(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】薬剤識別装置、薬剤識別方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20230516BHJP
【FI】
G16H20/10
(21)【出願番号】P 2021533015
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2020026850
(87)【国際公開番号】W WO2021010277
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2019131441
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149837
【氏名又は名称】富士フイルム富山化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】横内 康治
【審査官】玉木 宏治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-064836(JP,A)
【文献】特開2004-167158(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044439(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/039016(WO,A1)
【文献】特開2005-56252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の薬剤が類似する第2の薬剤を有する場合の前記第1の薬剤を識別する薬剤識別装置であって、
前記第1の薬剤の画像である第1の登録画像、及び前記第2の薬剤が存在する場合に前記第2の薬剤の画像である第2の登録画像が前記第1の登録画像に関連して記憶されている薬剤データベースと、
前記識別の対象である薬剤の対象画像が入力される画像入力部と、
前記対象画像から前記薬剤が写っている薬剤領域を抽出する薬剤領域抽出部と、
前記薬剤データベースから前記第1の薬剤に対応する、前記第1の登録画像及び前記第2の登録画像を取得する登録画像取得部と、
前記薬剤領域抽出部で抽出された前記薬剤領域と対応する前記第1の登録画像との類似認識を行う第1の認識部と、
前記第1の認識部において、前記第1の登録画像と類似すると認識された前記薬剤領域について、前記第2の登録画像との類似認識を行う第2の認識部と、
前記第1の認識部及び前記第2の認識部の認識結果に基づいて、前記薬剤が前記第1の薬剤であるか否かの識別を行う薬剤識別部と、
を備え
、
前記第1の認識部は、前記薬剤領域と前記第1の登録画像との第1の類似度を算出し、前記第1の類似度と、前記第1の薬剤を識別する為の値に設定された閾値とを比較することにより、前記類似認識を行う薬剤識別装置。
【請求項2】
前記第2の認識部は、前記薬剤領域と前記第2の登録画像との第2の類似度を算出する請求項
1に記載の薬剤識別装置。
【請求項3】
前記薬剤識別部は、前記第1の類似度が前記第2の類似度よりも大きい場合に、前記薬剤領域に写っている前記薬剤を前記第1の薬剤であると識別し、前記第1の類似度が前記第2の類似度以下である場合に、前記薬剤領域に写っている前記薬剤を前記第1の薬剤でないと識別する請求項
2に記載の薬剤識別装置。
【請求項4】
前記第1の薬剤は、類似する複数の前記第2の薬剤を有する請求項1に記載の薬剤識別装置。
【請求項5】
前記第2の認識部は、前記薬剤領域と複数の前記第2の登録画像の各々との第2の類似度を算出する請求項
4に記載の薬剤識別装置。
【請求項6】
前記薬剤識別部は、前記第1の類似度が複数の前記第2の類似度の各々よりも大きい場合に、前記薬剤領域に写っている前記薬剤を前記第1の薬剤であると識別し、前記第1の類似度が複数の前記第2の類似度の少なくとも一つ以下である場合に、前記薬剤領域に写っている前記薬剤を前記第1の薬剤でないと識別する請求項
5に記載の薬剤識別装置。
【請求項7】
前記第1の認識部及び前記第2の認識部の前記類似認識は、テンプレートマッチングにより行われる請求項1から
6のいずれか1項に記載の薬剤識別装置。
【請求項8】
第1の薬剤が類似する第2の薬剤を有する場合の前記第1の薬剤を識別する薬剤識別方法であって、
前記第1の薬剤の画像である第1の登録画像、及び前記第2の薬剤が存在する場合に前記第2の薬剤の画像である第2の登録画像が前記第1の登録画像に関連して記憶されている薬剤データベースから、前記第1の薬剤に対応する、前記第1の登録画像及び前記第2の登録画像を取得する登録画像取得ステップと、
前記識別の対象である薬剤の対象画像が入力される画像入力ステップと、
前記対象画像から前記薬剤が写っている薬剤領域を抽出する薬剤領域抽出ステップと、
前記薬剤領域抽出ステップで抽出された前記薬剤領域と対応する前記第1の登録画像との類似認識を行う第1の認識ステップと、
前記第1の認識ステップにおいて、前記第1の登録画像と類似すると認識された前記薬剤領域について、前記第2の登録画像との類似認識を行う第2の認識ステップと、
前記第1の認識ステップ及び前記第2の認識ステップの認識結果に基づいて、前記薬剤が前記第1の薬剤であるか否かの識別を行う薬剤識別ステップと、
を含
み、
前記第1の認識ステップでは、前記薬剤領域と前記第1の登録画像との第1の類似度を算出し、前記第1の類似度と、前記第1の薬剤を識別する為の値に設定された閾値とを比較することにより、前記類似認識を行う薬剤識別方法。
【請求項9】
第1の薬剤が類似する第2の薬剤を有する場合の前記第1の薬剤を識別する薬剤識別工程をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記第1の薬剤の画像である第1の登録画像、及び前記第2の薬剤が存在する場合に前記第2の薬剤の画像である第2の登録画像が前記第1の登録画像に関連して記憶されている薬剤データベースから、前記第1の薬剤に対応する、前記第1の登録画像及び前記第2の登録画像を取得する登録画像取得ステップと、
前記識別の対象である薬剤の対象画像が入力される画像入力ステップと、
前記対象画像から前記薬剤が写っている薬剤領域を抽出する薬剤領域抽出ステップと、
前記薬剤領域抽出ステップで抽出された前記薬剤領域と対応する前記第1の登録画像との類似認識を行う第1の認識ステップと、
前記第1の認識ステップにおいて、前記第1の登録画像と類似すると認識された前記薬剤領域について、前記第2の登録画像との類似認識を行う第2の認識ステップと、
前記第1の認識ステップ及び前記第2の認識ステップの認識結果に基づいて、前記薬剤が前記第1の薬剤であるか否かの識別を行う薬剤識別ステップと、
を含
み、
前記第1の認識ステップでは、前記薬剤領域と前記第1の登録画像との第1の類似度を算出し、前記第1の類似度と、前記第1の薬剤を識別する為の値に設定された閾値とを比較することにより、前記類似認識を行う薬剤識別工程をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項10】
非一時的かつコンピュータ読取可能な記録媒体であって、前記記録媒体に格納された指令がコンピュータによって読み取られた場合に請求項
9に記載のプログラムをコンピュータに実行させる記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤識別装置、薬剤識別方法及びプログラムに関し、特に類似する薬剤を有する薬剤を識別する薬剤識別装置、薬剤識別方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、処方箋通りに薬剤が調剤されているか否かの監査を行うために、調剤された薬剤を撮影し、その撮影画像に基づいて薬剤を識別する技術が用いられてきた。
【0003】
例えば、特許文献1では、形状、色及び大きさが類似する薬剤の誤判定を防ぐことを目的とし、薬剤を撮影した撮影画像を用いて処方箋通りに調剤されているか否かの検査を行う技術が記載されている。具体的には、特許文献1に記載された技術では、処方箋に従って調剤されるべき薬剤及びその薬剤に類似する薬剤の薬剤画像(登録画像)を薬剤データベースから取得し、取得した薬剤画像と調剤された薬剤を撮影した撮影画像との照合を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載された技術では、分包袋に分包された薬剤の各々とデータベースから取得した薬剤画像の各々の組み合わせを全て照合する必要がある。例えば特許文献1に記載の技術では、一つの分包袋に薬剤A及び薬剤Bの2つの薬剤が調剤される場合であって、Aに類似する薬剤αが存在する場合には、薬剤データベースから薬剤画像は3枚(薬剤画像A、B及びα)取得され、薬剤A及び薬剤Bと3枚の薬剤画像との計12(2×3)回の照合が必要になり、効率的な照合が行われていない。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、類似する薬剤を有する薬剤を識別する場合であっても、正確に効率的な識別を行うことができる薬剤識別装置、薬剤識別方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一の態様である薬剤識別装置は、第1の薬剤が類似する第2の薬剤を有する場合の第1の薬剤を識別する薬剤識別装置であって、第1の薬剤の画像である第1の登録画像、及び第2の薬剤が存在する場合に第2の薬剤の画像である第2の登録画像が第1の登録画像に関連して記憶されている薬剤データベースと、識別の対象である薬剤の対象画像が入力される画像入力部と、対象画像から薬剤が写っている薬剤領域を抽出する薬剤領域抽出部と、薬剤データベースから第1の薬剤に対応する、第1の登録画像及び第2の登録画像を取得する登録画像取得部と、薬剤領域抽出部で抽出された薬剤領域と対応する第1の登録画像との類似認識を行う第1の認識部と、第1の認識部において、第1の登録画像と類似すると認識された薬剤領域について、第2の登録画像との類似認識を行う第2の認識部と、第1の認識部及び第2の認識部の認識結果に基づいて、薬剤が第1の薬剤であるか否かの識別を行う薬剤識別部と、を備える。
【0008】
本態様によれば、第1の登録画像と第2の登録画像との類似認識の結果に基づいて識別が行われ、また、第2の登録画像との類似認識は、第2の登録画像と類似すると考えられる薬剤領域に対して行われるので、正確で効率的な識別を行うことができる。
【0009】
好ましくは、第1の認識部は、薬剤領域と第1の登録画像との第1の類似度を算出し、第1の類似度と閾値とを比較することにより、類似認識を行う。
【0010】
好ましくは、第2の認識部は、薬剤領域と第2の登録画像との第2の類似度を算出する。
【0011】
好ましくは、薬剤識別部は、第1の類似度が第2の類似度よりも大きい場合に、薬剤領域に写っている薬剤を第1の薬剤であると識別し、第1の類似度が第2の類似度以下である場合に、薬剤領域に写っている薬剤を第1の薬剤でないと識別する。
【0012】
好ましくは、第1の薬剤は、類似する複数の第2の薬剤を有する。
【0013】
好ましくは、第2の認識部は、薬剤領域と複数の第2の登録画像の各々との第2の類似度を算出する。
【0014】
好ましくは、薬剤識別部は、第1の類似度が複数の第2の類似度の各々よりも大きい場合に、薬剤領域に写っている薬剤を第1の薬剤であると識別し、第1の類似度が複数の第2の類似度の少なくとも一つ以下である場合に、薬剤領域に写っている薬剤を第1の薬剤でないと識別する。
【0015】
好ましくは、第1の認識部及び第2の認識部の類似認識は、テンプレートマッチングにより行われる。
【0016】
本発明の他の態様である薬剤識別方法は、第1の薬剤が類似する第2の薬剤を有する場合の第1の薬剤を識別する薬剤識別方法であって、第1の薬剤の画像である第1の登録画像、及び第2の薬剤が存在する場合に第2の薬剤の画像である第2の登録画像が第1の登録画像に関連して記憶されている薬剤データベースから、第1の薬剤に対応する、第1の登録画像及び第2の登録画像を取得する登録画像取得ステップと、識別の対象である薬剤の対象画像が入力される画像入力ステップと、対象画像から薬剤が写っている薬剤領域を抽出する薬剤領域抽出ステップと、薬剤領域抽出ステップで抽出された薬剤領域と対応する第1の登録画像との類似認識を行う第1の認識ステップと、第1の認識ステップにおいて、第1の登録画像と類似すると認識された薬剤領域について、第2の登録画像との類似認識を行う第2の認識ステップと、第1の認識ステップ及び第2の認識ステップの認識結果に基づいて、薬剤が第1の薬剤であるか否かの識別を行う薬剤識別ステップと、を含む。
【0017】
本発明の他の態様であるプログラムは、第1の薬剤が類似する第2の薬剤を有する場合の第1の薬剤を識別する薬剤識別工程をコンピュータに実行させるプログラムであって、第1の薬剤の画像である第1の登録画像、及び第2の薬剤が存在する場合に第2の薬剤の画像である第2の登録画像が第1の登録画像に関連して記憶されている薬剤データベースから、第1の薬剤に対応する、第1の登録画像及び第2の登録画像を取得する登録画像取得ステップと、識別の対象である薬剤の対象画像が入力される画像入力ステップと、対象画像から薬剤が写っている薬剤領域を抽出する薬剤領域抽出ステップと、薬剤領域抽出ステップで抽出された薬剤領域と対応する第1の登録画像との類似認識を行う第1の認識ステップと、第1の認識ステップにおいて、第1の登録画像と類似すると認識された薬剤領域について、第2の登録画像との類似認識を行う第2の認識ステップと、第1の認識ステップ及び第2の認識ステップの認識結果に基づいて、薬剤が第1の薬剤であるか否かの識別を行う薬剤識別ステップと、を含む薬剤識別工程をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1の登録画像と第2の登録画像との類似認識の結果に基づいて識別が行われ、また、第2の登録画像との類似認識は、第2の登録画像と類似すると考えられる薬剤領域に対して行われるので、正確で効率的な識別を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】
図3は、一包化監査支援システムの構成を示す図である。
【
図4】
図4は、照明下で分包袋の画像を取得する様子を示す図である。
【
図5】
図5は、照明下で分包袋の画像を取得する様子を示す他の図である。
【
図6】
図6は、薬剤識別装置の構成例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、薬剤識別方法に関して説明するフローチャートである。
【
図8】
図8は、薬剤データベースの記憶構成例を示す図である。
【
図10】
図10は、類似度の算出に関して説明するフローチャートである。
【
図11】
図11は、第1の認識部の類似認識、第2の認識部の類似認識及び薬剤識別を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、第1の認識部の類似認識、第2の認識部の類似認識及び薬剤識別を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に従って本発明にかかる薬剤識別装置、薬剤識別方法及びプログラムの好ましい実施の形態について説明する。
【0021】
<類似薬剤>
先ず、薬剤αが類似薬剤βを有する場合に、薬剤αの正確な識別が困難となることについて説明する。以下の例では、薬剤αを処方箋に従って分包袋に入れる場合について説明する。
【0022】
薬剤αは、サイズ、色、刻印(印字)が似ている類似薬剤である薬剤βを有する。このとき、処方すべきは薬剤αであるが、分包袋内に誤って薬剤βが入っていても、薬剤βを薬剤αと誤って識別してしまう場合がある。
【0023】
図1及び
図2は、識別対象の薬剤の画像と登録画像(マスタ画像)との類似度分布を示す図である。
図1及び
図2の縦軸は出願頻度を示し、横軸は登録画像との類似度を示す。なお、登録画像とはその薬剤を照合するために予め用意された薬剤の画像である。登録画像は薬剤データベースに記憶され、登録画像と撮影された薬剤の画像又は強調処理された薬剤の画像と照合することにより、薬剤を特定することができる。
【0024】
図1は、薬剤αと薬剤αと類似していない薬剤γの類似度分布を示す図である。薬剤αを撮影した画像(薬剤領域)と薬剤αの登録画像αとの類似度分布53が示されており、薬剤γを撮影した画像(薬剤領域)と薬剤αの登録画像αとの類似度分布51が示されている。
【0025】
登録画像αと薬剤αを撮影した画像とは、算出される類似度の値に一定の幅があるが、比較的高く類似度が算出される(類似度分布53を参照)。一方で、登録画像αと薬剤γを撮影した画像とは、算出される類似度の値に一定の幅があるが、比較的低く類似度が算出される(類似度分布51を参照)。しかしながら、薬剤αと薬剤γとは、類似していないので、類似度分布51と類似度分布53とが重なることはない。
【0026】
従って、薬剤αを類似度によって識別する場合の閾値Th1を
図1に示す様に類似度分布51及び類似度分布53との間に設定することにより、登録画像αにより薬剤αを正確に識別することができる。
【0027】
一方で、薬剤αと類似薬剤の薬剤βとの識別では、上述したように閾値を設定することは、以下に説明するように困難となる。
【0028】
図2は、登録画像αと薬剤α、及び登録画像αと薬剤βとの類似度分布を示す図である。類似度分布57は、薬剤αを撮影した画像(薬剤領域)と登録画像αとの類似度分布を示し、類似度分布55は、薬剤βを撮影した画像(薬剤領域)と登録画像αとの類似度分布を示す。登録画像αと薬剤αを撮影した画像とは、算出される類似度の値に一定の幅があるが、比較的高く類似度が算出される(類似度分布57を参照)。一方で、登録画像αと薬剤βを撮影した画像とは、算出される類似度の値に一定の幅があるが、比較的低く類似度が算出される(類似度分布55を参照)。また、薬剤αと薬剤βとは、サイズ、色、及び刻印(印字)が類似しているので、類似度分布55と類似度分布57とは一部で重なる。
【0029】
このように、類似度分布55と類似度分布57とが一部で重なっているので、
図1に示したように、二つの類似度分布の間に閾値Th1を設定することができない。一方で、薬剤αを識別する類似度の閾値Th2(
図2参照)を設定すると、薬剤αは薬剤αとして識別することができるが、薬剤βも薬剤αとして誤って識別される場合が発生してしまう。また、類似度の閾値Th3(
図2参照)を設定すると、薬剤Aであるのにもかかわらず薬剤Aとして識別されない場合が発生してしまう。
【0030】
このように、類似度分布が一部で重なるような、類似薬剤βを有する薬剤αを正確に識別するための類似度の閾値を決定することは困難である。
【0031】
そこで本発明を利用することにより、類似薬剤を有する薬剤を識別する場合であっても、正確に且つ効率的に識別を行うことができる。
【0032】
<薬剤識別装置>
図3は、本発明の薬剤識別装置2(
図6)を搭載する一包化監査支援システム1の構成を示す図である。一包化監査支援システム1は処理部10と、記憶部(薬剤データベース20A(
図6参照))20と、表示部30と、操作部40と、搬送機構50と、照明部12と、カメラ15Aと、カメラ15Bと、処方箋リーダ16とを備える。なお、一包化監査支援システム1では、処方箋に従って適切に薬剤が一包化されているかの監査の支援が行われる。具体的には、薬剤識別装置2により一包化された薬剤を識別し、その識別結果を表示部30(モニタ32)に表示することにより、ユーザの監査の支援を行う。なお、薬剤識別装置2が利用される例は、一包化監査に限られるものではない。例えば患者が別の病院で処方されて所持していた薬を、入院時に持参した場合に、薬剤識別装置2を利用して、その持参した薬剤の鑑別を行ってもよい。また、薬剤識別装置2が識別する薬剤は、処方箋によって処方される薬剤に限られない。例えば、薬剤識別装置2は処方箋が無い場合であっても、識別対象(第1の薬剤)を特定することできる情報(第1の薬剤を特定する情報)があれば、薬剤識別装置2は薬剤を識別することができる。
【0033】
カメラ15A及びカメラ15Bはデジタルカメラにより構成される。
図4に示すように、分包袋TP(薬包)が連続して構成される薬包帯PBの上側(
図4の+Z側)にカメラ15Aが配置され、薬包帯PBの下側(
図4の-Z側)にカメラ15Bが配置されて、一つの分包袋TPに分包された薬剤を上下(複数の異なる方向)から撮影する。分包袋TP(薬包帯PB)は搬送機構50により
図4の+X方向(薬包帯PBの長手方向に沿った軸;
図4の矢印方向)に搬送され、撮影の際には照明部12が有する複数の光源13が4方向から分包袋TPを照明する。
図5において、複数の光源13のそれぞれとカメラ15A、15Bの撮影光軸PAとの間隔(d1、d2、d3、d4)は同じである。つまり、複数の光源13と撮影光軸PAとが等間隔(d1=d2=d3=d4)である。
【0034】
処方箋リーダ16は、処方箋情報を読み取る。例えばOCR(Optical Character Recognition)により、紙に記載された処方箋から患者氏名、処方された薬剤及びその数量等の情報を読み取る。処方された薬剤に関する情報を示すバーコード等が処方箋に記録されている場合は、処方された薬剤及びその数量等の情報をバーコードから読み取ってもよい。また、ユーザが処方箋を読み取り、操作部40が有するキーボード等の入力デバイスにより処方箋情報を入力してもよい。
【0035】
図6は、薬剤識別装置2の構成例を示すブロック図である。薬剤識別装置2は、主に処理部10及び記憶部20で構成される。
【0036】
処理部10は、画像入力部10A、薬剤領域抽出部10B、登録画像取得部10C、第1の認識部10D、第2の認識部10E及び薬剤識別部10Fを備える。これらの機能は、コンピュータに搭載されるCPU(Central Processing Unit)、各種電子回路等のデバイスが、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory:非一時的記録媒体)等に記憶されたデータを参照して実現される。また、これらの機能は記憶部20のROM(Read Only Memory:非一時的記録媒体)等に記憶された薬剤識別プログラムを実行することにより行われる。処理の際には、RAM(Random Access Memory)等が一時記憶領域、作業領域として用いられる。なお
図6ではこれらデバイスの図示は省略する。
【0037】
また、処理部10は、記憶部20に接続されており、記憶部20に記憶されているプログラム及び薬剤データベース20Aのデータを自由に取り出し、及び書き換えを行うことができる。
【0038】
<薬剤識別方法>
図7は、薬剤識別装置2を使用した薬剤識別方法(薬剤識別工程)に関して説明するフローチャートである。なお、各ステップの詳しい説明は後で行う。
【0039】
先ず、処方箋リーダ16により処方箋が読まれ処方箋情報が取得される。そして処方箋情報に基づいて登録画像取得部10Cにより、処方箋により調剤され得る薬剤の第1の登録画像及び第2の登録画像が取得される(登録画像取得ステップ:ステップS10)。ここで第1の登録画像とは、処方箋情報により調剤される第1の薬剤の登録画像である。また、第2の登録画像とは、第1の薬剤に類似する第2の薬剤の登録画像である。
【0040】
次に、画像入力部10Aに、一つの分包袋TPを撮影した対象画像PI(
図9参照)が入力される(画像入力ステップ:ステップS11)。その後、薬剤領域抽出部10Bにより、対象画像PIにおいて薬剤領域R1及び薬剤領域R2が抽出される(
図9参照)(薬剤領域抽出ステップ:ステップS12)。そして、第1の認識部10Dにより、薬剤領域R1及び薬剤領域R2に関して、第1の登録画像との類似認識が行われる(第1の認識ステップ:ステップS13)。そして、第1の認識部10Dは、薬剤領域R1及び薬剤領域R2と第1の登録画像との類似認識を行う(ステップS14)。第1の認識部10Dにより、第1の登録画像と類似しないと認識された場合には、第1の認識部10Dの認識結果に基づいて、薬剤識別部10Fは薬剤の識別を行う。一方、第1の認識部10Dにより、第1の登録画像と類似すると認識された場合には、第2の認識部10Eにより、第1の登録画像と類似すると認識された薬剤領域について、第2の登録画像との類似認識を行う(第2の認識ステップ:ステップS15)。その後、薬剤識別部10Fは、第1の認識部10D及び第2の認識部10Eの認識結果に基づいて、薬剤の識別を行う(薬剤識別ステップ:ステップS16)。
【0041】
次に、上述した薬剤識別装置2を搭載した一包化監査支援システム1を使用した薬剤識別方法の各ステップに関して詳細に説明する。
【0042】
<<登録画像取得ステップ>>
登録画像取得ステップ(ステップS10)は登録画像取得部10Cにより行われる。登録画像取得部10Cは、薬剤データベース20Aから処方箋情報に基づいて第1の薬剤に対応する、第1の登録画像及び第2の登録画像を取得する。具体的には、登録画像取得部10Cは、処方箋リーダ16で取得された処方箋情報を取得し、処方箋情報により調剤される第1の薬剤の第1の登録画像と、第1の薬剤に類似する第2の薬剤の第2の登録画像を薬剤データベース20Aから取得する。なお、上述の説明では、登録画像取得部10Cは、処方箋リーダ16で処方箋情報に基づいて第1の薬剤に対応する、第1の登録画像及び第2の登録画像を取得した例を説明した。しかし、登録画像取得部10Cが薬剤データベース20Aから第1の登録画像及び第2の登録画像を取得する態様は上述の例に限定されるものではない。例えば、ユーザが処方箋情報を操作部40で入力し、その入力された処方箋情報に基づいて、登録画像取得部10Cは薬剤データベース20Aから第1の登録画像及び第2の登録画像を取得してもよい。
【0043】
図8は、薬剤データベース20Aの記憶構成例を示す図である。
【0044】
薬剤データベース20Aでは、「薬剤名称」「登録画像」及び「類似薬剤」が関連して記憶されている。薬剤Aという薬剤名称は、薬剤Aの表面画像及び類似薬剤が薬剤Xであることが関連して記憶されている。薬剤Aの表面画像は「A」の刻印が表面に付されている。また、薬剤Aの類似薬剤は薬剤Xである。薬剤Bという薬剤名称は、薬剤Bの表面画像及び類似薬剤が無いことが関連して記憶されている。薬剤Bの表面画像は「B」の刻印が表面に付されている。薬剤Cという薬剤名称は、薬剤Cの表面画像及び類似薬剤が薬剤Y及び薬剤Zであることが関連して記憶されている。薬剤Cの表面画像は「C」の刻印が表面に付されている。また、薬剤Cの類似薬剤は薬剤Y及び薬剤Zである。このように、薬剤データベース20Aでは、薬剤名称、登録画像及び類似薬剤が関連して記憶されている。なお、
図8に示した薬剤データベース20Aの記憶構成は、一例であってこれに限定されるものではない。例えば登録画像は、薬剤の表面画像と薬剤の裏面画像とを有していてもよい。このように、登録画像に表面画像と裏面画像とを有することにより、より詳細に類似認識を行うことができる。
【0045】
例えば、処方箋に基づいて、一つの分包袋TPに薬剤A及び薬剤Bを入れることとなっている場合には、登録画像取得部10Cは、薬剤Aの登録画像A(第1の登録画像)及び薬剤Bの登録画像B(第1の登録画像)を取得する。また、登録画像取得部10Cは、薬剤Aには薬剤Xが類似するので、薬剤Xの登録画像X(第2の登録画像)を取得する。
【0046】
<<画像入力ステップ及び薬剤領域抽出ステップ>>
画像入力ステップ(ステップS11)は画像入力部10Aにより行われる。画像入力部10Aには、識別対象である薬剤の対象画像が入力される。例えば対象画像は、薬剤が処方箋通りに一包化されていることを識別する場合には、薬剤が入れられた一つの分包袋TPを撮影した画像である。ここで対象画像は、分包袋TPを撮影した1枚の撮影画像で構成されても良いし、単数又は複数の撮影画像において薬剤A及び薬剤Bの刻印又は印字を画像処理で強調した画像であってもよい。
【0047】
薬剤領域抽出ステップ(ステップS12)は薬剤領域抽出部10Bにより行われる。薬剤領域抽出部10Bは、対象画像から、識別の対象の薬剤が写っている薬剤領域を薬剤毎に抽出(切り出す)する。薬剤領域抽出部10Bは、例えば薬剤と背景との色の違いに基づいて、薬剤領域を抽出する。
【0048】
図9は、画像入力部10Aに入力された対象画像PIを示す図である。対象画像PIは、カメラ15Aで撮影され、処理部10の刻印(印字)強調処理部(不図示)で強調処理が行われている。薬剤領域抽出部10Bは、薬剤Aの薬剤領域R1と薬剤Bの薬剤領域R2とをそれぞれ抽出する。なお、一包化監査支援システム1では、カメラ15A及びカメラ15Bで分包袋TPを両面から撮影をして、薬剤の表面及び裏面の画像を漏れなく取得することができる。しかし、
図9に示した例では、カメラ15Aで撮影したものであり、薬剤A及び薬剤Bの表面の画像を取得できた場合の例である。
【0049】
<<第1の認識ステップ、第2の認識ステップ及び薬剤識別ステップ>>
第1の認識ステップ(ステップS13)は第1の認識部10Dにより行われる。第1の認識部10Dは、薬剤領域抽出部10Bで抽出された薬剤領域と対応する第1の登録画像との類似認識を行う。具体的に、第1の認識部10Dは、薬剤領域と第1の登録画像との第1の類似度を算出し、第1の類似度と閾値とを比較することにより、類似認識を行う。
【0050】
第2の認識ステップ(ステップS15)は第2の認識部10Eにより行われる。第2の認識部10Eは、第1の認識部10Dにおいて、第1の登録画像と類似すると認識された薬剤領域について、第2の登録画像との類似認識を行う。具体的に、第2の認識部10Eは、薬剤領域と第2の登録画像の第2の類似度を算出する。
【0051】
薬剤識別ステップ(ステップS16)は、薬剤識別部10Fにより行われる。薬剤識別部10Fは、第1の認識部10D及び第2の認識部10Eの認識結果に基づいて、薬剤が第1の薬剤であるか否かの識別を行う。具体的に、薬剤識別部10Fは、第1の類似度が第2の類似度よりも大きい場合に、薬剤領域に写っている薬剤を第1の薬剤であると識別し、第1の類似度が第2の類似度以下である場合に、薬剤領域に写っている薬剤を第1の薬剤でないと識別する。
【0052】
図10は、第1の認識部10Dで行われる類似度の算出に関して説明するフローチャートである。なお、第2の認識部10Eでも類似度が算出されるが、第1の認識部10Dと同様にして類似度の算出が行われるので説明は省略する。
【0053】
先ず、第1の認識部10Dは、薬剤領域と第1の登録画像とのサイズ又は形(外接矩形)が異なるか否かを認識する(ステップS20)。ここで、薬剤領域と第1の登録画像とのサイズ又は形(外接矩形)のいずれかが異なれば、類似度は「0」ゼロと算出する(ステップS24)。なお、第1の認識部10Dは、薬剤領域と第1の登録画像との特徴量の差に基づいて、サイズ又は形(外接矩形)が異なるか否かを認識する。例えば、第1の認識部10Dは、薬剤領域と第1の登録画像との特徴量の差が閾値以上である場合には、両者は異なると認識する。
【0054】
次に、第1の認識部10Dは、薬剤領域と第1の登録画像との輝度(明るさ)が異なるか否かを認識する(ステップS21)。ここで、第1の認識部10Dは、薬剤領域と第1の登録画像との輝度(明るさ)が異なれば、類似度は「0」ゼロと算出する(ステップS24)。なお、第1の認識部10Dは、薬剤領域と第1の登録画像との輝度の差に基づいて、輝度が異なるか否かを認識する。例えば、第1の認識部10Dは、薬剤領域と第1の登録画像との輝度の差が閾値以上である場合には、両者は異なると認識する。
【0055】
次に、第1の認識部10Dは、薬剤領域と第1の登録画像との色が異なるか否かを認識する(ステップS22)。ここで、第1の認識部10Dは、薬剤領域と第1の登録画像との色が異なる場合には、類似度は「0」ゼロと認識する(ステップS24)。なお、第1の認識部10Dは、薬剤領域と第1の登録画像とのR(赤)、G(緑)、B(青)の値の差に基づいて、色が異なるか否かを認識する。例えば、第1の認識部10Dは、薬剤領域と第1の登録画像との色の差が閾値以上である場合には、両者は異なると認識する。
【0056】
次に、第1の認識部10Dは、薬剤領域と第1の登録画像との類似度を算出する(ステップS22)。第1の認識部10Dは、テンプレートマッチングにより類似度を算出する。例えば類似度は、1.0が最も類似する場合(同一の場合)であり、異なる箇所の程度により、1.0から低く算出される。
【0057】
このようにして、第1の認識部10Dは、薬剤領域と第1の登録画像との第1の類似度を算出する。なお、第2の認識部10Eは第1の認識部10Dと同様に類似度を算出してもよいが、第2の認識部10Eは、第1の認識部10Dで類似すると認識された薬剤領域について類似度を算出するので、初めからテンプレートマッチングにより類似度を直接算出(
図10のステップS23)してもよい。
【0058】
次に、第1の認識部10Dの類似認識、第2の認識部10Eの類似認識及び薬剤識別部10Fの薬剤識別に関して、薬剤A及び薬剤Bのそれぞれの識別について具体的に説明する。
【0059】
図11は、第1の認識部10Dの類似認識、第2の認識部10Eの類似認識及び薬剤識別を示すフローチャートである。
【0060】
先ずは、対象画像PIにおける薬剤領域R1の識別に関して説明する。
【0061】
第1の認識部10Dは、薬剤領域R1と登録画像A及び登録画像Bとの類似認識を行う(ステップS30)。具体的には、薬剤領域R1と登録画像Aとは、サイズ(形)、輝度(明るさ)、及び色が同じであるので第1の認識部10Dは、テンプレートマッチングにより類似度を算出する(
図10のステップS23を参照)。一方、第1の認識部10Dは、薬剤領域R1と登録画像Bとはサイズが異なるので類似度をゼロと算出する。
【0062】
そして、第1の認識部10Dは、算出された類似度と閾値ThAとを比較して、類似認識を行う。薬剤領域R1と登録画像Aとの類似度は、閾値ThA以上であるので、薬剤領域R1と登録画像Aと類似すると認識する。なお、閾値ThAは、できるだけ薬剤Aを漏れなく抽出する観点より低めに設定されることが好ましい。例えば閾値ThAは、
図2で説明した閾値Th2のように設定される。一方、第1の認識部10Dは、薬剤領域R1と登録画像Bとは、類似度がゼロであり閾値ThAより小さいので、類似していないと認識し、薬剤識別部10Fは、薬剤領域R1は薬剤Bでないと識別する(ステップS35)。
【0063】
その後、第2の認識部10Eは、薬剤Aの類似薬剤の有無について判定し(ステップS31)、類似薬剤が有る場合には、薬剤領域R1と登録画像Xとの第2の類似度を算出する(ステップS32)。そして、薬剤識別部10Fは、第1の類似度と第2の類似度に基づいて、薬剤領域R1が薬剤Aであるか否かを識別する(ステップS33)。具体的には、薬剤識別は、第1の類似度が第2の類似度よりも大きい場合には、薬剤領域R1を薬剤Aと識別する(ステップS34)。一方、第1の類似度が第2の類似度以下の場合には、薬剤領域R1は薬剤Aではないと識別する(ステップS34)。
【0064】
次に、対象画像PIにおける薬剤領域R2の識別に関して、同様に
図11に沿って説明する。
【0065】
第1の認識部10Dは、薬剤領域R2と登録画像A及び登録画像Bとの類似認識を行う(ステップS30)。具体的には、薬剤領域R2と登録画像Bとは、サイズ(形)、色、刻印(印字)が同じであるので第1の認識部10Dは、テンプレートマッチングにより類似度を算出する(
図10のステップS23を参照)。一方、第1の認識部10Dは、薬剤領域R2と登録画像Aとはサイズが異なるので、類似度をゼロと算出する。
【0066】
そして、第1の認識部10Dは、算出された類似度と閾値ThAとを比較して、類似認識を行う。薬剤領域R2と登録画像Bとの類似度は、閾値ThA以上であるので、薬剤領域R2と登録画像Bと類似すると認識する。そして、第2の認識部10Eは、薬剤Bの類似薬剤の有無について判定し(ステップS31)、薬剤Bには類似薬剤は存在しないので、第2の認識部10Eは第2の類似度を算出しない。その後、薬剤識別部10Fは、第1の認識部10Dの類似認識に基づいて、薬剤領域R2に写っている薬剤は薬剤Bと識別する(ステップS34)。一方、第1の認識部10Dは、薬剤領域R2と登録画像Aとは、類似度がゼロであり閾値ThAより小さいので、類似していないと認識し、薬剤識別部10Fは、薬剤領域R2は薬剤Aでないと識別する(ステップS35)。
【0067】
以上で説明したように、本発明においては、先ず、第1の認識部10Dにより、薬剤領域と対応する第1の登録画像との類似認識が行われる。そして、本態様では、第1の認識部10Dにおいて、第1の登録画像と類似すると認識された薬剤領域について、第2の登録画像との類似認識が行われる。これにより、本態様は、第2の登録画像との類似認識は、第2の登録画像と類似すると考えられる薬剤領域に対して行われるので、正確で効率的な識別を行うことができる。
【0068】
<その他の例>
<<類似薬剤が複数ある場合>>
上述した説明では、薬剤A(第1の画像)が一つの類似薬剤(薬剤X)を有する場合について説明を行った。しかしながら、本発明はこの例に限定されず、類似薬剤が複数ある場合にも適用される。
【0069】
図12は、画像入力部10Aに入力された対象画像PJを示す図である。対象画像PJは
図9で説明した対象画像PIと同様にして取得されている。そして、薬剤領域抽出部10Bは、薬剤Cの薬剤領域R3を抽出する。
【0070】
図13は、第1の認識部10Dの類似認識、第2の認識部10Eの類似認識及び薬剤識別部10Fの薬剤識別を示すフローチャートである。薬剤Cの識別について、
図11のフローチャートに沿って説明をする。なお、処方箋情報では、一つの分包袋TPに第1の薬剤である薬剤Cを入れることになっており、登録画像取得部10Cは、処方箋情報に基づいて第1の薬剤に対応する、登録画像C、登録画像Y及び登録画像Zを薬剤データベース20Aから取得する。
【0071】
第1の認識部10Dは、薬剤領域R3と登録画像Cとの類似認識を行う(ステップS40)。具体的には、薬剤領域R3と登録画像Cとは、サイズ(形)、輝度(明るさ)、及び色が同じであるので第1の認識部10Dは、テンプレートマッチングにより類似度を算出する(
図10のステップS23を参照)。
【0072】
その後、第1の認識部10Dは、算出された類似度と閾値ThAとを比較して、類似認識を行う。薬剤領域R3と登録画像Cとの類似度は、閾値ThA以上であるので、薬剤領域R3と登録画像Cと類似すると認識する。
【0073】
その後、第2の認識部10Eは、薬剤領域R3と登録画像Yとの第2の類似度(1)を算出する(ステップS41)。また、第2の認識部10Eは、薬剤領域R3と登録画像Zとの第2の類似度(2)を算出する(ステップS42)。このように、第2の認識部10Eは、類似薬剤の登録画像の各々について類似度を算出する。そして、薬剤識別部10Fは、第1の類似度と第2の類似度の各々に基づいて識別を行う。具体的には、薬剤識別部10Fは、第1の類似度が第2の類似度(1)よりも大きいか否かの判定を行う(ステップS43)。薬剤識別部10Fは、第1の類似度が第2の類似度(1)よりも大きくない場合には、薬剤領域R3は薬剤Cでないと識別する。一方、第1の類似度が第2の類似度(1)よりも大きい場合には、次に薬剤識別部10Fは、第1の類似度が第2の類似度(2)よりも大きいか否かの判定を行う(ステップS44)。薬剤識別部10Fは、第1の類似度が第2の類似度(2)よりも大きくない場合には、薬剤領域R3は薬剤Cでないと識別する(ステップS46)。一方、第1の類似度が第2の類似度(2)よりも大きい場合には、薬剤領域R3は薬剤Cと識別する(ステップS45)。
【0074】
このように、2以上の類似薬剤を有する薬剤を識別する場合であっても、第1の認識部10D及び第2の認識部10Eの認識結果に基づいて、薬剤を識別することにより、正確で効率的な薬剤の識別を行うことができる。
【0075】
以上で本発明の例に関して説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0076】
1 :一包化監査支援システム
2 :薬剤識別装置
10 :処理部
10A :画像入力部
10B :薬剤領域抽出部
10C :登録画像取得部
10D :第1の認識部
10E :第2の認識部
10F :薬剤識別部
12 :照明部
13 :光源
15A :カメラ
15B :カメラ
16 :処方箋リーダ
20 :記憶部
20A :薬剤データベース
30 :表示部
40 :操作部
50 :搬送機構