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特許7280456湾曲バルーンカテーテル開創装置及びその開創方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】湾曲バルーンカテーテル開創装置及びその開創方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/02 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
A61B17/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020549849
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 CN2018103280
(87)【国際公開番号】W WO2019072047
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】201710938901.9
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520327995
【氏名又は名称】上海科▲賜▼医▲療▼技▲術▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI KECI MEDICAL TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Room408-1, 4th Floor, Building 3, No. 55 Rongyang Rd, Songjiang District Shanghai 201613 China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】ジャン チュアンハイ
(72)【発明者】
【氏名】スバクリシュナ シャンカー
(72)【発明者】
【氏名】リ ファンチ
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0252027(US,A1)
【文献】特表2017-506563(JP,A)
【文献】特開平07-255855(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0287286(US,A1)
【文献】国際公開第2017/049313(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端にハンドルを有するカテーテルと、前記カテーテルの外部に設けられた位置決め手段及び引っ張りバルーンとを含み、
前記カテーテル内に1つ又は複数のルーメンが設けられ、前記カテーテルの部分に少なくとも1つの孔が設けられ、少なくとも1つの前記ルーメンが前記孔を通じて前記引っ張りバルーンに対して流体の注入及び放出を行い、流体が注入された場合に前記引っ張りバルーンが一側へ湾曲し、前記ハンドルが前記カテーテル及び前記引っ張りバルーンを回転させることができることを特徴とする、
湾曲バルーンカテーテル開創装置。
【請求項2】
前記位置決め手段は、X線により体内での位置を観察できる、現像剤を含む装置であることを特徴とする、
請求項1に記載の湾曲バルーンカテーテル開創装置。
【請求項3】
前記位置決め手段は、前記カテーテルの一定位置にあり、流体が注入された後に人体の内部管腔を係止できる1つ又は複数の位置決め用バルーンであることを特徴とする、
請求項1に記載の湾曲バルーンカテーテル開創装置。
【請求項4】
前記ハンドルは、把持用の固定部分と、角度を回転して調整可能な部分とを含むことを特徴とする、
請求項1に記載の湾曲バルーンカテーテル開創装置。
【請求項5】
前記ハンドルには、前記ハンドルを回転させる場合に前記引っ張りバルーンの相対方位角度をマーキングするための角度を明記する目盛りがあることを特徴とする、
請求項4に記載の湾曲バルーンカテーテル開創装置。
【請求項6】
前記カテーテルは、それ自体の捻れが生じにくい材質を採用し、前記カテーテルの人体の管腔外に残す部分が回転する場合、前記引っ張りバルーンは同時に一定の比率の角度だけ回転することを特徴とする、
請求項1に記載の湾曲バルーンカテーテル開創装置。
【請求項7】
前記カテーテルには、前記カテーテルの挿入の深さをマーキングするための長さの目盛りがあることを特徴とする、
請求項1に記載の湾曲バルーンカテーテル開創装置。
【請求項8】
前記ルーメンのうちの1つ又は複数の前記ルーメンは、前記位置決め用バルーンに流体を注入するために用いられることを特徴とする、
請求項3に記載の湾曲バルーンカテーテル開創装置。
【請求項9】
前記ルーメンのうちの少なくとも1つの前記ルーメンは、貯留体液を排出するために用いられることを特徴とする、
請求項1に記載の湾曲バルーンカテーテル開創装置。
【請求項10】
前記貯留体液を排出するための前記ルーメンの前記カテーテルにおける開口位置は、前記引っ張りバルーンの上端に位置し、前記位置決め用バルーンがある場合は前記位置決め用バルーンの上端に位置することを特徴とする、
請求項9に記載の湾曲バルーンカテーテル開創装置。
【請求項11】
前記ルーメンのうちの少なくとも1つの前記ルーメンは、現像剤を噴射するために用いられ、現像剤を噴射する孔は、前記引っ張りバルーンの上端に位置し、もし前記位置決め用バルーンがあれば、前記引っ張りバルーンと上端の前記位置決め用バルーンとの間に位置することを特徴とする、
請求項1に記載の湾曲バルーンカテーテル開創装置。
【請求項12】
前記ルーメンのうちの少なくとも1つの前記ルーメンは、負圧を生成するために用いられ、その開孔位置が両端の前記位置決め用バルーンの中間に位置し、負圧を生成するための孔は1つでも複数でもよいことを特徴とする、
請求項1に記載の湾曲バルーンカテーテル開創装置。
【請求項13】
前記引っ張りバルーンは、X線下で完全に現像する機能を有するために、現像剤が混合された原料で製造することができることを特徴とする、
請求項1に記載の湾曲バルーンカテーテル開創装置。
【請求項14】
前記引っ張りバルーンは、食道開創に用いられ、食道の第2の狭窄部と第3の狭窄部との間に位置し、流体が注入された前記位置決め用バルーンの直径が狭窄箇所の食道の直径より大きいことを特徴とする、
請求項3に記載の湾曲バルーンカテーテル開創装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル開創器に関し、特に湾曲バルーンカテーテル開創装置及びその開創方法に関する。
【背景技術】
【0002】
開創器(retractors)は、引っ張りフックとも呼ばれ、探査及び操作を容易に行うように組織を開創して手術範囲を露出させるためのものであり、手持ち式引っ張りフックと自動引っ張りフックの二種類に分けられる。様々な異なる形状及び大きさの仕様があり、手術の必要に応じて適切な引っ張りフックを選択することができる。
【0003】
従来の開創器は、大きな操作スペースを必要としたので、大きな手術創をもたらす。また、従来の開創器は、金属製が多く使用されているとともに、鋭い端があるため、患者の二次損傷が起こって、重要臓器組織を損傷しやすい。
【0004】
現在、伸縮可能な内視鏡の作業ルーメンを貫通する伸縮可能な組織開創器は徐々に広く応用されている、それはルーメンことができる。組織開創器は、伸縮可能な内視鏡検査、腹腔鏡検査及び通常外科手術を含む、内視鏡及び開腹手術に応用されている。このような組織開創器の長さ及び直径は、外科手術での具体的な要求に適応するために、一定であっても変更可能であってもよい。伸縮可能な内視鏡の組織開創器は、器官組織を固定することにより、ある方式で開創して操作することができる。
【0005】
カテーテル開創器は、手術中の組織開創に用いられ、前記製品は、自然開口部介入又は開放手術介入により開創操作を完了する。手術は、様々な腹腔鏡手術、心血管手術、脳部手術、消化管手術、泌尿器疾患手術などを含むが、これらに限定されず、開創された組織は、胃腸、食道、気道、尿道、膣、膀胱などを含むが、これらに限定されない。開創の目的は、特定の組織を保護し、特定の組織を移動して手術操作を容易にすることを含むが、これらに限定されない。
【0006】
バルーン膨張変形を利用して組織の間に隙間を生成することは、金属開創器よりも優れた方法であり、それは体積が小さく、人体組織を過度に損傷しないという前提で隔離を必要とする人体組織部分に入れることができる。また、膨張した後のバルーン表面は、滑らかで柔軟であり、人体組織に損傷を与えにくい。例えば中国特許出願200580028684.5には組織偏位/分離装置が開示されている。該装置は、体の第1の組織と第2の組織との間で膨張可能なバルーンを含む。該バルーンは、第2の組織に適用される治療の影響から第1の組織を保護するのに好適な方式で第1の組織を第2の組織から偏位するか又は分離することができるように選択された膨張形状を有する。
【0007】
しかしながら、この発明には、バルーン膨張により人体組織を隔離する可能性だけが開示されており、原始的な膨張式バルーンはいかなる人体組織においても膨張隔離に用いられることに適しない。ある程度で、このようなバルーンを用いて人体内に気体を注入することは、巨大な潜在的リスクをもたらす場合がある。また、該バルーンは、一定の気圧下で人体組織に密着し、異なる組織を隔離できるが、両者の間の限られたスペースを密に充填して手術をより困難にし、鋭利な手術器具及び灼熱の手術手段であればバルーンが破裂するリスクがある。したがって、該バルーン膨張装置は、機械的開創器に比べて、大きな変位の開創を効果的に実現することができず、かつ手術スペースを占有し、人体組織を隔離する役割のみを果たす。また、体外からバルーンの具体的な位置を判断することも困難であるが、一般的にはこのような手術はかなり精密である。さらに、体内の貯留体液も排除しにくく、新たなリスクをもたらす。
【0008】
したがって、バルーンの膨張と機械開創との両方の利点を組み合わせるために、より完璧でかつ人体の手術の実際の状況に適合する、バルーンを開創器とする手術装置が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に基づいて、自然開口部介入又は開放手術介入の開創操作のために、従来のカテーテル開創器及びバルーン隔離装置の精度及び信頼性が高くなく、人体の手術に適応できないという問題を解決して、簡単で信頼的なカテーテル開創を実現する湾曲バルーンカテーテル開創装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、一端にハンドルを有するカテーテルと、カテーテルの外部に設けられた位置決め手段及び引っ張りバルーンとを含み、カテーテル内に1つ又は複数のルーメンが設けられ、カテーテル部分に少なくとも1つの孔が設けられ、少なくとも1つのルーメンが該孔を通じて引っ張りバルーンに対して流体の注入及び放出を行い、流体が注入された場合に該引っ張りバルーンが一側へ湾曲し、前記ハンドルがカテーテル及び引っ張りバルーンを回転させることができる湾曲バルーンカテーテル開創装置を提供する。
【0011】
位置決め手段は、X線によりその体内での位置を観察できる、現像剤を含む装置であってよい。位置決め手段は、カテーテルの一定位置にあり、流体が注入された後に人体の内部管腔を係止できる1つ又は複数の位置決め用バルーンである。ハンドルは、把持用の固定部分と、角度を回転して調整可能な部分とを含む。ハンドルには、ハンドルを回転させる場合に引っ張りバルーンの相対方位角度をマーキングするための角度を明記する目盛りがある。カテーテルは、それ自体の捻れが生じにくい材質を採用し、カテーテルの人体の管腔外に残す部分が回転する場合、引っ張りバルーンは同時に一定の比率の角度だけ回転する。カテーテルには、カテーテル挿入の深さをマーキングするための長さの目盛りがある。ルーメンのうちの1つ又は複数のルーメンは、位置決め用バルーンに気体を注入するために用いられる。ルーメンのうちの少なくとも1つのルーメンは、貯留体液を排出するために用いられる。貯留体液を排出するためのルーメンのカテーテルでの開口位置は、引っ張りバルーンの上端に位置し、位置決め用バルーンがあると、位置決め用バルーンの上端に位置する。ルーメンのうちの少なくとも1つのルーメンは、現像剤を噴射するために用いられ、現像剤を噴射する孔は、引っ張りバルーンの上端に位置し、位置決め用バルーンがあると、引っ張りバルーンと上端の位置決め用バルーンとの間に位置する。ルーメンのうちの少なくとも1つのルーメンは、負圧を生成するために用いられ、その開孔位置が両端の位置決め用バルーンの中間に位置し、負圧を生成するための孔は1つでも複数でもよい。引っ張りバルーンは、X線下で完全に現像する機能を有するために、現像剤が混合された原料で製造することができる。前記引っ張りバルーンは、食道開創に用いられ、食道の第2の狭窄部と第3の狭窄部との間に位置し、流体が注入された位置決め用バルーンの直径が狭窄箇所の食道の直径より大きい。
【0012】
本発明は、心臓アブレーション手術の食道開創に用いられる湾曲バルーンカテーテル開創装置を提供することを他の目的とし、この目的を達成するために、本発明は、ハンドル、マルチルーメンカテーテル、2つの位置決め用バルーン、1つの引っ張りバルーンを含み、マルチルーメンカテーテル中の3つのルーメンは、3つのバルーンが所在する位置に、3つのバルーンにそれぞれ流体を注入するための孔がそれぞれ開設され、2つの位置決め用バルーンは、引っ張りバルーンの両端に位置し、流体が注入された場合にそれぞれ食道を係止して固定するために用いられ、流体が注入された場合に引っ張りバルーンが湾曲して、食道を湾曲させて元の位置から離れる湾曲バルーンカテーテル開創装置を提供する。
【0013】
前記4つのルーメンは、それぞれ中間の大きいルーメンと、周囲の複数の小さいルーメンであり、各小さいルーメンは、各バルーンが所在する位置に、バルーンにそれぞれ気体を注入するための孔がそれぞれ開設され、中間の大きいルーメンは、上端の位置決め用バルーンの上面に、唾液を排出するための孔が開設される。もう1つのルーメンは、位置決め用バルーンと引っ張りバルーンとの間に、食道の開創部位を抽気するための孔が開設される。さらにもう1つのルーメンは、食道の湾曲状況を表示するために、食道の内壁に現像剤を噴射することができる。
【0014】
本発明は、安全で効果的な湾曲バルーンカテーテル開創方法を提供することをさらに他の目的とする。この目的を達成するために、本発明は、流体が注入されていない湾曲バルーンカテーテルを、開創する必要がある人体の管腔内に挿入するステップと、位置決め用バルーンが所定位置に到達したか否かを監視するステップと、位置決め用バルーン内に流体を注入してそれを人体の管腔内に係止させるステップと、引っ張りバルーンに流体を注入してそれを湾曲させて、人体の管腔を湾曲して開創するという目的を達成するステップと、を含むことを特徴とする湾曲バルーンカテーテル開創方法を提供する。
【0015】
位置決め用バルーンに流体を注入した後、さらに、負圧を生成するためのルーメンを利用して流体を吸引するステップを含み、その後、引っ張りバルーンを押し広げて、管腔を湾曲させるという目的を達成する。
【0016】
本発明は、バルーンカテーテルを口腔又は鼻腔から食道に挿入し、末端の位置決め用バルーンが食道の第2の狭窄部と第3の狭窄部との間に入る場合、末端の位置決め用バルーンを押し広げ、かつ第3の狭窄部の上面まで押し続けるステップと、上端の位置決め用バルーンを押し広げて第2の狭窄部の下方に係止させるステップと、カテーテル及びハンドル上のマークにより、湾曲の方向と心臓との相対位置を決定し、中間の引っ張りバルーンを押し広げて湾曲させて、さらに食道を湾曲させて心臓又は心臓手術位置から離れるステップと、を含むことを特徴とする食道開創に用いられる湾曲バルーンカテーテルの開創方法を提供することをさらに他の目的とする。
【0017】
使用中に引っ張りバルーンの位置を移動させる必要がある場合に、ハンドルを回転させることでカテーテル及びバルーンを回転させて、さらに食道を回転させることにより、手術中に避ける必要がある組織又は位置を常に避ける。バルーンは、食道開創に用いられる場合、食道の第2の狭窄部と第3の狭窄部との間に位置し、流体が注入された位置決め用バルーンの直径が狭窄箇所の食道の直径より大きい。使用時に、まず位置決め用バルーンに流体を注入し、次に負圧を生成するためのルーメンを利用して抽気し、最後に引っ張りバルーンを押し広げて、食管湾曲の目的を達成する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の有益な効果は次のとおりである。本発明は、組織開創のためにより優れた器具を提供し、従来の組織開創方式に比べて、その制御可能性がより優れ、より安全に使用でき、患者がより快適であり、食道開創のような特定の場合で、従来の器具の経口挿入方式を経鼻挿入に変更することができ、操作性がより優れ、 位置決め用バルーン及び回転目盛りの使用により、開創操作(作用部位及び開創方位)がより精確になり、増加したルーメン及び開孔により、唾液排出、現像剤噴射、負圧生成などのより多くの実用的な操作を実現している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の概略構成図である。
図2】本発明のカテーテル部分の断面図である。
図3】本発明のハンドル部分の概略図である。
図4】本発明の一実施例の概略図である。
図5】本発明の他の実施例の概略図である。
図6図5の実施例のカテーテル部分の断面図である。
図7】本発明のさらに他の実施例の概略図である。
図8図7の実施例のカテーテル部分の断面図である。
図9】湾曲バルーンカテーテル開創装置で食道を開創する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面及び実施例を合わせて本発明をさらに詳しく説明する。
【0021】
まず、本発明の概略構成図である図1を参照する。図1に示すように、本発明の湾曲バルーンカテーテル開創器は、一端にドレナージチューブ及びバルブ1を有するハンドル2と、カテーテル5の外部に設けられた位置決め手段3及び引っ張りバルーン4とで構成され、カテーテル5内に1つ又は複数のルーメンが設けられ、位置決め手段3内でのカテーテル部分に少なくとも1つの孔が設けられ、少なくとも1つのルーメンは、ドレナージチューブ及びバルブ1により制御された流体の注入放出用ルーメンであり、該孔を通じて位置決め手段3と引っ張りバルーン4に対して一般的に液体と気体である流体の注入及び放出を行い、流体が注入された場合に該引っ張りバルーン4が一側へ湾曲する。一実施例では、注射器から吸気口に気体を注入する。気体を注入した後にドレナージチューブ及びバルブ1を閉じて引っ張りバルーン4に気体圧力を保持させることができる。一般的には、引っ張りバルーン4はカテーテル5の中間又は末端近傍の外部に位置し、レーザー溶接又は接着により引っ張りバルーン4の上下両端をカテーテル5に密封する。レーザー溶接を採用する利点としては、開創がバルーンの内部に大きな圧力を有して十分な剛性を生成する必要があり、10気圧に達する場合もあり、レーザー溶接のみにより密封の信頼性を保証することができる。本発明の引っ張りバルーン4の材料は、半順応性又は非順応性であり、すなわち、大きな圧力範囲内で、この引っ張りバルーン4の膨張後の体積及び外形の変化が小さくなることにより、器官を過度の押圧から保護する。位置決め手段3は、それぞれ引っ張りバルーン4の両端のカテーテル5に固定的に設けられた2つの順応性の位置決め用バルーン3であってよい。いくつかの実施例において、前記位置決め用バルーン3は1つ又は複数であり、1つである場合に、引っ張りバルーン4の近位端又は遠位端に配置することができる。位置決め用バルーン3は、順応性バルーン又は非順応性バルーンであり、長径が小さい。位置決め用バルーン3の数が複数である場合、使用中に全てのバルーンに流体(気体又は液体)を注入してもよいし、一部のバルーンに流体(気体又は液体)を注入してもよい。前記引っ張りバルーン4は、非順応性バルーンであり、長径が大きい。位置決め用バルーン3と引っ張りバルーン4は、X線下で完全に現像する機能を有するために、現像剤が混合された原料で製造することができる。
【0022】
次に、本発明のカテーテル部分の断面図である図2を参照する。図2において、カテーテル5の横断面は、3つのルーメンを有し、そのうちの2つのルーメン52が位置決め用バルーン3に気体を注入及び放出するために用いられ、他のルーメン51が引っ張りバルーン4に気体を注入及び放出するために用いられる。
【0023】
図3は、本発明のハンドル部分の概略図である。前記ハンドル2は、気体注入、注射、把持及び回転などの操作に用いられる。前記気体注入及び(又は)注射の口1は、具体的な設計に応じて1つ又は複数に決定される。前記ハンドル2は、把持用の固定部分と、角度を回転可能な部分とを含む。前記ハンドル2には、ハンドル2を回転させる場合に人体器官又は開創する必要がある組織に対して引っ張りバルーンの所在する相対角度方位をマーキングするための角度を明記する目盛り21がある。
【0024】
次に、本発明の一実施例の概略図である図4を参照する。図4において、位置決め手段又は位置決め用バルーン3には、硫酸バリウム造影剤のような現像材料であってよい位置決めマーク31がある。医師が患者の体外で位置決め手段又は位置決め用バルーン3の体内での具体的な位置を検出できる、赤外線又は無線周波数タグなどのような他の位置決め装置であってもよい。いくつかの実施例において、カテーテル5には、X線で現像するための現像線がある。
【0025】
本発明の他の実施例の概略図である図5と、図5の実施例のカテーテル部分の断面図である図6とを参照する。前記湾曲バルーンカテーテル開創装置は、ハンドル2、4ルーメンカテーテル5、2つの順応性位置決め用バルーン3、1つの半順応性又は非順応性引っ張りバルーン4を含む。4つのルーメンは、それぞれ中間の大きいルーメン53と、周囲の3つの小さいルーメン51及び52であり、3つの小さいルーメンは、3つのバルーンの所在する位置にそれぞれ3つのバルーンに気体を注入するための孔511、521、522がそれぞれ開設される。中間の大きいルーメン53は、上端の位置決め用バルーンの上面に、唾液を排出するための孔531が開設される。
【0026】
前記カテーテル5は中空カテーテルであり、カテーテル5の内部に1つ又は複数のルーメンがある。前記ルーメンのうちの少なくとも1つのルーメン51は専門的に引っ張りバルーン4に流体を注入するために用いられる。前記ルーメンのうちの1つ又は複数のルーメンは位置決め用バルーン3に気体を注入するために用いられる。前記ルーメンのうちの少なくとも1つのルーメン53は唾液を排出するために用いられ、唾液を排出する前記ルーメン53のカテーテル5での開口531は、引っ張りバルーン4の上端に位置し、位置決め用バルーン3があると、位置決め用バルーン3の上端に位置する。
【0027】
本発明のさらに他の実施例の概略図である図7と、図7の実施例のカテーテル部分の断面図である図8とを参照する。前の実施例とは異なり、本実施例では、全てのルーメンは大きさの違いが明らかでない。4ルーメンカテーテル5のうちの3つのルーメン51と52は、3つのバルーンが所在する位置に、3つのバルーンにそれぞれ気体を注入するための孔がそれぞれ開設されるもう1つのルーメン54は、現像剤(バリウム、硫酸バリウム)を噴射するために用いられ、現像剤を噴射する孔541が引っ張りバルーン4の上端に位置し、位置決め用バルーン3があると、該ルーメンが引っ張りバルーン4と上端の位置決め用バルーン3との間に位置する。現像剤を噴射する作用としては、食道の内壁を現像させて、開創の距離を明確に知ることができる。
【0028】
他のいくつかの実施例において、前記ルーメン54は負圧を生成するために用いられ、その開孔位置が2つの位置決め用バルーン3の中間に位置し、負圧を生成するための孔は1つでも複数でもよい。具体的には、使用時に、まず位置決め用バルーン3に気体を注入し、次に負圧を生成するためのルーメン54を利用して抽気し、最後に引っ張りバルーン4を押し広げて、食管湾曲の目的を達成する。
【0029】
前記カテーテルは、捻れが生じにくい材質を採用し、カテーテルの人体の管腔外に残す部分が回転する場合、その内部は同時に一定の比率の角度だけ回転する。また、カテーテルには、カテーテル挿入の深さをマーキングするための長さの目盛りがある。
【0030】
本発明はさらに、動物体内に介入可能なシングルルーメン/マルチルーメンカテーテルチューブにより流体を注入した後に弧形の引っ張りバルーンに膨張できる開創方法を提供し、前記引っ張りバルーンが前記カテーテルの外部に接続され、前記カテーテルが前記引っ張りバルーンの突出方向に偏移することができ、操作ハンドル及び他の関連部品を配置して併用することができる。手術中の組織開創に用いられ、前記製品は、自然開口部介入又は開放手術介入により開創操作を完了する。手術は、様々な腹腔鏡手術、心血管手術、脳部手術、消化管手術、泌尿器疾患手術などを含むが、これらに限定されない。開創された組織は、胃腸、食道、気道、尿道、膣、膀胱などを含むが、これらに限定されない。開創の目的は、特定の組織を保護し、特定の組織を移動して手術操作を容易にすることを含むが、これらに限定されない。
【0031】
人体の自然開口部又は手術の方式により、ハンドルで制御して開創器の湾曲バルーンカテーテルを体内に挿入する。映像機器の指示補助により、ハンドルでカテーテルの位置と回転角度を調整し、ハンドルで位置と角度を固定することができる。ハンドルに付属する気体注入口又は任意の他の送気通路を介してバルーンに対する気体注入を完了することができる。バルーンは気体注入を完了した後に膨張して湾曲状を呈し、カテーテルチューブの少なくとも一部も異なる程度の湾曲が発生し、最終的にバルーンカテーテルの湾曲部分は組織の開創又は変位の効果を奏することができる。
【0032】
心房細動アブレーションの合併症を例にしてカテーテル開創器の作用を説明する。心房細動は最も一般的な不整脈であり、心房細動高周波アブレーション治療は、近年、薬物治療及び通常外科手術よりも良好な解決手段として認められている。心房食道瘻の合併症の発生は、左心房と食道とが近接するという空間的な関係に起因する。食道が後縦隔に位置し、心膜斜洞のみで左心房の後壁と隔てられ、左心房の後壁と食道の前壁がいずれも薄いため、アブレーション手術における高温高エネルギーは食道に過度損傷を与えるおそれがある。心房食道瘻の合併症は極めて高い死亡率を有し、手術を安全にするために食道を開創して心臓から離れる必要があり、図9は湾曲バルーンカテーテル開創装置が食道を開創する概略図である。図9において、外部にバルーンが設けられた1つのカテーテルを、自然に形成するか又は手術により形成された患者の腔道内に挿入し、バルーン部分を、開創する必要がある腔道位置に挿入し、カテーテルに気体を注入してバルーンを膨張させ、気体注入を完了して膨張した後にバルーンが一側へ湾曲して、カテーテルを湾曲させて患者の腔道を湾曲させ、開創変位を実現する。
【0033】
使用時に、カテーテル5を鼻腔から食道に挿入し、末端の位置決め用バルーン3が食道の第2の狭窄部と第3の狭窄部との間に入る場合、末端の位置決め用バルーン3を押し広げ、かつ第3の狭窄部の上面まで押し続け、上端の位置決め用バルーン3を押し広げて第2の狭窄部の下方に係止させ、その後、中間の引っ張りバルーン4を押し広げて湾曲させて、食道を湾曲させる。使用過程では、ハンドル2を回転させることによりカテーテル5及びバルーン3、4を回転させることで、食道の体内での偏移方向を変化させるにより、心臓アブレーションのアブレーション点を常に避ける。位置決め用バルーン3が押し広げられた後、開孔を用いて食道を抽気し、一定の負圧範囲に到達した後、引っ張りバルーン4を押し広げて、食道を湾曲させるという目的を達成する。開孔は、食道湾曲部分がX線で現像可能となる現像剤を噴射するためにも用いることができる。
【0034】
具体的には、食道を開創する場合に、まず引っ張りバルーンと位置決め用バルーンに気体を注入しない状態で、カテーテルを鼻腔又は口腔を通じて食道に挿入し、所定位置に到達した後、カテーテル及びハンドル上のマークにより、湾曲の方向と心臓との相対位置を決定し、その後に引っ張りバルーンに気体を注入してそれを押し広げて、引っ張りバルーンの剛性により食道を開創し、水平断面上で引っ張りバルーンの位置を回転して調整する必要がある場合(心臓アブレーション中にアブレーション点を変更する場合)に、ハンドル上のつまみ装置によりカテーテル全体を回転させて、引っ張りバルーンを回転させることにより、新しい方向に食管を開創してそれを新たなアブレーション点から離れる。引っ張りバルーンは、食道開創に用いられる場合、食道の第2の狭窄部と第3の狭窄部との間に位置し、位置決め用バルーンの直径が狭窄箇所の食道の直径より大きく、引っ張りバルーンの長さが10~15cmであり、作動気圧が2~8atmであり、開創距離が2~4cmである。
【0035】
当業者は本発明の創作精神内で他の変形を行うこともでき、本発明の創作精神から派生するこれらの様々な変形は依然として本発明の保護範囲内に属すべきである。
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図9