選択される。
【0055】
化学式14及び15は、複素環式ポリマーと適切に反応して、本明細書に開示される特定のポリマー膜組成物を形成することができる例示的なアミンを含まないポリエーテルアーム前駆体の構造を示し、変数x、y、及びzは上記のように定義される。
【0056】
【化8】
【0057】
化学式14において、変数A1は、2~4個の炭素原子、又は2~約6個の炭素原子、又は2~約8個の炭素原子など、2~約20個の炭素原子を有するアルキル基を表し、Xは、塩化物や臭化物などのハロゲン化物である。A1のアルキル基は分岐鎖又は直鎖であり、必要に応じてヘテロ原子置換を含む。ハロゲン化物Xは、様々な実施形態によれば、第一級ハロゲン化アルキルであり得る。化学式15において、変数A2は、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子、又は4個の炭素原子など、1~約10個の炭素原子を有するアルキル基を表す。いくつかの実施形態では、A2のアルキル基は直鎖であり得、他の実施形態では、アルキル基A2は分岐を含み得る。
【0058】
より詳細な実施形態では、本明細書に開示されるポリマー膜組成物を形成するための適切なアミンを含まないポリエーテルアーム前駆体は、変数が上記のように定義される化学式16及び17に示されるものを含み得る。
【0059】
【化9】
【0060】
いくつかの実施形態では、スルホネート含有アームは、本明細書に開示される複素環式ポリマーの1つ以上の側鎖の少なくとも一部に付加され得る。スルホネート含有アームは、本明細書に開示されるアミンを含まないポリエーテルアームのいずれかと組み合わせて、任意の適切な比率で存在することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるポリマー膜組成物は、スルホネート含有アームよりも多く、アミンを含まないポリエーテルアームを含み得る。
【0061】
より詳細な実施形態によれば、スルホネート含有アームは、アルキル基を介して複素環式ポリマーの複素環に付加され得る。様々な実施形態によれば、アルキル基は、1~約6個の炭素原子、又は2~約4個の炭素原子を含み得る。本明細書に開示される複素環式ポリマーにスルホネート含有アームを導入するための適切な試薬には、クロロメタンスルホン酸、ブロモエタンスルホン酸などのハロスルホン酸化合物、又は環状スルホネート(スルトン)が含まれ得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、単一のタイプの繰り返しエーテルユニットを含む、アミンを含まないポリエーテルアームは、本明細書に開示される複素環式ポリマーの1つ以上の側鎖の少なくとも一部に付加され得る。このようなアミンを含まないポリエーテルアームは、スルホネート含有アーム組み合わせて存在することができ、及び/又は、アミンを含まないポリエーテルアームは化学式10~13に記載されるものなどの2つ以上の異なるタイプのエーテルユニットブロックを有することができる。
【0063】
より詳細な実施形態によれば、単一のタイプの繰り返しエーテルユニットを含む、アミンを含まないポリエーテルアームは、ポリエチレンオキシドアーム又はポリプロピレンオキシドアームであり得る。より特定の実施形態では、アミンを含まないポリエーテルアームは、アルキルスペーサー又はヒドロキシ官能化アルキルスペーサーを介して、1つ以上の側鎖の少なくとも一部の複素環に付加された、アミンを含まないポリエチレンオキシドアームであり得る。約8~約25の間、又は約10~約22の間、又は約12~約20の間の繰り返しエーテルユニットが、単一のタイプの繰り返しエーテルユニットをからなる、アミンを含まないポリエーテルアーム中に存在し得る。繰り返しポリエチレンオキシド又はポリプロピレンオキシドエーテルユニットは、アルキル基又はヒドロキシル官能化アルキル基を介して複素環式ポリマーの1つ以上の側鎖に付加され得る。様々な実施形態によれば、アルキル基は、1~約6個の炭素原子、又は2~約4個の炭素原子を含み得る。ヒドロキシ官能化アルキル基は、中心の炭素原子上にヒドロキシル基を有する3つの炭素原子を含み得る。アルコキシ基、特にメトキシ基は、複素環式ポリマーへの結合点の反対側において、アミンを含まないポリエーテルアームを終端することができる。そのようなアミンを含まないポリエーテルアームは、ハロゲン化アルキル又はエポキシドのいずれかで終端されたポリエーテルを複素環式ポリマーと反応させることによって複素環式ポリマーに導入することができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、本開示のポリマー膜組成物は、上記で簡単に参照されるように、架橋され得る。ポリマー膜組成物に組み込むのに適した架橋ポリマーは、2つ以上のポリマー骨格を互いに接続する架橋剤(分子間架橋)又は同一のポリマー骨格の異なる部分を互いに一緒に接続する架橋剤(分子内架橋)を含み得る。2つ以上の反応性官能基を含む「架橋剤」は、そのような架橋を促進し得る。架橋が起こると、架橋剤の一部は、ポリマー鎖を互いに分子間又は分子内で連結する架橋剤として残る可能性がある。
【0065】
いくつかの実施形態において、適切な架橋剤には、ポリエーテルイミン及びジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルが含まれる。この試薬の組み合わせは、アミン基を含む架橋を形成します。他の実施形態では、適切な架橋剤は、ポリエーテル及びジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルを含み得、これは、アミン基を欠く架橋をもたらす。より特定の実施形態では、アミンを含まない架橋を形成するための適切な架橋剤は、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー及びジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル、又はポリエチレンオキシド及びジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルを含み得る。
【0066】
いくつかの又は他の実施形態において、適切な架橋剤は、ポリエチレンオキシドブロックの各末端に末端プロピレンオキシド単位を有するポリエチレンオキシドブロックを含み得る。そのような架橋剤は、化学式18に示される構造を有し得る。
【0067】
【化10】
【0068】
ここで、変数nは、範囲が約10~約500、又は約10~約100、又は約10~約50、又は約12~約36、又は約12~約30、又は約12~約28、又は約12~約26、又は約12~約24、又は約12~約22、又は約12~約20、又は約14~約28、又は約14~約24、又は約16~約30、又は約16~約24にある、正の整数である。当業者が理解できるように、化学式18の架橋剤は反応して、ポリエチレンオキシドブロックがヒドロキシ官能化アルキル基を介して各末端のポリマー骨格に結合している架橋を形成する。詳細には、化学式18の架橋剤は、各末端プロピレンオキシド単位におけるエポキシド環の求核性開環時に化学式19の架橋剤を生成し、ここで、nは上記のように定義される。
【0069】
【化11】
【0070】
したがって、本開示のより詳細な実施形態では、適切な架橋は、それぞれがヒドロキシ官能化アルキル基を介して、第1のポリマー骨格の第1の複素環及び第2のポリマー骨格の第2の複素環の反対側の端に結合する少なくとも1つのポリエチレンオキシドブロックを含み得る。そのような実施形態では、架橋の方法は分子間である。本開示のいくつか又は他の実施形態において、そのような架橋剤は、それぞれがヒドロキシル官能化アルキル基を介して、同じポリマー骨格内の第1及び第2の複素環に対向する末端で結合され得、この場合、架橋の方法は分子内である。
【0071】
化学式20に示される例示的なトリスエポキシド化合物などのいくつかの実施形態では、追加のエポキシド基を有する架橋剤も使用することができる。そのような架橋剤は、3つ以上のポリマー骨格間の架橋の形成をもたらす可能性がある。
【0072】
【化12】
【0073】
場合により、そのような架橋剤は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はエチレングリコール/プロピレングリコールコポリマーとさらに反応させて、所与の架橋を形成することができる。
【0074】
有利には、本開示のポリマー膜組成物は、様々な実施形態によれば、温度非感受性膜を形成し得る。本明細書で使用される場合、「温度非感受性」という用語は、所与の範囲にわたる温度の関数として、臨床的又は統計的に重要でない方式で変化する、対象のパラメーターの状態を指す。より詳細な実施形態では、本開示の温度非感受性膜は、分析物の透過性、特にグルコースに関して温度非感受性であり得る。他の分析物も温度に影響されない膜透過性を示し、透過速度はグルコースの透過速度と同一であっても、異なっていてもよい。したがって、分析物の透過性の限られた変動は、ポリマー膜組成物が温度に影響されない所与の温度範囲にわたって一定濃度の分析物を分析する場合、センサー応答にほとんど又はまったく変化をもたらさない可能性がある。
【0075】
より詳細な実施形態では、本開示のポリマー膜組成物は、約10℃~約70℃、又は約15℃~約65℃、又は約20℃~約60℃、又は約25℃~約50℃、又は約15℃~約45℃、又は約15℃~約40℃、約20℃~約45℃、又は約25℃~約40℃の温度範囲にわたって、分析物透過性(例えば、グルコース)に対して温度非感受性であり得る。 いくつか又は他のより詳細な実施形態において、ポリマー膜組成物の分析物透過性(例えば、グルコース)のバラつきは、温度範囲全体で約10%以下、又は温度範囲全体で約5%以下、又は温度範囲全体で約2%以下、温度範囲全体で約1%以下、又は温度範囲全体で約0.5%以下、又は温度範囲全体で約0.1%以下、又は温度範囲全体で約0.05%以下、又は温度範囲全体で約0.01%以下であり得る。より広い温度範囲(例えば、約15℃~約45℃)のサブレンジ内で、ポリマー膜組成物の分析物の透過性のバラつきは、所与の5℃の温度増分の間に約2%以下又は約1%以下であり得る。分析物の透過性に対するポリマー膜組成の変化の決定は、分析物の一定の濃度で、特定の温度範囲にわたるセンサー応答の差を測定することによって確認することができる(本件の図4を参照)。
【0076】
本明細書に記載のポリマー膜組成物は、それらの生体適合性特性に関してさらに特徴付けることができる。様々な実施形態において、ポリマー膜組成物は、2の細胞毒性スコア、又は1の細胞毒性スコア、又は0の細胞毒性スコアを有するものとして特徴付けられ得る。このような細胞毒性スコアは、溶血の欠如、変異原性、刺激、及び同様の特性などの特性と組み合わせて存在する可能性がある。いくつかの実施形態では、本開示のポリマー膜組成物は、ISO10993-1規格を満たすか、又はこの規格を超える。組織移植デバイスのISO10993-1規格には、細胞毒性、感作、刺激又は皮内反応性、急性全身毒性、発熱性、亜急性又は亜慢性毒性、遺伝毒性、及び移植の問題が、臨床的に欠如していることが含まれている。
【0077】
様々な実施形態によれば、上記に開示されたポリマー膜組成物は、分析物センサーに存在し得る。したがって、本開示の分析物センサーは、感知領域(すなわち、センサーの動作部分)、及び感知領域を覆うポリマー膜組成物を含み得る。ポリマー膜組成物は、複素環を含む1つ以上の側鎖を含むポリマー骨格と、アルキルスペーサー又はヒドロキシル官能化アルキルスペーサーを介して、1つ以上の側鎖の複素環の少なくとも一部に付加されたアミンを含まないポリエーテルアームとを含み得る。 本明細書でさらに論じられるように、任意のポリマー膜組成物を分析物センサーと組み合わせて利用することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、本開示の分析物センサーの感知領域は、酵素を含み得る。酵素は、目的の分析物を消費する反応を触媒するか、分析物センサーによって検出可能な生成物を生成する可能性がある。いくつかの実施形態によれば、酵素は、感知領域の少なくとも一部をなすポリマーに共有結合され得る。特定の酵素の選択は、検出される対象の分析物によって決定される場合がある。対象の分析物がグルコースである場合、グルコースオキシダーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼ(例えば、ピロロキノリンキノン(PQQ)依存性グルコースデヒドロゲナーゼ、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存性グルコースデヒドロゲナーゼ、又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性グルコースデヒドロゲナーゼ)を使用することができる。目的の分析物が乳酸である場合、乳酸オキシダーゼ又は乳酸デヒドロゲナーゼを使用することができる。ラッカーゼは、対象の分析物が酸素である場合、又は分析物の反応に応答して酸素が生成又は消費される場合に使用できる。当業者及び本開示の利点によって理解されるように、他の酵素を同様に使用して、目的の他の分析物を検出することができる。上記の酵素又は他の酵素によって作用される基質のいずれかは、本明細書に開示される分析物センサーを用いた分析に適した分析物であり得る。
【0079】
本開示のポリマー膜組成物と併せて使用することができる例示的な分析物センサーのさらなる詳細は、以下でさらに詳細に記載する。しかしながら、本明細書に明示的に開示されたもの以外の異なる設計及び部品を有する分析物センサーもまた適切に使用され得ることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】本開示の分析物センサーを組み込むことができる例示的な分析物監視システムを示す図。
図2】本明細書の開示と互換性のある例示的な2電極センサー構成の図。
図3A】本明細書の開示と互換性のある例示的な3電極センサー構成の図。
図3B】本明細書の開示と互換性のある例示的な3電極センサーの別の構成の図。
図4】固定のグルコース濃度での17℃~42℃の温度範囲にわたるセンサー応答の例示的なプロットを示すグラフ(感知領域には、本明細書に記載のポリマー膜組成物をオーバーコートしている)。
図5】固定のグルコース濃度で17℃~42℃の温度範囲にわたって動作するセンサーの5℃増分にわたる温度変化を示す例示的な棒グラフ(感知領域には、本明細書に記載のポリマー膜組成物をオーバーコートしている)。
図6】一定温度でのセンサー応答対グルコース濃度の例示的なプロットを示すグラフ(感知領域には、本明細書に記載のポリマー膜組成物をオーバーコートしている)。
【発明を実施するための形態】
【0081】
図1は、本開示の分析物センサーを組み込むことができる例示的な分析物監視システムの図を示す。図示されるように、分析物監視システム100は、ローカル通信パス又はリンクを介して互いに通信するように構成されたセンサー制御デバイス102及びリーダーデバイス120を含み、これら通信は、有線又は無線、単方向又は双方向、及び暗号化又は非暗号化されている。リーダーデバイス120はまた、それぞれ、有線もしくは無線、単一もしくは双方向、及び暗号化又は非暗号化であり得る、通信パス/リンク141及び/又は142を介して、遠隔端末170及び/又は信頼できるコンピュータシステム180と通信し得る。 ローカル通信パス又はリンクのそれぞれに、任意の適切な電子通信プロトコルを使用することができる。リーダーデバイス120は、ディスプレイ122及びオプションの入力部品121を含み得る。
【0082】
センサー制御デバイス102は、センサーハウジング103を含み、センサーハウジング103は、センサー104を操作するための回路及び電源を収容し得る。センサー104は、センサーハウジング103から突出し、接着剤層105を通って延びる。接着剤層105に適した接着剤は、当業者に公知であろう。
【0083】
センサー104は、皮膚の真皮層などの目的の組織に少なくとも部分的に挿入されるように適合されている。センサー104は、所与の組織内の所望の深さまで挿入するために十分な長さのセンサーテールを含み得る。センサーテールは、1つ以上の実施形態によれば、感知のために動作している感知領域を含み得、そして酵素を含み得る。感知領域は、様々な実施形態による、本開示のポリマー膜組成物を含む。1つ以上の実施形態によれば、1つ以上の分析物レベルは、センサー104を使用して決定され、リーダーデバイス120に通信することができる。分析物は、真皮液、血漿、血液、リンパ液などの任意の生体液中で監視することができる。監視される可能性のある分析物は、特に制限されない。特定の実施形態では、分析物はグルコースであり得る。人類生理学に関して関心のある他の分析物には、例えば、乳酸塩、酸素、pH、A1c、ケトン、薬物レベルなどを含み得る。これらの分析物のいずれも、本明細書に開示されるポリマー膜組成物を介して温度非感受性の透過性を示し得る。単一の分析物及び前述の分析物の任意の組み合わせの両方をアッセイすることができる。
【0084】
導入器は、センサー104の組織への導入を促進するために一時的に存在し得る。例示的な実施形態では、導入器には、針190が含まれ得る。代替の実施形態では、シース又はブレードなどの他のタイプの導入器が存在し得ることが認識されるべきである。より詳細には、針又は同様の導入器は、挿入前にセンサー104の近くに一時的に存在し、その後、抜去され得る。存在している間、針又は他の導入器は、センサー104が従うためのアクセス経路を開くことにより、組織へのセンサー104の挿入を容易にすることができる。例えば、1つ以上の実施形態によれば、針は、真皮へのアクセス経路として表皮の貫通を促進して、センサー104の埋め込みが行われることを可能にすることができる。アクセス経路を開いた後、針又は他の導入器を引き抜いて、鋭利物による危険をもたらさないようにすることができる。例示的な実施形態では、針は、中実又は中空、面取り又は非面取り、及び/又は断面が円形又は非円形であり得る。より特定の実施形態では、針は、断面直径及び/又は先端設計において、約250ミクロンの断面直径を有し得る鍼治療針に匹敵し得る。しかしながら、特定の用途に必要な場合、適切な針は、より大きい又はより小さい断面直径を有し得ることが認識されるべきである。代替の実施形態では、センサー104が組織を貫通し、対象の体液との連通を確立するために十分に強固であるという条件で、針109又は同様の導入器がなくてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、針の先端は、針が最初に組織を貫通し、センサー104のアクセス経路を開くように、センサー104の末端上で角度を付けられ得る。他の例示的な実施形態では、センサー104は、針109の管腔又は溝内に存在し得、針は、同様に、センサー104のためのアクセス経路を開く。いずれの場合も、挿入を容易にした後、針はその後に抜去される。
【0086】
分析物監視システム100は、簡潔にするために本明細書で必ずしも説明されていない追加の特徴及び機能を含み得ることが認識されるべきである。したがって、分析物監視システム100の上記の説明は、本質的に例示的かつ非限定的であると見なされるべきである。
【0087】
本開示の分析物センサーは、様々な実施形態によれば、2電極又は3電極検出モチーフを含み得る。3電極モチーフは、作用電極、対電極、及び参照電極を含み得る。2電極モチーフは、作用電極及び第2の電極を含み得、第2の電極は、対電極及び参照電極(すなわち、対電極/参照電極)の両方として機能する。2電極及び3電極検出モチーフの両方において、本明細書に記載の分析物センサーの感知領域は、作用電極と接触していてもよい。様々な実施形態において、様々な電極は、以下でさらに詳細に説明されるように、少なくとも部分的に互いに積み重ねられ得る。代替の実施形態では、様々な電極は、分析物センサーの挿入テール上で互いに離間され得る。
【0088】
図2は、本明細書の開示と互換性のある例示的な2電極センサー構成の図を示す。図示されるように、検体センサー200は、作用電極214と対向/参照電極216との間に配置された基板212を含む。あるいは、作用電極214及び対電極/参照電極216は、間に誘電体材料が挿入された状態で、基板212の同じ側に配置され得る。感知領域218は、作用電極214の少なくとも一部上の少なくとも1つのスポットとして配置される。膜220は、少なくとも感知領域218をオーバーコートし、任意選択で、いくつかの実施形態では、作用電極214及び/又は対電極/参照電極216の一部又はすべてをオーバーコートすることができる。センサー200の片面又は両面を、膜220でオーバーコートし得る。膜220は、本明細書に開示されるポリマー膜組成物のいずれかを含み得る。
【0089】
3電極センサー構成は、追加の電極を含むことを除いて、分析物センサー200と同様であり得る(図3A,3B)。追加の電極217を用いて、対極/参照電極216は、次に、対電極又は参照電極のいずれかとして機能し、追加の電極217(図3A及び3B)は、他の方法では果たされない他の機能を果たす。追加の電極217は、間に誘電体の分離層を挟んで、作用電極214又は対電極/参照電極216のいずれかに配置することができる。例えば、図3Aに示されるように誘電体層219a、219b及び219cは、電極214、216及び217を互いに分離している。あるいは、電極214、216、及び217のうちの少なくとも1つは、基板212の反対側の面上に配置され得る(図3B)。したがって、いくつかの実施形態では、電極214(作用電極)及び電極216(対向電極)は、基板212の反対側の面に配置することができ、電極217(参照電極)は、電極214又は216の一方に配置され、誘電体によってそこから分離される。いくつかの実施形態によれば、銀/塩化銀レファレンスなどの導電層222は、電極217(参照電極)上に配置され得る。図2に示されるセンサー200と同様に、感知領域218は、対象の分析物を検出するために構成された単一のスポット又は複数のスポットを含み得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、追加の電極217は、任意選択で、膜220でオーバーコートされ得る。図3A及び3Bは、電極214、216及び217のすべてが膜220でオーバーコートされているものとして描写されており、本明細書に記載の利点を実現するために、感知領域218がオーバーコートされることのみが必要であることが認識されるべきである。このように、図3A及び3Bに示される構成は、本明細書に開示される実施形態を限定しないものとして理解されるべきである。2電極構成の場合と同様に、センサー200の片面又は両面が、膜220でオーバーコートされ得る。
【0091】
感知領域218をコーティングした場合、膜220は、約0.1ミクロン~約1000ミクロンの間、又は約1ミクロン~約500ミクロンの間、又は約10ミクロン~約100ミクロンの間の範囲の厚さを有し得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、感知領域218は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,134,461号に開示されているように、グルコースオキシダーゼ又は別の酵素に結合しているポリマーと、低電位オスミウム複合体電子伝達媒体とを含み得る。 他の適切な電子移動媒体は、例えば、ルテニウム、鉄、又はコバルトの金属化合物又は錯体を含み得る。金属錯体に適した配位子には、例えば、二座又はより高い座数の配位子、例えば、ビピリジン、ビイミダゾール、又はピリジル(イミダゾール)が含まれ得る。他の適切な二座配位子には、例えば、アミノ酸、シュウ酸、アセチルアセトン、ジアミノアルカン、又はo-ジアミノアレーンが含まれ得る。完全な配位圏を達成するために、単座、二座、三座、四座、又はより高い座数の配位子の任意の組み合わせが金属錯体に存在し得る。
【0093】
感知領域218の酵素は、架橋剤を介してポリマー又は他の適切なマトリックスに共有結合され得る。酵素中の遊離アミノ基との反応(例えば、リジン中の遊離アミンとの)に適した架橋剤には、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)又は他のポリエポキシド、塩化シアヌル、N-ヒドロキシスクシンイミド、イミドエステル、又はその誘導体化された変異体などの架橋剤が含まれ得る。酵素中の遊離カルボン酸基との反応に適した架橋剤には、例えば、カルボジイミドが含まれ得る。
【0094】
分析物センサー200を使用して分析物の濃度を決定するために、様々なアプローチを採用することができる。例えば、分析物の濃度は、電量分析、電流測定、ボルタンメトリー、又は電位差測定の電気化学的検出技術のいずれかを使用して監視することができる。
【0095】
本明細書に開示される実施形態には、以下が含まれる。
A.ポリマー膜組成物 ポリマー膜組成物は、以下を含む:複素環を含む1つ以上の側鎖を含むポリマー骨格;アミンを含まないポリエーテルアームであって、アルキルスペーサー又はヒドロキシ官能化アルキルスペーサーを介して、1つ以上の側鎖の少なくとも一部の複素環に付加されている、アミンを含まないポリエーテルアーム。
【0096】
B.分析物センサー 分析物センサーは、以下を含む:感知領域;及び、感知領域を覆うポリマー膜組成物。ここで、ポリマー膜組成物は、複素環を含む1つ以上の側鎖を含むポリマー骨格と、アルキルスペーサー又はヒドロキシ官能化アルキルスペーサーを介して、 1つ以上の側鎖少なくとも一部の複素環に付加された、アミンを含まないポリエーテルアームとを含む。
【0097】
C.グルコース又は他の潜在的な分析物に対して温度非感受性を有するポリマー膜組成物 ポリマー膜組成物は、約15℃~約45℃の温度範囲にわたって少なくともグルコース透過性において温度非感受性であり、ISO10993-1規格を満たすか、又はこの規格を超える。
【0098】
実施形態A及びBのそれぞれは、任意の組み合わせで以下の追加の要素のうちの1つ以上を有し得る。
要素1:ポリマー骨格がポリビニルピリジン又はポリビニルイミダゾールを含む。
【0099】
要素2:ここで、ポリマー骨格は、ビニルピリジンとスチレンのコポリマーを含む。
要素3:アミンを含まないポリエーテルアームは、少なくとも1つのポリエチレンオキシドブロック及び少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックを含み、アミンを含まないポリエーテルアームは、ポリマー骨格の側鎖の複素環式又はヘテロ芳香族窒素原子に結合している。
【0100】
要素4:アミンを含まないポリエーテルアームは、
【0101】
【化13】
【0102】
の構造式を有し、ここで、wは0又は1であり、xは約4~約24の範囲であり、yは約8~約60の範囲であり、zは約6~約36の範囲である。
要素5:ここで、xは約8~約16の範囲であり、yは約10~約32の範囲であり、zは約10~約20の範囲である。
【0103】
要素6:ここで、x≦zである。
要素7:ここで、(x+z):yの比は少なくとも約1.7:1である。
要素8:ここで、(x+z):yの比は、約1.7:1~約5:1の範囲である。
【0104】
要素9:ここで、ポリマー膜組成物は、1つ以上の側鎖の少なくとも一部に付加されたスルホネート含有アームをさらに含む。
要素10:ここで、ポリマー膜組成物は、1つ以上の側鎖の少なくとも一部に付加され、第1のポリマー骨格を第2のポリマー骨格に結合させる架橋剤をさらに含む。
【0105】
要素11:ここで、感知領域は酵素を含む。
要素12:ここで、ポリマー膜組成物は、アルキルスペーサー又はヒドロキシ官能化アルキルスペーサーを介して、1つ以上の側鎖の少なくとも一部の複素環に付加された、アミンを含まないポリエチレンオキシドアームをさらに含む。
【0106】
非限定的な例として、A及びBに適用可能な例示的な組み合わせには、以下が含まれる。
要素1,2;要素1,3;要素1,4;要素1,4,5;要素1,4,6;要素1,4,5,6;要素1,4,7;1,4,5,7;要素1,4,8;要素1,4,5,8;要素1,9;要素1,10;要素1,12;要素1,9,10;要素2,3;要素2,4;要素2,4,5;要素2,4,6;要素2,4,5,6;要素2,4,7;要素2,4,5,7;要素2,4,8;要素2,4,5,8;要素2,9;要素2,10;要素2,9,10;要素3,4;要素3,4,5;要素3,4,6;要素3,4,5,6;要素3,4,7;要素3,4,5,7;要素3,4,8;要素3,4,5,9;要素3,9;要素3,103,9,10;要素4,5;要素4,6;要素4,5,6;要素4,7;要素4,5,7;要素4,8;要素4,5,8;要素4,9;要素4,10;要素4,9,10;要素4,12;要素9,10;要素10,12;要素11,12と組み合わせた、Aの組成物。要素1,2;要素1,3;要素1,4;要素1,4,5;要素1,4,6;要素1,4,5,6;要素1,4,7;1,4,5,7;要素1,4,8;要素1,4,5,8;要素1,9;要素1,10;要素1,12;要素1,9,10;要素2,3;要素2,4;要素2,4,5;要素2,4,6;要素2,4,5,6;要素2,4,7;要素2,4,5,7;要素2,4,8;要素2,4,5,8;要素2,9;要素2,10;要素2,9,10;要素3,4;要素3,4,5;要素3,4,6;要素3,4,5,6;要素3,4,7;要素3,4,5,7;要素3,4,8;要素3,4,5,9;要素3,9;要素3,103,9,10;要素4,5;要素4,6;要素4,5,6;要素4,7;要素4,5,7;要素4,8;要素4,5,8;要素4,9;要素4,10;要素4,9,10;要素4,12;要素9,10;要素10,12;要素11,12と組み合わせた、Bの分析物センサーであって、さらに要素11と組み合わせることも可能であるセンサー。 Cの組成物は、Aに適用可能な任意の要素と組み合わせて使用することができる。
【0107】
本明細書に記載の実施形態のより良い理解を容易にするために、様々な代表的な実施形態の以下の例が与えられる。本発明の範囲を限定又は定義するために以下の例を読むべきではない。
【0108】
(実施例)
実施例1: 温度バラつき。 化学式12(w=1、x=14、y=12、z=18)に対応する構造を持つ、アミンを含まないポリエーテルアームを有した、スチレンとのポリビニルピリジンコポリマーを、グルコース応答性センサーにコーティングした。次に、コーティングされたセンサーを固定濃度のグルコース溶液にさらし、センサーの応答をある範囲の温度で測定した。図4は、17℃~42℃の温度範囲にわたるセンサー応答データのプロットを示している。図4に示すように、センサー応答は、人間の正常な生理学的温度を含む温度範囲の有意の部分にわたって最小限のバラつきを示した。応答バラつきの開始が観察され始めた温度(すなわち、37℃を超える)でさえ、図5の棒グラフに示されるように、応答バラつきは5℃測定間隔の全体において、2%未満であった。
【0109】
実施例2: グルコース反応。 実施例1のコーティングされたセンサーは、様々なグルコース濃度で室温で試験された。図6に示すように、グルコース濃度の関数としてのセンサー応答は、定温でほぼ線形であった。
【0110】
実施例3: 生体適合性試験。 化学式12(w=1)に対応し、以下の表1に指定されるように変数x、y及びzによって定義される構造を有する、アミンを含まないポリエーテルアームを有するスチレンとのポリビニルピリジンコポリマーを、いくつかの生体適合性試験を実施するために使用した。試験はISO10993-1プロトコルに従って実施され、以下に簡単に記載する。
【0111】
細胞毒性。 アミンを含まないポリエーテルアームを有するポリマーは、最小必須溶出媒体試験を使用して、標準条件下で細胞毒性を試験した。結果を表1に示す。細胞毒性試験は、ポリマーの抽出物(グルコースを含まない最小必須培地)を試験細胞単層に適用し、培養し、単層破壊の程度及び細胞溶解の量に基づいてスコアリングすることによって実施された。「0」のスコアは、観察可能な単層破壊又は細胞溶解がないことを表す。軽度の細胞毒性は、「2」以下のスコアで分類される(広範な細胞溶解を伴わない<50%の単層破壊)。2以下のスコアは、現在の米国薬局方及び米国国民医薬品集の要件(<USP87>)の下で、特定の目的のための許容可能な基準と見なされる。
【0112】
【表1】
【0113】
表1に示すように、ポリエチレンオキシドのポリプロピレンオキシドに対する比率を上げると、細胞毒性反応が改善された。
溶血。 溶血研究は、ASTM F756で指定されている抽出法(リン酸緩衝生理食塩水)を使用して、エントリー3のポリマーで実施された。抽出物と陰性対照の間で溶血に違いはなかったので、エントリー3のポリマーは非溶血性であり、溶血指数は2以下だったことを意味している。
【0114】
変異原性。 エームス試験を使用して、エントリー3のポリマーについて変異原性試験を実施した。ポリマーの抽出物は、この試験での変異原性の要件を満たしていなかった。
単回投与全身刺激性試験。 エントリー3のポリマーの抽出物を静脈内又は腹腔内に注射した。観察期間中、対照と比較して毒性の兆候は見られなかった。
【0115】
皮膚刺激性試験。 エントリー3のポリマーの抽出物の皮膚刺激性試験では、感作反応スコア0が得られ、これは、視認できる紅斑や浮腫がないことを意味する。
皮内刺激性試験。 エントリー3のポリマーの抽出物の皮内刺激性試験では、72時間の観察期間にわたって、ビヒクル対照と比較して異常な臨床徴候は生じなかった。対照と比較して計算された紅斑及び浮腫のスコアは1未満だった(ほとんど知覚できない紅斑又は浮腫はない)。
【0116】
移植の研究。 エントリー3のポリマーは、移植時に0.2の刺激性スコアを生成し、それによって非刺激性として分類された。
特に明記しない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲において数量などを表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって変更されるものとして理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に示される数値パラメーターは、本発明の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、そして均等論の適用をクレームの範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメーターは少なくとも、報告された有効桁数を考慮して、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0117】
本明細書では、様々な特徴を組み込んだ1つ以上の例示的な実施形態を提示する。明確にするために、本願では、物理的な実装のすべての機能が説明又は示されているわけではない。本発明の実施形態を組み込んだ物理的実施形態の開発では、システム関連、ビジネス関連、政府関連などのコンプライアンスなどの開発者の目標を達成するために、実装固有の多数の決定を行わなければならないことが理解される。制約は実装によって、また時間の経過とともに変化する。開発者の努力は時間を要し得るが、それにもかかわらず、そのような努力は、当業者にとって日常的な仕事であり、この開示の恩恵を受ける。
様々なシステム、ツール、及び方法は、様々なコンポーネント又はステップを「含む」という観点から本明細書で説明されるが、システム、ツール、及び方法はまた、様々なコンポーネント及びステップから「本質的に構成される」又は「構成される」ことができる。
【0118】
本明細書で使用される場合、一連の項目の前にある「少なくとも1つ」という句は、項目のいずれかを区切る「及び」又は「又は」という用語とともに、リストの各メンバーではなく、リスト全体を変更する(つまり、各アイテム)。「の少なくとも1つ」という句は、アイテムのいずれか1つのうちの少なくとも1つ、及び/又はアイテムの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つ、及び/又はアイテムのそれぞれの少なくとも1つを含む意味を可能にする。例として、「A、B、及びCの少なくとも1つ」又は「A、B、又はCの少なくとも1つ」という句は、それぞれ、Aのみ、Bのみ、又はCのみ、A、B、及びCの任意の組み合わせ、及び/又はA、B、及びCのそれぞれの少なくとも1つを指す。
【0119】
したがって、開示されたシステム、ツール、及び方法は、言及された目的及び利点、ならびにそれらに固有のものを達成するために十分に適合されている。本発明の教示は、本明細書の教示の利益を有する当業者に明らかな異なるが同等の方法で修正及び実施され得るものであり、上に開示された特定の実施形態は、単なる例示である。さらに、添付の特許請求の範囲に記載されている場合を除いて、本明細書に示されている構造又は設計の詳細に対する制限は意図されていない。したがって、上に開示された特定の例示的な実施形態は変更、組み合わせ、又は修正されてもよく、そのようなすべての変形は本発明の範囲内にあるものと考えられることは明らかである。本明細書に例示的に開示されているシステム、ツール、及び方法は、本明細書に具体的に開示されていない要素及び/又は本明細書に開示された任意の要素がない場合でも適切に実施できる。システム、ツール、及び方法は、さまざまな部材又はステップを「含む」、「含む」、又は「含む」という観点から説明されているが、システム、ツール、及び方法は、さまざまな部材を「本質的に構成する」又は「構成する」こともできる。上記で開示されたすべての数と範囲は、ある程度異なる場合がある。下限及び上限を伴う数値範囲が開示される場合は常に、その範囲内に含まれる任意の数及び任意の含まれる範囲が詳細に開示される。特に、本明細書に開示されるすべての範囲の値(「約aから約b」、又は同等に「約aからb」、又は同等に「約ab」の形式)は、以下のように理解されるべきである。より広い範囲の値に含まれるすべての数と範囲を示す。また、特許請求の範囲の用語は、特許権者によって明示的かつ明確に定義されていない限り、それらの平易で通常の意味を有する。さらに、特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」又は「an」は、本明細書では、それが導入する1つ以上の要素を意味すると定義される。本明細書及び参照により本明細書に組み込まれ得る1つ以上の特許又は他の文書における用語又は用語の使用法に矛盾がある場合、本明細書と一致する定義が採用されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6