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特許7280397腐食を抑制するためのポリマー剤及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】腐食を抑制するためのポリマー剤及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C23F 11/00 20060101AFI20230516BHJP
   C07D 235/28 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C23F11/00 D
C07D235/28 B
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022011588
(22)【出願日】2022-01-28
(62)【分割の表示】P 2018547984の分割
【原出願日】2017-03-10
(65)【公開番号】P2022068184
(43)【公開日】2022-05-09
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】62/306,818
(32)【優先日】2016-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511307096
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼーション
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マーデル, ジェームズ イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】コール, イヴァン スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト, ポール アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ, アントニー エワート
(72)【発明者】
【氏名】マークリー, トレーシー アン
(72)【発明者】
【氏名】ハーヴィー, ティモシー グラハム
(72)【発明者】
【氏名】オズボーン, ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ザッパー, エリック
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/085551(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/151570(WO,A1)
【文献】特開昭54-123145(JP,A)
【文献】特表2010-521582(JP,A)
【文献】国際公開第2014/172004(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐食抑制剤を含む保護組成物を基板の表面に適用することを含む、基板を腐食から保護する方法であって、腐食抑制剤が金属有機構造体(MOF)を含み、
MOFが、各々が一又は複数の有機リガンドに配位して少なくとも一次元、二次元、又は三次元のネットワークを形成する金属イオン又は金属クラスターを含み、一又は複数の有機リガンドが、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物からなる群より選択され、アリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物の各々が少なくとも一つの環外硫黄基を含み、
少なくとも一つの環外硫黄基を含む一又は複数の有機リガンドが、式1:
[式中、
Aは、一又は複数の置換基で置換されていてもよく、且つ一又は複数のアリール又はヘテロアリール環と縮合していてもよい、5又は6員のアリール、ヘテロアリール又は複素環式環であり、点線は一の任意の二重結合を表し;
は、独立してN及びSからなる群より選択され;
は、N、NR 、O、S、CR 、及びCR からなる群より選択され;
は、C-SHであり;
は、水素、アミノ、C -C 10 アルキル、C -C 10 アルケニル、C -C 10 アルキニル、アリール及びヘテロアリールより選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよく;
、R 及びR は、それぞれ独立して、水素、ハロ、アミノ、チオール、チオン、C -C 10 アルキル、C -C 10 アルケニル、C -C 10 アルキニル、アリール及びヘテロアリールより選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよい]
の化合物から選択され、
MOFの金属イオン又は金属クラスターがPr以外の希土類金属である、方法。
【請求項2】
基板が金属基板である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属基板がアルミニウムの金属又は合金を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
がNであり、XがNであり、XがC-SHである、請求項に記載の方法。
【請求項5】
MOFが固体粒子の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
固体粒子の平均径が20nmから50μmにわたるサイズを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
固体粒子の平均径が100nmから1μmにわたるサイズを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
金属有機構造体(MOF)から選択される少なくとも一つの腐食抑制剤を含む、基板に適用するための腐食抑制組成物であって、
MOFが、各々が一又は複数の有機リガンドに配位して少なくとも一次元、二次元、又は三次元のネットワークを形成する金属イオン又は金属クラスターを含み、一又は複数の有機リガンドが、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物からなる群より選択され、アリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物の各々が少なくとも一つの環外硫黄基を含み、有機リガンド:金属原子のモル比率が2:1、3:1、4:1、5:1又は6:1であり、
少なくとも一つの環外硫黄基を含む一又は複数の有機リガンドが、式1:
[式中、
Aは、一又は複数の置換基で置換されていてもよく、且つ一又は複数のアリール又はヘテロアリール環と縮合していてもよい、5又は6員のアリール、ヘテロアリール又は複素環式環であり、点線は一の任意の二重結合を表し;
は、独立してN及びSからなる群より選択され;
は、N、NR 、O、S、CR 、及びCR からなる群より選択され;
は、C-SHであり;
は、水素、アミノ、C -C 10 アルキル、C -C 10 アルケニル、C -C 10 アルキニル、アリール及びヘテロアリールより選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよく;
、R 及びR は、それぞれ独立して、水素、ハロ、アミノ、チオール、チオン、C -C 10 アルキル、C -C 10 アルケニル、C -C 10 アルキニル、アリール及びヘテロアリールより選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよい]
の化合物から選択され、
MOFの金属イオン又は金属クラスターがPr以外の希土類金属である、組成物。
【請求項9】
膜形成有機ポリマーを含むコーティング組成物である、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
膜形成有機ポリマーが一又は複数のエポキシ系樹脂を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
粉末コーティング組成物である、請求項に記載の組成物。
【請求項12】
一又は複数の顔料、充填剤、及び増量剤を含む一又は複数の添加剤をさらに含む、請求項に記載の組成物。
【請求項13】
MOFが白い色を有する、請求項に記載の組成物。
【請求項14】
顔料である添加剤を含まない、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
膜形成有機ポリマーと、金属有機構造体(MOF)から選択される少なくとも一つの腐食抑制剤とを混合することにより組成物を形成することを含む、基板への適用のための腐食抑制コーティング組成物を調製するための方法であって、
MOFが、各々が一又は複数の有機リガンドに配位して少なくとも一次元、二次元、又は三次元のネットワークを形成する金属イオン又は金属クラスターを含み、一又は複数の有機リガンドが、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物からなる群より選択され、アリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物の各々が少なくとも一つの環外硫黄基を含み、
少なくとも一つの環外硫黄基を含む一又は複数の有機リガンドが、式1:
[式中、
Aは、一又は複数の置換基で置換されていてもよく、且つ一又は複数のアリール又はヘテロアリール環と縮合していてもよい、5又は6員のアリール、ヘテロアリール又は複素環式環であり、点線は一の任意の二重結合を表し;
は、独立してN及びSからなる群より選択され;
は、N、NR 、O、S、CR 、及びCR からなる群より選択され;
は、C-SHであり;
は、水素、アミノ、C -C 10 アルキル、C -C 10 アルケニル、C -C 10 アルキニル、アリール及びヘテロアリールより選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよく;
、R 及びR は、それぞれ独立して、水素、ハロ、アミノ、チオール、チオン、C -C 10 アルキル、C -C 10 アルケニル、C -C 10 アルキニル、アリール及びヘテロアリールより選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよい]
の化合物から選択され、
MOFの金属イオン又は金属クラスターがPr以外の希土類金属である、方法。
【請求項16】
金属有機構造体(MOF)を含む腐食抑制組成物でコーティングされた基板を備える被コーティング基板であって、
MOFが、各々が一又は複数の有機リガンドに配位して少なくとも一次元、二次元、又は三次元のネットワークを形成する金属イオン又は金属クラスターを含み、一又は複数の有機リガンドが、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物からなる群より選択され、アリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物の各々が少なくとも一つの環外硫黄基を含み、有機リガンド:金属原子のモル比率が2:1、3:1、4:1、5:1又は6:1であり、
少なくとも一つの環外硫黄基を含む一又は複数の有機リガンドが、式1:
[式中、
Aは、一又は複数の置換基で置換されていてもよく、且つ一又は複数のアリール又はヘテロアリール環と縮合していてもよい、5又は6員のアリール、ヘテロアリール又は複素環式環であり、点線は一の任意の二重結合を表し;
は、独立してN及びSからなる群より選択され;
は、N、NR 、O、S、CR 、及びCR からなる群より選択され;
は、C-SHであり;
は、水素、アミノ、C -C 10 アルキル、C -C 10 アルケニル、C -C 10 アルキニル、アリール及びヘテロアリールより選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよく;
、R 及びR は、それぞれ独立して、水素、ハロ、アミノ、チオール、チオン、C -C 10 アルキル、C -C 10 アルケニル、C -C 10 アルキニル、アリール及びヘテロアリールより選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよい]
の化合物から選択され、
MOFの金属イオン又は金属クラスターがPr以外の希土類金属である、被コーティング基板。
【請求項17】
腐食抑制組成物が直接的コーティングとして基板の表面に適用されている、請求項16に記載の被コーティング基板。
【請求項18】
基板が金属合金であり、腐食抑制組成物が膜形成有機ポリマーを含んでいる、請求項16に記載の被コーティング基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、参照により本明細書に包含される内容に基づき優先権を主張する。
【0002】
分野
本発明は、様々な基板、例えば金属基板における腐食を抑制するためのプロセス、組成物及び薬剤に関する。本発明は、金属有機構造体(MOF)といった有機金属ポリマーを含む腐食抑制剤にも関し、これは、金属基板における腐食を抑制するためのMOFを含む組成物とプロセスを含む。
【背景技術】
【0003】
大気腐食からの金属基板などの基板の保護は、困難な課題を呈し、大きな経済的重要性を有する。腐食からの保護を必要とする金属基板の範囲は、通常、航空宇宙産業において使用されるアルミニウム合金、鉄合金、亜鉛金属及び保護コーティングに使用される合金を含む。
【0004】
有機プライマーに使用される顔料グレードの腐食抑制剤は、限定されているが有効な水溶性を有する抑制剤活性を有するアニオン種を必要とすることが周知である。このような理由により、クロメートベースの腐食抑制剤種が、例えば化成コーティングにおいて提供される大気腐食からの保護のためのアルミニウムに適用される腐食制御技術及び高性能有機プライマーの両方において好まれてきた。六価のクロメートイオンは、数十年前から、多くの金属及び合金系について優良な腐食抑制剤であることが分かっている。しかしながら、しばらく前からクロメートイオンの毒性及び発がん性が理解されるようになり、環境的に許容可能な代替物を見つけるための広範な研究が約30年間にわたって行われている。
【0005】
一般に、毒性、効率、及び値段が考慮される場合、クロメートの代替物として利用可能な無機腐食抑制剤種の数が、モリブデート、ホスフェート、ボレート、シリケート及びシアナミドを含む本質的に数種のアニオン種に限定されることが知られている。結果として、すべての市販の非クロメート腐食抑制剤顔料は、モリブデート、ホスフェート、ボレート、シリケート又はシアナミド、或いはこれら化合物の組み合わせである。クロメートと比較して、それらの腐食防止機構に固有の制限は、アニオン種の、一般的な腐食抑制剤としての効果、特にアルミニウムの大気腐食の腐食抑制剤としての効果を低下させている。六価クロメートの比較的効果的で非毒性の代替物となりうる大気腐食の代替的な抑制剤が必要とされている。
【0006】
反対に、最近は多数の有機腐食抑制剤が知られており、様々な腐食制御技術に適用されている。既知の有機抑制剤の多くの過度の水溶性及び/又は揮発性は、化成コーティング技術及び有機コーティングにおいて使用されるとき、限界となる。
【0007】
代替的腐食抑制剤を同定することで大きな進歩が見られており、遷移金属及び希土類金属の塩が、脱酸素及び酸洗い液、エッチング液、陽極酸化及び化成コーティング、プライマー塗料並びに密封剤を含む多くの用途に可能な代替物を提示している。例えば、塩化セリウムは、アルミニウム合金の優良な抑制剤であることが80年代前半に発見された(Hinton et al.)。シンナマートといったカルボン酸のアルカリ金属塩も、軟鋼の腐食を効果的に抑制することが分かっている。
【0008】
希土類金属イオンと有効な有機抑制剤との組み合わせも、アノード及びカソード反応の両方を抑制することが分かっている(即ち混合抑制剤)。例えば、Behrouzvaziri et al. (2008) and Blin et al. (2007)は、電気化学的研究により、ランタンヒドロキシシンナマートが塩化物溶液中において腐食を抑制することを示した。アルミニウム合金については、Ho et al. (2006) and Markley et al. (2007)が、セリウムジフェニルホスフェート及びセリウムジブチルホスフェートが、アルミニウム合金の腐食の極めて良好な抑制剤であることを示した。例えば、米国特許第5298148号に、酢酸ランタン、酪酸ランタン、シュウ酸ランタン、硝酸ランタン、水酸化ランタン、酸化ランタン、及びタングステン酸ランタンからなる群より選択されるある範囲の粉末コーティング製剤が記載されている。
【0009】
炭素環式及び複素環式芳香族構造といった芳香特性を有する有機化合物も、アルミニウム及びその合金の腐食の有効な抑制剤であることが分かっており、例えば、金属塩と共に又は金属錯体の形態で提供されうる。例えば、国際公開第2004/085551号は、金属の腐食防止用のエポキシプライマーを含むコーティングのための、希土ベースの有機化合物及び/又は希土類金属と有機化合物の組み合わせを含む腐食抑制コーティングに関する。既知の代替的クロメートベースの腐食抑制剤の多くは、腐食抑制活性が限られていること、又は種々のコーティング組成物と適合性でないことを含む様々な問題を有している。
【0010】
例えば金属合金といった金属基板において、保護組成物における使用に適したクロメートフリー腐食抑制剤である、基板を保護するための代替的腐食抑制剤を同定する必要がある。
【発明の概要】
【0011】
金属基板といった様々な基板を腐食から保護するための、改善されたコーティング組成物及びクロメートフリー腐食抑制剤を同定するための研究が行われた。この研究の間に、典型的な腐食抑制剤、例えば有機複素環式化合物が、塗料組成物に使用される樹脂といった、組成物の他の構成成分との反応に問題を有しうることが同定された。これら同定された問題の観点から、さらなる研究が実施され、驚くべきことに、様々な有機金属ポリマーが、組成物中の広範囲にわたる構成成分と適合性であるという利点を提供すると同時に腐食抑制剤として有効でありうることが判明した。
【0012】
第1の態様において、腐食抑制剤を含む保護組成物を基板の表面に適用することを含む、基板を腐食から保護する方法が提供され、この腐食抑制剤は金属有機構造体(MOF)を含む。
【0013】
基板は金属基板でありうる。金属基板が、少なくともその表面の一部が金属であるあらゆる基板材料を含みうることが理解できよう。金属基板は、腐食からの保護を必要とするあらゆる金属を含みうる。金属基板は、銅リッチ合金、例えば銅リッチアルミニウム合金でありうる。
【0014】
MOFは、各々が一又は複数の有機リガンドに配位して一次元、二次元、又は三次元のネットワークを形成する金属イオン又は金属クラスターを含みうる。MOFは、多孔性三次元ネットワークを有するように選択されうる。
【0015】
MOFの一又は複数の有機リガンドは、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物から選択されうる。一又は複数の有機リガンドは、N、O及びSから選択される少なくとも二つのヘテロ原子を含む置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物から選択されうる。一又は複数の有機リガンドは、少なくとも一つの環外硫黄基を含む置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物から選択されうる。環外硫黄基は、チオール及びチオン基から選択されうる。有機リガンドは、チオール及びチオンから選択される少なくとも一つの環外硫黄基を含む、置換されていてもよく、縮合していてもよい、5又は6員の単環式又は二環式アリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物から選択されうる。少なくとも一つの環外硫黄基はチオールでありうる。
【0016】
置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物は、非置換であっても、又はアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ホルミル、アルカノイル、シクロアルカノイル、アロイル、ヘテロアロイル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロシクリルオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、ヘテロシクリルアミノカルボニル、ヘテロアリールアミノカルボニル、シアノ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルカノエート、シクロアルカノエート、アリーロエート(aryloate)、ヘテロシクリロエート(heterocyclyloate)、ヘテロアリーロエート(heteroaryloate)、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロシクリルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ニトロ、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、アリールチオ、ヘテロシクリルチオ、ヘテロアリールチオ、アルキルスルホニル、シクロアルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロシクリルスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、ヒドロキシル、ハロ、ハロアルキル、ハロアリール、ハロヘテロシクリル、ハロヘテロアリール、ハロアルコキシ、ハロアルキルスルホニル、シリルアルキル、アルケニルシリルアルキル、アルキニルシリルアルキル、アミノ、チオール及びチオニルからなる基で置換されていてもよい。置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物は、非置換であっても、又はハロ、アルキル、ホルミル、アミノ、チオール及びチオンからなる基で置換されていてもよい。置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物は、非置換であっても、又はアミノ、チオール及びチオンからなる基で置換されていてもよい。
【0017】
一実施態様では、基板を腐食から保護する方法は、腐食抑制剤を含む保護組成物を基板の表面に適用することを含み、この腐食抑制剤は金属有機構造体(MOF)を含み、MOFは、各々が一又は複数の有機リガンドに配位して少なくとも一次元、二次元、又は三次元のネットワークを形成する金属イオン又は金属クラスターを含み、一又は複数の有機リガンドは、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物からなる群より選択され、アリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物の各々は少なくとも一つの環外硫黄基を含む。
【0018】
一実施態様では、一又は複数の有機リガンドは、式1:
[式中、
Aは、一又は複数の置換基で置換されていてもよく、且つ一又は複数のアリール又はヘテロアリール環と縮合していてもよい、5又は6員のアリール、ヘテロアリール又は複素環式環であり、点線は一又は複数の任意の二重結合を表し;
は、N、NR、O、S、CR及びCRからなる群より選択され;
は、N、NR、O、S、CR及びCRからなる群より選択され;
は、N、NR、CR10及びCR1112からなる群より選択され;
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、アミノ、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよく;
、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素、ハロ、アミノ、チオール、チオン、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよい]
の化合物から選択される。
【0019】
一実施態様では、Xは、N、NR、O、及びSからなる群より選択される。一実施態様では、Xは、N、NH及びSからなる群より選択される。
【0020】
一実施態様では、Xは、N及びCR10からなる群より選択される。一実施態様では、R10は、チオール及びチオンからなる群より選択される。一実施態様では、XはC-SHである。
【0021】
一実施態様では、Xは、N、NR、O、及びSからなる群より選択され;Xは、N及びCR10からなる群より選択される。一実施態様では、Xは、N、NH及びSより選択される。一実施態様では、R10は、チオール及びチオンからなる群より選択される。一実施態様では、XはC-SHである。
【0022】
MOFの金属イオン又は金属クラスターは、希土類、アルカリ土類及び遷移金属から選択される一又は複数の金属イオンを含みうる。金属は、Zn、La、Pr、Ce、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Co、Y、Ca、Sr、Ba、Sc、Zr、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されうる。金属イオンは、Zn、Pr及びCeからなる群より選択されうる。MOFの金属イオン又は金属クラスターは、一般に、配位構造体に単一種の金属を含む。金属イオン又は金属クラスターは、配位構造体に混合金属系を含んでもよく、例えば金属イオン又は金属クラスターは二つ以上の異なる金属を含むことができる。
【0023】
MOFは、組成物中の分散体に適した固体粒子として形成することができる。MOF粒子の平均径は、20nmから50μm、40nmから30μm、60nmから10μm、80nmから5μm、又は100nmから1μmの範囲とすることができる。MOF粒子の平均径は、100nmから1μmの範囲とすることができる。MOFは、実質的に白色を有するように選択されうる。
【0024】
第2の態様では、基板を腐食から保護するための腐食抑制剤が提供され、この腐食抑制剤は金属有機構造体(MOF)である。
【0025】
第3の態様では、基板を腐食から保護するための腐食抑制剤としての金属有機構造体(MOF)が提供される。
【0026】
第4の態様では、金属有機構造体(MOF)から選択される少なくとも一つの腐食抑制剤を含む、基板への適用のための腐食抑制組成物が提供される。
【0027】
腐食抑制組成物は、膜形成有機ポリマーを含みうる。組成物は、コーティング組成物でもよい。コーティング組成物は、粉末コーティング組成物、例えば様々な鋼の粉末コーティングに使用するために適した粉末コーティング組成物とすることができる。コーティング組成物は、一又は複数の樹脂、例えばエポキシ系樹脂を含みうる。コーティング組成物は、塗料組成物、例えばエポキシ樹脂系塗料組成物とすることができる。コーティング組成物はスプレー組成物でもよい。組成物が、顔料、充填剤及び増量剤といった一又は複数の添加剤を含みうることが理解されよう。MOFは、明るい色又は実質的に白色を有するように選択されうる。組成物は、実施的に顔料添加剤を含まなくともよい。例えば、組成物は、1%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満、及び0.0001%未満の顔料添加剤を含みうる。
【0028】
第5の態様では、膜形成有機ポリマーと、金属有機構造体(MOF)から選択される少なくとも一つの腐食抑制剤とを混合することにより組成物を形成することを含む、基板への適用のための腐食抑制組成物を調製するための方法が提供される。
【0029】
第6の態様では、金属有機構造体(MOF)を含む腐食抑制組成物でコーティングされた基板を備える被コーティング基板が提供される。被コーティング基板は、腐食抑制組成物のコーティングの前に及び/又は後で基板に適用される一又は複数のコーティング層を含みうる。腐食抑制組成物は、基板の表面に対する直接的なコーティングとして適用されてよい。腐食抑制組成物は、膜形成有機ポリマーを含みうる。基板は金属合金とすることができる。被コーティング基板は航空宇宙用構成要素でありうる。
【0030】
第1の態様に関して上述された実施態様のいずれの一又は複数も、上述の他の態様に対する実施態様として適用することができる。例えば、第2、第3、第4、第5、又は第6の態様は、各々が一又は複数の有機リガンドに配位して少なくとも一次元、二次元、又は三次元のネットワークを形成する金属イオン又は金属クラスターを含むMOFを利用することができ、一又は複数の有機リガンドは、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物からなる群より選択され、アリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物の各々は少なくとも一つの環外硫黄基を含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】Zn(MP)/エポキシでコーティングされたアルミニウム金属基板から亜鉛及び硫黄がNaCl溶液に進出し、耐食環境が提供される様子を示している。
図2】様々なMOF/エポキシでコーティングされたアルミニウムコーティング基板のNSS試験について得られた結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書は、代替的なクロメートフリー腐食抑制剤を同定するために実施された調査に関する以下の様々な非限定的実施態様を記載する。驚くべきことに、金属有機構造体(MOF)が腐食抑制剤として有用であり、膜形成組成物において有利に使用できることが見出された。
【0033】
一般用語
本明細書において使用される用語「基板」は、腐食からの保護を必要とし、固有の特性を提供するために洗浄及び/又は保護及び/又は調節することのできるあらゆる構造体を指す。基板は、少なくとも一部が金属であるか又は腐食し易い他のいずれかの材料である表面を含みうる。基板は金属基板でありうる。
【0034】
本明細書において使用される用語「金属基板」は、固有の特性を提供するために洗浄及び/又は保護及び/又は調節することのできる、その少なくとも一部が金属である表面を有する構造体を指す。「金属基板」は、いずれか特定の種類の金属表面に限定されることはなく、腐食抑制コーティングの適用という観点で、このような金属基板は、一般に銅リッチ合金、例えば銅リッチアルミニウム合金を含む。
【0035】
本明細書において使用される用語「保護組成物」は、何らかの形態の腐食保護を基板に提供するうえでの使用に適したあらゆる組成物を指す。例えば、保護組成物は、鋼を腐食から保護するうえでの使用のための粉末コーティング組成物、又はアルミニウム合金を腐食から保護するための膜形成有機ポリマーベースの組成物を含むことができる。
【0036】
本明細書において使用される用語「増量剤」又は「増量剤顔料」は、無条件で使用されるとき、塗料硬化後に最終的に得られるコーティングに容積を提供するために(コスト削減といった他の理由のために付加することもできるが)塗料製剤に一般に組み込まれる顔料の一種を指す。増量剤は、追加的に又は代替的に、系全体の耐食性を向上させるうえで活性な構成要素とすることもできる。容積を付加する増量剤は、多くの場合「充填剤」又は「増量剤/充填剤」と呼ばれる。
【0037】
本明細書において使用される用語「コーティング」は、液体(例えば塗料)又は固体(例えば粉末)として基板に適用されてポリマー膜を形成することのできるポリマー材料(有機又は無機)を指す。このようなポリマー材料には、限定されないが、粉末コーティング、塗料、密封剤、導電性ポリマー、ゾルゲル(例えば、イリノイ州シカゴに営業所を有するBoeing Co.によるBoegelTM)、シリケート、シリコーン、ジルコネート、チタネートなどが含まれる。「コーティング」は、結合剤、溶媒、顔料及び添加剤の複合混合物を含む。多くのコーティングは、四つのカテゴリーのそれぞれから一又は複数の物質を有する。光沢及び色といったコーティング特性は、膜表面に関連しており、即ち、二次元エンティティとして関連している。しかしながら、コーティングの内部特性は、その三次元構造に関連している。位相継続性は容積の概念であり、コーティング性能は結合相の完全性に依存する。
【0038】
本明細書において使用される用語「膜形成有機ポリマー」又は「膜形成ポリマー材料」は、モノマー、コモノマー、樹脂又はポリマーを含むコーティングを作製するために使用することのできるあらゆるポリマー材料を指す。ポリマー材料は、「結合剤」と呼ぶこともでき、有機でも無機でもよい。有機ポリマー材料は、通常炭素骨格を有し、無機ポリマー材料は通常シリコーン骨格を有する。有機結合剤は有機モノマーとオリゴマーから作られ、その名称はこれらに由来する。これらの例は、アクリル、エポキシ、ウレタン、メラミンなどであろう。結合剤には、エポキシ系樹脂結合剤、例えば水希釈性エポキシ-ポリアミド系(有機ポリマー材料の場合)又は非エポキシ系樹脂結合剤、例えばウレタン、尿素、アクリレート、アルキド、メラミン、ポリエステル、ビニル、ビニルエステル、シリコーン、シロキサン、シリケート、スルフィド、シリケートポリマー、エポキシノボラック、エポキシフェノール、乾性油、炭化水素ポリマーなどが含まれる。
【0039】
本明細書において使用される用語「重量パーセント(wt%)」は、無条件で使用されるとき、一般に、ポリマー樹脂を除き、存在するすべての固体構成要素と比較した場合の特定の固体構成要素、例えば、顔料、増量剤などの重量パーセントを指す。例えば、コーティング中に存在する固体構成要素が腐食抑制炭素顔料のみである場合、腐食抑制炭素顔料は100のwt%を有すると考える。
【0040】
本明細書を通じて、「含む/備える(comprise)」という語、又はその文法的変形は、言及された要素、整数若しくは工程、又は要素、整数、若しくは工程の組を含んでいることを意味するが、他のいずれかの要素、整数若しくは工程、又は要素、整数、若しくは工程の組を排除するものではない。本明細書において開示及び記載される様々な実施態様は、本明細書において様々に記載される特徴及び特性を含むか、それら特徴及び特性からなるか、又はそれら特徴及び特性から本質的になりうる。「含む/備える(comprise)」という語、又はその文法的変形は、様々に記載された特徴及び特性「からなる」又はそのような特徴及び特性「から本質的になる実施態様を含む。
【0041】
本明細書に含まれている文書、動作、材料、装置、文献などは、本開示内容の関連状況を提供することのみを目的としている。これら事項のいずれか又はすべては、先行技術の基盤の一部を形成する、又は本出願の各請求項の優先日以前に存在して本発明に関する当技術分野において共通の一般知識であったと認めるものではない。
【0042】
化学用語
言うまでもなく、芳香族基は、4m+2πの電子(mは1以上の整数)を有する環状基を意味する。本明細書で使用される「芳香族」は、「アリール」と互換可能に使用されて、芳香族基の原子価に関係なく芳香族基を指す。したがって、アリールは、一価の芳香族基、二価の芳香族基、及びそれよりも多い多価の芳香族基を指す。
【0043】
用語「結合(joined)」は、少なくとも一つの他の環、部分又は基に、単一の共有結合により結合した環、部分又は基に言及している。
【0044】
用語「縮合」は、少なくとも二つの共通の環原子を一又は複数の他の環と共有する一又は複数の環に言及している。
【0045】
ヘテロ芳香族基は、N、O、S、Se、Si又はPといった一又は複数のヘテロ原子を含む芳香族基又は環である。本明細書において使用される場合、「ヘテロ芳香族」は、「ヘテロアリール」と互換可能に使用され、ヘテロアリール基は、一又は複数のヘテロ原子を含む一価の芳香族基、二価の芳香族基及びそれよりも多い多価の芳香族基を指す。
【0046】
用語「置換されていてもよい」とは、いずれかの可能な位置で官能基が置換されているか又は非置換であることを意味する。「非置換」は水素基を指す。置換は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ホルミル、アルカノイル、シクロアルカノイル、アロイル、ヘテロアロイル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロシクリルオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、ヘテロシクリルアミノカルボニル、ヘテロアリールアミノカルボニル、シアノ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルカノエート、シクロアルカノエート、アリーロエート(aryloate)、ヘテロシクリロエート(heterocyclyloate)、ヘテロアリーロエート(heteroaryloate)、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロシクリルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ニトロ、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、アリールチオ、ヘテロシクリルチオ、ヘテロアリールチオ、アルキルスルホニル、シクロアルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロシクリルスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、ヒドロキシル、ハロ、ハロアルキル、ハロアリール、ハロヘテロシクリル、ハロヘテロアリール、ハロアルコキシ、ハロアルキルスルホニル、シリルアルキル、アルケニルシリルアルキル、アルキニルシリルアルキル、アミノ、チオール及びチオニルから選択される一又は複数の官能基によるものでありうる。一実施態様では、任意選択的置換は、ハロ、アルキル、ホルミル、アミノ、チオール及びチオンから選択される一又は複数の官能基である。任意選択的置換基には、官能基の塩、例えばカルボキシレート塩が含まれうる。別の実施態様では、任意選択的置換は、アミノ、チオール及びチオンから選択される一又は複数の官能基である。特に記載されていない他の基も使用できることを理解されたい。
【0047】
単独で、又はアルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ又はハロアルキルといった合成語に使用される「アルキル」は、1から約10の炭素原子又はそれより大きなサイズの直鎖状又は分枝鎖状炭化水素を表す。したがって、アルキル部分は、もっと小さな基に限定されることが明らかでない限り、例えば、1から約6の炭素原子又はそれより大きなサイズの部分、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル及び/又はブチル、ペンチル、ヘキシル、及びそれよりも高次の異性体を含み、これには例えば、約6から約10の炭素原子又はそれより大きなサイズの直鎖状又は分枝鎖状炭化水素が含まれる。
【0048】
単独で、又はアルケニルオキシ又はハロアルケニルといった合成語に使用される「アルケニル」は、少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を含む直鎖状又は分枝鎖状炭化水素を表し、これは、もっと小さな基に限定されることが明らかでない限り、2から約6の炭素原子又はそれより大きなサイズの部分、例えば、メチレン、エチレン、1-プロペニル、2-プロペニル,及び/又はブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、及びより高次の異性体を含み、これには例えば、約6から約10の炭素原子又はそれより大きなサイズの直鎖状又は分枝鎖状炭化水素が含まれる。
【0049】
単独で、又はアルキニルオキシといった合成語に使用される「アルキニル」は、少なくとも一つの炭素-炭素三重結合を含む直鎖状又は分枝鎖状炭化水素を表し、これは、もっと小さな基に限定されることが明らかでない限り、例えば、2から約6の炭素原子又はそれより大きなサイズの部分、例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、及び/又はブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、及びより高次の異性体を含み、これには例えば、約6から約10の炭素原子又はそれより大きなサイズの直鎖状又は分枝鎖状炭化水素が含まれる。
【0050】
「シクロアルキル」は、様々なサイズ、例えば、約3から約10の炭素原子のモノ又はポリ炭素環式環系、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルを表す。シクロアルキルオキシという用語は、シクロペンチルオキシ及びシクロヘキシルオキシといった酸素原子を通して結合した同じ基を表す。シクロアルキルチオという用語は、シクロペンチルチオ及びシクロヘキシルチオといった硫黄原子を通して結合した同じ基を表す。
【0051】
「シクロアルケニル」は、少なくとも一つ炭素-炭素二重結合を含む、例えば約3から約10の炭素原子の、非芳香族のモノ又はポリ炭素環式環系、例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニル又はシクロヘプテニルを表す。用語「シクロアルケニルオキシ」は、シクロヘプテニルオキシ及びシクロヘキセニルオキシといった酸素原子を通して結合した同じ基を表す。用語「シクロアルケニルチオ」は、シクロペンテニルチオ及びシクロヘキセニルチオといった硫黄原子を通して結合した同じ基を表す。
【0052】
用語「炭素環」及び「カルボシクリル」は、例えば約3から約10炭素原子の、環原子がすべて炭素原子である環系を表し、これは芳香族、非芳香族、飽和又は不飽和であってよく、置換されていてもよく、及び/又は縮合した環を有してもよい。このような基の例には、ベンゼン、シクロペンチル、シクロヘキシル、又は完全に若しくは部分的に水素化されたフェニル、ナフチル及びフルオレニルが含まれる。
【0053】
単独で、又はアリールアルキル、アリールオキシ又はアリールチオといった合成語に使用される「アリール」は:(i)例えば、約6から約60炭素原子の、置換されていてもよい単環式又は多環式芳香族炭素環式部分、例えばフェニル、ナフチル又はフルオレニル;或いは,(ii)アリール及びシクロアルキル又はシクロアルケニル基が互いに縮合して、テトラヒドロナフチル、インデニル、インダニル又はフルオレン環といった環状構造を形成している、置換されていてもよい部分的に飽和した多環式炭素環式芳香環系を表わす。
【0054】
単独で、又はヘテロシクリルオキシといった合成語に使用される「ヘテロシクリル」又は「複素環」は:(i)一又は複数のヘテロ原子、例えば窒素、酸素、又は硫黄を含みうる、例えば約3から約60環員の、置換されていてもよいシクロアルキル又はシクロアルケニル基(例にはピロリジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、又は完全に若しくは部分的に水素化されたチエニル、フリル、ピロリル、チアゾリル、オキサゾリル、オキサジニル、チアジニル、ピリジル及びアゼピニルが含まれる);(ii)アリール(又はヘテロアリール)環及び複素環式基が互いに縮合して環状構造を形成している、置換されていてもよい部分的に飽和した多環式環系(例には、クロマニル、ジヒドロベンゾフリル及びインドリニルが含まれる);或いは(iii)一又は複数の架橋を有する、置換されていてもよい完全に又は部分的に飽和した多環式縮合環系(例には、キヌクリジニル及びジヒドロ-1,4-エポキシナフチルが含まれる)を表す。
【0055】
単独で、又はヘテロアリールオキシといった合成語に使用される「ヘテロアリール」又は「ヘタリール」は:(i)環員のうちの一又は複数が炭素以外の元素、例えば窒素、酸素、硫黄又はケイ素である、例えば約1から約10環員の、置換されていてもよい単環式又は多環式芳香族有機部分;炭素環式環構造を中断し、芳香族特性を提供するために十分な数の非局在化したパイ電子を有するヘテロ原子(但し、環は隣接する酸素及び/又は硫黄原子を含まない)を表す。典型的な6員のヘテロアリール基は、ピラジニル、ピリダジニル、ピラゾリル、ピリジル及びピリミジニルである。すべての位置異性体、例えば、2-ピリジル、3-ピリジル及び4-ピリジルが考慮される。典型的な5員のヘテロアリール環は、フリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、ピロリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、及びシロールである。すべての位置異性体、例えば、2-チエニル及び3-チエニルが考慮される。二環式基は、典型的には上に挙げたヘテロアリール基に由来するベンゾ縮合環系、例えば、ベンゾフリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、インドリル、インドリジニル、イソキノリル、キナゾリニル、キノリル及びベンゾチエニルであるか;又は,(ii)ヘテロアリール及びシクロアルキル又はシクロアルケニル基が互いに縮合してテトラヒドロキノリル又はピリンジニル(pyrindinyl)環といった環状構造を形成している、置換されていてもよい部分的に飽和した多環式ヘテロアリール環系である。
【0056】
「ホルミル」は、-CHO部分を表す。
【0057】
「アルカノイル」は、アルキル基が上掲に規定された通りである、-C(=O)-アルキル基を表す。一実施態様では、アルカノイルは、約C-C20のサイズにわたる。一例はアシルである。
【0058】
「アロイル」は、アリール基が上掲に規定された通りである、-C(=O)-アリール基を表す。一実施態様では、アロイルは、約C-C20のサイズにわたる。例には、ベンゾイル及び1-ナフトイル及び2-ナフトイルが含まれる。
【0059】
「ヘテロシクロイル」は、ヘテロシリック基(heterocylic group)が上掲に規定された通りである、-C(=O)-ヘテロシクリル基を表す。一実施態様では、ヘテロシクロイルは、約C-C20のサイズにわたる。
【0060】
「ヘテロアロイル」は、ヘテロアリール基が上掲に規定された通りである、-C(=O)-ヘテロアリール基を表す。一実施態様では、ヘテロアロイルは、約C-C20のサイズにわたる。一例はピリジルカルボニルである。
【0061】
「カルボキシル」は、-COH部分を表す。
【0062】
「オキシカルボニル」は、カルボン酸エステル基-CORを表す。
【0063】
「アルコキシカルボニル」は、アルキル基が上掲に規定された通りである-CO-アルキル基を表す。一実施態様では、アルコキシカルボニルは、約C-C20のサイズにわたる。例には、メトキシカルボニル及びエトキシカルボニルが含まれる。
【0064】
「アリールオキシカルボニル」は、アリール基が上掲に規定された通りである-CO-アリール基を表す。例には、フェノキシカルボニル及びナフトキシカルボニルが含まれる。
【0065】
「ヘテロシクリルオキシカルボニル」は、複素環式基が上掲に規定された通りである-CO-ヘテロシクリル基を表す。
【0066】
「ヘテロアリールオキシカルボニル」は、ヘテロアリール基が上掲に規定された通りである-CO-ヘテロアリール基を表す。
【0067】
「アミノカルボニル」は、カルボン酸アミド基-C(=O)NHR又は-C(=O)NRを表す。
【0068】
「アルキルアミノカルボニル」は、Rが上掲に規定されたアルキル基である-C(=O)NHR又は--C(=O)NR基を表す。
【0069】
「アリールアミノカルボニル」は、Rが上掲に規定されたアリール基である-C(=O)NHR又は-C(=O)NR基を表す。
【0070】
「ヘテロシクリルアミノカルボニル」は、Rが上掲に規定された複素環式基である-C(=O)NHR又は-C(=O)NR基を表す。特定の実施態様では、NRは、置換されていてもよい複素環式環である。
【0071】
「ヘテロアリールアミノカルボニル」は、Rが上掲に規定されたヘテロアリール基である-C(=O)NHR又は-C(=O)NR基を表す。特定の実施態様では、NRは、置換されていてもよいヘテロアリール環である。
【0072】
「シアノ」は、-CN部分を表す。
【0073】
「ヒドロキシ」は、-OH部分を表す。
【0074】
「アルコキシ」は、アルキル基が上掲に規定された通りである-O-アルキル基を表す。例には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、及び様々なブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ及び高次の異性体が含まれる。
【0075】
「アリールオキシ」は、アリール基が上掲に規定された通りである-O-アリール基を表す。例には、限定されないが、フェノキシ及びナフトキシが含まれる。
【0076】
「アルケニルオキシ」は、アルケニル基が上掲に規定された通りである-O-アルケニル基を表す。一例はアリルオキシである。
【0077】
「ヘテロシクリルオキシ」は、複素環式基が上掲に規定された通りである-O-ヘテロシクリル基を表す。
【0078】
「ヘテロアリールオキシ」は、ヘテロアリール基が上掲に規定された通りである-O-ヘテロアリール基を表す。一例はピリジルオキシである。
【0079】
「アルカノエート」は、Rが上掲に規定されたアルキル基である-OC(=O)-R基を表す。
【0080】
「アリーロエート(aryloate)」は、Rが上掲に規定されたアリール基である-OC(=O)-R基を表す。
【0081】
「ヘテロシクリロエート(heterocyclyloate)」は、Rが上掲に規定された複素環式基である-OC(=O)--R基を表す。
【0082】
「ヘテロアリーロエート(heteroaryloate)」は、Pが上掲に規定されたヘテロアリール基である-OC(=O)-R基を表す。
【0083】
「アミノ」は、-NH部分を表す。
【0084】
「アルキルアミノ」は、Rが上掲に規定されたアルキル基である-NHR又は-NR基を表す。例には、限定されないが、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、及び様々なブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ及び高次の異性体が含まれる。
【0085】
「アリールアミノ」は、Rが上掲に規定されたアリール基である-NHR又は-NR基を表す。一例はフェニルアミノである。
【0086】
「ヘテロシクリルアミノ」は、Rが上掲に規定された複素環式基である-NHR又は-NR基を表す。特定の実施態様では、NRは、置換されていてもよい複素環式環である。
【0087】
「ヘテロアリールアミノ」は、Rが上掲に規定されたヘテロアリール基である-NHR又は--NR基を表す。特定の実施態様では、NRは、置換されていてもよいヘテロアリール環である。
【0088】
「カルボニルアミノ」は、窒素原子を通して分子の残りに結合するカルボン酸アミド基-NHC(=O)Rを表す。
【0089】
「アルキルカルボニルアミノ」は、Rが上掲に規定されたアルキル基である-NHC(=O)R基を表す。
【0090】
「アリールカルボニルアミノ」は、Rが上掲に規定されたアリール基である-NHC(=O)R基を表す。
【0091】
「ヘテロシクリルカルボニルアミノ」は、Rが上掲に規定された複素環式基である-NHC(=O)R基を表す。
【0092】
「ヘテロアリールカルボニルアミノ」は、Rが上掲に規定されたヘテロアリール基である-NHC(=O)R基を表す。
【0093】
「ニトロ」は-NO部分を表す。
【0094】
「アルキルチオ」は、アルキル基が上掲に規定された通りである-S-アルキル基を表す。例には、限定されないが、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、イソプロピルチオ、及び様々なブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ及び高次の異性体が含まれる。
【0095】
「アリールチオ」は、アリール基が上掲に規定された通りである-S-アリール基を表す。例には、フェニルチオ及びナフチルチオが含まれる。
【0096】
「ヘテロシクリルチオ」は、複素環式基が上掲に規定された通りである-S-ヘテロシクリル基を表す。
【0097】
「ヘテロアリールチオ」は、ヘテロアリール基が上掲に規定された通りである-S-ヘテロアリール基を表す。
【0098】
「スルホニル」は、硫黄原子を通して分子の残りに結合する-SOR基を表す。
【0099】
「アルキルスルホニル」は、アルキル基が上掲に規定された通りである-SO-アルキル基を表す。
【0100】
「アリールスルホニル」は、アリール基が上掲に規定された通りである-SO-アリール基を表す。
【0101】
「ヘテロシクリルスルホニル」は、複素環式基が上掲に規定された通りである-SO-ヘテロシクリル基を表す。
【0102】
「ヘテロアリールスルホニル」は、ヘテロアリール基が上掲に規定された通りである-SO-ヘテロアリール基を表す。
【0103】
「アルデヒド」は、-C(=O)H基を表す。
【0104】
「アルカナール」は、アルキル基が上掲に規定された通りであるアルキル-(C=O)H基を表す。
【0105】
「アルキルシリル」は、各アルキル基が上掲に規定された通りである三つ以下の独立して選択されたアルキル基で置換されていてもよい、ケイ素原子を通して分子の残りに結合するアルキル基を表す。
【0106】
「アルケニルシリル」は、各アルケニル基が上掲に規定された通りである三つ以下の独立して選択されたアルケニル基で置換されていてもよい、ケイ素原子を通して分子の残りに結合するアルケニル基を示す。
【0107】
「アルキニルシリル」は、各アルキニル基が上掲に規定された通りである三つ以下の独立して選択されたアルキニル基で置換されていてもよい、ケイ素原子を通して分子の残りの部分に結合するアルキニル基を示す。
【0108】
単独で、又はハロアルキル、ハロアルコキシ若しくはハロアルキルスルホニルといった合成語に使用される用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を表す。さらに、ハロアルキル、ハロアルコキシ又はハロアルキルスルホニルといった合成語に使用されるとき、アルキルは、部分的にハロゲン化されていてもよく、又は独立して同じでも異なっていてもよいハロゲン原子で完全に置換されていてもよい。ハロアルキルの例には、限定されないが、-CHCHF、-CFCF及び-CHCHFClが含まれる。ハロアルコキシの例には、限定されないが、-OCHF、-OCF、-OCHCCl、-OCHCF及び-OCHCHCFが含まれる。ハロアルキルスルホニルの例には、限定されないが、-SOCF、-SOCCl、-SOCHCF及び-SOCFCFが含まれる。
【0109】
用語「チオール」、「チオ」、「メルカプト」又は「メルカプタン」は、スルフヒドリル部分-SHを含むいずれかの有機硫黄基を指し、これには、Rが-SH部分への共有結合のための炭素原子を含む部分であるR-SH基、例えば上掲に規定されたアルキル硫黄基が含まれる。一実施態様では、チオール又はメルカプト基はスルフヒドリル部分-SHである。
【0110】
用語「チオン」、「チオケトン」又は「チオカルボニル」は、-C=S部分を含むいずれかの有機硫黄基を指し、これには、例えばRが上掲に規定されたアルキ(alky)基であるR-C=S基が含まれる。一実施態様では、チオン基は-C=S部分である。
【0111】
金属有機構造体
驚くべきことに、金属有機構造体(MOF)が、基板、例えば金属基板の有効な腐食抑制剤として同定された。MOFは、エポキシ樹脂系組成物といった組成物中の他の構成要素との反応に問題を乗じることなく、保護コーティング組成物に使用することができる。驚くべきことに、MOFは、アルミニウム合金といった金属基板の保護コーティングを提供するために、樹脂系塗料組成物における腐食抑制剤として使用することができる。様々な種類のMOFがこれまでに調査され、水素吸蔵及び触媒といった他の種類の用途に使用されてきたが、MOFは、腐食抑制剤として使用されたことも、適切であると考えられたこともないことに注意されたい。
【0112】
一実施態様では、基板は金属基板である。金属基板が、その表面の少なくとも一部が金属であるあらゆる基板材料を含みうることが理解できよう。金属基板は、腐食からの保護を必要とするあらゆる金属を含みうる。一実施態様では、金属基板は、アルミニウム、例えばアルミニウム合金から選択される金属又は合金を含む。一実施態様では、金属基板は、アルミニウム合金、例えば、銅、マグネシウム、マンガン、ケイ素、スズ及び亜鉛からなる群より選択される一又は複数の金属を含むアルミニウムの合金である。アルミニウム合金は、銅を含む合金でもよい。一実施態様では、金属基板は、銅リッチ合金、例えば銅リッチアルミニウム合金である。アルミニウム合金は、航空宇宙用合金、例えばAA2XXX及びAA7XXXの種類とすることができる。アルミニウム合金は、自動車用合金、例えばAA6XXXの種類とすることもできる。アルミニウム合金は、船舶用合金、例えばAA5XXX種類とすることもできる。
【0113】
さらには、MOFが、各々が一又は複数の有機リガンドに配位した複数の金属イオン又は金属クラスターを含む有機金属ポリマー構造体により提供される一次元、二次元、又は三次元構造であることが理解されよう。MOFは、複数の孔を有する多孔性構造を提供することができる。MOFは、結晶性でも非晶性でもよく、例えば一次元、二次元、又は三次元MOF構造は非晶性でも結晶性でもよいことが理解されよう。金属クラスターが、金属-金属結合により部分的に結合した二つ以上の金属イオンを含むことが理解されよう。また、一次元構造が、例えば、有機リガンドによって結合した金属原子の直鎖状構造を含むことが理解されよう。二次元構造が、例えば、有機リガンドによって結合した金属原子の長さ及び幅(例えば面積)の寸法を有するシート又は層構造を含むことが理解されよう。また、三次元構造が、例えば、有機リガンドによって結合した金属原子の長さ、幅及び高さ(例えば体積)の寸法を有する球又は立方体構造を含むことが理解されよう。一次元、二次元、又は三次元MOF構造は、少なくとも部分的に非晶性であるか又は少なくとも部分的に結晶性であり、例えばMOFは、ある程度の結晶度を提供する秩序ある領域と、非晶性特性を提供する無秩序な領域とを有する。一実施態様では、提供されるMOFは、二次元及び/又は三次元構造である。一実施態様では、MOFは、結晶性であり、例えば適度な均一性を含む。別の実施態様では、MOFは、例えば、文献”Amorphous Metal?Organic Frameworks”, Bennett et al, Accounts of Chemical Research, ACS publications, published 7 April 2014に記載されているように、非晶性でありる。結晶性MOFが、有機リンカーによって接続された金属ノードの無限アレイを含む多孔性構造体であることが理解されよう。非晶性MOFは、依然としてその結晶性対応物の基礎的なビルディングブロック及び接続性を保持しているが、長い距離にわたる周期的秩序は有さない。
【0114】
MOFの有機リガンドは、典型的には、一又は複数の置換基又は基で置換されていてもよく、それらと縮合していてもよい複素環式化合物から選択される。金属有機構造体には、有機リガンドに加えて、金属又は金属クラスターを有する他のリガンドを組み込むことができることが理解されよう。例えば、アセテート又はハライドなどのアニオンが、追加のリガンドを提供し、例えば、MOFを形成するために使用される金属塩から生じうる。
【0115】
別の実施態様では、MOFは、各々が一又は複数の有機リガンドに配位した複数の金属イオン又は金属クラスターを含み:
金属イオン又は金属クラスターは、アルカリ土類金属、希土類金属及び遷移金属から選択される一又は複数の金属を含み;
有機リガンドは、置換されていてもよく、縮合していてもよい、アリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物から選択される。
【0116】
MOFの一又は複数の有機リガンドは、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物から選択されうる。一実施態様では、一又は複数の有機リガンドは、N、O及びSから選択される少なくとも二つのヘテロ原子を含む置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物から選択される。別の実施態様では、一又は複数の有機リガンドは、少なくとも一つの環外硫黄基を含む置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物から選択される。環外硫黄基は、チオール及びチオン基から選択されうる。別の実施態様では、有機リガンドは、チオール及びチオンから選択される少なくとも一つの環外硫黄基を含む、置換されていてもよく、縮合していてもよい、5又は6員の単環式又は二環式アリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物から選択される。別の実施態様では、少なくとも一つの環外硫黄基はチオールである。
【0117】
一定の範囲にわたる様々な種類のMOFが、腐食抑制剤として適切でありうる。MOFは、多孔性配位ポリマー(PCP)とも呼ばれる。MOFの範囲は、Chemical Reviews article by A Betard and R Fischer entitled ”Metal-Organic Framework Thin Films: From Fundamentals to Applications” (2012) and Yaghi et al, Acc. Chem. Res. 2001, 34,319-330に記載されている。例えば、適切なMOFは、ゼオライト網様トポロジー、即ちゼオライト網様金属有機構造体(ZMOF)を有するものから選択することができる。一実施態様では、MOFは、ゼオライト様トポロジーを有するイミダゾレート構造体(ZIF)である。MOFは、構造体に等網状の拡張を有しうる。MOFは、キレート化(及びヘテロキレート化)を含み且つ有機複素環式リガンドから架橋する配位を有する単一の金属イオンベースの分子ビルディングブロック(MBB)を利用し、これは、配位及び架橋機能を含み、一緒に二次ビルディングユニット(SBU)を形成しうる。複数のSBUが一緒に金属有機構造体を形成し、これは三次元多孔性構造に実質的に均一なチャネル及びケージを提供することができる。MOFは、典型的には、金属塩、有機リガンド及び適切な溶媒を含む反応から凝固した粒子として形成される。これについては以下でさらに記載する。
【0118】
一実施態様では、金属-リガンド指向アセンブリ手法を用いて、強固な四面体のSBUといった強固な二次ビルディングユニット(SBU)を有するMOFを形成することができる。MOFの孔サイズといった特性は、適切な試薬の選択、例えば様々な金属カチオン及び対アニオン、様々な有機複素環式リガンド、溶媒及び構造指向剤(SDA)を含めるための様々な金属塩の選択により、調節することができる。
【0119】
別の実施態様では、MOFは、一又は複数の有機リガンドと共に、ネットワークへと互いに接続し合う二次ビルディングユニット(SBU)を形成する一の金属クラスターをそれぞれが有する、複数の分子ビルディングブロック(MBB)を含む。一の構造体へと構成及び接続されるSBUは、「ネット」とも呼ばれるトポロジーによって説明される。これには通常、Reticular Chemistry Structure Resourceのデータベースに提供された、三文字の記号が割り当てられる(例えば「pcuネット」)。MOFは、構造体の頂部である単一の金属に基づいていてよい。
【0120】
MOFは、薬剤を用いたシーディングによっても形成することができる。例えば、ケイ素及びチタニアのナノ粒子又はミクロスフェアが、シーティング剤として使用される。シーディング又は結晶化薬剤を用いてMOFを形成する方法は、国際公開第2011/133999号(PCT/AU2010/001056)に記載されている。
【0121】
MOFは例えば、文献”Versatile, High Quality and Scalable Continuous Flow Production of Metal-Organic Frameworks”, Rubio-Martinez et al, Scientific Reports, published online 25 June 2014に記載されているようなフローケミストリープロセスによっても形成されうる。
【0122】
MOFは、合成後処理によって調節されてもよい。例えば、混合金属又は代替的ゲスト分子の形成。MOFは、形成してからリガンド交換プロセスを用いて調節してもよい。リガンド交換プロセスを用いてMOFを形成する方法は、文献”Postsynthetic ligand exchange for the synthesis of benzotriazole-containing zeolitic imidazolate framework”, Jiang et al, Chem. Commun, published online 2 March 2015に記載されている。
【0123】
MOFは、組成物中の分散体に適した固体粒子として形成することができる。一実施態様では、MOF粒子の平均径は、20nmから50μm、40nmから30μm、60nmから10μm、80nmから5μm、又は100nmから1μmの範囲である。一実施態様では、MOF粒子の平均径は、100nmから1μmの範囲である。
【0124】
MOFに使用される金属及び金属塩
MOFの金属又は金属クラスターは、一般に、希土類金属及び遷移金属から選択される一又は複数の金属を含む。一実施態様では、金属は、アルカリ土類金属、遷移金属及び希土類金属、例えばZn、La、Pr、Ce、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Co、Y、Bi、Cd、Pb、Ag、Sb、Sn、Cu、Fe、Ni、Li、Ca、Sr、Mg、Zr、Nd、Ba、Sc、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施態様では、金属は、Zn、Pr及びCeから選択される。MOFの金属又は金属クラスターは、一般に、配位構造体に単一種の金属を含む。別の実施態様では、金属又は金属クラスターは、配位構造体に混合金属系を含み、例えば金属又は金属クラスターは、二つの異なる金属を含み。
【0125】
MOFのための使用に適した金属塩のいくつかの特定の実施例は、上記金属の硝酸塩、塩化物及び酢酸塩である。
【0126】
有機リガンド
MOFは、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、又は複素環式化合物から選択される有機リガンドを含むことができる。
【0127】
有機リガンドは、MOFの金属原子に配位又はキレート化することのできる一価又は多価のリガンドでありうる。例えば有機リガンドは、一価、二価、三価、四価、五価、又は六価のリガンドとすることができる。一実施態様では、有機リガンドは、MOFの二つの別個の金属原子にキレート化又は配位することができ、したがって金属有機構造体の金属原子間に架橋又は結合を提供することができる。MOFの二次ビルディングユニットの場合、有機リガンド:金属原子の比率は変動してよく、例えば比率はそれぞれ3:1である(例えば三つの別個の二座の有機リガンドが金属原子に配位して二次ビルディングユニットとしての6配位金属錯体を形成する場合)。有機リガンド:金属の比率は変動してよく、例えば比率は、SBUを形成する金属錯体のそれぞれ金属原子及び有機リガンドに応じて、2:1、3:1、4:1、5:1又は6:1でありうる。
【0128】
MOFの一又は複数の有機リガンドは、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物から選択されうる。一実施態様では、一又は複数の有機リガンドは、N、O及びSから選択される少なくとも二つのヘテロ原子を含む置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物から選択される。別の実施態様では、一又は複数の有機リガンドは、少なくとも一つの環外硫黄基を含む置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物から選択される。環外硫黄基は、チオール及びチオン基から選択されうる。別の実施態様では、有機リガンドは、チオール及びチオンから選択される少なくとも一つの環外硫黄基を含む、置換されていてもよく、縮合していてもよい、5又は6員の単環式又は二環式アリール、ヘテロアリール又は複素環式化合物から選択される。別の実施態様では、少なくとも一つの環外硫黄基はチオールである。
【0129】
例えば、MOFに使用される有機リガンドは、文献”The effect of inhibitor structure on the corrosion of AA2024 and AA7075”, Harvey et al. Corrosion Science, 53 (2011), pp2184-2190に記載されているような、独立して腐食抑制特性を提供することのできるリガンドから選択される。
【0130】
別の実施態様では、一又は複数の有機リガンドは、式1:
[式中、
Aは、一又は複数の置換基で置換されていてもよく、且つ一又は複数のアリール又はヘテロアリール環と縮合していてもよい、5又は6員のアリール、ヘテロアリール又は複素環式環であり、点線は一又は複数の任意の二重結合を表し;
は、N、NR、O、S、CR及びCRからなる群より選択され;
は、N、NR、O、S、CR及びCRからなる群より選択され;
は、N、NR、CR10及びCR1112からなる群より選択され;
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、アミノ、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよく;
、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素、ハロ、アミノ、チオール、チオン、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよい]
の化合物から選択される。
【0131】
一実施態様では、Xは、N、NR、O、及びSからなる群より選択される。別の実施態様では、Xは、N、NH及びSからなる群より選択される。別の実施態様では、XはNである。
【0132】
一実施態様では、Xは、N及びCR10からなる群より選択される。別の実施態様では、R10は、チオール及びチオンからなる群より選択される。別の実施態様では、XはC-SHである。
【0133】
一実施態様では、Xは、N、NR、O、及びSからなる群より選択される。別の実施態様では、Rは、水素及びアミノからなる群より選択される。別の実施態様では、Xは、N、S及びN-NHからなる群より選択される。別の実施態様では、XはNである。
【0134】
一実施態様では、Xは、N、NR、O、及びSからなる群より選択され;Xは、N、NR、O、及びSからなる群より選択され;Xは、N及びCR10からなる群より選択される。別の実施態様では、Xは、N、NH及びSからなる群より選択される。別の実施態様では、R10は、チオール及びチオンからなる群より選択される。別の実施態様では、XはC-SHである。
【0135】
別の実施態様では、XはNである。別の実施態様では、XはNである。別の実施態様では、XはC-SHである。
【0136】
環Aの任意の縮合基は、単環式でも多環式でもよい。A環の任意の縮合基は、例えば式1の化合物が二環式化合物である場合、置換されていてもよい単環式又は二環式アリール、ヘテロアリール又は複素環式環でありうる。単環式アリール基は、置換されていてもよい6員環、例えばベンゼンでありうる。多環式アリール基は、二つ以上の置換されていてもよい互いに縮合した6員環、例えばナフタレン、アントラセン、ピレン、テトラセン、及びペンタセンでありうる。ヘテロアリール基は、5員の単環式環、例えばチオフェン、フラン、ピロール、シロール、イミダゾール、1,3-チアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、又は6員環、例えばピリジン及びトリアジンから選択することができ、各環は置換されていてもよい。
【0137】
環Aの任意の置換基は、ハロ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、アルカン酸、アルカノエート塩、カルバモイル、C-C10アルキルオキシカルボニル、C-C10アルキル、C-C10ハロアルキル、C-C10アルキルアミノ、C-C10シクロアルキル、C-C10アルケニル、C-C10シクロアルケニル、C-C10アルキニル、C-C10シクロアルキニル、アリール及びアリールC-C10アルキル、ヘテロアリール及びヘテロアリールC-C10アルキル、C-C10アルキルオキシ、C-C10シクロアルキルオキシから選択することができ、ここで各発生におけるアミノ、アルカン酸、アルカン塩、アルキルオキシカルボニル、アルキル、ハロアルキル、アルキルアミノ、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルオキシ及びシクロアルキルオキシは置換されていてもよく、例えばさらにハロ、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、カルボン酸のうちの一又は複数で置換されていてもよい。一実施態様では、任意の置換は、ハロ、アルキル、ホルミル、アミノ、チオール及びチオンから選択される一又は複数の官能基である。任意の置換基は、官能基の塩、例えばカルボキシレート塩を含みうる。別の実施態様では、任意の置換は、アミノ、チオール及びチオンから選択される一又は複数の官能基である。
【0138】
別の実施態様では、MOFの一又は複数の有機リガンドは、式1(a):
[式中、
Aは、一又は複数の置換基で置換されていてもよく、且つ一又は複数のアリール又はヘテロアリール環と縮合していてもよい、5又は6員のアリール、ヘテロアリール又は複素環式環であり、点線は一又は複数の任意の二重結合を表し;
は、S又はSHから選択され、点線は、YがSであるとき二重結合を表すか、又はYがSHであるときには存在せず;
は、N、NH、O、及びSからなる群より選択され;
は、N、NR、O、S、CR及びCRからなる群より選択され;
は、水素、アミノ、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよく;
、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロ、アミノ、チオール、チオン、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよい]
の化合物から選択することができる。
【0139】
一実施態様では、YはSHである。別の実施態様では、Xは、N、NH、及びSからなる群より選択される。別の実施態様では、Xは、N及びSからなる群より選択される。別の実施態様では、X及びXは、それぞれ独立してS、N及びNHからなる群より選択される。
【0140】
別の実施態様では、XはNである。別の実施態様では、XはNである。別の実施態様では、YはSHである。
【0141】
環Aは、芳香族、ヘテロ芳香族又は部分的に不飽和でありうる。例えば、環Aは、環原子間に一又は複数の二重結合を含む。環Aは、一又は複数の任意の置換基及び任意の縮合基も含みうる。別の実施態様では、Aは5又は6員のヘテロアリール又は複素環式環である。
【0142】
別の実施態様では、MOFの一又は複数の有機リガンドは、式1(a)(i):
[式中、
A、Y、X及びXは上記の式1(a)によって規定され;
、A及びAはそれぞれ独立してC=O、C=S、N、NR13、O、S、SO、CR14、CR1516からなる群より選択され;
13は、水素、アミノ、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよく;
14、R15及びR16は、それぞれ独立して、水素、ハロ、アミノ、チオール、チオン、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよく、任意でR13、R14、R15及びR16のうちの二つが互いに結合して、A環に縮合した置換されていてもよいアリール又はヘテロアリール環を形成する]
の複素環式化合物から選択することができる。
【0143】
一実施態様では、A及びAはCR14である。別の実施態様では、R14はアミノ及びチオールから選択される。別の実施態様では、A及びAはそれぞれ独立してC-SH及びC-NHから選択される。別の実施態様では、A及びAはC-SHである。別の実施態様では、YはSHである。別の実施態様では、X及びXはNであり、別の実施態様では、AはNである。
【0144】
式1(a)(i)の化合物のいくつかの特定の実施例が、以下のように提供される。
【0145】
別の実施態様では、MOFの一又は複数の有機リガンドは、式1(a)(ii):
[式中、
A環は、置換されていてもよい5員の複素環式環であり、点線は、一又は複数の任意の二重結合を表し;
、X及びYは上記の式1(a)によって規定され;
及びAは、それぞれ独立してC=O、C=S、N、NR13、O、S、SO、CR14及びCR1516からなる群より選択され;任意で互いに結合し、A環に縮合した置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式環Jを形成し;
13は、水素、アミノ、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよく;
14、R15及びR16は、それぞれ独立して、水素、ハロ、アミノ、チオール、チオン、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよく、任意でR13、R14、R15及びR16のうちの二つが互いに結合し、A環に縮合した置換されていてもよいアリール又はヘテロアリール環を形成する]
の化合物から選択することができる。
【0146】
式1(a)(ii)の化合物のいくつかの特定の実施例が、以下のように提供される。
【0147】
別の実施態様では、MOFの一又は複数の有機リガンドは、式1(a)(iii):
[式中、
各A及びB環は、独立した置換されていてもよい5員の複素環式環であり、点線は、一又は複数の任意の二重結合を表し;
各X、X及びYは、それぞれ独立して上記の式1(a)によって規定され;
各A、A、B及びBは、C=O、C=S、N、NR13、O、S、SO、CR14及びCR1516からなる群より独立して選択され;
13は、水素、アミノ、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよく;
14、R15及びR16は、それぞれ独立して、水素、ハロ、アミノ、チオール、チオン、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよく;
Zは、C=O、C=S、N、O、S、SO、S-S、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニルからなる群より選択され;
少なくとも一つのA又はA及びB又はBは、NR13、CR14及びCR1516からなる群より選択され、R13、R14、R15及びR16のうちの少なくとも一つはZへの結合を表す]
の化合物から選択することができる。
【0148】
式1(a)(iiI)の化合物のいくつかの特定の実施例が、以下のように提供される。
【0149】
別の実施態様では、MOFの一又は複数の有機リガンドは、式1(b):
[式中、
A環は、置換されていてもよい5員の複素環式環であり、点線は、一又は複数の任意の二重結合を表し;
、X及びXは上記の式1によって規定され;
及びAは、それぞれ独立してC=O、C=S、N、NR13、O、S、SO、CR14及びCR1516からなる群より選択され;任意で互いに結合し、A環に縮合した置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環式環Jを形成し;
13は、水素、アミノ、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよく;
14、R15及びR16は、それぞれ独立して、水素、ハロ、アミノ、チオール、チオン、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択され、各アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基は置換されていてもよく、任意でR13、R14、R15及びR16のうちの二つが互いに結合し、A環に縮合した置換されていてもよいアリール又はヘテロアリール環を形成する]
の複素環式化合物から選択することができる。
【0150】
式1の上記実施態様のいずれもが、式1(a)(i)-(iii)又は式1(b)のいずれの実施態様も提供しうることが理解されよう。
【0151】
有機リガンド化合物は、一又は複数の立体異性体として存在しうる。様々な立体異性体は、鏡像異性体、ジアステレオマー及び幾何異性体を含むことができる。当業者であれば、一の立体異性体が他の立体異性体より大きな活性を有しうることが分かるであろう。加えて、当業者であれば、そのような立体異性体を分離する方法を知っているであろう。したがって、本発明は、本明細書に記載される化合物の混合物、個々の立体異性体、及び任意で活性混合物を含む。
MOFのための有機リガンドとして適しているアリール、ヘテロアリール、及び複素環式有機化合物のいくつかの特定の実施例が、以下の表1に示される。
【0152】
【0153】
MOFの調製方法
MOF合成の主な目標は、有機リンカーを分解させずに規定された無機ビルディングブロックを導く合成条件を確立することである。同時に、結晶化の反応速度は、所望の位相の核生成及び成長を可能にするために適切なものでなければならない。
【0154】
従来式の合成という表現は、通常、反応の並列化なしでの従来式の電気加熱により実施される反応に適用される。反応温度は、MOFの合成における主なパラメータのうちの一つであり、使用されなければならない反応設定の種類を規定する、二つの温度範囲、即ち溶媒熱合成と非溶媒熱合成が通常区別される。溶媒熱合成反応の一般的な定義は確立されていないものの、本発明者らは、Rabenauによるもの、即ち、溶媒の沸点を上回る温度で自発生圧力下で閉じた容器内で起こる反応を用いる。したがって、非溶媒熱合成反応は、沸点以下で雰囲気圧力下で起こり、これは合成要件を単純化する。後者の反応は、室温での反応又は高温で起こる反応としてさらに分類することができる。
【0155】
いくつかの卓越したMOFは、室温で出発物質を混合するだけで得られた;これらは、例えば、MOF-5、MOF-74、MOF-177、HKUST-1又はZIF-8である。この方法は、直接沈殿反応と呼ばれることがあり、いくつかのMOFの結晶化が短時間で起こらなければならないことを示す。これらMOFのいくつか、例えばZIF-8は、良好な熱及び化学安定性を示す。反応温度の変化は、生成物の形成に強い影響を有し、多くの場合、温度が高い程濃度/密度の高い構造が観察される。反応温度の上昇も、特に運動学的にさらに不活性なイオンが使用される場合、いくつかの系において適切な結晶度及び反応率を得るために必要である。それでもまた、温度は結晶の形態に強い影響を有することができ、長い反応時間はMOFの分解を招きうる。
【0156】
通常、MOF合成は、溶媒中で、室温から約250℃にわたる温度で起こる。通常、エネルギーは従来の電気加熱を使用して導入され、即ち、熱は熱源のオーブンから、対流により運ばれる。代替的に、エネルギーは、他の手段によって、例えば電位、電磁照射、機械的な波(超音波)により、又は機械的に、導入することもできる。エネルギー源は、系に導入される1分子当たりの持続時間、圧力、及びエネルギーに密接に関連しており、これらパラメータの各々は、形成される生成物及びその形態に強い影響を有しうる。
【0157】
様々な方法により、他の方法では得られない新規化合物を導くことができる。さらに、代替的ルートにより、様々な粒径及びサイズ分布と、材料の特性に影響を与えることのできる形態を有する化合物を導くことができる。
【0158】
国際公開第2010058123号及びEP1070538は、MOFの水熱調製のための方法を開示している。同様に、国際公開第20100076220号は、高温において液相の結晶性多孔性金属有機化合物を得るための方法を開示している。
【0159】
穏やかな条件を用いたより短い反応時間がEP1373277に開示されている。この文献には、良好な収率で亜鉛テレフタレート構造体を水熱調製するための方法が記載されており、この方法は、亜鉛塩とテレフタル酸との混合物の反応を含む。この方法は、塩基(トリエチルアミン)及びラクタム又はラクトン溶媒の存在を必要とする。しかしながら、他の方法に対して反応時間が短縮されたとしても、少量のMOF生成物を得るために、少なくとも3時間の継続的撹拌が必要である。
【0160】
加えて、すべての既知の調製プロセスは、最終的なMOF生成物を得るために、得られたMOF結晶を母液から分離し、さらに乾燥させることを必要とする。
【0161】
得られたMOFの合成方法は、溶媒熱合成条件を利用することができる。この方法は、一般に、有機溶媒の存在下で高温(130℃以下又は130℃を上回る温度)で比較的長時間にわたって(12時間から数日)実施される合成を提供する。一連のMOF材料の合成に関する一般情報は、Yaghi et al., Nature 402 (1999) 276-279; B. Chen, M. Eddaoudi, Yaghi et al. Science 291 (2001) 1021-1023; Yaghi et al, Science 295 (2002) 469-472; Yaghi et al., Nature 423 (2003) 705-714; Yaghi et al., Science 300 (2003) 1127-1129を含む複数の文献に報告されている。
【0162】
米国特許出願公開第2003/0004364号に記載されている合成手順は、[ZnO]6+コアの前駆体としての無機亜鉛塩[Ζn(ΝO・6ΗO]及び溶媒に溶解される有機リンカーとしてのダイトピックカルボキシレート酸の使用を含む。生成物は次いで、希釈された基礎液を反応後混合物溶液中にゆっくりと拡散させて結晶化を開始させることにより、又は溶液を閉じた容器に移して所定の高温に加熱することにより(溶媒熱合成法)結晶化される。
【0163】
別の方法(Huang, L.; Wang, H.; Chen, J.; Wang, Z.; Sun, J.; Zhao, D.; Yan, Y. Microporous Mesoporous Mater. 2003, 58, 105)は、有機溶媒中に[Ζn(ΝO・6ΗO]、対応するダイトピックカルボキシレート酸及びアミンを使用し、このような混合物を数l時間にわたって室温で撹拌することを含みうる。代替的に、亜鉛塩Zn(CHCOO)・2HO を[ZnO]6+コアの前駆体として使用してもよい。(D. J. Tranchemontagne, J. R. Hunt, O. M. Yaghi, Tetrahedron, 2008, 64, 8553)。
【0164】
上述のように、MOFは、例えばケイ素及びチタニアのナノ粒子又はミクロスフェアを用いて、フローケミストリープロセス(“Versatile, High Quality and Scalable Continuous Flow Production of Metal-Organic Frameworks”, Rubio-Martinez et al, Scientific Reports, published online 25 June 2014)によって形成された薬剤によるシーディングにより形成されてもよく(国際公開第2011/133999号、PCT/AU2010/001056)、又は例えばリガンド交換プロセス(“Postsynthetic ligand exchange for the synthesis of benzotriazole-containing zeolitic imidazolate framework”, Jiang et al, Chem. Commun, published online 2 March 2015)を用いる合成後処理により調節されてもよい。
【0165】
組成物及び製剤
金属有機構造体(MOF)から選択される少なくとも一つの腐食抑制剤を含む腐食抑制組成物が提供される。MOFは、本明細書に記載されるいずれか一又は複数のMOFとすることができる。組成物は、金属基板などの様々な基板に使用及び適用するために適しており、例えばコーティング組成物として提供することができる。組成物は、ある種の基板との特定の使用に適した一又は複数の他の添加剤又は腐食抑制剤を含みうる。
【0166】
MOFの一の利点は、組成物の構成要素との反応に問題を生じることなく、腐食抑制特性を提供できることである。例えば、MOFは、エポキシ樹脂との反応に問題を生じず、腐食抑制特性を保持するエポキシ樹脂組成物に使用することができる。
【0167】
いくつかのMOFの別の利点は、色又は顔料着色において実質的に白い粒子を提供することができることである。色又は顔料着色において実質的に白とは、白、アイボリー、クリーム、骨色、ベージュ及びグレーでありうるMOFに言及していると理解されたい。したがって、MOFは、追加的下塗り剤又はエナメルコーティングを適用する必要なく、コーティング組成物に使用されうる。MOFは、顔料着色と腐食抑制特性の両方を提供しうる。MOFは、単一のコーティングの適用又は組成物の層の適用を可能にする組成物を提供しうる。一実施態様では、MOFは、より明るい又は実質的に白い顔料着色を有する。別の実施態様では、MOFを調製するための有機リガンド及び/又は金属は、より明るい又は実質的に白い顔料着色を有するMOFを形成するために選択される。白色に着色された粉末又は粒子として得ることのできるMOFの一例は、ランタン、イットリウム及び亜鉛のうちの少なくとも一つから選択された金属を含むMOFである。一実施態様では、白色に着色されたMOFのための有機リガンドは、置換されていてもよいベンズイミダゾール、トリアジアゾール(triadiazole)、及びトリアゾールから選択されうる。白色に着色されたMOFを形成するためのリガンドの具体的な例には、1H-ベンズイミダゾール、2-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアジアゾール(triadiazole)、1,2,4-トリアゾール-3-チオール、及びベンゾトリアゾールが含まれる。
【0168】
腐食抑制組成物は、膜形成有機ポリマーを含むコーティング組成物とすることができる。膜形成有機ポリマーが、金属表面に適用された後に膜を形成することのできる有機ポリマーであることが理解されよう。コーティング組成物は塗料組成物でもよい。コーティング組成物は、一又は複数の樹脂、例えばエポキシ系樹脂を含みうる。コーティング組成物は、塗料組成物、例えばエポキシ樹脂系塗料組成物とすることができる。
【0169】
コーティング組成物は、粉末コーティング組成物、例えば、本明細書に記載されるアルミニウム合金又は鋼を含む様々な金属基板の粉末コーティングにおける使用に適した粉末コーティング組成物でもよい。
【0170】
コーティング組成物はスプレー組成物でもよい。
【0171】
コーティング組成物は、時間をかけて乾燥又は硬化する、つまり、溶媒がエバポレートする、湿った状態で、又は「完全には硬化していない」状態で、基板に適用することができる。コーティングは、自然に又は加速手段、例えば紫外線硬化システムにより、乾燥又は硬化させて、膜又は「硬化」塗料を形成することができる。コーティングは、接着剤など、半硬化状態又は完全硬化状態で適用することもできる。
【0172】
組成物は、一連の成分及び/又は構成要素を含むことができ、さらには、それら成分及び/又は構成要素を調製及び混合してコーティング組成物を作製するための一連の指示も含むことができる。
【0173】
組成物が、顔料、充填剤及び増量剤といった一又は複数の添加剤を含みうることが理解されよう。本明細書に記載される腐食抑制剤と組み合わせることのできる適切な添加剤の例には、例えば、結合剤、溶媒、顔料(可溶型又は非可溶型増量剤、充填剤、腐食抑制顔料などを含む)、溶媒、添加剤(例えば、硬化剤、界面活性剤、染料、アミノ酸など)などが含まれる。いくつかの添加剤が顔料としても考慮可能であり、逆もそうであること(例えば、艶消し剤)に注目されたい。具体的には、これら「添加剤」には、限定されないが、グリシン、アルギニン、メチオニン、及びアミノ酸の誘導体、例えばメチオニンスルホキシド、メチルスルホキシド、及びヨウ化物/ヨウ素酸、ゼラチン及びゼラチン誘導体、例えば動物及び魚のゼラチン、アルファ及びベータシクロデキストリンを含む直鎖状及び環状デキストリン、トリフリン酸、トリフラート、アセテート、タルク、カオリン、有機系イオン交換樹脂、例えば有機系カチオン及びアニオン交換樹脂、有機系イオン交換樹脂、例えば希土類材料の塩、酸化物及び/又は混合酸化物と事前交換された又は反応させた有機系カチオン及びアニオン交換樹脂、並びに金属硫酸塩、例えば希土材料の硫酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム(無水及び水和形の)、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウムなどが含まれる。
【0174】
組成物が、本明細書に記載される構成要素又は添加剤のうちのいずれかの一又は複数を含むか、又はそれらからなることが理解されよう。
組成物は、レオロジー調節剤、充填剤、強靭化剤、熱又はUV安定剤、難燃剤、潤滑剤、界面活性剤といった他の添加剤も含みうる。添加剤は通常、活性化処理又は溶媒、薬剤及び添加剤の組み合わせの総重量に基づいて、約10%未満の量で存在する。例としては:
(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばMethocell 311,Dow)、修飾尿素(例えばByk 411、410)及びポリヒドロキシカルボン酸アミド(例えばByk 405)といったレオロジー調節剤;
(b)ジカルボン酸のエステル(例えばLusolvan FBH,BASF)及びグリコールエーテル(例えばDowanol,Dow)といった塗膜形成要素;
(c)フルオロケミカル界面活性剤(例えば3M Fluorad)及びポリエーテル修飾ポリ-ジメチル-シロキサン(例えばByk 307,333)といった湿潤剤;
(d)脂肪酸誘導体(例えばBermadol SPS 2543,Akzo)及び四級アンモニウム塩といった界面活性剤;
(e)一級アルコール(例えばMerpol 4481,Dupont)及びアルキルフェノール-ホルムアルデヒド-ビスルフィド凝縮物(例えばClariants 1494)に基づく非イオン性界面活性剤といった分散剤;
(f)消泡剤;
(g)リン酸エステル(例えばADD APT,Anticor C6),(2-ベンゾチアゾリチオ)コハク酸のアルキルアンモニウム塩(例えばIrgacor 153 CIBA)及びトリアジンジチオールといった耐食試薬;
(h)ベンズイミダゾール誘導体(例えばBayer,Preventol BCM、殺生物性膜保護)といった安定剤;
(i)フッ化炭素-修飾ポリマー(例えばEFKA 3777)といったレベリング剤;
(j)蛍光剤(Royale Pigment and chemicals)といった顔料又は染料;
(k)フルオロセイン(fluoroscein)といった有機及び無機染料;及び
(l)塩化リチウム、塩化亜鉛、塩化ストロンチウム、塩化カルシウム及び塩化アルミニウムといったルイス酸
が挙げられる。
(m)単独で、又は任意で追加できる、火炎伝播、熱放出及び/又は発煙を遅らせる適切な難燃剤には:
・ホスフェート、ポリホスフェート,ホスファイト、ホスファジン及びホスフィン官能基、例えば、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミン ポリホスフェート、アンモニアホスフェート、アンモニアポリホスフェート、ペンタエリスリトールホスフェート、メラミンホスファイト及びトリフェニルホスフィンを含む分子といったリン誘導体
・メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンフタレート、メラミンフタルイミド、メラム、メレム、メロン、メラムシアヌレート、メレムシアヌレート、メロンシアヌレート、ヘキサメチレンテトラアミン、イミダゾール、アデニン、グアニン、シトシン及びチミンといった窒素含有誘導体
・ホウ酸アンモニア及びホウ酸亜鉛といったボレート官能基を含む分子
・ペンタエリスリトール、ポリエチレンアルコール、ポリグリコール及び炭水化物、例えば、グルコース、スクロース及びスターチといった二つ以上のアルコール基を含む分子
・金属水酸化物、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムといった不燃性分解ガスを球熱的に放出する分子
・膨張黒鉛
が含まれる。
【実施例
【0175】
本発明をさらに明瞭に理解するために、以下の非限定的な実験材料、方法及び実施例を参照して本発明の実施態様についてさらに詳細に記載する。
【0176】
MOFの調製
x+(NO+2-メルカプトベンズイミダゾール(MBI-化合物1)からのMOFの調製のための一般的手順
7.4g(49.4mMol)のMBIを、MeOH:DMFが90:10である400mlの溶液に加えた。続いて、溶解した16.4mMolの金属硝酸塩を含む、MeOH:DMFが90:10であるさらに200mlの溶液を加えた(即ち、リガンド:金属のモル比が3:1である)。この混合物を一時間60から80℃の温度で撹拌した。撹拌を停止し、~1mlのトリエチルアミンを、配位ポリマーの形成のための触媒として加えた。熱を24時間維持した。24時間後、微細な沈殿物が形成された。
【0177】
結果として得られた沈殿物を濾過により収集し、次いでメタノールで三回洗浄した。次いでFTIRスペクトルを収集し、1649cm-1におけるDMFアミドのピークが依然として存在する場合、このピークが消滅するまで洗浄を継続した。次いで、沈殿物のX線回折パターン及びTGAプロファイルを取得した。
【0178】
実施例1
Zn(NO.6HO+MBIを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0179】
実施例2
Ce(NO.6HO+MBIを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0180】
実施例3
Pr(NO.6HO+MBIを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0181】
実施例4
La(NO.6HO+MBIを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0182】
実施例5
Y(NO.6HO+MBIを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0183】
x+(NO+1,2,4-トリアゾール-3-チオール(TT-化合物4)からのMOFの調製のための一般的手順
5g(49.4mMol)のTTを、MeOH:DMFが90:10である400mlの溶液に加えた。続いて、溶解した16.4mMolの金属硝酸塩を含む、MeOH:DMFが90:10であるさらに200mlの溶液を加えた(即ち、リガンド:金属のモル比が3:1である)。この混合物を一時間60から80°Cの温度で撹拌した。撹拌を停止し、~1mlのトリエチルアミンを、配位ポリマーの形成のための触媒として加えた。熱を24時間維持した。24時間後、微細な沈殿物が形成された。
【0184】
結果として得られた沈殿物を濾過により収集し、次いでメタノールで三回洗浄した。次いでFTIRスペクトルを収集し、1649cm-1におけるDMFアミドのピークが依然として存在する場合、このピークが消滅するまで洗浄を継続した。沈殿物のX線回折パターン及びTGAプロファイルを取得した。
【0185】
実施例6
Zn(NO.6HO+TTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0186】
実施例7
Ce(NO.6HTTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0187】
実施例8
Pr(NO.6HO+TTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0188】
実施例9
La(NO.6HO+TTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0189】
実施例10
Y(NO.6HO+TTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0190】
x+(NO+2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(DMT-化合物5)からのMOFの調製のための一般的手順
7.43g(49.4mMol)のDMTを、MeOH:DMFが90:10である400mlの溶液に加えた。続いて、溶解した16.4mMolの金属硝酸塩を含む、MeOH:DMFが90:10であるさらに200mlの溶液を加えた(即ち、リガンド:金属のモル比が3:1である)。この混合物を、一時間60から80Cの温度で撹拌した。撹拌を停止し、~1mlのトリエチルアミンを、配位ポリマーの形成のための触媒として加えた。熱を48時間維持した。24時間後、微細な沈殿物が形成された。
【0191】
結果として得られた沈殿物を濾過により収集し、次いでメタノールで三回洗浄した。次いでFTIRスペクトルを収集し、1649cm-1におけるDMFアミドのピークが依然として存在する場合、このピークが消滅するまで洗浄を継続した。次いで、沈殿物のX線回折パターン及びTGAプロファイルを取得した。
【0192】
実施例11
Zn(NO.6HO+DMTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0193】
実施例12
Ce(NO.6HO+DMTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0194】
実施例13
Pr(NO.6HO+DMTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0195】
実施例14
La(NO.6HO+DMTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0196】
実施例15
Y(NO.6HO+DMTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0197】
x+(NO+2-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール(AMT-化合物6)からのMOFの調製のための一般的手順
5.7g(49.4mMol)のAMTを、MeOH:DMFが90:10である400mlの溶液に加えた。続いて、溶解した16.4mMolの金属硝酸塩を含む、MeOH:DMFが90:10であるさらに200mlの溶液を加えた(即ち、リガンド:金属のモル比が3:1である)。この混合物を一時間60から80°Cの温度で撹拌した。撹拌を停止し、~1mlのトリエチルアミンを、配位ポリマーの形成のための触媒として加えた。熱を24時間維持した。24時間後、微細な沈殿物が形成された。
【0198】
結果として得られた黄色の沈殿物を濾過により収集し、次いでメタノールで三回洗浄した。次いでFTIRスペクトルを収集し、1649cm-1におけるDMFアミドのピークが依然として存在する場合、このピークが消滅するまで洗浄を継続した。次いで、沈殿物のX線回折パターン及びTGAプロファイルを取得した。
【0199】
実施例16
Zn(NO.6HO+AMTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0200】
実施例17
Ce(NO.6HO+AMTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0201】
実施例18
Pr(NO.6HO+AMTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0202】
実施例19
La(NO.6HO+AMTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0203】
実施例20
Y(NO.6HO+AMTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0204】
x+(NO+2-メルカプトピリミジン(MP-化合物7)からのMOFの調製のための一般的手順
この化合物の調製のための一般的手順は上記の通りである。
【0205】
実施例21
Zn(NO.6HO+MPを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0206】
実施例22
Pr(NO.6HO+MPを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0207】
x+(NO(NO+2-メルカプトベンズイミダゾール(MBI-化合物1)からのMOFの調製のための一般的手順
この化合物の調製のための一般的手順は上記の通りである。
【0208】
実施例23
Pr(NO.Ce(NO+MBIを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0209】
実施例24
Pr(NO.La(NO+MBIを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0210】
x+(NO(NO+2-メルカプトベンズイミダゾール(MBI-化合物1)からのMOFの調製のための一般的手順
この化合物の調製のための一般的手順は上記の通りである。
【0211】
実施例25
Zn(NO.Ce(NO+MBIを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0212】
実施例26
Zn(NO.Pr(NO+MBIを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0213】
x+(NO(NO+1,2,4-トリアゾール-3-チオール(TT-化合物4)からのMOFの調製のための一般的手順
3.5g(34.6mMol)のTTを、MeOH:DMFが90:10である溶液の400ml溶液に溶解し、2.5gのPr(NO(5.71mMol)及び1.7gのZn(NO(5.71mMol)を、MeOH:DMFが90:10である溶液のそれぞれ100ml溶液に溶解した。次いで金属溶液をTT溶液に加え、混合物を最初の1時間で撹拌しながら60~80℃に加熱した。次いで撹拌を停止し、1mlのTEAを加えた。一晩で、極めて薄い緑色の堆積物が反応器の内表面に形成された。堆積物及び沈殿物を濾過により収集し、固体材料をメタノールで洗浄した。
【0214】
実施例27
Zn(NO.Ce(NO+TTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0215】
実施例28
Zn(NO.La(NO+TTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0216】
実施例29
Zn(NO.Pr(NO+TTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0217】
実施例30
Zn(NO.Y(NO+TTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0218】
x+(NO(NO+2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(DMT-化合物5)からのMOFの調製のための一般的手順
この化合物の調製のための一般的手順は上記の通りである。
【0219】
実施例31
Zn(NO.Ce(NO+DMTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0220】
実施例32
Zn(NO.La(NO+DMTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0221】
実施例33
Zn(NO.Pr(NO+DMTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0222】
実施例34
Zn(NO.Y(NO+DMTを、上記の一般的手順に従って調製した。
【0223】
金属基板上におけるMOFの腐食試験
被コーティング金属基板の調製のための一般的手順
Epikote 828(3.0g)とAradur 450硬化剤(1.8g)とを「Thinky Mixer」で2分間2000rpmで混合することにより、2液エポキシコーティングを行った。MOF(0.48g)を、メチルエチルケトン(MEK)溶媒(0.5g)と一緒に、60分の「スウェッティング(sweating)」時間の後でエポキシコーティングに加えた。調製されたコーティングを、最終的な混合の直後に金属基板に適用し、12時間40℃のオーブンで加熱した。被コーティング金属基板を80℃で30分間焼成した後、溶出試験に使用するか、又は塩水噴霧(NSS)試験にスクライブした。
【0224】
実施例35
TT/エポキシの組み合わせを、上記の一般的手順に従って調製し、~3×5インチのAA2024アルミニウム板にコーティングした。
【0225】
実施例36
LaTT/エポキシの組み合わせを、上記の一般的手順に従って調製し、~3×5インチのAA2024アルミニウム板にコーティングした。
【0226】
実施例37
PrTT/エポキシの組み合わせを、上記の一般的手順に従って調製し、~3×5インチのAA2024アルミニウム板にコーティングした。
【0227】
実施例38
ZnDMT/エポキシの組み合わせを、上記の一般的手順に従って調製し、~3×5インチのAA2024アルミニウム板にコーティングした。
【0228】
実施例39
Zn(MP)/エポキシの組み合わせを、上記の一般的手順に従って調製し、~3×3インチのAA2024アルミニウム板にコーティングした。
【0229】
溶出試験のための一般的手順
上記の一般的手順に従って調製したMOF/エポキシでコーティングされた金属基板を、同金属基板の表面にクランプ留めされたPerspexリザーバ内部に収容された100mlの0.1MのNaCl溶液に曝露した。1日、2日、3日、7日、14日、21日、28日及び35日の時間間隔で、塩溶液を除去し、新しい溶液と取り換えた。除去された溶液を、硫黄及び金属種について誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)により分析した。実験を三回繰り返し、三回の実験を平均した結果をグラフ化した(図1)。
【0230】
実施例40
Zn(MP)/エポキシでコーティングされたアルミニウム金属基板を、実施例39及びアルミニウム金属基板からのZn(MP)の累積溶出に従って調製した。Zn及びSのアルミニウムの量を、ICP-AESによって決定した。図1は、Zn(MP)/エポキシでコーティングされたアルミニウム金属基板から亜鉛及び硫黄がNaCl溶液中に溶出し、耐食環境が提供される様子を示している。これは、コーティング組成物中のMOFが、組成物中の他の構成要素との反応に問題を生じることなく、金属基板の腐食を防ぐために、保護コーティング組成物に効果的に使用できるという利点を支持する結果を提供するものである。これは、MOFが膜形成組成物に使用できるという利点を支持結果も提供する。
【0231】
塩水噴霧試験(NSS)のための一般的手順
上記一般的手順に従って調製したMOF/エポキシでコーティングされた金属基板を、80℃でスクライブした。次いで、この被コーティング金属基板を、ASTM B117に従い、35℃で12週(2016時間)の5%の塩噴霧に曝露した。被コーティング金属基板を、取り外し、脱イオン化(DI)水ですすぎ、週に一度の間隔で撮影し、次いで戻した。図2は、様々なMOF/エポキシでコーティングされたアルミニウムコーティング基板のNSS試験について得られた結果を示している。
【0232】
実施例41
TT/エポキシでコーティングされたアルミニウム金属基板を、実施例35に従って調製し、上記一般的手順によるNSSに供した。図2aは、TT/エポキシコーティングが、12週にわたる曝露後に、アルミニウム基板のいくらかの腐食抑制を提供することを示している。
【0233】
実施例42
LaTT/エポキシでコーティングされたアルミニウム金属基板を、実施例36に従って調製し、上記一般的手順によるNSSに供した。図2bは、LaTT/エポキシコーティングが、12週にわたる曝露後に、アルミニウム基板の中程度の腐食抑制を提供することを示している。これは、コーティング組成物中のMOFが、組成物中の他の構成要素との反応に問題を生じることなく、金属基板の腐食を防ぐために、保護コーティング組成物に効果的に使用できるという利点を支持する結果を提供するものである。これは、MOFが膜形成組成物に使用できるという利点を支持する結果も提供する。
【0234】
実施例43
PrTT/エポキシでコーティングされたアルミニウム金属基板を、実施例37に従って調製し、上記一般的手順によるNSSに供した。図2cは、PrTT/エポキシコーティングが、12週にわたる曝露後に、アルミニウム基板の完全な腐食抑制を提供することを示している。これは、コーティング組成物中のMOFが、組成物中の他の構成要素との反応に問題を生じることなく、金属基板の腐食を防ぐために、保護コーティング組成物に効果的に使用できるという利点を支持する結果を提供するものである。これは、MOFが膜形成組成物に使用できるという利点を支持する結果も提供する。
【0235】
実施例44
ZnDMT/エポキシでコーティングされたアルミニウム金属基板を、実施例38に従って調製し、上記一般的手順によるNSSに供した。図2dは、ZnDMT/エポキシコーティングが、12週にわたる曝露後に、アルミニウム基板の中程度の腐食抑制を提供することを示している。これは、コーティング組成物中のMOFが、組成物中の他の構成要素との反応に問題を生じることなく、金属基板の腐食を防ぐために、保護コーティング組成物に効果的に使用できるという利点を支持する結果を提供するものである。これは、MOFが膜形成組成物に使用できるという利点を支持する結果も提供する。
図1
図2