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特許7280381マイクロメカニカルウェハにダンパ構造を製造するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】マイクロメカニカルウェハにダンパ構造を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B81C 1/00 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
B81C1/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021562946
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2020060124
(87)【国際公開番号】W WO2020216629
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】102019205799.3
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】シュトゥンバー,ミヒャエル
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/002446(WO,A1)
【文献】特開2017-065269(JP,A)
【文献】特開2000-280385(JP,A)
【文献】国際公開第2018/172081(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロメカニカルウェハにダンパ構造を製造するための方法であって、
(A)エッジ接着フィルムと、成形構造を備えた第1の面を有する成形ウェハとを提供するステップと、
(B)低い雰囲気圧で前記エッジ接着フィルムを前記成形ウェハの前記第1の面に載置するステップと、
(C)前記雰囲気圧を上昇させることによって、前記成形ウェハの前記第1の面に前記エッジ接着フィルムを密着させるステップと、
(D)前記成形構造に接着剤を充填するステップと、
(E)前記接着剤を硬化させてダンパ構造を形成するステップと、
(F)前記ダンパ構造をマイクロメカニカルウェハの第2の面に接続するステップと、
を含み、
前記ステップ(D)で、まずフィルムが提供され、次いで前記接着剤が前記フィルムまたは前記エッジ接着フィルムに塗布され、その後、前記フィルムがスタンプで前記成形ウェハの前記第1の面に押し当てられ、
前記ステップ(E)の後、前記スタンプが取り除かれる、方法。
【請求項2】
前記ステップ(C)で、前記エッジ接着フィルムが加熱されることを特徴とする請求項1に記載のダンパ構造を製造するための方法。
【請求項3】
前記スタンプの前記取除き後、前記ダンパ構造が前記成形ウェハから取り外され、次いで前記ステップ(F)で前記マイクロメカニカルウェハの前記第2の面に接続される、請求項1または2に記載のダンパ構造を製造するための方法。
【請求項4】
前記スタンプの前記取除き後、前記ダンパ構造が、前記ステップ(F)で前記マイクロメカニカルウェハの前記第2の面に接続され、次いで前記成形ウェハから取り外される、請求項1または2に記載のダンパ構造を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロメカニカルウェハにダンパ構造を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかのMEMSセンサ(例えば回転速度センサ)は、設置場所および要件に応じて、振動を減衰させて保管しなければならない(例えば、エンジン室内のドライビングダイナミクスセンサなど)。ここで、様々な複雑な解決策が既に使用されており、それらの一部は、回路基板全体またはセンサモジュールをパッケージングで衝撃保護する。あるいは、マイクロメカニカルコンポーネントがシリコン構造に載置されることにより、Siチップレベルでマイクロメカニカルコンポーネントの振動減衰を行うことができる。これは、さらに、温度変動時の機械的応力を緩和することになる。
【0003】
従来の解決策では、複数回の接着および非常に正確な位置決めを必要とする構造は困難であるか、複雑でありコストがかかっていた。ウェハレベルでダンパ構造を実現し、センサウェハに接続し、その後、一緒に個片化することで、より簡単でより正確な位置決めが可能になり、必要な作業ステップが少なくなる。
【0004】
先に公開されていない独国特許出願102018222685.7号に、ダンパ構造を有するマイクロメカニカルデバイスを製造するための方法が記載されており、ここで、ダンパ構造は、ウェハレベルでマイクロメカニカルウェハに製造される。
【0005】
さらに、半導体技術において、薄層を転写するための転写フィルムが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術における既知の解決策よりも単純であり、できるだけ費用対効果も高い、マイクロメカニカルウェハにダンパ構造を製造するための代替の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、マイクロメカニカルウェハにダンパ構造を製造するための方法であって、
(A)エッジ接着フィルムと、成形構造を備えた第1の面を有する成形ウェハとを提供するステップと、
(B)低い雰囲気圧でエッジ接着フィルムを成形ウェハの第1の面に載置するステップと、
(C)雰囲気圧を上昇させることによって、成形ウェハの第1の面にエッジ接着フィルムを密着させるステップと、
(D)成形構造に接着剤を充填するステップと、
(E)接着剤を硬化させてダンパ構造を形成するステップと、
(F)ダンパ構造をマイクロメカニカルウェハの第2の面に接続するステップと、
を含む方法に関する。
【0008】
有利には、本発明による方法によって、上記の積層システムから直接成形されたダンパ構造をウェハレベルで形成することができ、マイクロメカニカルウェハに正確に位置決めすることができる。これには、ダンパとセンサとの間の位置決めおよび取付けの正確で複雑なステップが、センサとダンパとの対ごとに個別に行われる必要がなく、数千のセンサに対して一度に行われるという利点がある。ここでは、リソグラフィ分野からの既知の位置決め方法を、光学アライメント(位置合わせ)用の位置調整構造と共に、ウェハマスク位置調整に使用することができる。ダンパとセンサとのより正確であり反復可能な位置合わせにより、非常に適切なダンパ構造の設計および構成が実現可能になり、したがって要件に正確に合わせた振動減衰特性が実現可能になる。さらに、ダンパ構造を載置するためのステップは、有利には、ウェハスタックの薄層化(研削、研磨)およびその後のセンサとダンパの組合せの個片化(例えばソーイングまたはレーザ切断による)と適合させて組み合わせることができる。
【0009】
本発明のさらなる有利な形態は、従属請求項で見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】マイクロメカニカルウェハにダンパ構造を製造するための本発明による方法を概略的に示す図である。
図2】様々な成形構造の領域を有する成形ウェハの例を示す図である。
図3図3aは、本発明による方法の例示的実施形態におけるステップ(B)を概略的に示す図である。図3bは、本発明による方法の例示的実施形態におけるステップ(C)を概略的に示す図である。
図4図4aは、本発明による方法の例示的実施形態におけるステップ(D)を概略的に示す図である。図4bは、本発明による方法の例示的実施形態におけるステップ(E)を概略的に示す図である。図4cは、本発明による方法の例示的実施形態におけるステップ(F)を概略的に示す図である。
図5図5aは、本発明による方法のさらなる例示的実施形態におけるステップ(D)を概略的に示す図である。図5bは、本発明による方法のさらなる例示的実施形態におけるステップ(E)を概略的に示す図である。図5cは、本発明による方法のさらなる例示的実施形態におけるステップ(F)を概略的に示す図である。図5dは、本発明による方法のさらなる例示的実施形態におけるステップ(F)を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、マイクロメカニカルウェハにダンパ構造を製造するための本発明による方法を概略的に示す。この方法は、以下のステップを含む。
(A)エッジ接着フィルムと、成形構造を備えた第1の面を有する成形ウェハとを提供するステップ。
【0012】
エッジ接着フィルム(英語:edge glue tape;EGT)は、好ましくはフレームまたはホルダ上に伸張され、成形ウェハの第1の面に載置するために提供される。成形構造を備えた第1の面を有する成形ウェハも同様に提供される。ここで、成形ウェハは、半導体ウェハ、特に従来のシリコンウェハでよい。しかし、成形ウェハは、構造化ガラス基板、特に例えばホウケイ酸から成るUV透過性ガラス基板でもよい。成形構造は、本質的に、製造されるダンパ構造に対して相補的な構造またはネガである。エッジ接着フィルムおよび成形ウェハは、プロセスチャンバ、特に真空チャンバ内に提供される。
【0013】
(B)低い雰囲気圧でエッジ接着フィルムを成形ウェハの第1の面に載置するステップ。
プロセスチャンバが排気される。次いで、エッジ接着フィルムが、成形ウェハの第1の面に載置される。
【0014】
(C)雰囲気圧を上昇させることによって、成形ウェハの第1の面にエッジ接着フィルムを密着させるステップ。
プロセスチャンバ内の雰囲気圧が再び上昇される。空気(またはガス)が真空チャンバ内に再び流れ込むと、エッジ接着フィルムが成形ウェハ、特に成形構造に密着する。任意選択で、エッジ接着フィルムを加熱することもでき、それにより、成形構造がフィルムにさらに良好に転写される。したがって、熱を供給して、フィルムの密着および第1の面での成形構造の包囲を支援することができる。
【0015】
(D)成形構造に接着剤を充填するステップ。
接着剤は、成形構造を充填するために使用される。接着剤は、本質的に将来のダンパ構造を形成する。さらに、接着剤は、マイクロメカニカルウェハの第2の面にもよく付着すべきである。接着剤として、例えば樹脂、特にUV硬化樹脂が適している。あるいは、液体シリコーン(英語:liquid Silicon rubber;LSR)、特にUV硬化型LSRが適している。LSRの利点は、優れた振動減衰特性および優れた温度耐性である。
【0016】
(E)接着剤を硬化させてダンパ構造を形成するステップ。
このステップで、UV硬化型接着剤は、好ましくは成形ウェハを通るUV照射によって硬化される。UV活性化接着剤は、硬化前に照射される。接着剤の硬化は、熱によって支援することもできる。
【0017】
(F)ダンパ構造をマイクロメカニカルウェハの第2の面に接続するステップ。
マイクロメカニカルウェハは、おもて面にある表面マイクロメカニカル構造と、反対側の裏面、通常は基板とを備えたウェハである。ダンパ構造は、マイクロメカニカルウェハの裏面に接続することができる。マイクロメカニカルウェハは、そのおもて面にカバーウェハを被せることができる。この場合、ダンパ構造をカバーウェハの外面に接続することもできる。したがって、マイクロメカニカルウェハの第2の面は、裏面またはカバー外面でよい。
【0018】
本発明による方法の第1の例示的実施形態では、ステップ(D)で、まず、例えばポリエチレンテレフタレートから成るフィルム(PETフィルム)が平坦なキャリアに提供され、次いで、接着剤がPETフィルムに塗布される。フィルムは、好ましくはDAFテープ(英語:die attach film)である。プラスチックまたは他の適切な材料から成る他の単層または多層フィルムを使用することもできる。その後、ステップ(E)で接着剤が硬化される。これは、好ましくは、キャリアおよびPETフィルムを介した接着剤のUV照射によって行われる。その後、キャリアが取り除かれる。ダンパ構造が成形ウェハから取り外され、ステップ(F)で、マイクロメカニカルウェハの第2の面に接続される。ダンパ構造は、選択的にPETフィルムまたはエッジ接着フィルムを有して、または有さずに、マイクロメカニカルウェハの第2の面に接続することができる。あるいは、ダンパ構造を、まずマイクロメカニカルウェハの第2の面に接続することができ、その後、成形ウェハが取り外される。
【0019】
本発明による方法の第2の例示的実施形態では、ステップ(D)で既にマイクロメカニカルウェハが提供される。接着剤は、(エッジ接着フィルムによって間接的に)マイクロメカニカルウェハの第2の面または成形ウェハの第1の面に塗布される。その後、成形ウェハの第1の面とマイクロメカニカルウェハの第2の面とが、間に接着剤を挟んで押し合わされる。次いで、ステップ(E)における接着剤の硬化、およびステップ(F)におけるマイクロメカニカルウェハの第2の面とのダンパ構造の接続が、1つの製造ステップで行われる。好ましくは、UV活性化接着剤が使用され、UV活性化接着剤は、上記押し合わせの前にUV放射で照射される。代替または追加として、接着剤は熱により硬化される。あるいは、UV硬化型接着剤が使用される。成形ウェハがUV透過性であるとき、成形ウェハを通してUV照射を行うことができる。このために、例えばホウケイ酸から成るガラスウェハを使用することができる。
【0020】
接着剤の硬化後、成形ウェハがダンパ構造から取り外される。
任意選択で、さらに、ダンパ構造からエッジ接着フィルムを取り外すこともできる。
図2は、方法ステップ(A)で提供される様々な成形構造の領域を備えた成形ウェハの例を示す。
【0021】
図3aおよびbは、本発明による方法の例示的実施形態におけるステップ(B)および(C)を概略的に示す。成形ウェハ1が、真空チャンバ3内の加熱プレート2に位置決めされる(図3a)。
【0022】
負圧、特に<1mbarの真空を加えた後、フレーム4に伸張されたエッジ接着フィルム5が成形ウェハ1に載置されるか、またはさらに加圧および加熱される。真空チャンバ内の雰囲気圧が上昇すると、エッジ接着フィルムが成形構造に密接し、温度が下がると再び固化する(図3b)。
【0023】
図4a、b、およびcは、本発明による方法の例示的実施形態におけるステップ(D)、(E)、および(F)を概略的に示す。成形ウェハ1は、エッジ接着フィルム5を上に向けて位置される。成形構造は、上から接着剤6で充填される。これは、個々の構造での正確な定量供給によって、または計量された量の中央塗布によって行うことができる。ここで、上から、マイクロメカニカルウェハ7、例えばキャップ付きセンサウェハが位置調整されて押し当てられる(図4a)。
【0024】
接着剤6は、成形ウェハ1内の空間を埋め、ダンパ構造を形成する。接着剤またはLSRは、例えば下側からのUV照射8によって、または熱によって硬化され、マイクロメカニカルウェハと接続する(図4b)。
【0025】
最後に、エッジ接着フィルム5が成形ウェハ1から分離され、接着剤またはLSR6およびエッジ接着フィルム5から成るダンパ構造に接続されたマイクロメカニカルウェハ7が得られる(図4c)。
【0026】
図5a、b、c、およびdは、本発明による方法のさらなる例示的実施形態におけるステップ(D)、(E)、および(F)を概略的に示す。成形ウェハ1は、エッジ接着フィルム5を上に向けて位置される。成形構造が、接着剤6で充填される。これは、個々の構造での正確な定量供給によって、または計量された量の中央塗布によって行うことができる。そこで、さらなるフレーム9により伸張されたDAFテープ(英語:die-attach film)10が、スタンプ11によって上から押し当てられる(図5a)。
【0027】
接着剤6は、エッジ接着フィルム5とDAFテープ10との間の成形ウェハ1内の空間を埋め、フィルムと共にダンパ構造を形成する。接着剤(またはLSR)6は、例えば下側からのUV照射8によって、または熱によって硬化され、エッジ接着フィルム5およびDAFテープ10と接続する(図5b)。
【0028】
硬化後、スタンプ11は上に移動し、DAFテープ10、接着剤6、およびエッジ接着フィルム5の複合体を、さらなるフレーム9と共に成形ウェハ1から取り外すことができる。
【0029】
その後、この構造をマイクロメカニカルウェハ7に位置調整することができ、DAFテープ10がマイクロメカニカルウェハに接続される(図5c)。
DAFテープ10、接着剤またはLSR6、およびエッジ接着フィルム5から成るダンパ構造に接続されたマイクロメカニカルウェハ7が得られる(図5d)。
【符号の説明】
【0030】
1 成形ウェハ
2 加熱プレート
3 真空室
4 フレーム
5 エッジ接着フィルム
6 接着剤
7 マイクロメカニカルウェハ
8 UV照射
9 さらなるフレーム
10 DAFテープ
11 スタンプ
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図5d