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特許7280352細胞床厚が制御された細胞カプセル化デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】細胞床厚が制御された細胞カプセル化デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/40 20060101AFI20230516BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20230516BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20230516BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20230516BHJP
   A61L 27/04 20060101ALI20230516BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20230516BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
A61L27/40
A61L27/38
A61L27/16
A61L27/18
A61L27/04
A61L27/56
C12M1/00 Z
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021516995
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2019049007
(87)【国際公開番号】W WO2020068366
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/736,553
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ ラッシュ
(72)【発明者】
【氏名】エドワード エイチ.カリー
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0125632(US,A1)
【文献】特表2016-516827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L
C12M
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞カプセル化パウチと、緊張部材と、細胞を受容するためのリザーバ空間とを含んでなる細胞カプセル化デバイスであって、
該細胞カプセル化パウチは、第1層をその周囲の一部に沿って第2層の周囲の一部にシールすることで、該第1層と該第2層との間に内部容積を画定するように構成され、さらに該内部容積は第1内面と、該第1内面から離隔し対向する第2内面とを含み、
該緊張部材は、該内部容積内部に配置され、かつ、該リザーバ空間を少なくとも部分的に囲み、さらに該緊張部材は該細胞カプセル化パウチに、該細胞カプセル化パウチをX-Y平面内で伸張させる力を加え、かつ、該細胞カプセル化パウチの対向する少なくとも2つの部分と接触しており、
該リザーバ空間は、該第1内面と該第2内面との間に、該緊張部材から内側に向かって位置しており、かつ、
該リザーバ空間は、該緊張部材の厚さによって規定される、該第1内面から該第2内面までの厚さをZ次元に有する、
細胞カプセル化デバイス。
【請求項2】
前記第1層及び第2層が、少なくとも部分的に平坦化された単独のチューブ状メンブレン又はメンブレン複合体のトップ部分及びボトム部分を含み、かつ、前記第1層及び第2層が、前記チューブ状メンブレン又はメンブレン複合体の少なくとも一方の端部で、前記第1層及び第2層の周囲の前記一部に沿ってシールされている、請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項3】
前記第1層及び第2層が別個の2つのメンブレン又はメンブレン複合体を含む、請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項4】
さらに、前記内部容積内部に少なくとも1つの細胞押し退けコアを含む、請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項5】
前記細胞押し退けコアが前記第1内面と前記第2内面との間の平均厚を定義する、請求項4に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項6】
さらに、前記内部容積内部に複数の構造スペーサを含む、請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項7】
前記第1層が、前記緊張部材と前記構造スペーサとの間で前記第2層にシールされており、かつ、前記構造スペーサが前記第1内面と前記第2内面との間の平均厚を定義する、請求項6に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項8】
記緊張部材が前記リザーバ空間から隔離されている、請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項9】
前記緊張部材を前記リザーバ空間から隔離するために、前記第1層が、前記緊張部材と前記リザーバ空間との間で前記第2層に対してシールされている、請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項10】
前記シールの厚さが、前記第1内面と前記第2内面との間の平均厚を定義する、請求項9に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項11】
記緊張部材が、前記リザーバ空間から離れる方向に、相反する横力を加える、請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項12】
記緊張部材が形状記憶合金又はエラストマーを含む、請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項13】
記緊張部材が、非直線状である互いに対向する端部と、前記細胞カプセル化パウチの全長にわたって均一な緊張を提供するように直線状である互いに対向する側部とを含むフレームである、請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項14】
前記デバイスが少なくとも2つの緊張部材を含む、請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項15】
記緊張部材の少なくとも2つの互いに対向する側部間の距離を調節し得るように、前記緊張部材を変形形態と非変形形態との間で調節することができ、前記変形形態を成す少なくとも2つの互いに対向する側部間の距離が、前記非変形形態を成す少なくとも2つの互いに対向する側部間の距離よりも小さい、請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項16】
前記細胞カプセル化パウチが血管新生化層を含む、請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項17】
前記細胞カプセル化パウチが、外側多孔質層と、前記外側多孔質層に隣接する内側多孔質層とを含むメンブレン複合体であり、かつ、前記内側多孔質層の多孔率が前記外側多孔質層の多孔率よりも低い、請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項18】
さらに、前記リザーバ空間内部に配置された複数の生物学的部分を含む、請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項19】
さらに、前記リザーバ空間と流体連通している少なくとも1つのポートを含む、請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項20】
前記緊張部材は、非直線状である互いに対向する端部と、前記細胞カプセル化パウチの全長にわたって均一な緊張を提供するように直線状である互いに対向する側部とを含むフレームであり、かつ
前記リザーバ空間は、前記緊張部材と流体連通している、
請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項21】
前記緊張部材を前記リザーバ空間から隔離するために、前記第1層が前記第2層に対して、前記緊張部材と前記リザーバ空間との間でシールされている、
請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項22】
前記シールの厚さが、前記第1内面と前記第2内面との間の平均厚を定義する、請求項21に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項23】
さらに、前記シールから内側へ向かって前記内部容積内部に複数の構造スペーサを含み、前記構造スペーサが前記第1内面と前記第2内面との間の前記平均厚を定義している、請求項21に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項24】
記緊張部材は、前記第1内面と前記第2内面との間に平均距離を維持する、請求項1に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項25】
記緊張部材は、前記第1内面と前記第2内面との間に平均距離を維持するように、前記細胞カプセル化パウチの対向する少なくとも2つの部分と接触している、請求項21に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項26】
平面的な構造を維持する、請求項21に記載の細胞カプセル化デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療デバイスや植え込み型医療デバイスの分野、特に細胞をカプセル化して患者体内に植え込むためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的治療は、末梢動脈疾患、動脈瘤、心臓疾患、アルツハイマー病及びパーキンソン病、自閉症、失明、糖尿病その他の病理を治療する方法として実現性が高まっている。
【0003】
一般の生物学的治療に関しては、細胞、ウイルス、ウイルスベクター、細菌、タンパク質、抗体その他の生体活性部分を、患者の組織床内に生体活性部分を入れる外科的方法又は介入的方法によって、患者内に導入することができる。多くの場合、生体活性部分を先ずデバイス内に入れ、次いでこれを患者内へ挿入する。あるいは、デバイスを先ず患者内へ挿入し、後から生体活性部分を添加することもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生存可能であり且つ生産的な生体活性部分(例えば細胞)集団を維持するために、生体活性部分は、隣接する血管を通る血流によって提供されるような栄養素へのアクセスを維持しなければならない。栄養素へのこのようなアクセスは、カプセル化された細胞、すなわち細胞床(cell bed)を、細胞が植え込まれた組織床から分離するメンブレンに近接していることを必要とする。このようなことを考慮に入れて植え込み型デバイスが設計されることがある一方で、デバイスはしばしば、in vivo力(例えば別の人又は物と患者が接触することにより引き起こされる圧縮力)を被る。このような力は、デバイス及び細胞床の設計された所望の構造を歪ませるか又は破壊する。このように、細胞(又は他の生体活性部分)を含有する植え込み型デバイスは、栄養素がカプセル化された細胞に到達し得るように構成されなければならないだけでなく、デバイス及び細胞床の設計された所望の構造を歪ませるか又は破壊するおそれのあるin vivo力にも耐え得なければならない。細胞床厚を制御し且つ/又は変形後に細胞床厚を回復させるようにデバイスが構造化されている、細胞(又は例えば他の生体活性部分)をカプセル化するデバイスが依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書中で使用する「発明(invention)」、「発明(the invention)」、「本発明(this invention)」及び「本発明(the present invention)」という用語は、本特許出願の対象及び下記請求項の全てに広範に言及するように意図される。これらの用語を含む記述は、本明細書中に記載された対象を限定しないものと、又は下記特許請求項の意味又は範囲を限定しないものと、理解されるべきである。本発明のカバーされた実施態様は、本概要でなく請求項によって定義される。本概要は、本発明の種々の態様の高レベルの概観であり、下記「詳細な説明」の項にさらに記載された概念のいくつかを紹介する。本概要は、クレームの対象の重要な又は必須の態様を特定するようには意図されておらず、クレームの対象の範囲を決定するために分離(isolation)に際して使用されるようにも意図されていない。対象は、明細書全体の適宜な部分、任意又は全ての図面、及び各請求項を参照することによって理解されるべきである。
【0006】
本開示は、生物的治療として患者内へ挿入するための細胞をカプセル化するデバイス及び方法を提供する。デバイスは、細胞を包囲するメンブレン又はメンブレン複合体から形成された細胞カプセル化パウチを含み、メンブレン又はメンブレン複合体を通して、細胞は栄養素を宿主の身体から受容し、宿主の身体へ生物学的治療を提供することができる。デバイスはさらに、細胞カプセル化パウチ及び細胞床の設計された構造を維持する緊張部材を含む。
【0007】
いくつかの実施態様では、本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスが、細胞カプセル化パウチを含み、細胞カプセル化パウチは、第1層と第2層との間に内部容積を画定するように、第2層に対して第2層の周囲の一部に沿って、第1層の周囲の一部に沿ってシールされた第1層を含み、内部容積が第1内面と、第1内面から離隔した対向側の第2内面とを含む。内部容積は、空であるか構造エレメントによって占有されているかにかかわらず、細胞カプセル化パウチ内部の容積全体を含む。第1内面と第2内面との間の平均距離を維持するように、少なくとも1つの緊張部材が内部容積内部に配置されていてよく、かつ、その周囲の少なくとも2つの対向部分と接触することができる。細胞カプセル化デバイスはさらに、第1内面と第2内面との間の内部容積内に、且つ前記緊張部材から内側へ向かって、細胞を受容するためのリザーバ空間を含む。リザーバ空間は、細胞を受容するために利用可能である部分だけであり、構造エレメントによって占有されている容積を含まない。任意には、細胞カプセル化デバイスはさらに、リザーバ空間と流体連通する少なくとも1つのポートを含んでよい。
【0008】
いくつかの実施態様では、細胞カプセル化パウチの第1層及び第2層が、少なくとも部分的に平坦化された単独のチューブ状メンブレン又はメンブレン複合体のトップ部分及びボトム部分を含み、そして第1層が第2層に対して、チューブ状メンブレン又はメンブレン複合体の少なくとも一方の端部でシールされている。他の実施態様では、細胞カプセル化パウチの第1層及び第2層は2つの別個のメンブレン又はメンブレン複合体を含む。
【0009】
いくつかの実施態様では、本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスは、内部容積内部に少なくとも1つの細胞押し退けコア(cell displacing core)を含んでよい。他の実施態様では、本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスは、内部容積内部に複数の構造スペーサを含んでよい。
【0010】
本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスの緊張部材は、リザーバ空間と流体連通していてよく、あるいは、リザーバ空間から隔離されていてもよい。例えば、緊張部材をリザーバ空間から隔離するために、第1層は緊張部材とリザーバ空間との間で第2層に対してシールされていてよい。シールの厚さは、第1内面と第2内面との間の平均厚を定義してよい。
【0011】
本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスのいくつかの実施態様では、緊張部材はリザーバ空間から離れる方向に、相反する横力を加える。任意には、緊張部材は形状記憶エラストマー又は形状記憶ポリマーであってよい。任意には、緊張部材は、非直線状である互いに対向する端部と、細胞カプセル化パウチの全長にわたって均一な緊張を提供するように直線状である互いに対向する側部とを含むフレームであってよい。緊張部材の少なくとも2つの互いに対向する側部間の距離を調節し得るように、緊張部材は変形形態と非変形形態との間で調節可能であってよい。例えば、変形形態を成す少なくとも2つの互いに対向する側部間の距離は、非変形形態を成す少なくとも2つの互いに対向する側部間の距離よりも小さくてよい。
【0012】
本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスのいくつかの実施態様では、第1内面と第2内面との間の平均距離は少なくとも緊張部材の厚さである。他の実施態様では、第1内面と第2内面との間の平均距離は、緊張部材の厚さよりも小さい。
【0013】
任意には、本明細書中に記載された細胞カプセル化パウチは血管新生化層を含んでよい。任意には、細胞カプセル化パウチは、外側の血管新生化層と、外側の血管新生化層に隣接する内側の細胞保持層とを含む多層メンブレン又はメンブレン複合体である。
【0014】
いくつかの実施態様では、本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスは複数の相互接続された格納チューブを含み、格納チューブのそれぞれは、第1端部と、第1端部とは反対側の第2端部と、細胞を保持するために各格納チューブ内部に配置された内部容積又はリザーバ空間とを含む。格納チューブは任意には、溶接、キルティング、接着剤、又は構造支持体によって相互接続されていてよい。デバイスはさらに、複数の格納チューブの周辺の少なくとも一部を巡って配置された緊張部材を含み、緊張部材はそれぞれの格納チューブの平均厚を維持する。任意には、緊張部材は少なくとも2つの弓状部分を含んでよく、弓状部分は、それぞれの格納チューブの第1端部と第2端部とに位置決めされた交互の凹部を含む。緊張部材の少なくとも一部が、1つ又は2つ以上の格納チューブに接着剤によって取り付けられていてよい。これに加えて又はこの代わりに、緊張部材の一部が、2つの最も外側の格納チューブのそれぞれの内部に、細胞カプセル化デバイスの互いに対向する端部で保持されていてもよい。
【0015】
いくつかの実施態様では、細胞をカプセル化する方法が、本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスを用意し、緊張部材が、細胞カプセル化パウチ全体にわたって緊張を提供する第1変形形態を成しており、緊張部材を第1変形形態から、第1変形形態よりも大きく変形させられる第2変形形態に変形させ、これにより細胞カプセル化パウチ上の緊張が小さくなり、リザーバ空間内へ細胞を挿入し、そして緊張部材を第1変形形態まで解放することを含む。
【0016】
いくつかの実施態様では、細胞カプセル化デバイスを患者内に挿入する方法が、上記細胞カプセル化デバイスを用意し、細胞カプセル化デバイスがさらに、リザーバ空間内に配置された細胞を含み、そして緊張部材が、細胞カプセル化パウチ全体にわたって緊張を提供する第1変形形態を成しており、緊張部材を第1変形形態から、第1変形形態よりも大きく変形させられる第2変形形態に変形させ、これにより細胞カプセル化パウチ上の緊張が小さくなり、細胞カプセル化デバイスを患者の組織床内へ植え込み、そして緊張部材を第1変形形態まで解放することを含む。
【0017】
添付の図面は、開示内容をさらに理解するために含まれ、本明細書の一部に組み込まれ、そして本明細書の一部を構成し、実施態様を例示し、そして記述と一緒に開示内容の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A図1Aは、本明細書中に記載された実施態様に基づく細胞カプセル化デバイスを示す上面図である。
図1B図1Bは、図1Aの細胞カプセル化デバイスを、図1Aの1B-1Bに沿って示す概略断面図である。
図1C図1Cは、図1Aの細胞カプセル化デバイスの緊張部材を示す上面図である。
図2図2は、本明細書中に記載された実施態様に基づく細胞カプセル化デバイスを示す概略断面図である。
図3A図3Aは、本明細書中に記載された実施態様に基づく細胞カプセル化デバイスを示す上面図である。
図3B図3Bは、図3Aの細胞カプセル化デバイスを、図3Aの3B-3B線に沿って示す概略断面図である。
図4図4は、本明細書中に記載された実施態様に基づく細胞カプセル化デバイスを示す概略断面図である。
図5A図5Aは、本明細書中に記載された実施態様に基づく細胞カプセル化デバイスを示す概略上面図である。
図5B図5Bは、図5Aの細胞カプセル化デバイスを、図5Aの5B-5B線に沿って示す概略断面図である。
図6A図6Aは、本明細書中に記載された実施態様に基づく細胞カプセル化デバイスを示す概略上面図である。
図6B図6Bは、図6Aの細胞カプセル化デバイスを、図6Aの6B-6B線に沿って示す概略断面図である。
図7図7A~7Dは、細胞カプセル化デバイスのための挿入体の実施態様を示す概略図である。図7Eは、図7A~7Dの挿入体が細胞カプセル化パウチ内部に配置されたときに形成される細胞カプセル化デバイスを示す断面図である。
図8図8は、本明細書中に記載された実施態様に基づく細胞カプセル化デバイスを示す上面図である。
図9図9は、本明細書中に記載された実施態様に基づく細胞カプセル化デバイスを示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
所期機能を発揮するように構成されたあらゆる数の方法及び装置によって、本開示の種々の態様を実現し得ることは当業者には容易に明らかになる。また念のために述べるならば、本明細書中で言及される添付の図面は必ずしも原寸に比例してはおらず、本開示の種々の態様を例示するために誇張されることがあり、またこれに関して図面は限定的なものとして解釈されるべきではない。方向的な言及、例えばとりわけ「上(up)」、「下(down)」、「最上(top)」、「左(left)」、「右(right)」、「前(front)」、「後ろ(back)」は、当該構成部分及び方向が言及されている図面において示され記された配向を意味するものとする。
【0020】
本明細書中には、生物学的部分をカプセル化する治療デバイスが記載される。生物学的部分は患者内、例えば組織床(tissue bed)内に植え込むことにより生物学的治療をもたらす。治療デバイスは細胞カプセル化デバイス、薬物送達デバイス、又は遺伝子治療デバイスを含んでよい。さらに本明細書中には、デバイスを形成する方法、生物学的部分をデバイス内部へ導入する方法、及び生物学的治療を必要とする患者内にデバイスを導入する方法も記載されている。いくつかの実施態様では、デバイスは、メンブレン又はメンブレン複合体から形成された、緊張を加えられる細胞カプセル化パウチである。細胞カプセル化パウチは、互いに離隔された2つの層を有している。これらの層は生物学的部分を受容して保持するためのリザーバ空間を形成する。メンブレン複合体はメンブレンと別の生体適合性材料、例えばバイオウォーヴン(biowoven)又は不織布とを含む。
【0021】
本明細書中に記載されたデバイスを使用したカプセル化及び植え込みに適した生物学的部分は、細胞、ウイルス、ウイルスベクター、遺伝子治療物質、細菌、タンパク質、多糖類、抗体その他の生体活性部分を含む。単純化するため、本明細書では生物学的部分を細胞と称するが、本明細書中のいかなる記載も、生物学的部分を細胞又は特定のタイプの細胞に限定することはなく、後述の説明は細胞以外の生物学的部分にも適用される。種々のタイプの原核細胞、真核細胞、哺乳類細胞、非哺乳類細胞、及び/又は幹細胞を本発明の細胞カプセル化デバイスと一緒に使用することができる。いくつかの実施態様では、細胞は、一例としてはヒドロゲル生体材料を含む、天然又は合成起源の生体材料内部にマイクロカプセル化される。
【0022】
いくつかの実施態様では、細胞は治療上有用な物質を分泌する。このような物質はホルモン、増殖因子、栄養因子、神経伝達物質、リンホカイン、抗体、又は治療有用性をデバイスレシピエントに提供する他の細胞生成物を含む。このような治療上有用な物質の一例としては、インスリン、栄養因子、神経伝達物質、リンホカイン、抗体、増殖因子、インターロイキン、副甲状腺ホルモン、エリスロポエチン、トランスフェリン、第VIII因子、又は治療有用性をデバイスレシピエントに提供する他の細胞生成物が挙げられる。治療的な細胞生成物の一例としては、インスリン、増殖因子、インターロイキン、副甲状腺ホルモン、エリスロポエチン、トランスフェリン、及び第VIII因子が挙げられる。適切な増殖因子の一例としては、血管内皮増殖因子、血小板由来増殖因子、血小板活性化因子、形質転換増殖因子、骨形成タンパク質、アクチビン、インヒビン、線維芽細胞増殖因子、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、グリア細胞株由来神経栄養因子、増殖分化因子9、上皮増殖因子、及びこれらの組み合わせが挙げられる。言うまでもなく、本開示内容全体を通して単数又は複数の「細胞」という用語はそれぞれ単数又は複数の「生物学的部分」によって置き換えることができる。言うまでもなく、「緊張部材」という用語は1つ又は2つ以上の緊張部材を含むものとする。
【0023】
大まかにいえば、本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスは、細胞カプセル化パウチと緊張部材とを含む。細胞カプセル化パウチはメンブレン又はメンブレン複合体から形成されていてよい。細胞カプセル化パウチは、細胞を受容するための少なくとも1つのリザーバ空間を含む内部容積を形成する。いくつかの実施態様では、内部容積は、細胞を受容するための複数のリザーバ空間を含む。細胞カプセル化パウチは、2つの別個のメンブレン又はメンブレン複合体、トップ層とボトム層とを形成するように折られた1つのメンブレン又はメンブレン複合体、又はトップ層とボトム層とを形成するように平坦化された単独のチューブ状メンブレン又はメンブレン複合体から形成し得るトップ層及びボトム層を含んでいてよい。これらの実施態様のいずれにおいても、トップ層とボトム層とはこれらの周囲の少なくとも一部に沿ってシールされており、細胞カプセル化デバイスは、トップ層とボトム層との間に位置する少なくとも1つの内部容積を有している。種々の実施態様では、緊張部材の少なくとも一部が内部容積内部に配置されている。緊張部材は細胞カプセル化パウチに、外方に向く力を加え、これによりトップ層及びボトム層に緊張を与える。そして第1層はチューブ状メンブレン又はメンブレン複合体の少なくとも一方の端部で第2層に対してシールされている。他の実施態様では、細胞カプセル化パウチの第1層及び第2層は2つの別個のメンブレン又はメンブレン複合体を含む。
【0024】
種々の実施態様では、細胞カプセル化パウチを通して(例えばパウチのシールされた周囲を通して)、ポートが延びており、ポートはリザーバ空間内に細胞を挿入するためにリザーバ空間と流体連通している。いくつかの実施態様では、本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスはさらに、1つ又は2つ以上の他の構造構成部分、例えばシール、スペーサ、(例えば溶接スペーサ又は構造スペーサ)、又は細胞押し退けコアを含む。大まかに言えば、シールは、2つの材料、例えば細胞カプセル化パウチのトップ層とボトム層とが、合体された材料の厚さを実質的に増大させることなしに接合された領域である。スペーサ、例えば溶接スペーサは2つの材料を接合することもできるが、しかしこれに加えて、トップ層とボトム層との間の平均距離を制御又は維持することに寄与し、そして合体された材料の厚さを増大させることもできる。種々の実施態様では、シールはリザーバ空間を画定し且つ/又は隔離するのに有用であり得る。スペーサはリザーバ空間の厚さを定義するのに有用であり得る。そして細胞押し退けコアはデバイスの中心から細胞カプセル化パウチへ向かって細胞を押し退けることにより、細胞とデバイス外部の環境との間の栄養素及び老廃物の移動を改善するのに有用であり得る。
【0025】
本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスにおいて、トップ層とボトム層とは緊張部材によって、又は任意のスペーサによって、又は任意の細胞押し退けコアによって互いに離隔され、そして細胞を受容するためのリザーバ空間はトップ層及びボトム層の内面間の内部容積内にある。リザーバ空間は、緊張部材、スペーサ(例えば溶接スペーサ又は構造スペーサ)、細胞押し退けコア、又は任意の他の構造構成部分によって占有されない内部容積の一部である。リザーバ空間の厚さは、トップ層及びボトム層の内面間の距離である。トップ層及びボトム層の内面間の距離は、緊張部材の厚さによって、又は別の構造構成部分の厚さによって定義することができる。
【0026】
いくつかの実施態様では、細胞カプセル化パウチのトップ層及びボトム層は可撓性ではあるが、しかし、緊張部材は単独で、又は他の構造構成部分との組み合わせで、細胞カプセル化デバイスを概ね平面的な構造として維持する。ある特定の実施態様では、緊張部材は細胞カプセル化パウチに、細胞カプセル化パウチをX-Y平面内で緊張した状態で伸張させる力を加えるのに対して、リザーバ空間厚はZ次元にある。このように、リザーバ空間の厚さが緊張部材以外の構成部分によって定義される場合にも、緊張部材は細胞カプセル化パウチに緊張を与えることによってその厚さを維持する。この緊張は、細胞カプセル化パウチの変形(例えば圧潰又はバルーン化)を防止し、且つ/又は変形後に、定義された間隔を回復させる。このような変形は、細胞のローディング中、目標部位内の細胞カプセル化デバイスの配置中、細胞増殖中、細胞カプセル化デバイスの種々の他の使用中に発生することがある。
【0027】
緊張部材は、リザーバ空間から離れる方向に細胞カプセル化パウチに相反する緊張力を加え、これによりリザーバ空間厚を維持するように提供される。緊張部材が細胞カプセル化パウチ内部にあるときに弾性変形形態又は圧縮形態を成す結果、緊張部材は細胞カプセル化パウチに緊張を与えることができる。緊張部材のその非変形形態に戻ろうとする傾向により、相反する力が細胞カプセル化パウチに加えられ、トップ層及びボトム層に緊張が与えられる。緊張部材がパウチに緊張を与えるので、パウチを形成する材料は、コンスタントな緊張状態にあることに耐えるために必要な強度を有していなければならない。緊張部材は本質的に弾性変形可能な材料、例えばエラストマーから構成されていることにより、弾性変形可能である。加えて、緊張部材はパウチを種々異なる形態に変形させることができるため、パウチ材料は、損傷又は応力(例えば永久折り目、襞、皺、穴/裂け目など)をもたらすことなしに、緊張部材と一緒に動き変形するのに十分に可撓性且つ従動性であることが必要である。
【0028】
このような緊張部材の非限定的な一例はエラストマーOリングである。有用なエラストマーの例が本明細書中に記載されている。緊張部材又はその一部の形状は、緊張部材が弾性変形可能であることに寄与し得る。例えばフレームがリング形状(例えば円形状又は楕円形状)を有する場合、又は90度未満の2つの内角を有する単純な多角形(例えば方形、台形、六角形ではない平行四辺形)の形状を成す場合に、フレームは変形可能であってよい。別の例として、1つ又は2つ以上の非直線状のセグメント、例えば弓状、螺旋状、又は蛇行状セグメントを含むフレームが弾性変形可能であってよい。
【0029】
種々の実施態様では、緊張部材は少なくとも2つの相反する横方向に変形可能であってよく、これにより緊張部材の互いに対向する側の間の距離を調節することができる。こうして、緊張部材は、細胞カプセル化パウチ内への挿入のために技術者によって、より狭い形態(互いに対向する側の間の距離がより短い)に変形させることができ、そして技術者によって解放されると、細胞カプセル化パウチによって可能にされるのに伴ってより広い、しかしまだ変形している形態まで拡張することができる。細胞カプセル化デバイスの集成中に調節可能であるのに加えて、緊張部材はデバイスのローディング中、及びこれに続くデバイスの使用中にも調節可能である。例えば、いくつかの事例では、緊張部材の互いに対向する側部間の距離は、細胞ローディング中、又は細胞カプセル化デバイスの患者内部における配置中に一時的に増減することができる。任意には、距離を縮小(又は増大)させると、(例えば細胞のローディングを容易にするために)リザーバ空間の厚さを一時的に増減することができるが、しかし、緊張部材が非変形形態へ戻ろうとする傾向、及び緊張部材によって細胞カプセル化パウチに加えられる関連の力により、リザーバ空間の厚さは構造構成部分によって定義された厚さに戻される。
【0030】
いくつかの実施態様では、緊張部材は第1層と第2層との間にあるが、しかしリザーバ空間から隔離されている(すなわちリザーバ空間と流体連通していない)。このような実施態様では、緊張部材はカプセル化細胞と接触することはない。このような実施態様は、緊張部材が、カプセル化細胞と適合性がない材料、例えば種々のエラストマーである場合に有用であり得る。いくつかの実施態様では、デバイスの内部容積内に構造エレメントを付加することにより、緊張部材厚とは異なる(緊張部材厚よりも小さいか又は大きい)管腔厚を提供することができ、これらの構造エレメントは緊張部材をリザーバ空間から隔離することができる。他の実施態様では、緊張部材はリザーバ空間と流体連通している。このような実施態様では、緊張部材はカプセル化細胞と接触することになり、これらの細胞と適合性のある材料(例えばニチノール)でなければならない。種々の実施態様では、緊張部材のために使用される材料は、緊張部材がリザーバ空間と流体連通しているのか、又はリザーバ空間から隔離されているのか、ひいては緊張部材がカプセル化細胞と接触し得るか否かに基づいて選択されてよい。
【0031】
いくつかの実施態様では、細胞カプセル化パウチは多孔質材料であり、2つ又は3つ以上の孔径及び/又は2つ又は3つ以上の多孔率を有する複合層であってよい。例えば、細胞カプセル化パウチは、細胞栄養素、有用な細胞生成物、及び細胞老廃物が、カプセル化細胞と外部環境との間で細胞カプセル化パウチを通して交換されるのを可能にするのに十分な孔径及び/又は多孔率を有してよい。別の例としては、種々の実施態様において、細胞カプセル化パウチの孔径は血管内方成長を許すか又は制限することができる。このような材料は本明細書中により詳細に論じられるが、しかし、本明細書中に開示されたいかなる細胞カプセル化デバイスにおいても、細胞カプセル化パウチの第1層及び第2層は独立して単独の多孔質材料であるか、又は各層の孔径及び/又は多孔率が別の層の孔径及び/又は多孔率とは異なり得る多層多孔質材料であってもよい。
【0032】
図1A~Bは細胞カプセル化デバイス100の実施態様を示している。図1A~Bに示されているように、細胞カプセル化デバイス100は細胞カプセル化パウチ102と緊張部材104とを含む。図1Aは、細胞カプセル化パウチ102の内部の単独の緊張部材104を示す細胞カプセル化デバイス100の上面図である。図1Bは、図1Aの細胞カプセル化デバイスを、1B-1Bに沿って示す断面図である。図1Cは、細胞カプセル化パウチ102内に挿入される前の緊張部材104を示す上面図である。
【0033】
細胞カプセル化デバイス100は、チューブ形状で形成された単独のメンブレンとして、細胞カプセル化パウチ102を含む。このメンブレンは第1層106と第2層108を形成するように平坦化されている。第1層106及び第2層108は平坦化チューブの一方又は両方の端部において、これらの周囲110でシールされている。第1層106は第1内面122を含み、第2層108は第2内面124を含む。第2内面は第1内面122に向き合い、第1内面122から離隔されることにより、内部容積112を画定する。緊張部材104は内部容積112内部に配置され、細胞カプセル化パウチ102の少なくとも2つの対向部分に接触し、そして第1層106及び第2層108に緊張を加える。図1A~Bは、任意の構成部分を示していないが、しかし任意には、溶接スペーサ、他のシール、構造スペーサ、細胞押し退けコア、又は別の構造エレメントを含む他の構成部分が内部容積内部に配置されていてよい。細胞カプセル化パウチを通って(例えばシールされた周囲110を通って)ポート(図示せず)が延びていてよく、ポートはリザーバ空間120と流体連通していてよい。
【0034】
図1A~Bに示された実施態様では、リザーバ空間120は第1内面122と第2内面124との間に、且つ緊張部材104から内側に向かって位置している。リザーバ空間120の厚さ128は、第1内面122から第2内面124までの距離であり、緊張部材厚さ138によって定義される。この実施態様では、緊張部材104によって提供された細胞カプセル化パウチ102上の緊張は、リザーバ空間120の圧潰又はバルーン化を妨げ、ひいては緊張部材104によって定義される厚さを維持する。
【0035】
図1A~Bに示された実施態様では、緊張部材104はリザーバ空間120を包囲しているが、しかし他の実施態様ではリザーバ空間120を部分的にのみ包囲するか又は取り囲んでよい。
【0036】
図1Bに示されているように、緊張部材104はリザーバ空間120と流体連通していてよい。緊張部材104はリザーバ空間120と流体連通しているので、これはデバイス内に挿入されるべきいかなる細胞とも適合性のある材料から形成されなければならない。緊張部材に適した生体適合性材料が本明細書中に記載されている。
【0037】
いくつかの実施態様では、細胞カプセル化デバイスの緊張部材は挿入フレームである。図1A~Cに示された実施態様では、緊張部材104は、非直線状である互いに対向する端部142,144と、ほぼ直線状である互いに対向する側部146,148とを含む挿入フレームである。言うまでもなく、いくつかの実施態様では、側部146,148は曲線状であるか、又は細胞カプセル化パウチ102の全長(長さは一方の対向端部から他方の対向端部まで)にわたって均一な緊張を提供する任意の形状であってよい。種々の実施態様では、非直線状の端部142,144は、図1Cに示されているように、X軸線116とY軸線118とによって定義された平面内で非直線状であってよく、且つ/又はX軸線116とZ軸線(図示せず)とによって定義された平面内、中間平面内、又は複数平面内で非直線状であってもよい。種々の実施態様によれば、非直線状の端部は、図1Cに示されているように、1つ又は2つ以上のS字形状を含んでよく、あるいは曲線又は螺旋のような他の非直線形状を含んでもよい。あるいは、本明細書中に記載された他の形状を有するフレームが緊張部材104として利用されてもよい。
【0038】
図1A~Cに示されているように、緊張部材104は細胞カプセル化パウチ102から分離しているとき(図1C)には非変形形態を成しており、そして細胞カプセル化パウチ102の内部にあるとき(図1A~B)には変形/圧縮形態を成している。このように、緊張部材104の互いに対向する側部146,148間の距離129a,129cは調節可能であり、そして変形形態における距離129aは、非変形形態における距離129cよりも小さい。緊張部材104のその非変形形態に戻ろうとする傾向により、相反する横力が細胞カプセル化パウチ102に加えられ、トップ層106及びボトム層108に緊張が与えられる。
【0039】
いくつかの実施態様では、本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスはさらに1つ又は2つ以上の構成部分、例えば1つ又は2つ以上のシール、1つ又は2つ以上のスペーサ(例えば溶接スペーサ又は構造スペーサ)、又は細胞押し退けコアを含む。図2は、細胞カプセル化デバイス200の実施態様を示す断面図である。細胞カプセル化デバイス200は形状においては細胞カプセル化デバイス100と同様であるが、しかし細胞カプセル化パウチ202の第1層206及び第2層208に結合する溶接スペーサ226をさらに含んでいる。溶接スペーサ226は緊張部材204とリザーバ空間220との間に位置決めされている。緊張部材204は図1A~Cに示された緊張部材と同様の形状を有していてよいものの、必ずしも同じ形状を有する必要はなく、全体的に異なる形状(例えば円形又は楕円形)を有していてもよい
【0040】
図2に示された実施態様では、リザーバ空間220は第1内面222と第2内面224との間に、且つ溶接スペーサ226から内側に向かって位置している。リザーバ空間厚228は、第1内面222から第2内面224までの距離であり、溶接スペーサ226の厚さによって定義されており、そして緊張部材厚238とは無関係である。なぜならば、溶接スペーサ226はトップ層とボトム層とを一緒に緊張部材204から内側に向かって締め付けているからである。こうして、図2に示された実施態様では、リザーバ空間厚228は緊張部材厚238よりも小さい。図2に示されているように、いくつかの実施態様では、細胞カプセル化パウチ202は外側多孔質層240と内側多孔質層241とを有する複合材料240,241であってよい。いくつかの実施態様では、内側多孔質層241は、カプセル化細胞を保持し、そして組織の内方成長を制限するのに十分に小さな孔径を有している。いくつかの実施態様では、外側多孔質層240は、植え込まれたときに組織の内方成長が細胞カプセル化デバイス200を固着するのを可能にする。図2に示された複合材料240,241は、本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスにとっては任意であり、ひいては図2と他の点では一致する細胞カプセル化デバイスが、細胞カプセル化パウチとは異なる材料を含んでもよい。さらに、他の図面に示された実施態様が、図2に示された複合材料240,241を含んでよい。
【0041】
図1A~B及び図2に示された細胞カプセル化デバイスは、平坦化されたチューブ状メンブレンから形成されているが、しかしこれとは異なり、トップ層及びボトム層を形成するように折られた1つのメンブレンから形成されてもよく、トップ層及びボトム層を形成するように積層された別々のメンブレンから形成されてもよく、又は1つ又は2つ以上のメンブレン複合体から形成されてもよい。
【0042】
図3A~Bは、細胞カプセル化パウチ302と緊張部材304とを含む細胞カプセル化デバイス300の実施態様を示している。図3Aは、細胞カプセル化パウチ302内部の単独のリング状緊張部材304を示す、細胞カプセル化デバイス300の上面図である。図3Bは3B-3B線に沿った図3Aの断面図である。
【0043】
図3A~Bに示された実施態様では、細胞カプセル化パウチ302は第1層306と第2層308とを含む。第1層306及び第2層308は、これらの周囲310に沿ってシールされた2つの別々のメンブレンである。シールされた周囲310から内側に向かって、第1層306は第1内面322を含み、第2層308は第2内面324を含む。第2内面は第1内面322に向き合い、第1内面322から離隔されることにより、内部容積312を画定する。緊張部材304は内部容積内部に配置され、細胞カプセル化パウチ302の少なくとも2つの対向部分に接触し、そして第1層306及び第2層308に緊張を加える。図3Bは、緊張部材304から内側に向かって内部容積内に配置された溶接スペーサ326を示しているが、しかし、溶接スペーサ以外のスペーサがこの代わりに使用されてもよい。図3Aはさらにポート314を示している。ポートは、シールされた周囲310を通って延び、リザーバ空間320と流体連通している。任意には、内部容積内部には、細胞押し退けコア又は他の構造エレメントが配置されていてよい。
【0044】
図3A~Bに示された実施態様では、リザーバ空間320は第1内面322と第2内面324との間に、且つ溶接スペーサ326から内側に向かって位置している。この実施態様では、リザーバ空間厚328は、第1内面322から第2内面324までの距離であり、溶接スペーサ326の厚さによって定義され、そして緊張部材厚338とは無関係である。なぜならば、溶接スペーサ326がトップ層とボトム層とを一緒に緊張部材304から内側に向かって締め付け、そしてリザーバ空間厚328は溶接スペーサ326の厚さだからである。こうして、図3A~Bに示された実施態様では、リザーバ空間厚328は緊張部材厚338よりも小さい。しかしながら、この代わりに、溶接スペーサの厚さは緊張部材厚に等しいか又はこれよりも大きくてもよく、これらの実施態様では、リザーバ空間厚328は緊張部材厚338に等しいか又はこれよりも大きいことになる。リザーバ空間厚328がどのようなものであれ、緊張部材304によって提供された細胞カプセル化パウチ302上の緊張は、リザーバ空間320の圧潰又はバルーン化を妨げ、ひいては溶接スペーサ326によって定義される厚さを維持する。
【0045】
図3A~Bに示された実施態様では、緊張部材304はリザーバ空間320を完全に包囲している。他の実施態様では、緊張部材はリザーバ空間320を部分的にのみ包囲するか又は取り囲んでよい。図3A~Bに示された実施態様では、溶接スペーサ326はリザーバ空間320から緊張部材304を隔離している。したがって、緊張部材は、カプセル化されるべき細胞との適合性を有する必要はない。
【0046】
図3A~Bに示された実施態様では、緊張部材304はゴムOリングである。この実施態様と一致する他の例では、緊張部材は異なる形状又は異なる材料であってもよい。相反する半径方向内向きの力が緊張部材304に加えられると、緊張部材304の本質的な可撓性は、緊張部材304がほぼ円形形態から、より楕円形の形態へ変形するのを可能にする。緊張部材304は細胞カプセル化メンブレン320の内部にあるときには、変形形態を成している。緊張部材304のその非変形形態に戻ろうとする傾向により、相反する横力が細胞カプセル化パウチ302に加えられ、トップ層306及びボトム層308に緊張が与えられる。図3Aは、リザーバ空間320と流体連通するポート314を示している。
【0047】
図4は別の細胞カプセル化デバイス400を示す断面図である。細胞カプセル化デバイス400は、細胞カプセル化パウチ402が2つの別々のメンブレン、つまり第1層406と第2層408とから形成され、これらの層が周囲410の少なくとも一部に沿ってシールされている点で、細胞カプセル化デバイス300と同様である。第1層406と第2層408との間に緊張部材404が配置されており、緊張部材404は細胞カプセル化パウチ420の少なくとも2つの対向部分に接触しており、そして緊張部材は第1層406及び第2層408に緊張を加える。溶接スペーサの代わりに、細胞カプセル化デバイス400はシール421を含む。シールは第1層406と第2層408とを互いに、緊張部材404から内側に向かって結合する。シール421から内側に向かって、構造スペーサ426が第1層406と第2層408とを分離して、緊張部材404又は構造スペーサ426によって占有されていない内部容積の部分にリザーバ空間420を形成している。
【0048】
この実施態様では、リザーバ空間厚428は、第1内面422から第2内面424までの距離であり、構造スペーサ426の厚さによって定義され、そして緊張部材厚438とは無関係である。なぜならば、シール410が第1層406と第2層408とを一緒に緊張部材404から内側に向かって結合しており、リザーバ空間厚428は、第1層406と第2層とを分離する構造スペーサ426の厚さだからである。図4に示された構造スペーサ426の高さは緊張部材厚438よりも小さいものの、いくつかの実施態様では、構造スペーサ426の厚さは緊張部材厚438に等しいか又はこれよりも大きくてもよく、そしてこれらの実施態様では、リザーバ空間厚428もまた、緊張部材厚438に等しいか又はこれよりも大きいことになる。リザーバ空間厚428がどのようなものであれ、緊張部材404によって提供された細胞カプセル化パウチ402上の緊張は、リザーバ空間420の圧潰又はバルーン化を妨げ、ひいては溶接スペーサ426によって定義される厚さを維持する。
【0049】
図4に示されているように、緊張部材404はシール421によってリザーバ空間420から隔離されている。種々の実施態様では、シール421は連続的又は不連続的であってよい。シール421が連続である場合には、これは緊張部材404をリザーバ空間420から隔離し、そして緊張部材はカプセル化細胞との適合性があってもなくても、任意の適宜な材料から形成することができる。シール421が不連続的である場合(図示せず)には、緊張部材404はリザーバ空間420と流体連通していてよく、カプセル化細胞との適合性のある材料から形成される必要がある。
【0050】
図5A~Bは、細胞押し退けコア550を含む細胞カプセル化デバイス500の実施態様を示す。図5Aは細胞カプセル化デバイス500の上面図であり、そして図5Bは、5B-5B線に沿った細胞カプセル化デバイス500の断面図である。図5A~Bは、単独のチューブ状メンブレンから形成された細胞カプセル化パウチ502を示している。このメンブレンは、第1層506と第2層508を形成するように平坦化されている。チューブは遠位端及び/又は近位端でシールされている。これら両端は平坦化チューブの周囲510と呼ばれる。しかしながら別の実施態様では、細胞カプセル化パウチ502は2つの別々のメンブレンから形成することもできる。これらのメンブレンはこれらの周囲の少なくとも一部に沿って積層されシールされる。あるいは、細胞カプセル化パウチ502は1つ又は2つ以上のメンブレン複合体から形成されていてもよい。
【0051】
図5A~Bに示された実施態様では、細胞カプセル化パウチ502は第1層506と第2層508とを含む。第1層506及び第2層508は、これらの周囲510に沿ってシールされている。緊張部材504は内部容積520内部に配置され、細胞カプセル化パウチ502の少なくとも2つの対向部分に接触し、そして第1層506及び第2層508に緊張を加える。図5Bは、緊張部材504から内側に向かって内部容積内部に配置された細胞押し退けコア550を示している。図5Aはさらにポート514を示している。ポートは、シールされた周囲510を通って延び、リザーバ空間520と流体連通している。
【0052】
この実施態様では、リザーバ空間厚528は、第1内面522から第2内面524までの距離であり、細胞押し退けコア550の厚さによって定義され、そして緊張部材厚538とは無関係である。なぜならば、細胞押し退けコア550が緊張部材厚よりも厚いからである。緊張部材504によって提供された細胞カプセル化パウチ502上の緊張は、リザーバ空間520の圧潰又はバルーン化を妨げ、ひいては細胞押し退けコア550によって定義される厚さを維持する。
【0053】
緊張部材504は図5A~Bに示されているように、細胞押し退けコア550によってリザーバ空間502から隔離されてはいるものの、緊張部材材料が、挿入されるべき細胞と適合性がある場合には隔離される必要はない。このように、緊張部材504がリザーバ空間502から隔離されるか否かは、この実施態様の限定的な特徴であるようには意図されない。
【0054】
図5A~Bに示された緊張部材504は、非直線状である互いに対向する端部542,544と、ほぼ直線状である互いに対向する側部546,548とを含むが、しかし細胞カプセル化パウチ502の全長(長さは一方の対向端部から他方の対向端部まで)にわたって均一な緊張を提供する任意の形状であってよい。種々の実施態様によれば、非直線状の端部542,544は、図5Aに示されているように、X軸線516とY軸線518とによって定義された平面内で非直線状であってよく、且つ/又はX軸線516とZ軸線(図示せず)とによって定義された平面内、中間平面内、又は複数平面内で非直線状であってもよい。種々の実施態様によれば、非直線状の端部は、図5Aに示されているように、1つ又は2つ以上の曲線を含んでよく、あるいは蛇行形状又は螺旋のような他の非直線形状を含んでもよい。あるいは、本明細書中に記載された他の形状を有するフレームを緊張部材504として利用することもできる。このようなものとして、緊張部材504の正確な形状は限定的なものと考えるべきではない。
【0055】
相反する内向きの力が側部546,548に加えられると、端部542,544の非直線状形状は、緊張部材504の非変形形態から変形形態への変形を可能にする。緊張部材504は細胞カプセル化パウチ502の内部にあるときには、変形形態を成している。緊張部材504のその非変形形態に戻ろうとする傾向により、相反する横力が細胞カプセル化パウチ502に加えられ、トップ層506及びボトム層508に緊張が与えられる。
【0056】
図6A~Bは、緊張部材604と細胞カプセル化パウチ620とを有する細胞カプセル化デバイス600の別の実施態様を示している。図6Aは細胞カプセル化デバイス600の上面図である。デバイスはX軸線616とY軸線618とによって定義された平面内にある。図6Bは、6B-6Bに沿った細胞カプセル化デバイス600の断面図である。断面図はX軸線616とZ軸線619とによって定義された平面を示している。細胞カプセル化デバイス600は第1層606と第2層608とを有している。これらの層は中間位置652で一緒にシールされているので、第1層606と第2層608との間のリザーバ空間が複数の格納チューブ621に細かく分割されている。それぞれの格納チューブ621は細胞を格納するために別々のリザーバ空間を有している。種々の例において、それぞれの格納チューブ621は別々のポート614を有しているので、それぞれの格納チューブ621のリザーバ空間に独立して細胞をローディングすることができる。いくつかの実施態様では、格納チューブ621内に充填チューブ(図示せず)を挿入することができる。充填チューブには細胞を予め充填することができる。加えて充填チューブを格納チューブから抜き出し、必要に応じて補充(且つ/又は再使用)することもできる。
【0057】
図6A~Bに示されているように、緊張部材604は細胞カプセル化デバイス600の周囲を巡って延びている。図6A~Bに示された実施態様では、緊張部材604はリザーバ空間から隔離されており(すなわち流体連通していない)、結果として、緊張部材はカプセル化細胞との適合性の有無にかかわらず、任意の適宜な材料から形成されていてよい。緊張部材604は、非直線状である互いに対向する端部642,644と、直線状である互いに対向する側部646,648とを含む。ある特定の実施態様では、緊張部材604の少なくとも一部が第1層606と第2層608との間に位置決めされており(例えば図6A~Bの互いに対向する直線状の端部646,648)、そして別の部分は細胞カプセル化パウチ602の外部にある(例えば図6A~Bの互いに対向する非直線状の端部642,644)。種々の実施態様によれば、非直線状の端部642,644は、図6Bに示されているように、X軸線616とZ軸線619とによって定義された平面内で非直線状であってよく、且つ/又はX軸線616とY軸線618とによって定義された平面内、中間平面内、又は複数平面内で非直線状であってもよい。図6Bに示された例では、非直線状の端部642,644はZ次元619で非直線状である。
【0058】
相反する内向きの力が側部646,648に加えられると、端部642,644の非直線形状は、緊張部材604の非変形形態から変形形態への変形を可能にする。緊張部材604は細胞カプセル化パウチ602の内部にあるときには、変形形態を成している。緊張部材604のその非変形形態に戻ろうとする傾向により、相反する横力が細胞カプセル化パウチ602に加えられ、トップ層606及びボトム層608に緊張が与えられ、格納チューブ621が伸張されるので、それぞれの格納チューブ621の厚さ628(ひいてはリザーバ空間)が制御される。
【0059】
いくつかの実施態様では、本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスは、複数の緊張部材を含んでよい。緊張部材は、リザーバ空間を完全には取り囲まない単独の緊張部材であってよく、あるいは複数の緊張部材であって、これらのうちリザーバ空間を完全に取り囲むものはない、緊張部材であってもよい。緊張部材は集合的にリザーバ空間を取り囲んでもよく、あるいは取り囲まなくてもよい。
【0060】
図7A~Dは、緊張部材704a,704bを含む細胞カプセル化デバイス700のための挿入体710の実施態様を示している。図7Aは、2つの緊張部材704a,704bにカップリングされた細胞押し退けコア750を含む挿入体710の上面図である。緊張部材704a,704bの端部705a,705bは細胞押し退けコア750内に埋め込まれている。図7Bは、図7Aに示された挿入体の端面図である。図7Cは、図7Aに示された挿入体の側面図である。図7Dは、図7Aに示された挿入体を、7D-7D線に沿って示す断面図である。図7Eは、挿入体710が細胞カプセル化パウチ702内部に位置しているときに形成される、細胞カプセル化デバイス700の7D-7D線に沿った断面図である。細胞カプセル化パウチ702は、第1多孔質層706と第2多孔質層708とを含む。これらの層は、緊張部材704a,704b及び細胞押し退けコア750が内部に配置された状態で内部容積712を画定する。緊張部材704a,704bは、細胞カプセル化パウチ702の2つの対向部分に接触し、そして第1層706及び第2層708に緊張を加える。細胞カプセル化デバイス700は、第1多孔質層706及び第2多孔質層708と細胞押し退けコア750との間に細胞を受容するためのリザーバ空間720を含む。本明細書中には示されていない他の実施態様では、細胞カプセル化パウチ702は、第1層706と第2層708とを形成するように平坦化された単独のチューブ状メンブレン、第1層706と第2層708とを形成するように折られた単独のメンブレン、又は第1層706と第2層708とを形成するように周囲の少なくとも一部に沿って積層されシールされた2つの別々のメンブレンであってよい。あるいは、細胞カプセル化パウチは1つ又は2つ以上のメンブレン複合体から形成されていてもよい。
【0061】
本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスのいくつかの実施態様では、細胞カプセル化パウチの第1層及び第2層は可撓性ではあるが、しかし、緊張部材は単独で、又は他の構造構成部分との組み合わせで、細胞カプセル化デバイスを概ね平面的な構造として維持する。緊張部材は、加えられた力のもとで、第1層と第2層との間に平均距離を維持する。本明細書中に使用される「平均距離」という表現は、当該寸法全体にわたって厚さがほぼ一致している、細胞が存在する細胞カプセル化デバイスのリザーバ内の全長及び/又は全幅にわたる第1内面と第2内面との間の距離を言い表すものとする。平均距離を維持することにより、構造的な形状が損傷なしに保たれ、デバイスの破裂を招く変形が回避されるので有利である。加えて、平均距離を維持しないと、望ましくない容積変化をもたらすおそれがある。最適な間隔は種々異なる細胞種類に応じて変化する。内面間の最適平均距離を超えると、カプセル化デバイス内部のいくつかの細胞がデバイス壁からあまりにも大きく離れて不都合に位置することになるので、栄養素及び他の生体分子を受容することができない。十分な栄養素及び酸素を受容しない細胞は健常且つ生産的であることができず、あるいは死滅することもある。いくつかの実施態様では、加えられる力は外部の圧縮力であるが、他の実施態様では、加えられる力は内部の拡張力であり得る。いくつかの実施態様では、加えられる力は剪断力又は周期的な力(cyclical force)であってよい。このように、任意には構造スペーサを有する緊張部材は、平均距離を維持するために両方の力に耐えることができる。
【0062】
いくつかの実施態様では、加えられる力は外部の圧縮力であり得る。外部の圧縮力は、緊張部材が存在しなければ第1層と第2層との間のリザーバ空間を圧潰させる傾向をもたらす。例えば、周囲組織がin vivoのデバイスに圧縮力を加えることがあり、あるいは臨床医が挿入前又は挿入中にデバイスの外側に圧縮力を加えることがある。外部の圧縮力が第1内面と第2内面との間の距離を短くすると、カプセル化デバイスは望ましくない機械的刺激を被り、その結果細胞機能が最小化されるか又は細胞が死滅することがある。いくつかの例では、デバイスは皮下植え込みを対象としており、ひいてはデバイスが患者内に植え込まれている状態では、圧縮力は患者との接触、例えばハグ、背中を軽く叩くこと、又は転倒によって引き起こされることがある。
【0063】
あるいは、加えられる力は内部の拡張力であり得る。内部の拡張力は、緊張部材が存在しなければ第1層と第2層との間のリザーバ空間を丸みを帯びたバルーン様の構造に拡張させる傾向をもたらす。例えば、細胞をリザーバ空間内に注入するために圧力が必要となり得る。一例では、例えば作業者のエラーに起因する、挿入時の過剰膨張によって圧力が引き起こされ得る。別の例では、細胞の増殖に起因する細胞の増大によって圧力が引き起こされ得る。
【0064】
いくつかの実施態様では、緊張部材は弾性変形可能な材料である。例えば、緊張部材は弾性変形可能なポリマー、ポリマーブレンド、又は金属合金であってよい。例えば、弾性変形可能な材料は、ポリマーエラストマー、例えば天然又は合成のポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、又はエチレンビニルアセテートであってよい。いくつかの実施態様では、本明細書中に記載されたデバイスは緊張部材の僅かな量の撓みだけを必要とし、ひいては高度な弾性挙動及び超弾性挙動は必要とされない。したがっていくつかの実施態様では、緊張部材はスプリングテンパー型スレンレス鋼、例えばスプリングテンパー型316 SST、スプリングテンパー型コバルト-クロム合金、例えばCo-28Cr-6Mo又はCo-35Ni-20Cr-10Mo、又はスプリングテンパー型チタン系合金、例えばTi-6Al-4Vであってよい。他の実施態様では、緊張部材は、高度な弾性を有する材料であってよい。したがっていくつかの実施態様では、緊張部材はスプリングテンパー型ニッケル-チタン合金、例えばニチノールであってよい。緊張部材は、患者の生体構造に適合するように所期形状に予め形成することができる。加えて、緊張部材はカテーテル又はトロカールを介して所期部位に送達することができる。
【0065】
いくつかの実施態様では、緊張部材は形状記憶材料から形成されるか又はこれを含んでよい。上述のニチノールが形状記憶合金である。有用な形状記憶合金の非限定的な例は、例えば銅-アルミニウム-ニッケル、銅-亜鉛-アルミニウム、及び鉄-マンガン-ケイ素合金を含む。
【0066】
形状記憶材料の他の非限定的例は、形状記憶ポリマー、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリ-アルファ-ヒドロキシ酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリグリコール酸、ポリグリコール、ポリラクチド、ポリオルトエステル、ポリホスフェート、ポリオキサエステル、ポリホスホエステル、ポリホスホネート、多糖類、ポリチロシンカーボネート、ポリウレタン、プレポリマー法によって形成されたイオン成分又はメソゲン成分を有するポリウレタン、及びこれらのコポリマー又はポリマーブレンドを含む。いくつかのブロックコポリマー、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)とポリエチレンオキシド(PEO)とのブロックコポリマー、ポリスチレンとポリ(1,4-ブタジエン)とを含有するブロックコポリマー、及びポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)とポリテトラヒドロフランとから形成されたABAトリブロックコポリマーも形状記憶効果を示す。
【0067】
大まかに言えば、本明細書中に記載された緊張部材は、植え込まれた細胞カプセル化デバイスの寿命にわたって、緊張を細胞カプセル化パウチに与えるように動作可能であるべきである。したがっていくつかの実施態様では、緊張部材として有用な形状記憶ポリマーは生分解可能ではない。しかしながら他の実施態様では、少なくともある程度の生分解性を有する形状記憶ポリマー(例えばポリグリコール酸、及び特定の酵素の存在下のいくつかのポリウレタン)も、これが所望の時間にわたって細胞カプセル化パウチに緊張を与えるならば、緊張部材として有用であり得る。
【0068】
緊張部材がカプセル化細胞との生体適合性を有しなければならない実施態様では、緊張部材は本質的に生体適合性である材料であってよく、又はこのような材料から形成されてよく、あるいは本質的な生体適合性を有してはいないが、しかし、例えば生体適合性被膜によって生体適合性にされている材料であってもよい。本質的に生体適合性の緊張部材材料の非限定的な例は、ニチノール及びTi-6Al-4Vを含む。生体適合性被膜として使用し得る材料の非限定的な例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、及びパリレンを含む。溶剤塗布することができるフルオロポリマーも生体適合性被膜として有用であり得る。
【0069】
本明細書中に記載されたいずれの実施態様でも、細胞カプセル化パウチの第1層及び第2層は任意には複合層であってよい。複合層の一例は図2に示されているが、しかし本明細書中に記載されたいずれの実施態様も任意には複合層を含んでよい。種々の例において、複合層は少なくとも2つの層を含み、そして3つ以上の層を含んでもよい。例えば、複合層は少なくとも、外側多孔質層と、外側多孔質層に隣接して配置された内側多孔質層とを含んでよい。いくつかの実施態様では、細胞カプセル化パウチの第1層及び第2層の両方は、それぞれが外側多孔質層と内側多孔質層とを有する複合材料であってよい。第1層及び第2層の外側多孔質層は同じ材料であってよく、あるいは異なる材料であってもよい。同様に、第1層及び第2層の内側多孔質層は同じ材料であってよく、あるいは異なる材料であってもよい。ある特定の実施態様では、内側多孔質層の孔径は外側多孔質層の孔径よりも小さい。ある特定の実施態様では、内側多孔質層の多孔率は外側多孔質層の多孔率よりも小さい。種々の実施態様では、内側多孔質層の部分は、細胞カプセル化デバイスの第1内面及び第2内面を形成する。
【0070】
細胞カプセル化パウチの第1層及び第2層の両方が複合層であるときには、いくつかの実施態様では、両内側多孔質層の平均孔径は、血管内方成長を防止するのに十分に小さい。本明細書中では、血管内方成長を制限又は防止する層を「緻密(tight)」層と呼ぶことがある。1つの非限定的な例としては、内側多孔質層の平均孔径はポロメトリーによって測定して、約5ミクロン未満、約1ミクロン未満、約0.8ミクロン未満、約0.5ミクロン未満、約0.3ミクロン未満、約0.1ミクロン未満であってよい。いくつかのさらなる例では、内側多孔質層の平均孔径はポロメトリーによって測定して約0.05~約0.4ミクロンであってよい。小さな孔径は、内側多孔質層が細胞保持層として機能することにより、細胞をカプセル化デバイス内部のリザーバ空間内に配置されたままにするのを可能にするものの、栄養素及び他の生体分子が入り、細胞老廃物及び治療生成物が出るのも可能にする。したがってこの層は本明細書中で細胞保持層と呼ばれることがある。いくつかの実施態様では、孔は細胞内方成長に抵抗するが、しかし特定の巨大分子を選択的に通すことができる。
【0071】
細胞カプセル化パウチの第1層及び第2層の両方が複合層であるときには、いくつかの実施態様では、両方の外側多孔質層の平均孔径は血管組織が患者から外側多孔質層の孔内部で成長するのを可能にするのに十分に大きい。本明細書中で、血管内方成長を可能にするのに十分に広い開口を有する層を「開放」層又は「血管新生化」層と呼ぶことがある。いくつかの非限定的な例では、外側多孔質層の孔径はポロメトリーによって測定して約5.0ミクロン超、約6.0ミクロン超、約7.0ミクロン超、又は約10ミクロン超である。外側多孔質層を通る血管組織の内方成長は、身体からデバイス内にカプセル化された細胞への栄養素及び生体分子の移動を容易にする。
【0072】
種々の細胞種類が、本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスの多孔質材料から成る血管新生化層内に成長することができる。特定の多孔質材料内に成長する主要な細胞種類は主として、植え込み部位、材料の組成及び透過性、及び生物学的因子、例えば材料中に取り込み得る又は多孔質材料を通して導入し得るサイトカイン及び/又は細胞接着分子に依存する。いくつかの実施態様では、血管内皮が、細胞カプセル化デバイス内で使用するための多孔質材料内へ成長する主要な細胞種類である。毛細血管網の形態を成す十分に確立された血管内皮細胞集合による多孔質材料の血管新生化は、患者の組織から材料の厚さ内へ且つ厚さを横切って、細胞カプセル化デバイスの内面に極めて接近するものの、細胞保持層を横切ることはなしに材料が新血管新生化する結果として、発生を促される。
【0073】
いくつかの実施態様では、第1層及び第2層の一方だけが複合層である。例えば、第1層は、血管新生化層である外側多孔質層と、細胞保持層である内側多孔質層とを含む複合層であってよいのに対して、第2層は細胞保持層を含むだけでよい。
【0074】
別の実施態様では、第1層も第2層も複合層でなく、両方とも細胞保持層である。こうして、デバイスは血管新生化層を含まない。このような実施態様では、細胞カプセル化デバイスは任意にはハウジングと一緒に使用することもできる。ハウジングは患者内に配置され、又は配置することができ、そして血管新生化材料から形成されているので、ハウジングは患者からの血管組織の内方成長を可能にする。いくつかの実施態様では、ハウジングは、デバイスがハウジング内に挿入される前に血管新生化を可能にするのに十分な時間にわたって患者内に植え込まれていてよい。他の実施態様では、デバイス及びハウジングは患者内へ一緒に挿入されてよい。
【0075】
さらなる実施態様では、第1層も第2層も複合層でなく、その代わりに両方とも血管新生化層である。したがってデバイスは細胞保持層を含んでいない。このような実施態様では、細胞カプセル化デバイス内に挿入されるべき細胞はマイクロカプセル化されてよい。このことは宿主免疫応答から細胞を隔離可能にする。いくつかの実施態様では、細胞は、例えばヒドロゲル又はアルギネート生体材料を含む天然又は合成起源の生体材料内部にマイクロカプセル化することができる。結果として、別個の細胞保持層を細胞カプセル化デバイスから省くことができる。
【0076】
外側多孔質血管新生化層及び内側細胞保持層として有用な材料の一例としては、アルギネート、セルロースアセテート、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール、パンビニル(panvinyl)ポリマー、例えばポリビニルアルコール、キトサン、ポリアクリレート、例えばポリヒドロキシエチルメタクリレート、アガロース、加水分解ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリルコポリマー、ポリビニルアクリレート、例えばポリエチレン-コ-アクリル酸、多孔質テトラフルオロエチレン(TFE)ポリマー、例えば多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(例えば、延伸PTFE(ePTFE))、多孔質改質PTFE、及び多孔質TFEコポリマー、多孔質ポリアルキレン、例えば多孔質ポリプロピレン、多孔質ポリエチレン、多孔質ポリフッ化ビニリデン、多孔質ポリエステルスルホン(PES)、多孔質ポリウレタン、多孔質ポリエステル、多孔質PPX(ePPX)、多孔質超高分子量ポリエチレン(eUHMWPE)、多孔質エチレンテトラフルオロエチレン(eETFE)、多孔質ポリ乳酸(ePLLA)、及びこれらのコポリマー及び組み合わせ、並びに繊維又は糸の製織収集体又は不織収集体が、単独又は組み合わせで挙げられる。いくつかの実施態様では、多孔質層として有用な材料は、織布及び不織布を含む生体材料テキスタイルを含む。
【0077】
いくつかの実施態様では、多孔質血管新生化層は生体吸収性材料であってよい。あるいは、多孔質血管新生化ポリマー材料を生体吸収性材料で被覆してもよく、又は生体吸収性材料を多孔質血管新生化ポリマー材料中又は多孔質血管新生化ポリマー材料上に粉末の形態で取り込むこともできる。被膜付き材料は感染部位低減、血管新生化、及び好ましい1型コラーゲン堆積を促進することができる。本明細書中に記載された多孔質ポリマー材料は、当業者に知られた任意の生体吸収性材料を含んでよい。生体吸収性材料の非限定的な例としては、ポリグリコリド:トリメチレンカーボネート(PGA:TMC)、ポリアルファヒドロキシ酸、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(グリコリド)、及びポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-コ-バレレート)、及びこれらのコポリマー及びブレンドが挙げられる。
【0078】
いくつかの実施態様では、構造スペーサが多孔質材料から形成される。多孔質材料の孔径は、構造スペーサ材料内部の細胞の内方成長を排除する。いくつかの実施態様では、多孔質材料は多孔質(例えばePTFE)、多孔質ポリプロピレン、多孔質ポリエチレン、ポリエステルスルホン(PES)、ポリウレタン、ポリエステル、及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を単独又は任意の組み合わせで含む。
【0079】
別の実施態様では、構造スペーサは非多孔質材料から形成されている。いくつかの実施態様では、非多孔質材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、シリコーンポリカーボネートウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタン、シリコーンポリエーテルウレタン、ポリエステル、ポリエステルテレフタレート、溶融処理可能なフルオロポリマー、例えばフッ素化エチレンプロピレン(FEP)、テトラフルオロエチレン-(ペルフルオロアルキル)ビニルエーテル(PFA)、エチレン/TFE交互コポリマー(ETFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/フッ化ビニリデン(VDF)ターポリマー(THV)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びこれらの組み合わせを含む。
【0080】
いくつかの実施態様では、本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスの構造スペーサは、第1層及び第2層の一方又は両方の内面に付着している。いくつかの実施態様では、構造スペーサは少なくとも1つの内面に付着されてはいるものの、これらは付着される必要がない。例えば他の実施態様では、構造スペーサはリザーバ空間内部で自由に浮遊していてよい。いくつかの実施態様では、第1層及び第2層は両方とも、内側緻密多孔質層を有する複合材料であり、そして構造スペーサは内側緻密多孔質層の両方に付着している。構造スペーサは内側緻密多孔質層の孔の一部を貫通していてよい。いくつかの実施態様では、スペーサは外側血管新生化多孔質層を貫通しないので、外側血管新生化多孔質層は、細胞内方成長を可能にするのを依然として妨げられない。
【0081】
いくつかの実施態様では、構造スペーサの少なくとも一部を形成するようにフルオロポリマー粉末を細胞保持層上に堆積することによって、構造スペーサを形成することができる。有用な粉末被覆法が、Bacinoの米国特許第8,808,848号明細書に教示されている。これは全体的に本明細書中に援用される。
【0082】
デバイスの中心から細胞を押し退けるように作用するいかなる材料も、細胞押し退けコアの材料として使用するのに適している。例えば、適切なコア材料の一例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリジメチルシロキサン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、又は多糖類から誘導されたヒドロゲル、アルギネート、加水分解ポリアクリロニトリル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施態様では、コアは可撓性のポリマー又はエラストマーである。他の実施態様では、コアは多糖類、ポリアクリロニトリルの親水性コポリマー、ポリアクリルニトリルとアクリルアミドとのコポリマー、及び/又は他の非多孔質ポリマーから製造されてよい。
【0083】
トップ層及びボトム層をシールする方法は熱溶接、ステーキング、超音波シーリング、及びインパルス熱シーリングを含む。例えばシールされた周囲を形成するために、トップ層及びボトム層をシールするのに有用なデバイスの一例は、インパルス熱シールである。ある特定の実施態様では、インパルス熱シールベース固定具が、シリコーンダイプレートと、適合するインパルス熱バンドジオメトリとを含む。シールされるべきメンブレン又はメンブレン複合体は、ベース固定具と、鏡像シリコーンダイプレートを有する圧縮トップ固定具との間に配置することができ、そしてインパルス熱バンドをシリコーンダイプレート間で圧縮して加熱することにより、メンブレン又はメンブレン複合体をシールしそして細胞カプセル化パウチを形成する。
【0084】
いくつかの例では、リザーバ空間の厚さでもある、第1内面と第2内面との間の距離は、少なくとも約50ミクロン(0.05mm)(例えば少なくとも0.1mm、少なくとも0.15mm、少なくとも0.2mm、又は少なくとも0.5mm)である。いくつかの例では、リザーバ空間の厚さでもある、第1内面と第2内面との間の距離は、0.05mm~0.25mm(例えば0.05mm~0.15mm、0.05mm~0.10mm、0.10mm~0.20mm、0.10mm~0.15mm、0.15mm~0.25mm、0.15mm~0.20mm、又は0.20mm~0.25mm)である。いくつかの実施態様では、細胞カプセル化デバイスは細胞押し退けコアを含まず、その第1内面と第2内面との間の距離は、0.05mm~0.25mmである。いくつかの実施態様では、細胞カプセル化デバイスは細胞押し退けコアを含み、その第1内面と第2内面との間の距離は、細胞押し退けコアを含めて0.5mm~4.0mm(例えば1.0mm~3.0mm、1.0mm~2.0mm、2.0mm~4.0mm、2.0mm~3.0mm、3.0mm~4.0mm)である。いくつかの実施態様では、リザーバ空間の厚さ(細胞押し退けコア又は他の構造エレメントの表面からパウチまで)は約0.05~約0.25mmである。1実施態様では、平均距離を維持することにより、第1層を第2層とほぼ平行な関係に置くことができる。複合層内に使用される材料、例えばePTFEは、植え込み中及びin vivoの両方において細胞カプセル化デバイスの完全性を維持するのに十分な引張強度を有することが重要である。
【0085】
ある特定の実施態様では、細胞カプセル化デバイスの全厚(細胞カプセル化パウチの互いに対向する外面間の距離)は、約5mm未満、例えば約4mm未満、約3mm未満、約2mm未満、約1mm未満である。いくつかの実施態様では、細胞カプセル化デバイスの全厚は、約0.3mm~約4mm、例えば約0.3mm~約1.0mm、約0.3~約0.5mm、又は約0.5mm~約1.0mm、約1mm~約4mm、約1mm~約3mm、又は約2mm~約4mmである。いくつかの実施態様では、細胞押し退けコアを含むデバイスの全厚は、約1mm~約4mmであってよい。いくつかの実施態様では、細胞押し退けコアを含まないデバイスの全厚は、約0.3mm~約0.5mmであってよい。
【0086】
1つの非限定的な例では、非変形形態を成す緊張部材の互いに対向する側部間の距離は約5mm~約50mm(例えば約20mm)であり、そして緊張部材が変形形態を成して細胞カプセル化パウチ内に配置されたときの同じ緊張部材の互いに対向する側部間の距離は、約5mm~約50mm(例えば約15mm)である。
【0087】
本明細書中に記載された細胞カプセル化デバイスは、細胞又は他の生物学的部分を患者における組織床内の所定の場所に保持することにより生物学的治療を患者に提供するのに有用である。いくつかの実施態様では、細胞は媒質中の懸濁液又はスラリーの形態で導入される。細胞は個々の細胞、細胞凝集体、又は細胞クラスターであってよい。一例としては、媒質は、任意には所期栄養素を含む細胞培地又は細胞増殖培地であってよい。いくつかの実施態様では、ポートを通した細胞の挿入はシリンジを使用して達成することができる。いくつかの実施態様では、細胞を挿入するとデバイスに圧力が加えられるが、しかしデバイスは緊張部材に基づきその全体的な断面形状を保持する。
【0088】
いくつかの実施態様では、細胞カプセル化デバイスの緊張部材が、細胞カプセル化デバイスの細胞カプセル化パウチ全体にわたって緊張を提供する第1変形形態にあるときに、細胞又は他の生物学的部分はリザーバ空間に導入される。種々の実施態様では、細胞カプセル化パウチ上の緊張が小さくなるように緊張部材が第1変形形態よりも大きく変形させられた(例えばより狭くされた)第2変形形態にあるときに、細胞又は他の生物学的部分はリザーバに導入される。いくつかの実施態様では、緊張部材が第2変形形態にある間に、細胞又は他の生物学的部分は1つ又は2つ以上のポートを通して、デバイスのリザーバ空間に導入される。いくつかの実施態様では、ポートは、シールされた細胞カプセル化パウチの第1層と第2層との間のシールされた周囲を通って延びているので、細胞はパウチの縁部を通してパウチのリザーバ内へ導入される。種々の実施態様では、細胞をリザーバ空間内へ挿入した後で、緊張部材が第2変形形態から解放されることにより、緊張部材は第1変形形態に戻る。
【0089】
本明細書中に記載されたカプセル化デバイスは、細胞の挿入前又は挿入後に患者内に植え込むことができる。例えば、デバイスを患者内に挿入して血管新生化を可能にすることにより、血管組織はデバイスの血管新生化層内へ成長することができる。次いで、デバイスがin vivoである間に細胞を添加することができる。あるいは、デバイスを患者の組織床内に挿入する前に細胞をデバイスに添加することもできる。例えば、いくつかの実施態様では、緊張部材が細胞カプセル化パウチ全体にわたって緊張を提供する第1変形形態を成す状態で、細胞を含む細胞カプセル化デバイスを提供することができる。緊張部材は、第1変形形態から、細胞カプセル化パウチ上の緊張が小さくなるように第1変形形態よりも大きく変形させられた(例えばより狭くされた)第2変形形態に変形させることができる。細胞カプセル化デバイスを患者の組織床内に挿入することができ、そして緊張部材を次いで第2変形形態から解放することにより、緊張部材は第1変形形態に戻ることができる。
【0090】
いくつかの実施態様では、本明細書中に記載された緊張部材のために使用される材料は本質的にX線不透過性である。本質的にX線不透過性でないデバイス材料は、例えばバリウムを材料に含浸させることによりX線不透過性になるように改質することができる。材料をX線不透過性にさせる他の有用な方法が当業者に知られている。本明細書中に記載されたデバイスを構成するために使用される材料のX線不透過性は、細胞カプセル化デバイスの外科的配置を容易にするために、又は植え込みに続いて患者内の細胞カプセル化デバイスを位置特定するために主に使用される。
【実施例
【0091】
実施例1:フルオロ熱可塑性フィルムを使用して2つの層を互いに溶接することによって、細胞含有パウチを2つの多層メンブレン層から形成した。多層メンブレンは多層延伸PTFE(ePTFE)メンブレンから成った。このメンブレンは、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)から成る不連続フルオロポリマー層と一緒に結合された相異なるメンブレンの層を合体させることによって製造された。内層(緻密層)は、概ねGoreの米国特許第3,953,566号明細書の教示内容に従って形成された、より小さな孔径と表3に挙げられた材料特性とを有するメンブレンから成った。前記明細書は全体的に本明細書中に援用される。Goreの方法を用いて、液体潤滑剤を商業的に入手可能なPTFE粉末と混合し、そして混合物をラム型押出機又は他のタイプの押出機によって押し出す。次いで、液体潤滑剤をこれから除去した後、一軸、二軸、又は多軸方向に急速伸張することによって材料を延伸した。外層(開放層)は、概ねBranca他の米国特許第5,814,405号明細書の教示内容に従って形成されたより大きい孔径のメンブレンから成った。前記明細書は全体的に本明細書中に援用される。ここではこのサブストレートを空気透過性のままにした状態で、概ねBacinoの国際公開第94/13469号パンフレットのプロセス教示内容に従って、不連続FEP層をこのメンブレンの層上に取り込んだ。前記パンフレットは全体的に本明細書中に援用される。この開放層の特性を表1に挙げる。次いで内層(緻密層)を外層(開放層)と接触させた。2つのPFEPの溶融温度を上回る温度に加熱しながら、不連続FEP表面を2つのPTFE層間に置くことにより、表1に特定した最終特性を有する、結合多層メンブレンを形成した。ePTFE多層メンブレンを親水性処理した。
【0092】
【表1】
【0093】
細胞含有パウチを3つの側で溶接し、第4の側を細胞のローディングのアクセスのために開いたままにした。溶接フィルムは125μm THV500(Dyneonから入手可能)であった。溶接フィルムは、細胞が入れられるように意図された中央で開いていた。両メンブレン層及び溶接フィルムは、この部分の外縁部上で溶接部を超えて約1cm延びていた。メンブレンの一方の層に、アクティブ領域の開いた端部の2つの個所で溶接部から外側に向かってスリットを形成した。メンブレン層間の、メンブレンが互いに溶接された3つの側の溶接部の外側に、且つ後から細胞を充填するために開いたままにされている両メンブレン層の上方に、シリコーンゴムOリングを入れた。Oリングは強制的にパウチの2つの長い側の溶接部と接触させられ、そしてOリングの外側でメンブレンを互いに溶接することにより所定の場所に固定された。このことはシリコーンOリングが緊張部材として作用し、アクティブ領域を緊張状態に保つのを可能にした。余剰のメンブレン及び溶接フィルムをトリミングして取り除いた。層の間に充填針を挿入することにより、デバイスへの細胞のローディングを容易にした。無菌充填後、針は取り外されるように意図され、パウチの開いた端部を溶接して閉じ、そして余剰のメンブレンを取り除くことにより、細胞のカプセル化が完了する。この実施例では、緊張部材はパウチ内部に含有される細胞から隔離されている。
【0094】
実施例2:フルオロ熱可塑性フィルムを使用して2つの層を互いに溶接することによって、細胞含有パウチを含むデバイスを、2つの多層メンブレン層から形成した。図8は、緊張部材804を包囲する細胞カプセル化パウチ802を有するデバイス800の一例を示している。開いた端部を通して治療的細胞をローディングし、次いで端部をシールし/余剰のメンブレンを取り除くことにより、組み合わせデバイスを完成することができる。この実施例では、多層メンブレンは、実施例1で使用されたものと同じ複合メンブレンであった。溶接フィルムは125μm THV500(Dyneonから入手可能)であった。細胞含有パウチを3つの側で溶接し、第4の側を細胞のローディングのアクセスのために開いたままにした。溶接フィルムは、細胞が入れられるように意図された中央で開いていた。メンブレンが互いに溶接された3つの側から、余剰のメンブレンをトリミングして取り除いた。ニチノールワイヤ(0.27mm)を楕円形状に曲げ、そして470℃で7分間にわたって熱処理し、次いで水浴中で急速にクエンチすることにより、緊張部材を形成した。余剰のニチノールワイヤをトリミングして取り除き、端部をレーザー溶接によって互いに溶接した。パウチの内径は溶接部の内側から約8mmであった。非変形形態の緊張部材は長縁部の外側で約9mmであった。緊張部材の長縁部を一対のピンセットによって約6mmの距離まで押し合わせ、そして緊張部材をパウチ内に入れた。緊張部材を解放し、ピンセットを取り出した。
【0095】
実施例3:第1多孔質延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)メンブレンを概ねGoreの米国特許第3,953,566号明細書の教示内容に従って形成した。前記明細書は全体的に本明細書中に援用される。Goreの方法を用いて、液体潤滑剤を商業的に入手可能なPTFE粉末と混合し、そして混合物をラム型押出機又は他のタイプの押出機によって押し出す。次いで、液体潤滑剤をこれから除去した後、一軸、二軸、又は多軸方向に急速伸張することによって材料を延伸した。メンブレンの単位面積あたりの質量は約2.43g/m2であり、厚さは約8.9μmであり、密度は約0.27g/ccであり、長手方向マトリックス引張強度は約663MPaであり、横方向マトリックス引張強度は約14.3MPaであり、そしてIPA泡立ち点は約4.83kPAであった。
【0096】
第2多孔質延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)メンブレンを、概ねBacinoの米国特許第5,476,589号明細書の教示内容に従って形成した。前記明細書は全体的に本明細書中に援用される。フィルムの単位面積あたりの質量は約1.46g/m2であり、厚さは約0.00012インチ[ほぼ3.05μm]であり、密度は約0.48g/ccであり、長手方向マトリックス引張強度は約101,321psi(ほぼ699MPa)であり、横方向マトリックス引張強度は約9288psi(ほぼ64.04MPa)であり、そしてIPA泡立ち点は約35.27psi(ほぼ243.2kPa)であった。
【0097】
第3多孔質延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)メンブレンを、概ねBrancaの米国特許第5,814,405号明細書の教示内容に従って形成した。前記明細書は全体的に本明細書中に援用される。フィルムの単位面積あたりの質量は6.23グラム/m2であり、厚さは0.0017インチ(ほぼ43.2μm)。であり、IPA泡立ち点は0.41psi(ほぼ2.83kPA)であり、長手方向引張強度は約27974psi(ほぼ192.87MPa)であり、横方向マトリックス引張強度は約5792psi(ほぼ39.93MPa)であった。
【0098】
Newman他の米国特許第6,617,151号明細書(図9、ステップ902~910及びこれに相応するテキスト)に概ね従って、第1ePTFEメンブレンの連続する長さを、内径がほぼ13mmのチューブにすることによってマルチチューブ細胞含有構造を製造した。前記明細書は全体的に本明細書中に援用される。第1ePTFEメンブレンから成る1つの長手方向ラップと、第2ePTFEメンブレンから成る6つのオーバーラップする螺旋状ラップと、第3ePTFEメンブレンから成る1つのオーバーラップするラップとを有するように、細胞格納チューブを形成した。チューブを親水性被膜で処理し、コアから取り出した。チューブを所定の長さにトリミングし、そしてフルオロ熱可塑性物質(THV 500)溶接によって、一方の端部をシールして閉じた。
【0099】
0.5mmのニチノールワイヤから緊張部材を形成し、治具の周りで曲げることにより、2つの互いに平行な側と、「M」字形の2つの側とを有する形状を形成し、これにより互いに平行な側を変形させたときに撓みを制御した。形成されたニチノールを7分間にわたって470℃まで加熱し、水中でクエンチすることにより急冷した。形成されたニチノールを治具から取り出し、端部をレーザー溶接機で互いに溶接した。互いに平行な側はほぼ22mm離れていた。
【0100】
互いに平行な側を一対のピンセットによってほぼ15mmの距離まで動かすことによって、緊張部材を変形させ、そして緊張部材の一方の「M」字形端部が、ePTFEチューブの溶接により閉じられた端部と接触する状態で、緊張部材をePTFEチューブの内部に入れた。
【0101】
チューブの開いた端部に格納チューブ及び端部シールを加えることにより、デバイスをローディングのために調製した。緊張部材の互いに平行な縁部が互いに向かって押し合わされると、管腔の中央が開くことが観察された。互いに平行な縁部を押し合わせる外力が解放されると、デバイスは、緊張部材の厚さにより決定される管腔厚寸法を有する状態に戻った。
【0102】
実施例4:実施例3に記載されたようにePTFEチューブを組み立てた。0.37mmニチノールワイヤを治具の周りで曲げることにより、ニチノール緊張フレームを形成した。2つの互いに平行な縁部と、多重波状の端部を有する2つの縁部とを有する形状にワイヤを形成した。ニチノールを7分間にわたって470℃まで加熱し、次いで室温の水浴中で急冷した。形成されたニチノールを治具から取り出し、端部をレーザー溶接機で互いに溶接した。緊張部材の互いに平行な縁部はほぼ23mm離れていた。
【0103】
圧縮モールド内で熱可塑性フルオロポリマー(Gore, TFE、HFP、VDFから重合)から細胞押し退けコアを形成した。モールドをアルミニウムから切ることによって、ほぼ楕円形の挿入体のネガティブ形状を提供した。細胞のローディングを容易にするために、楕円体の一方の端部に空間を残した。メンブレンをより厚い縁部上で伸張させたときに制御された管腔厚を提供するように、挿入体の縁部は中心よりも約0.25mm厚かった。
【0104】
実施例3に記載されたように緊張部材をチューブ内に挿入し、次いで細胞押し退けコアをチューブ内に入れた。図9は、部分的に集成されたデバイス900を示している。言うまでもなく、本特許の意図に影響を与えることなしに、コア及び緊張部材を一緒に細胞カプセル化パウチ902内に入れることができる。さらに言うまでもなく、コアと緊張部材とを予め集成することもでき、あるいは、コアが緊張部材を所定の位置に保持することもでき、これらの緊張部材は連続的ではなく、所期の力を提供するようにコアに取り付けられている。デバイスは実施例3に記載されたように仕上げることもできる。
【0105】
本出願の発明を全般的に、そして具体的な実施態様に関連して上述してきた。当業者には明らかなように、開示の範囲を逸脱することなしに実施態様に種々の改変及び変更を加えることができる。従って、改変形及び変化形が添付の請求項及びこれらと同等のものの範囲に含まれるのであれば、実施態様は本発明の改変形及び変化形をカバーするものとする。以下、本発明の実施態様を列挙する。
[態様1]
細胞カプセル化パウチと、少なくとも1つの緊張部材と、リザーバ空間とを含んでなる細胞カプセル化デバイスであって、
該細胞カプセル化パウチは、第1層をその周囲の一部に沿って第2層の周囲の一部にシールすることで、該第1層と該第2層との間に内部容積を画定するように構成され、さらに該内部容積は第1内面と、該第1内面から離隔し対向する第2内面とを含み、
該少なくとも1つの緊張部材は、該第1内面と該第2内面との間に平均距離を維持するように、該内部容積内部に配置され、かつ、該細胞カプセル化パウチの対向する少なくとも2つの部分と接触しており、かつ
該リザーバ空間は、該第1内面と該第2内面との間の該内部容積内に細胞を受容するためのものである、
細胞カプセル化デバイス。
[態様2]
前記第1層及び第2層が、少なくとも部分的に平坦化された単独のチューブ状メンブレン又はメンブレン複合体のトップ部分及びボトム部分を含み、かつ、前記第1層及び第2層が、前記チューブ状メンブレン又はメンブレン複合体の少なくとも一方の端部で、前記第1層及び第2層の周囲の前記一部に沿ってシールされている、態様1に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様3]
前記第1層及び第2層が別個の2つのメンブレン又はメンブレン複合体を含む、態様1に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様4]
さらに、前記内部容積内部に少なくとも1つの細胞押し退けコアを含む、態様1に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様5]
前記細胞押し退けコアが前記第1内面と前記第2内面との間の平均厚を定義する、態様4に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様6]
さらに、前記内部容積内部に複数の構造スペーサを含む、態様1に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様7]
前記第1層が、前記緊張部材と前記構造スペーサとの間で前記第2層にシールされており、かつ、前記構造スペーサが前記第1内面と前記第2内面との間の平均厚を定義する、態様6に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様8]
前記少なくとも1つの緊張部材が前記リザーバ空間から隔離されている、態様1に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様9]
前記緊張部材を前記リザーバ空間から隔離するために、前記第1層が、前記緊張部材と前記リザーバ空間との間で前記第2層に対してシールされている、態様1に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様10]
前記シールの厚さが、前記第1内面と前記第2内面との間の平均厚を定義する、態様9に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様11]
前記少なくとも1つの緊張部材が、前記リザーバ空間から離れる方向に、相反する横力を加える、態様1に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様12]
前記少なくとも1つの緊張部材が形状記憶合金又はエラストマーを含む、態様1に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様13]
前記少なくとも1つの緊張部材が、非直線状である互いに対向する端部と、前記細胞カプセル化パウチの全長にわたって均一な緊張を提供するように直線状である互いに対向する側部とを含むフレームである、態様1に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様14]
前記デバイスが少なくとも2つの緊張部材を含む、態様1に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様15]
前記少なくとも1つの緊張部材の少なくとも2つの互いに対向する側部間の距離を調節し得るように、前記少なくとも1つの緊張部材を変形形態と非変形形態との間で調節することができ、前記変形形態を成す少なくとも2つの互いに対向する側部間の距離が、前記非変形形態を成す少なくとも2つの互いに対向する側部間の距離よりも小さい、態様1に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様16]
前記平均距離が少なくとも、前記少なくとも1つの緊張部材の厚さである、態様1に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様17]
前記平均距離が、前記少なくとも1つの緊張部材の厚さよりも小さい、態様1に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様18]
前記細胞カプセル化パウチが血管新生化層を含む、態様1に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様19]
前記細胞カプセル化パウチが、外側多孔質層と、前記外側多孔質層に隣接する内側多孔質層とを含むメンブレン複合体であり、かつ、前記内側多孔質層の多孔率が前記外側多孔質層の多孔率よりも低い、態様1に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様20]
さらに、前記リザーバ空間内部に配置された複数の生物学的部分を含む、態様1に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様21]
さらに、前記リザーバ空間と流体連通している少なくとも1つのポートを含む、態様1に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様22]
第1端部、該第1端部とは反対側の第2端部、及び内部リザーバ空間を含む複数の相互接続された格納チューブと、
該複数の格納チューブの周辺の少なくとも一部を巡って配置された緊張部材と、を含んでなり、
該緊張部材が該格納チューブそれぞれの平均厚を維持する、
細胞カプセル化デバイス。
[態様23]
前記格納チューブが、第1端部が整合し、かつ、前記第2端部が整合した状態で、互いにほぼ平行に配置されている、態様22に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様24]
前記格納チューブが溶接、キルティング、接着剤、又は構造支持体によって相互接続されている、態様22に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様25]
前記緊張部材が少なくとも2つの弓状部分を含み、前記弓状部分が、前記格納チューブそれぞれの前記第1端部と前記第2端部とに位置決めされた交互の凹部を含む、態様22に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様26]
前記緊張部材の少なくとも一部が、1つ又は2つ以上の格納チューブに接着剤によって取り付けられている、態様22に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様27]
前記緊張部材の一部が、前記複数の格納チューブのうちの2つの最も外側の格納チューブのそれぞれの内部に、前記細胞カプセル化デバイスの互いに対向する端部で保持されている、態様22に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様28]
細胞をカプセル化する方法であって、
態様1に記載の細胞カプセル化デバイスを用意し、前記緊張部材は、前記細胞カプセル化パウチ全体にわたって緊張を提供する第1変形形態を成しており、
前記緊張部材を前記第1変形形態から、前記第1変形形態よりも大きく変形させられる第2変形形態に変形させ、これにより細胞カプセル化パウチ上の緊張が小さくなり、
前記リザーバ空間内へ細胞を挿入し、そして
前記緊張部材を前記第1変形形態まで解放する
ことを含む、細胞をカプセル化する方法。
[態様29]
細胞カプセル化デバイスを患者内に挿入する方法であって、
態様1に記載の細胞カプセル化デバイスを用意し、前記細胞カプセル化デバイスがさらに、前記リザーバ空間内に配置された細胞を含み、そして
前記緊張部材は、前記細胞カプセル化パウチ全体にわたって緊張を提供する第1変形形態を成しており、
前記緊張部材を前記第1変形形態から、前記第1変形形態よりも大きく変形させられる第2変形形態に変形させ、これにより細胞カプセル化パウチ上の緊張が小さくなり、
前記細胞カプセル化デバイスを患者の組織床内へ植え込み、
そして前記緊張部材を前記第1変形形態まで解放する、
ことを含む、細胞カプセル化デバイスを患者に挿入する方法。
[態様30]
細胞カプセル化パウチと、緊張部材と、リザーバ空間とを含んでなる細胞カプセル化デバイスであって、
該細胞カプセル化パウチは、第1層をその周囲の一部に沿って第2層の周囲の一部にシールすることで、該第1層と該第2層との間に内部容積を画定するように構成され、さらに該内部容積は第1内面と、該第1内面から離隔し対向する第2内面とを含み、
該緊張部材は、該第1内面と該第2内面との間の平均距離を維持するように、該内部容積内部に配置され、かつ、該細胞カプセル化パウチの少なくとも2つの対向部分と接触しており、さらに該緊張部材は、非直線状である互いに対向する端部と、該細胞カプセル化パウチの全長にわたって均一な緊張を提供するように直線状である互いに対向する側部とを含むフレームであり、
該リザーバ空間は、該第1内面と該第2内面との間の該内部容積内に細胞を受容するためのものであり、かつ、該緊張部材と流体連通している、
細胞カプセル化デバイス。
[態様31]
細胞カプセル化パウチと、少なくとも1つの緊張部材と、リザーバ空間とを含んでなる細胞カプセル化デバイスであって、
該細胞カプセル化パウチは、第1層をその周囲の一部に沿って第2層の周囲の一部にシールすることで、該第1層と該第2層との間に内部容積を画定するように構成され、さらに該内部容積は第1内面と、該第1内面から離隔し対向する第2内面とを含み、
該少なくとも1つの緊張部材は、該第1内面と該第2内面との間に平均距離を維持するように、該内部容積内部に配置され、かつ、該細胞カプセル化パウチの対向する少なくとも2つの部分と接触しており、かつ
該リザーバ空間は、該第1内面と該第2内面との間の該内部容積内に細胞を受容するためのものであり、さらに
該緊張部材を該リザーバ空間から隔離するために、該第1層が該第2層に対して、該緊張部材と該リザーバ空間との間でシールされている、
細胞カプセル化デバイス。
[態様32]
前記シールの厚さが、前記第1内面と前記第2内面との間の平均厚を定義する、態様31に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様33]
さらに、前記シールから内側へ向かって前記内部容積内部に複数の構造スペーサを含み、前記構造スペーサが前記第1内面と前記第2内面との間の前記平均厚を定義している、態様31に記載の細胞カプセル化デバイス。
[態様34]
細胞カプセル化パウチと、少なくとも1つの緊張部材と、細胞押し退けコアと、リザーバ空間とを含んでなる細胞カプセル化デバイスであって、
該細胞カプセル化パウチは、第1層をその周囲の一部に沿って第2層の周囲の一部にシールすることで、該第1層と該第2層との間に内部容積を画定するように構成され、さらに該内部容積は第1内面と、該第1内面から離隔し対向する第2内面とを含み、
該少なくとも1つの緊張部材は、該第1内面と該第2内面との間に平均距離を維持するように、該内部容積内部に配置され、かつ、該細胞カプセル化パウチの対向する少なくとも2つの部分と接触しており、
該細胞押し退けコアは、該内部容積内部に配置され、かつ、該第1内面と該第2内面との間の平均厚を定義し、かつ
該リザーバ空間は、該第1内面と該第2内面との間の該内部容積内に、該細胞押し退けコアの少なくとも一部に隣接して細胞を受容するためのものである、
細胞カプセル化デバイス。
[態様35]
前記少なくとも1つの緊張部材が、前記細胞押し退けコアの互いに対向する側部内に埋め込まれた2つの緊張部材を含む、態様34に記載の細胞カプセル化デバイス。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9