(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】正則化ベースの資産ヘッジツール
(51)【国際特許分類】
G06N 20/00 20190101AFI20230516BHJP
G06Q 40/06 20120101ALI20230516BHJP
【FI】
G06N20/00 130
G06Q40/06
(21)【出願番号】P 2022553086
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(86)【国際出願番号】 IB2021051883
(87)【国際公開番号】W WO2021176425
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-11-07
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517309766
【氏名又は名称】ゴールドマン サックス アンド カンパニー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ ピーター エルカン
(72)【発明者】
【氏名】ディミトリオス ツェメンツィス
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ウィリアム ターク
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ ダンワース-クロンプトン
【審査官】坂庭 剛史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08725618(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/279693(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0001189(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0089762(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
G06Q 40/06
G06Q 10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッジポートフォリオを形成するための方法であって、
対象資産を識別することと、
正則化ベースのモデルを適用して、前記対象資産をトラックする資産の推奨されるポートフォリオを識別することであって、前記正則化ベースのモデルを適用することは、
観測期間からの資産価格データを用いて前記正則化ベースのモデルをトレーニングすること、
検証期間からの資産価格データを用いて前記正則化ベースのモデルのハイパーパラメータを選ぶことであって、前記検証期間は、前記観測期間の後にある、こと、
バックテスト期間からの資産価格データに前記正則化ベースのモデルを適用することによって資産の初期のポートフォリオを識別することであって、前記バックテスト期間は、前記検証期間の後にある、こと、
前記正則化ベースのモデルの設定に対するエンドユーザーの修正を受信すること、
前記エンドユーザーによって修正されている前記設定を用いて前記正則化ベースのモデルを再トレーニングすること、および
前記バックテスト期間からの前記資産価格データに前記再トレーニングされた正則化ベースのモデルを適用することによって、資産の更新されるポートフォリオを識別することであって、資産の前記更新されるポートフォリオは、資産の前記推奨されるポートフォリオである、こと
を含むことと、
資産の前記推奨されるポートフォリオを取得することと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記正則化ベースのモデルの前記設定は、前記ハイパーパラメータのうちの1つであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハイパーパラメータは、資産の前記推奨されるポートフォリオにおける資産の総数に影響を与える集中ハイパーパラメータを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ハイパーパラメータは、資産の前記推奨されるポートフォリオにおける資産ポジションの相対的なサイズの範囲に影響を与える多様ハイパーパラメータを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記正則化ベースのモデルは、線形目的関数を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記線形目的関数は、一次制約および二次制約の組み合わせに従って解かれることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
クライアントデバイスに、表示のためのユーザーインターフェースを提供することをさらに備え、前記ユーザーインターフェースは、前記初期のポートフォリオのパフォーマンスを表す1つまたは複数のメトリックを含み、前記正則化ベースのモデルの設定に対する前記修正を提供することを前記エンドユーザーに可能にするように構成されたコントロールをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ユーザーインターフェースは、前記設定に対する前記エンドユーザーの修正を受信することに応答して、前記更新されたポートフォリオのパフォーマンスを表す1つまたは複数の更新されたメトリックを含むように構成されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つまたは複数のメトリックは、トラッキングエラー、ホールディングエラー、日次相関、ヘッジ取引費用、年間ボラティリティ、または前記初期のポートフォリオと前記対象資産との相対価格を示すチャートのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ユーザーインターフェースは、前記対象資産を選択
することを前記エンドユーザーに可能にするように構成された1つまたは複数の資産選択コントロールを含み、前記対象資産を識別することは、前記1つまたは複数の資産選択コントロールを用いるエンドユーザー入力に応答して、前記クライアントデバイスから前記
対象資産の識別子を受信することを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
ヘッジポートフォリオを形成するための命令を格納する非一時的なコンピューター読取り可能媒体であって、コンピューティングデバイスによって実行されると、前記コンピューティングデバイスに、
対象資産を識別することと、
正則化ベースのモデルを適用して、前記対象資産をトラックする資産の推奨されるポートフォリオを識別することであって、前記正則化ベースのモデルを適用することは、
観測期間からの資産価格データを用いて前記正則化ベースのモデルをトレーニングすること、
検証期間からの資産価格データを用いて前記正則化ベースのモデルのハイパーパラメータを選ぶことであって、前記検証期間は、前記観測期間の後にある、こと、
バックテスト期間からの資産価格データに前記正則化ベースのモデルを適用することによって資産の初期のポートフォリオを識別することであって、前記バックテスト期間は、前記検証期間の後にある、こと、
前記正則化ベースのモデルの設定に対するエンドユーザーの修正を受信すること、
前記エンドユーザーによって修正されている前記設定を用いて前記正則化ベースのモデルを再トレーニングすること、および
前記バックテスト期間からの前記資産価格データに前記再トレーニングされた正則化ベースのモデルを適用することによって、資産の更新されるポートフォリオを識別することであって、資産の前記更新されるポートフォリオは、資産の前記推奨されるポートフォリオである、こと
を含むことと、
資産の前記推奨されるポートフォリオを取得することと
を含む動作を行わせることを特徴とする非一時的なコンピューター読取り可能媒体。
【請求項12】
前記正則化ベースのモデルの前記設定は、前記ハイパーパラメータのうちの1つであることを特徴とする請求項11に記載の非一時的なコンピューター読取り可能媒体。
【請求項13】
前記ハイパーパラメータは、資産の前記推奨されるポートフォリオにおける資産の総数に影響を与える集中ハイパーパラメータを含むことを特徴とする請求項11に記載の非一時的なコンピューター読取り可能媒体。
【請求項14】
前記ハイパーパラメータは、資産の前記推奨されるポートフォリオにおける資産ポジションの相対的なサイズの範囲に影響を与える多様ハイパーパラメータを含むことを特徴とする請求項11に記載の非一時的なコンピューター読取り可能媒体。
【請求項15】
前記正則化ベースのモデルは、線形目的関数を用いることを特徴とする請求項11に記載の非一時的なコンピューター読取り可能媒体。
【請求項16】
前記線形目的関数は、一次制約および二次制約の組み合わせに従って解かれることを特徴とする請求項15に記載の非一時的なコンピューター読取り可能媒体。
【請求項17】
前記動作は、クライアントデバイスに、表示のためのユーザーインターフェースを提供することをさらに含み、前記ユーザーインターフェースは、前記初期のポートフォリオのパフォーマンスを表す1つまたは複数のメトリックを含み、前記正則化ベースのモデルの設定に対する前記修正を提供することを前記エンドユーザーに可能にするように構成されたコントロールをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の非一時的なコンピューター読取り可能媒体。
【請求項18】
前記ユーザーインターフェースは、前記設定に対する前記エンドユーザーの修正を受信することに応答して、前記更新されたポートフォリオのパフォーマンスを表す1つまたは複数の更新されたメトリックを含むように構成されることを特徴とする請求項17に記載の非一時的なコンピューター読取り可能媒体。
【請求項19】
前記1つまたは複数のメトリックは、トラッキングエラー、ホールディングエラー、日次相関、ヘッジ取引費用、年間ボラティリティ、または前記初期のポートフォリオと前記対象資産との相対価格を示すチャートのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項17に記載の非一時的なコンピューター読取り可能媒体。
【請求項20】
ユーザーインターフェースは、前記対象資産を選択
することを前記エンドユーザーに可能にするように構成された1つまたは複数の資産選択コントロールを含み、前記対象資産を識別することは、前記1つまたは複数の資産選択コントロールを用いるエンドユーザー入力に応答して
、クライアントデバイスから前記
対象資産の識別子を受信することを含むことを特徴とする請求項11に記載の非一時的なコンピューター読取り可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、コンピューターベースのシミュレーションツールに関し、より詳細には、正則化ベースの単一資産ヘッジツールに関する。
【背景技術】
【0002】
対象資産(target asset)をヘッジすることが有益である広範囲にわたるシナリオがある。コンピューターベースのヘッジツールは、対象資産のパフォーマンスをできる限り綿密にトラックするヘッジ資産を識別する処理を自動化するまたは半自動化する。既存のツールは、通常、トレーニング期間における対象資産の過去のパフォーマンスと調和するヘッジポートフォリオを作成することに焦点を合わせる。今述べたことは、ツールがトレーニング期間におけるノイズまたは他の例外的な特徴を再生成することを学習するオーバーフィッティングに帰着することが可能であり、対象資産の将来のパフォーマンスに対して効果的なリスクヘッジポートフォリオを生成するとき、上記のツールの予測力を制限する。さらに、既存のツールは、ヘッジポートフォリオにおける各資産の最適なウェイトに焦点を合わせ、頻発するヘッジポートフォリオのリバランスを必要とする。上記の頻発するリバランスは、著しい大きな取引費用に帰着することが可能である。多くの既存のヘッジツールに関する別の問題は、それらが特定のきつく制約された問題を解決するように構成されていることである。上記のツールは、1つまたは複数の予め決められた制限(例えば、ハイパーパラメータ)に従ってトレーニングされているモデルを用い、エンドユーザーがモデルを異なった入力に適用することが可能であるが、用いられる制限は、いくつかの入力に対して、お粗末なモデルパフォーマンスに帰着することがある。
【発明の概要】
【0003】
正則化ベース(regularization-based:RB)のヘッジツール(hedging tool)は、対象資産をトラックする推奨ヘッジポートフォリオを識別し、対象資産に関してヘッジポートフォリオの予測パフォーマンスを示す1つまたはメトリックを提供する。RBヘッジツール(「RBヘッジャー」)は、観測期間からの価格データによってトレーニングされているRBヘッジモデルを用いる。モデルに対する初期ハイパーパラメータは、検証期間からの資産価格データを用いて選択され、モデルのパフォーマンスは、バックテスト期間からの資産価格データにそれを適用することによって評価される。エンドユーザーは、モデルのパフォーマンスを示す1つまたは複数のメトリックが与えられ、モデルの1つまたは複数の設定(例えば、ハイパーパラメータ)を修正することがある。モデルは、再トレーニングされ、バックテスト期間に再適用され、メトリックは、更新される。ゆえに、エンドユーザーは、モデルを、自身の特定の要求および好みに合わせることがある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】一態様に係るRBヘッジツールを提供するのに適したネットワーク化されたコンピューティング環境のブロック図である。
【
図2】一態様に係る観測期間、検証期間、およびバックテスト期間における対象資産および対応するヘッジポートフォリオのパフォーマンスを示す図である。
【
図3】一態様に係る
図1に示されるRBヘッジャーシステムのブロック図である。
【
図4】一態様に係るRBヘッジツールを用いるための方法のフローチャートである。
【
図5A】一態様に係るRBヘッジツールのパフォーマンスを従来のヘッジツールと比較する図である。
【
図5B】一態様に係るRBヘッジツールのパフォーマンスを従来のヘッジツールと比較する図である。
【
図6】一態様に係る種々のメトリックのLassoハイパーパラメータについての影響を示す図である。
【
図7A】一態様に係るRBヘッジツールおよび従来のヘッジツールに対してホールディングエラーおよび取引費用を比較する図である。
【
図7B】一態様に係るRBヘッジツールおよび従来のヘッジツールに対してホールディングエラーおよび取引費用を比較する図である。
【
図8A】一態様に係る種々のメトリックのLassoハイパーパラメータおよびRidgeライクハイパーパラメータについての影響を示す図である。
【
図8B】一態様に係る種々のメトリックのLassoハイパーパラメータおよびRidgeライクハイパーパラメータについての影響を示す図である。
【
図8C】一態様に係る種々のメトリックのLassoハイパーパラメータおよびRidgeライクハイパーについての影響を示す図である。
【
図9】一態様に係るRBヘッジツールのための例示的なユーザーインターフェースを示す図である。
【
図10】一態様に係る
図1のネットワーク化されたコンピューティング環境における使用に適したコンピューターの例を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図面、および後に続く説明は、例示のみとして、ある態様を説明する。実際に使用できるときはいつでも、類似の参照符号または同じ参照符号は、図面において用いられて、類似の機能性または同じ機能性を示すということが特筆される。類似の要素が、文字のあとに置かれる共通の数字によって参照されるときはいつでも、数字単独の参照は、文脈によって決まるどんな上記の要素または要素の組み合わせでも引用することがある。当業者であれば、構造および方法の代替態様が、説明される原理から逸脱することなく用いられることがあるということを直ちに認めるだろう。便利なように、開示されるRBヘッジャーは、「従来型ヘッジャー」と呼ばれる従来型ヘッジングツールと比べて、本開示に説明される。
【0006】
概要
RBヘッジャーは、斬新な改良された正則化された最適化(例えば、回帰)に基づく。一態様において、正則化された最適化は、次の線形制約の最適化問題を解くことを含む。
【0007】
【0008】
ただし、Uは、我々がヘッジするユニバースにおける資産のリターンの時系列行列であり、tは、対象資産のリターンの時系列であり、sは、(解決されている)ヘッジポートフォリオにおけるストック(stock)数であり、pは、観測期間の終了時のユニバースにおける資産の価格ベクトルである。
【0009】
より一般的には、式(1)に対応する線形目的関数は、次のとおりにように書き表されることが可能であり、
【0010】
【0011】
一次制約および二次制約にわたって最適化されることが可能である。
【0012】
例示的な一次制約は、i=1,・・・,n(ただし、nは時系列の長さ)に対して、次のとおりに定義される。
【0013】
【0014】
ただし、Aは、p個の資産を含む、n日戻る資産の与えられたユニバースのヒストリカル価格行列であり、xjは、時間iの資産jのシェア(share)数であり、qは、最適化問題を表し、biは、時間iの対象資産の想定元本である。
【0015】
例示的な二次制約は、条件のペアによって定義される。
【0016】
【0017】
【0018】
RBヘッジャーは、たとえばヘッジポートフォリオに含まれるあらゆる個々の資産または資産クラス(例えば、ビジネスセクター内の資産)の量を制限することなど、異なった制約または追加の制約を適用することがある。高いレベルにおいて、RBヘッジャーに対する最適化問題は、最小にされる(または最大にされる)ことになる目的関数を設定することと、各変数に対して許容範囲を定義する(例えば、それが厳密に正か自由かのいずれかであるなど)ことと、数学的制約を設定する(例えば、一次制約および二次制約の各々がいくつかの変数を含む)こととによって表されることが可能である。
【0019】
再び式(1)を参照すると、
【0020】
【0021】
はLassoペナルティと呼ばれ、結果として生じるヘッジがどれぐらい集中したか(すなわち、ヘッジポートフォリオがどれだけ資産を含むか)を制御する。式(1)の
【0022】
【0023】
の部分は、いわゆるRidgeペナルティの変動であり、ヘッジが、ヘッジポートフォリオにおいてポジションの異なるサイズに関して、どれぐらい多角的にされたかを制御する。技術用語「Ridge(リッジ)」は、正則化のために二乗l2-ノルム
【0024】
【0025】
を用いることを引用する。対照的に、式(1)は、二乗ではないノルムを用い、ゆえに、「ユークリッドノルム」正則化とみなされることが可能である。ゆえに、本明細書においてRidgeライク(ridge-like)と呼ばれる。
【0026】
集中(concentration)および多様(diversity)の量は、λ1およびλ2のハイパーパラメータの値によって制御される。今述べたパラメーターの最適値は、経験的な手段によって推定されることがある。例えば、最適なパラメーターの推定値は、種々の値の組み合わせに対してホールディングエラー(holding error)を測定することと、最も良い結果との組み合わせを精選すること(「グリッドサーチ」)とによって決定されることがある。
【0027】
先行する方法とは異なって、LassoおよびRidgeライクのペナルティは、解に、集中的なヘッジと多角的なヘッジとの中間のものに決めさせることによって、ヘッジが過去をオーバーフィッティングするのを防ぐことがある。その上さらに、いくつかの態様では、エンドユーザーは、実行時に集中および多様のハイパーパラメータを変え、計算されたヘッジポートフォリオにおいて結果として生じる変動と、1つまたは複数のメトリックに関して対象資産に関するパフォーマンスとを敏速に見ることができることがある。ゆえに、エンドユーザーは、モデルプロバイダーにモデルを更新するように要求することなく、実質的にリアルタイムにおいて、個々の要求および好みにモデルを合わせることがある。
【0028】
今述べた強化の結果として、斬新なRBヘッジャーは、単一資産ヘッジ(single asset hedging)において、次の利点を提供することがある。
●集中:これは、構築されるポートフォリオにおいて、ヘッジの焦点を、減少した数の資産に合わせることに対応する。より高い集中は、より少ない数の資産がヘッジポートフォリオに与えられる。
●多様:ヘッジポートフォリオのウェイトの配分において均等性を増大させること。より高い多様は、ポートフォリオにおける資産に対するウェイトの配分において、よりよい均衡を意味する。
●削減される取引費用:ヘッジにおけるポジションをトレーディングすることについての費用を減らすこと。
【0029】
一般に、良い単一資産パフォーマンスヘッジ(single asset performance hedge)は、集中(対象資産のパフォーマンスをトラックする少数の資産のみを含む)と多様(選択した資産におおよそ均等のウェイトを置く)との間の均衡に達する。RBヘッジャーは、ある意味においては高度に解釈できカスタマイズできる今述べた着想の斬新な定式化を用い、結果として生じるヘッジの正確度を向上させる。
【0030】
一態様では、RBヘッジャーは、ネイティブプログラミング言語をJava(登録商標)に結びつけるインターフェースを用いて、既存のヘッジツールを越えた著しいレイテンシの改善を達成する。今述べたことは、RBヘッジャーに、項がエンドユーザーによって修正されるどんなときでも、数秒のうちに(例えば、1秒未満、3秒未満、5秒未満など)、モデルを迅速にリフィッティングし最適化することを可能にすることがある。上記の迅速なモデルのリフィッティングおよび最適化を達成するために、RBヘッジャーは、一態様では、オプティマイザーのJava(登録商標)アプリケーションをラップするインターフェースに対してコールをする。他の態様では、他の言語固有のAPIが用いられることがある。このようにしてインターフェースを用いて、原となるタスクおよびソリューションオブジェクト(solution object)は、各制約に対して目的関数を解くとき、「処理中」に並列化されることがある。その上さらに、ハイパーパラメータサーチ(hyperparameter search)は、より効果的に分配されることがある。今述べた改善は、種々の入力にわたって平均されるとき、従来のアプローチに関して最大5倍の速さの増加に帰着することがある。
【0031】
例示的なシステム
図1は、RBヘッジツールを提供するのに適したネットワーク化されたコンピューティング環境100の一態様を例示する。
図1に示される態様では、ネットワーク化されたコンピューティング環境は、RBヘッジャーシステム110と、クライアントデバイス140のセットとを含み、すべてがネットワーク170を介して接続される。他の態様では、ネットワーク化されたコンピューティング環境100は、異なったまたは追加の要素を含む。くわえて、機能は、説明されたのと異なったやり方において要素の各々に分配されることがある。例えば、RBヘッジャーは、RBヘッジャーシステム110とクライアントデバイス140との両方の機能性を行うスタンドアロンのシステムによって提供されることがある。
【0032】
RBヘッジャーシステム110は、RBヘッジャーを実装するために、ハードウェアとソフトウェアとを含む。種々の態様では、RBヘッジャーは、ある意味においては、将来、より正確にさせそうである、ユーザー定義の観測期間にわたるヘッジをフィッティングする。特に、ヘッジを計算する観測期間と、ヘッジがヒストリカルデータに対してオーバーフィッティングしていないことを確実にする検証期間との両方を用いることによってそうする。
【0033】
一般的に言って、単純な線形回帰は、観測期間においてRBヘッジャーよりも、より正確に見えてくるだろう。しかしながら、今述べたことは、オーバーフィッティングが起こることがあるというインディケーションである。換言すれば、単純な線形回帰は、バックテスト期間に対して観測期間のより低いホールディングエラーを一般化しない。言い換えれば、モデルは、データセットのノイズを、新しい状況におけるより良い正確度に対応する信号よりも、より良く学習する。従来型ヘッジャーの場合、用いられるハイパーパラメータがなく、異なった最適化問題が解決されているので、モデルは、観測/バックテストデータをオーバーフィッティングしやすい。
【0034】
RBヘッジャーについては、反対が真であり、RBヘッジャーは、観測期間ではなくてバックテスト期間において対象資産に近づく。モデルが、観測期間のノイズに焦点を合わせるというモデルの傾向を減らすトレーニングへのバイアスを導入するハイパーパラメータの使用に基づいて、トレーニングし、検証し、テストすることができるので、オーバーフィッティングは、減らされる。今述べたことは、RBヘッジャーが、過去(観測期間)の間のノイズを無視するように学習し、ゆえに、将来、またはシミュレーションした将来(バックテスト期間)を予測するとき、より良く行うことをもたらす、正確度を向上させるメカニズムである。RBヘッジャーシステム110の種々の態様は、
図3を参照して、以下により詳細に説明される。
-
図2は、一態様に係る観測期間210、検証期間220、およびバックテスト期間230における対象資産および対応するヘッジポートフォリオのパフォーマンスを例示する。示される例では、観測期間210は、4か月の長さであるが、他の長さの観測期間210が用いられることがある。これには、より短い検証期間220(例えば、1か月)とバックテスト期間230(例えば、1か月)とが続く。
図2では、観測期間、検証期間、バックテスト期間がじかに接して続けざまに起こっているように示される。しかしながら、期間の間に切れ目があり得る。
【0035】
観測期間210は、最適化に用いるコアポートフォリオおよびヘッジに対する価格曲線の指定された日にちの範囲である。観測期間210は、RBヘッジャー最適化が「フィッティング」する期間に対応し、ただし、ヘッジにおける各資産の目標シェア数が確かめられ、(機械学習用語における)「トレーニング期間」を表す。従来型ヘッジャーでは、最適なウェイトが、構築されたヘッジポートフォリオの各構成部分に対して、確かめられる期間に対応する。観測期間210は、ユーザーによって選択されることがある。従来型ヘッジャーとは異なって、RBヘッジャーの場合、観測期間210の終わりの短い時間期間が、検証期間220と置き換えられる。
【0036】
検証期間220は、RBヘッジャーによって用いられるモデルが検証されて、最適な(または少なくともおおよそ最適な)ハイパーパラメータ値を見つける継続時間の範囲であり、最適化問題に用いられて、「シミュレートされたアウトオブサンプル期間(out-of-sample period)」における正確度を増大させる。今述べた期間は、RBヘッジャーによって自動的に構築されることがあり、ユーザーによって指定された観測期間210のサイズおよび日付に依存することがある。例えば、従来型ヘッジャーが2018年10月18日から2019年10月18日までの1年間の観測期間210を用いるならば、RBヘッジャーは、観測期間210を2018年10月18日から2019年9月18日までと、検証期間220を2019年9月19日から2019年10月18日までと選ぶことがある。他の態様では、異なる長さの検証期間220が用いられることがある。
【0037】
バックテスト期間230は、ヘッジのバックテストが実行される継続時間の範囲である。従来型ヘッジャーの場合、ユーザー指定の観測期間210と同じであり得る。従来型ヘッジャーモデルは、観測/バックテスト期間にわたって線形モデルをフィッティングし、今述べた期間のホールディングエラーを最小にすることを試みることがある。RBヘッジャーの場合、さらに、バックテスト期間230は、RBヘッジャーが、観測/検証期間の後の継続時間の範囲にわたって、対象資産のホールディングエラーをどれぐらい綿密にトラックしているかを測定される、「シミュレートされたアウトオブサンプル」または「テスト」期間としても知られる。今述べた期間は、観測/検証期間が決定された後、ユーザーによって選択されることがある。一態様では、今述べた期間に対する範囲は、22日間より長くなければならない。他の態様では、バックテスト期間230の可能性がある長さは、異なることがある。
【0038】
再び
図1を参照すると、クライアントデバイス140は、ネットワーク170を介してデータを送信するおよび受信するだけでなく、ユーザー入力を受信する性能があるコンピューティングデバイスである。クライアントデバイス140は、たとえば、デスクトップコンピューター、ラップトップコンピューター、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話、スマートフォン、および他の適切なデバイスなど、種々のかたちをとることが可能である。一態様では、クライアントデバイス140は、ユーザーがRBヘッジャーシステム110と互いに伝達し合うことがあるインターフェース(例えば、ブラウザによって与えられるウェブページ、アプリなど)を提供する。ユーザーがパラメーターを提供し、指定した資産に対するヘッジポートフォリオの作成を求める。さらに、クライアントデバイス140は、RBヘッジャーシステム110によって生成された結果として生じるヘッジングポートフォリオについてのユーザーへの情報を与えることもある。
【0039】
ネットワーク170は、ネットワーク化されたコンピューティング環境100の他の要素が通信する通信チャネルを提供する。ネットワーク170は、ワイヤードおよび/またはワイヤレス通信システムの両方を用いるローカルエリアおよび/またはワイドエリアネットワークのあらゆる組み合わせを含むことが可能である。一態様では、ネットワーク170は、標準的な通信技術および/またはプロトコルを用いる。例えば、ネットワーク170は、たとえば、イーサネット、802.11、WiMAX(worldwide interoperability for microwave access)、3G、4G、5G、符号分割多元接続(CDMA)、デジタル加入者線(DSL)などの技術を用いる通信リンクを含むことが可能である。ネットワーク170を介して通信するために用いられるネットワークプロトコルの例は、MPLS(Multiprotocol Label Switching)、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)、HTTP(Hypertext Transport Protocol)、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)、およびFTP(File Transfer Protocol)などを含む。ネットワーク170を介して交換されるデータは、たとえば、HTML(hypertext markup language)またはXML(extensible markup language)など、あらゆる適切なフォーマットを用いて表されることがある。いくつかの態様では、ネットワーク170のすべてまたはいくつかの通信リンクは、あらゆる適切な技法または一連の処理を用いて暗号化されることがある。
【0040】
図3は、RBヘッジャーシステム110の一態様を例示する。示される態様では、RBヘッジャーシステム110は、ユーザーインターフェースモジュール305、観測モジュール310、検証モジュール320、バックテストモジュール330、およびデータストア340を含む。他の態様では、ネットワーク化されたコンピューティング環境100は、異なったまたは追加の要素を含む。くわえて、機能は、説明されたのと異なったやり方において要素の各々に分配されることがある。
【0041】
ユーザーインターフェースモジュール305は、エンドユーザー(例えば、クライアントデバイス140)に表示するためのユーザーインターフェースを提供する。一態様では、ユーザーインターフェースは、エンドユーザーに、ヘッジポートフォリオが望まれる対象資産と、ハイパーパラメータ(例えば、集中および多様)に対して用いる値とを選択することを可能にするコントロールを含む。追加としてまたは代替えとして、ユーザーインターフェースは、エンドユーザーに、用いる観測期間、検証期間、またはバックテスト期間のうちの1つまたは複数を選択することを可能にするコントロールを含むことがある。さらに、ユーザーインターフェースは、対象資産に関して計算されたヘッジポートフォリオのパフォーマンスを示す1つまたは複数のメトリックを、数値、チャート、グラフ、および同類のもののかたちにて含むこともある。他の態様では、いくつかのパラメーターは、ハードコードされる、またはユーザーによって選択された他のパラメーターから決定されることがある。例えば、ユーザーインターフェースは、エンドユーザーに、観測期間210を選択することを可能にすることがあり、選択された観測期間210の後の1か月の期間は、検証期間220として自動的に選択されることがある。
【0042】
エンドユーザーがハイパーパラメータを変化させる(または異なる観測期間、検証期間、もしくはバックテスト期間を定義する)ならば、RBヘッジャーシステム110は、更新されたヘッジポートフォリオを自動的に決定し、ユーザーインターフェースに表示される1つまたは複数のメトリックを更新して、新たに計算したヘッジポートフォリオのパフォーマンスを示すことがある。ゆえに、エンドユーザーは、要求または好みに従ってハイパーパラメータを微調整し、ヘッジポートフォリオの結果を敏速に確認することが可能である。さらに、ユーザーインターフェースは、エンドユーザーに、計算されたヘッジポートフォリオを取得することを可能にするコントロールを含むこともある(例えば、電子トレーディングシステムにおいて資産に対する取引を始めることによって)。
【0043】
観測モジュール310は、観測期間210にわたる対象資産の価格にRBヘッジャーモデルをフィッティングする。観測モジュール310は、対象資産のパフォーマンスをできる限り綿密にトラックする資産のポートフォリオを返す。
【0044】
検証モジュール320は、検証期間220の間、対象資産の価格に基づいて、モデルのハイパーパラメータに対して値を選ぶ。ハイパーパラメータは、結果として得られるヘッジを最適化する目的により調整される調整可能なモデルパラメーターである。一態様では、ハイパーパラメータは、選択された値がヘッジに対してホールディングエラーを最小にするという意味において、結果として生じるヘッジを最適化する。
【0045】
ハイパーパラメータは、全モデルの集中および多様の一助となる、RBヘッジャーの調整可能な係数である。一態様では、ハイパーパラメータは、先に説明されているLassoハイパーパラメータおよびRidgeライクハイパーパラメータを含む。RBヘッジャーは、バイ・アンド・ホールドを解くので、検証モジュール320は、最適化問題におけるホールディングエラーを正確度の測定として利用する。ホールディングエラーは、ヘッジのリバランスをすることなく、指定された時間間隔(すなわち、観測期間、検証期間、およびバックテスト期間に対して異なる)にわたって、ヘッジとターゲットリターンとの差の標準偏差である。対照的に、従来のウェイトベースのヘッジャーは、一定のリバランスを仮定し、ヘッジのリバランスを考慮に入れ、トラッキングエラーを最小にすることを探し求めることがある。
【0046】
RBヘッジャーに対してホールディングエラーを最小にするために、検証モジュール320は、検証期間220において実行されるグリッドサーチアルゴリズムを用いて、Lasso値/Ridgeライク値についての可能性がある組み合わせのグリッドを考慮する。グリッドサーチは、今述べた期間の間ホールディングエラーを最小にする、ハイパーパラメータ(Lasso値/Ridgeライク値)の最適な組を選ぶ。次に、選択されたハイパーパラメータは、観測期間210における線形モデルをリフィッティングするのに用いられ、ホールディングエラーを測定するバックテスト期間230において用いられる。今述べたアプローチは、検証期間220の長さ(例えば、デフォルトによる1か月)に等しい所有期間、RBヘッジャーを最適化する。
【0047】
バックテストモジュール330は、RBヘッジャーが、観測/検証期間の後の継続時間の範囲にわたって、対象資産のパフォーマンスをどれぐらい綿密にトラックしているかを測定する。今述べた継続時間の範囲は、「シミュレートされたアウトオブサンプル」期間に対応する。RBヘッジャーは、今述べた期間においてパフォーマンスを最大にするつもりである。言い換えれば、目的は、RBヘッジャーが出力する計算されたヘッジを投資者が実際に所有するのであろう期間をシミュレートするので、ヘッジャーが、今述べた期間の間、対象資産をできる限り綿密にトラックすることである。
【0048】
データストア340は、RBヘッジャーシステム110によって用いられるデータおよびソフトウェアを格納する1つまたは複数のコンピューター読取り可能媒体を含む。例えば、パラメトライズされたモデル、および、対象資産の価格とヘッジポートフォリオの資産の価格とのデータセットは、すべて、データストアに格納されることがある。データストア340は、RBヘッジャーシステム100内の単一のエンティティとして示されるが、複数の部分に区分されることがあり、いくつかまたはすべてが(例えば、ネットワーク170を介して)リモートアクセスされることがある。
【0049】
例示的な方法
図4は、一態様に係るRBヘッジャーを用いて対象資産に対してヘッジポートフォリオを識別するための方法400を例示する。
図4のステップは、方法400を行うRBヘッジャーシステム110の観点から例示される。しかしながら、いくつかまたはすべてのステップは、他のエンティティまたはコンポーネントによって行われることがある。くわえて、いくつかの態様は、ステップを並列に行う、ステップを異なった順にて行う、または異なったステップを行うことがある。
【0050】
図4に示される態様では、方法400は、RBヘッジャーシステム110が対象資産の選択を受信する410ことにより始まる。例えば、ユーザーは、クライアントデバイス140に表示されるユーザーインターフェースを介して、望ましい対象資産を選択することがあり、選択は、ネットワーク170を介して、RBヘッジャーシステム110に送られることがある。さらに、システムは、観測期間210、検証期間220、およびバックテスト期間230のユーザー選択を受信することもある。代替えとして、今述べた期間のうちの1つまたは複数に対してデフォルトの時間範囲が用いられることがある。
【0051】
RBヘッジャーシステム110は、観測期間210の間、対象資産と、可能性があるヘッジ資産とに対する価格データに基づいて、RBヘッジモデルをトレーニングする420。RBヘッジャーシステム110は、検証期間220の間の資産に対する価格データに基づいて、モデルに対して初期ハイパーパラメータを選ぶ430ことがある。一態様では、初期ハイパーパラメータは、ヘッジポートフォリオのホールディングエラーを最小にするために選ばれる430。RBヘッジャーシステム110は、モデルを、バックテスト期間230の間、資産に対する価格データに適用する440。
【0052】
RBヘッジャーは、ヘッジポートフォリオの各資産に対して最適なシェア数を計算し、結果をユーザーに与える450。一態様では、ユーザーに与えられた450結果は、ヘッジポートフォリオを構成する資産と、たとえば、ホールディングエラー、トラッキングエラーなど、1つまたは複数のパフォーマンスメトリックとを含む。今述べたアプローチの1つの有利な点は、ヘッジポートフォリオが、日次リバランスすることなく、バックテスト期間230の初めから終わりまで(または実質的な部分に対して)所有されると仮定されることである。今述べたことは、最適なシェア数ではなくヘッジポートフォリオの各資産に対して最適なウェイトを計算する以前の方法との相違にある。今述べた以前の方法の不利な点は、日次、ヘッジポートフォリオを定期的に(例えば、日次)リバランスすることによってのみ実現されることが可能であるソリューションを提供し、追加の取引費用を招くことである。例として、ヘッジソリューション(hedge solution)がウェイトフォーミュレーション(weights formulation)において資産A50%および資産B50%であるとしよう。各資産に対して50%のウェイトを維持するために、ポートフォリオは、日次リバランスされなければならない(資産Aが値上がりすることが可能であり、資産Bが値下がりすることが可能であり、今、あなたは、あなたのポートフォリオに資産A51%および資産B49%を有するので)。もしソリューションがAの50シェアおよびBの50シェアであるならば、たとえ価格が上がってもまたは下がっても、あなたは、以前として各資産の50シェアを維持するだろう。
【0053】
結果がユーザーに与えられる450と、ユーザーは、ユーザーインターフェースを介してモデルの1つまたは複数の設定(例えば、1つまたは複数のハイパーパラメータの値)を修正することがある。RBヘッジシステム110は、更新された設定を受信すると、モデルを再トレーニングし、更新された結果をユーザーに与える450。例えば、モデルは、更新された設定を用いて観測期間および検証期間に対してリフィッティングされ、バックテスト期間に再適用されて、再トレーニングされたモデルに対する1つまたは複数のパフォーマンスメトリックを生成することがある。ゆえに、ユーザーは、異なった選択(例えば、多様ハイパーパラメータおよび集中ハイパーパラメータについての異なった値)が、計算されたヘッジポートフォリオの構成およびパフォーマンスにどのような影響を与えるかを調べることが可能である。
【0054】
さらに、ユーザーインターフェースは、ユーザーに、RBヘッジツールによって計算されたヘッジポートフォリオを獲得する取引を始める460ことを可能にするコントロールを含むこともある。例えば、ユーザーが異なった設定の実験をし、ユーザーの要求および好みを満たすヘッジポートフォリオがユーザーインターフェースに表示されれば、ユーザーは、ボタン、または他のコントロールを選択して、現在表示されているヘッジポートフォリオを取得する電子トレーディングシステムにより取引に自動的に投資することがある。
【0055】
例示的なユースケース
図5Aは、従来のヘッジツールのパフォーマンスを例示する。
図5Aは、バックテスト期間230(2018年5月21日から2018年6月29日の間)において対象資産に適用された従来型ヘッジャーに対するパフォーマンス曲線(資産リターンにおける百分率の変化に関して)のペアを含む。ヘッジ線は、コア(対象資産)線をトラックしており、トラッキングエラーを最小にしようと試みる。
【0056】
図5Bは、RBヘッジャーの一態様のパフォーマンスを例示する。
図5Bは、バックテスト期間230(2018年5月21日から2018年6月29日の間)において対象資産に適用されたRBヘッジャーに対するパフォーマンス曲線(資産リターンにおける百分率の変化に関して)のペアを含む。ヘッジ線は、コア(対象資産)線をトラックしており、ホールディングエラーを最小にしようと試みる。バックテスト期間230におけるトラッキングエラーおよびホールディングエラーは、両方とも、従来型ヘッジャーと比較してRBヘッジャーについては、より小さいことに気付こう。
【0057】
図6は、一態様に係る種々のメトリックのLassoハイパーパラメータについての影響を示す図である。メトリックは、バックテスト期間230における対象資産に対して生成された取引費用、トラッキングエラー、ホールディングエラー、および資産数を含む。今述べたことは、RBヘッジャーに対してユーザーインターフェースの異なったハイパーパラメータ値をトグルするときの間、ユーザーが選ぶことが可能であるトレードオフを例示する。この場合には、Ridgeライクハイパーパラメータが10に固定されて、ティーのLassoハイパーパラメータが0から10まで変わるとして起こるメトリックの変化を例示する。しかしながら、ユーザーは、今述べたハイパーパラメータの両方を修正して、自分の要求をフィッティングすることを選ぶことが可能である。
【0058】
図7Aおよび
図7Bは、従来型ヘッジャーに関してRBヘッジャーの一態様のパフォーマンスを例示する。RBヘッジャーは、パフォーマンスを検証する種々のやり方においてバックテストされた。結果は、RBヘッジャーが、特に、資産のより大きなユニバースにわたって計算されたヘッジに対して、従来型ヘッジャーの正確度を向上させることを示す。バックテストは、実際のヘッジに類似したヘッジの代表的なセットに実行された。今述べたヘッジの各々に対して、単純な線形回帰の正確度は、計算の翌月(すなわちバックテスト期間230の間)のRBヘッジャーの正確度と比較された。
【0059】
結果は、101のヘッジのサンプル(101の一意的なターゲット、想定元本のランダムな選択、観測期間210、最大リターン偏差、最大デイリーボリューム(daily volume)、および、ラッセル3000インデックスからの資産を用いてヘッジを構築すること)に対してである。
図7Aは、RBヘッジャーによって生成されたヘッジと従来型ヘッジャーによって生成された対応するヘッジとのホールディングエラーを比較する。RBヘッジャーは、今述べたランダムなヘッジのほとんどに対して、より低いホールディングエラーを有した。
図7Bは、RBヘッジャーによって生成されたヘッジと従来型ヘッジャーによって生成された対応するヘッジとに対する取引費用を比較する。この場合に用いられる取引費用は、ゴールドマンサックスによるヘッジにおけるポジションをトレーディングすることについての加重平均予想費用である。RBヘッジャーは、今述べたランダムなヘッジのほとんどに対して、より低い取引費用を有した。
【0060】
図8Aから
図8Cは、RBヘッジャーの一態様に対して、種々のメトリックにおけるLassoハイパーパラメータおよびRidgeライクハイパーパラメータの影響を例示する。RBヘッジャーが150のランダムな対象資産に対してバックテストされて、種々のメトリックが、LassoハイパーパラメータおよびRidgeライクハイパーパラメータが変化されることについての値をどう変えるかを比較した。今述べたメトリックは、取引費用、トラッキングエラー、ホールディングエラー、ヘッジポートフォリオの資産数、および、ヘッジポートフォリオの資産のウェイトについての標準偏差を含む。結果は、ハイパーパラメータ値の範囲を考慮し、次に各メトリックを平均し平均値をプロットすることによって、分析された。今述べたプロットは、ハイパーパラメータが変えられている状態でフィッティングされたヘッジの挙動のインディケーションを与える。
【0061】
特に、
図8Aから
図8Cは、782のヘッジ(150の一意的なターゲット、想定元本のランダムな選択、観測期間210、最大リターン偏差、最大デイリーボリューム、および、S&P500、ラッセル3000、またはナスダック100の間のユニバースのランダムな選択)から生成された平均メトリックを例示する。各メトリックに対する平均値は、ヘッジに用いられたRidgeライクハイパーパラメータによってグループ分けされたヘッジのすべてに基づいて計算される。
【0062】
図8Aは、Lassoハイパーパラメータにおける変動に対する平均取引費用、トラッキングエラー、ホールディングエラー、および資産数を示す図である。Ridgeライクハイパーパラメータは、固定されて0である。
図8Bは、Ridgeライクハイパーパラメータにおける変動に対する平均取引費用、トラッキングエラー、ホールディングエラー、および資産数を示す図である。Lassoハイパーパラメータは、固定されて0である。
図8Cは、Ridgeライクハイパーパラメータの変動に対する平均取引費用、トラッキングエラー、ホールディングエラー、および重みの標準偏差を示す図である。Lassoハイパーパラメータは、固定されて0である。今述べたプロットは、ハイパーパラメータが、異なった目的を達成するのにどのように調整されることがあるかを示す。例えば、低いホールディングエラーは、高いRidgeライク値および低いLasso値を用いて取得されることがあるが、さらに、今述べたことは、ヘッジポートフォリオの資産数も増やし、望ましくないことがある。
【0063】
例示的なユーザーインターフェース
図9は、一態様に係るRBヘッジツールのための例示的なユーザーインターフェース900を例示する。示される態様では、ユーザーインターフェース900は、対象資産ボックス902、総額ボックス904、観測期間ボックス912、検証期間ボックス914、バックテスト期間ボックス916、集中スライダー922、多様スライダー924、メトリック表示領域930、およびヘッジ取得ボタン940を含む。描かれたユーザーインターフェース900は、簡略化されて、RBヘッジャーツールの種々の側面を例示する。他の態様では、ユーザーインターフェース900は、異なったまたは追加の要素を含むことがある。
【0064】
対象資産ボックス902は、現在選択されている対象資産を識別する。ユーザーは、対象資産ボックス902をクリックするないしは別の方法によって、異なった対象資産を選ぶことがある。例えば、ユーザーは、資産の名前をタイプする、利用可能な資産のドロップダウンリストから資産を選択すること、または資産のストック(stock)のティッカー等を提供することがある。
【0065】
総額ボックス904は、ヘッジポートフォリオによってヘッジされる対象資産の総額を示す。
図9では、総額は、ドル値として示される。しかしながら、総額は、たとえば、異なった通貨における値、または資産のインスタンスの数(例えば、シェア数)など、他の方法で示されることがある。
【0066】
観測期間ボックス912、検証期間ボックス914、およびバックテスト期間ボックス916は、それぞれ、現在選択されている観測期間、検証期間、およびバックテスト期間を表示する。ユーザーは、今述べたボックスを選択して、対応する期間を修正することがある。ユーザーは、たとえば、開始日および終了日を入力すること、またはポップアップカレンダーから日付の範囲を選択することなど、あらゆる適切な方法にて期間を定義することがある。いくつかの態様では、1つまたは複数の期間は、自動的に決定され、ユーザーによって編集可能でないことがある。例えば、デフォルトの期間、たとえば、バックテスト期間に対して直前の月、検証期間に対してその前の月、観測期間に対してその前の4か月などが用いられることがある。別の例として、ユーザーは、1つの期間(例えば、観測期間)を選択することがあり、他の期間は、ユーザーの選択に基づいて自動的に決定されることがある(例えば、常に検証期間は観測期間の直後の1か月期間であり得る)。
【0067】
集中スライダー922および多様スライダー924は、ユーザーに、それぞれ、集中ハイパーパラメータおよび多様ハイパーパラメータの値を修正することを可能にする。コントロールの他のタイプが、ハイパーパラメータを修正するのに用いられることは、理解されるべきである。さらに、他のハイパーパラメータを修正するためのコントロールは、RBヘッジャーによって用いられている原となるモデルしだいに、ユーザーインターフェース900に含まれることがあることも理解されるべきである。
【0068】
メトリック表示領域930は、ユーザーインターフェース900において他のところに提供される値を用いて、RBヘッジャーによって生成されたヘッジポートフォリオについての情報を含む。一態様では、メトリック表示領域930は、バックテスト期間の間の対象資産に関して生成されたヘッジポートフォリオのパフォーマンスを示す1つまたは複数のメトリックに対する値を表示する。メトリックは、トラッキングエラー、ホールディングエラー、日次相関、ヘッジ取引費用、年間ボラティリティ、ヘッジポートフォリオおよび対象資産の相対価格を示すチャート、および同類のものを含むことがある。ユーザーがRBヘッジャーのどんな設定でも更新したならば(例えば、ハイパーパラメータのうちの1つの値を変化させることによって)、ヘッジポートフォリオは、再計算され、メトリック表示領域930に表示されるメトリックは、自動的に更新されることがある。
【0069】
メトリック表示領域930に表示されたメトリックがユーザーの要求および好みを満たすとき、ユーザーは、現在の設定を用いて、RBヘッジャーによって生成されたヘッジポートフォリオを取得する取得ヘッジボタン940を選択する(例えば、クリックする)ことがある。一態様では、RBヘッジャーシステム110は、ユーザーに対してヘッジポートフォリオにおける資産を取得する電子トレーディングシステムとの取引を自動的に始める。代替えとして、取得ヘッジボタン940を選択することは、ヘッジポートフォリオにおける資産のリストを表示し、ユーザーがヘッジポートフォリオにおける資産を取得する注文を行うことが可能であるトレーディングインターフェースを開くことがある。
【0070】
コンピューティングシステムアーキテクチャ
図10は、RBヘッジャーシステム110またはクライアントデバイス140としての使用に適した例示的なコンピューター1000を例示する。例示的なコンピューター1000は、チップセット1004に接続された少なくとも1つのプロセッサー1002を含む。チップセット1004は、メモリーコントローラーハブ1020、および入力/出力(I/O)コントローラーハブ1022を含む。メモリー1006およびグラフィックスアダプター1012は、メモリーコントローラーハブ1020に接続され、ディスプレイ1018は、グラフィックスアダプター1012に接続される。ストレージデバイス1008、キーボード1010、ポインティングデバイス1014、およびネットワークアダプター1016は、I/Oコントローラーハブ1022に接続される。コンピューター1000の他の態様は、異なったアーキテクチャを有する。
【0071】
図10に示される態様では、ストレージデバイス1008は、たとえば、ハードドライブ、CD-ROM(compact disk read-only memory)、DVD、またはソリッドステートメモリーデバイスなど、非一時的なコンピューター読取り可能記録媒体である。メモリー1006は、プロセッサー1002によって用いられる命令およびデータを保持する。ポインティングデバイス1014は、マウス、トラックボール、タッチスクリーン、または他のタイプのポインティングデバイスであり、キーボード1010(オンスクリーンキーボードであり得る)との組み合わせにおいて用いられて、コンピューターシステム1000にデータを入力する。グラフィックスアダプター1012は、ディスプレイ1018に画像および他の情報を表示する。ネットワークアダプター1016は、コンピューターシステム1000を1つまたは複数のコンピューターネットワーク(例えば、ネットワーク170)に接続する。
図1および
図3のエンティティによって用いられるコンピューターの種類は、態様、およびエンティティにより必要とされる処理力しだいで変わる。その上さらに、コンピューターは、たとえば、キーボード1010、グラフィックスアダプター1012、およびディスプレイ1018など、上に説明されるコンポーネントのいくつかを欠くことが可能である。
【0072】
追加の考慮事項
上の説明のいくつかの部分は、アルゴリズム処理または動作に関して態様を説明する。今述べたアルゴリズム説明および表現は、コンピューティング技術者によって一般に用いられて、自分の成果の内容を効果的に他の当業者に伝える。今述べた動作は、機能的に、計算的に、または論理的に説明されるが、プロセッサーまたは同等の電気回路、マイクロコードまたは同類のものによる実行のための命令を含むコンピュータープログラムによって実装されると理解される。その上さらに、機能的な動作の今述べた配置をモジュールと呼ぶと、一般性を損なうことなく、ときどき便利であることも分かっている。
【0073】
本明細書に用いられている「一態様」または「態様」へのどんな言及でも、態様に関連して説明される特定の要素、特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。本明細書の種々のところの語句「一態様では」の出現は、必ずしもすべて同じ態様を言及していない。同様に、要素または構成要素の直前の「a」または「an」の使用は、単に便利なようにされる。今述べた説明は、ほかに意味されることが明らかではない限り、1つまたは複数の要素または構成要素が存在していることを意味すると理解されるべきである。
【0074】
値が「おおよそ」または「実質的に」(またはそれらの派生)として説明される場合、上記の値は、別を意味することが文脈から明らかにならない限り、正確な±10%として解釈されるべきである。例えば、「おおよそ10」は、「9から11までの範囲」を意味することが理解されるべきである。
【0075】
本明細書に用いられている用語「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」、またはあらゆる他の変形は、非排他的な包含に及ぶことに意図される。例えば、要素のリストを含む処理、方法、物品、または装置は、必ずしも今述べた要素のみに限定されず、明示的にリストアップされていない他の要素、または上記の処理、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含むことがある。さらに、明示的に反対に述べられない限り、「または」は、包含的論理和を引用し、排他的論理和を引用しない。例えば、条件AまたはBは、次の、Aが真である(または存在する)かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽である(または存在しない)かつBが真である(または存在する)、AおよびBの両方が真である(または存在する)、のうちのいずれか1つを満たす。
【0076】
本開示を読むとすぐに、当業者は、ヘッジポートフォリオのパフォーマンスをシミュレートするためのシステムおよび処理に対して、依然として追加の代替えの構造設計および機能設計を理解するだろう。ゆえに、特定の態様および適用が例示され説明されたが、説明された主題が、開示された厳密な構造および構成要素に限定されないことは、理解されることである。保護の範囲は、最後に表れるだろういずれかの請求項によってのみ限定されるべきである。